2009年5月

徳川一族の崩壊 スラムドッグ$ミリオネア サニー・ゲッツ・ブルー グラン・トリノ
新宿インシデント ニセ札 クレヨンしんちゃん
オタケベ!カスカベ野生王国
この青春

徳川一族の崩壊


日時 2009年5月31日13:00〜
場所 新橋TCC試写室
監督 山下耕作
製作 昭和55年(1980年)

(詳しくはキネ旬データベースで)


江戸末期、薩摩長州による討幕運動が盛んな頃、幕府は京都における薩長の
動きを牽制するため、京都守護職という新しい役職を作り、その長に会津藩
松平(萬屋錦之介)に命じた。
会津藩は寒冷のため、飢饉も多く財政は常に苦しかった。
この上京都に兵を送る事など無理と松平の息子たちは反対、しかし松平としては
ここで手柄を立て、その褒美として国替えを幕府に依頼するつもりだった。
一方京都では長州の桂小五郎(松方弘樹)は倒幕の勅命を天皇から得ようと
公家(成田三樹夫)たちに接近していた。
だが公家たちは長州一藩では徳川に勝てまいと薩摩(大久保利通)と手を結ぶよう
に命じる。
やがて松平も京都到着。公家たちは天皇の仁徳天皇陵参拝の警備を薩長に任せるが
事実上のこれは倒幕のための挙兵につながること。
何とか阻止しようとする松平。
ここに会津対薩長の戦いが始まる!

「柳生一族の陰謀」「真田幸村の謀略」と続いてきた東映復活時代劇シリーズ。
実録路線が全盛だった東映もかつての時代劇路線の復活をもくろみ萬屋錦之介を
主役にしたシリーズだ。
みんなそう思うらしいが「仁義なき戦い」のヤクザ抗争のような裏切り、和解、
そして裏切り、敵味方が入り乱れての大ドラマだ。
天皇(玉と呼ぶが)をどちらが取るかで敵味方入り乱れての大抗争。
江戸は江戸で病弱な将軍(岸田森)は病に倒れその跡目を将軍の遺言を無視して
慶喜(平幹二郎)がつぐ。
この慶喜が公家の女に惚れていたり、恋愛ドラマも入り乱れての展開。

そして孝明天皇を取られてしまった薩長は、桂小五郎がなんと孝明天皇を暗殺、
自分たちの味方の公家(中村鴈二郎)の孫にもあたるまだ幼少の明治帝を立ててしまう。
さすがは「柳生一族」で徳川家光を暗殺させてしまった東映だ。
史実を無視して「ここは孝明天皇を殺さないと桂小五郎の男がすたるわなア」とばかりに
強引にあっさり殺してしまう。(しかも刺客を演じるのは森田健作だ!)
天皇暗殺があるからこの映画は最近上映されないという噂があるがどうだろう?
過剰反応だと思うのだが。

で最後には追い詰めれ負けていく松平はこれが最後とばかりに舞を舞い、錦之介ファンへの
サービスカットとなる。
その後数年間、会津藩は新政府に対し徹底抗戦をしました、というクレジットで幕。
山下耕作はテンポが悪くて好きではないのだが、この映画は比較的展開が速く、楽しめました。

孝明天皇に関してはウィキペディアで見たところ、毒殺説はあるようですがこの映画のような
刺殺説はあくまで俗説で唱える学者は全くいないそうです。

あと成田三樹夫。一旦は負けかけるが「私は公家の中でも位が低く、いつも外されてきた。
今回で摂政関白への道を開こうと思ったが、その夢も捨てきれない」というつぶやくシーンは
見せ場。
総じて面白かった。



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スラムドッグ$ミリオネア


日時 2009年5月22日20:40〜
場所 新宿バルト9・スクリーン2
監督 ダニー・ボイル

(公式HPへ)


