2009年6月

七人の刑事
ゼイラム 深海獣レイゴー 深海獣雷牙 天使と悪魔
宇宙水爆戦 アイ・カム・ウィズ・
ザ・レイン
武士道ブレード 喜劇 特出しヒモ天国
真夏のオリオン スター・トレック 重力ピエロ おと・な・り

七人の刑事


日時 2009年6月28日14:40〜
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 大槻義一
製作 昭和38年(1963年)

(詳しくはキネ旬データベースで)


自動車修理工の孝司は恋人の美代子(倍賞千恵子)を連れて客の外車で横浜を
ドライブのあと連れ込み旅館に誘ったが、美代子には断られてしまった。
あくる日、都内で死体が見つかる。
警視庁の七人の刑事たちは現場にあったタイヤ痕から犯人が使ったと思われる
車を突き止める。その車は高級外車で都内でも10数台しか走っていない。
その車は孝司が使った車だった。
アリバイが怪しい孝司は犯人と疑われるのだが。


TBSの人気テレビ番組「七人の刑事」の映画版。
オリジナルの刑事たちはテレビと同じキャスティング。
緻密に追い上げていく捜査ドラマは見る者を全く飽きさせない。
捜査の過程上、孝司が怪しまれる事ばかり。
刑事が来ることによって孝司のまわりの者は「昔からあいつはそういう奴だった」と
悪く言いだす。
また美代子の姉のもとにも刑事がやってきて、姉の婚約者は不機嫌になる。

そういった具合で「刑事がやってくる」ことにより、そして「疑われる」ことにより
周りの者がどんどん不幸になっていく。
孝司は夜中に客の車を拝借していたことがばれて社長から信用を失い、同僚からも
後ろ指を指され、会社を辞めざるを得なくなる。

そんなときに「僕のアパートにおいで」と優しく援助を申し出るのはスクープが
欲しい新聞記者。
彼とて疑っているのだが、そんなことは知らせずに彼らに近付きネタを取ろうとする。
やがて孝司は重要参考人として呼ばれ、逮捕される寸前にいたる。
新聞記者にも裏切られ、恋人は殺人犯になり美代子はついに自殺を決意という展開。

結局孝司も犯人ではなく、美代子も自殺寸前のところを助けられるのだが、
「警察が来た」というだけで人間関係ががらがらと崩れていく怖さを描き興味深い。
どんな刑事映画も扱っていない側面と言っていいかも知れない。
そんな社会派刑事映画だった。

惜しいのはそんな冤罪寸前のことをしておきながら、刑事たちのリアクションが全く
ないこと。
反省もない。
まあ連続ドラマの一本だから刑事たちを悪者にするわけにもいかないだろうが、
もし独立した映画ならその辺が滅茶苦茶片手落ちだろう。

キャストで面白かったのは被害者が殺される寸前に立ち寄った餃子屋の店員役で
中村晃子。
後の大ヒット歌手のかけらもなく、完全に駆け出しの頃で興味深い。



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ゼイラム


日時 2009年6月27日28:40〜
場所 新文芸座
監督 雨宮慶太
製作 平成3年(1991年)

(詳しくはキネ旬データベースで)



宇宙の女賞金稼ぎ(森山祐子)は次なるターゲットをゼイラムと呼ばれる怪物に
定めた。
そのゼイラムを誘い込む場所を空間の中に作り出す。
ところがその空間の中に二人の地球人(蛍雪次朗、井田州彦)が紛れ込んでしまった!

雨宮慶太監督作でよく名前だけ聞くことのあった映画「ゼイラム」
今回のオールナイトで初めて見ることが出来ました。
まあビデオ作品ですので完全に低予算映画です。
登場人物は上記の3人とゼイラムがほとんどですから役者の数も少ない。

そんなことよりこれ完全に「エイリアン」の影響下にある映画ですね。
閉ざされた空間で怪物に追われる、という設定自体がもう「エイリアン」
そして怪物の造形も完全にエイリアンに似ています。
わたしなんか「エイリアン」のデザイン自体が好きじゃないので、その点でもう
あんまり映画には乗れませんでした。

それにこの頃のビデオ作品はスクリーンで見ると本当に画が汚い。
森山祐子のファッションセンスが完全にバブル期のセンスで、本筋とは関係ないが
ほほえましい。
また蛍雪次朗って「平成ガメラシリーズ」からSFものに出演するようになったかと
思っていたらこの映画もあったんですね。

「雷牙」「レイゴー」も蛍雪次朗が主役級で出演しているが、林家監督からすると
この映画をみて蛍雪次朗を気に入ったらしい。
そういえば「雷牙」「レイゴー」も大迫という名前で完全に「ガメラ」につながるのですね。

