2008年2月

単身赴任
新妻の秘密
リアル鬼ごっこ さらばラバウル

単身赴任 新妻の秘密


日時 2008年2月16日15:00〜
場所 ザ・グリソムギャング
監督 西村昭五郎
製作 昭和55年(1980年)

(詳しくはキネ旬データベースで)


グリソムギャング、西村昭五郎特集としての一本。
別にこの映画が西村昭五郎の名作というわけではなく、西村作品で日活が貸し出せるプリントが
あるのがこの映画だったから、という程度の理由らしい。

実際、映画としては特にどうということもなく、夫の単身赴任で欲求不満な新妻は団地の近所の
ご主人が妻を交通事故で亡くしてしまい、夫のいない平日はその代わりになってあげるという話。
そして主人公の新妻が通っているいけばな教室の先生と生徒がやってしまったり、友人のスナック
のママが若い男とできて痴話げんかがあったりと本筋とは関係ない濡れ場が続く。

西村氏自身もトークの時に「こんな映画撮ったんやなあ。すっかり忘れとった」とおっしゃってました。
今回の上映は「日活ロマンポルノ終焉20周年記念上映」だそうで、「へ〜ロマンポルノって終わって
20年も経つのかあ」とまず驚く。
20年も経っているのだから今の若い人が日活がポルノを作っていたことさえ知らないもの無理はない。
「ロマンポルノは16年、裕次郎でも16年だった」そうですから、両方とも長いような短いような
期間だったんですね。

映画そのものに話を戻すとこの頃の女優って今の(AV)女優とは体型がまったく違うなあ。
腰が細くなくて、尻もでかくて、全体的に「ボテッ」とした感じがするのだ。
主演の風間舞子が、というのではなく、そういえばこの頃の裸の女優ってみんなこんな感じだった。
今の子はホント、スタイルがいいよ。というかスタイルがいいのは昔は脱がなかったんだな。
今のほうが誰でも脱ぎすぎるとも言える。

で西村氏のトークイベント。
この映画についてはほとんど憶えていないそうだが、俳優の江角英明が出演していたのだが、
女優を抱いて抱えるシーンでぎっくり腰になり、キャスティングを変更せねばならず、その分
すっかり撮り直したとか。西村氏もその位しか憶えていないそうで。

西村氏は吉村公三郎の従兄弟でその縁で日活に入社、中平康の助監督を経て(使いやすかったから
中平監督は西村氏を監督に推薦しなかったので見かねた今村昌平が監督推薦をしたという)
小沢昭一の主演作「競輪上人行状記」で監督デビュー。
日活がポルノ路線になってからポルノの第一人者として活躍。

一時期日活はポルノで(というかポルノだからこそ)世界進出を企てたらしく、スウェーデンでも
向こうの女優を使って一本撮る。
スウェーデンは社会保障が充実しているが、逆に労働意欲がなくなるそうで(働かなくても
なんとかなる)そういう矛盾をはらんだ国だったそうだ。

なるほどネエ。
このほかにも色々話題は出たのだが、日活映画史としていい勉強になりました。



(このページのトップへ)






リアル鬼ごっこ


日時 2008年2月16日11:50〜
場所 テアトル新宿
監督 柴田一成

(公式HPへ)


全国で連続して佐藤姓ばかりが不審死する事件が起こっていた。
主人公の高校生、佐藤翼(石田卓也)はある日、街で黒い顔に赤い目という不思議なマスクを
かぶった男に殺されそうになる。
なんと佐藤姓の人間はすべてとらえる「リアル鬼ごっこ」が行われている世界だというのだ!
翼はいつの間にか「王様」が支配する別の「日本」に紛れ込んでしまっていたのだった。
しかしこの世界では顔や姿は同じ妹や父親、友人はいても性格はまったく違う。
翼は彼らと協力しながら、この世界で戦うのだった。

宣伝文句で「全国の佐藤さん、あなた方は少し多すぎるので処分します」というような
不気味なキャッチコピーなので、どういう展開かと思ったらパラレルワールドものか。
なんかこうもっと意外な設定を期待してしまったので、安易な設定にちょっとがっかりした。

で肝心の鬼ごっこだが、車を使って逃げてはダメ、などのルールがあり(ルールを破ると
即刻処刑)要は走って逃げるだけなので、どうも迫力にかける。
屋上から落っこちそうになる、というサスペンスの定番があるのだが、どうも盛り上がりに
欠けるのだなあ。

