2008年6月

ナルニア国物語 第2章
「カスピアン王子の角笛」
DIVE!!ダイブ
ザ・マジックアワー ミサイル珍道中 キング・コング 愛の嵐の中で
光州5・18 世界で一番美しい夜 キングコング対ゴジラ(短縮版) 走れ!コウタロー
喜劇 男だから泣くサ
キングコング対ゴジラ アフタースクール 靖国 YASUKUNI 恐妻党総裁に栄光あれ

ナルニア国物語 第2章「カスピアン王子の角笛」


日時 2008年6月29日13:25〜
場所 新宿ミラノ座1
監督 アンドリュー・アダムソン

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ナルニア国の隣国テルマールでは王位継承問題が起こっており、現在の国王代理に
男の子が生まれたことから次の王を予定されていたカスピアン王子は命を狙われる
羽目になり、宮殿を抜け出す。
そこでナルニア国にまぎれるのだが、そこは動物がしゃべる国だった。
宮殿を抜け出すときに家庭教師から「危なくなったらこの角笛を吹きなさい」と
渡された笛を吹く。
するとその音はロンドンのベベンシー兄妹に届き、かつてナルニア国を救った
ことのある兄妹は再びナルニア国に赴くのだった。
そして心優しいカスピアン王子をテルマールの王につかせ、ナルニアを侵略させないことが
ナルニアの平和につながる。ベベンシー兄妹はテルマールと戦うのだった。


前作の公開から2年。
私はてっきりあの兄妹は第1作の話の後もずっとナルニア国で王様になって暮らしたと思っていたので
(ホラ、ラストでみんな大人になっていたから)ロンドンに戻っていたので「ああそういう展開
だったのか」と自分の無知をまず恥じる。

前作の時はライオンやら動物やらのCGが余りにうまくて「もうCGがどうのという時代ではない」
と思ったが今回はそういう驚きはなし。
結局見るべき驚きが(僕にとっては)まったくないのだな。

ロンドンではいかにもその辺の兄妹だった4人がナルニアに行くと急に強くなるんだなあ、とか
カスピアン王子を演じるベン・バーンズは男前で次世代のスターになるかなあとかほとんど
映画の内容とは関係ないことばかり考えていた。

画も豪華だし、出演者も魅力的だが、作品の出来とは関係無しに作品世界に入れなかったので
つまらないとか腹が立つとか言うことはまったくないのだが、映画の中のすべての世界が
「ああそうですか」という他人事。

決して悪い作品ではないのだが、見ていて乗れなかった。



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DIVE!!ダイブ


日時 2008年6月29日10:40〜
場所 角川シネマ新宿1
監督 熊沢尚人

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ダイビングクラブのMDCは経営の親会社の方針で閉鎖の危機に追い込まれていた。
そこへ親会社の会長の孫娘・夏陽子(瀬戸朝香)がコーチとしてやってくる。
親会社が出した結論はこのクラブからオリンピック選手を出すこと。
中学生の坂井知季(林遣都)、従来からのコーチ富士谷の息子・要一(池谷荘亮)
そして夏陽子がスカウトしてきた沖津飛沫(溝端淳平)、三人のオリンピックに
むけての挑戦が始まる。


はっきり言ってイマイチ感が漂う。
シナリオをまとまりが悪い。
上映時間は2時間もあるのだが、説明不足感が残る。
要一はコーチである父との間に葛藤が存在するのだが、これが後半になって唐突に
なって話に出てくる。
沖津の家庭の事情とか、オリンピックに行けなかった祖父への想いなどがどうも
伝わらない。
知季にしても多少の悩みはあるが(甘いものが食べられないとか、友達と遊べないとか
彼女を弟にとられたとか)どうもその切実さがない。特に彼女が弟にとられるというのは
どうか。友人にとられたほうが自然だったのでは?
この3人は主人公の知季は中学生だが、要一と飛沫は高校生。その辺の年齢関係もうまく
説明されていない。