インドのスラム街出身の青年、ジャマール・マリックは高額賞金で有名な
クイズ番組「ミリオネア」で勝ち進み、不正疑惑をもたれていた。
大学教授も弁護士も到達できなかった全問正解まであと一歩という勝ち進み方に
疑惑をもたれたのだ。
何か具体的な証拠があったわけではない。「スラム出身の無学の青年に出来るはずが
ない」というだけの疑惑だ。
なぜ彼は勝ち進みえたか。
偶然にも彼の人生で知りえたことがたまたま問題に出たにすぎない。
子供のころからの彼の人生を警察官相手に話し始めるのだった。


まず見ていてうなった。
この語り口のうまさだ。
話としてはスラム街の少年が悪い奴の世界に引き込まれそうになりながら、道を
踏み外さず、一人の女性を想い続け、兄弟の対立があって果たして最後に二人は
結ばれるのか?!で締めていく。
アウトラインだけから言ったらそんな映画今までいくらでもあった気がする。
しかしここに「クイズ$ミリオネア」といういまや世界共通言語と言ってもいい
クイズ番組を利用する。
クイズ番組の問題の答えが小説の章タイトルのようだ。
映画スターからサインをもらったこと、母の死、そして孤児生活、100ドル札を
手にしたこと。すべてが問題の答えがキーワードになって語られていく。

彼は普通なら誰でも知っていそうなインドのお札に書いてある言葉が答えられない。
クイズ$ミリオネアの3つのヘルプが実に効果的。
もう見事だ。そう来たか!と感嘆する。
オーディエンス、彼の無知をかえってあらわにする。
50/50、司会者の巧妙なトリック。彼の教えてくれた答えは本当か否か!
まるで爆弾処理映画の「赤か青か」のようなサスペンスだ。
そしてテレフォン。
番組中一回だけ他人にかけてよい電話。
あっ、そこで電話をかけさせるのだ!
参った!
本気でそう思った。

映画はテーマや話の筋だけではない。
この映画は語り口の見事さに舌を巻いた。
おそらく大多数の人とは感想が異なるだろうけど、この映画の価値は脚本の語り口の
アイデアの見事さにある。
一人の若者のスラム街から始まり苦難を経て愛する女性と結ばれる。
映画史上、こんな今までにごまんとあった粗筋もこんな語り口があったのか!

感心した、感動した。
この脚本のアイデアのすばらしさに。
シナリオ作家志望者必見!
映画の脚本の魅力ははテーマや波乱万丈の筋だけではない。
その語り方なのだ!



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サニー・ゲッツ・ブルー


日時 2009年5月17日14:30〜
場所 ザ・グリソムギャング
監督 大川俊道
製作 平成3年(1991年)

(詳しくは日本映画データベースで)


ニューヨークに住む二人の日本人のチンピラ、一人がヤクザから金を取り立てられ
仕方なく酒屋を襲う。
銃で脅せば簡単に金を払うと思ったが、店主はなかなかの堅物で金を出さない。
仕方なく店主を撃ち殺してしまう。
レジは空っぽ同然、しかし店主のポケットから出てきた封筒には100ドル札が
10枚ほど入っていた。その金をヤクザに見せると彼らは「アトランタの
200万ドルだ!」と興奮している。何のことやらわからずにいたが、とりあえず
その場から逃れる二人。
酒屋の店主の封筒をよく見るとフロリダのキーウエストからの発送だ。
店主のことを調べると半年ほど前に可愛がっていた日本人の女の子にレジの
金を盗まれたことがあるらしい。「アトランタの200万ドル」とは半年前の
アトランタでの銀行強盗で盗まれた金のことらしい。
二人はキーウエストに飛んだ。


「あぶない刑事」などの監督で知られる大川俊道が撮ったビデオ用シネマの1本。
劇場公開されたのだろうか?
今回、グリソムギャングでは大川監督、脚本家の柏原寛司さんの会社「KOM」特集の
一本として上映。
初めて見た(聞いた)映画だけどまあまあ面白かったが所詮はB級映画のレベル。

