2006年1月

ああ爆弾 殺人狂時代 アルプスの若大将
ロード・オブ・ウォー THE 有頂天ホテル 疾走 美貌の都
社長道中記 がんばれ!盤嶽 ナルニア国物語 第1章
「ライオンと魔女」
明日に向って撃て!

ああ爆弾


日時 2006年1月28日22:45〜
場所 浅草東宝
監督 岡本喜八
製作 昭和39年(1964年)

(詳しくはキネ旬データベースで)


やくざの親分大名大作(伊藤雄之助)は3年ぶりに刑務所を出所して娑婆に出てみたら
自分の組は他の奴・矢東(中谷一郎)に乗っ取られていた。
かつての子分はすべて鞍替えしており自分の居場所はない。
そこで大作は矢東を亡き者にしようとするのだが。

こうストーリーを書くと普通にありがちなヤクザ映画のパターンだが、この映画は
ミュージカル仕立て。
和製ミュージカルとして名作の誉れも高いようだが、私は買っていない。
見ていて眠くなるのだ。
まず最初は能、というか狂言、というかとにかく雅楽で始まるのだが、これがテンポが
退屈でたまらないのだよ。

その後もジャズ風の曲もあるのだが、もともとミュージカルが好きではない私にとっては
ややつらい。
いや、ミュージカル好きでもつらいのではないか?
岡本喜八映画にはミュージカル風だったり、西部劇風だったり、そこが特徴なのだが、
完全にミュージカルになるとつらいのだな。
これは「EAST MEETS WEST」が失敗したのと同じ理屈ではないか?

そして主役の伊藤雄之助。伊藤雄之助は好きなのだが、あくまで脇で映画を面白くする
いわば隠し味として映画を引き立たせるタイプなので、主演を張るとちょっとつらい。
これが仲代達矢とか、三船敏郎とか、三橋達也だったら映画のテイストも変わったかも
知れない。
また砂塚秀夫がいつもの「あまり役に立たない主人公の子分」で出演。
そして二瓶正也もヤクザの子分役で出演してました。

オールナイトの上映なので、やっぱり途中で10分ほど寝て、起きたら銀行で桜井浩子が
歌ってました。
体調のいいときにもう一回見ればまた評価が変わるかも知れないが、当分見る気には
なれないなあ。
私は岡本喜八ファンですが、この映画は実験的野心が空回りして成功していない気がします。
ただしこの映画を撮っていなかったら「岡本喜八には一度ミュージカルを撮らせてあげたかった」
と思うでしょうから、そういう悔いを残さないためにも、この映画は存在する価値は
あると思いますね。



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殺人狂時代


日時 2006年1月28日21:00〜
場所 浅草東宝
監督 岡本喜八
製作 昭和42年(1967年)

(詳しくはキネ旬データベースで)


大学で犯罪心理学を教える桔梗信治(仲代達矢)はおんぼろアパートに帰ると
殺し屋の襲撃を受ける。
実はナチの残党がマッドサイエンティストの溝呂木博士率いる「大日本人口調節審議会」
に殺しの依頼をしたのだ。
果たして彼らの真意は何か?

浅草東宝ラストオールナイト。
この映画は学生時代に一度見ているがまるで面白くなかった憶えがある。
おそらく「大日本人口調節審議会」という「くだらない人間は殺してしまえ!」という
狂気の集団と、ナチスと、「殺人狂時代」というチャップリンの反戦映画を連想させるタイトルと
岡本喜八の戦争映画路線がごっちゃになって反戦映画的なメッセージを嗅ぎ取ろうとして
しまったのではないか?