そんな欠点は目立つ。
しかし私にとっては好きな映画だ。
完成度はイマイチだが、好きなタイプの映画なのだ。

主人公・知季は飛込みにすべてをかける。
最近のこういったスポーツもの、青春ものにありがちな笑いを取ろうとしない。
例えば最初の方で知季が飛込みをしようとしたときに、チームメイトが他のメンバーの水泳パンツを
脱がせるシーンがある。
それを正面から捉え、股間に花柄のボカシをかけて笑いをとろうとする事だって出来たはずだ。
しかしそういった小手先の笑いは作ろうとしない。
大抵笑いを取ろうとして新人コーチが奇妙な特訓をさせたりとか、竹中直人を出演させたりする。
そして大概私は白ける。

飛込みという競技は早すぎて一瞬で終わってしまうので、正直見慣れないと解りづらい。
だから見ていて盛り上がりに欠ける。
売り物は主人公の少年達の水泳パンツ姿。ポスター見ても映画の内容はわからない。
ただこういう少年達の裸が見れますよ、というだけだ。

妙に笑いに走らずに少年達の勝負の姿のみを描こうとする。
完全にそれが成功しているわけではないが、妙に気になる映画だ。
熊沢尚人、いつか私にとっての忘れられない映画を作ってくれそうな気がする。
まだまだ未完だが、大器であると期待している。

好きな映画だ。



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ザ・マジックアワー


日時 2008年6月26日19:50〜
場所 新宿バルト9・スクリーン6
監督 三谷幸喜

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港町、守加護(スカゴ)。この町を牛耳っているボス(西田敏行)の女(深津絵里)に手を
出してしまったボスの配下のレストランの支配人・備後(ビンゴと読む。演じるは妻夫木聡)
はそれがボスにばれてしまう。
「伝説の殺し屋、デラ富樫を連れて来たら許してやる」の言葉を頼りにその殺し屋を
探すが見つからない。苦肉の策で思いついたのは、売れていない役者を映画の撮影と偽って
つれてくることだった!
彼が選んだのはアクション映画が大好きな村田大樹(佐藤浩市)だった。
果たしてどうなる???


フジテレビのすべてのバラエティ番組にゲスト出演して宣伝した、とまで揶揄されるぐらい
この映画にかけるフジテレビ、三谷幸喜の勢いはすごかった。
話のネタは「合言葉は勇気」と同じで役者を仕立て上げて回りをだますというプロットと同じ。

とにかく笑った。
特にデラ富樫がボスと会うシーン、西田敏行のリアクションの面白さもあって最高におかしい。
そして寺島進と波止場での取引のシーン、などなど。
ただしラストはちょっと弱い。
観客がネタバレしているから笑えるが驚きはない。
あそこは映画のスタッフが来ていると観客には教えないでいて、デラ富樫が銃を撃って
観客を「????」にさせて、実は映画のスタッフが来ていた、としたほうがよかったのではないか?

この映画には映画監督役で市川崑が出演しているが台本を読んだ市川監督「面白いね。でも長いね」
と言ったそうな。
まさしくその通りだと思う。
特に村田が町にやってくるまでが長い。
役者としての売れてなさ加減を説明したり、昔の映画「暗黒街の用心棒」を見て感激している
あたりはただただもう少しチャッチャッとやってほしい。
そして一度は帰るといった村田がやっぱり戻ってくるあたりも短くして欲しいなあ。
簡単に言うと「昔の映画をみて鑑賞に浸るあたり」が著しくうっとうしい。
このあたりのもたもた加減がこの映画の残念なところ。

三谷幸喜の朝日新聞連載のコラムを読んでいるのだが、「セットが立派で隅から隅まで写したくなって
しまう」というような主旨のことを書いているのを読んだ覚えがある。
このあたりの彼の優しさがやはり致命的。
もっとばっさり切り落とす勇気と非情さを持ちあわせるともっとよくよくなると思う。
基本的には好きな人なので、今後にも期待したい。



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ミサイル珍道中


日時 2008年6月16日
場所 DVD
監督 ノーマン・パナマ
製作 1962年(昭和37年)

(詳しくはキネ旬データベースで)


ハリー・ターナー(ビング・クロスビー)とチェスター・バンコック(ボブ・ホープ)
はインチキな興行で金儲けをしていた。今回はカルカッタで人間飛行機を売りつけようとして
いたが、失敗してチェスターは記憶喪失になってしまう。
それを直すためにチベットのラマ僧院にいき「キオクトリモド草」を貰いに。
記憶は戻り、さらに天才的に記憶力が増す妙薬を手に入れインドへ。
空港でスパイ団によるミサイル燃料の製造法を記したメモを渡されてしまう。
記憶力が増すクスリを試しにそのメモに書いてあった数字を暗記してみる。
スパイ団はミサイル燃料の製法を手に入れるため、二人を捕まえるのだが。


