2002年12月

スパイ
ゴジラVSビオランテ ゴジラ 2000 MILLENNIUM ゴジラ対ヘドラ ギャング・オブ・
ニューヨーク
メカゴジラの逆襲 怪獣島の決戦 ゴジラの息子 ゴジラ対メカゴジラ(’74) ゴジラVSスペースゴジラ
ゴジラVSメカゴジラ(’93) ゴジラ×メカゴジラ(’02) とっとこハム太郎 
ハムハムハムージャ!
幻のプリンセス
ピンク・レディーの
活動大写真
スパイダー・パニック ブラッド・ワーク その夜は忘れない 荒野の用心棒
用心棒 AIKI 吸血髑髏船 ザ・リング

スパイ


日時 2002年12月29日
場所 録画ビデオ(衛星劇場)
監督 山本薩夫

(詳しい内容はキネ旬データベースで)


中央新報の社会部記者・須川(田宮二郎)は長崎の大村の
密入国管理事務所から韓国の学生運動で指名手配になった李起春
(山本学)が逃亡した事件ににおうものを感じ、調査にやってくる。
逃亡した当日警察庁外事課の鵜崎警部と名乗る男(中谷一郎)が
やってきたという。
ところが警察庁には鵜崎という警部は実在しなかった。
果たして李起春はどこへ消えたか?
その影には日・韓・朝・米にからんだ謀略機関が存在した!


日・韓・朝のスパイたちの起こした事件の背後にアメリカあり、
というポリティカルフィクション。

中谷一郎はもと旧日本軍の特務機関員で戦後も謀略機関で働いてる男。
この男と田宮二郎の須川が実は昔幼馴染だった(でも年齢が合わん気がするが)
という友情とか、中谷一郎に拾われた薄幸の女(小川真由美)を挟んでの
田宮二郎との三角関係とかのドラマ部分が薄っぺらな分、作品の質を
落としてるのが難点。
もっとも山本薩夫なりに「映画はまず面白くなきゃいかん」というサービス精神
のあらわれだったとは思うのだが。

しかし、韓国の学生運動で指名手配になった李起春が日本で逮捕され、
その学生を脱走させ北朝鮮系の在日グループにもぐりこませスパイに
させようという話は、妙に現実味があって恐い。
中谷一郎のボス(事件の黒幕)ははっきりしないが、「キャノン大佐から
(中谷一郎を)紹介された」というセリフがあるから、戦後日本の数々の
謀略事件でたびたび名前のあがったキャノン機関の流れをくむグループ
らしい。ってことはアメリカ側か。

また途中無理矢理、顔を整形させられた後の山本学の死体は醜悪で
見ごたえがあった。

北のスパイグループと見なされた東京の焼肉屋の店主(東野英治郎)が
「我々のことをスパイだと思われて迷惑な話さ。我々は日本での
朝鮮人の権利を守ろうとしてるだけ」と言うと田宮が
「スパイというものは常に戦争を想定し、何でも敵と見なしてしまう
被害妄想に取り付かれているのでしょう」というセリフが、
現実のスパイを言いえているようだった。

山本薩夫らしい社会派映画の面をもちながら娯楽映画としても
面白い、彼らしい映画だ。
北朝鮮問題が話題の今見ると、多分製作当時より現実味を帯びている。


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ゴジラVSビオランテ


日時 2002年12月29日
場所 ビデオ
監督 大森一樹

(詳しい内容はキネ旬データベースで)


ゴジラが新宿を襲った直後、サラジア国のバイオテクノロジー研究所が
ゴジラの肉片を奪っていった。ゴジラの細胞を使って砂漠でも育つ
小麦を作り出そうというのだ。そこには日本人の白神博士(高橋幸治)
とその娘、英理加(沢口靖子)が働いていた。
だがアメリカのバイオ産業のバイオメジャーによって研究所は爆破され、
白神博士の娘は死んだ。
5年後、ゴジラが東京に出現する。
自衛隊は黒木特佐(高嶋政伸)の決定の元、放射能を食べるバクテリア・
抗核バクテリアをゴジラ細胞を使って作ることになり、生命科学研究所の
桐島(三田村邦彦)らに白神博士も研究チームに加わる。
完成した抗核バクテリアだが、バイオメジャーが渡すことを要求してくる。
国土庁にゴジラ対策室として出向していた権藤(峰岸徹)と
桐島が取引現場に向かう。しかしそこには抗核バクテリアを狙うサラジア国の
工作員が!
抗核バクテリアはサラジア国に奪われ、今度はゴジラも三原山より出現。
白神博士の住んでいた相模湖よりビオランテもあらわれ、白神博士のよると
あれはバラの細胞とゴジラ細胞と英理加の細胞を組み合わせたものだという。
出動する自衛隊の「スーパーX2」。果たしてどちらが勝つか?!


ストーリーを割と長く書いたけどこれでもまだ途中です。
スーパーX2を破ったゴジラは相模湖に向い、ビオランテと対決します。
その話は後にするとして、84年に復活したゴジラ映画だが、その後、
第2作が作られるまで5年を要し、「一般からストーリーを公募する」
という試行錯誤を行ってまで完成したのがこの「ゴジラVSビオランテ」

監督は大森一樹。
何年か前から東宝から「ゴジラを撮らないか?」と依頼があり2本ほど
撮った後の満を持してのゴジラ映画だった。
当時大森監督は日本の若手監督のホープと言われ(デビュー当時は
日本のスピルバーグとまでいわれた)東宝としても新しい活力で
ゴジラを盛り上げたかったようです。

結論を言うなら平成ゴジラはイマイチ僕は好きでない作品が多いのだが、
その原因はこの「VSビオランテ」にあったようだ。
大胆に言えば「大森一樹はゴジラ映画を一時変な方向に持っていった犯人」
と言っていいかも。

ではどの辺がよくないのか?
まずはストーリーが非常にわかりずらい。
バイオテクノロジーがどうした、遺伝子操作がどうしたと話がこ難しい。
豆腐の遺伝子組み替えがどうしたということがワイドショーでも
取上げられ、主婦も知ってる今見ると(2、3回目ということもあるが)
解るが、89年当時はまだ耳慣れない言葉でなじみがなかった。
多分に「大人が見ても楽しめる映画=話が複雑な映画」と判断したため、
こんな解りにくい話になったのだろう。

そしてビオランテが植物怪獣だという点。
もちろん植物怪獣は「ウルトラQ」のマンモスフラワーがあるし、
魅力的なのだが、対ゴジラとなるとほとんどじっとしていて
蔓のような触手を伸ばして巻きつけるだけで、なんとも面白みが
ないのだよ。
2回戦のときは多少凶暴な顔つきになっているが、夜暗いのと
霧が濃いのと顔や腕のアップが多すぎることもあって
全体像がはっきりしないのだ。
これじゃ対戦が盛り上がらんなあ。

次にスーパーX2。これがずんどうでカッコよくない。
「ゴジラ(84)」に引き続きの登場だが、不恰好で画的に面白くないこと
極まりない。
そして前部がパカッと左右に開いてゴジラの放射能を受けて、それを
反射させる新兵器があるのだが、第1回戦でゴジラの熱線で焼ききれて
しまい、案外使えない。

次に人物。自衛隊のヤングエリートの黒木特佐。若くしてゴジラ戦を指揮する
のだが、あんまり優秀じゃないの。
ゴジラが駿河沖にいる時に、「福井県の原発を襲うに違いない。名古屋上陸を
想定し東海地方に全兵力を集中」と作戦を立てる。
権藤一佐に「もしあらわれなかったらどうする。俺なら確実に現れる若狭に
集中させるね」と言われてるように(権藤と黒木は別のところにいるので、
権藤の意見は黒木には届かない)ゴジラは大阪方面に現れるのだ。
東大でて防衛庁に入ったような(実際そういう人種はいないだろうが)
いやみ〜〜〜な感じがする奴で好きになれない損な役回り。

そして新キャラクター、超能力少女・三枝未希(小高恵美)登場。
彼女はこの後レギュラーかするが、なんでゴジラに超能力まで加えなきゃならんのだ?
私はこの後の平成ゴジラシリーズで登場するこの三枝がずっと場違いな
印象があるのだ。
彼女は建設中の関西国際空港の建設現場に立って、いわゆる念力で
ゴジラの大阪上陸を阻止せんとするのだが、画面に写らない念力と
ゴジラの対決では面白くもなんともない。

