2005年9月

頭文字<イニシャル>D タッチ
がんばれ!ベアーズ
 ニュー・シーズン
妖怪百物語 ボルケーノ アバウト ラヴ
関於愛(クワァン ユー アイ)
容疑者 室井慎次 メゾン・ド・ヒミコ チーム★アメリカ
 ワールドポリス
マンゴと黒砂糖

頭文字<イニシャル>D(字幕版)


日時 2005年9月25日19:15〜
場所 アミューズCQN シアター2
監督 アンドリュー・ラウ
    アラン・マック

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群馬県の榛名山付近。
藤原とうふ店の一人息子の拓海(ジェイ・チョウ)は飲んだくれの父親
(アンソニー・ウォン)に代わって早朝の豆腐の配達を中学生から手伝う
うちに、いつしか下りのドライビングテクニックを身に付けていた。
ある日、彼の親友でガソリンスタンドの息子の樹(チャップマン・トウ)が
ドライビングチームから挑戦を受けるのだが、あっけなく負けてしまう。
拓海はそのリベンジを行い、難なく勝つ。
しかしその日から拓海次々と挑戦を受ける。
果たしてその勝負は?
そしてガールフレンド、なつみ(鈴木杏)との関係は?

面白い!
カーレース映画にまたひとつ名作が誕生したといってよい。
私自身は運転はへたくそで、安全運転を心がけているのだが、
カーレース映画は好きなのだ。

山の下り道のカーブをカーブの方向とは反対方向にハンドルを切り
ドリフトさせながら下っていく姿は実にかっこよい。
(この下り方が何十回も繰り返されるのだが、観ていて飽きない)
夜の山道をライトで照らしながら走りきる姿は実に美しい。

ドラマも若き天才的ドライバー、そのよき理解者のライバル、敵役ドライバー、
運転は下手だが力強い親友、飲んだくれだが車のチューンアップは完璧の
メカニック、主人公の恋人など定番中の定番の配役で、王道を行くドラマ展開で
「そうこなくちゃあ」と思わせ、観てるこちらを満足してくれる。

しかもレースシーンは基本的に実写なのでその迫力はものすごい。
CGもダメじゃないんだけど、やっぱり実写でやってくれたほうがうれしいのだなあ。
(ドラマ部分でもスローモーションやストップモーションを多用しすぎているきらいは
あるが、まあこの映画に限ったことじゃなく、最近の映画ではそれが多いが)

主役の藤原拓海はジェイ・チョウ。
いい男過ぎない、普通の男っぽいところがかっこいい。
左手でぼーっとしながらドリフトをしていくのだが、いざとなったら急に
きわどい表情になるあたりのギャップがすごい。


それにしてもこの映画、実は日本映画史に残ることをしているのだ。
原作は日本のベストセラーコミック。しかし、日本での製作ではなく、香港の
スタッフ・キャストが日本のスタッフと共同で(カースタントは日本の高橋レーシング
チームだ)作り上げた映画のだ。
そして原作どうり日本が舞台。したがって日本ロケ。
だから日本で撮影されて登場人物は日本人なのに、香港の俳優が中国語で演じるという
摩訶不思議な空間になっているのだ。
(鈴木杏のセリフは中国語に吹き替え)
もちろん、日本語吹き替え版もあって、多くの劇場はこの吹き替え版なのだけれど
やっぱり原語の字幕版を観ると摩訶不思議感でいっぱいでなんともいえない。

そのために登場人物がやっぱり香港顔をしていたり(ガソリンスタンドの息子など
完全にかつてのサモ・ハン・キンポーを髣髴とさせる香港伝統キャラだ)、仕草が
どうも日本人ぽくなく、なんだか変。
この変な感じは「007は二度死ぬ」にも通じる外国人が作った日本ぽさなのだ。
(必要以上に「ENEOS」や「LAWSON」の看板が強調されて写される感じが
するのだが、これも香港スタッフの無意識の日本っぽさなのか?)