全然そういう映画じゃなかったらしい。
これは「暗黒街シリーズ」や「地獄の饗宴」などのアクションのりの映画だったのだ。
事の真相は桔梗の体には実は子供の頃にドイツに行ったときに、事故にあってその手術を
した医者にダイヤを埋め込まれていた、ということ。
それを追ってナチスの残党がやってきて・・・という話。
まるっきり「マルタの鷹」的なオーソドックスな話だ。

登場したときはめがねに無精ひげでまるでさえない男として登場する仲代達矢。しかし
途中で着替えると颯爽と圧巻たちを倒していく強い男に変身。
そして登場する珍妙な殺し屋達が楽しい。
小川安三や沢村いき雄など、およそ殺し屋らしくない東宝名脇役達が殺し屋として登場。
特に最初に登場する小川安三などは彼の代表作になるのではないか?
また天本英世の狂気的な感じが実に生かされて、「溝呂木博士」などというインパクトの
ある名前と共に代表作に違いない。
あと、大して役に立たないコメディリリーフの主人公の子分に砂塚秀夫。
「地獄の饗宴」と同じような役どころ。

最後の最後に実は・・・・という展開もあり、岡本喜八アクションファンとしては満足の出来。
妙に意味を探そうとしてわからなくしたかつての自分がなんだか恥ずかしい。



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アルプスの若大将


日時 2006年1月28日17:10〜
場所 浅草東宝
監督 古澤憲吾
製作 昭和41年(1966年)

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京南大学の学生・田沼雄一(加山雄三)は大学の教授のお供でヨーロッパに来ていた。
スキー部の彼は旅先でもスキーを楽しみ、またパンアメリカン航空に勤める岸澄子(星由里子)
と知り合う。
日本に帰ってからは岸澄子さんとの交際も順調に行くかに見えたが、一緒にヨーロッパに
いった青大将こと石山(田中邦衛)を頼ってきたフランス娘(イーデス・ハンソン)との
仲を誤解されたり、大学の後輩やらスキー合宿中に知り合った美女(若林映子)との仲も
誤解されてしまう。
一旦はヨーロッパに帰った澄子だったが、雄一も彼女を追うために、「優勝すればヨーロッパに
行ける」というスキーの大会でがんばって優勝する。

若大将シリーズ第7作。
浅草東宝の閉館特別番組での上映。この映画、学生時代に浅草東宝オールナイトで見ている。
他の上映は「海の若大将」「帰ってきた若大将」があった。あとの2本は覚えていない。

まあ観光地映画だ。
前半は加山がヨーロッパでトニー・ザイラーと親しくて「また日本に来てください」などという
シーンがあったり、ローマを澄子に案内してもらったりと見所が用意されている。
何せまだまだ1ドル=360円の時代だし、この頃はヨーロッパに個人旅行なんて考えられなかった。
日本人が海外旅行を自由に楽しむようになったのは80年代の終わりぐらいからだと思う。
私が子供の子供の頃なんかは「ハワイは一生に一度行けたらいい」とまじめに思っていた。
それぐらい遠かった。ヨーロッパは「月よりは近い」ぐらいの感覚だった。

それでもって外人客が雄一の実家のスキヤキ店「田能久」にやってきての有島一郎との
珍妙なやり取りとか、ヨーロッパで撮ってきた8mm映画の上映会で有島一郎や田中邦衛が
星由里子やイーデス・ハンソンの手を握ろうとして間違えてお互いの手を握ってしまうあたりの
「お決まり」のギャグが続く。
また加山も意味もなくギターを抱えて6曲ぐらい歌う。

で、ラストの大会なんだけど、いつもは試合が始まってもエースの若大将がいなくてチームが
負けそうになる!というところへ加山が駆けつけて試合を盛り返す、という展開だが、
今回は3日間にも及ぶスキー競技なのでその手は使えなかったのか、普通に参戦。
ところがこのシーンが面白くないのだよ。
スキーシーンを延々写ってるだけで、そこにスポーツアナウンサーの実況が重なるのだが
ちっとも面白くない。
退屈で寝てしまうそうだ。

そして加山は優勝し、はれて澄子さんを追っかけてヨーロッパへ。
若林映子との仲はどうなったのだろう?例の後輩はどうなったんか?という疑問はほったらかしに
して若大将は青春を謳歌する。
昔の大学生はこんなに楽しそうだったんだあ、と思いがちだが、そうではないらしい。
私も一時期そう思ったのだが、「あれは映画の話。実際はあんな大学生はいなかった」というのが
正しいらしい。
「金八先生」をみて「いまあんな先生がいるんだ」と思ってはいけない。
「あんな先生がいたらなあ」という理想的希望の元に生まれてきたのが金八先生であるのと同じで、
「こんな青春が送れたらいいなあ」という理想的希望の元に生まれてきたのが「若大将」なのだ。



