2007年10月

続社長外遊記 社長外遊記
北極の基地
潜航大作戦
生きる 恋の空中ぶらんこ スキヤキ・ウエスタン
ジャンゴ
大統領暗殺 続エマニエル夫人 十三人の刺客 HERO

続社長外遊記


日時 2007年10月28日15:00〜
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 松林宗恵
製作 昭和38年(1963年)

(詳しくはキネ旬データベースで)



ハワイに着いた風間たち一行は小林桂樹に案内されてハワイ店の候補地を巡る。
そんな中、日本料理店に行って、ジョージの紹介でハワイの商工会のメンバーと
相変わらず大騒ぎ。
ここの女将(新玉美千代)に惚れこんだ風間社長は仕事そっちのけで、女将と
二人でハワイのバカンスを楽しんでいる。
しかし女将が意外にも結婚を迫ってきたので風間は大弱り。
仕事の方もハワイ店の候補地の土地が地主(柳家金五楼)がその土地を新玉美千代に
売ってしまった後だった!
部長たちは社長から女将に話してもらおうとするが、そうもいかない。
一旦は日本に帰った風間たちだったが・・・・

「社長外遊記」の続編。
社長シリーズってなぜ「正・続」なのだろう?
そんな大した話でもあるまいし。
似たような話ばかりだから、少しでも観客をつなぐために「正続」にしていたのか?

で今回も三木のり平の宴会芸、というか珍芸を披露する。
フラダンスのコンテストに参加して、三木のり平がフラダンスを踊るというもの。
その後は相変わらず、小林桂樹は振り回され、社長はバーのママに振り回され、
加東大介部長は堅物ぶりを発揮。

今回見たのは実は桜井浩子さんが出演しているから。
桜井さんは社長の次女役で、パパの浮気を発見し、その場を取り押さえておねだりを
するちゃっかり娘。
ハワイには行かなかった。

それにしてもパンアメリカン航空の協力がトップクレジットされるが、ハワイへの
行きかえりの飛行機の中で加東大介が「いや〜飛行機の旅行も至れりつくせりで
いいもんですなあ」というタイアップ丸出しのセリフあり。

毎度毎度見てるときは楽しいが、後で文章を書くのは実に難しい社長シリーズですね。
まあもちろん見てる間は楽しみましたが。



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社長外遊記


日時 2007年10月28日12:50〜
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 松林宗恵
製作 昭和38年(1963年)

(詳しくはキネ旬データベースで)



老舗百貨店の社長風間(森繁久弥)は5人の娘に囲まれ、今日もおねだりされる毎日。
四女と五女はポータブルテレビが欲しいと言い、次女(桜井浩子)と三女は車が欲しい、
果ては長女から「土地を買って欲しい」と言われる始末。
仕事の方もライバルの福助屋に逆転され、苦しい毎日だ。
そんなときににアメリカ占領時代に家にいたハワイの日系人ジョージ(フランキー堺)
が東京にやってくる。地下足袋などの仕入れに来たのだったが、接待に連れて行った
料亭で悪酔いして大騒動。
やっとジョージはハワイに帰ったが、そんなときに福助屋が香港に支店を出す情報が!
こちらも負けじとハワイに支店を出すことにして、とりあえず社長秘書(小林桂樹)を
駐在員に派遣、ジョージの店で研修させる。
そしていよいよ風間たち一行はハワイへ上陸!

社長シリーズでハワイロケ敢行の豪華版。
戦後18年、日本の海外進出はもはや当然のことになっているが、考えて見れば
戦前は日本も海外に会社の支店を持っていたのだから、「昔に戻った」という
感覚だったのかも知れない。

そして今回、フランキー堺が社長シリーズ初登場。
ジョニ黒を2本開けると狂ったように暴れだし、床の間の花瓶の花を食べ、
花瓶の水を飲むというはじけぶり。
(このあたりはどうやらフランキー堺のアドリブらしい)

