2008年7月

南郷次郎探偵帳
影なき殺人者
スタンド・バイ・ミー 打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?
ハプニング SEVEN NIGHTS IN JAPAN 九月の冗談クラブバンド 歩いても歩いても
スターシップ
トゥルーパーズ3
スピード・レーサー ゲゲゲの鬼太郎
千年呪い歌
クライマーズ・ハイ
カメレオン 西の魔女が死んだ ぐるりのこと。 休暇

南郷次郎探偵帳 影なき殺人者


日時 2008年7月27日14:00〜
場所 ザ・グリソムギャング
監督 石川義寛
製作 昭和36年(1961年)

(詳しくはキネ旬データベースで)


麻薬界の大物が証拠不十分で釈放。警察は彼を尾行し、手がかりをつかもうとしたが
尾行中だった警察の車はダンプに邪魔され巻かれてしまう。
翌日、釈放された男は死体で発見、黒幕はほかにいることが明白に。
そんな時、弁護士南郷次郎(天知茂)の事務所に若い女から電話が。
指定されたホテルに行ってみると女は死体となっていた。
その遺留品を(勝手に)調べた南郷は銀行の貸金庫の鍵を発見。
銀行に行ってみると麻薬と小田急線ロマンスカーの箱根行きの切符が入っている。
助手に連絡して麻薬を預け警察に届けるよう指示すると自分はロマンスカーに。
箱根の駅で謎の女から芦ノ湖に行きボートに乗るように指示される。
とりあえず芦ノ湖に行ってボートに乗る南郷。
しかしモーターボートに襲われ、あわや!


島田一男原作の南郷次郎もの。
当時の紹介記事には「南郷次郎シリーズ第1弾」と書いてある。
シリーズ化の予定だったが、製作の新東宝が倒産してしまい、結局これ1本に。
同じ原作が田宮二郎で映画化(「黒の挑戦者」)されていてこちらは以前に見ている。
それが売春秘密クラブみたいなところが出てくるんだけど、それが江戸川乱歩チックな
エロさがあったので、天知版ではどうなっているかとそれが気になったが、その辺は
あっさりしたもの。
というか話自体がだいぶ違うよな・・・(と言ってもよくは覚えていないのだが)

結局このあと最初に殺された女の弟とか、芦ノ湖でボートから落とされたときに助けて
くれた女(三原葉子)やらいろんな人物が登場し、とにかくテンポが速くついていくのが
大変。
で最後のほうになって黒幕が登場するのだが、後姿などで見せないようにしているものの、
声なのでそれ以前のシーンに出てきた「あの人」というのはバレバレ。

でも映画全体からいうとクライマックス的に「南郷次郎が窮地に陥る!」といった見せ場がなく、
最初から最後まで同じ調子で突っ走ってしまっていわゆる「メリハリ」がないので
映画的カタルシスもないまま映画が終わってしまった。

天知茂はのちのテレビの刑事もの「非情のライセンス」や「江戸川乱歩シリーズ」に比べると
軽快な感じ。
美人秘書が南郷に惚れている、という設定もこの手の作品の王道で、正直可もなく不可もなく
無難な一篇というのが感想。


この日は天知さんが新東宝をやめて事務所を作ってから行動を共にしていた北町嘉朗さんが
トークゲスト。
天知茂のことよく知らない人にはついていけない話が多く、楽しめた。



(このページのトップへ)




スタンド・バイ・ミー


日時 2008年7月26日19:00〜
場所 早稲田松竹
監督 ロブ・ライナー
製作 1986年(昭和61年)

(詳しくはキネ旬データベースで)


オレゴン州キャルスロック。
12歳のリーダー格のクリス(リバー・フェニックス)、大きな眼鏡をかけているが
けんかっ早いテディ、太っちょのバーン、そしてゴーディの4人は町で噂の行方不明に
なった少年の死体が森の中にあるとバーンが聞きつける。
その少年の死体を見つけて有名になろうとその場所に歩いていくことに。
50kmほど離れたその場所。車で行けばすぐなのだが、12歳の彼らにとっては
途方もない距離。
町の不良に絡まれたり、線路沿いに歩いていると橋で汽車と遭遇したり、川を渡れば
全身をヒルに食いつかれたりの大冒険。
はたして少年の死体は見つかるのか?


噂の高い名作。
なるほどねえ、噂にたがわぬ名作です。
男の子なら誰でも持っているような小学生時代の大冒険の思い出。
ちょっと気の弱い主人公、頼れる兄貴のクリス、喧嘩ぱっやい奴、三枚目のデブキャラと
典型的な人物設定。

焚き火のそばで将来を語り合う友。
うーん、青春映画のすべてが詰まっている。
原作はスティーブン・キングの「the body」
この原作にベン・E・キングの名曲「スタンド・バイ・ミー」をあてて題名にまでしたのは
大正解だったなあ。
この映画のおかげでこの曲を知った人も多いのではないか(私もそのひとり)


そういえばこの映画には女の子は登場しない。
恋愛の話は少しはしたと思うが、女の子のことを悩んだりするようなシーンはなく
ひたすらに「男の子」映画だ。
ちゃらちゃらした恋愛映画(今日、実は同じ劇場で小学生の恋愛映画を見た)より
こういった冒険映画のほうが僕の趣味にはあう。

もうかなりおじさんになった今見ると、小学生の時代は記憶の1ページだけど、
これが10代、20代のころに見ていたらもっと違った感想を持ったかも知れない。
ひょっとしたら「がんばれ!ベアーズ」のように魂に刻まれた映画になったかも。
公開当時、就職したばかりで仕事になれることに忙しかった。
公開20年たっておじさんになってこの映画を見たことが、はたしてよかったか悪かったか。

20代のときに見ておけばどんな感想を持ったろう。
もっともっと胸を締め付けられたかも知れない。



(このページのトップへ)




打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?


