2007年3月

日本一のホラ吹き男 バッテリー アンフェア the movie 動脈列島
背徳のメス ひろしま トイレット部長 Water
脅迫(おどし) 雨は知っていた 東京スパイ大作戦 絶対の愛
バブルへGO!!
タイムマシンはドラム式
悪魔が呼んでいる その壁を砕け 不連続殺人事件


日時 2007年3月31日18:50〜
場所 シネセゾン渋谷
監督 黒沢清

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東京湾岸の警察署の刑事、吉岡(役所広司)は若い恋人(小西真奈美)がいるのだが、
なんとなく結婚するでもなく、日々を過ごしていた。
海水で溺死させられる殺人事件が発生する。
事件の現場に自分のコートのボタンが落ちていたり、死体の爪に自分の指紋が付いていたりする。
自分は殺していないのになぜ?
そして第2第3の事件が発生。
やがて吉岡は赤い服を着た女の幽霊を見るようになる。

「叫」と書いて「さけび」と読む。
パンフレットでも何でもやたら「叫(さけび)」とカッコ書きで読み方が書いてある。
そんなに読みにくいタイトルなんてやめときゃいいのに。

で映画のほうなのだが、つまらなくはないが特に面白くもない。
大好きな役所広司が刑事役でミステリー風の感じだったので見に行ったのだ。
予告を見ると「連続殺人事件の自分が犯人としての証拠が次々と現場から見つかる」というような
内容かと思ったら、自分が犯人ではないかと思えてくるのは最初の事件だけ。
あとはちゃんと犯人がすぐに捕まる。

黒沢清の映画は「回路」以来だが、彼の映画には固定ファンもいるようだが私には
あわないなあ。
別に怖くもないし、結局のところ精神病院で死んだ女性が成仏できずに自分のことを
見つけてくれた人々にとり憑いて殺人を犯させる、みたいな内容でしょ?
面白くもなんともないのだよ。

ミステリー風の展開だから、一応はストーリーに惹かれるし、何より主演が大好きな
役所広司だから腹の立つようなこともなかったけど。

途中、第二の事件の犯人が役所広司に追い詰められて3階建てくらいのビルの屋上から
飛び降りるのをワンカットでとらえ、またラストには廃墟になったかのような、ゴミや
新聞が舞っている倉庫街が写り、この2点は「回路」にも似たようなシーンをみたので
黒沢清のお決まりなのかな?と思ったりした。

多分もう黒沢清の映画は見ないな。
そうそう書き忘れたけど、第3の殺人事件の被害者が野村宏伸だとは気づかなかった。
太ったなあ。



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日本一のホラ吹き男


日時 2007年3月29日21:00〜
場所 テレビ東京
監督 古澤憲吾
製作 昭和39年(1964年)

「日本一のホラ吹き男」については「名画座」に記しました。



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バッテリー


日時 2007年3月24日16:45〜
場所 ユナイテッドシネマとしまえん・スクリーン1
監督 滝田洋二郎

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少年野球の天才ピッチャー原田巧(林遣都)は父の転勤に伴い体の弱い弟のため、
ふすが住む田舎町に引っ越してきた。
そんな町で少年野球のキャッチーの豪と知り合う。彼は巧の豪速球を受けることが
出来た。

累計800万部を超えるベストセラー小説だそうだが、まったく聞いたことがなかった。
単なる私が世間知らずなだけか??
それでも見に行ったのは予告編で見た主人公・原田巧を演じる林遣都の美少年ぶりに
惹かれたから。
かつての岡本健一を思い出させる美少年だ。

で肝心の映画のほうだが、この後巧のこの町での野球生活が始まるのだが、これが困難ばかり。
弟は病弱で激しい運動をするとすぐに熱を出してしまう。母からは「弟に見せつけるような
野球をしないで!」と責められる。親友となった豪の親からも「豪に野球を辞めるよう言って」
といわれる。
中学に入れば風紀委員は厳しいし、野球部の顧問からは「坊主頭にしろ」「俺の言うことが
聞けないなら野球部を辞めろ」といわれる。
先輩からはすぐにレギュラーになった巧に嫉妬して暴行は受ける、それが学校にばれて
校長からは野球部の活動停止を命じられる、こっそり試合をすれば相手チームの監督からも
怒られる。

もう踏んだり蹴ったりの野球生活だ。見ていてかわいそうになるよ。

そんな中、巧の常に不満そうな常にイラついている顔とそれを中和させる豪の柔和な笑顔、
この二人でこの映画は持っているようなもの。
映画自体はネチネチした暗いドラマで、「野球映画」っていうと笑いと涙にあふれたような
明るい爽快感のあるものを期待した私には見ていて楽しくなかった。

ただし主役の二人(林遣都、山田健太)そして弟青波役の鎗田晟裕(ヤリタ・アキヒロ)
のうまさには驚く。
今後が期待される三人だ。(しかし林遣都とか鎗田晟裕とか憶えにくい名前だな)



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アンフェア the movie


日時 2007年3月24日14:10〜
場所 ユナイテッドシネマとしまえん・スクリーン5
監督 小林義則

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警視庁公安部の刑事、雪平夏見(篠原涼子)は警察内部の不正を記録してある文書を
追っていた。そんな中、雪平を狙ったと思われる自動車の爆発事故があり、雪平の
娘のベビーシッターが死亡、娘も怪我をして、豊洲警察病院に運ばれた。
しかし、その日、警察病院は何物かによって占拠された!
犯人達の要求は警察の裏金80億円。その病院には警察庁長官も検査入院していて
人質に取られている。
雪平は娘の救出のため、単身病院に乗り込む。
ただし警察内部に内通者がいるらしい。

2006年のTVシリーズの映画化だが、TVの方は見ていない。
映画をたくさん見るので、テレビまで手が回らないのだ。
しかし、私が今の日本の女優で一番好きのなのは実は篠原涼子。
彼女が拳銃を構えるスチルのかっこよさに惹かれて見に行った。

