ロックよ静かに流れよ

日時 2001年3月18日

初公開時に劇場で見て以来、10数年ぶりにビデオで再見した。
記憶していたより名作だった。
多分、公開当時は自分がまだ青春時代から抜けきっておらず、
登場人物たちの厚い友情と青春に嫉妬してしまい、客観的に
評価できなかったのだろう。
それに岡本健一の美少年さに惚れていた私にとっては、それが
生かされきっておらず不満だったのだ。

東京から松本に転校した片岡俊介(岡本健一)。
最初は喧嘩したが、ロックバンド「クライム」のファンだという縁で
ミネさ(成田昭次)や、いつもけんか腰のトンダ(高橋一也)、
トモ(前田耕陽)と友達になる。
東京に遊びに行った時に「クライム」のライブを見て
俺達もバンドをやろうと決意する。
楽器を買う資金のためにバイトする彼らだったが、自分達の
気持ちをぶつけて書いた懸賞論文が入選、その賞金でやっと楽器を
買うことが出来た。
バンドの名前は「ミッドナイトエンジェル」。
初コンサート目指し練習する彼らだったが、ミネさがバイク事故で
死んでしまう。
残された3人はミネさの追悼コンサートを行う。
コンサートは成功に終った。
ミネさが死んだ後の彼の誕生日。
3人はミネさの誕生日を祝い、ケーキに火をつけ、ミネさの代わりに
それぞれがローソクの火を一本ずつ消していく。
そして最後の一本は3人でいっしょに火を消した・・・・・


岡本が東京を離れ、松本にやってくるところからこの映画は始まる。
物語の視点が岡本で始まるため、映画の主人公はトップクレジットにもなっている
岡本のようだが、実は一番いい役は成田ふんするミネさなのだ。
(だから以前見たときは無意識に不満だったのだ!)

タバコを吸い、ウイスキーを万引きする不良のミネさだが、彼にはハムスターを
始終かわいがっている優しさがある。
前半の見せ場としてレコード(CDではない)の万引きの濡れ衣を着せられた
女子高生を救う場面がある。ここでわれわれはミネさの正義感を知り、
彼の魅力のとりこになる。
(その後、夕焼けをバックに河原でレコードを投げるシーンが美しい)
また懸賞論文をまとめるのもミネさだ。
この映画はミネさの魅力にあふれている。
だからこそわれわれは「ミッドナイトエンジェル」の5人目の
メンバーとなり、彼らを応援するのだ。

またこの映画は驚くほど女っ気が無く、青春映画にありがちな恋愛話が
ほとんど登場しない。
(レコード万引きの時の女子高生が、ミネさに好意を見せるシーンがあるが
ホンの一瞬で全体としては印象が薄い)
だからこそ4人の友情がいっそう引き立って見える。

彼らには様々な壁が立ちはだかる。
それはロックや自分達に無理解な大人たちであったり、楽器を買う金が無い事
だったり、成績が落ちた事でバンドを辞めさせようとする親であったりする。
もちろん映画的に見ると小さな障害でしかないのだが、彼らにとっては大問題なのだ。
しかしわれわれ自身の現実もこうではなかったか?
地方都市に育ち、ここではない何処かへあこがれていた。
われわれが青春期に立ちはだかった壁も彼らと似たようなものであった。

だからこそ現実にありがちな等身大の青春映画なのだ!!

映画の彼らは弁当屋の店長(渡辺正行)、新聞記者(寺尾聡)懸賞論文の選考者
(画面には登場しない)など、運良く自分達を理解する大人達にめぐまれた。
しかし現実はまだまだ彼らに立ちはだかる。
ミネさの追悼コンサートを成功させた後、彼らの溜まり場だった廃車置場も
取り壊されてしまう。ミネさ達との思い出の場所すらなくなってしまう。
(廃車置場の取り壊しを見る岡本の表情がいい)
でも彼らは自分達の友情を守ろうとする。死者の誕生日を行うという事によって。

いつまでも子供じみた友情にこだわっている連中だと彼らを批判する事は可能だ。
しかしミネさを忘れる事が大人になる事なのだろうか?
それは単に現実からの逃避でしかない。
現実に立ち向かう事を忘れ、妥協する事ばかり憶えた大人にとっては、
彼らがうらやましく、かつ、自分自身が妥協しなかった時代を懐かしく
思い出すのである。

映画としての派手さは無いが、だからこそ等身大の青春映画といえるいい映画だ。


男闘呼組の面々だが、初主演映画として演技に力が入りすぎている感じがする。
しかしその中で淡々とした表情の成田が一番いい。
もともと役者指向が少ない彼だけに、他のメンバーと違って肩に力が入りすぎ
無かったのだろうか?
現在の成田はINORGANICを活動の拠点とし、役者活動は無いようだが、
ピンポイント的でいいからまた役者の活動をしてもらいたいなと思う。

でも本当はこれを言ったらお終いのなのだが、実は男闘呼組の面々は映画の
内容に比べて美少年すぎた。このあたりがこの映画のマイナス要因
となって全体の評価を下げてしまってるのが残念。



関係ないがもしV6でこの映画を映画化したらどうなるか?
 
 俊介=岡本健一=三宅健
 ミネさ=成田昭次=森田剛
 トンダ=高橋一也=岡田准一(デコつながりではない!)
 トモ=前田耕陽=井ノ原快彦

 新聞記者=寺尾聡=長野博
 弁当屋店長=渡辺正行=坂本昌行(マサユキつながりというわけではない)

こんなとこだと思いますが、皆さんはいかがでしょう?