2002年2月

暗黒街撃滅命令 暗黒街の弾痕 暗黒街の顔役 暗黒街
助太刀屋助六 地獄の黙示録 WASABI ベン・ハー
100発100中 着ながし奉行 昭和怪盗伝 実録三億円事件

暗黒街撃滅命令


日時 2002年2月23日27:30〜
場所 浅草東宝
監督 福田純
昭和40年作品

ある街で競輪場の売上をつんだ現金輸送車が襲われ、現場に居合わせた
若い女性も目撃者を恐れる犯人のために殺された。
警視庁の刑事(三橋達也)はこの事件の潜入捜査を希望し、
希望が受け入れなければ辞職までも申し出る。
(殺された目撃者が実は三橋の恋人だったと後で明らかになるが)
逃亡犯としてこの街に潜入し、田崎潤の組に雇われるが・・・

三橋達也が敵組織潜入後、ボスの経営するクラブのクロークで
コートを預け、同じコートを着た刑事がやってきて
途中店内で三橋達也と預かりの札を入れ替えてコートを
すり替え、中にある通信文をやり取りするくだりが面白い。

堺左千夫のヤクザに三橋が撃たれるのだが
その時の拳銃が最初に殺された女の子を撃った拳銃と同一だったため、
(めずらしい型だったので見ただけで『そのピストルでは?』と思わせるのだ)
医者による摘出後、弾を三橋がコートに隠し、何とか刑事のコートと交換したため
弾は無事渡ったが、通信文があわや見つかってしまうのでは?
のあたりの盛り上がりがよかった。
クロークの女の子(あとでこれが星由利子だと知った。へー顔、全然違うよ)
が三橋が刑事だと気付いていて、あらかじめ通信文を抜いておいたからよかったけどね。

これで今日のオールナイトはおしまい。
オールナイト5本立てって10数年ぶりだったけど、昼間5本見るより
映画の内容が記憶に残ってないような気がした。
まして内容もキャストも似通った作品だからねえ。
あるシーンがどの映画だったかあやふやなところがあるのです、実は。

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暗黒街の弾痕


日時 2002年2月23日26:10〜
場所 浅草東宝
監督 岡本喜八
昭和36年1月3日封切り

岡本喜八監督の「顔役」「対決」に続くもう一本の暗黒街もの。
山本嘉次郎の「暗黒街」もヤクザ同士の抗争がメインの話だったが、
今回は自動車エンジンの産業スパイ話で少しミステリーっぽくなり
今までと少し趣が違う。

加山雄三の兄はエンジン開発会社のテストドライバーだが(その上司が中谷一郎)
山道のカーブが曲がりきれず事故で死んでしまう。
これを不信に思い、今はトップ屋になった大学時代の同級生(佐藤允)
と組んで事件の真相を追求する。


加山雄三も兄の死の調査だが、こういった作品によくあるような
ハッタリをかませて相手から情報を聞き出す、というような
知恵を使ったシーンはなく、ただ当たって砕けろ式に調査して
単純に敵に乗り込むだけでやや能がない。
三橋達也が刑事役で出演しているが(クレジットの扱いは大きいが)
出番は少なく、あまり印象に残る活躍をしないのが残念。

そんな感じで全体的には「顔役」「対決」に比べると面白みにかけるのだが、
脇役がこまかいところが面白かった。

まず、ミッキー・カーティス。
初期の岡本映画の常連だがいつもより出番が多い。前半はチンピラ役だが
後半、なぜか電気工事屋になり、あるビルの工事現場で社長室に
マイクをつけ、会議室にスピーカーをつける配線をしようとする。
そこへ加山たちがやってきて悪漢と最後の対決をするのだが
彼らがドンパチやってる音がミッキー・カーティスのマイクとスピーカーが
音を拾ってしまい、その音を聞きつけ三橋達也の刑事達が
駆けつけるという展開。

また同じシーンで格闘している工事現場になぜか電話が入り(電話は中谷一郎から
加山宛てのもの)それをミッキーカーティスが取り
「今(加山さんたちは)手が離せないんですが」と答え
「盗まれた設計図はニセモノだから気にしなくていい」という伝言を
スピーカーで伝えるあたりがミッキー・カーティスのオトボケと混ざって面白かった。