ビング・クロスビーとボブ・ホープによる「珍道中」シリーズ第7作にして最終作。
このの作品だけなぜかDVDの廉価版で発売されている。
カラーかと思っていたら白黒だった。この頃白黒とは低予算映画だったのだろうか?
(実はボブ・ホープの顔を今までよく知らなかった)

「楽屋落ちのギャグを連発」とDVDのジャケットに書いてあったが、連発というほどではない。
歌のシーンでボブ・ホープが隣の部屋に移動すると、後からついてきたはずのビング・クロスビー
がすでにその部屋にいて、「どうしてここにいるんだ?」というと「特撮で」と答えたり、
悪漢に追いかけられた二人が中国人に化けようと服が欲しくなったら「特撮さんなんとか
してくれ〜〜」と叫ぶとパッと服が変わり「ああよかった。これで面倒なシーンを
省けた」とオチを言う次第。

で、スパイ団「第三軍団」につかまって二人は猿の代わりに宇宙飛行のテストに送られてしまうのだが
宇宙船の中で「自動バナナ食べさせ機」によってバナナを食べさせられるのだが、このシーンは
チャップリンの「モダンタイムズ」の自動昼食機のシーンのリメイクというかパクリだった。

でピーター・セラーズ、デヴィット・ニーブン、フランク・シナトラ、ディーン・マーチンが
ゲスト出演。
ピーター・セラーズはインドの精神科の医者役で充分笑わせてくれた。
他の3人はワンカットの顔見世出演。

大爆笑、というほどではないが気楽に笑って楽しめる一篇でした。



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キング・コング


日時 2008年6月15日
場所 DVD
監督 メリアン・C・クーパー
   アーネスト・B・シュードサック
製作 1933年(昭和8年)

(詳しくはキネ旬データベースで)


ジャングル映画を得意とするカール・デンハム(ロバート・アームストロング)は新作映画に
出演する女優を探していた。偶然ブロードウエイで出会ったお金がなく困っている女優の卵
アン・ダロウ(フェイ・レイ)の美しさに惚れて彼女を新作映画の主演女優にすることに。
カールの新作は地図には載っていない謎の島・スカル島だ。
この島には原住民が作った巨大な壁があり、何かが潜んでいるのだ!
それはなんと巨大なゴリラ・コングだった!


2度もアメリカでリメイクされているかの有名なキングコングのオリジナル版。
久しぶりに見た。
ストーリーは単純。南の島にいた巨大生物を大都会につれてきて大暴れしてしまう、
という基本ラインはその後の多くの怪獣映画の基本となる。
それだけ単純明快なのだ。

しかし単純明快すぎて、キャラクターのほうはまったく印象に残らない。
アン・ダロウが船の航海士と恋に落ちてしまうのは唐突、というかご都合主義だし
その辺のドラマの浅さは否めない。
後の「ゴジラ」などのほうが上だ。

ところがこの作品の真価はそんなところにあるのではない。
コングをはじめとする恐竜たちの描写が実にすごいのだ。
島に着き、フェイ・レイの主人公がコングに森の奥地に連れて行かれてしまう。
それを追ってカールたちが追いかけるのだが、幾種類のもの恐竜が登場する。
湖の中から登場する首長竜やブロントザウルス、ティラノサウルス、翼竜プティラノドン
などなど実に様々な恐竜が登場。
そして人間との合成カットが実に多い。
しかもカメラが動いていたりするので、一体どうやってやったのだ?という疑問が沸いてくる。

特撮技術というのは実はこの頃にもう完成していたといえるのではないか?
恐竜もコングもコマ撮りなので日本の着ぐるみ比べると動きの滑らかさがないのが残念。
それにしてもニューヨークで高架電車を襲うシーンなど「ゴジラ」にもリメイクされた
シーンのようでその素晴らしさにはただただ驚くばかりだ。

円谷英二がプリントを手に入れ、編集室で暇さえあれば見ていたというが、これなら
何度見ても飽きないだろう。

500円DVDという画質がイマイチの素材で見たせいもあるが、そのボヤッとした画面が
余計に素晴らしさを強調していた。
ドラマが薄っぺらなのが珠に瑕だが、そんなことは忘れるぐらいの特撮の素晴らしさだ。