しかしこんな大カーアクションを撮ろうという企画は日本人からは生まれないかも
知れない。
警察との交渉が面倒、などという理由で「自主規制」してしまう恐れさえありそうだ。

主人公の拓海は勝負を終えてこれから本格的に走り屋になるところで、映画は終わる。
恋人なつみとの関係はこれからどうなる?
一応ケリはついているのだが、「これで終わりじゃないだろ?」という見てるこちらに
想像させる隙間があるのだ。
しかし映画としてはこれで完結してよいのだ。
続きが知りたければ、コミックを読んでみることにしよう。

でももう一度あのドリフトシーンは見たいね。



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タッチ


日時 2005年9月24日12:30〜
場所 ユナイテッドシネマとしまえんスクリーン1
監督 犬童一心

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上杉達也、和也は双子の兄弟、そしてその隣に住む南とは幼馴染で
生まれたときから何をするにも3人一緒だった。
いつしか3人の夢は甲子園に行くことに。
達也と和也は中学までは野球部で活躍、しかし高校に行ってからは
達也は野球に対する情熱を失い、和也は甲子園まであと一歩だった。
しかしその甲子園出場をかけた地区大会優勝戦に向かう途中、和也は
交通事故で死んでしまう。
達也は和也の意思をついで甲子園出場を果たそうと野球をもう一度
やるのだが。

80年代の大ヒットマンガ&アニメの実写映画化。
テレビでも実写版は存在してそのときは岡本健一が上杉達也&和也を演じた。
このときは二人がワンカットにいるときはもちろん合成。
双子が出てくるとどうしても合成にならざるを得ないが、今回は演じてる
二人も実際の双子なので、そういう違和感はなし。

正直、この映画の話を聞いたとき「いまさら『タッチ』の実写化なんて・・・」
という否定的な気がしないでもないし、今でもそう思うのだが、斉藤慶太・祥太という
双子の美少年アイドルが出演し、そして東宝映画期待の長澤まさみが主演だ。
案外、長澤まさみ主演の映画を何か作ろうということと昨今のリメークブームに
乗っかってしかも今は現実に双子のアイドルもいることだし・・・で「タッチ」になったのか?
こう考えると実に安易な映画だ。
(長澤まさみって親父に受けるアイドルではないだろうか?数年後、「うちの息子の
嫁に」といわれ「第2の竹下景子」と呼ばれる日がくるような気がするのだが)

しかし驚いたことにこの映画には携帯もパソコンも登場しない。
ルーズソックスも援助交際も出てこない
舞台設定が実に80年代風なのだ。
原作の持つ世界観を壊さないように、かつ原作を当時熱狂的にみていた今は30代、
40代になったファンを裏切らないような配慮か。

だから達也と南がはじめてキスをするベッドのシーン、和也が南のハイソックスに
どきりとし、「幸運の女神がキスしてくれたら勝てるよ」とキスをせがむところ、
そしておでこにチューするあたりなどこちらは胸が締め付けられるように切なくなり、
「そうそう俺達の時代の青春(映画)ってこんな感じだったよなあ」という郷愁にかられるのだ。

そういう意味でかつてのリアルタイム世代にはたまらない部分があるのだが、今の若い人
にはどうだったのかねえ?
僕の隣では中学生ぐらいの女の子と男の子たちのグループが見ていたが面白かったのだろうか?
ちょっと訊いてみたい気がした。

出演はもはや定番になってしまった青春映画の主人公の父親役に小日向文世、草野球の
監督役に自分のチーム「ゴールデンゴールズ」を率いての萩本欽一。



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がんばれ!ベアーズ ニュー・シーズン(字幕版)


日時 2005年9月23日18:50〜
場所 新宿武蔵野館1
監督 リチャード・リンクレイター

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バターメイカーは元メジャーリーグの投手。と言っても実は少し投げた
事があるだけなのだが、それにしても一度はメジャーでプレーしたことのある男だ。
しかし今は害虫駆除の仕事をし、ビールを手放せないダメ男。
そんな彼に少年野球チームのコーチを引き受ける。
引き受けたチームベアーズは野球の基礎も知らないような少年ばかりの
ダメチーム。
テキトーにお茶を濁すバターメーカーだったが、いつしか彼も本気になり
選手を補強し、やがては地元リーグの常勝チームと優勝争いをするようになる!

