2001年10月

最 悪 リリィ・シュシュのすべて
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最悪


日時 2001年10月28日
場所 TSUTAYA レンタル
原作 奥田英朗 (講談社刊)
監督 大森一樹

面白かった。
原作はおととし読んで知っていて、最高に面白いクライムノベルだった。
映画化を切望したが無理だろうと思っていた。
こんな面白い小説を映画化すべきなのだが、
日本映画界をなんとなく信用していなかったからだ。

それがBSデジタル放送用のドラマとして制作された。
それも主演は沢田研二、監督は大森一樹と豪華な顔合わせ。
でもそれだけのために高いBSデジタル放送テレビを買うわけにはいかず、
私にとっては幻の作品になるだろうと諦めていた。

ところがビデオ化された。
ビデオレンタル化を知ったときの感動はなかったね。
最近、見る前にここまで期待していた作品はなかったから。

内容は主役が3人いて、町工場の親父を中心に、女子銀行員、チンピラがそれぞれ最悪としか
いいようのない状況に追い込まれ、ついに銀行強盗になってしまうという話だ。
特に町工場の親父は、発注会社から設備投資を薦められ銀行の融資を受けるために必死だが、
近隣住民の騒音問題で無理難題を吹っかけられ、誤って住民代表を怪我させてしまい、
慰謝料200万円を請求され、その上銀行の融資は土壇場になって断られ・・・・と
徐々に不運のスパイラルに陥っていく。

しかし「あちらの悲劇はこちらの喜劇」。
原作はからっとした笑いに充ちていて登場人物たちが追い込まれていく様は
あまりの彼らの運の悪さに読んでいて笑いの連続だった。

これがうまく映像化できるか?
実を言うと少し不安はあったのだ。
主役の3人は私のイメージでは緒形拳、松嶋奈々子、長瀬智也だったのだが、
それが沢田研二とあとは私の知らない人。
男前のジュリーでは似合わない感じがしてその辺がとても不安だったが、
不運に翻弄される小心者の親父を、ジュリーは期待以上に好演している。

あと膨大な原作をまともに映画化したら3時間は越えるだろう。
それをどうまとめるか。
実は原作では銀行強盗にいたるまでが約8割で、逆に強盗してからが少し失速するのだが、
映像化にあたっては沢田研二の工場主を特に話の中心にもってきて、
(あとのふたりはばっさりまとめてある)始まって半分ぐらいのところで銀行強盗になっており、
後半は改編して実にうまくまとめてある。

これから見る方のためにこれ以上の内容は書かないでおこう。

本当に面白かった。
是非皆さんにも見てもらいたい。
「あちらの悲劇はこちらの喜劇」のとおり彼らのどうしようもない悲劇的な状況が
実におかしい。

何度も大笑いした。劇場で見たかった。
劇場用映画ならば迷わず、今年のベストワンだ。

これが劇場用映画として製作、公開されないところが日本映画の「最悪」なところだと
言い切る。
それぐらいすばらしい。



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リリィ・シュシュのすべて


日時 2001年10月27日16:10〜
場所 シネスイッチ銀座
監督 岩井俊二

この映画がお好きな方はここからは読まないでください。
悪口しか書いてませんから。

つらかった。
これほどつらい2時間も久しぶりだ。
早く終らないかと時計ばかり見ていた。
となりの人にはさぞ迷惑な客だったろう。

一言でいってもう映像のセンスが合わないとしか言い様がない。
逆光や自然光を中心で撮り、全体としてフォギーをかけた
あざとい(まさにあざといとしか言い様のない)映像。

コントラストを強調するフィルターを使った(あるいは流行りのデジタル処理?)
空をくっきりと青く撮った画、
夕焼けを強調させたアンバーの強い画。
田園の中でCDウォークマンを聞いてる少年とかの意味ありげな映像。
こうすれば映像が美しく見えるような気がする(そう、気がするだけだ)
映像のオンパレードだ。

FIXでは撮らえず、ハンディカメラで撮ったらしいふわふわと落ち着きのない映像、
また沖縄のシーンのざらついた8oビデオで撮ったような(さも登場人物の旅行記録のような)
映像(この沖縄のシーンはブレアウィッチプロジェクトの時より見ていて気持ち悪くなった)。
あざとい、そうあざといとしか言いようのない腐った映像。

とにかく生理的に受け付けない。

とかくCMや音楽プロモ出身の人は小手先ばかりの技術で映画を撮ろうとするのだ。
15秒、30秒、または数分の音楽プロモと同じ感覚で2時間の映画を撮られたら
たまったもんじゃない。
目が痛くなる。