あと細かいことだけどゴジラのことを「G」と呼んだり、伊福部昭の
ゴジラのテーマ曲をロック風にアレンジした曲が登場したり、
不要なカーアクションが登場したり好きになれないなあ。


かといってこの作品全く魅力がないかと思えばそれは間違い。
峰岸徹の権藤一佐はぶつぶつ小言を言いながら軽快に活躍する
ハードボイルドなキャラクターで、後の「VSスペースゴジラ」に登場する
柄本明の結城に通じるカッコいい男。
最後には大阪城近くのツインタワーに昇って抗核バクテリアを撃ちこむとこなど
わたしにとってはゴジラ映画史上の名シーンと言っていいお気に入りのシーンなのだ。

そして図らずもビオランテを作ってしまった白神博士。
高橋幸治の虚無的な雰囲気がこちらもゴジラ史上の名博士になった。

あと官房長官に故・平田昭彦夫人の久我美子、防衛庁長官に「キャプテンウルトラ」の
中田博久らの出演はファンにはにやり。

長くなったけど、平成ゴジラの欠点の始まりを含みながら、しかし私のとっては
ゴジラ史上に残る名キャラクター、権藤一佐と白神博士が登場したために、
名作と駄作の両方の側面をもった作品になったようだ。


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ゴジラ 2000 MILLENNIUM


日時 2002年12月28日
場所 レンタルビデオ
監督 大河原孝夫
製作 1999年

(詳しい内容はキネ旬データベースで)


ゴジラ予知ネットと称する市井のゴジラ研究者グループの
代表・篠田(村田雅浩)達は根室でゴジラ出現に遭遇する。
一方、鹿島沖の日本海溝で科学者・宮田(佐野史郎)は六千万年前の
巨大な岩塊を発見する。内閣官房副長官で危機管理センター長の片桐
(阿部寛)の指示で引き上げる。
しかしそれは六千万年前に地球にやってきたUFOだったのだ。
やがてゴジラが東海村に上陸し、ミサイルでたち向かう自衛隊だが
そこにUFOが飛来し、ゴジラと対決。一旦は引き下がったゴジラだが、
一方UFOは新宿に出現する。そこへあらわれたゴジラ。
ゴジラと対決するうち、UFOは怪獣オルガとなる。
果たしてどちらが勝つか?


95年に一旦シリーズは終了し、3年間のモスラシリーズの後の
(途中アメリカ版「GODZILLA」を挟みながら)新ゴジラシリーズだ。
タイトルは99年の流行語「ミレニアム」が織り込まれている。
復活しての第1作だがあまり面白くない。

まず敵対するオルガだが、怪獣形になるのが最後の15分なのだ。
それまではべろんとした半球体でカッコよくないなあ。
最初は岩石に包まれていて、それがはがれ行く様子はよかったが、
半球体になってからがなかなか変化せずに魅力がない。
半球体の状態からさっさと次の形になればまだよかったのだが。

でも最後になって出てきた怪獣がなんだが「エイリアン」みたいな
形で面白くないなあ。
それに話は途中でこの見てて面白くないUFOが中心になり、ゴジラは
出てこない。あくまで主役はゴジラだと思うのだが。

ラスト、オルガが大きく口を開いてゴジラを飲み込んでいくところは
画的に面白かったが、その後、ゴジラがオルガのおなかの中で放射能
はいたら、それでやられちゃうんだもん。アホだな。

またドラマの方もかつて大学の研究室で一緒だった篠田と宮田、
そしてゴジラを倒そうとするエリート・片桐の三人の対立と
協力のドラマがしっかりしてれば、ドラマの方も面白くなったろうが、
その辺は希薄で面白みがない。
第一、主人公が村田雅浩じゃあねえ。華がないよ。もう少し2枚目
ふうな感じならなあ。村田雅浩はポイント的に出演してこそいいので
あって主役のガラじゃない。

その中で佐野史郎が頑張っていた。
彼が会議の席で上着の前を前ボタンをかけた後、ネクタイが出ていることに気づき
それを上着の内側に入れるシーンがあったが、これは「ゴジラ」の山根博士の
国会でのシーンのオマージュなのだろうか??


あと特撮。
本作からCG合成も盛んになり、ゴジラに打ち込まれるミサイル、
空を飛ぶUFOなどCGが多用。
しかしわずか数年前だがこの頃はまだ技術が低くて、CGに質感がなく、
なんとなく薄っぺらだ。
新宿を歩くゴジラも街はCGでゴジラと合成しているがイマイチ
安っぽい。ミニチュアワークの方が私は好きだ。

折角の復活ゴジラだが、本作は成功していない。
だが次回作以降、徐々に面白さを取り戻していくのである。


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ゴジラ対ヘドラ


日時 2002年12月24日
場所 レンタルビデオ
監督 坂野義光
製作 1971年

(詳しい内容はキネ旬データベースで)


東京湾で船を襲う怪物が出現した。
そんな時、町の生物学者の山内博士(矢野明)たちは
海岸で大きなおたまじゃくし形の不思議な生き物を発見する。
しかし、それがヘドラの最初の形だった!
やがて巨大化し、陸上に上がり飛行するヘドラ。
ヘドラの出す硫酸ミストに住民は次々とやられていく。
そこへゴジラが出現し、ヘドラと対決する。
富士の裾野で踊りながらヘドラに殺されていく若者たち(柴俊夫ら)
山内博士は電極版を使ってヘドラを乾燥させることを提案する。
果たしてヘドラを倒すことはできるか?


なんとも不思議なゴジラ映画だ。
ヘドラはヘドロから生まれた怪獣。他のゴジラ映画と違い、社会派とでも
言うべきなのだろうか?
ヘドラはヘドロを食い、工場の排ガスを吸って大きくなっていく。
海を泳ぐだけの第1期、陸上歩行も可能な第2期、飛行も可能になった第3期、
直立しゴジラと対峙する第4期。徐々に大きくなっていく様は恐怖がある。
その姿は実に醜悪で無気味だ。
そして最後にはゴジラよりも巨大になるのだ。

当時話題だった公害問題に対する作者の怒りが反映されている。
またオープニング曲、「美しい空を返せ!海を返せ!コバルト、カドミウムが
どうしたこうした」のサイケ調(?)の歌も70年代っぽくてすごい。


こう書くとこの映画が面白そうな気がしてくるけど、はっきり言って
面白くない。
「町の科学者が出てきて怪獣を倒すヒントを見つけ、それで怪獣を倒す」
という従来のゴジラ映画の骨格は継承している。
しかし、ゴジラとヘドラの対決になっても音楽もほとんどなく、映画的な
クライマックスに持っていこうとしていない。

つまり全然盛り上がらない。
出てくる自衛隊も数人だけだし。戦ってる迫力がないのだなあ。
襲われた街はテレビのニュースで出てくるだけだし、パニックシーンとか
都市の崩壊とか画的な見せ場がほとんどないのだよ。

もっとも演出力の問題というよりそれ以前に予算がなかったのかも知れない。
出演者はノースターだし、(柴俊夫が出演しているが、無名時代に別名での出演だ)
特撮シーンはチャチなのだ。
ヘドラとゴジラはナイトシーンでの対決が多いのだが、これが暗いのだよ。
スクリーンではなく、テレビ画面で見てるせいもあるかも知れんが、
(でも他の作品はもうちょっと明るかったぞ)「金がなくて周りの風景や
バックを作るとこまで予算がまわらなかったから、暗くしてごまかそう!」
という感じがするのだなあ。

そして飛行するヘドラを追いかけるため、ゴジラは後ろを向いて放射能をはき、
その勢いで空を飛ぶという掟破りもするのだ。
いくらなんでもそれはないだろう。

監督はこれが第1回監督の坂野義光。劇場用作品で監督したのはこれ1本だけらしく、
あと解ってるのはこの後、あの封印された怪作「ノストラダムスの大予言」の脚本を
舛田利雄と共同で書いたというだけ。
でも「ノストラダムス〜」も書いてるって事は公害問題、環境問題に関心の
ある方だったのかなあ。


10年ほど前にもビデオで見たときの感想は単なる盛り上がりのない
つまらない映画だった。
しかし21世紀の今見ると、公害問題こそ聞かなくなったが、
今人類が直面してる「地球温暖化問題」と結びつけると実に恐い。