1976年製作のウォルター・マッソー、テイタム・オニール主演映画のリメイク。
実はオリジナル版を封切り当時10回以上見た。
私の人生で10回以上観た映画いうのは本当に少なくて、この映画が
一番観た映画かも知れない。

それほどの映画だからリメイクと聞いて正直期待と不安でいっぱいだった。

でも驚くほど同じ。
まず当時人物の役名も同じ、設定もチームオーナーが前作は市会議員だったのに
対し、今回は弁護士のキャリアウーマンという点とか選手に車椅子の少年が
加わっていたりとか、データ少年のオギルビーが役名が違っていたりとかの
違いはあるが(細かいことを言えばキリがないのだが)シナリオはほとんど同じ。
(脚本は新しい脚本家の名前があるが、3時間ぐらいしか時間をかけなかったん
じゃないだろうか?と思われる程度の改変なのだ)
それだけでなくカメラアングルさえ同じなカット(ラストカットなど)もある。

リメイクというと新しい作者たちはやたら時代性を意識してハイテク化したり
前作との違いを出してオリジナリティを出そうとしたりして、結局失敗する事が
多い気がするのだが、今回はそんな馬鹿なことはしていない。

「前作は完璧だからいじるな!」という精神が貫かれていてその点は好感が持てる。
しかしだからといって同じ感動があるわけではない。
正直今回の出演者では前作のウォルター・マッソー、テイタム・オニールに比べて
格落ち、は否めない。

その辺が映画の難しいところなのだなあ。
映画というのは脚本やカメラアングルが同じなら同じものができるというわけではなく、
ありとあらゆるものがうまくいったときに名作は誕生するのだということを
再認識させられたような気がした。


おまけとして以下、思いつくままに前作との違い、同じ点を書いておこう。


1、ファーストカットが前作は球場だったが、今回はバターメーカーがねずみの駆除
をしているシーンから。その後、球場になる。

2、メインタイトルが「THE BAD NEWS BEARS」と前作は「THE」が
あった。

3、ケリーとバターメーカーの出会い。前作はタバコを吸っていたケリーにバターメーカー
が火をつけてもらうことだったが、今回はケリーが「俺にもビールくれよ」とビールをねだり
バターメーカーが断る。

4、チームのオーナー的存在ホワイトウッドが市会議員からキャリアウーマンの
弁護士に変更。

5、選手に車椅子の少年が加わった。

6、ユニフォームのスポンサーが「BO−PEEPS」なるピンサロ(?)に変わった。
しかし前作のスポンサーだった「チコス・ベイル・ボンズ」にはバターメーカーが
交渉に行くカットが挿入されるので、意識はしている。

7、リーグの名称が「ノース・バレー・リーグ」から「サウス・バレー・リーグ」に
変わった。

8、前作のオギルビーは記録をノートに取っていたが、今回のプレム・ラヒーリは
ノートパソコンで記録をつける。ここらあたりは21世紀らしい。

9、アマンダは今回バターメーカーの実の娘だが、前作はたしかガールフレンドの娘だった
と思う。

10、アマンダとケリーの対決は前作はエアホッケーだったが、今回はスケートボードに変更。

11、ホワイトウッド女史とバターメーカーは今回一晩遊ぶ。

12、ルーパスがいじめれれるシーンは前作はケチャップを帽子に入れられてかぶせられたが
今回は簡易トイレに閉じ込められる。

13、ヤンキースと決勝戦の最後守備の時のフライ、前作ではルーパスがキャッチするのだが、
今回はルーパスのところに球は飛んでいって・・・・・というひねりの聞かせた結末に。

14、試合後、前作ではビールを振舞うのだが、さすがに今のアメリカ社会では映画でも
許されないのか、ノンアルコールビールを振舞う。

15、音楽は前作を踏襲し、「カルメン」を要所要所で使用。

こんな感じ。
こう書くとずいぶん変更があったような感じだが、これらはすべて些細な部分。
全体としては前作に敬意を払ったリメイクでしたね。



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妖怪百物語


日時 2005年9月23日
場所 録画DVD(日本映画専門チャンネル)
監督 安田公義
製作 昭和43年(1968年)

(詳しくはキネ旬データベースで)