そしてやっぱり宴会部長の三木のり平が登場し、宴会芸を行う。
加東大介の堅物部長はハワイにまで電気釜を持っていくという海外音痴ぶりを発揮。
森繁はいつものようにバーのマダム(草笛光子)とべたべたするし、小林桂樹の
秘書課長は社長や部長のわがままに振り回されっぱなしで、恋人の藤山陽子とも
喧嘩になってしまう。

そういういつもの展開で一旦幕。
「続社長外遊記」に続く。



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北極の基地 潜航大作戦


日時 2007年10月20日
場所 DVD
監督 ジョン・スタージェス
製作 1968年(昭和43年)

(詳しくはキネ旬データベースで)


米海軍潜水艦艦長・ファラディ(ロック・ハドソン)は事故を起こしたらしい北極の気象観測基地
ゼブラの生存者救出を命じられる。しかしこの任務にはジョーンズ(パトリック・マグクーハン)
という男をゼブラに送り届けることも任務とされた。
途中でロシア人でアメリカに亡命した男バスロフ(アーネスト・ボーグナイン)や海兵隊の隊長
などが乗り込む。
北極に着く直前、潜水艦は事故があり沈没寸前に。
誰かが破壊工作をしたのだ?スパイは誰か?そしてジョーンズの真の目的とは?

アリステア・マクリーン原作をジョン・スタージェスが映画化。
名作映画を作り続けているこの二人が組めばものすごい名作が出来上がりそうなのだが
そうは簡単には映画は出来ない。
いや、つまらなくはありませんが、「そこそこ」というレベルです。

原因の第一はキャストにあると思う。
ロック・ハドソン、パトリック・マグクーハン、アーネスト・ボーグナインでは
華がないのだな。
それぞれそこそこのキャリアを持つ名優だが、やはり「大作」をまかせれれるほどではない。
これがグレゴリー・ペック、バート・ランカスター、ヘンリー・フォンダあたりが主役なら
かなり豪華さも加わったろう。

だからと言ってB級扱いで製作かといえばそんなことはなく、映画が始まる前には「序曲」、
そして休憩時(1時間15分ぐらいで休憩が入るのだ)、映画が終わった後のお客さんが帰るとき
に専用の音楽が流れる。(多分プリントに音楽が入っているのだろう)
こういうところは「超大作」扱いなのだ。
恐らくは当初は「アリステア・マクリーン原作、ジョン・スタージェス監督」ということで
MGMとしてはこの年一番の大作になる予定だったのが、キャスティングの段階で大きく
狂ってしまったのではないか?
なんかそんな感じがするのだな。

しかしまあキャストの不満を除けば、割と面白い。
前半は北極に到達するまでだが、北極に到達してゼブラ基地のある地点に到達したが、氷が
厚くて、氷を突き破ってゼブラ基地に到達することが出来ない。
そして最大の事件が起きる。
魚雷で氷を突き破ろうとしたところ、魚雷装填中に外側のふたが開き海水が浸入し始める!
あわや、沈没というところまで追い詰められるのは潜水艦ものの王道だ。

そしてゼブラ基地まで5kmのところに到達したのだが、ここからは徒歩で向うことに。
しかし途中で氷の裂け目に隊員が落ち、その氷につぶされそうになる所もなかなかハラハラ
させられた。
で、基地にたどり着き明かされる真の任務。
あるものを回収に来たのだが、そこへソ連もそれを回収に来る。
そのブツをめぐって米ソが対立するのだが・・・

最後はどうなるかってのは見ているとなんとなく解る。
深夜に見たのだが、眠くならずに見ることは出来ました。
ただし2時間半はちょっと長い。
もう少し切って2時間ぐらいにまとまってればもっと面白かったと思うのだが、何しろ「大作」を
作ろうとした感じがするので、上映時間2時間半は最初から決まっていたのだろう。



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生きる


日時 2007年10月18日
場所 TSUTAYAレンタル
監督 黒澤明
製作 昭和27年(1952年)

(詳しくはキネ旬データベースで)