裏切り者を裏切る逆転の人間関係が面白い。
誰が信じられるのかさっぱり解らない。味方に見える行動も実は見せ掛けだけの
行動かも知れないのだ。
そういうドラマは見ていて飽きない。
TVシリーズから引き続いての出演者も多いから、その辺の前のエピソードや
人物設定を知っているとますますその意外性があって面白かったろう。

但しテロリストが病院を占拠したという「テロリストもの」としては面白くない。
「要塞を相手にするようなもの」という説明が返って災いし、雪平があっさり
排水工から潜入するあたりで少し、こちらは砕ける。
さらに江口洋介が簡単に爆弾を処理する。(裏はあるにせよ)公安の刑事が
爆弾を処理するのはどうも・・・・
突入しようとする警察、それを阻止しようとするテロリストたちの心理戦、
みたいなものの楽しみはないので、やはり脚本の弱さを感じてしまう。

そうは言っても最後まで犯人の同士でも裏切りがあったり、クレジットが
終わった後ももう一つヒネリがあったりして意外な展開は楽しめる。
しかし全体的には軽い感じで、見てるうちは面白いがみたらすぐに忘れそうな映画。

あと江口洋介のワンパターン演技は飽きた。もうキムタク並だ。
寺島のサングラス姿もなんかワンパターンだなあ。
これが西村晃だと同じような役をやっても飽きが来ない。
みてるこちらの問題だろうか?
それともやはり西村晃と彼らでは懐の深さが違うのかな。

もう一つ余計なこと。
ピントと露出はちゃんとしましょう。
多分テレビモニターで見ればきれいなんだと思うよ。
同じ日に「バッテリー」を見たのだが、こちらは画がちゃんとしていて、少なくとも
汚いとは思わなかった。



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動脈列島


日時 2007年3月21日15:00〜
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 増村保造
製作 昭和50年(1975年)

(詳しくはキネ旬データベースで)


名古屋市における新幹線騒音公害はひどいものがあった。
新幹線が市街地を通るときの騒音と振動により周辺住民は苦しい生活を強いられていた。
そんな中、名古屋大学医学部の研修医、秋山宏(近藤正臣)は騒音公害により
患者の一人を死なせてしまった。
そんな時、新幹線こだま号から組み立てが完了していない爆弾が発見される。
中にあった脅迫状には新幹線公害を解決する要求が書いてあり、受け入れられなければ
10日後に新幹線を破壊するという。
警察庁はこの捜査チームの責任者にエリートの滝川(田宮二郎)を任命する。
滝川は新幹線公害の被害者もしくは同情者の線から、秋山を犯人と断定する。


今は聞かれなくなった名古屋新幹線公害をテーマにしたサスペンス映画。
当時、新幹線は開業10年を迎え、新幹線の功罪というものが話題になる時期だった。
またこの年は夏に東映が「新幹線大爆破」を公開し、9月に東宝がこの「動脈列島」を
公開した。(併映は確かチャップリンの「給料日」だったと記憶する)
なぜこんなことをいちいち書いたかというと、この映画が公開された頃は自分にとって
映画を見始めた頃で、この映画は特に印象が深いのだ。

正直言ってみた当時は10代前半だったのだが、面白かった記憶はない。
随所にしょぼさを感じた覚えがある。
今回、その評価は正しかったのか確認するために32年ぶりに再見してみた。

結果を言うと記憶の通りだった。
秋山は次に新幹線を脱線させることや、新幹線を一時停止させることを予告し、
実行する。この辺の捜査陣との駆け引きや、捜査陣が犯人を秋山と断定していく
過程はまあ面白い。
当時はそんな言葉はなかったが、滝川はアメリカに研修に行っただけはあって今でいう
プロファイリングで犯人像をどんどん絞っていく。

もっとも新幹線を停止させるところでは国鉄の協力がないので、線路上で新幹線を止める
カットが撮れず、徐々に停止させるところはスローモーション効果でごまかし、
新幹線が完全に停まったカットは映像をストップさせているだけ、というのが当時の私にも
解ってしまい、「しょぼいなあ」と感じた覚えがある。

だが、クライマックスの転覆計画にいたっては、犯人、捜査陣ともずさんすぎる。
秋山は愛知県の林業を営む実家にあるブルドーザーを持ち出し、転覆現場に運んでおく。
ここでまずおかしい。
犯人がわかっているのだから、その実家には立ち寄る可能性もあるとして張り込みの警官を
置いておくのが筋ではないか。
また秋山の実家に行った滝川がブルドーザーが持ち出されたことを気づいた後に
警察のヘリでブルドーザーを発見するのだが、警察はブルドーザーの周りを警官で固めただけ。
だがよーくチェックすればリモコン操縦出来るとわかったのではないか。
そして秋山は大検問網をかいくぐって現場に近づくのだが、検問の警官がミスばかりをして
見逃される。
滝川たち捜査本部も現場の警官が見逃さないか心配するのだが、「優秀な警官に当たるか、
ボンクラな警官に当たるかは運次第」といういい加減ぶりである。
この辺、シナリオが雑。

ラスト、ブルドーザーが秋山のリモコン操縦によって暴走するのだが、秋山は現場に
いるのだから、警官によって探されないのか?
そして肝心のブルドーザーだが飛び乗ってキーを抜いて止まるという簡単なオチ。

当時の私は「タワーリング・インフェルノ」(ちょっとジャンルが違うが)などを見ていて
「やっぱり日本映画はしょぼい」と嘆いた覚えがある。でも日本映画嫌いにならなかったのだから
やはり、なんらかの魅力は感じていたのだな。

ラスト、秋山が逮捕された後も走り続ける新幹線のショットがサイズを変えて繰り返し
写されるのが印象的。
また冒頭で新幹線公害を説明するシーンでドキュメンタリー風の映像の中で、新幹線の振動で
屋根のかわらがずり落ちるカットも象徴的だ。

あと関根恵子が秋山の恋人役で、冒頭、ベッドシーンを披露。そのおっぱいが印象的だった。
また後半、秋山を助ける女性として元看護婦のホステス(梶芽衣子)が登場。
でもこの辺のべたべたはいらないんだな。
(関係ないが、この当時の梶芽衣子、今の柴咲コウに似ている)