日時 2008年7月26日18:00〜
場所 早稲田松竹
監督 岩井俊二
製作 平成6年(1994年)劇場公開

(詳しくはキネ旬データベースで)


夏休みの登校日の一日。
その日は町の花火大会だ。
主人公ノリミチは友人とプールで50m競泳をするがターンの時に足をプールサイドに
ぶつけて遅れをとり負けてしまう。
ゴールでは美少女のなずな(奥菜恵)が勝った方を今夜の花火大会に誘っていた。
しかしノリミチたちはは他の友達と打ち上げ花火を横からみたら平たいか丸いか、で論争に
なり、みんなで花火大会会場の横にある灯台に行くことに。
なずなは実は両親が離婚してこの夏休みの間に引っ越すのだった。
夏の思い出に花火大会に男の子を誘ったのだが、誘った子は灯台に行くことになって
約束をすっぽかされてしまい、親に家に連れ戻されてしまう。
それを見てノリミチは「もし自分が勝っていたら」と空想するのだった。


という感じでもうひとつのストーリーが始まる。
この映画、50分ばかりの中編で元はテレビドラマだったそうで、そのためVTR撮りしたものだから
それをフィルムにしたのでスクリーンで見ると画が汚い。
もともとはフジテレビの「ifもしも」というテレビ番組で、結末が二つある話、というコンセプトで
作られたドラマシリーズなので、今回のように結末が二通りあるのはこのシリーズすべてが
そうだったのだそうだ。

小学生の淡い初恋物語、といういかにも岩井俊二が好きそうな(軟弱な)話。
個人的にはあんまり好きじゃない。

なずなを演じるのは奥菜恵。
へ〜1979年生まれだから製作当時(1993年)は14歳。
奥菜恵が小学生を演じていた時代があったとは知らなかった。
あとはノリミチ役で山崎裕太。あとは小橋賢児も友人の小学生役で出演。


岩井の初期作品として記憶に残るべき作品ですね。



(このページのトップへ)




ハプニング


日時 2008年7月26日9:30〜
場所 新宿ピカデリー・スクリーン4
監督 M・ナイト・シャラマン

(公式HPへ)


ある日ニューヨークでは突然人間が自傷行為にでて次々と人が死んでいく事件が起こった!
回りの人間が死んでいく中、理科教師の主人公は今のところ安全な田舎へと家族を
連れて避難し始めるが、途中で出会った人々などが次々と死んでいく。
一体何が起こっているのか?


いろいろと話題のシャラマン映画。
前作「レディ・イン・ウォーター」があまりに不評だったので見なかったが、今回は
何やら大事件が起こる映画らしいので(実はこの程度の予備知識で見に行った)見てみた。
何しろ「ヴィレッジ」のときにどんでん返し、というか設定をひっくり返す展開だったし、
シャラマン映画はそういう「どんでん返し」がお得意、というイメージがあったので
今回も勝手に「さあどんでん返しはいつ来るんだ、どうな風にどんでん返るんだ?」
とそればかり期待していたのだが・・・どんでん返しは・・・・なかった。

何しろどういうタネがあるのかとかばかり考えていたので「今回はオチがないのがオチか」
がっかりした、というのが率直な感想。
まあ勝手に期待した私が悪いんですが。

主人公が理科教師なのでこの事態の原因を推理するのだが、どうも植物が何らかの人間を
狂わせる毒素を出しているのではないかと推理する。
事件が公園で起こり始めるのも植物が多いからではないかと。

行く先々でやはり人々は自殺行為に走る。
動物園の飼育係がライオンに腕を食いちぎられたり、芝刈りマシンの前に寝転がって
刈り取られたりと残酷シーンも続く。
(この辺の残酷描写はちょっと嫌いだな、俺は)

そして逃げた先では住んでいる人々が避難民を拒否して争いがおこり、殺し合いにまで発展する。
この辺の人間模様をもっと突っ込めば「ミスト」のようだったが、その辺は「ミスト」に比べると
やや薄い。
その中でも後半に何やら外界との付き合いを一切遮断した偏屈ばあさんの家に泊めてもらうのだが、
翌朝のシーンでバーンと大きな音をたててばあさんが後ろから声をかけるとか、そういう大きな
音をたてて観客を脅かす、というのは芸がない。

結局人間たちが死んでいく異常事態は突然終息する。
映画では「自然界のことはすべて人間が理解しているわけではない」という理屈でまとめる。
「また起こるかも知れない」という「ゴジラ」の志村喬のようなセリフがあって再び事件は
起こり始めるという結末。

まあ残酷シーンがあったり、大きな音で脅かすという芸のないシーンがあったり、突っ込み
どころは多いのですが、B級SFとしては充分楽しめました。

しかし最近はこういう異常事態が起こってもそれを政府、軍部の視点ではなく、一般市民の
視点で描くのが流行っているみたいですね。
「クローバーフィールド」とか「ミスト」とか、この映画とか。
スピルバーグの「宇宙戦争」あたりからかな、こういうのが流行りだしたのは。
日本の「ゴジラ」も次はこういう感じになるのかなあ。



(このページのトップへ)




SEVEN NIGHTS IN JAPAN


日時 2008年7月17日
監督 ルイス・ギルバート
製作 1976年
日本未公開

(詳しくはインターネット・ムービー・データベースで)


「007は二度死ぬ」のルイス・ギルバート監督が日本で撮影した日本版「ローマの休日」
日本未公開作であるため、うわさには聞いていて是非見たいと思っていたが、今回見る機会に
恵まれ、初めて見た。
ヤフーで検索してみたが、日本人がこの映画の感想、紹介を書いたページは見つからなかった。
おそらくほとんどの人が見ていないであろう。