渡辺勘治(志村喬)は市役所勤続30年ということだけがとりえの市民課長だった。
ある日、彼は自分が胃がんで余命1年足らずということを知る。
彼は役所を休み始め、偶然知り合った小説家(伊藤雄之助)に歓楽街を案内
してもらうが、どれもこれも気持ちが晴れない。
そんな時、役所の部下だった小田切とよ(小田切みき)が役所を辞めたいと
自宅に訪ねてきた。
渡辺にとって生き生きと今を生きるとよはまぶしく見えた。
彼女と会ううちに彼は生きる目的を見出し、市民から陳情のあった公園建設を
完成させようと決意するのだった。

学生時代に2回ぐらい見ているこの映画、名作の誉れ高いが僕は好きではなかった。
黒澤映画は「七人の侍」や「椿三十郎」「天国と地獄」のようなアクション映画が
好きなので、こういった「文芸作品」的な本作はあまり興味がない上に、
妙に説教くさくていやなのだ。
「余命が少ないと悟った男が今までの自分の人生を反省し、世のため人のために
後の人生を捧げる」なんてそんな話、大きなお世話である。

世のため人のために生きることは正しい、しかしそれを正面きって説教されると
私なんかは反発してしまう、「そんなこと言われなくてもわかってます」と。

主人公は真面目一筋で生きてきたため、遊ぶことを知らない。
だからもう金はあっても遊ぶことが出来ない、という人物像がいやである。
そんな奴いないよ。
酒飲むなり、旅行するなり、小さいながらもなんか楽しみって人間誰しも持ってるん
じゃない?
私なんかネットやら映画やら酒を飲みに行くやらいろいろ楽しみあるぜ。
まったく遊んだことがない男、というあたりが浮世離れしていて「そういうのは
黒澤明の頭の中だけの理想化された人間だけだ」という気がしてしまうのだ。

でもって公園建設を決意するまでが長い。
1時間ぐらいかと思っていたら、今回見直したら1時間40分ぐらい経ってからなのだな。
この間私にしてみればくだらない「渡辺勘治の自分探しの旅」に付き合わされて
げんなりしてしまう。
そして公園建設を始めたところで、一挙に彼の葬式のシーンになり、市役所の同僚達が
渡辺の公園建設にかけた異常ともいえる熱意について語り合うという構成になる。
昔見たときは何故ここで回想シーンになるのか理解できなかったが、今回僕なりに
回答を得た。

まともにやったら長すぎるのだ。
公園建設の部分もまともにドラマにしていたら3時間になってしまうだろう。
だから第三部ともいえるこの部分は回想シーンにしたのだと解釈した。
しかし彼が官僚組織とどう戦ったか、の部分を丁寧に描いてくれて前半のその決意を
するまでを回想などでしてくれた方が僕はこの映画をもっと好きになったと思う。

かといってこの映画に何の魅力もないかというとそんなことはなくて、渡辺が自分を
胃癌と知るあたりの語りのうまさ、菅井きんたちの町の人々が陳情にやってくるあたり
の各部署をたらいまわしにされるモンタージュなど見所はなくもない。
しかし全体的には黒澤明の優等生ぶりが鼻につく、ちょっといやな映画だと思う。



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恋の空中ぶらんこ


日時 2007年10月14日19:20〜
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 松林宗恵
製作 昭和51年(1976年)

(詳しくはキネ旬データベースで)


舞台はサーカス。千草(林寛子)空中ブランコの修行中だが、もう17歳。
同じ空中ブランコの花形スターで団長の弟の洋三(草川祐馬)に恋しているが
子ども扱いされてまったく相手にされない。
そんな恋心を洋三とデートするときを想像し、日記に書く、そんな妄想日記を
つけるのが楽しみだった。
ところがその日記を父の源吉(伴淳三郎)が見つけてしまう。
その日記を信じた源吉は団長(藤岡弘)に相談し、二人を結婚させてやることに。
そうとは知らない洋三は本当の恋人・久子(池上季実子)を兄の団長に紹介しようと
するのだが。