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愛の嵐の中で


日時 2008年6月14日19:00〜
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 小谷承靖
製作 昭和53年(1978年)

(詳しくはキネ旬データベースで)


パリでモダンバレーのレッスンをする夏子(桜田淳子)の元へ姉・雪子(夏純子)
が自殺したと連絡が入る。
姉の自殺が信じられない夏子は姉は殺されたと確信し、独自で調べることに。
姉の部屋に泊まった晩、何者かが部屋に侵入してきた。
左腕に噛み付き、何とか襲撃を振り払った夏子。彼女は姉のマンションから
走り去る黄色いポルシェを目撃する。
翌日からポルシェのでディーラーを調べ、黄色いポルシェを買った男たちを
5人教えてもらう。
その5人を当っていく夏子だったが。


小谷承靖監督のアイドル映画シリーズ(?)の1本。
70年代後半、山口百恵、森昌子と並んでアイドルだった桜田淳子主演。
まだ映画に出始めの頃かと思ったら、「寅さん」など松竹で出演していてすでに映画出演は
10本を越えた頃。

この頃の淳子ちゃんは可愛い。
私はこの頃中学高校だったが、百恵派じゃなくてどちらかというと淳子派だった。
(但し映画を見に行くほどではなかったが)
その頃と意見は変わっていない。(百恵はちょっと目つきがきつい気がするのだよ)

まあそんな桜田淳子だが、演技のほうはそこそこ。
この日の上映は上映後に脚本の白坂依志夫と監督の小谷承靖のトーク付き。
小谷監督は「淳子ちゃんは熱演というか怪演というか硬いなあ」というご意見。

映画のほうは黄色いポルシェの持ち主を一人ひとり当りだす。
英文学者の神津(植草甚一)美容師の岡野(岸田森)、精神病患者の深水(田中邦衛)
ニュースキャスターの風間(中村敦夫)、食品会社の課長(地井武男)の5人だのだが
岸田森がなにやら怪しげな美容師の怪演で笑いを誘う。

でもこの岸田森が部屋に侵入した男なので、部屋に侵入したポルシェの男がわかって
しまったので、実は他のポルシェの男は姉の死とは何の関係もなくなるはずなのだが
そんなことはお構い無しに桜田淳子はポルシェを手がかりに犯人を追っていく。

で一番怪しくなさそうだった男が犯人というわけで、大体途中でわかった。
篠田三郎がカメラマンとして登場するが、この頃の篠田三郎は実にさわやか好青年。
桜田淳子に篠田三郎は惚れるが淳子はつれなくして他の男に惚れて、最後に篠田三郎と
出来る、という展開にしてもよかった気がするのだが。

そうそう書き忘れたが精神病患者の田中邦衛。
いかにも「キチガイ」という感じの設定&演技で今だったらヤバイだろうなあ。



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光州5・18


日時 2008年6月8日13:10〜
場所 アミューズCQNシアター2
監督 キム・ジフン

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1980年5月、全斗煥大統領の軍事政権が発足した頃の韓国。
光州では戒厳軍と市民が衝突し、多くの市民が犠牲になったいわゆる「光州事件」の映画化。

韓国の現代史に詳しくない僕にとってはこの事件はまったく言っていいほど
知らなかった。
但し、この年に名古屋がオリンピック誘致に破れ、ソウルオリンピックが決定した年。
「韓国みたいな政権が不安定な国でオリンピックをしてだいじょうぶか?」
と思った覚えがあるから、それなりに韓国情勢にまったく無知ではなかったと思う。
それにしても韓国でこんな事件があったとは具体的には知らなかった。


映画の方はいわゆる一般市民のタクシー運転手の青年が主人公。
その弟(イ・ジュンギ)が優秀でソウル大学法学部に進学するような秀才だ。
弟の友人で美人看護婦が主人公の恋人になる。
その父親がタクシー会社の社長で元軍人。(軍事経験を生かして市民軍のリーダーとなる)
あと主人公のタクシー会社の同僚と酔った客を乗せて喧嘩したのだがその後の
デモで再会し、今度は意気投合する男が主な登場人物。