まず役者がしょぼい。
スター級の人が主演を演じていたら違ったかも知れないが、僕は全く来たことも
ない二人なのでどうしても画面に華がない。
しかも二人の個性が似通っているので、違いからくる面白さがないのだよ。
普通バディムービーでは「のっぽとちび」とか「インテリと乱暴者」とか
「イケメンとデブ」とか「若者と老人」とか個性の違う二人がコンビを組むと
面白いのだが同じような二人では幅が広がらないのだな。

で、続いてアメリカロケ。
ニューヨークとキーウエストのロケで(もちろん室内のシーンなどは日本で
撮影されたシーンもあったようだが)物語は全部アメリカ。
これがねえ、僕の考えでは日本人が英語をしゃべってアメリカでアクションものを
やってもちっとも雰囲気が出ないのだな。
どうにもこうにも似合わない。
同じ話を東京と沖縄を舞台にしたら全く印象が違ったし、私も好きになったかも
知れない。
でも日本人がアメリカでアメリカアクションのまねをしても痛々しいだけで
完全に作っている人の自己満足。

話もそんなに展開があるわけでもなく、キーウエストに飛んで日本人の女の子
は見つかり彼女と暮らしている男(又野誠治〜やっと名前を知っている人が出てきた)
が金を持っている。
でニューヨークから追ってきたヤクザも金を狙い、ヤクザは倒したが、主人公の
二人は死んでしまい、その日本人の女の子が金を独り占めするということで
終わり。

好きな人は好きなんだろうが、作っている人の半分自己満足みたいな映画。
それが決していけないとは言わないが、私はそれほど満足できなかった。



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グラン・トリノ


日時 2009年5月15日21:20〜
場所 新宿ピカデリー・スクリーン8
監督 クリント・イーストウッド

(公式HPへ)


朝鮮戦争で活躍したことをよく話すウォルトはいまどき珍しい
堅物な男。孫娘のヘソピアスや露出の多いファッションも気に入らない。
妻の葬儀に来てくれた人も「どうせ会食のハムが目当てなだけだ」といい
トヨタのセールスマンの息子のことも「国産車を売っちゃいけないのか?」
と心の中で文句をいい、すべてが気に入らない。
そういえば隣の家もどこぞのアジア人の移民がやってきた。これも気に入らない。
そんなとき、大事にしている72年型フォード製グラントリノが盗まれそうになる。
隣のアジア人の少年が不良グループに命令されて仕方なくやったのだが、
ウォルトが気づき、事なきを得た。
この事件がきっかけでその少年タオやその姉と交流を始めるウォルト。
しかし不良グループはタオやその姉にに相変わらず付きまとう。
ウォルトは意を決して不良グループに立ち向かうことに。


これが最後の主演作になるのではないかという噂もでるクリント・イーストウッド。
確かに78歳ではそう言われるのも納得。しかしそんなのはたぶん配給会社の
宣伝のための言葉で、イーストウッドはまだまだ映画を作り続けるような気がする。
老人と少年の交流という派手な展開もない。
それでも見せるというイーストウッドはさすが、などという実に当たり前の感想を
持ちながら映画を見続けた。

でもラスト、のけぞった。
映画はウォルトhが不良グループの家に行ってそのひとりに拳銃を突きつけて
「いい加減にしろ。今度タオにちょっかい出したらただじゃ済まないぞ!」
と脅すのだが、相手がそれで黙っているはずもなく、タオの家にマシンガンで
撃ち込み、タオの姉もレイプする。
それを知ったウォルトは自分のうかつな行為が返って事態をややこしくしたと
悔み、身辺を整理して不良グループに立ち向かう。
ここからネタばれします。

で不良たちを前にして「いい加減にしろ」と怒りをぶつけた後、煙草をくわえ
「火を貸してくれ。ないのか、これが俺のライターだ」と懐に手を突っ込むと
恐怖に怯えた不良グループはマシンガンをイーストウッドに向かって乱射!
しかし彼が取り出そうとしたのはただのライターだった・・・
不良グループは逮捕されることに。

