2001年1月

卒業試験 レッドプラネット
13DAYS バトルロワイヤル

卒業試験

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日時 2001年1月27日
場所 TSUTAYAレンタル

シルビア・クリステルである。
「エマニエル夫人」が公開されたころ、僕はまだ小学生だったけど
この映画の事はよく憶えている。
もちろん観てるわけじゃない。
場末のポルノ映画館ではなく、一流ロードショー館でポルノもどきが
公開されたのだ。
小学生とはいえ、このころから一人で映画を見ることもあったと思うから
予告編を観るたびに無茶苦茶に刺激的だった。
「エマニエル」についてはいつか語るとして、今回はこの「卒業試験」だ。
この作品は確かシルビア・クリステルが「エマニエル夫人」出演以前に出た作品を、
彼女の人気にあやかって急遽公開された作品だったと思う。
この作品も僕は予告編だけしか当時は見ていなかった。
でも雨のテニスコートでのセックスシーンは予告編を見ただけでも刺激的だった。

で20年間気になってた映画だったのだが、このたびビデオで見た。
一応フランス映画とビデオのパッケージには書いてあったが、セリフは全部ドイツ語でしたね。
ストーリーはポルノもどきというか、もうポルノ映画のような無茶苦茶さである。
主人公の少年が夏休みに母と別居している父の実家に帰省するのだが、
登場人物がみんな変わっている。
父の弟はなにやら怪しげな作曲家でその妻はメイドとレズ関係にあり、
自分のピアノの上で二人のセックスをやらせちゃったり、
行きの列車の中でセクシーな女性を見かけたと思ったら、それが父の愛人だったり
父は主人公の少年が恋してる幼馴染の女の子(シルビア・クリステル)と出来ちゃったり、
もう一人出てきた幼馴染(男)は突然意味も無く湖でボートから落ちて溺死したり、
父の愛人は主人公の少年を誘惑したり、三角四角関係でとにかく無茶苦茶なストーリーだった。
雨のテニスコートのシーンはちゃんと記憶どおりでした

映画そのものは、もちろんたいしたことは無いんだけれど、
シルビア・クリステルという人は、僕自身が無垢だったころに
強烈な刺激を与えてくれた女優として
(もっと突っ込んで言うと僕自身の性体験の思い出として)
生涯忘れられない存在なのだなあ。
映画を観た後、少しの間あのころに戻ったような気がした。

レッドプラネット

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日時 2001年1月20日19:00〜
場所 シネマミラノ

よい評判を聞いたので観にいったら外された。
なんだかドッカで観たようなシーンばっかりだものね。

ベテランの宇宙飛行士って言うのも「ディープインパクト」だし。
第一すぐ死んじゃうじゃねえか!!
途中途中で哲学的なことを言うのかと思ったらそんなことないし。
他の天体に移住のための調査隊って言うのも「ロストインスペース」だし
ロボットの反乱って言うのもよくありがち。
赤い火星の風景もグランドキャニオンロケでもう見飽きたよ。
人間を襲う昆虫もどきとか死体の口からその昆虫が出てくると事か
他の映画でも観たなあ。
ラストのロシアの宇宙船を使って脱出するのも「スペースカーボーイ」
の裏返しだし。
女性の船長は船に残って後方支援にまわってあれじゃ船長を女性にした意味がない
(「エイリアン2」の焼き直し?)
なんだか最近のSF映画の総集編的焼き直し映画でした。

13DAYS

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日時 2001年1月14日19:00〜
場所 新宿ピカデリー2

はっきり言って少々期待はずれだった。
ラストの危機回避シーンが結局話し合いだものね。
画的に盛り上がりにかけるのだよ。
途中、海上封鎖のシーンなど絵的に盛り上がるが
話がまだ続いてしまうのがつらい。
フィクションの近未来SFなら画的に盛り上がるよう
いかようにでも話は作れるし、再構成も出来るが一応ドキュメンタリー的に
事実に忠実に作ろうとしてるから映画としては多少つらい。
このあたりがこの映画の弱さだ。