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ロード・オブ・ウォー
史上最強の武器商人と言われた男


日時 2006年1月21日18:30〜
場所 新宿オデオン座
監督 アンドリュー・ニコル

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ユーリー・オルロフ(ニコラス・ケイジ)は元は旧ソ連のウクライナの出身。
少年時代に一家でニューヨークに移民し、貧乏ながら父は食堂を経営していた。
父の友人からイスラエル製の銃を手にいれ、それを販売したことがきっかけで
銃器売買の世界に。財をなし、彼は元モデルの美人と結婚した。
旧ソ連の崩壊により、親戚のソ連軍の将軍から武器を手に入れ、それを売りさばく
事で巨万の富を得る。
しかしインターポールの捜査官に付きまとわれることに。
自分の仕事を手伝ってくれた弟はいつしかコカイン中毒になり、自分の商売も
妻の知るところとなり、妻は去っていく。
そしてユーリーもインターポールに逮捕されるのだが。

武器商人を主人公にした映画、という今までなかったタイプの映画。
オープニングのクレジットタイトルバック、一発の銃弾が工場で作られてから
箱詰めされ、出荷し、開封されて人の頭に打ち込まれるまでを弾の目線で描く。
この場面はなかなか。

で本編に入っていくわけだが、いまひとつ面白くない。
ユーリーが武器売買に手を染めるきっかけはわかったが、巨大になっていくあたりが
もう一つ説明不足。
そして法規制をかいくぐって武器を輸出するわけだが、捜査が入る直前に船の名前を
変えたり、軍用ヘリを武器をはずし「救助用に転用済み」といい逃れるあたり、
多少面白くはあったが、「へ〜〜」というほどではない。
内幕暴露ものではこの「へ〜〜〜」というような手口を教えてくれるほど、面白さが
増すのだが、この辺が映画としてのインパクトが弱い。

そして妻に去られたり、弟は良心に目覚めて売り物の銃を破壊して殺されたりする。
このあたり、憎めべき主人公であるはずが、妙に哀れに見えて、同情さえしそうに
なる。
この視点はなぜか、と気になったのだが、ラスト釈放されたユーリーのシーンのあと、
「最大の武器輸出国は米・英・仏・中・露の5大国。この5国は国連安保理の
常任理事国である」と字幕が出る。
字幕で説明するというのは映画的にやや映像としてインパクトにかけるが、
作者の言いたいことはわかった。
「憎むべきはこのような『死の商人』以上に5大国なのだ」という主張。
だからこそ、ユーリーのような男は5大国に操られた哀れな男でしかないという
事なのだろう。
ありふれた結論とも言えるが、改めて言われると印象に残った。



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THE 有頂天ホテル


日時 2006年1月21日12:20〜
場所 ヴァージンTOHOシネマズ六本木ヒルズスクリーン7
監督 三谷幸喜

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「ラヂオの時間」「みんなのいえ」に続く三谷幸喜監督作品第三弾。
キャストの豪華さも手伝ってか、かなりのヒットをしているようで三谷映画
のナンバー1ヒットは間違いなさそうで、まずはめでたいことだ。

大晦日の一流ホテルを舞台に、汚職政治家、自殺願望の大物演歌歌手、コールガール、
ある大会社の愛人、ホテルのカウントダウンパーティの芸人、「マン・オブ・ザ・イヤー」の
受賞者などの訳ありのお客たちに、それぞれ何かを抱えた従業員たちが繰り広げる群集劇。

かなり笑わせてもらったが、映画全体の印象はイマイチだった。
全体的にちょっと長さを感じるのだ。登場人物にそれぞれドラマを持たせ、面白くは
あるのだが、笑わせどころがちょっとくどい気がする。
例えば筆耕係の「謹賀信念」の書き直しが、何度も登場するがちょっと何回も
登場しすぎではないか。
同じく伊東四朗の白塗り男、役所広司の前妻の前での受賞者のフリ(ここは
フジテレビの深夜番組「3番テーブルの客」のリメイクだ)、角野卓造の「クネクネ」
の携帯画像を取り戻そうとするあたりはちょっとくどい。