これを見て崔洋一の「友よ、静かに瞑れ」と全く同じではないか!
驚いたねえ。
まさかこんな所で出会えるとは!
イーストウッドやこの脚本を書いた人間が「友よ、静かに瞑れ」を見ていたのか
それはわからない。
別に真似することがいけないとは思わない。
しかし私にとって大好きな映画のラストが、全くリメイクされているとはただ驚いた。
そういえば「友よ、静かに瞑れ」も少年の成長物語でもある。
藤竜也、林隆三、少年の三者が本作での若き牧師、ウォルト、タオに相当する。
映画の良し悪し以上に私にとっては「友よ、静かに瞑れ」はアメリカでこういう
形でリメイクされたことに驚いた。

あと、ウォルトの息子たちがウォルトに老人ホームの入居を進めるところ。
日本と同じなのだなあと当たり前のことを改めて思った。



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新宿インシデント


日時 2009年5月10日16:20〜
場所 新宿グランドオデオン
監督 イー・トンシン

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若狭湾に中国からの大量の密入国者が上陸した。
そのうちの一人に鉄頭(ジャッキー・チェン)がいた。幼馴染の友人を
頼って東京新宿歌舞伎町へやってきた。
中国では真面目な若者だった鉄頭だが、この日本での仕事は危険な土木工事か
下水道掃除しかない。
しかも不法滞在により警察の目を逃れなければならない毎日だ。
ある日、下水道掃除の時に警察の手入れがあるが集団で脱走。
その際に刑事(竹中直人)が下水に落ちたがそれを救う鉄頭。
それがきっかけで刑事からは妙な信頼を得る。
真面目に働こうとする鉄頭だったが、日本で生きていくには違法なことを
するしかないと腹をくくり、偽造テレフォンカードの販売、偽クレジットカード
を使用してのデパートで買い物をし、それを故買屋に売りさばくことを始める。
それらはすでにルートが出来上がっており、彼はそれに乗っかったに過ぎない。
そんな裏社会に染まるうち、日本のヤクザ組織ともつながりが出来る。
日本最大の暴力団、三和会は会長の死ともに二代目会長(峰岸徹)が就任するが
彼のやり方に不満を持つ幹部(倉田保昭)もいた。新会長は部下江口(加藤雅也)を
うまく使って組を安泰にさせようとするが、逆に会長の穏便方針を不満に
思う江口はまだ顔が知られていない鉄頭を使って、会長反対派の幹部ととも殺してしまう。
鉄頭はそれにより新宿の闇社会の幹部になるが、日本人の中には中国人が君臨すること
を許さない人間もいた。
果たして彼らの行く手は?

ジャッキー・チェンの新作。今までの陽気なジャッキーと違ったハードな映画。
東映現代ヤクザや「ゴッドファーザー」に通じるものがある裏社会を描いた映画だ。
日本にやってきた中国人が心ならずも裏社会に染まっていく。

日本では「中国人は治安悪化の元凶」などという人もいるけど、この映画を見ると
なぜそうなってしまうかがなんとなく解る。
もちろん完全な実話ではないだろう。
しかし、こういうこともありえる、という気がしてくる。

「日本に行けばいいことがある。国にいても仕方ない」と日本にやってくる。
しかし密入国で身分証明がない。言葉も出来ない。
出来る仕事は危険な仕事だけだ。その上、密入国ということにつけ込まれて賃金は安い。
犯罪に誘い込もうとする仲間は多い。
金を得ようとすれば違法なことに手を染めざるを得ない。
しかも裏社会に入ったら入ったで、派閥や組織があり対立する。抗争が起こる。
日本人の裏社会も関わってくる。
裏切りの連続の社会だ。

ジャッキーの気の弱い友人が甘栗の屋台をやり始めるが、パチンコの不正を疑われてリンチ
にあって以降、急にパンクファッションになってヤクの売人になるあたりの変貌は
ちょっとやりすぎの感は否めない。そういうこともあると言われれば反論できないが。

ジャッキーが日本ヤクザの親分を殺してから組織が大きくなるあたりの時間の経過がちょっと
わかりづらかったりするのがやや難点だが、総じて見ごたえのある映画だった。

日本人キャストでは峰岸徹が好演。
2007年10月ごろの撮影だそうだから、グリソムギャングで私があってすぐの頃か。
竹中直人が珍しくやりすぎの演技がなく、彼としてはいいほう。
しかし個人的にはこの役は役所広司にやって欲しかったけど。



