ネバーランド〜総論

「ネバーランド〜各論」へ

2001年7月6日〜9月14日 毎週金曜日21:00〜21:54
TBS系 全11回
出演 三宅健、今井翼、生田斗真、村上信吾、田中聖、野際陽子、高島礼子、山田麻衣子

公式HP http://www.tbs.co.jp/neverland2001/index-j.html


<その原作>

話には聞いていたが、原作とTVドラマではかなり違っている。

まず第一に夏休みではなく、冬休みの12月24日の午後から1月1日の
元旦の朝までの物語だ。

舞台もほとんど松籟館の中で、途中2、3度スーパーに買い物に行く程度。
登場人物も限られていて、美国、光浩、寛治、統の4人がほとんど。
彼らの性格付けも違っていて、彼らはタバコを吸い、ほとんど毎晩酒を飲んでいる。
(考えて見ればその方が自然なのだが)

また寛治は東京出身、光浩は博多出身とされ、統のちょこまかさは
天才にありがちな変人ぶりに近いものがあるとされ、生田斗真が演じたように
(彼の責任ではないが)ただのお調子ものではない。

その他の人物について書くと庄司先生はちらっと見回りに来るだけ、
(それも学年主任の庄司と書かれ、男か女かもはっきりしない)
美国の妹も「妹がいる」と話に出てくるだけ。
あれだけ登場した但馬もドラマの1話にあった電話をかけてくるシーンのみ。
岩槻もすでに死んでいて、彼らの記憶にのみ登場し、高木に至っては
「岩槻、高木さんのお稚児さんって噂があったよね」という部分だけ。

光浩の母も彼らの目撃談に登場し、「どうみても50は過ぎていた」と
表現され、高嶋礼子とは似ても似つかない。
(私はなんだか野村沙知代を連想した)


話のほうも統の母親殺しの話など第1章から出てくるが、天井につるされた
人形の犯人は最後の方まで明かされていない。

人形の話に代表されるように「あの時の相手の気持ちはなんだったのか」という
ような心理ミステリーともいうべき物語なのだ。
彼らはその答えを1週間の共同生活の中で見つけることにより
心の呪縛から解き放たれていく。
誰も解きほぐせないと諦めかけた、また触れなければよかったと後悔した
光浩の母との問題までも、母の死の連絡を受け取る事により、
彼の心は解き放たれる。

「俺たちは仲間だよな」というようなありきたりなセリフを前面に押し出される事まく
彼らはお互いを必要とするほどの心の絆を持つようになる。
最後の統の元旦の○○○(ここはネタバレになるので伏せる)
によってそのことは再確認されるのだ。

はっきり言って映像化はしづらい物語だ。
もちろん小説としては面白い。一読の価値はある。


<その失敗>

おそらくはTBSに「夏のドラマは今井翼とJr主演で」というのが
最初からあったのだろう。
必要ならデビュー組から誰かということも。
で企画は、「最近売れている恩田陸でということで」と
話は進んでいったのではないか。

だがここで決定的な変更が強いられた。
放送時(撮影時)にあわせ冬から夏に設定を変更しなければならないし、
そしてせいぜい2時間の映画にしかならないボリュームの話を
1クール11話に引き伸ばさなければならなかった。

そのために登場人物を増やさざるをえなかった。
岩槻や光浩の母や但馬紘子も登場させた。
閉塞的な状況下における少年たちの心の葛藤の物語なのに
但馬紘子をはじめとする女性たちが多く登場することにより、
ありきたりな青春ドラマになってしまった。

但馬紘子はちょこちょこ登場し、美国の妹は引っ掻き回す、
光浩の母も20歳は設定が若くなり、しかも美人な高島礼子が
顔を出すという、まあ焦点の定まらないドラマになってしまった。

考えてみれば光浩の母への憎悪も、彼女が50過ぎのオバサンだからこそ
説得力のある設定なのだ。
もっとも50過ぎのオバサンではTV的に画がグロテスクでやりづらかったろう。

このように「少年たちの一冬の心の葛藤」という原作のドラマと、
「真夏の恋と青春」というかなり味の違うドラマを融合させたため、
どっちつかずのドラマになり脚本が破綻してしまった。
シナリオライターも原作とTBSの意向の板ばさみで
さぞやりにくかったろう。

ドラマ「ネバーランド」は、はっきり言って失敗だ。
もともと1クールのTVドラマには向かない話だ。
作品の質より、出演者のスケジュール、局の番組編成を優先させたため
失敗作になったドラマのいい例だ。
強いて言えば第10話の三宅健のみ記憶に残るエピソードになった。

私は原作の元旦の統の○○○というエンディングが気に入ったので
それが出てこなかったのも残念。

翼や健の好演があっただけに惜しい作品となった。
これほどの豪華共演もうないだろうになあ。本当に残念。


<追記>
その恩田陸さんに作詞していただいた「出せない手紙」が「有線一位」などHIT中なのがうれしい。
曲自体、今までのV6の曲とは違うバラード系の名曲。
この曲のHITは恩田氏の力によるところが大だし、第10話とともにV6にとっても非常にプラスになった。
大事な原作を、あのように改悪されてしまったにも関わらず作詞していただいた恩田氏に、
感謝したい。