オールナイトのラストの作品で三分の一ぐらい寝てしまったが、頭の30分と後半の30分は
見たので、大体は話はわかりました。
でも「エイリアン」の亜流の作品だから、たとえ全部を見ても面白く感じたかどうかははなはだ
疑問です。



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深海獣レイゴー


日時 2009年6月27日26:50〜
場所 新文芸座
監督 林家しん平

(公式HPへ)


昭和18年。今は南方に派遣されている日本海軍の大和だったが、大和の砲兵
(蛍雪次朗)は地元の漁師からレイゴーという怪獣が近海にいると聞く。
その頃夜になると骨だけのような体長1mぐらいの魚に甲板にいる乗組員が
襲われる事件が続いていた。
そしてついにレイゴーが姿を現す!
山上長官(黒部進)や若き士官(杉浦太陽)たちはいかにこの危機に立ち向かう?!


林家しん平の監督作品第1作。
去年各地で自主上映されたが、タイミングが合わなくて見れなかったこの映画。
予告はネットなどで見ており、期待するものがあった。
この「大和対怪獣」というアイデアが好きなのだ。
実は自分が個人的に見てみたい映画の一つに「連合艦隊対火星兵団」という感じの
作品で、要は日本海軍がアメリカ以外の敵と戦うSF映画、というのが見たかったのだ。
その意味ではこの「レイゴー」は私が是非誰かに作ってもらいたかった映画だと言える。

まあ去年見た人の話では「商業映画ではなく自主映画レベル」と聞いていたし、「雷牙」を
先に見てしまったので、かなり期待値が低い状況で見てみることになる。
そういう「期待値が低い状況で見た」という部分があるせいか、予想以上に面白かった。

確かに杉浦太陽が茶髪で長髪で許せん!という意見も聞いたし、その意見には同調する。
しかし「雷牙」と比べると、やはり「ウルトラマンコスモス」を主役で演じた男だ。
見ていてやっぱり主役の華がある。
しかもそれに黒部進が長官役で共演!
この二人が並んでいるだけで(自主映画というハンデをつけて鑑賞すれば)もう「ご馳走様!」
という感じの華やかさだ。

これが新作映画としてシネコンで公開されていればもっと点は辛くなったろうが、
何しろ自主映画だ(くどいか)。
杉浦太陽、いいですねえ。

話の方は大和の主砲は海中に対して撃つ様にはできていない。だから深海怪獣の攻撃に
大しては弱い、どうする!?という展開。
杉浦太陽の士官の提言により、大和に注水して傾斜させ主砲を海中に向けて撃つ、と言うもの
しかしそれを行うと艦にダメージが起こるかも知れない!という盛り上げ方をする。
実際の艦の性能上、それが正しいのかさっぱり解らないが、映画としては充分楽しめました。

しかし、ラストで怪獣との戦闘が終わり、昭和20年4月の沖縄特攻になる。
ここで艦長や杉浦太陽や蛍雪次朗が死んでいくのだが、死ぬときに何故か顔が歌舞伎の
メイクになっていく。
この演出の意図がさっぱりわからず、見てるこっちとしては混乱するばかりだった。

何度も言いますが、自主映画というハンデをつけて鑑賞すれば楽しめます。
7月にDVDがセルもレンタルも始まるようですが、もう一度見てみたいと思います。
実は途中ちょっと寝たので。



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深海獣雷牙


日時 2009年6月27日24:10〜
場所 新文芸座
監督 林家しん平

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浅草の街では来年の祭りの会計係を決める打ち合わせが行われていた。
無理やり会計係を押し付けられたテキ屋(蛍雪次朗)だったが、その浅草に
怪獣が出現した!
浅草防衛隊により撃破された怪獣だったが、2ヵ月後再び現れる!

落語家の林家しん平が作った怪獣映画の第2弾。
このオールナイトでの上映が都内での初お目見え。
今回は上映では手塚監督の「東京SOS」この「雷牙」、同じく林家しん平監督の
第1作「深海獣レイゴー」そして雨宮慶太監督「ゼイラム」の4本立て。
「雷牙」のあとに手塚監督、雨宮監督、林家しん平監督のトークイベントつき。

でこの「雷牙」。
お世辞にも面白いとはいえない。
テキ屋とその娘たちのホームドラマ的親子喧嘩と怪獣の出現がまるでドラマとして
絡み合ってこない。
水と油のごとく並行して進んでいく。
で、このホームドラマ的部分が面白ければまだ「斬新なドラマ展開」と思えるのですが、
役者は素人同然、せりふもつまらないと来ているから完全に映画になっていません。

また浅草を守る防衛隊が何故か町内会の会長とかが防衛隊長官という設定。
この司令室になるのが町内会の集会所みたいなところで、オールナイトで半分寝ながら
見ていることもあって完全に意味不明。
ホントに素人が作った映画だなあ。

怪獣登場シーンなどの特撮シーンはなかなか見ごたえがありましたから、その点は
救われました。
同じホームドラマと怪獣映画の組み合わせというアイデアも役者や脚本がしっかり
していればもう少しマシなものになったかも?