あとは警察庁長官役で小沢栄太郎。滝川が「ご恩に報いるときが来ました」と言われると
「白い巨塔」コンビの復活だった。
出演は他には秋山の上司に佐原健二、国鉄総裁に山村総、新聞記者に神山繁や鈴木瑞穂、
刑事に小池朝雄、井川比佐志、勝部演之、野党議員に渡辺文雄、TV局ディレクターに峰岸徹
などなど。



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背徳のメス


日時 2007年3月21日13:00〜
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 野村芳太郎
製作 昭和36年(1961年)

(詳しくはキネ旬データベースで)


産婦人科医の植(田村高広)は大阪の阿倍野にある病院の勤務医。
ある日、自分も立会い、産婦人科医長(山村聡)が手術した患者が死亡する事件が
あった。その女はヤクザの情婦で、死んでからヤクザが医療ミスだとして慰謝料を
請求してきた。
植はかつて妻が不貞を働いてから、女性を信用しなくなり次々と女と変え情交を
重ねる男だった。ある日、当直の日に寝ている部屋のガス栓が開き、あわやという
ところで発見され、九死に一生を得る。
この事件は事故なのか?それとも故意なのか?
植に恨みを持つ女の犯行か?今回の医療事件がらみなのか?

野村芳太郎監督のサスペンス作品。
犯人は誰か?というより病院内のどろどろとした人間関係の面白さがコア。
田村高広が次々の女を変える男を演じ、また善玉親分のイメージが強い山村聡が
珍しく(僕の中では)相手を見て診療態度を変える悪役の医者を演じる。

田村高広たちの病院は大阪の通天閣の見える阿倍野にあり、どっちかというと
ガラの悪い町。
病院の近くには連れ込み旅館が並び、もちろん街娼も多く、患者としてもやってくる。
そんな町だからでもないだろうが、田村と関係を持つ看護婦が見た目が街娼みたいなので
人間関係が少し混乱した。

そんな中で久我美子が上司である山村聡を慕う婦長を演じる。
33歳にして純潔、というオールドミスなのだが、これがなんだか怖いのだなあ。
にらまれるとすごく迫力がある。
(しかし33歳でオールドミスと言われるというのが時代を感じる。今なら別に珍しくない)

結局、犯人の察しは付くので、ミステリーとしての面白さはあまりないのだが、
この久我美子の婦長の迫力が記憶に残る。
でも正直言って野村芳太郎ミステリーとしては出来は悪いほうではないか?



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ひろしま


日時 2007年3月21日10:30〜
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 関川秀雄
製作 昭和28年(1953年)

(詳しくはキネ旬データベースで)


昭和28年の広島のある高校。岡田英次が担任のクラスの生徒に体調不良を
訴える生徒がいた。
原爆症によるものと思われるが、一部の生徒はその生徒を「何でも原爆のせいにする
怠け者」のように言う空気もある。
岡田英次の教師も広島出身ではなく、あの日の広島は体験していない。
映画は、ここから「あの日の広島」を描いていく。

昭和28年製作の広島原爆を正面からとらえた渾身の映画!
(ちなみに日教組が製作の母体らしい)
広島の惨状を再現し、超重量級の作品だ。
原爆投下直後の広島の惨状のシーンは私がこの映画で想像していた以上に迫力の
ある映像が展開される。
今村昌平の「黒い雨」もすごいと思ったが、この映画も長さ、迫力ともに負けていない。
というか「黒い雨」の映像はこの映画を参考にされたのではないか。

加藤嘉の演じる遠藤は崩れた家から妻を助け出せずにやむなく自分の家を離れるという
凄惨なシーンから始まり、この遠藤をとして広島の様子を描く。
骸骨のような表情をした加藤嘉に案内される広島はまさに地獄図だ。

新型爆弾を調査した学者は「戦争はまだ継続中。人々を混乱させるような情報は
控えねばならない」という理由で軍部は原子爆弾を過小に発表しようとする。

映画の冒頭の岡田英次のクラスの生徒達の原爆に対する関心の低さが事実ならば
戦後もGHQによる報道管制により、原爆の被害の実態がまだまだ日本人には
わかっていなかったのかも知れない。

やがて遠藤は自らも原爆症で倒れ、疎開していた遠藤の子供たちと病院で
再会する。しかし変わり果てた遠藤の姿に娘は父とは解らず、どこかへ行ってしまう。
やがて終戦。
しかし遠藤の息子幸夫は家もなくなり、親もなくし、浮浪児になるしかない。
多くの子供達もそうだった。
原爆でやられた人間は体は蝕まれ、家や財産もなくし、貧困から抜け出せない。
働こうにも体が動かない。
浮浪児になった子供たちは原爆ドームを見に来た観光客に放射能を浴びた石や
瓦を売るしかない。

原爆の悲惨ささえも商売にしなければ生きていけない。
やがて幸夫は宮島にあった防空壕の死体の頭蓋骨をアメリカ人観光客に
「歴史上初めて栄光の光を浴びた」という説明書きをつけて売ろうとする。

単なる「原爆は悲惨だった」では終わらない迫力がある。
また映画は警察予備隊の発足のポスターをも映し出す。
昭和28年という時代で、もう再軍備への恐怖が描かれる。


直接は関係ないが、この映画の音楽は伊福部昭。
原爆により破壊された広島の街に伊福部サウンドが響き渡る。
このシーン、ゴジラにより破壊された東京のシーンにそっくりなのだ。
この映画と2本立てで「ゴジラ」(1作目)をみると少し、違った映画に見えてくるような気がする。
原水爆のメタファーとしてのゴジラの印象は今よりもっと激しかったのかも知れない。



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トイレット部長


日時 2007年3月18日13:00〜
場所 フィルムセンター
監督 筧正典
製作 昭和36年(1961年)

(詳しくはキネ旬データベースで)


笠島(池部良)国鉄本社の営繕課の課長。営繕課とは駅の設計、補修を行う部署だが、
実は駅のトイレの改良が大きな仕事。
仕事一筋の笠島は家でも駅のトイレの話題ばかりで妻(淡島千景)から嫌がられている。
また部下で新入社員の三上(久保明)は国鉄に入ったのはトイレの補修をするためじゃない
と不満たらたら。
そんな中、妻の姉から頼まれその娘の純子(浜美枝)をしばらく下宿させるようになる。