そしてそれを聞いた中丸忠雄たちがニセの設計図を包みから出してみると
でっかく「謹賀新年」。正月作品らしいベタなオチですね。

そして草川直也。いつもは後ろの方でチョロチョロしてるだけだが
今回は初めのほうは「まじめな会計係」のフリをして、後半は中丸忠雄と
共に悪役の中心になり、バイクに乗ったり格闘シーンがあったり
いつになくアクティブな役なのがめずらしい。

あとは途中で加山たちを殺そうとが河津清三郎(だったか)がウイスキーに薬をしこんで
おいたが使わなかったのでどうなったかと思っていたら、後にキャバレーの支配人になった
大木庄司がいきなり死んだカットが出てきたので驚いた。
そうか、このウイスキーを飲んだのですね。気付くのに数秒かかりました。

プリントの状態はきれいでした。

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暗黒街の顔役


日時 2002年2月23日22:40〜
場所 浅草東宝
監督 岡本喜八
昭和34年1月15日封切り

山本嘉次郎の「暗黒街」に続き作られた暗黒街もの第2作。

ヤクザの抗争の殺人事件で宝田明は運転手を勤めたが
それを目撃されてしまう。
宝田は新宿のジャズ喫茶で人気が出始めるが人前に顔をさらしたら
いつ目撃者に発見されてしまうかわからないので組織は
兄の鶴田浩二を使ってやめさせようとする。
歌の世界に生きる道を見つけた宝田はこれをきっかけに足を
洗おうとしている。やがて目撃者に見つかってしまう。
組織は宝田明の命も狙い始める。

こんな感じのお話。
途中、スマートヤクザの平田昭彦と鶴田浩二が最近開業した
外人経営の賭博場に乗り込むシーンがあるが、
殴る相手に連続パンチを食らわせるところや、
相手に蹴りを入れるときの画面に迫る足などのカットつなぎのスマートさは
さすが岡本喜八。

途中登場するヤク中のような青い顔をした天本英世が相変わらずの
不気味な殺し屋でたまらない。

また後半になって登場する佐藤允の「殺し屋ゴロー」。
「フェアプレイって主義なもんで」「酒飲むなって言われてるもんで」
というぶっきらぼうな口の利き方ですごませた感じがかっこいい。
「独立愚連隊」の前の作品にあたり、注目すべき俳優だったろう。

三船敏郎がヤクザに利用される自動車工場の親父で出演しているが
役の上では弱いのだが実際は強そうなのでどうも違和感がある。
これが佐田豊あたりの気の弱そうな感じだったら作品としては
よかったのだがなあ。
興行的に三船を出したくて無理やりキャスティングした感じで
似合わない役だった。

作品としては鶴田主演らしいウエットな感じだが(音楽も佐藤勝ではなく
伊福部昭なので余計に)「暗黒街」と「暗黒街の対決」の中間な感じの
橋渡し的作品でした。

(この後「暗黒街の対決」の上映があったが、先日ラピュタで見たので少し休む)

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暗黒街


日時 2002年2月23日21:00〜
場所 浅草東宝
監督 山本嘉次郎
昭和31年作品

浅草東宝で(もちろんオールナイトで)映画を見るのは15年ぶりぐらいだと
思う。最近、ラピュタの円谷英二特集をきっかけにまた古い日本映画に
興味を持ち出したのでこのオールナイトを見た。

1本目、この「暗黒街」
後の岡本喜八の「暗黒街もの」の第1作にあたるわけだが、
ストーリー上のつながりは全くなし。
出演は組長=志村喬、新興幹部=鶴田浩二、古くからの幹部=宮口精ニ
警察の新任捜査主任=三船敏郎の面々。

川崎をモデルとした街ではヤクザの古谷組が仕切っていた。
鶴田浩二は新事業としてマッサージ温泉を企画するが
この事業をきっかけに最近の鶴田の生意気な態度を苦々しく思っていった
古くからの幹部と対立が始める。
組長が人間ドックに入った時に知り合ってお気に入りとなったインターンの子
(女の子)を鶴田浩二が取った取らないの誤解をきっかけに、
ついに幹部らは鶴田浩二を殺しにかかる。
一命を取り留めた鶴田だが、この事件のため古谷組は組長以下逮捕される。