ある江戸の町では寺社奉行と悪徳商人・但馬屋(神田隆)が結託して
寺とその近くの長屋を取り壊し、岡場所を作るという再開発計画をたて
一山儲けようとしていた。
ある晩、但馬屋は町内の権力者や寺社奉行を招き、宴席を設けたが、ただの
宴席ではつまらないということで「百物語」を催す。
「百物語」とは講談師のような男が登場し、怪談をして回りのろうそくの炎を
消していくという、今なら稲川淳二がやっていそうな催しだ。
その最後には憑物つきのおまじないをしなければならない慣わしだが、但馬屋は
それを無視してしまう。
一方、但馬屋たちに狙われた長屋の住人達の中には浪人者(藤巻潤)もいた。
しかしこの浪人もの、ただの浪人ではなさそうだ。

2005年夏の三池崇史監督の「妖怪大戦争」の公開にちなんでの放送。
これが第1作となって「妖怪大戦争」へと続くのだが、この映画ではあんまり
妖怪は出てこない。
悪代官や悪徳商人が妖怪により退治される、という話なのだが、妖怪たちには
特別意思やキャラクターはなく、「百物語」の後、行うしきたりの
「憑物おとし」は行わなかったからという理由で悪人たちに襲いかかる。

妖怪たちが活躍しだすのは最後の15分ぐらいだから、妖怪の登場を期待すると
少しがっかり。

特撮シーンとしては、ろくろ首の女性が伸びた首に笑う顔を合成(だと思う)する
カットがなかなか雰囲気があってよい。
それと知恵の足りない但馬屋の子供(ルーキー・伸一)がふすまにからかさお化けの
絵を描いて、その絵が抜け出して動くシーンがある。
アニメとの合成だと思うが、こういうアニメとの合成はあまり観ないので
その点が珍しかった。
(それにしてもルーキー・伸一とは懐かしい。確かその後賭博事件で芸能界から
去っていったが、今はどうしているのか)

妖怪の活躍もあまりなく、悪人と正義の青年の対決というありふれすぎた話なので
イマイチ面白みなし。



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ボルケーノ


日時 2005年9月19日
場所 DVD
監督 ミック・ジャクソン
製作 1997年(平成9年)

(詳しくはキネ旬データベースで)


ロサンゼルス。この日は中程度の地震があり、地下のトンネルで作業中の作業員が
熱のために焼死した。尋常でないと判断した郡危機管理局の局長のローク(トミー・リー・
ジョーンズ)は地質学者に相談するが「溶岩の可能性がある」と言われてしまう。
ロークは信じなかったが、翌朝、昨日の事故現場付近より溶岩が噴出し、火山弾が
飛び出すのを目撃してしまう。
やはり地質学者の言ったとおりだったのだ!
それはやがて市を壊滅するばかりの大惨事へと発展する!!

「2枚で1990円」シリーズのDVDで抱き合わせで買ってみたこの映画。
タイトルは聞いた事はあったが見たことはなかった。

97年製作だから今ほどCGに頼ってはいない。
特撮シーンはミニチュアも多くその点はミニチュア特撮ファンとしては楽しい。
でもねえ、話が無茶苦茶すぎ。
溶岩がロサンゼルスの街中で噴出し始める、というのはありとしても
その後、溶岩が火災を発生させ街は大パニックになる。ここまでは納得。
でもこの溶岩を食い止めようとし、道路工事の仕切りに使うような高さ1mぐらい
のブロックを積み上げて高さ2mの壁を作る。
そして溶岩をせきとめ、そこに放水して溶岩を固まらせ天然のダムを作ってしまおう
と言うもの。
このブロックを積み上げるとき、いがみ合っていた黒人と白人の警官が力を合わせて、もう
「アメリカ万歳!」って感じだ。

それってありかあ???
もちろん私は地震や火山の専門家ではないが、そんな簡単にせき止められるものでもないだろう。
天然の高さ2、3mのダムを作ったとしても溶岩流はそんなの簡単に乗り越えちゃうん
じゃないの???