どの辺までフィクションでどの辺が事実なのかちょっとわからないが、主人公などは
多分フィクションだろう。

弟がデモに行き一旦は戒厳軍が退却すると見えてその後市民に向かって乱射するという
シーンは驚愕だ。
同じ国の人間にここまで出来るのか?
今回軍人側のキャラクターがほとんど登場しなかったが、下級兵士はこの事件をどのような
思いで参加していたか知りたいところだ。

で結局市民たちは市役所に立てこもり、ラストに軍によって殲滅される。
主人公たちは一人一人死んでいくのだが、この死ぬシーンが一人一人「決め」のセリフを
言って死んでいくという演出。
そして究極のラストシーンが死んでしまった主人公が恋人と結婚式をあげ、死んだ弟や
同僚、社長までが笑って祝福しているという「泣かせ」の演出。

韓国映画らしいラストだなあ。
こういう事件もエンタテイメントとして消化してしまう韓国映画はどうなんだろうなあ。
不謹慎と感じてしまうほどでもないが、ちょっと盛り上げすぎという気はする。



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世界で一番美しい夜


日時 2008年6月8日10:00〜
場所 シネマミューズ・イースト
監督 天願大介

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ある田舎の漁村、要村は出生率全国ナンバー1ということで総理大臣から表彰を受ける。
実はこの村の出生率の秘密は14年前に新聞社の支局に新聞記者(田口トモロヲ)が左遷されて
きたことからはじまっていた。
新聞記者と出生率ナンバー1をつなぐ秘密とは?


「AIKI」「暗いところで待ち合わせ」と最近の日本の監督の中で注目している天願大介の
新作。
これ一応成人指定だ。
この村には一風おかしな人がいてロリコンの校長やら核廃棄物処理場を誘致を考える村長とか
怪しげな神主、そしてかつての左翼闘士(石橋凌)など。
そして美しい、この村には似つかわしくない美人のスナックのママ、あまりに天才過ぎてまわり
からは「頭が弱い」ち思われている女の子など。

で結局、スナックのママは不思議な霊能力があり、男を食い殺すほどの性欲の持ち主。
石橋凌は縄文時代の遺跡から縄文人が使っていた精力剤を発見し、これを散布する
計画を立てている。
人類がセックスばかりをするようになれば戦争もなくなる、という発想。

ラスト、この縄文人が作った精力剤から作った新しい爆弾(?)が暴徒によって
爆発され、村中のものがみんなセックスして子供がたくさん生まれた、という訳。
そしてその「実は天才少女」の娘が東京に行って新しい「発情爆弾」を東京で爆発させ、
東京中の人がセックスしまくるというオチ。

「セックスばかりすれば戦争はなくなる」という発想はイージーすぎる気がするが(今度は「女の取り合い」
みたいなことで争いが起こりそうだし)、ちょっとあこがれる世界ではありますね。
本当のところ天願監督がどう考えているかはちょっと興味があります。
成人指定ですが、それほどの内容ではない。
スナックのママの全裸シーンのせいかな?

最後のほうで「正義の戦争より不正義のセックス」というようなセリフがあったと思うが、
今村昌平の「黒い雨」の「正義の戦争より不正義の平和」というセリフに通じる。

相変わらず石橋凌がいい。
田口トモロヲも「テロリスト」の時はよくなかったが、今回は地味に主役でなかなかよかった。
あとラストで天才少女の娘のおじいちゃんの漁師(三上寛)が無人島に行くのだが、このときの
島の名前が(セリフでチラッと言っただけだが)「グラマ島」、天願監督の父今村昌平の師匠、
川島雄三監督の「グラマ島の誘惑」から取ったものだろう。
遊び心にちょっと笑った。



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キングコング対ゴジラ(短縮版)


日時 2008年6月7日
場所 グリソムギャング試写
監督 本多猪四郎
特技監督 円谷英二
製作 昭和37年(1962年)

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昭和37年製作の「キングコング対ゴジラ」、これを後にチャンピョン祭り(東宝は
かつて「ドラえもん」シリーズが始まる前は「チャンピョン祭り」と称して怪獣映画を
1本、そしてテレビの30分番組のアニメを数本劇場上映する番組が毎年3月に行っていた)
用に短縮したもの。