この辺の笑いのリフレインをもう1回ぐらいずつカットすれば、もう少しテンポも
良くなり、むしろ新年カウントダウンまで「あと何分」という時間のサスペンスも
もっと生きてきたのではないか。
(関連するが映画を見てると夕方6時ぐらいからドラマが始まったような錯覚に
なるほどエピソードが多い。
時々時計を写すなどしてあ「あと何分で解決しなければ」という時間のサスペンスも
もっと生まれて面白くなったと思う。
「ラヂオの時間」では「あと何分で放送が終わってしまう。それまでに解決しなければ」
というあたりがクライマックスを盛り上げていたのだから。

話はそれるが、期待した(予想した)オチと違ったところを一つ。
浅野和之の議員秘書が、賄賂の瞬間を捕らえた画像の入った携帯と、篠原涼子の
「クネクネ」の入った携帯が、同じストラップをつけているために入れ替わり、
浅野和之が記者会見で画像を発表するのだが、それは「クネクネ」の画像だった、
というオチになるという(ありきたりだが)「取り違えネタ」を予想したがそうは
ならなかった。ちょっと残念な気がした。

そして各俳優、キャラクターに一言。
役所広司、なにやらせてもうまい。僕にいわせれば今の日本映画は彼で持っているような
もの。佐藤浩市の汚職国会議員、結局汚職事件の真相を話さないというのはちょっと残念。
TV「合言葉は勇気」のように不正を暴く展開になってほしかった。
香取慎吾の幼馴染のフライトアテンダント、二つの伏線の本人(どういう伏線かは書くのを
控える)というちょっとあっと言わせる展開は見事。
伊東四朗の白塗り男、私は顔に何かを塗って笑いを取るというのは、芸がないという理由で
キライ。

いろいろ文句はつけたが面白くはあった。
ただしDVDを買いたいとか、年間ベストテンに入るほどではなかったが。



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疾走


日時 2006年1月19日19:45〜
場所 ユナイテッドシネマとしまえんスクリーン2
監督 SABU

(公式HPへ)


NEWSの手越祐也初主演映画。

ある海沿いの地方都市。この地では埋立地を沖と呼び、それ以前からの土地を
浜と呼び、浜の人間は沖の人間を下に見ていた。
浜に住む兄弟、シュウイチとシュウジ(手越祐也)。シュウイチは中学でも学年トップ
の成績だったが、ある日、カンニングをしたことが発覚し、それから少しおかしくなる。
またかつて人を殺したといううわさのある神父(豊川悦史)が沖に教会を開く。
その教会にシュウジは通うようになり、同じクラスのエリ(韓英恵)ともそこで親しくなる。
沖は巨大リゾート計画が立ち上がるが頓挫する。
そんな中、シュウジは子供の頃に会ったヤクザの鬼ケンの情婦(中谷美紀)と再会する。
シュウイチは近所で連続放火事件を起こす。
それがきっかけでシュウジの家庭はバラバラになる。

正直、面白くない。
「疾走」って言うから韓英恵と手越のロードムービーかと思ったら、旅は最後の方に
ならないとしないしなあ。
昔のATG映画みたいな感じの映画だな。

エリは子供の頃、両親が心中して自分だけ生き残ったという背景があり、それで親戚の
叔父さんに育てられているのだが、映画の後半、その叔父さんに性的嫌がらせを受けている
という話が出てくる。
シュウジはその叔父さんと映画の最後の方で会うのだが、ここでその叔父さんをナイフで刺す。
「美少年がナイフで汚い大人を刺す」、映画的に実に今までも多くて魅力的な表現だ。
ありきたりと非難も出来るが、この「美少年=清潔、大人=不潔」のイメージのまんまで
僕は許す。
正直、この映画で面白かったのはここだけだったから。

あとその前にヤクザの情婦の中谷美紀を訪ねて大阪に行くのだが、そこでシュウジは「セックス
させてください」とかなり大胆なことを言う。
ここで多少は濡れ場があってしかるべきなのだが、すぐに事が終わって居酒屋で酒を飲んでる
シーンになる。こういう中途半端なことはしてほしくなかった。
その後、ヤクザの大杉漣にぼこぼこにされる、というかSMチックな責めにあう。
ここももう少し色っぽくやってくれたらもっと見せ場になったと思う。