簡単に話を書くとこんな感じだが大して面白い映画ではない。

夜の無人の競輪場で、45度の傾斜のバンクを鶴田浩二が駆け上げって
逃げようとするが、撃たれて転げ落ちるシーンは白黒の画面の
照明がカッコよかったが、映画全体としては昔の日本映画らしい
だら〜〜〜〜〜っとした、テンポない映画で見ていて退屈だった。

三船敏郎が制服をぴっちり着込んだ警官役なのがめずらしい。

監督の山本嘉次郎は戦前からの監督で、「黒澤明の師匠」みたいな呼ばれ方を
する人だがそれほどの作品を作った人ではないなとあらためて思った。


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助太刀屋助六

(公式HPへ)

日時 2002年2月16日19:00〜
場所 有楽町スバル座
監督 岡本喜八

このHPでは岡本監督の新作、「助太刀屋助六」を応援し
宣伝の一環になればとトップページにバナーを貼り付けて
公式HPにリンクさせている。
「いや、別に、その、義を見てせざるは何とかって奴で、いやいや別に
拙者そのような・・・・」という助六の気分でやっていて、
そういう立場からするとこの映画は誉めなければならないのだが、
映画と違って東宝は包んだものをよこしたりはしていない。

だからって訳ではないが、あえて言うけどあんまり面白くないのだ。
テーマはパンフの岡本監督インタビューにあるようにテーマは
「母への思慕」と「幼馴染へのこだわり」。
今回は岡本監督の極私的な思いの映画になってしまった。
言い換えるときわめて自己完結的な映画になってしまっているのだ。
かつての「愚連隊シリーズ」や「肉弾」は自身の戦争体験に
根付いているとはいえ、外に飛び出してくるエネルギーがあった。

しかし、今回はそのエネルギーは外には向かわず、内に向かって
しまった気がする。
また今回は今までと違って比較的カット数が少ない(ワンカットが長い)
ように感じ、テンポがちょっと違う。

第一、主演の真田広之が馴染めない。確かに動きは軽快でよく演じているのだが、
三船敏郎、佐藤允、仲代達矢、小林桂樹というあの時代の俳優あってこその
岡本映画である。
(佐藤、仲代、小林は今回も出演しているが主演ではない)
これらの俳優が主演を離れた今、岡本監督一人ががんばっても
かつての岡本映画と同じ味を持つ映画は出来ないかも知れない。

しかし、もう一度みたい。
監督ももうお歳だが、なんとしても「映画はこうあるべきだ」というエネルギーを
もった映画を、後輩の映画作家のためにももう一度撮っていただきたい。
そのために一人でも多くの人にこの作品を観てもらい、ヒットさせたい。
次回作が作りやすい環境のためにも。




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地獄の黙示録

(公式HPへ)

日時 2002年2月16日14:10〜
場所 新宿プラザ
監督 フランシス・フォード・コッポラ

この映画を見るのは初公開以来だから22年ぶりだ。
初めて見たとき私はまだ童貞だったが、それにしても疑問だった
シーンがあった。
プレイメイトの慰問シーンだ。
別にストリップのように全裸になるわけではなく、あの程度の中途半端なショーでは
兵士達はかえって欲求不満が溜まるだけだろうと思った。
その考えは全く今でも正しかったと思う。

またこの映画は本来そんな難解な映画ではなかったはずだ。
しかし作ってるうちにコッポラ自身が考えすぎて、また上映時間の問題とか
資金の問題とか外的要因に振り回されて、「訳わかんなくなっちゃった」から
難解な作品のようになっただけだ。これはずっと思っていた。

ではコッポラ自身がテーマにしたかった事は何だったか。
それは今回の作品を見るとよく解る。

欺瞞だったのだ。

「戦争では若者に人殺しを教えておいて飛行機の機体にFUCKと書くことを
禁じる。それが下品だという理由で」
同様にプレイメイトの下着姿程度は許すが、それ以上の露出は「下品だ」という
理由であの程度の中途半端なショーをするのが軍隊なのだ。

フランス人の農園のシーンで「アメリカ人は実態の無いもののために戦う」
と言われるけど、アメリカが戦争する時の理由は常に「正義のため」だ。
「アメリカは正義を守るために戦う。平和と正義ある世界を作るための戦争なのだ」
そのウソをあばくのがコッポラの目的だったと思う。