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ニセ札


日時 2009年5月10日14:10〜
場所 テアトル新宿
監督 木村祐一

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終戦直後、ある山の中の村では元陸軍少佐(段田安則)、写真館(木村祐一)
製紙業を営む男、小学校の先生(倍賞美津子)、少佐の元部下、闇屋などが
集まって新千円札を偽造しようとたくらんだ。
陸軍少佐は戦時中、中国で作戦として偽札を作った経験者。
原版作りは写真館や少佐の元部下が受け持ち、人望のある学校の先生は印刷機を
購入するための資金を村の人々から集める。
はたしてこの計画は?

偽札というものは犯罪として非常に興味があるのだが、実際にそれほどないせいか、
小説、映画のジャンルではほとんど存在しない。(と思う)
私が知っている限りでは映画は「黒の札束」小説は真保裕一の「奪取」だけだ。

だから偽札ものの映画と言うのはちょっと期待した。
(「ちょっと」と言うのは映画が専門でない人が映画を撮るとあまり大したものは
出来ない、というジンクスが私の中にあるため)
今回の監督はお笑いタレントなどでも活躍中の木村祐一。

つまらなくはなかったがそれほど面白くもなかったと言うのが一言目の感想。
各分野の専門家が集まって偽札を作るのだが、比較的簡単に出来てしまう。
まあ当時のお札が今ほど精巧でなかった、といえばそうなのだが、それほどの
困難もなく出来たのかも知れないが。
ようはクライマックス的な盛り上がりがないのだな。

最後になって闇やが原版が出来た段階であとは印刷だけというところで裏切ろうと
する。
結局は少佐の部下返り討ちにあってしまうのだが。
出来上がったお札が出来がイマイチと言うことで作り直す直さないでもめるが
テストで使った段階で倍賞美津子が機転を利かし、本物で支払い、仲間には
偽札で支払ってばれなかったことにしてしまう。
この機転の部分は面白かったが、クライマックスがここぐらいなのだな。

で結局逮捕され、少佐の元部下だけが原版を持って逃走する。
最後の裁判のシーンで倍賞美津子が「戦争中は国だって偽札作ったじゃないか。
私たちは誰も傷つけていない。何が悪い」という演説をする。

今の株だ投資だ土地だなどというマネーゲームはまるで偽札を作るごとき行いだ。
そんな気が私もする。そういう世の中に対するアンチテーゼになっていれば
面白かったかも知れないが、そこまでのインパクトはなかった。
惜しい。



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クレヨンしんちゃん オタケベ!カスカベ野生王国


日時 2009年5月10日11:40〜
場所 新宿ピカデリー・スクリーン8
監督 しぎのあきら

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春日部市はいまやエコブーム。
しんちゃんの家の周りの町会長が変わり、ゴミの分別が厳しくなったが
ママのみさこは町会長がイケメンでつい従ってしまう。
ある日、しんちゃんたちが幼稚園の活動で川原でゴミ拾いをしていたときに
液体の入ったビンを見つける。
家に持って帰ったしんちゃんだったが、その液体をパパとママが飲んでしまう。
あくる日驚いたことにパパはニワトリに、ママは豹になっていってしまっていた!
しんちゃんたちと春日部防衛隊はパパやママとともに液体を作った陰謀の
首謀者、町会長たちの基地へ進入するのだが・・・・


今年は見るのをやめようかと思ったクレヨンしんちゃんだが、ついなんとなく
見てしまった。
巷で大流行のエコブームを題材にしたSFアクション篇。
エコエコと言いながら何かエコと言えばすべてがまかり通るような世の中に一石を
投じると言ったら誉めすぎか。

実際の世の中はエコブームで「エコのため」といえばなんでもまかり通る危うさを
感じてしまう。
かつての「お国ため」とか「天皇のため」というように。
こういう魔法の言葉になりつつあるような気がするのは私が天邪鬼だからか。