紹介もかねて詳しく書いていく。
イギリス海軍士官として今は世界を航行中のジョージ王子。船は日本に停泊し、7日間滞在
することに。
滞在が始まったが、レセプションやらパーティのスケジュールがいっぱいで何十人の人を
紹介されるが、そんな滞在に飽き飽きしてしまう。
宿舎から(イギリス大使館?)から抜け出し、夜の東京の冒険に。
やってきたのは新宿・歌舞伎町。
ふらふら歩いていたらキャバレーの呼び込みに誘われ一軒の店に入ることに。
ところがここはボッタクリ・バー。女の子が次々と席に座り(くそまずい)シャンパンを
注文する。帰ろうとしたジョージ王子だが、出された伝票を見てびっくり!
「払えないよ」などといっているうちに別の客のテーブルのビールをこぼしてしまい、
その客が怒って暴れだし店では大乱闘。
その混乱の隙に店を逃げ出したジョージ。
街を逃げているうちに外国人観光客相手のはとバスが止まっているのを見つけそのバスに乗り込む。
バスは発車してなんとかボッタクリ・バーのヤクザから逃げおおせた王子だが、今度は
美しいバスガイド・スミ(青木英美)から「切符をお持ちですか?」と声をかけられてしまう。
「今持ち合わせがなくて・・・明日払います」困惑したスミだが、結局明日お金を持ってくる
約束をする。

翌日はレコード工場を見学するジョージだが、心は上の空。
夜になって再びはとバスに向かうジョージ。スミは「お金を持ってきてくれるとは驚きです」
2日分の料金を払い、その夜もスミが車中で歌う日本の民謡を聞きながら過ごすのだった。
バスツアーが終わった後、スミをお茶に誘うジョージ。
その後、タクシーでスミのアパートまで送るが、雨が降っている。
傘を持っていないジョージを可哀想に思ったスミはひとまず自分のアパートに連れて行く。
そのうちに結局泊めてもらうことに。
布団を一緒に引いて寝ようとするジョージだが、スミの着替えをつい見てしまう。
だがここはこらえどころと一旦は帰るジョージ。

翌日からスミは京都ツアーに参加だ。
そのバスにはなんとジョージが乗っている。昨日、「明日から京都に行くんです」とスミから
聞いたので公務をほっぱり出して乗ってしまったのだ。

場面変わって東京のある剣道の道場。
そこに貫禄のある男(丹波哲郎)が入っていく。
奥の部屋で10人ほどの若い衆を相手に演説する丹波。
「今こそわれら『ヤマカゼ団』が立ち上がる時が来たのだ!まず手始めにこの男を殺す!」
と見せた写真がなんとジョージ王子だ!


という感じでイギリス王子とバスガイドは出会い、恋に落ちる。
そしてそれだけでなく日本の過激な右翼系のテロ組織も関わってくる面白さ。
しかもその頭領は丹波哲郎だ!
そして駐日イギリス大使(だと思う)は「007」でも日本駐在員を演じた俳優。

ジョージたちを乗せたバスは富士山を見ながら京都へ。
二条城や金閣寺を見学。そしてスミはここで休暇をもらっているらしく、琵琶湖半の実家へ。
ジョージそのまま彼女の実家についてきて日本の田舎を堪能する。
翌日電車で帰ろうとする。しかし例の「ヤマカゼ団」がその列車にアタッシュケースに入った
爆弾を仕掛ける。
王子危うし!と思われたが、ホームで電車を見送ったスミの前にジョージが現れる。
彼は結局発車直前に降りたのだ。
ドカーンと爆発音のみがとどろくが(列車爆破の映像なし)、二人は「どうしたんだろうね?」
と無関心。

このジョージが乗る列車だが、設定は京都なのだが、写っている電車は西武線。しかも駅は狭山湖駅。
(現在の西武球場前駅)
日本人でも東京近辺以外の人はわからんかも知れんが、毎日西武線に乗っている私としては爆笑。
しかも暗殺はあっさり失敗する。
007的なアクションシーンを期待したがはずれ。

でスミの琵琶湖畔の実家で数日を過ごすジョージとスミ。
もうお風呂も一緒にはいって布団も共にして新婚気分。ちょっと尻が軽くないか、スミ!
このあと丹波哲郎は再び刺客を送り込む。がライフルで林から王子を狙撃しようとするのだが、
あわや!というところで「君たち、この銃は使用許可を得ているのか?」と警官から職務質問を
受けてしまう。
あっさりパトカーに連行される刺客たち。
怒った丹波哲郎、今度は絶対にしくじるな!と2眼レフカメラに拳銃を仕込んで、写真を
撮るフリをしてシャッターを切ると拳銃から発射される007並の新兵器を部下に持たせ
「俺の気に入るような写真を撮ってくるんだぞ!」と発破をかける。
かけられた若い衆はなんと苅谷俊介だ!

で、刈谷俊介は観光地でジョージの写真を撮るふりをして暗殺を企てるが、カメラを向けられた
ジョージは自分の写真を撮られては困る立場なので、写真を撮るな!とばかりに刈谷俊介から
カメラを取り上げて逃げてしまう。

おいおい、相手が暗殺者だから結果オーライだけど、単なる観光客だった場合、それじゃ泥棒だぜ?