しかし、正直僕にはそれほどの衝撃的なテーマではなかった。
僕ら日本人は昭和20年8月15日以来、戦争というものが
いかに建前しかない欺瞞とウソに充ちたものであるかを知っている(筈だ)。

しかし、日本人がそのような映画を作っても世界的に見れば、敗戦国の
被害者意識、負け犬の遠咆えにしかならないだろう。
そういう「戦争の欺瞞」を自称「世界の警察」「正義の国家」のアメリカが
内部告発的に描く事にこの映画の真価はある。

22年前のアメリカの観客には受け入れがたかったのだろうか?
しかし、その後アメリカにもいろいろあった。
昔ほど世界の警察でもなくなったし、ブッシュ、ゴアの大統領選の開票結果を
めぐるごたごたにより、彼ら自慢の民主主義でさえ、ものすごくあやふや
なものでしかないことが暴露された。

「戦争の欺瞞」、それを告発し気付かせる映画だ。1979年の映画だが
2001年9月11日のテロ事件を発端に新しい戦争が起こってる現在、
今こそ必要とされる映画だ。

それにしてもアメリカはいつから「世界の警察」を自負してきたのだろう?
多くの日本人にとっては「ベトナム戦争」は他人事だったが、そんな日本人が
この映画を理解するには、この辺の歴史認識から始めないと本当に理解できないかも知れない。

蛇足ながらやはり書いておきたい。
キルゴア中佐によるヘリコプターの村の急襲シーン、何度見ても
あまりの迫力に震えがくる。
これからはあのような実写シーンは生まれてこないだろうし、また必要とされないだろう。
あれをCGなんぞではなく、実写でやったところが70年代に達した映画の頂点だといっていい。



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WASABI

(公式HP)

日時 2002年2月11日16:45〜
場所 新宿文化シネマ1
製作・脚本 リュック・ベッソン
監督 ジェラール・クラヴジック

前にも書いたけど、私は日本でロケした外国映画とか
日本人が出演している外国映画がすきなのだ。
内容は二の次で、日本でロケしたとか日本人が出演しているというその事実だけで
観にいく気になる。

この映画を観にいったのも広末涼子が出演し、日本でロケされているからだ。
1時間半の映画なのに、ジャン・レノが19年前に別れた日本の女性が忘れられないとか
何とかでなかなか広末が登場しない。
30分たってやっと登場。

ケバイ格好で登場し、厚底サンダルをはき携帯を片時も話さない
いまどきの「コギャル」で登場。
東京映画祭で渋谷を訪れたリュック・ベッソンには渋谷センター街を
歩くコギャルたちがよほど印象に残ったのだろうか?

広末涼子は今まで「鉄道員(ぽっぽや)」のけなげな娘とか
テレビ「オヤジぃ」の反抗しながら最後は親の跡を継ぐいわゆる「いい子」を
演じる事が多かったように思う。
しかし恋愛スキャンダルでその「いい子」イメージもだいぶ崩れたので
今までの「いい子」の役柄でない広末を見てもさほど違和感がなかったのは事実。

でも日本人の出演者が無名の人ばかりなのが残念。
弁護士とか敵役のタカナワなどは著名な俳優に演じてもらいたかった。

お話の方は謎も意外性もない底の浅い話でそんなには面白くないけど、
アクションシーンで殴られた人が5,6メートルぶっ飛んだり、
デパートで広末を襲おうとする悪漢を広末の後ろでバッタバッタと倒したり、
ゲーセンのシーンでジャン・レノが指先でクルクル拳銃をまわしたり、
ゴルフの打ちっぱなし場でヌンチャクを振り回したり、
最後の銀行のシーンで2丁拳銃を構える悪漢など、随分香港映画っぽかった。
リュックベッソンの映画を始めとするフランスアクションものって最近
全然観てないんで知らなかったが、随分香港映画っぽくなってるんですね。
(ジャン・レノの助手役のミシェル・ミュラーがお決まりのボケ助手で
まあ面白かった)

あとは秋葉原。ここは印象に残る風景だったなあ。
外国人には今の日本を象徴する場所なのでしょうね。

最後にタイトルの由来にもなるわさびをそのままジャンレノが食べるシーン、
僕も新宿の回転すしでわさびを丸ごと食べる外国人(このときは欧米系ではなく
アジア系外国人だったが)を見たが、外国人にはあれが調味料には見えないのだろうか???
ひょっとしてポテトサラダみたいな食感の料理に見えるのかなあ?
よく解りませんけど。