でも現場のパイロットに大統領補佐官が直接指示を与えるとこなんか
(この映画には描かれないが)軍部としては問題にしたろうな。
どういい逃れしたって迎撃を受けたのは飛行機を見れば明らかなんだし。
このあたりが軍部の反感を買って反ケネディ勢力が例の暗殺事件を起こしたのは
十分想像できる。

バトルロワイヤル

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日時 2001年1月13日19:00〜
場所 新宿ピカデリー3

中学生同士が殺し合いをする映画だ。
原作は知っていたが読まなかった。
梅図かずおの「漂流教室」(子供のころ少し読んで滅茶苦茶怖かった思い出がある)
を思い起こさせ、気持ち悪くて読めなかったのだ。

だが深作欣二が映画化すると知り、映画を見る前から「軍旗はためく下に」のことを
思い出していた。
「仁義なき戦い」以前につくられた戦争責任追及の映画だ。
孤島での殺し合いというに点が「バトルロワイヤル」と「軍旗はためく下に」
を結び付けていた。
深作欣二も岡本喜八と同世代の戦中派である。
見る前からこの映画は戦争映画だと思っていた。

予想どうりの戦争映画であった。いや予想以上であったというべきだ。
殺し合いの凄惨さは岡本喜八の「沖縄決戦」以上のものがある。
「沖縄決戦」はあくまで米軍との戦いが中心だった。
(もちろん集団自決や日本軍と地元民の殺し合いもあったが)
だがこの作品は違う。
さっきまで友達だった友人達が殺しあうのだ。
凄惨さはその数倍である。

そしてまた生徒達の戦いが実に丁寧である。
ほんの数分しか画面に登場しなかった生徒達も
戦いのシーンで個性がはっきり描かれている。
生徒が一人死ぬたびに「何時何分だれだれ死亡。残り何人」
と説明が出る。
このあたりの脇役群像は「仁義なき戦い」をおもいだす。
あの作品も脇役群像であった。時間にして数分しか登場しない
ヤクザたちもその個性がきっちり描かれており、それが作品をより
魅力的にしていた。

特に灯台に立てこもった女の子のシーンが印象に残る。
藤原竜也を殺そうとして、手違いから仲間の一人を
誤って毒殺させてしまう。
一瞬の手違いから仲間の結束は崩れ、殺し合いになってしまう
静と動の切り替わりの呼吸は見事なものだ。
みんなの結束を呼びかける女子二人組のエピソードなど
生徒一人一人のドラマが丁寧だ。

そして本部を攻撃しようとするグループがテキストに
「腹腹時計」を使ってるのが小道具が細かい。
でも正直言って、60年代学生闘争の教科書だった「腹腹時計」
をここでだす意図がよく飲み込めない。
「腹腹時計」は当時、過激派の象徴として敵視された悪役だったはず。
「バトルロワイヤル」ではこのグループは当然善玉の扱いなので、
ちょっと混乱を感じた。


この映画に描かれている殺し合いなど見るものは絵空事
だと感じるかもしれない。
だがかつて国家は国民に人殺しを命じた事があった。
それは戦争だ。
再び戦争を国家が命じてこないとも限らない。
そこに深作の反国家、国家不信の思想が根本にある。
平和ボケした現在の若者に「国家は人殺しを命じる事がある」
というメッセージをたくしたかったに違いない。
その若者に対するもどかしさをあらわしたのがたけしの教師の
ラストのセリフだ。
「人を嫌いになるのにはな、それだけ覚悟がいるんだよ!!」
僕には安易に切れやすくなり、我慢する事が少なくなった
若者に対する渇に聞こえてならない。

しかし、深作は若者に対する希望を捨てていない。
ラストシーン、生きて返った藤原竜也たちが朝の渋谷をかけていく
シーンは次の世代に対する限りない希望だ。
「国家を信じるな。常に国家に立ち向かっていけ」と。

最期になったが、藤原竜也、山本太郎、安藤政信、ビートたけし、
その他の生徒達。みんな実に好演していた。
この作品にかかわった全員にとって「バトルロワイヤル」は
代表作になるに違いない。

小林久三はかつて後期の黒沢明を評してこういった。
「才能には定年がある」
だが深作欣二は定年延長をした。
これを超える作品を若い監督は撮っていない。
実に悔しい。