最後に手越の演技について。下手というほどではないが、うまくはなかった。
全体的に表情に乏しい。
しかし、彼はV6における岡田准一みたいなもので、きっと二十歳過ぎてから人気が出る、
本領を発揮する存在だと思う。
NEWSが年齢差のあるグループだということもそういう戦略だと私は思っている。
これからに期待したい。

(追記)
NEWSは1月31日発売の雑誌「BUBUKA」に未成年メンバーの一人がカラオケボックスにおいて
飲酒らしき行為をしている写真が掲載され、前年の別のメンバーの飲酒事件と絡めて
グループ全体が活動休止に追い込まれることになる。
もちろん問題のメンバーは手越祐也ではない。



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美貌の都


日時 2006年1月14日25:20〜
場所 浅草東宝
監督 松林宗恵
製作 昭和32年(1957年)

(詳しくはキネ旬データベースで)


松林宗恵監督特集3本目。
宝塚映画製作でもう完全にメロドラマ。

司葉子は関西の貧乏町工場で働く女工。彼女には同じ職場で働く宝田明の恋人がいた。
山本廉の町工場の社長の息子にも司葉子は惚れられていたが、彼女はその気が無い。
ある日、木村功扮する工場の取引先の副社長に見初められる。
木村功は大会社の社長の息子で金持ち。司葉子は貧乏暮らしに嫌気がさしていたので
木村功の豪華なプレゼントや食事、家でのダンスパーティなどにすっかり心を奪われてしまう。
そして町工場をやめ、木村功の紹介で琵琶湖のホテルで働くようになる。
やがて司葉子は妊娠、しかしそれを知った木村功は急に冷たくなる。
所詮、木村功のような金持ちのぼんぼんに取っては司葉子は単なる遊び相手。
それでも司葉子は木村功の愛を信じるお馬鹿さん。司葉子の知り合いの淡路恵子は実は木村功の
昔の恋人で、彼女の一計によってやっと木村功に捨てられたことを知る。
その頃宝田明は別のあばずれ女と付き合っていたが、そっちと別れて最後は司葉子とよりを
戻してハッピーエンド。

わあ、すごいべたべたの恋愛ドラマだなあ。
こういう恋愛ドラマには興味がないので、正直見ていてつらかった。
宝塚映画なので阪急電車が頻繁に登場。
登場人物の宝田明の中学時代の先輩役の小林桂樹は阪急の駅員役。
そして阪急梅田駅の全景などが登場し、周りのビルが随分低いのには驚く。

あとは木村功の女友達(というか婚約者)役で扇千景。丸々とした顔にくりっとした目で
この当時は実に可愛い。今のふてぶてしい顔つきとはえらい違いだ。
やっぱり政治の世界に入ると人相が変わってくるのだろうなあ。彼女もずっと女優だったら
今でもそこそこきれいだったかも知れない。
あと淡路恵子と木村功が再会して二人で京都を歩くのだが、そこが金閣寺。
放火前かな?と思って調べてみたら、放火があったのは昭和25年、再建が昭和30年。
完全に再建後でしたね。勉強しました。

そんなところです。
興味のないジャンルの映画なので記憶にも残りにくかったです。



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社長道中記


日時 2005年1月14日23:45〜
場所 浅草東宝
監督 松林宗恵
製作 昭和36年(1961年)

(詳しくはキネ旬データベースで)


これだけ東宝映画を見てる割にはほとんど見ていない森繁の社長シリーズ。
そのうちの一本。

森繁久弥の太陽食品の社長は女が大好き、今日も夜な夜なバーに通っては淡路恵子の
バーのマダムを口説いている。
左卜然の会長から大阪支店の売り上げが落ちていると叱責され、自ら大阪に行って
陣頭指揮をとることに。
浮気を心配する妻(久慈あさみ)の命令で社長の大阪出張の随行に堅物社員の
小林桂樹が行くことになり、森繁は行く先々で女を口説こうとするのを小林桂樹
に邪魔される羽目に。

一体こいつらいつ仕事してるんだ?と思いつつ話は進んでいく。
今の時代に見ると随分楽な時代に見えるが、当時としても別にこんなことで商売が成り立った
わけではあるまい。
あくまで映画だ。