で湖畔を歩くジョージとスミを車で走行中の刈谷俊介は見つけるのだが、引き殺すつもりが
失敗して自分は車もろとも湖の中へ・・・・(はっきり言ってトホホな殺し屋だ)

結局、街中でバス待ちをしている間にスミはたまたま電気店で流していたテレビのニュースをみて
ジョージがイギリス王子と知る。
結婚を考えたスミだったが「あなたはいずれ王になる方。身分が違いすぎる」と自ら身を引く。
再び元の王子に戻るジョージ。

船に乗るために銀座を車で走る。そこでスミが乗るはとバスにすれ違う。
目と目を合わせる二人。


映画の内容は大体こんな感じ。
日本語字幕なしの英語セリフのまま見たので、細かいところは違っているかも知れないが、
まあそれほど大差ないだろう。

キャストも丹波哲郎など似ているし、カメラ型拳銃などの秘密兵器も登場し、「007は二度死ぬ」
との共通点も見られる。
他にもオープンカーのフェアレディが登場したりと何かと「007」と似ている点を(無理して
見つけているのかも知れないが)感じる。

「007は二度死ぬ」を撮ったルイス・ギルバートが(彼なりの)日本への愛をこめてとったそんな一品。
私は好きな映画です。



(このページのトップへ)




九月の冗談クラブバンド


日時 2008年7月21日
場所 TSUTAYAレンタル
監督 長崎俊一
製作 昭和57年(1982年)

(詳しくはキネ旬データベースで)


かつては「ハマのリョウ」と言われた暴走族の頭だったリョウ(内藤剛志)は今は
バーの雇われマスターだった。
1年前に仲間のテツジが死んでから彼はバイクを降りたのだ。
かつての仲間は一周忌の日にまだ爆走しようと言っているがリョウは関心がない。
かつての対立グループだった「ルパン」のリーダー・モロ(古尾谷雅人)もリョウに
おとなしくているように言うがリョウは何もする気がない。
そんな時、中年男(室田日出男)がやってきて店で暴れ仲間のバイクも壊していった。
かつてリョウに惚れていたレイコ(伊藤幸子)も暴走族から抜け出し普通の会社に
就職した。しかしその会社でのレイコの上司がリョウの店で暴れた中年男だった。
そして一周忌の夜がやってくる。


「ハッピーストリート裏」などの自主映画を監督した長崎俊一の劇場公開用映画第1作。
ATG作品だ。
初めてのメジャー作品で気合いが入りすぎたのか正直監督の思いとは裏腹に空回りしている感じ。
リョウはだらだらしているだけで最後に疾走する、という映画的カタルシスもない。
中年男はなぜいきなり暴走族の彼らを襲うのかよくわからない。
最後に中年男とモロたちの対決があってなんだか火炎瓶で中年男の手下の若い奴が
死んで、それでもリョウは何もしなくて、結局最後はサラリーマンになっている。

見終わってからしばらく経つとなんとなく、主人公にとっての「走り」は青春の
象徴で誰もが経験する「青春」の一つの形か。
それで室田日出男の中年男は若者に立ちふさがる大人の「象徴」か。
結局はリョウも大人になって、最後はスーツを着て会社勤めをしているらしい姿で
終わる。

青春という祭の終わり、をテーマにしていたかも知れないけど、こっちが中年男に
なったせいなのか、はたまた長崎俊一の語り方がただ単に独りよがりになっていたせいなのか
まったくピンと来なかった。

長崎俊一、このあと男闘呼組主演で「ロックよ、静かに流れよ」を撮ることになる。
この作品とはちょっと共通点がある。
主人公たちがいわゆる不良少年。
仲間の一人がバイクで死んで、その追悼を行おうとしている。
この「九月の冗談クラブバンド」の年齢を低くして不良な部分を薄めたのが
ある意味「ロックよ、静かに流れよ」だったのかも知れない。
そういう意味では見ておいてよかった。



(このページのトップへ)




歩いても歩いても


日時 2008年7月20日18:40〜
場所 新宿武蔵野館2
監督 是枝裕和

(公式HPへ)


横山良多(阿部寛)は最近再婚した妻と子供をつれて東京から三浦海岸の実家に帰る。
子供は再婚した妻の連れ子だった。
実家にはすでに姉夫婦が帰省していた。そう、今日は若くしてなくなった良多の
兄の命日なのだ。15年前、海で溺れた子供を助けようとして逆に死んでしまった兄。
その助けられた子供も今は成人し、毎年線香を上げに来る。
姉夫婦は両親の家を二世帯住宅にしたいらしい。
そんな家族の一日。


前作「花よりもなほ」は実は何を言いたいのかはっきりしない映画だった。
まあなんとなくはわかるのだが、あだ討ちと現代の戦争を一緒にされてもねえという感じだった。
だが本作は「家族の問題」を主題にすえ、こちらの胸に迫る。

といっても切実な話ではない。
なんとまあ、私の家族にも似ている。
たぶん多くの人がそう思うであろうから、日本の家族ってみんなあんな感じなのか?
特に父親なんか私の父に似ている。久しぶりの息子と会話をするわけでなく自分の部屋に
すぐ入っていく。

そして家族の中での重要な話はなんとなくの会話の中で進められる。
そう、家族会議なんてものは少なくとも日本の家庭には存在しないのだ。
「二世帯住宅」の話もなんとなく進展せず、はぐらかされて終わり。
やさしそうな母は実は死んだ息子が助けた子供を恨んでいる。
本当は失業しているのにそれを言えずに「なんとかやってるよ」という息子。
息子の妻とその息子になんとなく馴染めない母。

父は近所の方が倒れたと連絡を受けても目が悪く診察はできない。救急車を呼ぶように
いい、来た救急隊員にアドバイスをしようにも聞いてもらえない。
車を持っていない息子に「息子の車で買い物に行くのが夢だったのよねえ」と語る。
息子は「いつだって車ぐらい乗せてやるよ」という。