オチを書いちゃうけど、主人公の翼は実は王様の息子で、その母親は実は翼の元の世界と
パラレルワールドを行き来できる特殊能力の持ち主で、その能力を持っている可能性の
ある実の息子を探し出したかった、しかし佐藤という姓しかわからないかったので
「リアル鬼ごっこをした」という話。
王様は権力者なんだからそんなことしなくてもすみそうな気もするのだがなあ。
話そのものがなんか幼稚くさいと感じのるのは私がオジサンだからか。
殺人物だったら「バトルロワイヤル」のほうが数段(いや10段以上)面白かったよ。
(むしろ比較すること自体ばかばかしい)

で更なるオチは別のパラレルワールドに翼くんは落ちてしまうという話。
その日本では内戦中だ。
パラレルワールド同士では同じ人間が生きているので、片方の世界で死んだらもう片方でも
死んでしまうんだそうだ。
だったら第3の世界が内戦なら、第1の世界も第2の世界も人がごろごろ死んでいくだろうに。
こういうパラレルものとかタイムスリップ物はきちんと考えないと客から馬鹿にされるという
見本みたいな映画。

見終わったら次の回を待っているのは制服姿の中高生(男女とも)が多かった。
山田悠介ってやっぱり中高生には人気があるらしい。



(このページのトップへ)




さらばラバウル


日時 2008年2月3日
場所 レンタルDVD
監督 本多猪四郎
製作 昭和29年

(詳しくはキネ旬データベースで)



太平洋戦争後半のラバウル島。
米軍の攻撃が激しく日本軍のゼロ戦は一方的に撃墜されっぱなしだった。
若林大尉(池部良)は任務に忠実な軍人で、「こんなにやられっぱなしでは日本は
もうおしまいだ」とつい愚痴をこぼす仲間が多い中、「それは上層部が考えるべきこと。
自分たちは敵機を1機でも多く撃墜する方法を考えるべきだ」と主張する。
そんな中ラバウル撤退が決定する。
民間人を乗せた船が米軍機に襲われそうになった時、若林大尉は1機残ったゼロ戦で
飛び立ち、帰らぬ人となった。

昭和30年代の映画はテンポということでは今と大差なく話が進みイライラ感がない。
(むしろ90分に収めようとするからシナリオに大胆な省略があったりして今より
テンポが速く感じられることがある)
ところが昭和20年代の映画を見ると大抵の映画はそのテンポの遅さにイライラする。
どこらあたりで変わったのだろう?
この映画もそんなテンポの遅さを感じさせる映画だった。

また戦争映画にありがちなこう攻撃してくるから、こっちはこういく、的な映画的
面白さが全くなく、ラバウル島で暮らす人々の姿が描かれるだけ。
今の感覚だと見ていてちょっとつらい。

そうは言っても多少の山はある。
平田昭彦の部下がいるのだが、映画の冒頭での戦いから彼らが帰ってきたとき、1機
不時着があったと上官に報告される。
池部良は「救助の見込みなし」と救助隊を出すことを拒否する。
しかし平田昭彦は夜になって単独で救助に向かおうとして池辺良に止められる。
それが伏線となって、今度中盤の戦いの時に平田昭彦が不時着する。
周りが「敵の制空権下だから」と止めるのだが、池部良は単身救助に向かうのだ。
(ここは平田昭彦を救助するときに敵襲にあって、まあ、盛り上がる)

それと敵のパイロットが捕虜にされるシーン。
尋問されるのだが(通訳をするのは従軍記者役の村上冬樹)彼に「ゼロ戦をどう思うか?」
と問うたところ「最初は怖かったが、あれは防御に弱い。よほどの熟練パイロットでない限り
恐れるに足りない」といわれショックを受ける。
「君はいつからパイロットになった?」と問われ「戦争が始まってから」と答えられて
さらにショックを受ける。
(映画の設定では昭和19年の冒頭らしい。従って2年ぐらいしか乗っていないということに
なる。このシーンの前に「敵のパイロットはきっと5、6年乗っているような熟練パイロットだ」
と池部が言っているので、そんな経験の浅いパイロットでもあんなに強くなれる敵の戦闘機の
優秀さを思い知ることになるのだ。)

まあそんな感じだが、映画全体としては今見るとたるい。

出演は地元の娘役で根岸明美(この人は「魔子恐るべし」とか「キングコング対ゴジラ」とか
そういう未開拓民みたいな役ばっかりだ)、整備兵に谷晃、補充されてきた少年飛行兵に
久保明(まだ16歳ぐらいだろう。声変わりしていないのか後の映画と声が違った)
ノンクレジットで佐原健二(石原忠)、藤木悠など。
書き忘れたけど、三国連太郎が病院に入院している兵士役。クレジットではでかいが
あまり活躍がない。看護婦役で岡田満梨子。三国の恋人役で中北千枝子。

「ゴジラ」以前の本多作品、「太平洋の鷲」もそうだったが、今ひとつ冴えないなあ。



(このページのトップへ)