以下特撮ファンはよく知っていることだけど、一応記しておきましょう。
オリジナルは98分あったのだが、このカット版は80分ばかりと随分コンパクト。
そして現在、上映可能はものはこの短縮版しかなく、オリジナル全長版はスクリーンでは
見ることは出来ない。

ビデオ化された際に残されていた16mm用プリントからカットされた部分を継ぎ足して
復元された。
このときはカットされて修復された部分は赤く退色している状態で、残っているところは
通常の発色という、ある意味カットされた部分がすぐにわかるものだったと思う。
レーザーディスクは未見なのでどういう状態なのか私には解らない。
DVD化された際に退色した部分は色補正が行われ、カットされていた部分ともともとの
部分はほとんど見分けがつかないが、よーく見ると若干色調が違うカットがある。
但し言われてみればそういう気がする、という程度ですが。

このカット版ですが、多少はしょった感はあるものの、全体のイメージを損なうほどには
至っていない。もちろん有島一郎のギャグがカットされていたりでオリジナルの方がいいことには
間違いないですが。

主な変更点、カットの場面は以下の通り。

オープニングに「東宝創立30周年記念」の文字がなく、東宝マークも「TOHO SCOPE」
がない。またメインタイトルの前にゴジラとキングコングが戦っているカットが挿入。

「世界驚異シリーズ」のテレビ番組で「地球の回転が止まったら・・・」というオープニングがない。
続いてパシフィック製薬のシーンで多湖部長と社員の会話が一部カット。

キングコングの島で登場以前に雷と咆哮だけのシーンがあるがカット。藤木悠が大トカゲを捨てる
シーンがカット。

藤田(佐原健二)が浜美枝を助けに行くシーンが道のりの部分が少しカット。
などなど。

後半はほとんどカットがなかったと思う。
但しセリフが一言カットされているところが何箇所かあったからそれこそ30秒づつ30箇所切って
いったような感じ。
全体のイメージを損なうほどにはカットされていない。

今回20年以上ぶりにこのカット版を再見。
実はこのカット版は現在ソフト化されていない。
「海底軍艦」の時はカット版も収録されてのソフト化だったが、そういう形でいいからソフト化して
欲しいと思う。



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走れ!コウタロー 喜劇 男だから泣くサ


日時 2008年6月7日15:30〜
場所 ザ・グリソムギャング
監督 山本邦彦
製作 昭和46年(1971年)

(詳しくはキネ旬データベースで)



北海道の藤倉俊介(藤村俊二)は父親(西村晃)の願いにより無理やり騎手に
されそうになったが、本人は落馬ばかりでまったく才能がない。
近所に住む家出常習娘のアケミ(緑摩子)にそそのかされて東京に家出するが
アケミはすぐに別の男に乗り換えてしまう。
一人ぼっちで東京に取り残された俊介だが、新聞で見た馬丁の募集広告を見て
応募するが、そこは父親の知り合いの嵐田(石田茂樹)経営するところで
俊介の父親から「騎手に育ててくれ」と手紙が来ていた。
その気のない俊介だったが、嵐田の娘・カナ子(郷ちぐさ)にしごかれる羽目に。
やがて馬主の娘・かすみ(菱美百合子)と知り合い一目ぼれ。
俊介はかすみのために立派な騎手になると誓うのだったが。


グリソムギャングでの上映だが、今回ひし美ゆり子さん(菱美百合子)のお誕生日と
いうイベント上映。
正直言うが、ひし美さんが出演しているという以外、見所はほとんどない。
当時のヒット曲ソルティシュガーの大ヒット曲「走れ!コウタロー」にあやかった映画。

左とん平、伴淳三郎、E・H・エリック、大泉滉、左卜全など脇でバラエティにとんだ
出演陣。ひし美さんはまだほっぺもふっくらして可愛らしい感じ。
ソルティシュガーはラストのひし美さんの結婚式の披露宴のシーンで歌ってくれる。

ギャグにしても途中、伴淳三郎が馬糞を持っていてそこへアケミがおはぎと
お茶を持ってくる。伴淳三郎が馬糞をテーブルに置くので「誰かが間違えて食べるんだろうな」
ともうオチがわかってしまう。