ここまでが中盤のクライマックスで、その後、別の溶岩流が病院のある方向に地下鉄のトンネルを
通っていくことがわかり、再びこれを何とかしようということになる。
そこで病院の前のビルを倒し、また道にダイナマイトで溝を掘ってそちらに溶岩を流し
運河に引き込み、太平洋まで持っていこうという作戦。
「あと30分しか時間がない!」というのがサスペンスのミソなのだが、ちょっと時間的に
無理ありすぎ。
それに主人公のトミー・リー・ジョーンズは、娘がこの病院にいるというので血相を変えるのだが、
悪く言えば「あんたは子供がいなかったらそんなに必死になったか???」と突っ込みを
入れたくなる。

まあ結局作戦は成功し、ロサンゼルスはなんとか助かる。
それにしてもねえ、そんなにうまくいくかい????
日本人の感覚からすると火山をなめちゃいかんよ。
「トータル・フィアーズ」の時、「アメリカ人は核兵器の恐ろしさを理解していない」
と思ったが、今回も同様。
「火山の怖さを何もわかっちゃいない」
日本人の感覚からいうと火山や地震や津波は制覇するのもではなく、いかに逃げるか、という
代物なのだ。
何でも制覇してやろうという発想はアメリカ人らしいのだが、世の中なんでも制覇できるもの
じゃないよ。
批判を覚悟で発言すれば、だから今年の大タイフーン「カトリーナ」であんな大災害に
なっちゃうのだ。

あと主役がトミー・リー・ジョーンズと言う点。いやトミー・リー・ジョーンズはいい役者なのだが
こういった映画で主役を張るにはちょっとさびしい。
ここはかつての「タワーリング・インフェルノ」みたいにオールスターでやって欲しかったな。
トミー・リー・ジョーンズ一人が主役ではどうしてもB級映画の域を脱せない。

映画の脚本、というかコンセプトには納得できんが、最初に書いたようにミニチュア特撮は
すごかった。
火災でビルが焼けるとかその前の道を消防車が右往左往するところなんかは見ごたえあったなあ。



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アバウト ラヴ 関於愛(クワァン ユー アイ)


日時 2005年9月18日14:10〜
場所 新宿トーア
監督 下山天(東京篇)
   イー・ツーイェン(台北篇)
   チャン・イーバイ(上海篇)

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東京、台北、上海を舞台にした恋愛オムニバス映画。
恋愛映画って基本的に見ないのだが、実はこの映画、夏に香港に行ったときに
機内上映されていた映画。
キャセイパシフィック航空で行ったのだが、機内誌の作品案内を見たときには
「こんな映画があったとは知らなかった」と思ったのだがそれもそのはず、
8月の時点では日本未公開だったのですね。

大画面での上映ではなく、座席の背もたれに着いているDVDジャケットを横にしたぐらい
の大きさの画面で見たし、機内上映だと食事の配膳やらアナウンスが入って落ち着いて
見れなかったし、日本語のセリフの部分は日本語なのだが、中国語のセリフの部分は
英語字幕しかなかったので細かいところが理解できなかったのでもう一度。
(要はもう一度見たいと言う気にさせる映画だったのだ)

東京篇は伊東美咲の画家とチェン・ボーリン(すっげえーー男前)演じる台北から
日本にマンガ(アニメ?)の勉強に来た留学生との「素敵な出会い」(ラストの
チェン・ボーリンの微笑がよい)台北篇は加瀬亮とメイビイ・ファンの「前に付き合って
いた人を忘れられないつらさ」、上海篇は塚本高史とリー・シャオルーとの
「言い出せなかった想い、気づいてあげられなかった事への悔やみ」、
そんな感じの恋愛シーンの一瞬のドラマを描いていく。

チェン・ボーリンの描く絵によって心を開いていく伊東美咲、ラストの一枚の
絵ですべてが伝わる二人、ペンキ遊びでじゃれあっていくうちに体が重なろうと
してしまう一瞬、しかし本当に好きな人を思い出す瞬間、想いを言い出せずにスペイン語で
言ってしまうリー・シャルオー。

べたべたと長時間描かずさらっと描いていく、しかし見てるこちらには忘れらない印象を
残す珠玉のオムニバス。
言葉が通じないけど想いは伝わる、言葉は通じたのだが言い出せなかった想い、言葉は
関係ない人間共通の好きな人を想うつらさ、つまりは言葉なんか関係ない人間の
恋愛感情を見事に描いている。

これこそ言葉にならない。
よかった。
今年のベスト3級のよさだ。



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容疑者 室井慎次


日時 2005年9月17日18:15〜
場所 ヴァージンTOHOシネマズ六本木ヒルズ・スクリーン4
監督 君塚良一

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警視庁の管理官・室井慎次(柳葉敏郎)は捜査中の事件の被疑者が事情聴取中に
逃走し、車にはねられた件で過度な違法捜査が原因と思われるという容疑で
逮捕される。
室井逮捕の裏に何かを感じた警察の仲間がこの事件を再捜査し始める。
しかしこの事件は警視庁と警察庁の権力争いになってきた。
果たして真実は?