国鉄のトイレ補修に力をそそいだ人の話、と聞いていたし、冒頭、原始時代や戦国時代の
トイレ事情を説明するシーンがあったので、「プロジェクトX」的な仕事の苦労譚が
聞けるのかと思ったらさにあらず。
サラリーマンのホームドラマ喜劇だった。

久保明は「仕事のことで相談がある」と上司に相談を持ちかけ、池部良は家に招く。
そのときに浜美枝と知り合って、一目ぼれ。
浜美枝とのデートを重ねるうちに数回のデートで結婚へ。
池部の方も小さな口喧嘩から夫婦の仲が気まずくなったところへ、幼馴染の森光子が
現れ、別に何するつもりもないのだが、ますます妻の機嫌を損ねる。
久保明と浜美枝の結婚式で二人の仲人をする池部夫妻。
そのときのスピーチで「結婚はゴールではなく、新しい始まり。二人の仲が冷えてから
本当の夫婦の暮らしが始まる」というような若い二人というより、自分の妻に向けた
メッセージを言って池部夫妻は仲直り。
めでたし、めでたしという次第。
なんだか先日みた「サラリーマン目白三平」に似ていた。

この映画はやっぱり池部良という天下の2枚目がトイレの話題をすることだろう。
普段なら小林桂樹がやりそうだし、やってもおかしくないのだが、そういう3枚目的な
役を池部良がするところが面白かった。

出演では池部の部下で久保の先輩社員で藤木悠。「課長、名案があるんですが」といつも
なんらかのアイデアを持ってくる。その中で「トイレットペーパーに広告を印刷すれば
国鉄の赤字解消にもなります!」というアイデアは現実的で面白かった。
そうか、その頃から国鉄は赤字だったのか。
あとは東京にやってきた浜美枝は美容学校に通うのだが、そこの先生が塩沢とき、同級生で
浜美枝に惚れていてモーレツにアタックするが振られるコメディリリーフに桂小金治。

バランスの取れたサラリーマン喜劇。



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Water


日時 2007年3月17日21:15〜
場所 渋谷Q−AXシネマ1
監督 吉田修一

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長崎の高校生・凌雲(滝口幸広)と圭一郎(川口覚)は水泳部の親友同士だった。
卒業後の進路を考える時期に来ていたが、圭一郎は東京の大学に進学するらしい。
いつも一緒にいた圭一郎がいなくなることに凌雲は不安感を憶えるようになる。

芥川賞作家・吉田修一の小説を映画化した28分の短編映画。
短編映画だから前売は1000円で入場時にパンフレットがもらえる。
28分の映画だが、公式HPはしっかりある。

長崎が舞台で高校生が主人公で同性愛が出てくれば、私はもう「渚のシンドバット」を
思い出してしまう。
実際、ロケ地とか風景がなんとなく似通っている(坂の多い長崎が出てくればそのつもりは
なくても似てくるのは仕方あるまい)

トップシーンは凌雲と圭一郎が水泳の練習のあと、シャワー室でシャワーを浴びるシーンから。
もろ全裸になった二人が(見てるこちらは性器が写ってしまわないかとヒヤヒヤするのだが)
「お前東京に行くんだって?行くなよ」という会話をして、凌雲は圭一郎に後ろから腕を
首に絡め「行くなよ、な?」。
もうゲイテイストいっぱいだ。

その後、圭一郎の彼女、藤森(小出早織)なども絡んでくるが、圭一郎も凌雲のことは
気になる存在なわけで、凌雲に「ジャンコクトーって知ってるか」「『白書』って小説
知ってるか?」と聞いてくる。
凌雲は圭一郎の部屋でそのジャン・コクトーの「白書」という小説を見つける。
開いてみると男性性器がモロに描かれた卑猥なイラストが並んでいる。
その本を見てしまった凌雲、見られてしまったことを知った圭一郎。
圭一郎はとっさにたまたまきていた藤森にキスをしようとする。
嫌がる藤森。凌雲は圭一郎を藤森から引き離し、彼の口に手をあてその手に凌雲は
自分の唇を押し付ける。

「渚のシンドバット」ほどストレートではないのだが、逆にこのくらいに薄めたほうが
インパクトが強すぎなくていいかな。

モーニングショーとレイトショーの1日2回の上映だが、本日は出演者と監督の舞台挨拶付き。
28分の映画だが、舞台挨拶は15分行うというアンバランス。
撮影は1週間で2004年に行われた(つまり3年前)だそうで、出演者にしてみても
司会者に「撮影秘話は?」と聞かれても答えに困るだろうなあ。



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脅迫(おどし)


日時 2007年3月17日17:00〜
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 深作欣二
製作 昭和41年(1966年)

(詳しくはキネ旬データベースで)


ある大企業の営業部長の三沢(三国連太郎)とその家族は部下の結婚式の仲人を務め
家に帰ってみたら二人の侵入者がいた。
一人は死刑の宣告を受けた脱獄囚・川西(西村晃)、もう一人はその脱獄を手助けした
サブ(室田日出男)だった。
二人は海外逃亡の資金稼ぎのため、ある医者・坂田(三津田健)の孫の赤ん坊を誘拐して
きていたのだ。
川西達はその身代金の受け取りを三沢にやらせようとするのだが・・・・


実はこの映画を見る直前まで深作作品だとは知らなかった。
ラピュタのミステリー特集は内容は知らなくても今回の特集で選ばれている、という
理由だけで見ている。

三沢が如何にして警察と連携して家族を救おうとするか、という話にはならず、
そのまま三沢は言いなりになるままに誘拐の身代金の受け取りを手伝う。
この「脅迫」の二重構造が面白い。
三沢がバカ丁寧に「坂田さんですか?」と電話をするあたりは少しこっけいだ。

一回目の身代金の受け取りはまずは京王デパート屋上。
三沢は内田良平の浮浪者に「12時15分になったらあそこからあそこまで歩いてください」
とお金を渡す。そしてデパートのお客様呼び出しを利用して坂田を呼び出し、歩いている男
(内田良平)に金を渡すよう指示。
ところが刑事が張り込んでいて内田を逮捕。その混乱に乗じて三沢は金の入ったかばんを
奪おうとするが失敗。