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ベン・ハー


日時 2002年2月10日18:40〜
場所 ル・テアトル銀座
監督 ウイリアム・ワイラー

世紀の名作、あの「ベン・ハー」だ。
実は初めてなんです、きちんと見るのは。
子供のころはテレビの洋画劇場で2年に1回ぐらいは
放映される作品だったので、名前はもちろん知っているし、
また兄がこの手の史劇が大好きで家では話題にはなったりした。
でも僕にとってはこの手の史劇は食指が動かず、
テレビ放映の時も戦車シーンだけ見て寝る、というのが続いていたのだ。

で20歳ぐらいになって「世紀の名作なんだから、一度はちゃんと見なくちゃな」
という気になったころはもうリバイバルされず、劇場で見る機会が
なかったのだ。

で今度のリバイバル上映だ。劇場もミニシアターではなく、
一流劇場なのだから申し分ない。

で感想なんだけど、どうもピンと来ないのだ。
名作であることは間違いないし、それを否定する気持ちは毛頭ないんだけど、
例の戦車シーン以外はやたらに長く、退屈で、さっぱり面白くないのだ。
大河ドラマなら山本薩夫の「戦争と人間」や小林正樹の「人間の條件」の
方がしっくりくる。

多分私にはこういう映画に反応するアンテナがなくて、
円谷英二とかに反応するアンテナしかないんだろうな。
そういう風に考えると人が持ってるのに自分が持ってないものが
あることになり、なんだかとても損をした気になるが、
でもその代わり人が解らないよさを解ったりすることもあるので
おあいこですね。

パンフレットにチャールトンヘストンがプレミア試写会で、昭和天皇が
見にきた話を書いているが、その試写会でフィルムが3度切れたそうな。
「そりゃ大変だったねー」と思ったら次のページでそのときの映写技師
の思い出話が載っている。

でもとにかく一度は劇場で観ておきたい世紀の超大作です。
それは認めます、ハイ。


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100発100中


日時 2002年2月9日19:30〜
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 福田純
脚本 岡本喜八、都筑道夫
昭和40年公開


今度の岡本喜八特集は監督作品以外も上映され、脚本提供ということで
この一本。

007シリーズのヒットによりアメリカでも類似品が製作されたが、
(電撃フリントとかサイレンサーシリーズとか)日本でもやっぱり作られてる。
その一つがこの「100発100中」。
(他には三橋達也の「国際秘密警察シリーズ」とか、市川雷蔵の「陸軍中野学校シリーズ」とか)

香港経由で日本にアンドリュー星野(宝田明)というフランス生まれの日本人が
降り立った。
その他に日本に拳銃を密売する中国人(多々良純)、爆薬の使い手(浜美枝)、
ポケットウイスキーに強酸を仕込んだ殺し屋(平田昭彦)、拳銃の買い手(堺左千夫)
警視庁刑事(有島一郎)などなどの3つ巴、4つ巴の戦いが始まる!
アンドリュー星野の正体は一体?

そんな感じの内容。ラピュタのチラシに元祖「ルパン三世」という書き方がしてあるけど
そういわれるとそんな感じもする作品。
宝田明の軽快な身のこなし、ナイスバディの憎めない美女=浜美枝、ちょっとずっこけだが
見せ場はちゃんとある中年刑事=有島一郎が、それぞれルパン、峰不二子、銭形警部に
見えてくる。

特に最初の方で悪漢に追いかけられた宝田明が階段を降りる時、手すりに
またがって滑り降りたり、後半フィリピンで砂の岸壁を駆け下りるところなど
ルパン三世にもよくみられたような逃げ方、走り方だ。

そして有島一郎は空中でセスナからセスナへ縄梯子で渡るという
離れ業をするのだよ。

もちろん本家007とは違い、かなりコミカルなつくりになっているので
ショーンコネリーなどと比較してはいけない。
でも宝田、浜、有島らのコミカルな戦いのエピソードの積み重ねは
爆笑を誘う。