大阪出張はまず特急こだまで行くのだが(新幹線開通前だ)美人の隣に森繁が座りたがって
座席を無理やり変わらせたりするあたりから小ネタの連発。
で、大阪支社長が三木のり平で社長の夜のサービスの段取りしか考えていない。
が、旅館に泊まれば森繁が女のマッサージ師を呼んでも、やってきた塩沢ときの
マッサージ師を小林桂樹が追い返し、代わりに八波むと志のあんまがやってくる次第。

そんな感じで万事ベタな笑わせどころが続くのだが、途中、社員の慰安と新規取引先の
社長、三橋達也を交えての旅行で白浜温泉へ。
ここでの宴会で森繁、小林桂樹、三木のり平が宴会芸を披露するのだが、これがテレビCMを
生でやるというネタ。
書き割りのテレビのブラウン管にまずは小林桂樹が登場し、時報をする。
「ポ、ポ、ポ、カ〜〜ン〜〜〜〜づめ」と落とす。(森繁の会社は缶詰会社)
あまりにベタなギャグなので笑いが止まらなかった。
この後、森繁や三木のり平が缶詰の着ぐるみを着てなにやら馬鹿なことをする芸をする。
が、肝心の三橋達也が笑わないので「社長にもなってこんな馬鹿なことやってられんよ」
と森繁が愚痴をこぼす(多分、アドリブだろう)

その後も森繁が用意した精力剤と小林桂樹が用意した睡眠薬を取り違えたりとかオチが
予想されるような予定調和的な笑い満載で、最後は三橋達也の会社と取引が決まって
万々歳!という現実には有り得ないような展開で終わり。
この文章を読み返すとつまらなかったような感じだが、そんなことは無い。
充分笑った。
但し、こういう映画が2、3本ならともかく何十本と作っては日本映画の安易さを
感じてしまう一面もあるのだけれど。

社長シリーズ、まだまだ見てない作品が多いので、少し追いかけて見て見たい。
でもなかなか時間がないなあ。



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がんばれ!盤嶽


日時 2005年1月14日22:05〜
場所 浅草東宝
監督 松林宗恵
製作 昭和33年

(詳しくはキネ旬データベースで)


松林監督唯一の時代劇。
とはいっても喜劇だから歴史ものではない。

武州栗橋に住む盤嶽(小林桂樹)は道場の師匠・志村喬から娘を嫁にもらってくれと
頼まれる。もちろん盤嶽に異存はない。そのとき師匠から出された条件のために
江戸に職を探しに行く。
しかし盤嶽は栗橋から出たことが無いような世間の狭い人間で、人を疑うことを
知らない。
しかし世の中、人をだますようなことをするような奴ばかり。
そのために師匠からもらった大事な刀も人手に渡る羽目に。
しかも肝心の師匠の娘は盤嶽ではない、別の男と結婚したいと言い出してしまう。
どうなる盤嶽?

全体的に大爆笑というほどではないが、大いに笑える喜劇。
見ている間は非常に楽しい。
はじめに坂道で荷車を引いている人を押して助けてあげたら、「俺らの商売を取った!」
と人足たちからお金を脅し取られたり、茶屋でうなぎを食べたら、沢村いき雄の親父に
ぼったくられたりする。
そして志村喬から貰った刀が名刀で、それを欲しがる悪代官(安部徹)の命を受けた
かつての友人(小泉博)が刀を譲ってくれとしつこく迫ってくる。
そしてこの悪代官が山から水を引いてくるのだが、その反対派農民から用水路を守る
仕事にありつくのだが、反対派から「悪代官は自分の屋敷にその水を引き、屋敷で
乱痴気騒ぎをしているのだ」と説得され、すぐに用水路を破壊しようとする。
(この悪代官の屋敷のシーンで、露天風呂に裸女が入っているシーンがあり
上半身が映る。この頃の東宝映画では珍しい)