「踊る大捜査線番外編」シリーズ第2弾。
「交渉人 真下正義」は地下鉄ジャックという面白そうなテーマだったので初日に行ったのだが、
「室井はもともとそんな好きなキャラクターではない」「もともと柳葉敏郎に興味がない」
などの理由で見るのが遅れた。

結論から言うとねえ、(結末を書いちゃうけど)事件の真相あっけなさすぎ。
もっと巨悪があるのかと思ったよ。
実際登場人物の哀川翔の刑事も「俺達はそんなことにふりまわされていたのか」という
セリフの通り。
だから書いてるほうも「あっけない」ことはわかっていたのだろうが、それにしてもなあ。
その「あっけなさ」が意外性だといえば言えるのだが、国家的な陰謀を期待しただけに
はずされた思いのほうが強かった。
(室井の学生時代の彼女が事件にどう関わってくるのかと期待してしまったよ)

それにこの事件の灰島弁護士(八嶋智人)の費用が500万円とは安かないか??
あの敵方の弁護士のがめつさからすると1000万プラス成功報酬プラス経費とか
言ってきそうな気がする。

気に入らなかった点ばかり先に書いちゃうけど、灰島弁護士をはじめ登場人物が
キャラクターが立ちすぎ、というか特徴ありすぎ。
ゲームオタクで机の下でゲームばかりやっているなど、マンガのキャラクター
じゃないんだから。
そして室井慎次。出所したときにコートを羽織るシーンでローアングルでスローモーションで
捉えていたけどやりすぎ(けど室井ファンには堪えられないかっこよさなのだろうけど)
そして北新宿署にしても建物が主張しすぎなのだなあ。

「踊る」の最初のほうってもっと普通ぽかったよ。(だから好きだったのだが)

では次によかった点。
画がきれいだった。陰影が深く、室内に室井のみがぽっかりと浮かびあがるなどきれいでしたね。
「踊る」シリーズはえてして画が汚いのだがこの作品はよかった。
そして必要以上にスタッフの遊びをカットした点。
「リンク」と称して他のシリーズで登場したキャラクターや小道具が随所に顔を出す、という
「踊る」シリーズ独特の遊びが「交渉人〜」の時はうるさく感じられるのだが、今回は
湾岸署の署長達のシーンぐらいで(それでもカットしたらしいが)まあ許せる範囲。

そして何より評価すべきなのは新宿東口の大セット。
新宿を知る人にはよくわかるのだが、東口のアルタ前から伊勢丹付近までのセットを建てたとは!
知っててみるとベニヤ板っぽいなと感じるのだが、知らないで見たらロケだと思うだろうなあ。
ここまでのスケールの発想が出来るところがフジテレビの力と言うものか。

蛇足で書いておくけど、パンフレットにはまったく触れていないが過去の映画のオマージュ
シーンについて。
室井が出所して食堂に入って田中麗奈に「君はよく食べるね」が「砂の器」の丹波哲郎、
その後に「出所したらビール飲むんじゃないですか。ほら映画で見たことありますよ」
というのは「幸せの黄色いハンカチ」の高倉健、室井が学生時代の女性を語るシーンは
熊井啓の「日本列島」の宇野重吉。
君塚良一自身がパンフレットで70年代の映画が好きだといってるし(音楽の話のところでだが)
「日本列島」の話もしてるので、あながち無茶な発想ではないと思う。