名作なのか駄作なのか判断に迷う。
ゴジラ映画としてのスペクタクル、ドラマ的な面白さなし。
極端に言えばATGのアート系のような作品だ。
このような社会派路線はこれ一本。
「核の恐怖を描いた第1作の路線に戻った作品」という気もするが、
やっぱり第1作はまず映画として面白かった。
でもこの作品は映画的な盛り上がりは一切なく、つまらない。
ワン・アンド・オンリーの異色作。


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ギャング・オブ・ニューヨーク


日時 2002年12月23日13:25〜
場所 新宿ミラノ座
監督 マーティン・スコセッシ

(公式HPへ)


1846年のニューヨーク。
アメリカ生まれの「ネイティブ・アメリカンズ」とアイルランド系移民の
集団「デッド・ラビッツ」はファイブ・ポインツと呼ばれる貧民街の
利権を争い、ついに対決をする。
「ネイティブ〜」のボス、ビル・ザ・ブッチャー(ダニエル・デイ=ルイス)
は「デッド〜」のリーダー、ヴァロン神父を殺す。

とここまでが前説。
16年の日々が経ち、少年院に入れられていたヴァロン神父の息子、
アムステルダム(レオナルド・ディカプリオ以下デカプー)は
ファイブ・ポインツに帰ってくる。
帰ってきたら、かつて父の同士だった者はみんなビルの手下になっていた。
そしてデカプーはビルに近づき、喧嘩も強く仕事も出来、気に入られるのだが・・
という感じで話は進展。

「おお、なんか東映任侠映画みたいだな。スコッセシといえば
『タクシードライバー』、あの映画も任侠ものの影響受けてるといわれてたし、
この作品もその延長かな?さしずめデカプーが高倉健か菅原文太で
ビルは安部徹か金子信雄、キャメロン・ディアスが藤純子といったところか。
で、いつになったら殴りこみかけるのかなあ。池部良は出てこないのか?」
などと考えていたら、後半になって突然、アイルランド系移民が推す候補と
「ネイティブ〜」が推す候補の選挙の話になってくる。

デカプーが票の取りまとめなんかはじめるし、そいで持って最後は貧民の
徴兵制反対に絡む大暴動になってくる。
鎮圧に軍隊も出動し、軍艦が出てきて艦砲射撃まで行われてしまう。
思わずどうなってるの?と言いたくたる。

1800年代のニューヨーク史と移民の子(デカプー)の復讐物語を
からめての壮大なストーリー展開という企画ねらいはわかるが、
前半の極私的な物語と後半の歴史ドラマがうまく融合されていない。
(というか水と油)

予想された事だが2時間40分のただ長いだけの映画になってしまった。
デカプーはカッコよかったけどさ。
(体つきは逞しくなって、顔つきもシャープで評価していい)
あとビル役のダニエル・デイ=ルイスね。彼が魅力ある敵役なので
前半が引き立つ。

復讐物語に終始するか、俯瞰的な歴史ドラマにするか、その割り切りが出来て
いればもっと面白かったろう。
残念なことにどっちつかずの作品になってしまったようだ。

ラストシーンはNYの姿が1800年代から現代にいたる定点観測の
画で終るのだが、現代のシーンに貿易センタービルが巨大に立っているのは
複雑なものがあった。
あの9・11の所為でこの映画も1年公開が遅れたんだよなあ。


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メカゴジラの逆襲


日時 2002年12月21日27:10〜
場所 浅草東宝
監督 本多猪四郎
製作 1975年

(詳しい内容はキネ旬データベースで)


メカゴジラの残骸を探索に行ったインターポールの面々だが
すでにメカゴジラの残骸はなく、代わりに恐竜チタノザウルスに
襲われる。
その事件の調査の依頼を受けた一之瀬(佐々木勝彦)は15年前に
恐竜実在説を唱え学会から追放された真船博士(平田昭彦)が関係していると
にらむ。
真船博士は娘・桂とともにブラックホール第三惑星人の力を借りて
チタノザウルスをリモートコントロールする技術を開発した。
かつて実験中の事故で死にかけた桂をすくってくれたのは
第三惑星人だった。そしてメカゴジラの修理も行う真船博士。
彼を追放した世の中に対する復讐が始まる。
だがチタノザウルスにも弱点があった。超音波がリモートコントロールの
信号を乱し、制御不能に陥るのだ。
やがて出現するゴジラ。ゴジラ対メカゴジラ、チタノザウルスの
激闘が今始まる!


演出は久々の王道、本多猪四郎。
前作が東宝SFの王道を行くストーリー展開だったのに対し、
今回は真船博士の復讐物語に主軸を置いたストーリー展開。
「ゴジラが実在する世界で恐竜存在説を唱えて学会追放なんて矛盾している」
って批評をどこかで読んだ覚えがあるが、それはさておき話はちょっと暗い。

平田昭彦演じる真船博士はいつもの冷静な正義の科学者と違い、
髪は真っ白、ひげも真っ白とちょっと平田昭彦とはわかりにくいようなメイク。
自分を認めなかった世の中に復讐を誓うマッドサイエンティストとして
登場だがなかなか迫力がある。

で主役の佐々木勝彦だがこの人、「海軍特別年少兵」でも主役だったが
なんとなく暗い、というか華がない。
岸田森も暗かったが、華があり暗いながらに画面をさらう何かがあった。
佐々木勝彦では単なる地味で映画が盛り上がらないなあ。

また肝心のゴジラは今回なかなか登場せず、後半の30分になってやっと登場。
前作はキングシーザーと2頭での対決だったが、今回は敵が2頭でゴジラ側は
1頭という不利。
しかしインターポールの開発した超音波妨害装置(?)によって
メカゴジラたちのコントロールがさえぎられなんとか勝利。
でもメーサー砲のように画的な派手さはないから見所にはならん。

あとストーリーには直接関係ないが、真船博士の娘が死にかけた時に
第3惑星人にサイボーグの手術をされるシーンが出てくるが、
このときおなかを開いていて中の機械類(歯車とかそういうの)が
見えるのだが、それはいいとして手術台にのった格好で
(作り物だが)おっぱいまで出してるのだよ。
ゴジラから血が噴出したり、おっぱいまで出したり、随分と迷走してるなあ。
改造人間って設定は当時の仮面ライダーに影響か知らん??

出演は他にインターポールの日本署長に中丸忠雄、防衛軍司令官に
佐原健二、第三惑星人の手先(部下?)に沢村いき雄、漁師に小川安三など。


結果的に本多猪四郎を監督に持ってきたが、やはり作品の質の低下は
否めなかった。(ようはつまらんって事)

この作品でゴジラシリーズは一旦終了。
もう興行的にきつかったようだ。
「テレビでの怪獣ブームもあり今さら怪獣映画には魅力がなかった」、
「低予算化が作品の質を落とした」等いろいろ要因はあるだろう。
そしてゴジラで育った世代が大人になり、ゴジラをもう一度みたい
という時代が来るまで(随分じらされたが)ゴジラの復活は
1984年までお預けを食う事になる。


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怪獣島の決戦 ゴジラの息子


日時 2002年12月21日24:05〜
場所 浅草東宝
監督 福田純
製作 1967年

(詳しい内容はキネ旬データベースで)


南太平洋のゾルゲル島では密かに実験が行われていた。
食料問題解決のため、気象を人工的に変化させる実験のため
熱帯地方のこの島で人工的に雪を降らせようというのだ。
メンバーは楠見博士(高嶋忠夫)のほか6人(平田昭彦、
佐原健二、土屋義男、西城康彦ら)
そこへルポライター真城(久保明)がニュースのにおいをかぎつけて
やってくる。追い返そうとするが帰る方法もなく仕方なく
雑用係として参加させることとなる。
しかしこの島には体長3mはあろうかという大カマキリがいた。
実験は行われるが妨害電波のために失敗し、摂氏70度という高温に
なってしまう。
温度が下がった時、大カマキリが巨大化したカマキラスが出現した。
また無人島だと思われたこの島だったが、サエコ(前田美波里)という
日本人の娘もいた。
やがて巨大な卵からゴジラの子供ミニラが誕生し、ゴジラも上陸した。
妨害電波だと思われたのはミニラが親を呼んでいたのだ!
巨大クモ・クモンガも登場する。
楠見博士たちの運命は?