この辺の偽も含めた「エコブーム」に対するアンチテーゼ見たいなものがあるかと
最初のうちは期待したが、物語が進むにつれ悪の親玉と野原家の対決だけになって
しまい、そのテーマ性は薄くなってしまった気がする。

途中春日部防衛隊の面々が動物化計画(悪の親玉の計画は人間を動物化する薬を
開発し、人類をすべて動物にしてしまえば地球環境はよくなるという計画だ)
の開発中の薬を飲んでしまい、中途半端に動物化し、その動物としての特徴を
(例えばウサギは耳がよく聞こえるとか)活かして敵の基地に攻め入るあたりは
「超能力者もの」のようで面白かった。
ペンギンに変化してしまったので何の能力も持たない風間くんが面白い。

「エコブーム」に対するアンチテーゼを描いた面白い映画がそのうちに出来るかも
知れない。そんな予感を持たせる映画だった。



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この青春


日時 2009年5月6日14:45〜
場所 ザ・グリソムギャング
監督 森園忠
製作 昭和46年(1971年)

(詳しくはキネ旬データベースで)


沢村シン子(藤田弓子)は川崎の工場で働き、その会社の社長の息子に結婚を
申し込まれていた。その社長の息子の友人でタグボートの船長・楠見(大出俊)
からもシン子は想われている。
ある日、楠見は外国船からベトナムからの密航者のミンを預けられてしまう。
ミンの父親は日本人で戦争中にベトナムに住み着き、現地で結婚し、生まれた
子供がミンだった。その父親も先日なくなり、父の故郷にお骨を納めたいのだ
という。
楠見はシン子を尋ねるように伝えるが、ミンはやがて警察に密入国者として
逮捕されていまう。
保証金を払えば10日間は釈放されると知ったシン子の家族・弟の健一
(村野武範)や父親(今福正雄)は金策に走る。
しかしシン子に求婚中の社長の息子がお金を出してくれてミンは一時的に
入国が認められる。
健一とミンは早速ミンの父親の故郷に向かうが、そこではミンの父親は
脱走兵として村では恥ずべき存在と考えられ、実家のお墓に入ることは
出来ない。
健一はベトナム戦争で荒廃しているベトナムの実情を知り、ミンが日本で
暮らせるよう、脱走させるのだが。

「軍旗はためく下に」などで知られる新星映画社と文学座の提携作品。
左翼映画と一言で片付けるのも簡単だが、まああまり言い出来とはいえない。
新星映画社の倒産に伴い、上映される機会もなかったのだが、今回村野氏が
自宅に持っていた16mmプリントを使っての上映。
めったに見られる映画ではない。

映画の内容に関して言わせてもらえば、私は共感できない。
ベトナム戦争反対!は解るのだが、その反対の姿勢へのアクションとして
ミンの不法滞在を助けるというのはいただけない。
ミン一人を助けても問題の解決にはならないからだ。
いや、目の前の問題から解決させようという姿勢は解るのだが、それにしても
不法行為だし。
ミンの逃亡資金をその社長の息子から得るのだが、逆に恐喝されたと
訴えられてしまう。

結局どうなったかというとミンは逃亡したことで警察に強制送還、シン子は
恐喝問題でその社長の息子とは別れ会社も辞めてしまう。
父親は心労がたたって急死、弟は逃亡生活をして結局逮捕されそうになるところで
映画は終わる。
何にも解決しないのだ。
解決しないどころかこの一家はすべて不幸になり、ミンも本国へ強制送還。
やぶへびの極致。

ベトナム戦争反対に向かう青年の正義感はいいのだが、問題解決するどころか
事態の悪化を招いただけ。
脚本がどっか間違っているよ。

藤田弓子と村野武範の父親役の今福正雄、母親役の荒木道子が好演していた。
しかしこういう正義感あふれる映画に共感できなくなったとは、それだけ
私が打算的な大人になったからだろうか?
それとも20才ぐらいの時に見ても同じような感想を持ったのだろうか?
逆にそっちの方が気になった。




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