もうこの映画が公開になった頃は同時代で映画を見始めた頃。
見てはいなかったがタイトルは知っていた。
でもねえ、全然見たいと思わなかったのだよ。
調べてみたら百恵友和映画の併映だったらしい。
かつてのエース監督も併映作品だからちょっと格落ちの感がしないでもない。
そんなことよりこの映画が公開された頃は「タワーリングインフェルノ」「ジョーズ」
などのパニック大作が目白押しで、邦画も負けじと角川映画が登場し「犬神家の一族」
何ぞが公開された頃で、そんな時代に「恋の空中ぶらんこ」というサーカスの映画では
実に「時代錯誤」の感が否めなくて「こんな映画を作っているから日本映画は馬鹿に
されるんだ」と思っていたのだった。

しかしまあ、それから30年も経つと私もまあるくなってそんな時代の映画も見たくなる。
しかも林寛子の相手役は当時アイドル的人気があった草川祐馬だ。
当時、歌手のアイドルもいたし、役者のアイドルもいた。
今と違ってジャニーズアイドルが歌も芝居も両方やる時代ではなく、割とすみわけがあったと
思う。

サーカスの花形、という設定がいかにも古い感じだが(当時でも)草川祐馬は70年代
アイドル的美形だ。そして林寛子と三宮の町でぶつかって知り合うという設定の少年に
佐藤佑介。当時「恋は緑の風の中」にも出ていたし、ポッキーのCMや一時話題に
なったラーメンのCM(「私作る人」「僕食べる人」というアレだ。知らん人には
さっぱり分らん話題だが)
なつかしい。

で、映画のほうだが、まあ何てことない喜劇というか恋愛もの。
ラブコメという域までいってない。
最大の爆笑は、林寛子は草川祐馬と空想のデートを日記につけているわけなのだがこの妄想日記を
伴淳三郎が見つけて、何とか二人を結婚させたいと団長の藤岡弘に相談するあたり。
こが団長がフランキー堺あたりが演じていたら素直に爆笑出来たのだろうが、藤岡弘が
大真面目に演じると、笑うには笑ったが、失笑なのか爆笑なのか区別がつかない。
難しいものだなあ。
さらに草川祐馬が「紹介したい人がいる」と藤岡弘に自分の恋人を会わせる。
藤岡弘は林寛子だと思い込んでいるから、そこへまったく別の女性(池上希実子)が
出てきたもんだから「お前はなんて奴だ!」と草川祐馬を怒鳴りつけるあたりも
失笑と爆笑のきわどいところだった。

そして実は林寛子の本当のお父さんは別にいるという話になる。
じゃあ母親は誰なんだとか、どうして父親は伴淳三郎に預けたんだ、という突込みがしたくなるのだが
そんなことはお構いなしに話は進む。
また時々サーカスに忍び込む子供(子役時代の坂上忍)がいるのだが、彼の本当の理由はサーカスが
見たいからではなかった、という別のエピソードも挿入されるが本筋とは全く関係ない。

佐藤佑介はこちらも勘違いで林寛子はサーカスに売られてきた子供で虐待を受けている、
というかつての「サーカス伝説」を信じて、ゲバ棒を持って「解放だ!」とヘルメットを
かぶってサーカスにやってくる。
この辺の感覚は70年代なら分ったが、今の人にはわかるまい。

で、佐藤佑介と林寛子は林寛子の本当のお父さんに会いに阿蘇へ。
(父親は大坂志郎)
関係ないが、阿蘇の大自然をバックに大坂志郎が出てくると何故か日活アクションを思い出して
しまった。

いろいろと突っ込みどころもあるが、日本映画が1本立て路線に移行する途中の、60年代
プログラムピクチャアのセンスでしか番組を組んでいなかった時代のあだ花的映画ですね、
今見るとやっぱり。



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スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ


日時 2007年10月8日18:50〜
場所 新宿バルト9・スクリーン7
監督 三池崇史

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壇ノ浦の戦いから数百年後、根畑(ネバタ)の湯田(ユタ)村では平家の埋蔵金
伝説のために無法者に村を荒らされていた。
最初は無法者たちだけだったのだが、そこへ平家の末裔・平清盛(佐藤浩市)たちが
やってきて無法者たちを追い出す代わりに自分たちが居座った。
さらにそこへ源氏の末裔・源義経(伊勢谷友介)たちがやってきて村はさらに
無法地帯に。
そんな所へ流れ者のガンマン(伊藤英明)がやってきた!