その後、医者の借金取りをしたり取立てに行って逃げられた代償にスイカ畑の
警備をしたり、エピソードは連続で実に飽きない。

全体的に笑いの要素に時代設定を無視した現代的感覚を取り入れているのが特徴。
農民が用水路反対を訴える集会がまるで労働組合の集会のようにのぼりを持っていたり
「同志の印」と渡されるのが赤い布(共産党の印?)だったり、江戸へ行けば
「職業安定所」に行く(その職安の入り口に求人の張り紙があったりする)
またスイカ畑の最後の日にスイカ泥棒がやってくるのだが、奪われたスイカを
盤嶽が取り戻そうとするあたりは、ラグビーかバスケットのボールを奪い合いような
感じで行われる。
(上映後、ロビーにいらっしゃった松林監督は『あのスイカのシーンはちょっとくどい。
編集でもう少しつめたほうが良かった』とおっしゃってました)

また盤嶽が一刀流で構えるとき、野球の打者のような構え方をする。
これも今の時代に見ると良くわからない笑いだが、これも松林監督の話では当時の
南海ホークスの杉崎(?)か誰かのフォームを真似たそうで、当時はここで笑いが
起こったそうだ。今の人は知らないから仕方ないが、今ならさしずめイチローの
まねをして、刀を構えたときちょいと袖を引くようなものか。

この辺の現代的要素を取り入れる感覚は知人に言わせると松林監督の師匠の斉藤寅次郎
から受け継いだもので、スイカのシーンがラグビー風なのはラグビー好きだった
山中貞雄の影響らしい。

映画全体は面白かった。



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ナルニア国物語 第1章:「ライオンと魔女」


日時 2006年1月7日23:05〜
場所 ソウル・ロッテシネマ・ミョンドン(明洞)スクリーン5
監督 アンドリュー・アダムソン

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日本ではまだ未公開だが、韓国では正月映画。一般的に韓国のほうがハリウッド映画の
公開は日本より早いらしい。
私が見たのはミョンドンのロッテデパート内のロッテシネマ。
日本と同様のシネコンだが、スクリーン数は5つ。
スクリーンが7つ、8つが普通の日本のシネコンに比べると小規模。
ただし、これは繁華街のシネコンなので、日本のように郊外に行けば7つ、8つが
普通なのかも知れない。
このとき他に上映されていたのは「キングコング」、あとは韓国映画だった。
韓国では自国の映画産業保護のため、年間にある一定日数韓国映画を上映しなければ
ならない法律があると聞いたことがある。
ひょっとしたら外国映画は日本の方が公開される本数が多そうだ。

もちろん私が見た「ナルニア〜」は英語セリフの韓国語字幕。
だからストーリーの詳細は理解していない。

肝心の映画のほうはのっけから第2次世界大戦下、ドイツ空軍によるロンドン空襲のシーンから始まる。
予備知識なしで見ていたのでてっきり別の映画の予告編をやっているのだと思い込んだら
これが「ナルニア〜」の始まりだったのだ。
ある4人兄妹がロンドンから田舎に疎開し、疎開先のお屋敷でかくれんぼをしたところ、
末っ子の妹が大きなクローゼットに隠れたら、服をくぐり向けるとそこには雪のナルニア国
につがっていた!という展開。

そこで下半身が馬の人間と出会い、末っ子の妹は仲良くなり、一旦は元の世界に帰る。
兄や姉に言っても信じてもらえない。しかし、下の兄が今度はナルニア国に紛れ込む。
そして今ナルニア国を支配している氷の女王と出会う。
下の兄ももとの世界に帰る。
しかし、今度は兄妹4人ともナルニア国に紛れ込む。
そして英語をしゃべるビーバーたちに案内されて、今はナルニア国を追われているナルニア国の
本来の国王・ライオンに会う。
彼らは力を合わせて氷の女王からナルニア国を奪い返す。

クローゼットを突き抜けたらそこは別世界だった、という展開がいいですね。
子供の頃、押入れとかが別の世界につながっていたら・・・というのには随分あこがれました。

そして言葉をしゃべり、表情も豊かなビーバーやいたち。
もちろんCGなんですが、もう単なるCGの域を超えていて、実に自然。
最早CGがどうとか言う時代は終わって、CG自体云々する時代は終わった感がした。
それくらい自然なのだ。
一つの技術として完成したといっていい。