そんな家族の日常が描写される。
事件らしい事件はない。
でもきちっと見せてしまうすばらしさ。
是枝監督のあるいは最高傑作だ。

役者ではなんと言っても樹木希林。すばらしい母を演じる。そして父親役に原田芳雄。
かつてのアウトロー役とは違って最近はあたらしい位置ができてきた。
正直、阿部寛はいい男過ぎてちょっと似合わない感じもするが、田口トモロヲあたりがやったら
現実感がありすぎて逆にきついかも。
やはり映画を彩る華として現在は阿部寛が一番華があるのかも知れないが。

期待以上の出来だった。



(このページのトップへ)




スターシップ・トゥルーパーズ3


日時 2008年7月19日19:20〜
場所 新宿ジョイシネマ1
監督 エド・ニューマイヤー
製作 ポール・バーホーベン

(公式HPへ)


昆虫型生物バグズと地球の争いは続いていた。
植民地惑星ロク・サンの防衛任務についていたジョニー・リコ大佐は連邦軍総司令官の
訪問を受ける。
彼の現在の参謀はリコのかつての部下だったが、今は彼のほうが位は高い。
そんな中、ロク・サンのバクズからの防御ネットが何故か破壊され、ロク・サンは
バクズの攻撃を受け、地球連邦軍はあえなく撤退。
その撤退の途中、宇宙戦艦も攻撃をうけ、総司令官たちは数名の乗組員と脱出ポットを
使って未知の惑星へ。
果たして総司令官の運命は?


「スターシップトゥルーパーズ」シリーズ第3弾。
「2」は低予算でヨレヨレぶリが目立ったが、今回は1作目に近い感じ。
惑星に降り立ってバクズと戦うのなどまあがんばっている。
でもやはり1作目に比べるとなんとなく格落ち感は否めない。

1作目を見たときはまだCGが珍しかった時代でもあり、襲い掛かるバクズが圧倒的迫力があった。
その上、平和な学生がやがて宇宙の戦士となる!といういわゆる戦意高揚映画のスタイルを
とっていて、そのパロディというかアイロニーになっていたのだ。
その辺が実に新しく、強烈だった。

しかしまあ3作目ともなるとただのよくある「宇宙生物対人間」のSF映画でそういうアイロニー
というかシニカルな視点はない。

総司令官が捕虜になっている頭脳バグの影響で神を信じるようになる。
これは実はバグの神様を信仰させ操らせようという作戦なのだが、脱出ポットに乗って脱出した
女性士官がキリスト教を進行している。この女性士官は総司令官もキリスト教の信者と思って
実に共感していたのだが、最後になって総司令官が信仰していたのはキリスト教でないと知る。
ここで女性士官が総司令官を殺していれば「宗教戦争」をアイロニーにしているようにも
なると期待したのだが、そうはならない。
ちょっと期待が外れた。

で今回初登場になるという「パワード・スーツ」のマローダー。
活躍するのは最後だけであまり活躍しない。
結局(最初に書いたけど)A級とB級の中間ぐらいのSF映画でしたね。



(このページのトップへ)




スピード・レーサー


日時 2008年7月19日16:30〜
場所 新宿ミラノ座2(旧・新宿東急)
監督 ラリー・ウォシャウスキー アンディ・ウォシャウスキー

(公式HPへ)


レーサー家のスピードは父親が作ったマッハ号を駆使してレースに出場。事故で死んだ兄
の記録を塗り替える寸前まで行ったが記録は破らず(あるいは記録を破ろうとせずに)、
しかし優勝。
大企業からスポンサーの誘いを受けるがスピードは断る。
そんな時連邦捜査局が訪ねてきてレースに八百長の疑いがあるので協力して欲しいという。
今度開かれるラリーでテジョ(ピRAIN)を優勝させたらテジョが情報をくれるというので
勝たせて欲しいというのだ。
レースの不正を許せないスピードは両親に内緒でそのラリーに参加し、改造したマッハ5で
出場する!


何度聞いても名前が発音しづらいウォシャウスキー兄弟の新作。
彼らが「マッハGO!GO!GO!」が好きだと聞いていたがまさかリメイクするまで好きだとは
知らなかった。
僕自身は竜の子アニメの「マッハ〜」には見た憶えはあるが記憶は薄い。
ただマッハ号のプラモデルは買った覚えがある。(メカものは基本的に好きなので)
キャラクターはもちろん、話などさっぱり覚えていない。

しかし予告を見たときから感じていたが、まったく別物。
とにかくポストプロダクションに金と時間をかけまくったことであろうことは容易に想像はつく。
最初から最後までCG合成されまくった映像で、ちょっと疲れるというか飽きる。
ここっていう見せ場で使ったほうがインパクトがあるのではないか?

人物が右から左へ移動して行き、そのバックの画像が変わるという合成を何百回も見せられる。
また全体的にストーリーはあらすじ程度に説明されるだけでわかることは解るのだが
なんとなくついていくのが精一杯。
レース中の車同士の無線での会話が、スピードくんの顔からフラッシュして会話相手の
顔になり、またフラッシュしてスピードくんに戻る、というのをまたまた繰り返す。

映像センス的にやはり好きになれない感じがするし、アップばかりでレースの展開も
つかみづらいし、一言で見ていて嫌。
私のセンスが古いのかね?
それともやはり誰が見てもチラチラしすぎているのかね?

まあ日本でもアメリカでもヒットしていないようですが、やっぱり受けなかったのかな?