「スキヤキウエスタン」と銘打った三池崇史の異色アクション。
出演者が全員英語のセリフをしゃべるし、西部劇だし、源氏と平家は出てくるし
どうなることかと思ったが、自分は案外楽しんだ。
賛否両論あるようだが、それも当然だろう。
要するにこの映画世界に「乗れたか」「乗れなかったか」が分かれ目になる。

時代は分らんし、日本人なのに英語だし、ウエスタンだし、源氏と平家だし
「そんな無茶苦茶があるか!」と思ったらもう楽しめない。
これは子供の頃にやった「○○ごっこ」を全部映画にしたものなのだ。
そういえばあの頃は半ズボンをはいて腰におもちゃの拳銃を下げて
ついでに刀も下げてそれでも一緒になって遊んだものだ。
そして外国映画に憧れて英語もどきのわけの分らん言葉もしゃべっていた。

もうこの辺は子供の頃に西部劇ごっこ、ちゃんばらごっこをしたかしなかったかだ。
僕自身はそんなに夢中になってしなかったが、でもそんな「ごっこ」遊びはしたもんだ。
この辺は世代の差かもしれない。
そんな子供の頃の「ごっこ」遊びをもう一度大人になってやり直したのがこの映画。
だからその子供の頃の気分にかえって「そういえばそんな遊びしたなあ」などと
ほくそえみながら充分に楽しんだ。

ガンマンも時代劇も英語もスタジャンも全部ひっくるめたごった煮の豪華映画。
だからこそ「スシウエスタン」や「ウドンウエスタン」ではなく、「スキヤキ
ウエスタン」足りえるのだ。
(そうそう登場人物の名前もルリ子(桃井かおり)とアキラ(小栗旬)というのも
日活の小林旭と浅岡ルリ子を彷彿とさせ、楽しい)

ただねえ、ちょっと長い。
そういうワンアイデアの映画だから、1時間半か1時間40分ぐらいだよ。
2時間やるとちーと飽きるのだな。



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大統領暗殺


日時 2007年10月8日12:15〜
場所 ユナイテッドシネマとしまえんスクリーン2
監督 ガブリエル・レンジ

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2007年10月、ブッシュ大統領はシカゴでの演説のあと、会場のホテルから
出たところを銃撃され、死亡した。
当初は指紋からアラブ系の男が犯人と思われたが、事件の数ヶ月のちに
ある男が自殺し、その遺書には自分がブッシュ銃撃の犯人だと書かれていた。
果たして真実は?

タイトルが当初は「ブッシュ大統領暗殺」というタイトルだったが、「大統領暗殺」に
変更されたという逸話を聞いたことがある問題作。
まあ現役大統領が実名で登場する映画だからリアリティは満点だ。
多分本当は普通にドラマとして作りたかったのではないかと思うが、ゲリラ的に
擬似ドキュメンタリーの手法を使ったのが本作だ。

大統領がシカゴに着いてから会場となるホテルまでの車での移動の最中の混乱などを
大統領警備のSPの証言をインタビューや取材映像でつないでいく。
このあたりは映像がしっかりしているので、本当の事件のように思えてくる。

しかし作者の確信は後半のように思える。
アラブ系のコンピューター技師が狙撃現場に残されていたわずかな指紋、服の硝煙反応
などの細かい証拠によって確定され、タリバーンの軍事訓練に参加していたという
事実によって決定付けられる。
だが、鑑識官は「硝煙反応も他人の服が触って付いたかも知れないし、指紋も一致点は
少なく、同じともいえるし、違うともいえるというレベル」。またタリバーンの
軍事訓練も「そんな訓練だとは知らずに参加していた」という証言も出てくる。
「中東系=テロリスト」という図式に乗っ取って捜査当局によって「犯人が必要だから」
という理由で作られた犯人かも知れないという描かれる。

