NHK土曜ドラマ「人生はフルコース」

日時 2006年7月8日(土)〜7月22日21:00〜21:58
製作 NHK総合

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<作品紹介>
帝国ホテル総料理長の村上信夫氏の半生をドラマ化。
ドラマではホテル名は「天鴎ホテル」主人公の名前は「牧村信太郎」と変更されている。
主人公の牧村信太郎は高嶋政伸が演じた。
塩田くんは牧村の部下の新人コックとして2話3話に登場。

<あらすじ>
第1話「鉄鍋とレシピとパイナップル」(7月8日放送)
昭和14年、牧村信太郎(高嶋政伸)はあこがれの「天鴎ホテル」のコックになった。
しかし毎日が鍋洗いと先輩からのシゴキの日々。
レシピは「自分で作るもの」と言って先輩達は何も教えてくれない。
しかし毎日鉄鍋を真剣に洗う姿先輩達もいつしか信太郎を認めるようになる。
しかし、彼もついに戦争へ。そこで彼は死にかけた戦友が「パイナップルが食べたい」
というのを聞き、りんごをパイナップル風に調理して食べさせる。戦友は力を取り戻した。
シベリア抑留の後、やっと日本に帰った信太郎。再び「天鴎ホテル」で頑張り出すのだった。
こうした信太郎の回想と、現代の「天鴎ホテル」で働く若いコック高橋修司(松原敏伸)の仕事への
迷いの日々が並行して描かれる。

第2話「留学とバイキングとハンバーグ」(7月15日放送)
昭和29年、信太郎はフランス留学を命じられる。
持ち前の努力でフランスのコック達からも認められる信太郎。帰国した信太郎は
「天鴎ホテル」の新館料理長に命じられる。しかしその序列を飛び越した人事は先輩
シェフたちから反感を買い、誰もついてきてくれない。
そんな中、新館レストランでは「スモーガスボード」という一定の料金で食べ放題のスタイルを
行うことになるが日本人の口にあうメニューがなかなかうまく出来上らない。
そんな中、信太郎は若手のコック小川(塩田貞治)に相談するがなかなかいい方法が
見つからない。
相談された小川は「役に立たなくて申し訳ない」と恐縮するばかり。
信太郎は小川に妻が近所の人から貰った映画館の招待券を渡した。
数日後、社内公募した新館のレストランの名前が決定した。
それはあの小川が提案した「バイキング」というものだった。
信太郎から貰ったチケットで見た映画、それはカーク・ダグラス主演の「バイキング」、
「映画の中で食べ放題のシーンがあったのでそれをつけてみた」という。
小川は「僕、自信を失ってここを止めて北海道の実家に帰ろうかと思ってました。
でも僕辞めません!だって自分が名前をつけたレストランがこのホテルにはあるんですから!」

バイキングは大成功。
そして信太郎は今度はNHKの「今日の料理」という番組で講師をするようになる。
はじめは乗り気でなかった信太郎だが、視聴者の感謝の手紙を読むうちに考えが変わり、
新しいやる気が出てくるのだった。

第3話「真心と工夫と愛情」(7月22日放送)
牧村は東京オリンピックの料理長に任命される。大量の食材を確保するためには冷凍保存が必要。
その研究に余念がない準備の日々だったが、フランス側から日本の料理レベルに不安の声が
寄せられる。牧村は関係者に試食会を開いて納得してもらうが、いざ大会が始まるとフランス選手から
不満の声が。特に地方からやってきたコックの園田は悩んだ。
そんな園田を「あんまり気にしないでください」と励ます小川。
小川は他のコックの作ったフライドポテトの味をチェックするなど成長し、いまや牧村の片腕に
なっている。

フランスの選手団からは代わりのコックを本国から連れてきたいという要望が。明後日までに
味の改善がなければ厨房は渡さなければならない。
コック達にステーキの焼き加減の指導をしなおし、改善されたはずだが、フランス選手はまだ納得しない。
落ち込むみんなを励まそうと牧村は園田宛に送られてきたスルメを肴に小川をはじめみんなでビール
を飲んで労をねぎらう。

牧村はスポーツ選手は汗をかくから塩分を多めにしなければダメだ、と気づく。
いよいよやってくるフランスのコック達。
小川も厨房の奥にいる牧村に「来ました」と知らせる。
いよいよ審判の時!しかしフランス選手達は塩分の濃くしたステーキの味付けに納得してくれた。
そしてオリンピックも終わる
小川たちコック達は牧村を胴上げしてその指導に対して感謝をささげるのだった。
牧村はやがて総料理長に。そして後輩を育て自分も新しい総料理長を育て上げる。
そして結婚と仕事のことで悩んでいた高橋修司に「何より大切な人を喜ばせてあげなさい」とアドバイス
する。高橋は退職して彼女の地元熊本でレストランを開く決意をする。
牧村はお客様がおいしいといって喜んでくれる顔を見て、何よりの満足を憶えるのだった。
(終わり)

<感想>
「料理は食べてもらう人を喜ばそうという心が何より大切」というテーマの良心的なお話。
NHKの朝の連ドラになりそうな一代記もの。しかし3話で描くには勿体ない題材。
新人時代、戦争中、パリ留学、「今日の料理」出演、東京オリンピックの料理長などかなり駆け足で
語る形になり、はしょった印象は免れない。
それぞれのパートで2時間ドラマになりそうな印象ボリュームなのだが。

また2話3話で過去の料理を作る少年、現代で娘にスケートを習わせる母親(萩尾みどり)のエピソードが
時折挿入され、ドラマを混乱させる。
しかしこれが大いなる伏線で、少年は長じて現代篇での総料理長(佐藤B作)になり、スケートを娘に習わせる
母親は実は総料理長が少年時代の初恋の相手で彼女を喜ばせるために料理を作るはじめたと明かされる。
この結びつきには「あっ」と言ってしまった。
数十年後の二人がお互い気づかずにホテルのレストランですれ違うシーンは印象的。

また高嶋政伸の現代シーンでの老人メイクは単なるメイクの域を超えて特殊メイクの領域になっていた。
少し違和感があった。
全体的にはNHKらしい愛情あふれるドラマだが、少し回数が少ないのがもったいなかった。


<塩田くんの活躍>
塩田くんはこのドラマでは第2話から登場。
新人コックとして先輩からいじめられているシーンで登場。それはかつての信太郎のようだ。
料理長から話しかけられ恐縮ばかりしていることが多い。
そりゃ鍋洗いの新人コックからしてみれば料理長なんてものすごく偉い人だろうから、料理長から
話しかけられ緊張しまくっている姿がいじらしい。
その後のレストランの名前が「バイキング」に決まったことを報告するシーンでは緊張のあまり
口が回らなくなっている。
主にこの2シーンが活躍場面。時間にすれば短いが、新レストランの名前を決めるというドラマ中
重要なポジションの役柄。

また3話では物語は2話から数年後なので塩田くんももう新人ではない。
牧村と共にオリンピック選手村の厨房に配属され、各地からやってきたコック達を指導し、牧村を
補佐する役柄。
しかしエピソードの中心は地方のコック園田さん(金山一彦)に奪われ、印象が薄くなってしまったのは
否めない。
ファンとしては実に残念だった。



(06年7月18日更新)
(06年7月23日3話紹介、全体の感想、3話での塩田くんの活躍についての記述を更新)
(06年8月6日公式HPの項目を追加)