ミニラ初登場篇。
ゴジラ映画の子供化の象徴のミニラ登場だ。
ミニラがゴジラに言われて放射能をはく練習をするシーンはほほえましい、
ともいえるが、ゴジラの擬人化の象徴でもある。

この後2作ほどミニラは登場するが、僕は余りミニラが好きでない。
あんまりカッコよくないもん。顔もブサイクだし。
同じゴジラの子供なら「VSスペースゴジラ」に登場する
リトルゴジラの方が好きですね。

でもこの映画ではぼくはカマキラス登場を評価したい。
子供の頃この映画は見ていて、今回何十年ぶりかに観たのだけど、
夜の闇の中を「キーキー」とか鳴きながら歩く大カマキリはよく憶えていた。
その後巨大化してカマキラスになるのだが、体がスマートでカッコいい。
映し方も常に手前にジャングルの木を置いて、人間が覗き込むような
アングルばかりにしているカットもよい。
(最初の登場シーンは「キーキー」という鳴き声だけで、土屋義男が
「忌々しい野郎だ」というリアクションだけで期待させる演出もいいね)

怪獣ものは着ぐるみだと人間が入るため、どうしてもずんぐりとした
体型になってしまうのだが、カマキラスはシャープでカッコいい。
操演によるものだが、この操演型怪獣はこの作品に出てくるクモンガと
カマキラスで終わってしまい、その後、同類の怪獣はあらわれていない。
新作ゴジラではまた操演型怪獣を復活して欲しいなあ。
体型も自由に作れるし、いいと思うのだが。
もっとも今ならCGでうまくできるだろうが。

出演は隊長以下のメンバーが主役級の役者で豪華な面々。
でも前田美波里が南国系の顔立ちをしてるので原住民かと
思ったら戦時中にこの島にやってきた学者の娘だって。
そんならあんな濃い顔立ちの南国系の人をキャスティングする必要も
なかろうに。でもアロハシャツ系の衣装は似合ってましたが。
あと特筆すべきは土屋義男ね。「俺はこんな変な島耐えられない。早く帰ろう」
と常にわめく隊員役。なんだか「マタンゴ」を思い出した。

ラストシーン、降雪実験も成功し、救助の船に助けられるメンバーだが、雪の降る島で
抱き合っているゴジラ親子はなんだか切ないものがあった。

この後、「モスラ対ゴジラ」の上映。春にラピュタで見たのでレビュー省略。


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ゴジラ対メカゴジラ(’74)


日時 2002年12月21日21:00〜
場所 浅草東宝
監督 福田純
製作 1974年

(詳しい内容はキネ旬データベースで)


浅草東宝でのゴジラ特集オールナイト。
春にラピュタ阿佐ヶ谷で見た作品もあるが、やはり封切館の大スクリーンで
見ると迫力がある。

沖縄海洋博の建設技師・清水(大門正明)と金城(田島令子)は
工事現場の洞窟から古代沖縄人の書いた壁画を発見する。
考古学者・和倉博士(小泉博)の協力を得て解読に成功する。
「黒い山が出現する時、邪悪な怪獣が現れて世界を滅ぼそうとする。
だが太陽が西から昇る時二匹の怪獣が現れて人々を救う」
というものだった。
やがてゴジラが出現、アンギラスを撃退する。そこへもう一頭のゴジラが
出現。なんと先に現れたのは宇宙人が作ったメカゴジラだったのだ。
計器の故障で一旦は引き上げたメカゴジラだったが、メカゴジラの
基地が沖縄にあると考えた宮島博士(平田昭彦)や清水たちは
空路、海路で沖縄に向かう。
だが宇宙人に捕まりメカゴジラの修理を強要される宮島博士。
清水たちを船中で狙う男たち(草野大吾、岸田森)は何者か?
沖縄でメカゴジラ、ゴジラ、キングシーサーの戦いが今始まる!


初代メカゴジラ登場!
古代人の壁画、そこに書かれた予言、宇宙人の侵略と東宝SFの
王道を行くストーリー展開。
シリーズ物には「ニセウルトラマン」「ニセ黄門」などニセモノが一度は
登場するのがセオリーみたいなもんだが、ゴジラもついにニセモノ登場。
一言で言って昭和ゴジラシリーズの後期の代表作と言っていい。
これで主役がスター級だったら言う事ないんだが。
(大門正明は昔なら久保明がやりそうな役どころ)

岸田森は実はインターポールの捜査官で清水たちを
宇宙人から護衛していたという役どころ。
ゴジラシリーズに彼が出演したのは確かこれ1本きりだが、
特撮スターとしての貫禄充分に活躍。
古代文字を解く学者に「モスラ」以来この手の役どころの
小泉博、不本意ながらメカゴジラの修理をするノーベル賞受賞学者に
平田昭彦博士、ワンシーンだけどフェリーの船長に佐原健二と
豪華なメンバー。
あとはブラックホール第三惑星人(なんじゃそれ?)に睦五郎。
脇は今福正雄、小川安三など東宝常連軍団も出演。

特撮面では最初はゴジラの皮を被っていて、途中本物のゴジラが登場し、
戦ううちに肩のあたりがきらりと光り、そして自ら皮がなくなって
全身宇宙金属になるシーンはなかなかです。
宇宙人が撃たれたりして死ぬ直前に姿がゴリラ状になるのですが
(当時ヒット中だった猿の惑星シリーズの影響だと思うが)
草野大吾が顔を撃たれて、最初顔半分だけゴリラになって
半人間半ゴリラの顔になるあたりは面白い。

でも対アンギラス戦でメカゴジラがアンギラスの口を上下に開いて
口の両端から血が吹き出るとか、ラストのゴジラとの戦いで
ミサイルを撃ち込まれたゴジラの体から血が吹き出たり、ちょっと
残酷だったと思う。あんまり痛そうなのはねえ。
これも東映ヤクザ映画とか東宝ニューアクション映画の影響なのか知らん?

それとゴジラの造型、最近のゴジラとは違い、頭はでかくて体は細くて
なんかバランス悪そう。目もでかくて迫力不足。
放射能はいてメカゴジラがうまくよけちゃって、指を鳴らして悔しがる
所は人間ぽっくていやだなあ。
もっともこの頃のゴジラはみんなそうなんだけど。

あと記しておきたいのは沖縄が舞台になってる点。
沖縄は1972年に日本に復帰し、沖縄県になったわけだけど、
75年の海洋博を控えちょっとした沖縄ブームだったわけですね。
沖縄行きフェリー・さんふらわあも登場し、タイアップミエミエです。


有名都市の破壊がないとか、住民が逃げるパニックシーンがないとか
主役がスターじゃないとか、ケチをつけたくなる点もあるけど、
その辺の欠点は当時の限界点と考え、昭和ゴジラの最後の名作になってます。

この後「怪獣総進撃」の上映。春にラピュタで見たのでレビュー省略。


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ゴジラVSスペースゴジラ


日時 2002年12月21日
場所 レンタルビデオ
監督 山下賢章
製作 1994年

(詳しい内容はキネ旬データベースで)


南太平洋のバース島にGフォースの新庄(橋爪淳)と佐藤(米山善吉)がやってきた。
三枝(小高恵美)の超能力を使ってゴジラを操ろうというTプロジェクトのためだ。
そこには結城(柄本明)というゴジラ打倒に執念を燃やす男とベビーゴジラが成長した
リトルゴジラがいた。
三枝、権藤(吉川十和子)大久保教授(斎藤洋介)も合流し、ゴジラに三枝の
テレパシーを伝える受信機をつける事に成功する。
そこへ宇宙からスペースゴジラがやってきた。ゴジラもあらわれバース島で
スペースゴジラの対決が始まる。
引き分けに終った今回だが、スペースゴジラは宇宙に飛び散った
ゴジラ細胞から生まれた怪獣らしい。
やがてスペースゴジラは北海道から本州を縦断飛行し、福岡に降り立つ。
鹿児島に上陸し、福岡を目指すゴジラ。
Gフォースは新兵器モゲラ(Mobile Operation Godzilla Expert Aero-type)を
結城たちをオペーレーターに出撃させる。
福岡タワー周辺で、ゴジラ、モゲラ、スペースゴジラの戦いが今始まる!


