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検察側の証人(後編)

杉戸を待っていたのは、いかにも水商売風のケバケバしい化粧をした
女だった。
彼女が差し出したのは手紙。
それも葉子がある男に送った手紙だった。
これで裁判は勝てる!そう確信した杉戸だったが、肝心の女は
手紙を渡し、金を受け取るとさっさと何処かへ消えてしまった。

裁判はいよいよ大詰め。
杉戸は今度は弁護側の証人として葉子を再尋問する。
手に入れた手紙を読み上げる杉戸。
「明へ
重大事態発生です。それもいい事件です。
努が殺人犯の容疑者となりました。しかも彼の無実を証明できるのは
私のアリバイ証言だけなんです。もし努の帰宅時間を遅く証言したら・・・・
彼は間違いなく殺人犯として有罪になります。
そしたらあなたのとの結婚も夢じゃなくなります。その日がくるのはもうすぐです。
楽しみです」

葉子は仕方なくその手紙の存在を認め、彼女の先の証言の信憑性は崩れ去った。

いよいよ判決。
「被告人、岩尾努は無罪」
葉子の最初の証言は採用されず、真犯人不明のまま岩尾努は無罪となった。


誰もいなくなった法廷で対峙する杉戸と葉子。

「残念だったね。努を有罪に出来なくて。そして君は偽証罪に問われるだろう」

「残念?私の目的は彼を無罪にする事ですよ。たとえ偽証罪に問われようとも
 努が無罪になれば充分です」
「?」
「解りませんか、私の意図が?もし最初の証言で彼が9時半に帰ったと証言すれば
 その証言は採用されたでしょうか?『あの女は努を愛している。それならば
 彼を無罪にするために有利な偽証をする恐れがある』こう考えられて
 無視されるに決まってます」
「それで最初は彼のアリバイを否定したのか!!!じゃ手紙を渡したあの女は・・・君?」
「その通り、今ごろ気づいたのですね。もっとも私も必死でしたから」
「だから君は亭主にウソをついて他の男と交際を重ねる悪い女を演じたのか!」
「『そんな悪い女の証言なんて当てにならない』こう裁判官が考えてくれれば
 10時に帰ったという証言はウソになり、努は9時半に帰ったと思ってくれるでしょう」
「じゃあ、被害者佐田京子さんを殺害したのは・・・・・」
「もちろん財産目当てに努が殺しました。一旦無罪になったらもう同じ事件で
 罪に問われることはないんでしょう?」
座り込む杉戸。

そこへ努が若い女性と腕を組んでやってくる。
努「杉戸先生、本当にありがとうございました。おかげで助かりました。
  (葉子に)おまえの最初の証言のおかげで一時はどうなるかと思ったけど、
  おかげで助かったよ。おまえもほかに男作るなんてなかなかやってるんだねえ。
  さすがは水商売上がりは違うよなあ」

葉子「努、あの手紙はウソよ。あの手紙はあなたを無罪にするための作り物なの。
   それより、その若い女性はだれ?」

努「彼女はねえ。ま、いっか言っても。この娘は僕のいま一番のハニーだよ。
  今度の事件が終ったらおまえとは別れるつもりだったんだ。なってたって1億円の
  金が入ったんだぜ。これからはこの娘と楽しく暮らすよ。おまえみたいなオバハン
  とはいつかは別れるつもりだったんだ」

驚く葉子。
「あなたのことを本当に愛していたのに。殺人容疑から救ったのは私なのよ」
努「昔、場末のキャバレー暮らしから救ってやったじゃないか。人生お互い様だよ。
 さ、行こう。先生、改めて弁護料をお支払いにうかがいます」
と若い娘を連れ立って帰ろうとする努。

カバンからナイフを取り出す葉子。
そのナイフで努を刺す!
息絶える努。
裁判所の係官が悲鳴を聞きつけ駆けつける。
連行される葉子。

「今度は葉子の弁護をする。その手続きをはじめるぞ!」
杉戸は傍らの助手にそう宣言した。




(03/03/21更新)

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