三沢は街をふらつき、一度は自分ひとりだけどこかに行ってしまうおうかと電車に
まで乗ったが、やっぱり恐怖しかないところだが自分の家に帰る。

「あいつ一人に任せちゃ置けねえ」と今度は川西もサブも三沢の妻も子供も誘拐してきた
赤ん坊も連れて、身代金の受け取りへ。
川西の指示の元、坂田を都内で連れまわし、ついに三沢に金を受け取らせることに成功する。
ところが!という展開。

脅かしていたはずの川西たちが、金を手に入れるためには三沢をうまく使わなければ
ならないのに三沢がなかなか帰ってこなかったり、やがては振り回されるようになるという
2重3重の脅しの逆転が面白い。
西村晃が相変わらずの悪役振りがうまい。
もちろん三国連太郎だけあって負けていない。

深作欣二は街をふらつく三国の姿をハンディカメラでとらえるのだが(こちらの極私的な理由だが)
二日酔い気味の頭で見たので、揺れる画面はやや気持ち悪くなった。
あとスチール写真を多用した画面つくりも深作らしい。

本筋とは関係ないが、三国の妻が春川ますみで、その子供がまだ子役時代の穂積ぺぺ。
後の青春ドラマの高校生役が印象に深い人だけにその子供振りには笑った。
あとラストの西村晃や室田日出男との対決が高島屋が出来る前の新宿南口。
懐かしい風景だった。



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雨は知っていた


日時 2007年3月17日15:00〜
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 山本迪夫
製作 昭和46年(1971年)

(詳しくはキネ旬データベースで)


バーのマダムをしている佐久間章子(南風洋子)と娘のみどり(鳥居恵子)は仲のよい
親子だった。ある日、夜の外食の約束をしたのだが、章子は待ち合わせの場所に現れなかった。
店に行って聞いてみるとマネージャー(新田昌玄)が章子が美容院で西本という人物に
呼び出されたことを調べてくれた。
西本は店の常連客である会社の技術部長だった。彼を訪ねたみどりだが、西本は彼の
マンションで殺されていた。みどりはその部屋に入るときに怪しい男を見かけ、
警察にも話したのだが、あまり相手にされず母・章子が容疑者にされてしまう。

面白くない。
原因はまずは主演の鳥居恵子。主演だが、美人でもないし、まるで魅力が感じられない。
彼女がどうなる?と気分にならないし、物語に引き込まれないのだよ。
そして母親の南風洋子。こちらもバーの美人マダムという感じではなく、下町の
おかみさんの感じだから、ドラマに説得力がないのだな。

(書いちゃうけど)新田昌玄が実は何か知っているのでは?という私の考えは
当たったが、弁護士の大滝秀治が犯人側の手先なのかはっきりせずすっきりしない。
(まあ深く考えずに犯人側の手先と考えていればいいのだろうが)

章子を犯人と決めてかかる刑事も西村晃のようなインパクトのある方が演じていたら
まだよかったのだが、この刑事もどうも存在感にかける。
主要なキャストがどうも弱いので、脚本の不備がそのまま出てしまっている。
(逆に言うとキャストがよければ、話の不備を補ってくれたのだが)

ところがワンシーンツーシーン程度の出演では下條正巳、米倉斉加年、果ては
滝沢修と豪華。なにか事情があったのだろうか?

山本監督も前作「悪魔が呼んでいる」ではなかなか面白かったが、やっぱりあれは
酒井和歌子の魅力に負うところが大きかったのだな。
「悪魔〜」と同様、主人公を助ける若き正義感、が登場するのだが、この映画では
黒沢年男。こちらは「悪魔〜」の新克利よりスターの華があってよかった。



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東京スパイ大作戦


日時 2007年3月11日
場所 DVD
監督 フランク・ロイド
製作 1945年

(詳しくはインターナショナル・ムービー・データベースで)


東京クロニクルという日本で発刊している英字新聞の記者ニック・コンドン
(ジェームズ・キャグニー)は日本政府に対して批判的な記事を掲載した。
ある日、自分の部下だった記者が突然大金をつかんでアメリカに帰国するという。
別れの挨拶に行くと、記者の妻は殺されており、記者は瀕死の中でニックに
ある文書を預けた。それは日本の田中義一首相が計画する世界制覇計画に
付いての文書だった!
ニックは一旦は日本の警察に拘束されるが、帰ってきたら隠しておいた
「タナカ計画」の文書はなくなっていた。
果たしてどこへいったのか?

先日、渋谷のHMVで偶然見つけたこのDVD、日本が登場する外国映画は好きだし
(トンデモない日本を見るのがすきなのだ)何よりパブリックドメインなので380円という
破格の値段で売っていたので、つい買ってみた。

見終わって思ったのは意外とまともな日本が出てきたので驚いた。
そりゃ正確とは言わないが、おかしいというなら「007は二度死ぬ」や「SAYURI」
だって充分おかしいぞ。
1945年という太平洋戦争の真っ最中の映画の割りにはいたずらに日本を敵視した
プロパガンダ映画にはなっていない。

「タナカ計画」の文書など内容は紹介されず、ヒッチコック映画によくあるところの
マクガフィンとしての扱いだ。

記憶に残ったのは天皇の肖像写真と切腹についてのシーン。
ニックが「タナカ計画」の文書を手に入れた直後、自分の家に日本警察がやってきてとっさに
壁にかけている昭和天皇の肖像写真の裏に隠す。
そうすると日本の警察は天皇のご真影を見て思わず一礼してしまい、そこは探さないという流れ。
日本人の天皇崇拝の習慣を紹介したエピソードだ。

あと田中首相が文書をなくした責任をとって切腹する。
私も決して正式な切腹作法を知っているわけではないのだが、そんなに珍妙なシーンでは
なかった。

天皇と切腹というなんか日本的な要素がちゃんと入っている映画だった。
あと「トージョー大佐」なる悪人が登場するのだが、これが東条英機にそっくり。
明らかに東条首相をモデルにしたんでしょうね。