(このページのトップへ)




ゲゲゲの鬼太郎 千年呪い歌


日時 2008年7月19日13:10〜
場所 新宿ピカデリー・スクリーン6
監督 本木克英

(公式HPへ)


人間界では今「カゴメ歌」を聞いた人間は消滅する、という噂が出ていた。
女子高校生楓(北乃きい)もその歌を帰り道に聴き、その場から逃げ出したものの
腕にウロコが出来始める。「パトロール」と称して人間界をさまよっていたねずみ男(大泉洋)
と鬼太郎(ウエンツ瑛士)は楓の力になることに。
しかし鬼太郎は人間のために力になることになんとなくこのところ乗り気でない。
そうは言っても猫娘、砂かけババア、子泣き爺たちと謎の妖怪について調べ始めるのだったが。


2007年GW公開に続いての第2弾。
ウエンツ瑛士が再び鬼太郎に扮する。前作ではイマイチその洋風の顔立ちが鬼太郎に
違和感があったのだが、今回は見てるこちらも慣れた。
今回ヒットすれば3作目も作られ、ウエンツの代表作になるかも知れない。

で、まあ内容なのだが途中までは面白かったが後半に崩れた、という印象。
今回は鬼太郎も悩んでいるように「人間と妖怪はなぜ共存できないのか」がテーマ。
千年前に人魚濡れ娘(寺島しのぶ)が人間の男と恋をして結婚したのだが、不漁を濡れ娘の
せいだとする村人達に殺され、それ以来人間を憎むようになったという設定。

つまりこれは異文化と共存できるか、という話だと勝手に解釈し(ホラ、現実の日本でも
異文化、異なる民族とただ「異なっている」というだけで憎む人がいるでしょ?)
そういう志の高いテーマだと思っていたんですがねえ。
後半になってぬらりひょん(緒形拳)が登場し、これが人間の恨みの怨念の塊という髑髏の
おおきな物が出てきて「人間の憎む心」と対決する話へといつの間にか移っている。
話の展開はわかるがどうもテーマに一貫性がない感じがした。
まあ、期待した私も悪かったのかも知れないが。

ウエンツには前も書いたけど別の映画でも活躍してもらいたい。
北乃きいは芸能界ならどこにでもいそうなかわいい子。まったく記憶に残らない。
フジテレビの軽部アナウンサーとか宣伝のために出演させたのはわかるがただ邪魔なだけ。
敵役の強い妖怪(異国からの客人なのでセリフは話さない)に韓国スターのソ・ジソブが出演。



(このページのトップへ)




クライマーズ・ハイ


日時 2008年7月17日18:10〜
場所 新宿バルト9・スクリーン3
監督 原田真人

(公式HPへ)


1985年8月12日、終戦40周年を控え、群馬県選出の中曽根首相の靖国神社参拝問題が
話題の頃、羽田発大阪行きの日航ジャンボ機が群馬県御巣鷹山山中に墜落した。
群馬県の地方紙、北関東新聞の編集局は騒然となる。
この件に関する全権デスクは遊軍記者の悠木(堤真一)に任命された。
県警キャップ・佐山(堺雅人)は事故現場に上る。
彼らの壮絶な1週間が始まる!


面白い!
タイトルの「クライマーズ・ハイ」とは「登山中に興奮状態になって恐怖を忘れてしまう状態」を
言うらしい。
この映画の登場人物は「世界最大の航空機事故」という大きな山に登って全員がハイ状態だ。

「締め切り遅らせろ!」「広告なんか飛ばせ!」「いつまでもオオクボレンセキにこだわってるん
じゃねーよ!」「てめえ隠したな!」「あの状況じゃ他に方法がなかったんですよ!」
「てめえ土下座しろ!」
怒号、怒号、怒号の連続。
息つく暇もないような緊張感だ。
望遠レンズで捉え、若干揺れているようなドキュメンタリーチックな画面が素晴らしい。
見ているこっちまで興奮状態にさせられる映画も久しぶりだ。
(「オオクボレンセキ」とは「大久保清事件」「連合赤軍事件」のこと。古い記者達は未だに
この2つの事件に関わったことが誇りらしい。そういう裏面も解って面白い)

また墜落現場の再現シーンが素晴らしい。(という言い方も変かも知れないが)
実際のニュース映像(だと思う)との違和感がない。

日航機事件そのものがほとんど描かれていない、という批判もあろうが、映画のテーマが
「日航機事件」ではなく「大事件に遭遇した新聞記者たちの話」なのでその批判は当て
はまらないのではないか?

また役者陣では特に堺雅人が素晴らしい。「アフタースクール」「ハチミツとクローバー」などでは
柔和な印象があったが、本作では力強い男の目、をしており堺雅人の代表作になることは間違いなし。
堤真一はもともとなんとなく好きではない役者なのでこの際どうでもいい。
また編集局長の遠藤憲一、紙面担当のでんでん、政治部の田口トモロヲがいい。

かといって不満がないでもない。
現代のシーンとカットバックして堤真一が山登りをするシーンがあり、彼は同時に息子との絶縁が
話に入ってくるのだが、この辺ははっきりいって不要。
水と油みたいに溶け込んでいないのだよ。
同時にワンマン社長の山崎努、車椅子の怪人物で秘書のお尻を触ったりの悪役なのだが、映画が
全体的にノンフィクションの色合いが濃いだけに、完全にフィクションの人物が出てきてしまうと違和感が
アリアリだった。
そして事故原因をスクープしたのだが「信憑性が絶対でない」ということで記事にするのを断念する。
ここが映画としてはクライマックスだったのだが、ある意味映画全体はずっとクライマックス状態なので
ここがクライマックスとは気付かず、映画が途中で終わってしまった印象が残った。

その辺の欠点はあるものの、充分堪能できた。
面白かった。



(このページのトップへ)





カメレオン


日時 2008年7月13日14:35〜
場所 新宿バルト9・スクリーン4
監督 阪本順治

(公式HPへ)