なお主題歌を布施明が堂々と歌っているのがなんだかすごいです。

でも浜美枝ってこのころの東宝作品にはホントよく出てるなあ。
最近はテレビ、映画で女優としての出演はお見かけしないが
またみてみたいな。
私のとっては日本の女優で一番好きな方です。

そして「国際的なスケール感を持ち、コミカルな味付けのアクションもの」という
ジャンルはテレビにおいて「キイハンター」に受け継がれているのだな、
(本作とは直接関係はないが)と思っていいかも知れない。

今回の阿佐ヶ谷ラピュタでの岡本喜八特集は終了。
このHP上で封切り日、出演者名等のデータは「kihachi フォービートのアルチザン」
(92年、東宝株式会社出版事業室刊)を参考にさせていただきました。
この場を借りてお礼を申し上げます。


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着ながし奉行


日時 2002年2月9日17:45〜
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 岡本喜八
1981年5月1日(金)20:02よりフジ系放映

「昭和怪盗伝」と同じくテレビムービー。
市川崑の「どら平太」と同じ原作をドラマ化。
役所広司が演じた主人公を仲代達矢が演じている。

内容はさほど違いはなく、市川版、岡本版とも娯楽作品として
両方とも一定レベル以上の出来になっている。

「華麗なる一族」や黒澤映画のような大まじめな役も多い仲代だが
この作品や「昭和怪盗伝」のようにこういったすっとぼけた役を
やってもピカイチだ。
また「座頭市と用心棒」の九頭竜みたいな不気味な壕外の用心棒役で
岸田森が怪演!
あまりの怪演ぶりに場内から笑いが起きた(決して馬鹿にしたり失笑ではなく、
楽しくて思わず笑ってしまうのだ)

あと役所広司が若侍役で出演してるのには驚いた。
「どら平太」のパンフにはそんなこと書いてなかったぞ。
書記役で天本英世と今福正雄のコンビが絶妙の掛け合いで
笑わせてくれる。市川版でも同様のシーンはあるが、こっちのほうが
回数は多く、より効果的になっている。

そして途中途中で出てきた「公儀隠密が送り込まれている」という噂。
ラストに意外な人がが公儀隠密であり、オチは決まっている。
(これは「どら平太」にはなかったような気が・・・・・)

「どら平太」と「着ながし奉行」、どちらも日本を代表する
監督に映像化され、全く甲乙つけられない(もちろん二つとも甲)
面白さだ。

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昭和怪盗伝


日時 2002年2月9日16:20〜
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 岡本喜八
1977年11月19日21:00〜テレ朝系放送

土曜ワイド劇場にて放送のテレビ作品。
アメリカの「刑事コロンボ」などの1時間枠でないミステリー番組に影響を受け、
その前の映画放送枠だった土曜映画劇場がタイトルを変え、この土曜ワイド劇場になった。
土曜ワイド劇場は今は2時間だが放送開始時は1時間半枠。
これが好評で他局も「火曜サスペンス劇場」などの2時間ミステリー
を始めるようになり、その草分け的番組だ。

その第1回はよく覚えていて渥美清の「田舎刑事シリーズ〜時間よとまれ」
だった。渥美清などの普段テレビに出ないスターや、この「昭和怪盗伝」の
岡本喜八のように映画級の布陣を敷き、堂々たるスタートだった。
(他に岡本作品では赤川次郎の「幽霊列車」があった。こちらは以前ビデオ化された)

2時間ドラマの歴史の話はこれぐらいにして、この「昭和怪盗伝」だ。
スタート当初は土曜ワイドは毎週見ていた気がするのだが、当然この作品は
初放映時にも見ている。(このころから邦画には関心があったんだな、私)

昭和初期の大恐慌下に東京に出没した説教強盗のドラマ化。
説教強盗。それは金持ちの家にしか盗みに入らず、入った先で
家人に対し「防犯がなってませんねえ。門灯はつけたほうがいいですよ。
犬を飼いなさい。それも血統書付の立派な奴でなく雑種がいい。
雑種のほうがよくほえるから。しかも飯は残りものでいいんですから
これで泥棒よけになると思えば安いもんですよ」などと
説教をして帰るという痛快な奴だ。