アカデミー美術賞も受賞しており、サスペンス映画としては面白くもなんともないが、
1945年6月にアメリカで公開されたにしては、割とまともな日本の姿に驚いた。
その点では見る価値のある映画だ。



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絶対の愛


日時 2007年3月10日18:50〜
場所 ユーロスペース2
監督 キム・ギドク

(公式HPへ)


付き合い始めて2年になる恋人達のセヒ(パク・チヨン)とジウ(ハ・ジョンウ)。
ところがセヒはジウが自分に飽きて捨てられるのではないかという不安にさいなまれていた。
「他の女を見たでしょ!」と今日もケンカしてしまう。
セヒはついにジウに飽きられないために整形して別の女になってジウの前に現れることを
決意する。

鬼才といわれるキム・ギドク監督最新作。
私にとっては初のギドク作品だ。ギドク作品だから見に行ったのではない。
見に行く目的は別にあった。それはあとで。

さすがに鬼才といわれるだけはあるなあ。
韓国の整形事情を背景にしているわけだが、「愛の不安」の世界だ。
主人公のセヒは男に飽きられないために顔を全部変えてしまうという「とんがった」行動に
出る。
セヒももともとすごい嫉妬心のある人で、ジウが車がぶつけられたことで他の女性と
話しただけで怒り出すくらいだから、もうかなりおかしい。

ここで彼女の性格を云々するより、そういうキャラクターを作り出すギドクがやはり
鬼才といわれるゆえんなのだろうな。
普通の作家ならこういうキャラクターを設定しても「悪役」というか否定的に描き出す。
しかしギドクの場合、少なくとも否定的には描いていないようだ。

整形して再びジウの元に現れるセヒ。名前を少し変えてセヒとは別人として
登場するのだが、彼に自分がセヒだと気づいて欲しいような欲しくないような。
そんな微妙な気持ちが伝わってくる。
伝わってくる一方、一歩下がってみればこの女はとんでもない女なわけで、こういう人は
自分の周りにいて欲しくないなと思ってしまう。

見てるこちらはセヒに感情移入できたり、出来なくなったりの振り子の中でギドクに
振り回されることになる。
こういうあたりが「ギドク」なんだろうな。
でもこういう「異常愛」という点では日本にも江戸川乱歩という方がいる。
乱歩のほうはこういう異常なキャラクターを生み出す一方、明智小五郎という読者が
感情移入しやすいキャラクターがあったので作品世界に入りやすい気がする。
ギドクは乱歩を知っているだろうか?
多分知らないと思うが、教えてやったら喜びそうな気がする。
「人間椅子」とか「屋根裏の散歩者」とか気に入りそうだなあ。

韓国整形事情では手術のシーンが出てきたがここは気持ち悪かった。
こういう映像は初めて見たがなかなか醜悪ですなあ。
あと主人公達が何度も訪れる、卑猥なオブジェが多数飾られている彫刻公園ね。
ちょっといってみたい気がした。

で、最初に書いたこの映画を見に行った理由。
「まぶしい一日」という私の一押しの韓国映画があるが、それに出演した杉野希紀さんが出ているから。
公式HPやパンフレットでもキャスト紹介に彼女のことが紹介してある。「ウエイトレス1」という
役だから小さな役のような気もするが、大きく紹介されているので、「名前はないが重要な役」という
位置付けなのかと思ったら、やっぱり「ウエイトレス1」の役でしかなかった。
主人公達がよく行く喫茶店のウエイトレス役で「ご注文は?」と言った程度のセリフしかなく、
出演も2シーンほど。
随分破格の扱いで紹介ですね。



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バブルへGO!! タイムマシンはドラム式


日時 2007年3月8日22:10〜
場所 新宿バルト9・シアター4
監督 馬場康夫

(公式HPへ)



キャバクラで働く田中真弓(広末涼子)は、同棲していて今はいなくなった男の借金
200万円を抱えて困惑の日々。そんな中、母が自殺し葬式をだす。
葬儀の数日後、財務省の役人・下川路(阿部寛)という男が訪ねてきた。
彼の話では彼のかつての恋人で、真弓の母、真理子(薬師丸ひろ子)は家電の開発中に
17年前に戻れるタイムマシンを偶然開発したため、バブル崩壊を阻止するために
1990年に行ってもらったが、行方がわからなくなったというのだ。
下川路は真理子を探すために真弓にも過去へ行ってほしいと言う。
真弓は仕方無しに過去へ行くタイムマシンの元に連れて行かれる。
それはなんとドラム式洗濯機だった。

映画中、1990年に行った真弓が「バブルって最高!」と喜びの叫びを上げるが
製作者はそう思っているんでしょうネエ。
さすがにテレビ業界とか広告代理店の人間だけある。
国民全員がそう思っていたわけではなかろう。

私もバブル景気の頃は知っているが、当時は滅茶苦茶忙しかった記憶だけが残っている。
景気がいいということは人不足だったわけで、私の仕事が喫茶店チェーンの店長だったせいも
あり、バイト不足で労働時間がとにかく長かった。
会社そのものも急成長中で口を開けば「人がいない、人がいない」と言っていた。
急成長していたのは景気のせいだけではあるまい。
むしろ好景気のおかげで土地の値段が高く、新規出店が進まなかったり、テナント料が
高額のため、不採算店が出る状況だった。
(そう、当時はその時の状況を「バブル景気」などと言っていなかった。景気が悪くなってから
「あれはバブルだった」と思うようになり「バブル景気」という言葉が生まれたように思う)

そんな自分の経験からすると、この映画に登場した六本木で遊ぶ人々の姿には
「へ〜そういう人もいたんだ」とまるっきり他人の話だ。
劇団ひとり扮する大学生が参加する卒業パーティーではビンゴゲームをしていて一等が200万円の
現金だったが、いくらなんでもそれはなかったのではないか?
それとも私が知らないだけで、そんなことホントにあったのか????