伍郎(藤原竜也)たちはチンドン屋の役者や仲間と組んで結婚詐欺を働いていた。
イケメンの公介(塩谷瞬)と資産家の令嬢の結婚式にヤクザに扮した仲間が怒鳴り込み
結婚式をぶち壊しその場で新婦の親から手切れ金をせしめようというもの。
今日も成功した帰りのホテルの裏口用エレベーターでなにやら迫力のある男たちと出くわす。
ある男を車に乗り込ませるところを携帯カメラで撮影する伍郎。
翌日の新聞を見ると彼らは汚職事件の全容を知る証人を拉致しようとしたところだったのだ。
伍郎は一味のボス(豊原功補)と何もしゃべらない代わりに仲間に手出しはするなという
約束を取り付ける。
しかし両親のために金が欲しかった公介はそれをマスコミに持ち込んでしまう。
伍郎や仲間に追っ手が迫る!


セントラルアーツの黒澤満と脚本・丸山昇一がかつて松田優作主演で映画化しようとした
脚本を今になって映画化。
70年代後半から80年代ではテレビでも映画でも割とアクションものが流行っていた時期で
その頃の名残がプンプンする。
もっともその脚本のルーツを聞いているから余計にそう思えるのかも知れないが。

良くも悪くも当時の匂いがする。
カーアクションがあるのだが、これが敵に追いかけられた藤原竜也たちが、廃工場の
ような敷地に逃げ込み、その中で追い詰めて敵の車が落下するのだが、ここをスローモーション
で撮影している。
昔から思っていたが、日本のアクション映画ではやたらとカーアクションをスローモーションで
撮ることが多い。
そんなに大したシーンでもないのになあ、と疑問だった。
例えば「フレンチコネクション」のカーチェイスのシーンなんか別にスローモーションで
やってないよ。
その辺が日本映画の安っぽさを感じていて、手放しで当時は誉めていなかった。

その辺の感想は今でも同じなのだが、日本映画からこういうアクション映画、というジャンルが
亡くなってしまっている今、こういうアクション映画は見ていて心地よい。
(ただし主人公が敵に殴りこむ前に「LONG GOODBYE」という店のマッチを延々と
アップにするのは止めて欲しかったが。
良くも悪くも70年代アクション映画の再来だ。

バルト9で見たのだが上映開始15分前に劇場に着いたらほぼ満席状態。
もっとも80席の小さい劇場での上映だったかも知れないが。
場内は藤原竜也ファンらしい女性客が7割ぐらい。
この映画が成功してくれればまたアクション映画が作られる時代が来るかも知れない。
期待する。

出演では藤原竜也が好演。またチンドン屋の役者たちに谷啓、犬塚弘、加藤治子の面々。
谷啓や犬塚弘の元気な姿が見れたことがうれしい。



(このページのトップへ)




西の魔女が死んだ


日時 2008年7月12日19:15〜
場所 シネスイッチ銀座2(3F)
監督 長崎俊一

(公式HPへ)


中学生のまい(高橋真悠)は中学に馴染めず、学校に行かないことにしたと言い出す。
母親は英国人である自分の母親(サチ・パーカー)の元にしばらくまいを預けることにする。
おばあちゃんは田舎に一人で住んでいて野菜を育てたりし暮らしている。
もともとおばあちゃんが大好きだったまいはおばあちゃんとの二人の生活も苦痛ではない。
しかしおばあちゃんは魔女だと聞き、自分も魔女になりたいとまいは思う。
そのことをおばあちゃんに話すと「それでは魔女修行をしましょう。まずは規則正しい生活を
することです」と言う。
こうしてまいの魔女修行は始まったのでした。

「おばあちゃんの人生の知恵を授かる女の子の物語」なんだろうな、と思っていたら予想通りの
話。スローライフを送るのんびりした生活。なんとなく都会の人ならあこがれそうな生活。
(私はあこがれないけど)

そんで魔女修行の第一歩というのが「規則正しい生活をしましょう」ということ。
なんかもう文部省特選みたいな映画でもう何も文句のつけようがない。
その他「自分の意志で決めましょう」とか普通のこと。
ただしこれが普通だと感じるのは単なる私がオジサンだからかも知れないが。

出演ではなんと言ってもサチ・パーカー。
シャーリー・マクレーンの娘ということで12歳まで日本に住んでいたというので日本語も
大丈夫とか。それにしても日本語もとしてもセリフとしてもまったく流暢なので
吹き替えかと思った。
時々リップシンクロを注意してみていたが、まったく違和感無し。

親子そろってみてコミュニケーションをとるには最適の映画という感じ。
決して悪い映画ではないが、私の趣味ではなかった。



(このページのトップへ)




ぐるりのこと。


日時 2008年7月12日16:10〜
場所 シネスイッチ銀座1(地下)
監督 橋口亮輔

(公式HPへ)


修理靴屋で働くカナオ(リリー・フランキー)と出版社で働くその妻の翔子(木村多江)。
カナオは先輩の紹介で美大卒業の腕を使って法廷画家の仕事に就く。
裁判では写真撮影は禁止。そのためマスコミは画家を使って法廷の絵を描いて報道するのだ。
翔子は妊娠したが、やがて流産してしまう。
その頃から翔子の精神は均衡を失い、診療内科に通うように。
一方でカナオは地下鉄毒ガス事件や幼女誘拐殺人事件など日本を震撼させた事件の犯人を
見るのだった。

「ハッシュ!」以来6年ぶりの橋口監督の新作。
今までゲイ、同性愛がテーマもしくは重要なモチーフだったが、今回初めてゲイから
離れる。
いまいち食指が動かなかったが、法廷画家を主人公にして日本を震撼させた事件を
たくさん登場させる、と聞いたので今までと違ってこの10年の日本を描くような
いわゆる社会派的な作品になっているかも知れないと思ったのだ。