今見ると懐かしくて楽しいが、当時見るとテレビドラマ、バラエティで見慣れている
メンバーなので面白くもなんともなかったろう。
それこそ当時見ていたら「ヒット曲にあやかって適当に売れている喜劇人を集めただけの
安易な映画。こんな映画ばかり作っているから日本映画はダメなんだ!」と怒っていたに違いない。



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キングコング対ゴジラ


日時 2008年6月7日
場所 DVD
監督 本多猪四郎
特技監督 円谷英二

「キングコング対ゴジラ」は「名画座」に記しました。



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アフタースクール


日時 2008年6月4日20:10〜
場所 新宿ジョイシネマ1
監督 内田けんじ

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サラリーマンの木村(堺雅人)の家庭の朝。
妻(常盤貴子)は間もなく出産を控え大きなおなかをしている。妻の父親(山本圭)も娘の
出産間近で木村の家に来ている様子だ。
近所に住む親友で中学教師の神野(大泉洋)の車を借りて会社に出勤。
だが木村はホテルのロビーである女性(田畑智子)にあっていた。
木村の会社では木村の無断欠勤が話題になり、社長は部下に私立探偵(佐々木蔵ノ介)を雇って
木村の行方を捜させることに。
中学の同級生と名乗って神野に近づき、木村を探す手伝いをさせる探偵だったが。


2005年(もう3年になるのか)に話題になった「運命じゃない人」の内田けんじの最新作。
ネタバレで行きますが、この朝のシーンが重要です。
よくこの映画のストーリー紹介では神野に島崎と名乗る同級生の探偵がやってくるところから
話が始まっているが、実はこの朝のシーンが重要。

ここで内田けんじの映画ならではの人物関係紹介のトリックが仕掛けられる。
そして探偵と神野が木村の足取りを追っていくシーンは割りと普通の探偵映画風で特別
どうってことはない。
神野が探偵と別れてからどーんと話はひっくり返る。

そして我々が信じていた人物関係ががらがらと崩れていく。
このあたりはあまりにガラガラを崩れたので、頭の中で再構築するのに時間がかかった。
そしてラストまで一気に見せていく。

正直、もう一回どんでん返しがあるのではないかと思ってしまったので、もう一つ喰い
足りない感じ。
でもこれは前評判でこちらが期待しすぎてしまったせいかも知れない。

時々、小泉純一郎風の容貌をした政治家が2、3回登場するのでどう関わるのかと
思っていたらエンドクレジットが終わった後に登場します。
最後までお楽しみに!



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靖国 YASUKUNI


日時 2008年6月2日21:10〜
場所 シネカノン有楽町1丁目
監督 李 纓

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結局、有楽町でレイトショーで見ました、映画「靖国」。
上映中止騒動以来、あちこちでこの映画についての批評、感想を目にしたし、
5月GWの公開直後は混んでいて見れなかったり、その後堀川監督イベント(5月23日)
の準備で忙しくなったりで、結局見ていないのに見たような錯覚に陥ってしまい、
すっかり見るのが遅れた。
さすがにもう空いていて、前日の「映画の日」の割引サービスの反動(?)なのか
レイトショーだから(終映は23:20だから)か観客は10人ぐらい。

戦前戦中に靖国神社で作られていた靖国刀を作っていた今は高知に住む刀匠のインタビュー
と8月15日の靖国神社でのトラブル(騒ぎ)を撮影した内容。
まあ反日映画といえば反日映画と言えるでしょう。
その人のもともとの靖国に対する考え方によって見方は変わってくるのだと思います。

例えば石原慎太郎が「眠れる獅子は中国ではなくて、日本だとこれから示してやりたいと
思います」などと演説するシーンがある。
それを「石原都知事、いいこと言う」と思うか「あんなことを言って日本が海外から誤解される」
と思うかは見る人のもともとの考え方次第。
またそういった政治家、および軍服を着てラッパを吹きながら追悼の意を述べる人々の映像に
混じって、一般の参拝に来ていたいかにも一般の主婦らしい二人の女性が「私の兄も戦争に
行ったが髪の毛しか帰ってこなかった。でもその髪の毛を本人のものかどうかわかったものじゃない。
小泉さんは靖国に参拝しても自然だと思う」と会話するシーンが出てくる。
いかにも政治的に無欲そうなこういうおばさんにそう言われるとこちらも納得してしまう。