あの時代がいい時代だったか、よくない時代だったかは人それぞれだろう。
私のように人不足で苦しめられた人もいたし、土地の高騰でマイホームが高く、また金利も
高かったのでなかなか家が買えなかった人もいたろうし。

この映画は「あの時代はよかった」という観点で作られている。
「ALWAYS 三丁目の夕日」を見たときも思ったが、こういう「昔はよかった」式の考え方は
私は嫌いである。
そういう過去を振り返る考え方は嫌いだし、実は私は「今」が好きなのだ。

インターネットという魔法のようなものが登場し、情報については手軽にこちらから発信
出来るようになった。こうして映画の感想を自由に人に読んでもらうことが出来る。
そしてネットのおかげで数多くの友人と知り合えた。
現在の私の友人の(ネット上の友人で実際に会ったとのない人も含めて)半分はネットで知り合った人。
またDVDが登場し、好きな映画を手軽に安価に自分のものに出来る。
かつてから考えると実に夢のようないい時代になったものなのだよ。

だからいつの過去にも戻りたくないですねえ。
旅行気分でなら行きたい時代はいくらでもあるのだが。(例えば「七人の侍」や「ゴジラ」の
封切り日とかさ)

ではこの映画が終始不愉快だたったかというとそうでもない。
2007年の時代との違いに広末が戸惑ったりするのは笑ったし、当時のヒットソングが出てきたり
建設中のレインボーブリッジが出てくる風景は懐かしく楽しかった。
だから懐メロ(音楽だけでなく当時の風俗すべて)を楽しむ映画としては充分楽しめましたよ。
また最後に薬師丸が作った家電で敵を倒すあたりは、小道具の伏線が効いていて面白かった。

そうそう「三丁目の夕日」にも建設中の東京タワーが登場しましたが、この映画はでは「建設中の
レインボーブリッジ」が登場する。
この「建設中」というのが画として重要なのですね。完成していたら今と変わらなくなるし、
なければ今と違いすぎてピンと来ない。
この「建設中」という微妙な時期が映画の「画」として重要なファクターになるのだと勉強した次第です。

あとなんで洗濯機がタイムマシンの設定にしたか解りました。「泡」つながりだったのですね。

見終わって思ったのだが、この映画、2007年のリアルタイムで見るから楽しめるのであって、
10年後、2017年に見たらどんな感想を持つだろうか?
ちょっと楽しみである。


(細かいことだが、伊武雅刀の机にあったパソコン、CDドライブが付いていたが、当時はもう
搭載されていたのですか?いやこの時代のPCはよく知らないので、この疑問が正しいのかどうか
よくわからないのですが)



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悪魔が呼んでいる


日時 2007年3月4日15:10
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 山本迪夫
製作 昭和45年(1970年)

(詳しくはキネ旬データベースで)


江原ユリ(酒井和歌子)は有楽町の会社に勤めるOL。彼女の会社は旅行代理店だったが、
ある朝部長から突然解雇を言い渡される。正社員ではなく臨時雇用の身だからかまわないのだと。
それを恋人(下条アトム)に愚痴ると彼も突然別れを言い出す。アパートに帰れば大家は
今月中に引き払ってほしいという。これを機会に大手出版社に面接に行くユリ。
合格の手ごたえを感じた彼女だったが、部屋に帰れば空き巣に入られ、銀行預金は引き出された。
しかも出版社から来た通知は不採用。レストランに入れば財布がないことに気づく。
仕方無しに水商売のホステスをすればいやらしい客(大滝秀治)に触られるし、
しかも財布を盗んだ疑いまでかけられる。
失意の中で踏み切りに飛び込み自殺も考えた彼女だったが、思い直す。
それを助けてくれた若い大企業のサラリーマンは親切にしてくれたが、部屋まで無理やり
付いてきて、「僕たちは結婚するんだ」と婚姻届を見せる。ユリはその男が飲ませた薬に
よって寝てしまったが、朝になったらその男は胸を刺されて死んでいた。
ユリは容疑者として疑われる羽目に。そこへ今度はヤクザ風の男女に車に乗せられ、
ゴーゴー喫茶(クラブみたいなところ)に連れて行かれ、今度は別の若い男が現れ
「さあ結婚式だ!」と結婚を迫る。
一体何が起こっているのか??????????


若いOLに次々と不幸が襲い掛かる。ここまで連続するともう笑ってしまう。
不条理の世界だ。わけわからん。この映画は78分と短い映画なのだが、こう息もつかせぬ
テンポで不幸が訪れるとただただあっけにとられるだけだ。
こちらも主人公と同じく、おろおろしてしまう。

しかしこの後、スケベオヤジ役でワンシーンだけの出演だと思っていた大滝秀治が登場する
あたりから、徐々に真相が明らかになる。というかこちらにも察しがついてくる。
で実は殺人事件の真犯人も私は解った。
でも前半の無茶苦茶な不条理の展開が実に面白く、まったく飽きさせない。

実は見ている途中、すごく不安になった。
ここまで風呂敷を広げておいて、ちゃんと収拾が付くのだろうか。
見終わったあと、「あそこはおかしいんじゃないの?」と突っ込みを入れたくなったり
しないのだろうか?

ご心配なく。ちゃんとすべてに説明はついてます。

出演はなんと言っても主役の酒井和歌子。
昭和40年代の東宝映画ではヒロインとして大活躍した彼女だが、この映画で実に美しい。
そんな彼女がこれでもかこれでもかと不幸な目にあう姿は、痛々しくもあり、またサディステック
快感すら覚えるおびえっぷりだ。
絶品である。

共演は先ほどの大滝秀治、北林谷栄、新克利など。
ラスト、北林谷栄がなかなか見せてくれます。
これ以上はネタバレになるので書けないのですが、お勧めのプログラムピクチャアです。



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その壁を砕け


日時 2007年3月4日13:00〜
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 中平康
製作 昭和34年(1959年)

(詳しくはキネ旬データベースで)


東京で自動車修理工をしていた渡辺三郎(小高雄二)はやっとお金を貯め、中古の
ワゴン車を買った。東京と新潟で別れ別れだったが結婚を誓ったとし江(芦川いづみ)と
結婚し、二人でこの車を使って商売をし、新生活を夢見ていた。
東京から新潟まで車で向う三郎。しかし途中の村で、彼は強盗殺人の犯人と間違われてしまう。