もう日本の「帝銀事件」と同じようなでっち上げ事件かも知れない。
そして後半、自殺した男は息子をイラク戦争でなくしており、その恨みからブッシュを
狙撃したと明かされる。

自殺してしまっているのでもう本当のところはわからない。

「アラブ人=テロリスト」と見る構図、ブッシュ自身がアメリカで反対運動が起こっている
不人気、そんなアメリカ(ブッシュ政権)が抱えている問題点を見事に(低予算で)描き出した
秀作だろう。
是非多くの人に見てもらいたい。
日本の映画人にもこんな骨の太い映画を作ってもらいたいものだ。



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続エマニエル夫人


日時 2007年10月7日
場所 DVD
監督 フランシス・ジャコペッティ
製作 1975年

(詳しくはキネ旬データベースで)


夫の新しい赴任先の香港へ向うエマニエル。船で向ったが、一等船室を予約したのに
手違いで三等の相部屋だった。数多くの女達が裸に近い格好で眠る中、隣の若い女性と
レズプレイに耽る。
香港について夫との再会を喜ぶエマニエル。その家にはクリストファーというパイロットが
居候していた。クリストファーに引かれるエマニエル。
またあるパーティでアンナ・マリアという処女の娘と知り合う。
ジャンとともに彼女にも性の喜びを教えるエマニエルだった。

大ヒットした「エマニエル夫人」の続編。
もう感想が書きようがないのだな。
エマニエルが気の向くままに出会った相手とセックスをする(しまくる)の連続で
悩みも迷いも何にもない。

クリストファーと香港の街に買い物に行ってその帰りに怪しげな鍼の店で性感帯に効く
鍼を打ってもらったり、アンナ・マリアの黒人でセクシーなダンスの先生と一回やったり
夫のポロ競技を見に行ったときに選手の一人と控え室でいたしたり、アンナ・マリアを
連れて夫と3人でマッサージに行ったり、クリストファーを探してハプニングバーだか
売春宿みたいな所に行ったり、最後にはアンナ・マリアと夫と3人でバリ島へ行って
3人で楽しんだりする。

こういうシーンの連続でAV並みの展開だ。
いいとか悪いとかではなく、そういう映画なのだな。
前作にあった映像の美しさ、はなく普通な感じ。
クレジットをよく見たら監督もカメラマンも前作とは違うのですね。
(あと例の有名な主題歌もなし)

シルビア・クリステルの髪型もちょっとロングになって変化をつける。
前作にあったような理屈付けがないだけに「ソフトポルノ」としての魅力は充分にある。
それ以上を求める必要はないし、それでいいじゃないでしょうか



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十三人の刺客


日時 2007年10月6日19:00〜
場所 ザ・グリソムギャング
監督 工藤栄一
製作 昭和38年(1963年)

(詳しくはキネ旬データベースで)


明石藩江戸家老間宮が老中・土井(丹波哲郎)の門前で切腹した。
間宮は自分の藩主、松平左兵衛斉韶の暴君ぶりを訴えていた。
だが松平左兵衛斉韶は将軍家の血筋、老中とて手出しは出来ない。
しかしこのまま何もしないわけにはいかず、御目付役の島田新左衛門(片岡千恵蔵)に
斉韶の暗殺を命じる。
島田新左衛門は昔から子飼いの浪人平山九十郎(西村晃)をはじめ、武道の達人を集める。
しかし今の太平の世の中、敵も味方も真剣で切りあったことなどない。
だがこの暗殺計画、明石藩側用人・鬼頭半兵衛(内田良平)に知られることとなる。
果たして成功するのか?