主役の説教強盗を仲代達矢が演じ、仲代の一人ナレーションをうまく使い、
昭和52年の現代(放送時)の状況を織り交ぜながら(昭和初期から
突然昭和52年の風景に変わり『あっしが活躍してたころと似てますねえ』
などというナレーションがかぶさるのだ)の見事な喜劇だ。
仲代のナレーションは「肉弾」のナレーション、及び小林桂樹の
「江分利満氏の優雅な生活」でも使われた岡本喜八お得意の
手法だが、今回も大成功だ。

昭和2年の大恐慌の中、物語はレトロ感覚も取り混ぜて進行し、
昭和52年の現代(製作当時)の不況下にも似た閉塞状況の中、
庶民をスカッとさせる義賊として扱われ、「三億円事件」にもつながる
現代との共通点を見出している。

しかし、事件から70年後の2002年の現在の方が
むしろ当時の状況に近い(いやもっと悪い)気さえする。
最悪の失業率、見えない不況の出口、政治汚職、警察の不祥事。
(説教強盗は別の男が誤認逮捕がされそれが許せず、自首するのだ)

物語は「また説教強盗のようなスカッとする事件がおきないかあ」
という庶民(や岡本監督)の本音で終る。
2002年の現代でも充分に通じる作品だ。

蛇足ながら政治犯と間違えられて逮捕され時、留置場に
隆大介がいた。仲代達矢の無名塾出身だから多分間違いなし。

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実録三億円事件


日時 2002年2月2日 19:35〜
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 岡本喜八
ナレーション 岸田森
昭和50年11月14日20時から東京12チャンネル系で放送

今回の岡本喜八特集上映作品、タイムテーブルはこちら。
(但し各回定員入れ替え制ですので、一日に2、3作品上映する日が
ありますが、1作品毎に入場料は別になります。ご注意!)


1975年11月に放送されたドキュメンタリー。
1975年の11月12月といえばこの「3億円事件」の時効寸前で
数々の特番が作られた。
この作品が30%を超える視聴率だったそうだが
別に岡本作品だからではなく、当時としては「3億円事件もの」
は何でも視聴率がよかったと思う。
その世間の騒ぎぶりは近年のどの事件よりもすごかったように感じる。

ドラマだって長谷川和彦の「悪魔のようなあいつ」があり、
東映で岡田祐介が犯人に扮した「実録三億円事件・時効成立」
なるプログラムピクチャアも登場した。
また近年でもビートたけし、長瀬智也らが犯人になったり、
織田裕二、山崎努が犯人ドラマもあった。
また時効成立当夜は民放全局が特番を組み、
時効成立の瞬間は時計のアップになり「あと10秒、あと5秒」と
時を刻んでいき、時効成立した瞬間には「時効成立!」という
画面いっぱいのテロップが出たのを鮮明に覚えている。
30代以上の人ならこのときの大騒ぎぶりは何かしら憶えがあるのではないか?

でこの番組だ。
別に岡本監督でなくても成立した作品なのだけれど、
岡本喜八監督自らが平塚八兵衛元刑事(多分日本で一番有名な刑事)と
現場に行って推理したり、各紙の事件記者と座談会をして犯人像を推理している。

結論は事件当日、オートバイのシートを引っ掛けながら1キロ以上
走ったことなどから、かなり慌てていた様子がうかがえるので
特に泥棒のプロではない、素人の単独犯説に落ち着いている。
当時の一般的にはこの意見だったし、ドラマ、映画もこの「素人の単独犯説」だ。
しかし近年のドラマ(先のビートたけし版や織田裕二版)は複数犯、
そして事件直後に海外逃亡、もしくは死亡したと見る見方が強いようだ。

このドキュメンタリーは東京12チャンネルらしい低予算で
マイクの性能が悪く、音が多少聞き取りづらいところもある。
また街頭インタビューを見ると「当時の日本人は今ほどインタビュー慣れしていないなあ」
とか余計なことが気になった。
事件当日の再現フィルムには黒子姿の人々が登場する。
「当日は雨だった」ということで車のフロントガラスにじょうろで水を
かけながら走ってる姿をわざと写したのはご愛嬌。
また岡本監督は平塚氏とのインタビューの時に「僕なんかような素人考えですと・・・」
とものすごく謙虚な感じで話しておられるのが、岡本監督の人柄を表してる感じがした。

結論としてはそれほどの作品ではないですが、あの事件に関する
時効寸前のころの大騒ぎぶりは伝わってくる作品ですね。

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