しかし結論からいうとちょっと予想とは違った。
「ハッシュ!」ではゲイを抱えた家族の話でもあったが、今回はゲイぬきで家族の話だ。
夫婦という最小単位から、翔子の兄(寺島進)その妻、母(倍賞美津子)を交えた家族との
人間関係が描かれる。

妻は心の問題を抱え、父親は野球選手で昔、女を作って名古屋に行ってしまったという。
また兄の知り合いのトンカツやは息子の代になってから急激に客が遠のき(それも息子に
やる気のなさからくるようだが)夜逃げする。
みんな大きな悩みを抱えている。

カナオが仕事で目にするのは結局は家族をはじめとした人間関係が壊れてしまった人間たちだ。
そうした人間たちを目にしながら、翔子は知り合いのお寺の天井画を描くことによって
生きる目的を再びつかむことになる。

始めの方のカナオと翔子が今夜はするしないで喧嘩するシーン、最後の方の翔子の実家を
売るか売らないかで家族でもめるシーン(最後に子供が水の入ったカメを壊してしまう所)などは
シチュエーションだけで役者のアドリブだけで演じたようなシーンで臨場感があり、印象的。

「ぐるりのこと。」というタイトルの通り、主人公たちが自分のまわりの人間関係をうまく
乗り越えて人生を生きていく風景を描いた作品だとは思うが、正直私のアンテナには
引っかからなかった。



(このページのトップへ)




休暇


日時 2008年7月12日13:40〜 
場所 有楽町スバル座
監督 門井肇

(公式HPへ)


拘置所の刑務官・平井(小林薫)は婚期の遅れた男だったが、見合いをして(相手(大塚寧々)は
5歳の子持ちの再婚だったが)結婚をすることに。
母親の死んだときに有給休暇を使ってしまい、今は休みをとることが出来ない。
そんな時、拘置所で死刑囚金田(西島秀俊)の死刑執行が決まった。
刑は金曜日に執行される。死刑執行に携わるメンバーは土日のほかに月曜日も休んでよい。
しかもメンバーの中でも「支え役」と呼ばれる、絞首刑の時落ちてきた死刑囚の体が揺れないように
支える役をしたものには1週間の特別休暇が与えられるという。
周りの者は平井は結婚式を控えている身だから死刑執行のメンバーには選ばれないと思っていた。
しかし平井は「支え役」を申し出る。


死刑執行を真正面からとらえた映画。
この映画では死刑執行の是非はすぐには訴えていない。
しかし死刑執行は現場の刑務官にはどれほどの精神的苦痛を伴うものなのかを描く。

映画は平井が新婚旅行として温泉に向かう列車の中から始まる。
時制は解体され、見合いや結婚式、死刑囚の生活や刑務官との交流、そして死刑執行の
瞬間などバラバラに描かれる。
音楽はほとんどなく、盛り上げるような演出もなく淡々と進行する。

だがだらけた映画ではなく、緊張感が常に走る。
死刑囚金田に面会に来た妹は結局一言も言葉を交わすことが出来ない。
立ち会った平井はまもなく刑が執行されることを知っているが、それを本人や家族に
伝えることは禁止されている。
「なにかしゃべったら?」と声をかけることしか出来ない。
また新人刑務官・大塚(柏原収史)は金田につい「何か欲しいものはないか?」と不自然なことを
聞いてしまう。
それを叱責した先輩刑務官や上司三島(大杉連)だったが、三島もつい、金田の願いである
「音楽を聴きたい」という願いをかなえてやろうとCDラジカセをもっていく。
そんな人間としてつい行ってしまうことが描かれる。

平井の妻の連れ子は常に絵を描く。死刑囚・金田も絵を描き平井には(それを強調するシーンはないが)
金田の姿と重なっていることは想像される。

そしていよいよ死刑執行のシーン。
前夜死刑執行を感じた金田は暴れることがあったが、当日の朝は何事もなかったように迎える。
しかしそこで初めて死刑執行を知らされる。
(死刑執行が当日に本人に知らされるとは初めて知った)
執行室に連れて行かれ、教戒師から最後のお祈りがあり、水を飲んで死刑台へ。
死刑を行うのはいつも面倒を見ていてくれた刑務官たちだ。
首がつるされるのは2階で足の床がはずれ、金田の体は下に落ちる。
その板が外れる直前、平井が天井を見上げるとこつこつと金田の足音がする。
それが平井にまだ金田が生きていることを伝える証だ。
そして板が落ちたとき、もう一人の支え役は恐怖から尻餅をついてしまう。
そんな中、平井は金田の体を抱える。
そう、金田の死の瞬間を体で感じるのだ。

そうやって金田の死と引き換えに自分は休暇を得て、結婚し、人生をスタートさせる。
生きていくとは厳しいことだ。

死刑制度反対もこの映画では言っていない。
死刑肯定論者からの反論として「つらいのはわかるがそれも職務だ。世の中のためには
そのつらい仕事も引き受けてもらいたい」と主張するだろう。
それ自体には反論はしない。

しかし「人を殺したんだから殺されるのは当然だろ」という単純な理屈ではすまない何かがある
と思う。
死刑のことを知りたい人は一度は見て欲しい映画だ。

出演ではなんと言っても小林薫。こんなにいい役者だとは知らなかった。

今年のベストワン候補。
いい映画だ。
この映画の監督作品を見るのは初めて。
ドライなタッチがちょっと鈴木英夫を思わせる。
他の作品(この映画がまだ2本目だが)も是非見てみたい。



(このページのトップへ)