結局、兄妹達とライオン国王とその部下の下半身が馬の人間達は力を合わせ、ナルニア国を
氷の女王から奪い返し、氷に閉ざされた世界からもとの緑豊かな国に取り戻す。
めでたしめでたし、だ。

しかし「ハリー・ポッター」と違って主人公が美少女、美少年ではない。
末っ子の妹なんか前歯がすきっ歯であんまり可愛くないし、兄たちも美少年というほどでは
なく、どちらかというと普通の男の子。
「どこにでもいそうな子が経験する大冒険」というのが話の親しみやすさだとは思うが、
個人的には映画のビジュアルとして美少女、美少年のほうがよかった。

でも変な見方かも知れないが、この映画がロンドン空襲のシーンから始まったのが気になった。
都会の子が田舎の屋敷に行った、という展開が必要なのはわかるが、戦争中である必要が
あったのだろうか?
この辺は原作のバックボーンを何も知らないので、滅茶苦茶無知な感想なのかも知れないが、
「ナルニア国=英国」「氷の女王=ヒトラー」みたいな裏の意味があったのだろうか?
もしそうなら「戦意高揚小説」だったように思う。
最近「男たちの大和」とか戦争映画を多く見るので、何でも結びついてしまうのだ。

とにかく英語セリフ、韓国語字幕という日本語がまったく無い環境で見たので、ストーリーの
詳細に理解できなかった点もあった。(主人公達に武器をプレゼントしたのは誰?サンタクロース?
何故ライオン国王は一人で氷の女王の元に行ったのか、などなど)
これは僕の語学力によるもので、映画の出来とは関係ないが、日本公開の際にはちょっと確認の
ために再見してみようかと思う。



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明日に向って撃て!


日時 2005年1月3日10:30〜
場所 ヴァージンTOHOシネマズ六本木ヒルズ・スクリーン4
監督 ジョージ・ロイ・ヒル
製作 1969年(昭和44年)

(詳しくはキネ旬データベースで)


1890年代の西部に実在した二人組の強盗、ブッチ・キャシディ(ポール・ニューマン)と
サンダンス・キッド(ロバート・レッドフォード)をモデルにした西部劇。

この映画は75年ごろのリバイバル公開時に見ている。
この映画が目的ではなく、何かの同時上映(確か「チャップリンのサーカス」)を見に行って
何の予備知識もなく見た映画だ。
西部劇には関心の無い私だが、結構面白く見て、またBJ・トーマスの歌う主題歌「雨に濡れても」
が気に入ってサントラLPまで買った。
そのサントラは何度となく聞いたし、実は今でも(CDでだが)聞いている。
映画のほうは初めて見て以来、30年も見ていないのだが、(別に避けていたわけではなく
優先順位が低かったから)今回見直して当時の印象とはえらく違っていたのに驚いた。

見た当時の記憶ではポール・ニューマンとロバート・レッドフォードの掛け合いが面白く
コメディ・アクションという記憶だった。
当時笑った列車の金庫の扉を爆破しようとして火薬が多すぎて金庫ごと破壊されてしまい、
お札が宙に舞うシーンとか、断崖で追い詰められた彼らが言う有名な「俺は泳げないんだ!」
というところも大して笑わなかった。

今回見て感じたのは、やることなすことうまくいかず最早銀行強盗でやっていけるという
時代は終わるという焦燥感だ。
彼らがアメリカを去るとき、「未来の乗り物」として自転車が登場するのだが、その自転車に
向かって「何が未来だ」というセリフに象徴される。

もうオープニングから銀行の下見に行き、警戒が厳しくて強盗など出来そうもなくあきらめるところ
からスタートする。
そして列車強盗をするが、鉄道会社が雇った追っ手は優秀で逃げても逃げても追ってくる。
最早自分達の時代ではなくなってきている。
新天地と思われたボリビアも着いてみればただのど田舎。
でもここの銀行強盗は楽だった。
一時、昔のような日々を取り戻すが、それも長くは続かない。
彼女(キャサリン・ロス)にもついに愛想をつかされる。
終いには軍隊に囲まれるという惨めな最期。

時代に取り残されていくアウトロー。
正直、今見ると映画を覆う暗さばかりが目立った。
しかしこれがこの映画が製作された1969年という時代だったのかも知れない。



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