かくして暗殺計画はスタートしたわけだが、まずは中仙道の戸田の渡し。
ここで襲う計画だったが、相手は斉韶の載る籠を二つ用意し、どちらを襲わせたら
いいか解らなくして混乱させる。
かくして島田たちは新しい策を考え、以前斉韶によって息子とその嫁を死に追いやられた
恨みを持つ尾張藩の牧野(月形龍之介)の協力を得て、無事木曽山中の落合宿に追い込むことに
成功する。

そして一大決戦!
落合宿はすでに罠が仕掛けられていて、街道の出口はふさがれているし、もと来た道を引き返すと
橋が壊されていて、逃げられない。
裏道に入れば上から材木は落ちてくるわの大混乱。
真剣で勝負していく侍たち。
江戸時代もこの時代は平和な時代が続き、侍といえども真剣で戦ったことのあるものなど
いやしない。
敵も味方も腰が引けた刀の構え方でなんとも締まらない。
しかしそこが実にリアルな感じで逆に迫力があるのだな。
(この辺の様式美でない、戦いというのは後の「仁義なき戦い」に共通する感じだ)

刺客の中では西村晃がいい。
そして迎え撃つ鬼頭半兵衛(内田良平)が実にかっこいい。
内田は時代劇初出演、西村晃は初の本格的な殺陣だったそうだが、二人とも実に決まっていた。

映画全体を貫く今回の暗殺指令の矛盾。
お互いに悪い奴だとわかっていても表では何も出来ないので、裏で暗殺に走る。
かといって自分の主君をむざむざ殺させるわけにも行かない。
「立場上出来ない」というこの一言のために意味のない殺し合いをしなければならないという現実。
最後に生き残った侍が、泥田の中で狂ったように笑い転げる。
この狂気の一件に対しては笑うしかない、そんな風に見えた。



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HERO


日時 2007年10月1日18:50〜
場所 新宿バルト9スクリーン9
監督 鈴木雅之

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久利生公平(木村拓哉)は東京地検城西支部の検事。
ある事件の公判検事を引き受ける。それは暴行事件で一方的な暴行により被害者が
死亡した事件で、容疑者も犯行を認めていた。
裁判は簡単に進むと思われていたが、公判では一転して否認した。
弁護士はこの容疑者には不釣合いな日本一の辣腕弁護士。
この事件の背後には何が???

例のキムタク主演のフジテレビのドラマの映画化。
映画ファンからは不評たらたら。フジテレビは「踊る大捜査線2」の記録を破ろうと
鼻息はあらい。

映画ファンから不評の理由もよく分る。毎月1日の1000円デーなので1000円なら
と思い見てみた。
この映画(及びテレビドラマ)をたたくことは至極簡単。

検事がスーツを着ずにジーパン姿はありえない、検事が現場に行くことはない、
久利生公平の若者言葉風の言葉遣いが社会人として非常識、容疑者が処分した車を
探して韓国まで行くことはありえない、またせっかく車が見つかったが、
裁判で弁護側から「その傷が犯行時に出来たとは限らない」と反論されてすぐに
引っ込めるはあまりに浅はか、(これはシナリオが弱いだろう。素人でもそういう反論が
出ることは予想できるよ)、後半で火事の野次馬が撮った携帯の写真に容疑者が
写っていないか検事全員で探すなどありえない、また携帯カメラを撮った全員が
見つかるとは思えない、中井貴一がなぜ出てくるかドラマ見てないとさっぱり分らない、
そんな風にこの映画(ドラマ)の欠点を言うのは簡単だし、今書いた欠点も
僕自身、非常に気になった。

しかし、なんだかんだ言っても2時間退屈せずに見せるのだ。
脇の役者もみんな一言づつ「決め」のセリフを言ったりして見せ場も用意されている。
そして主演の木村拓哉と松たか子の喧嘩ばかりしていながら実は好きあっているという
のもラブコメの王道。
そしてラストでは「これは人の命の重さを知る裁判です!」と大演説をする。
その演説に爽快感を覚える人もいるだろう。

この映画、実はちょんまげを取った時代劇ではなかろうか?
「遠山の金さん」や「大岡越前」「暴れん坊将軍」の現代劇版では?
あるいはかつての「多羅尾伴内」の現代版ではなかろうか?

そんな風に考えて見ると、ありえないご都合主義の展開や、脇のキャラクターにも
見せ場があったり、久利生公平のジーパン姿も「遠山の金さん」の桜吹雪に共通すると
いえるかも知れない。

文句を言うのは簡単だが、やっぱりヒットするからにはそれなりの理由があると言えるだろう。



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