アメリカ人が「小泉首相を支持します」と書いた紙を持って星条旗を掲げると、ありがとうという
日本人がいれば「帰れ!」とさけぶ日本人もいる。
このアメリカ人をパンフレットなどでは「的外れな主張をするアメリカ人」と紹介されているが
私はそうは思わない。
戦死者に対して日本の首相が追悼するのは当然、アメリカ政府がそれに対してコメントしないから
アメリカを代表してやってきたという。
至極理路整然とした理屈ではないか。

また台湾の方が合祀取り下げを訴えに来るのだが、ここは「あんにょん・サヨナラ」と同じ日では
ないか。
でもこちらのほうが言葉がきつかったなあ。
主にとらえている対象が違ったせいだとは思うが。

ただラストの10分の戦場での日本軍の写真〜特攻隊や南京大虐殺(と主張される)の写真
(特攻兵も刀をもって飛行機に乗るし、刀で中国人の首をはねている写真など刀を持っている
日本兵の写真がおおい)や天皇の靖国参拝、閲兵、などモンタージュを見ていると、
「靖国神社、天皇、靖国刀(日本刀)が、日本が戦争をしたときの日本人の精神的支柱になったのだ」
という主張を感じた。

これに賛同するかしないかは個人の意見の分かれるところ。
反対意見の人もあると思いますが、「外国人から靖国神社を見るとこう見える」という一つの
意見としてみてもらいたいですね。

この映画の描き方は間違っている、と思うなら中国人を糾弾するのではなく、その誤解を解く
ことにパワーを使って欲しいと思う。
真にそう思う。



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恐妻党総裁に栄光あれ


日時 2008年6月1日
場所 録画DVD(衛星劇場)
監督 青柳信雄
製作 昭和35年(1960年)

(詳しくはキネ旬データベースで)


19XX年、日本政府の主要大臣と野党党首、憲法学者はなにやら秘密会議を
開いていた。いづれも恐妻家のこの会議のメンバー、「亭主安全保障法案」、
つまり女房の尻に引かれた亭主たちの権利を保護しようという法律だ。
秘密裏に進めてきたが新聞記者(高島忠夫)によってスクープされてしまう。
やがてその法案の投票の日がやってきた。
この法律、果たして成立されるのか?!


まったく評判を聞いたことのない映画だったが、タイトルが強烈なので興味をそそられ
見てみることに。
なんと原作脚本は川内康範だ。
そしてもっと驚いたことにこの映画、セットは全部書き割りだ。
オープニングタイトルもアニメーションで(九里洋二っぽいのだが)それはまあ普通なのだが
その後のセットが漫画風な書き割りで誤魔化そうとしたものではなく、演劇風に明らかに
書き割りと見せている。
こんな映画初めて見た。
風刺劇の喜劇だからこういう演出も違和感はないが、それにしても低予算だったのだなあ。

オープニングでは有島一郎が登場し「こんにちは、有島一郎です」と世の女性たちが
強いことをなどを解説する。
秘密会議のメンバーで革新政党の党首として千葉信夫が登場するのだが、これが明らかに
社会党の浅沼委員長をモデルにしている。(公開は昭和35年5月10日)

そして高島忠夫たちによってスクープされ女性たちのデモが起こるのだが、この辺のシーンは
「亭主安全保障法案」といい明らかに当時の安保条約を意識したものだろう。
話の続きを書いてしまうと結局世の女性たちの反発を恐れた議員たちによって否決されてしまう。
女性たちの反対運動は夫との夜の生活を拒否する、というストライキ運動が功を奏したのだ。

で言いだしっぺの大臣達は赤城の山に立てこもる。
そして妻達の説得が始まって、結局男たちは女性を許し、またもとの木阿弥になる、というオチ。
一応高島忠夫と白川由美(十朱久雄の大臣の秘書で彼女から提出前の法案の内容がスクープされる)
が物語の主人公だが、出演シーンは法案を提出した大臣達が多い。
その中で恐妻党総裁を演じるのが山本嘉次郎。監督だけでなく出演もなさっているとは知らなかった。
一応高島忠夫も一曲歌うシーンもあり、なんとか娯楽映画としての形はついている。

低予算でやっつけで作ったようにも見えるし、実験的な喜劇にも見えるし、本当の所の裏の事情は
どうだったのだろう?
是非知りたいところだ。



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