前回の「VSメカゴジラ」がつまらなかった後だけに今回は面白い。
その面白さは主に結城という男のキャラクターに負う所が多い。
意外なほどに柄本明がいいのだ。
「VSビオランテ」で大阪のOBPビルでゴジラに殺された権藤(峰岸徹)の親友役。
親友を殺され復讐に燃える男だ。そして権藤の妹の登場し、大人の恋もある。
モゲラの出撃前に吉川十和子にジッポーを渡し、「オイルが切れた。入れといてくれ」
と去りげなく再会を誓うクサイほどの粋。
ふてくされたようにタバコをくわえ、戦闘に向かう姿は意外なほどカッコいい。
彼の代表作に数えていい。

また今まで男に縁のなかった三枝だが、今回は新庄との関係も気になってくる。

肝心のモゲラだが、前回のメカゴジラと違って強い。
途中、分離、合体をくりかえし見せ場も満載だ。
後半、30分以上は福岡タワーでの決戦だが、これがモゲラの大活躍によって
迫力ある戦いになっている。
「VSメカゴジラ」と違ってラストは主人公たちがちゃんとモゲラに乗り込んで
戦ってる点がよい。

ゴジラをテレパシーで操るTプロジェクトが失敗した後、大久保教授は三枝を誘拐して
国際的企業ブローカー(?)の下で研究を続けようとし、新庄や結城に助けられる、
というエピソードがあるけど、これはちょっと蛇足。
話がよそへ飛んでかえって全体の焦点をぼやかせかねないので、ここはなかったほうが
よかったと思う。
でも斎藤洋介が後半マッドサイエンティストになって壊れたテレパシー発信機を
修理しようとするところはなかなかの迫力。昔なら岸田森がやりそうな役だった。

他の出演者では佐原健二が前作「VSメカゴジラ」に引き続きGフォース長官、
中尾彬が戦闘部隊司令官、上田耕一が同副官。

あとリトルゴジラね。ゴジラの子供、という設定はミニラが有名だけど、
こちらのほうが男前。美少年(?)な造型。
印象にはミニラの方が残るけど、やっぱりかっこ悪かったしブサイクだったよなあ。
でもラストに放射能はく練習してたけど、「VSメカゴジラ」の時、佐野量子が
「これはゴジラじゃなくてゴジラザウルスだから」って言ってたんじゃない??
ゴジラザウルスについては「VSキングギドラ」を参照しなきゃ。

結論として「平成ゴジラシリーズ」の中では一番の出来。
それも柄本明の結城というキャラクターに追うところが大。
ゴジラが出て来るだけではだめ。やはりドラマがしっかりしていなくては。


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ゴジラVSメカゴジラ(’93)


日時 2002年12月16日
場所 レンタルビデオ
監督 大河原孝夫
製作 1993年

(詳しい内容はキネ旬データベースで)


度重なるゴジラの襲来についに国連Gフォースが結成され、
未来人が残したメカキングギドラの技術を参考に
メカゴジラが作られた。
その頃ベーリング海のある孤島で、巨大な卵が発見される。
卵を日本に持ち帰る大前博士(川津祐介)と五条梓(佐野量子)
だったが、その時ラドンとゴジラがあらわれ戦いあい、ラドンは敗れる。
そして卵は京都に運ばれやがて孵化する。生まれたのはベビーゴジラだった。
ベビーを取り戻そうと日本に上陸するゴジラ。迎え撃つメカゴジラだが
機能停止に陥ってしまう。なんとかゴジラを大阪湾に追いやる事に成功した。
今度は逆にベビーゴジラを使ってゴジラをおびき寄せようとする。
そこへベビーゴジラを救おうとラドンもあらわれる。
上陸を開始するゴジラ。迎え撃つ改良したメカゴジラ。
ラドンも加わり、幕張地区で決戦が始まる。


はっきり言って面白くない。
第一看板に誤りがある。「ゴジラVSメカゴジラ」と言う割には
メカゴジラより印象にのこるのはベビーゴジラと佐野量子との交流なのだ。
メカゴジラははっきり言って弱く、最後にはコテンパンにやっつけられて
しまうのだ。
だからタイトルは「ゴジラ&ベビーゴジラ」の方が内容には合っている。

また登場人物の性格(役割)もあいまい。
主役の高島政宏だが、「プティラノドン」ファンの技術者という設定で、
メカゴジラのメカニックなのか、メカゴジラのオペレーターなのか、
佐野量子の恋人なのかはっきりしないのだ。
結局どのポジションも中途半端で、主役の割にはただ画面をうろうろするだけで
何のために出てきたのすら解らなくなってしまう。

川津祐介の大前博士も平田昭彦がよく演じた博士のような活躍もせず、
途中から姿を消してしまう。(最後には少し出てくるけど)
小高恵美の超能力少女も「ゴジラVSビオランテ」以来のレギュラーだが
ゴジラ映画に超能力の要素を持ち込むのはどうも賛成できなくて。

また国連Gフォースとなってゴジラ専門防衛軍が登場するが、国際色を
出そうとしたのか、幹部やメカゴジラのオペレーターに外国人がいたり、
違和感があるのだなあ。
なにか「ウルトラマンシリーズ」の地球防衛軍や科学特捜隊みたいで
ちょっと場違いな印象が僕には残る。

そして肝心のメカゴジラのオペレーターが原田大二郎。
「Gメン75」に出てた頃は2枚目だったけど、途中から
3枚目になってしまって、この映画の頃は3枚目だったから
ヒーローたるべきメカゴジラのオペレーターではミスキャスト。
あと懐かしい宮川一郎太(「家族ゲーム」の少年ね)も出てるが
活躍なし。ただいるだけ。

出演は他にGフォーズ長官に佐原健二、超能力センター長に顔見せ程度に
高嶋忠夫。親子共演を果たした。
あと音楽は伊福部昭が音楽監督を務め、全篇が伊福部サウンドなのが嬉しい。

特撮面では京都の清水寺や京都タワーとのカットかな。
ここは見ごたえがあった。

結果としてシナリオの焦点が定まらない、何に話のポイントを
置きたいのかはっきりしない失敗作だった。


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ゴジラ×メカゴジラ(’02)


日時 2002年12月15日18:25〜
場所 日劇2
監督 手塚昌明

(公式HPへ)


昭和29年のゴジラ上陸、昭和35年のモスラ来襲、昭和36年のガイラ出現、
度重なる巨大生物の攻撃に日本は陸海空に加えて第4の自衛隊・対特殊生物自衛隊
(略称・特自)を編成した。そしてゴジラに対する新兵器として昭和29年に死亡した
ゴジラの骨のDNAをベースにしたロボット兵器・三式機龍(メカゴジラ)を
開発する。
やがて上陸するゴジラ。機龍にも出動命令が下り、家城茜(釈由美子)の操縦の下、
ゴジラ対機龍の決戦が始まる!


実は今回あんまり期待していなかった。
「またメカゴジラか。一体何回目だ?」「釈由美子の女性ヒロインねえ」と
マイナスな先入観しかなかったのだ。

ところがどっこい今回は面白い。昨年の「ゴジラ・モスラ・キングギドラ
大怪獣総攻撃」も面白かったが、今回はそれより面白いかも?
民間人のドラマ部分はかなり省き、「ゴジラ対自衛隊」のほぼ一点に絞った
戦争映画とでもいうような出来映え。

まずは今回は設定からしてニンマリ。
ゴジラのあと、モスラ、ガイラに襲われる、度重なる特殊生物対策のために
陸海空の他に作られた新しい自衛隊「対特殊生物自衛隊(略称・特自)」が
作られたという設定。
ゴジラ以外の怪獣ものを結びつけた設定は初めてだなあ。
それと今まで重要ではあったが主役ではなかった自衛隊を前面に持ってきたことが
特筆すべき点。
メカゴジラ(正式名称・三式機龍)を操る自衛隊は、以前登場したGフォースなる
「ウルトラマンシリーズ」の「科学特捜隊」「ウルトラ警備隊」の亜流ではなく、
リアルな自衛隊だ。
(特自の組織などパンフレットに詳しく書いてあり楽しい)
号令のかけ方、整列の仕方、敬礼など、僕だってもちろん本物の自衛隊は
知らないが、本格的な印象だ。
ここまで本格的っぽいのは久々ではないか?