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メゾン・ド・ヒミコ


日時 2005年9月3日16:25〜
場所 シネマライズ
監督 犬童一心

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神奈川県で塗装会社に勤める沙織(柴崎コウ)の下に一人の美青年・春彦
(オダギリ・ジョー)が訪ねてくる。沙織の父が癌で余命いくばくもないと言うのだ。
「関係ありません」そう答える沙織だったが、春彦はあきらめず、父が住む
老人ホームで雑用係のバイトを1日3万円で働いてくれるよう持ちかける。
乗り気がしない沙織だったが、死んだ母の入院代で作った借金を抱える沙織は
仕方なく働き出す。
しかしその老人ホームはゲイの老人たちのためのホームで、春彦は父の恋人だった。

なんていうかなあ、もうステレオタイプなのだよ。
根本的に出てくる人間がステレオタイプでいかにも「のんけさんが考えた
ゲイばかり」が登場する。
いうなれば日本人が黒人やユダヤ人差別の話を映画にしたみたいで「ああいう人も
いるけれど、実態とはちょっと違う感じがする」という思いが離れなかった。
「差別される人間の孤独と和解」みたいな話で(そういうまとめ方もちょっと違う感じが
するが)、別にゲイの設定にする必要はないと思うのだ。

昭和30年代に銀座にオープンしたゲイバー「卑弥呼」。ここには多くの文化人が
集った、という設定から始まる。
ここらあたりがもういやなのだ。
「ゲイ=文化的にハイセンス」みたいな構図がある。
「黒人=ジャズ、もしくはラップの名人」みたいな安易は発想を感じるのだ。
最初からそうだから次々と登場する人物たち(女装のルビィとか、美青年の春彦とか
刺繍が趣味な山崎とか、その山崎を罵倒する元部下とか、近所の悪がきとか)
の設定がみんな「いかにも」といったような特徴がありすぎる。

ゲイって意外とみんな普通だよ。
ああいう特徴のある人もいるがああいう人ばかりじゃない。
その辺がまず履き違えているのだなあ。

そんな感じでこの映画の導入部から入れなかったから、もう後は見ていてつらいだけなのだ。
山崎を女装させてコスプレをしてクラブに行くところとか中盤の盛り上がりなのだろうが、
こっちは冷め切ってみてしまった。
西島秀俊の部下とやりまくる上司も何の意味があるのかよく分からない。
自分の性の欲望に忠実になれる男と隠さなければいけなかった男達、という対比なのか???

そしてオダギリ・ジョーが柴崎コウにキスする必要性を感じない。
ゲイが女性に愛情というか友情のワンランク上を感情を抱くのは分かるが、性欲は基本的に
伴わないからキスとかしたいと思わないと思うよ。(ゲイによってはキスしたいと思うかも知れないけど)

結局、ゲイの話にしたのはそのほうが話がショッキングで宣伝的にやりやすいってことじゃ
ないんだろうか?
もしそうならゲイを商売の道具にして欲しくはないなあ。

完全に入れなかったこの映画だが、そんな中で評価すべきなのはオダギリ・ジョー。
微妙な表情がなんとも言えない時があり、なかなかの好演だった。
彼の魅力のみがこの映画の(私にとっての)見所だ。




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チーム★アメリカ ワールドポリス


日時 2005年9月3日14:20〜
場所 シネアミューズ・イースト
監督 

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「チーム★アメリカ」、それはアメリカにあるテロ撲滅のためなら手段を
選ばない特別チームだ。
今日もパリでテロリストを発見し、凱旋門やエッフェル塔の破壊もものともせず
テロリストの撲滅を行う。
パリでの戦いでメンバーの一人が死亡、その補充に白羽の矢が立ったのは
ブロードウエイでヒット中のミュージカルスターだった。
そして今回のミッションの黒幕はあの北朝鮮の金正日だ!!!

アメリカのテロ政策や金正日を皮肉ったブラックコメディ。
ブラックコメディで知られる「サウスパーク」の製作者たちが作った作品だが
僕は「サウスパーク」を見ていないので、「サウスパーク」との関連付けでの感想は
ちょっとかけないのだが。

製作者のアイロニーの餌食になるのは政治家だけではない。
彼らに対抗し平和主義運動を繰り広げるハリウッドの有名俳優たちも血祭りに上げられる。
特にマット・ディモンなどは馬鹿扱いされてるし、ハリウッドスターの政治的
発言を日本人より身近に見聞きしているアメリカ人にはもっとおかしかったことだろう。
(マイケル・ベイも画面には登場しないが劇中歌で「パール・ハーバーほどひどい
映画はない」みたいな形でからかわれる。)