サスペンスフルな傑作。
そもそもの強盗事件の犯人にされるあたりは、目撃者の証言だけで、物証に乏しくやや苦しい。
(例えば三郎は返り血をまったく浴びていない。奪われた15万円の金を持っていないなど)
しかしそれを補う面白さがある。

この事件で犯人を緊急逮捕した駐在所の若き警官(長門裕之)は本署の刑事になるのだが、
その長門が事件に疑問を抱く。
犯人の渡辺とは歳も近い。彼が乗っていた車をじっと見るうちに、「苦労して車も
買ってきれいな婚約者もいてその婚約者に久々に会いに行くというのに
流しの強盗などするだろうか?」と疑問を持つシーンがいい。
セリフはなく、バックミラーにぶら下がった人形と芦川いづみのインサートカットの
モンタージュで表現するのだが(ややくさいが)、いいシーンだ。

そして長門は事件に疑問を抱き、単独で再捜査を行う。
事件の家の長男の嫁はもともと長男が死んでいて縁も薄かっただけに今度の事件を
きっかけに家を出される。彼女の実家にたずねて見ると、佐渡に嫁いだという。
佐渡に行って見たら彼女は、村に土木工事の人夫に出稼ぎに来ていた男(神山繁)
と結婚していた。これはどう関わってくるのか?

村に戻った長門は偶然にも不審な男が何かを掘り出すのを目撃する。
(ここはちょっとご都合主義なのだが)
その男を尾行すると、東京に行き、愚連隊に殺された。
しかしこの男こそ、真犯人の可能性が出てきた。

裁判で、異例の実地検分が行われ、意外な事実が!
この展開にはあっと言わされた。

ラスト、釈放された渡辺が(書いちゃったけど)車で村を通るとき、クラクションを
鳴らしっぱなしで走り抜ける。
彼としては精一杯の抗議だったのだろう。
しかし「もう後は振り向かない」と決意をするあたりはさわやかな幕切れだった。

出演は他に弁護士で芦田伸介、いやな刑事に西村晃(お決まり!)
裁判長に信欣三(この後「帝銀事件・死刑囚」で容疑者を演じることになる)
裁判官に大滝秀治、いつもはインテリ役が多い神山繁が人夫で出演しているのが珍しい。
音楽は伊福部昭がいつもの重厚なサウンドを聞かせてくれる。



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不連続殺人事件


日時 2007年3月3日12:50〜
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 曽根中生
製作 昭和52年(1977年)

(詳しくはキネ旬データベースで)


昭和22年の夏、ある田舎のお屋敷に東京で活躍中の作家、画家、俳人、演出家などが
集められた。その家の主人、歌川一馬(瑳川哲朗)の招待によるものだったが、一部の
人間は一馬を語ったニセの招待状によるものだった。
東京の文化人たちだけあって彼らの愛欲関係は実に複雑なものだった。
一同が会したその夜、第一の殺人が起こる。そして招待客たちは一人、また一人と
殺されていく!
連続して起こる殺人事件には共通するような動機が見当たらなく、捜査は困難を極める。
招待客の一人、自称素人探偵・巨勢博士(小坂一也)がその謎を解く!


いわゆる探偵小説専門作家ではない、坂口安吾原作小説の映画化。
公開された当時は角川映画の「犬神家の一族」の大ヒットによるミステリーブームの
真っ最中で、その余波、というわけではなかろうが、ATGで映画化された。
ATGというと「低予算のアート系映画」のイメージが強いが、これはミステリー映画の王道を
行く展開だ。

田舎に集められた多数の人間、その中で起こる連続殺人、犯人はこの中にいる!というわけだ。
この映画、公開当時、見ようと思ったがなぜか見逃しており、(ATGだったからひっそりと
短期間だけ上映されたせいだったかも知れない)ちゃんと見たのは今回が初めて。
(一度テレビの2時間ミステリー枠でドラマ化されたことがあるはずだ。そのときは探偵の
巨勢博士を野村宏伸が演じていたと思う)

面白い映画だ。
でもはっきり言うけど登場人物が多すぎて憶えきれず、混乱する。
映画のほうでも主要な人物は会話で紹介していくが、徐々に紹介しきれずに、字幕タイトルで
名前を紹介し始める。そのくらい人物が多いのだ。
で、名前と顔が一致しないまま殺人がどんどん起こっていくので、正直、混乱する。
映画の中では人物関係図を作って説明するなどしているが、どうしても人物が多すぎて
憶えきれない。
だから「今殺されたの誰だっけ?」「あれ、内田裕也が殺されたんじゃなかったの?」と
戸惑いながら映画は進行していく。

これは映画が問題なのではなく、原作そのものがそうなのだ。
実は公開当時、原作を読みかけたことがあるのだが、このときも人物を憶えきれずに
わけわからなくなって途中で読むのをやめた記憶がある。
まあ、田舎の屋敷に連続殺人が起こり、最後も複数の人物がいないと「意外な犯人」に
ならないから、登場人物は多くしないといけないとは思うのだが。

次々と起こる殺人に、こちらが推理をする暇もなく映画は進行していく。
お決まりの通り、探偵が現場から離れた隙に最後の殺人が起こる。
そして一同を食堂に集め、巨勢博士が犯人を言い当てる!という王道の展開。

いい映画なのだが、やっぱり低予算の寂しさが感じられるのだな。
もちろん他のATG映画に比べれば、かなり豪華なのだが(人物の多さでそれは感じる。
低予算映画って、俳優の数が少なくなりがちだから)撮影場所に何かさびしさを感じるのだな。
ここは東宝=金田一もののように豪華セットを組んで、もう少しオールスターで演じてくれたらなあ。
出演陣は田村高広、瑳川哲朗、内田裕也、夏純子、内田良平、桑山正一、桜井浩子、石山朗、神田隆、
などなど個性的な面々が出ているのだが、やはりスター性、華やかさ、という面ではイマイチなのだよ。

もう少し、予算のある状況で、大手によるミステリー大作だったらもっとよかったんだが。
それに耐えられる企画、脚本だったと思うよ。 



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