また最近の作品に多かった「何故ゴジラは日本を襲うのか?」と言った小理屈は抜き。
本当は少しあるのだが、上映時間1時間28分と短いためそんなことに時間は割かない。
それでいいと思う。

そして「ゴジラ対策新法」が制定されたり、世論動向をテレビのワイドショーで
解説されたり、水野久美(!)総理大臣がマスコミに「景気対策は?」と
質問されたり、メカゴジラの第1回戦が終了後、「内閣総辞職か?」との
活字が新聞に躍ったり、ポリティカルフィクションの様相も呈してくる。
(まるでゴジラ版「宣戦布告」だと私はクスクス)

戦闘シーンは「ゴジラがこうきたらこう応戦する。こうきたのでこうミサイルを
撃ち返す」などと対決の面白さがシナリオもちゃんとしている。
まるでよく出来た戦争映画を観るような決戦の面白さなのだ。
最後、アブソリュートゼロ(いわば冷凍光線)をゴジラに撃つ込んだ時、
ゴジラの反撃で品川プリンスホテルが崩壊するシーンには思わず
「あっ〜〜〜〜」と声を上げたくなった。
自宅で一人で見ていたら絶対上げたろう。

また特撮面では、CGと従来の着ぐるみがうまくミックスされていて
投げ飛ばされるゴジラなど、今までにないスピード感満載。
実は今まで怪獣映画は対決が始まるまでが面白くて対決になると
モタモタしてつまらなくなる、ということがあったが、
今回は非常にスピード感のある激闘でみてて飽きない。
また暴走した機龍が夕陽をバックに静止したカット、夜の月をバックに
舞い降りる機龍(すごいカッコいい)オープニングの台風の
中から出現するゴジラなど画的にいいカットも多い。

釈由美子も「エイリアン」のリプリーを思わせるもの大活躍があり、
ラストの機龍に対する敬礼もピタッと決まっており、予想を裏切る良さだった。
あと水野久美の田中真紀子をモデル(服装などのルックス面)にした女性首相の
痛快さ。

ここ数年のゴジラでは一番面白かった。
映画が終った後、思わず拍手しそうになってしまった。


「宣戦布告」とこの「ゴジラ×メカゴジラ」、もちろん政治的な意図は全くない
映画だが、自衛隊がこう大活躍されると「自衛隊肯定」「憲法改正」なんて
ことにつながらないかと心配になる。もちろんそれは杞憂であるに決まっている
のだが。


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とっとこハム太郎 
ハムハムハムージャ!幻のプリンセス


日時 2002年12月15日17:10〜
場所 日劇2
監督 出崎統

(公式HPへ)


ハム太郎は夢の中で助けを求めるプリンセスに出会った。
ハム太郎たちはハムスターの王国に偶然たどりつく。
そこでプリンセスに出会う。しかしプリンセスは悪い猫と
結婚させられるという。
結婚する予定だった王子はどこにいるのか。
ハム太郎はプリンセスを救い出す。


話は適当にしか憶えてないけど、というのはこの映画ものすごく
観づらい。

画はほとんどのカットがズームかティルト移動をくりかえして
じっとしてないし、バックの画が常に動いていて
以前ポケモンで問題になったフラッシュ効果(って言ったけ?)
ような画がほとんどなのだ。
またキャラクターの顔のアップも多く映画館のスクリーンで見るより
テレビ用に画を作ってる感じがした。
しかも音は常に強調の効果音があり、音のレベルも全体的に高めで
うるさい。

昨年の「ハム太郎」の感想で「土日で8本見たから関心の薄い映画まで
よく憶えていない」って書いたけど、そうじゃなかった。
画がチカチカしていて頭が痛くなるような感じだから
内容が頭に入らないのだよ。

こうなると映画の内容以前の問題。

「ゴジラ」の興行力ダウンをてこ入れするための安易な映画にしか思えない。
ミニモニとか登場させてなんとか役者はそろえてる感じがしたが、
映画として金とって見せる気を感じさせてはくれなかった。


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ピンク・レディーの活動大写真


日時 2002年12月15日
場所 録画ビデオ(チャンネルNECO)
監督 小谷承靖
製作 1978年

(詳しい内容はキネ旬データベースで)


大人気のピンクレディー、ニューヨークでもマスコミ攻め。
みんなの関心は企画中の主演映画についてだ。
だが内容は決まっておらず、今日の東京の会議で決定するという。
東京ではプロデューサー(石立鉄男)、監督(田中邦衛)、脚本家
(秋野太作)らが会議中。
だが脚本家は下町の人情ドラマがいいと言い、プロデューサーはSFが
やりたい、監督の希望は西部劇だった。
いつまで経っても決まるとは思えない。一体どうなる事やら。


映画の大半はプロデューサー、監督、脚本家がそれぞれ自分の考える
映画を話し、それが映される、というもの。
つまり映画中映画みたいな内容です。
その中でSFものは北極でピンク色のモンスターが発見され
サーカスに連れてこられる。ピンクレディーが調教役でモンスターは
時々山型に物を積み上げたりする。このモンスター、実は宇宙人で
誤って地球に来てしまったのだが富士山に宇宙船が迎えにくるという内容。
山型のイメージなど、ひょっとしたら「未知との遭遇」のパロディ
なのかも知れない。
(そうそう西部劇の時、大林宣彦監督が酒場のピアノ弾きで特別出演していた)


時折強引にピンクレディーの歌のシーンが挿入されるので、
ファンとしては歌が聴けて一応は楽しめる。
挿入される歌は「ペッパー警部」「SOS」「ウォンテッド」「サウスポー」
「カルメン’77」「モンスター」「UFO」「透明人間」
「カメレオン・アーミー」「渚のシンドバッド」という訳でピンクレディーの
ヒット曲をほぼ網羅している。今観ると記録としても十分価値がある。
確かキャンディーズが解散した後に作られた映画だと思うけど、
この映画の頃が人気の最後の時代だった。
ある意味、人気にかげりが出てきたから映画に出たのかも知れない。

で、プロデューサーは派手なタキシードを着て、監督は常に親指と人差し指で
フレームを作って覗いていたり、まるでコントに登場するようなキャラクター。
そんな感じでコメディなのだが、予想されるように全く笑えない。
一体どうすればこんなつまらない映画ができるのか不思議なくらいだ。

しかしピンクレディー主演映画となれば、現実でも映画会社、プロダクション、
レコード会社など外野もうるさかった事だろう。
案外実際の企画の混迷が映画のままだったのかも?

この映画を観て、昔小林信彦が関わった、「最初はスパイダーズ主演で
企画が進行していたが、それがいつのまにかジャガーズの主演映画になった話」
(出来た映画は「進め!ジャガーズ敵前上陸」)を思い出した。
この映画はひょっとしたら、外野がうるさくて映画が無茶苦茶にされる
事を描いた強烈なアイロニー映画だったのかも知れない。

そう見るとなかなか味わいのある作品に見えてくるから不思議だ。


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スパイダー・パニック


日時 2002年12月14日15:00〜
場所 銀座シネパトス
監督 エロリー・エルカイエム

(ワーナー公式HPへ)
(アメリカ版公式HPへ)


アメリカのある田舎町、化学薬品を積んだトラックから一つのドラム缶が
沼に落ちる。その沼で採ったコウロギをクモマニアの男が
自分のうちで飼っているクモにえさとして与える。
ところがクモたちはその化学薬品の副作用で突然巨大化し始めた!

ポスターのイメージ(アメリカ版公式HP参照)とかキャッチコピーとかを見てると
「モンスター映画のパロディのようなコメディ」かと思われそうだが、
そんなことはない。
正統派モンスター映画です。

かつての50年代映画ではモンスターがチャチでどうしても頬が緩んでしまったが、
この作品のクモたちは全篇CG合成でそのチャチさがない。
数年前はCGはものすごく制作費が高い!というイメージがあったが今では
こんな低予算風な映画でもちゃんとしたのを作れるのだからリーズナブルに
なったものですね。

わなわなとキリがなく登場するクモたち。
それと戦う人間。特にジャンピング・スパイダーという一跳び10mぐらい
跳びそうなクモとバイクの死闘、ショッピングモールに
逃げた町の人々との大激闘、ラストの鉱山の坑道での対決と
後半の1時間以上はクモが暴れまわり、これでもかこれでもかとクモたちとの
対決がありまさしく正統派!