それと3分に一回は出てくるカタカタと表示されるリリィシュシュのHPの
掲示板の字。
目障り、耳障りなだけだ。

映画の中で語られるいじめ、援助交際(この映画では強制売春)などの問題も
映像にインパクトをつけるための記号、道具でしかない。
これらの問題に対して何の意識もないだろう、岩井俊二には。

映画はこうあるべきだ、小説はこうあるべきだ、音楽はこうあるべきだ、と
表現方法に規定を定める積もりはない。
ただ好き嫌いはいってもいいだろう。
私は岩井俊二の映画は嫌いだ。
好きになれない。

これ以上書いても根拠のない中傷しかしなくなる。
ただこの映画の悪口なら一晩でも話せそうな気がする。


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日時 2001年10月21日 18:45〜 
場所 新宿東映
監督 行定 勲

映画の中盤で主人公、杉原(窪塚洋介)がホテルで彼女に
自分が在日韓国人だと告白する。
この映画でもっとも緊張感のあるシーンだ。

彼女は答える。
「頭じゃわかっているけど、なんだか恐い」

日本人は日本人以外の人間にとにかく慣れていない。
これが例えば小学校のクラスに韓国、もしくは朝鮮の子が
いたりしたら、もっと別の感想を持つのではないか。
(今書いてて気づいたが、日本国籍をもたない子が
日本の小学校に入学できるかは疑問だ)
とにかく日本人は日本人以外の人間に恐れを抱いている。
しかし、その恐れは単に無知からくるものだ。

その無知さのために親の偏見が頭に刷り込まれていく。
これではいつまで経っても問題は解決しない。

映画では杉原と彼女は結局結ばれる。
しかし、彼ら間にある偏見は映画の中で杉原が
「1世、2世がちゃんと解決しとかないからだ」の言葉の通りだ。
映画の中でも在日朝鮮人問題を正面から扱った作品は
なかったのではないか。

あったにしてもバリバリの社会派監督がATGあたりで
悲惨にこの問題を扱っていたろう。

しかし今回は、映画中で何度も「これは僕の恋愛に関する物語だ」
という説明のとおり、杉原の恋愛話が中心だ。
もっともそれだけではないが、そういう身近な、ごく身近な
出来事を主題に据える事により、映画は暗くなりすぎず、
また噛み砕いた内容となった。

この映画を見にくる子はもちろん「窪塚洋介」ファンの女の子が
半分は占めると思うけど、「シュリ」で北朝鮮問題を知ったように
この映画を見ることにより、在日朝鮮人に対する理解が深まるきっかけ事を願う。
切に願う。

何しろ日本人は日本人以外に慣れてないのだから。
日本人以外の人間について知らないことが多いのだから。
私も含めて。


関係ないけど「GO!」って言う別の映画もあるんですよね。
10月の頭まで「GO」と「GO!」が別の映画とは知らなかった。
ほぼ同タイトルの映画が同時に公開されるって初めてじゃないか?
「GO!」の方の劇場には「窪塚洋介さん出演の映画ではありません」
っていいう張り紙がしてあるんだろうか?
絶対、劇場間違える人いると思うけど。

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日時 2001年10月15日19:10〜
場所 新宿オデオン
監督 フランク・オズ

マーロン・ブランド、ロバート・デニーロの豪華共演だ。
もともとロバート・デニーロという人は「ゴッドファーザー」の
続編をやる時に若き日のコルレオーネ役をマーロンブランドが
断ったため、その役に(まだ当時無名だった)抜擢され世に出た人だ。
(確かそうだ)
だから僕の中ではマーロン・ブランドとロバート・デニーロは
因縁のある間柄なのだ。

そのふたりの共演だけど、老けたなあ、ブランド。
その上、すごいお腹。あのお腹。メーク?本物?

お話のほうは昔からある金庫破り物。
この手の話は毎回新手が出てきてホント飽きさせない。

(昔、カークダグラスの金庫破りと若手が組んでどっかの金庫を
破る話があったけどタイトルが思い出せない)

監視カメラの映像を回線を遮断させるだけってのは少し
乱暴な気がしたなあ。
他がきちんとしてるので余計に惜しい。
金庫を開けるやり方が途中に出てきた生ビールのタルが
伏線になるかなと思ったらやっぱりそうだった。
(これ以上はこれからビデオ等でご覧になる方のために伏せる)

あわやと思われたラストだが、やっぱりオチがあった。
少しありきたりな気もするが正統派な、そして「やっぱりこうでなくっちゃ!」
と思わせる結末で私は好き。
計画、準備、実行、逃亡と畳み掛けるテンポで見せ、ホント飽きさせない
映画です。
派手さがない映画だから夏休み興行が終った秋の公開だが、
ビデオなどでみなさんにも見ていただきたい。
お薦めです。

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