またそういった人物をからかっただけでなく、映画でよくあるトレーニングカットを
積み重ねて主人公が一気に強くなる過程を短い時間で描く、いわゆる「映画の手法」も
「モンタージュを重ねれば誰だった短時間に強くなれるのさ〜〜〜」みたいな歌に載せて
笑いの種にされる。

この映画の話題は政治的なアイロニーばかりが強調されている気がする。
確かに金正日をはじめ、ハリウッドのスターを実名で登場させるなど、かなり大胆な
ことをやってのける。
しかしそんなことより私が楽しんだのは人形劇としての素晴らしさだった。
オープニングのパリのシーンを見よ!!
カメラが奥から手前に移動し、その中でミニチュアの車や多くの人形が動きまくって
いるではないか!!!
それだけでない、エジプトでのテロリストを追うチーム★アメリカとのカーチェイス、
ニューヨークのタイムズスクエアのミニチュアシーンなどなど特撮シーンが
満載だ。
それだけでなく、主人公が「自分のせいで新たなテロが起きた」と酔っ払うシーンで
(人によっては嫌悪するだろうが)ゲロを吐きまくるとか、技術的にも見所は多い。
(技術的とはちょっと違うかも知れないが、人形同士のセックスシーンも見ものだった。
さすがに性器部分は作られていないようだったが)

そんな感じで僕にはブラックコメディとしてよりも上質な人形特撮アクションとして
純粋に楽しんでました。
「サンダーバード」の21世紀版を見てる気分で楽しかったですね。



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マンゴと黒砂糖


日時 2005年9月2日21:00〜
場所 シネマアートン下北沢
監督 鯨エマ

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戦前、グアム、サイパンをはじめとする南洋の島々に国の政策に
よって多くの人々が移住した。
サトウキビの栽培が産業として主となったため、栽培経験のある沖縄の人々が
数多く多くこれらの島々に渡っていた。
戦後、アメリカ領となったため、人々の大半は沖縄に帰った。
これらの島で生まれた多くの人々は今では年に一度、里帰りのためにグアム、
サイパンを訪れる。

ドキュメンタリー映画。
監督の鯨エマさんは女優として活躍なさる一方、ミニシアターの芝居の脚本演出を
手がけるマルチな方だ。
彼女は別サイトの関係で知り合った方で、「知り合いだから」というだけでなく
戦前に南洋の島々に渡った日本人、と言う題材に興味があったので見に行った。

それにしてもグアム、サイパンをはじめとする島々に民間の日本人が移住し、
そこで日本人街を形成していたとはまったく知らなかった。
たぶん、多くの日本人がそうだと思うが、グアム、サイパンと言えば現在の
リゾート地としての姿か、戦争映画に登場する日本軍基地があった場所、
というイメージしかあるまい。

ところがそれだけでなく「南洋興産」という会社を中核として多くの日本人が
活躍していたとは!
満州に渡った日本人は今まで映画などにも多く描かれているが、戦前の日本人は
実に国際的に活躍していたのだなあ。
そして戦争によって何万人の死者が出ることになる。

映画は今は多くが70代となったかつての南洋諸島に住んでいた人々が
グアム、サイパンを訪れ、日本人同士の再会を喜んだり、慰霊祭を行う模様を
映し出す。
再会を喜ぶ人々や慰霊祭が無事に済んで地元の人々との交流を楽しむ姿が多く描かれ
戦争の悲惨さは直接的には描かれない。
しかし、この映画は戦争の悲惨だけを描くことでなく、今よりもっと国際的に
活躍していたかつての日本人への尊敬が感じられる。

なんだかテレビの終戦記念ドラマにでもなりそうなネタの話だなあと思う。
おそらくは鯨さんとしては本当はドラマとしてこの地に渡った日本人を
描きたかったのだろう。
しかしあくまで個人製作の映画なので、それは今回は断念、ドキュメンタリー
としての製作になったのではないか。
もしそうなら、この映画がきっかけになって、南洋諸島にわたった日本人を
テーマにドラマが出来ればいいと思う。
それだけのネタだと思いますよ。



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