登場人物も子供クモ博士、田舎の保安官、そして主人公は市井の青年、
また戦う武器もライフル、散弾銃、ボウガン、スタンガンと日常的な
武器で知恵を使って戦う。

ゴジラのような有名大都市破壊の作品もいいけど、こういった人間よりも
ちょっと大きい程度のモンスターとの戦いも味のあるものです。
監督はとっても昔の怪獣映画が好きなんだろうなあ。
そんな監督の怪獣映画への愛がビシビシ伝わってきて、かつての怪獣映画への
偉大なオマージュ作品に仕上がってます。
これをパロディ的に売る配給会社の人間は多分怪獣映画を本気で愛してないでしょう。

最近は「ジュラシック・パーク」などのおかげで
昔はB級扱いだった怪獣映画も随分立派な扱いを受けるようになり、
一流映画館で公開され、それはおいしいラーメン店のラーメンをシティホテルの
レストランで食べるような、そんな楽しいような似合わないような気もしていた。
その点、この映画が地下鉄の振動が5分に一回来る映画館
「銀座シネパトス」で公開されたのは身丈にあった公開なのかも知れない。

(注・「銀座シネパトス」は地下街にあり、真下を地下鉄日比谷線が通っているため、
本当に5分に一回振動がある映画館。私は滅多に行かないがディープな番組編成で
固定ファンもいるらしい)

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ブラッド・ワーク


日時 2002年12月14日12:00〜
場所 新宿東映パラス
監督 クリント・イーストウッド

(公式HPへ)


FBIの凄腕プロファイラー、テリー・マッケーレブ(クリント・イーストウッド)
はある連続殺人事件の捜査中、犯人を発見し追跡したが、心臓発作で
あと一歩の所で取り逃がしてしまう。
2年後、彼は心臓移植の手術を受け平穏な日々を過ごしていた。
そこへ「あなたの心臓は殺された姉の心臓だ」と名乗る女性・グラシエラが現れる。
テリーはそれまで知らなかったが、グラシエラの姉はコンビニ強盗によって
殺されていたのだ。
捜査を開始するテリー。捜査が進むうち、2週間前にも同一犯と思われる
事件が起こっていた。両者の関係はあるのか?そして犯人と疑われた男は
次々と殺されていく。さらに2年前の未解決連続殺人犯も再び動き出した!


クリント・イーストウッド久々の刑事役。
ミステリとしては犯人の意外性はやや少ないものの、容疑者が次々
殺されたり、テンポも早くて見飽きないし、何より引退したFBI捜査官の
イーストウッドが事件を引き受ける動機が「自分に心臓を提供してくれた人
を殺した犯人を探す」というアイデアが目新しくて面白い。

僕はイーストウッドは特別ファンでもなかったけれど、今回も渋く決めている。
低音でぼそぼそと響く声がカッコいい。
最後の「おまえなんか○○じゃない。おまえなんか要らない」(ネタバレに
なりかねないので伏字)と言って憎っき連続殺人犯を殺すあたりは
まさしく男の魅力!

70歳すぎてもこれだけカッコいいとなんだか歳をとることが恐くなくなる。
イーストウッド、他の作品も観たくなってきた。

それにしてもこの映画、12月7日公開、20日終了というわずか2週間の公開。
世間の話題は正月映画真っ盛りでマスコミからは完全に無視されてしまうには
惜しい気がする。
ワーナーもハリーポッターで劇場押さえてしまったからこんな形であおりを
食らってしまったと思うが、それにしてもちょっともったいない。
2月とか正月映画が一段落した時期に1ヶ月ぐらいは公開して欲しかった。

レンタルビデオになったら皆さんも是非見てください。
損はしませんから。



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その夜は忘れない


日時 2002年12月9日
場所 録画ビデオ(衛星劇場)
監督 吉村公三郎
製作 1962年(昭和37年)

(詳しい内容はキネ旬データベースで)


週刊誌の記者・加宮(田宮二郎)は「あの日」からまもなく17年目を
迎えようとしている広島を訪れる。
「17年経ってもまだなお癒えない傷跡」という終戦特集のためだったが、
取材に行った先々で加宮が見たものは、取材にも快く応じてくれる
何事もなかったように暮らす明るい広島の人々だった。
「広島にはもう原爆の爪あとはない」そう思って取材を打ち切る
加宮だったが、友人(川崎敬三)に連れられていったバーのマダム、
秋子(若尾文子)と知り合う。
やがて加宮は秋子を愛するようになり結婚を申し出るが、秋子は
自身の体にある原爆のケロイドを見せる。
加宮の気持ちはそれでも変わらない。
一旦東京へ帰った加宮だったが、3ヵ月後再び広島を訪れる。
だが秋子は2ヶ月前に亡くなっていた。加宮は慟哭の叫びを上げ、悲しんだ。


いやね、言いたい事はよく解るよ。
「広島は一見完全に復興したように見えるが、まだまだ深い傷を負っている。
この悲劇、忘れまじ」ってことだろ。
だが完全に失敗。
声を大にしてこの映画を作った連中に言いたい。

広島の惨劇を忘れてるのはこの映画を作ったあんたたちだ!!
広島の爪痕を単なるチープなメロドラマの材料にするな!!


途中6本指の赤ん坊が生まれた噂を聞き、その赤ん坊と母親を探すエピソードが
あるんだが、これが見つからない。
私はてっきり若尾文子が母親かと思っていたらそうでもなかった。
この6本指の赤ん坊が最後に出てきたら、僕としては面白かったが、
それでは円谷の「変身人間シリーズ」になってしまうか。
でも吉村公三郎じゃそういう発想はせんわなあ。

原爆の影響で握っただけでバラバラになってしまう石があって、
若尾文子に「私はこの石と同じだ」言わせているシーンがあったが、
この石のエピソードはよかったかな?
でも全体としてはチープな恋愛話にしかなっていない。

最近「トータル・フィアーズ」とか「9デイズ」とかでアメリカ人の
核兵器の扱い方に憤慨していたが、日本人だって大して変わんないじゃん。
それもまだ昭和37年でだよ。
泣けてくるなあ。

映画の中身とは関係ないが、田宮二郎が出ずっぱりでどう見ても
田宮がトップクレジットになってしかるべきなのに、映画のクレジットでは
若尾文子がトップで田宮は助演扱いなのだよ。
後の田宮が大映退社のきっかけになった「不信のとき」(68)のときも
若尾文子との共演作だったから、浅からぬ縁ですね。


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荒野の用心棒


日時 2002年12月8日
場所 レンタルビデオ
監督 セルジオ・レオーネ(ボブ・ロバートソン)
製作 1964年

(詳しい内容はキネ旬データベースで)


黒澤の「用心棒」の西部劇による再映画化。
もっとも「荒野の七人」と違って映画化権を獲得せずに
無断でリメイクしたようだ。
東宝は訴えでて当然勝訴したという話。

ニューメキシコのある村に流れ者(クリント・イーストウッド)がやってくる。
村の対立するボスたちを戦わせ無法者は滅びる。
流れ者、イーストウッドは去っていく。

話はほとんど黒澤版と同じ。
絹問屋(藤原釜足)と造り酒屋(志村喬)のキャラクターがいなくなった分、
上映時間も短くなってるが、まあ大差ない。

じゃ映画の印象は同じかというとこれが全く違う。
イーストウッドはひたすら渋い。
照明も陰影をつけたやや暗めの使い方でカッコよさを引き立てている。
笑いのシーンなどありゃしない。
登場人物もそれほど印象に残るキャラクターがなく、映画全体の魅力も
ちょっと落ちる。
やっぱりこういう映画では悪役が目立ってないと主役が引き立たないからなあ。

でもラストの対決では黒澤版はイマイチだったけど、
撃たれても撃たれてもイーストウッドが不気味に立ち上がり、
こちらの映画のほうが黒澤に比べて勝ち!

主題曲も有名なメロディで、映画を観た事がなくても絶対に一度は
効いた事があるはず。

マカロニウエスタンというイタリア製西部劇という新しいジャンルを
生み出した事といい、それなりの作品であることは間違いないでしょうね。
僕自身が西部劇自体に興味がない人なので、僕の中での評価はそれほどでも
ないですが。


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用心棒

 
日時 2002年12月8日
場所 レンタルビデオ
監督 黒澤明
製作 1961年(昭和36年)

(詳しい内容はキネ旬データベースで)


この映画は数回観ている。
黒澤映画の中でもベスト3の人気作品だが
僕は「椿三十郎」のほうが好きだ。
でも巷では人気が高く、以前はニューヨークからの
帰りのJALの中でも観た事がある。

今回ちょっと事情があって見直したんだけど、この映画の面白さは
アクション映画としての面白さよりコメディとしての
面白さが僕には印象に残る。

なってたってキャラクターが際立ってるもん。
主人公の三十郎(三船敏郎)より脇役が面白い位だ。

仲代達矢は首にスカーフを巻きつけてリボルバーの拳銃持ってるし、
加東大介は歯が2、3本欠けてて頭は足りないが暴れん坊って
すごいキャラだし、身長2メートルはあるような侍(羅生門)がいたり、
沢村いき雄の十手持ちは米つきバッタのようにお辞儀ばかりしてるし、
西村晃と加藤武の与太者も加東大介に負けないコメディキャラだし、
用心棒の本間先生(藤田進)はいざ喧嘩になると逃げ出してしまう。

(この藤田進が逃げ出すところで、逃げるところを見つけられた
三十郎に、藤田進がひょいっと手を上げて悪びれもせず挨拶するところが
最高におかしい)

この他にも腫れ上がった顔をして棺おけに入れられて墓場に逃げてきた時、
東野英治郎が「おめえ生きてるようには見えねえぜ。(三十郎がにやっと笑って)
よせやい、笑うとなお恐ぇや」と言った時など私は爆笑物だった。
ここでは省略するが爆笑物のカットやセリフは無数にあるのだ。
黒澤は純粋なコメディは1本も撮らなかったが、喜劇作家としての資質は
充分にあったと思う。

そして最後の念仏堂で三十郎が包丁を投げて落ち葉に命中させるところ。
このカットはすごい。思わず「どうやって撮影したの?」と言いたくなる。
あれはスタッフの一人が練習して実際にできるようになったという話を聞いた
ことがあるのだが、ホントだとしたらすごい技だ。

でもラストの仲代との対決が惜しいのだなあ。
仲代がリボルバーを撃とうとして三十郎が包丁を投げる、
当然次には仲代の腕に包丁が突き刺さるカットがあるべきはずなのだが、
実際にはすでに突き刺さってるカットになるのだよ。
ここ、惜しいなあ。
「蜘蛛巣城」で三船の首に矢が刺さるカットをとった黒澤なのに
何でこういう中途半端なカットになったのだろう。

対決が終って去り際に十手持ちの半助を三十郎は「おい」と呼びつける。
「ヘイ」と相変わらずの米つきバッタに一言、
「おめえは首でもくくんな」

最後までギャグが効いている。
黒澤映画の中では最強のコメディだと思う。



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AIKI


日時 2002年12月7日18:45〜
場所 テアトル新宿
監督 天願大介

(公式HPへ)


ボクサーとして順調に伸びていた芦原太一(加藤晴彦)だったが
ある日交通事故で下半身不随になり一生車椅子の生活を
強いられる事になる。
はじめはその悲劇を受け入れられずに荒れた日々を送る芦原だったが
同じく下半身不随の常滑(火野正平)、テキ屋の親分権水(桑名正博)
サマ子(ともさかりえ)らとの出会い、そして合気柔術と出会うことにより
次第に生きる勇気を取り戻していく。

とんでもない名作が誕生した!
昨年の「回路」ではパッとしなかった加藤晴彦だが、
この作品で「主演男優賞間違いなし!」の名演を見せる。
誤解を恐れず言うならば、車椅子に座っている姿が
これほどカッコよい俳優がかつていただろうか?!!

障害者もののご都合主義の映画と思ってはいけない。
この映画では車椅子は手段であって目的ではない。
再起不能の挫折をした男が再び立ち上がる敗者復活戦を描いた物語だ。
車椅子に限らず、人は皆挫折を経験する事はある。
しかしどんな逆境に追い込まれようとも再び立ち上がる方法は
あるはずだ。
そんな気分にさせてくれる。

合気柔術に出会うまでの荒れた加藤晴彦がまずいい。
不機嫌そうにタバコをくわえた姿が妙に決まっている。
そして火野正平の熱くならずに「あと1年生きてみろよ。
それでも面白い事なかったら俺は止めはしない」という教え諭す
カッコよさ。
合気柔術の師匠、石橋凌の笑顔と迫力の2面性の素晴らしさ。
そして桑名正博の男気。

いやいや素晴らしいのはそれだけではない。
ともさかりえとの恋愛があり、勃起不全に陥ってセックスが出来た時の
感動がある。トイレや酒の日常生活がある。
そして何より憎たらしい悪役を最後に倒すアクション映画としての
爽快感がある。

この映画は障害者の映画ではない
恋愛映画でもない
格闘技の映画でもない
勧善懲悪の映画でもない
それらすべての要素をもった、
つまり映画とはこういう作品を「映画」を言うのだ!


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吸血髑髏船


日時 2002年12月7日
場所 TSUTAYAレンタル
監督 松野宏軌
製作 1968年(昭和43年)

(詳しい内容はキネ旬データベースで)


金塊を積んだある貨物船は一部の乗組員によって
占拠され金塊は奪われる。
犯人たち(金子信雄、内田朝雄、小池朝雄ら)によって船医(西村晃)
やその新妻(松岡きっこ)をはじめとする乗組員全員が
射殺された。
3年後、伊豆あたりの海辺の町に松岡きっこ(二役)は
岡田真澄の牧師とともに暮らしていた。
ある日海に漂流していた例の貨物船を発見し、松岡きっこは
航海日誌などから双子の姉(松岡きっこ)が金子信雄らに殺されたことを知る。
次々と犯人たちを殺す松岡きっこ。
海外逃亡したと思われた犯人の親玉は誰か?!!


「吸血髑髏船」っていうから海に漂う幽霊船が船を襲う話かと
思ったらそうではなく、怪奇復讐ドラマ。
目鼻立ちのはっきりした日本人離れした顔立ちの
松岡きっこが主演でと日本の怪談風ではなく、
洋画のB級ホラー物みたい。
ネタバレで書いちゃうけど犯人の親玉ってのが実は
岡田真澄なのですよ。
顔半分に火傷をおってなぜか禿頭で後半活躍するところは
ますます洋物B級ホラーです。

金子信雄が奪った金でキャバレーのオーナーになって成功してるんだが
半裸の女性が踊るところがあったり、松岡きっこも岡田真澄に
脱がされておっぱいポロリシーンもあったりで、B級ホラーにエロまで
加わるサービス付。

あとは博打でスッテンテンになって切れかけた内田朝雄の怪演もいい。
でもそれ以上なのは、最初に死んでしまって変だなあと思っていた
西村晃が最後にマッドサイエンティストとして登場。
白塗りメークでこの登場シーンは爆笑しました。
いや決して嘲笑してるのではなく、「待ってました!晃ちゃん!!」
と一声かけたくなるような絶賛の笑いなのだが。

西村晃のマッドサイエンティストが開発した強酸の薬品で金子信雄や
岡田真澄が死んでいき、最後は船も溶け落ちていくのだが、
どうせなら西村晃や松岡きっこの怨霊は世界にも向けられるというわけで
その強酸で世界中が溶け出すというところまで踏み込んでもよかったと思う。


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ザ・リング


日時 2002年12月1日18:50〜
場所 新宿武蔵野館
監督 ゴア・ヴァービンスキー

(公式HPへ)


あるハイティーンの女の子が心臓発作で死亡する。
彼女はものすごい形相で死んでいた。
彼女の叔母レイチェルはジャーナリストで彼女の死の真相を
探ろうとする。葬式の席で彼女の同級生から
ある噂を聞く。「彼女は『それを見たら1週間で死ぬ』という
ビデオを見たから死んだのだ」
そのビデオを見たらしい山小屋に行って見る。
そこでレイチェルは奇妙なビデオを発見する。


いやいやこの映画を見終わって出てきた一言は
「死んだ人間より生きてる人間の方が恐い」。

言わずと知れた日本のヒットホラー映画「リング」のアメリカ・
リメーク版だが、僕は日本版の方は見ていない。
ホラーが苦手だし、日本版の公開がちょうど映画から遠ざかっていた
時期だったもので。

だから内容も全く知らなかったのだが、てっきりビデオを
見た人が次々に異常な死に方をし、その死に方の恐さを見せる
(例えばビルから落ちるとか交通事故で悲惨な死に方をするとか)
スプラッター系の作品だと僕は思っていたのですよ。
でも実際は「このビデオは一体なんだ??」というミステリー風な
作品だったのですね。だから予想していたより面白かった。

「本当に怪奇なものは死人の怨霊ではなく、生きてる人の心」という
モチーフが最後に出るのだが、「ビデオを見たものが死ぬ」という現代性との
このモチーフの組み合わせは(ミステリー手法の作劇といい)円谷のTVドラマ
「怪奇大作戦」を思い出した。

日本版「リング」は見ていなかったのですが、このアメリカ版を見て
見比べて見たくなりました。
でも主演が松島菜々子と真田広之だって?
この二人ではちょっと心配だな。


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