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天使と悪魔


日時 2009年6月26日20:35〜
場所 新宿バルト9・スクリーン2
監督 ロン・ハワード

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キリスト教の総本山ヴァチカン。教皇がなくなり、その後継者を選ぶコンクラーベ
と言われる選挙が行われようとしていた。
しかしかつてガリレオの時代にキリスト教は科学の発展を恐れ、科学者たちを
弾圧した。その時に科学者たちが結成した秘密結社が「イルミナティ」。
このイルミナティが復活し、教皇の有力後継者4人を誘拐し、さらに
スイスで研究されていた「反物質」を盗み出したのだ。
この「反物質」容器に納めれれている分には問題ないが、この容器のバッテリーが
切れ、反物質が容器に触れたらローマが吹っ飛ぶぐらいの大爆発を起こすのだ!
イルミナティに詳しいアメリカのラングドン教授(トム・ハンクス)は捜査の
協力を要請される。
はたして誘拐された人々は?そして反物質は?

2006年の「ダ・ヴィンチ・コード」に続くラングドン教授シリーズ第2弾。
もうインディ・ジョーンズになるのかも知れない。

今回のお話はヴァチカンの教皇が亡くなり、新教皇を選ぶコンクラーベの儀式と
並行して、ヴァチカンのどこかに仕掛けられた反物質を保管した容器が12時に
爆発する!そのありかは?というサスペンスフルな展開。
「反物質」なるのものが登場し、物質と反するもので、これが容器のなかで浮いている
分には問題ないが、バッテリーが切れて電極と接すると大爆発を起こしローマは
吹っ飛んでしまうというもの。
このあたりの科学考証は無茶苦茶らしいがこの際かまわない。

結論からいうと今年見た映画の中で、最も映画を見ている間には飽きなかった映画でした。
まあDVDを買ったり、何年も心に残る映画、とは違いますが、それにしても面白い。
まず12時に大爆発が起こる、それを防げるか?という映画の王道ともいうべき
爆弾サスペンスものです。
このジャンルは「新幹線大爆破」やら「ジャガーノート」などの名作も多い。
映画はこういう縦糸がまず必要です。

そして8時から1時間おきに起きる誘拐された新教皇候補たちの殺人。
それを毎回寸前で防ぎきれずにどんどん事態は進行していく。
いやーサスペンス映画の王道を行く展開ですよ。

そして爆発寸前に見つけた反物質。しかしもう時間はない!
ある人物の決死的働きによって破壊は回避され・・・
そして驚くべき意外な新犯人が!
もう最後の最後まで飽きさせませんよ。
そしてカーアクションなどで派手すぎない演出がいい。
最近はカーアクションとかが過剰すぎて私なんかかえって白けますから。

どんな人にもとりあえず勧められる映画でしたね。
面白かった。



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宇宙水爆戦


日時 2009年6月25日
場所 録画DVD
監督 ジョセフ・ニューマン
製作 1955年(昭和30年)

(詳しくはキネ旬データベースで)


電子工学の若き科学者は自分の研究室にある日何かの機械のカタログが届く。
好奇心にかられた彼はそれを注文し、組み立てる。
それはディスプレイがついた通信装置で、そのディスプレイに写された男から
「自分の研究室に来て欲しい」という誘いを受ける。
好奇心を押さえられない彼は男の誘いに乗って、迎えに来た飛行機に乗り込む。
無人の飛行機によって連れてこられた場所はアメリカのどこか。
しかしそこには世界中から科学者が集められ、核エネルギーについての研究が
行われていた!
雇い主の男は一体何者なのか?またその目的は?

「SF大全」的な古今東西のSF映画を紹介する本には必ずと言っていいほど
登場するこの「宇宙水爆戦」。なにやら怪生物が女性を襲い、女性が恐怖の表情
を浮かべているスチルをよく見かける。
タイトルとこのスチルしか見たことなかったこの映画だが、やっと見る機会に恵まれた。

正直な感想は地味な映画だったんだアということ。
タイトルやさっきのスチルからして、謎の怪生物がニューヨーク(ロスやワシントンでもいい)
に現れ住民を襲いつつ空飛ぶ円盤が現れ、米空軍と死闘を行うというものを想像していた。
が実際の映画は、この雇い主の男やその部下が頭が妙にでかくて人間ではないらしいことを
観客にほのめかし、実はこの男たちは異星人で地球人にあたらしいエネルギーを
作らせようとしていたのだ。
母星が大変なことになり、異星人たちは円盤で脱出する。またこの研究所を抜け出そうと
していた主人公たちはこの円盤につかまり、異星人の星に連れて行かれてしまう。
この星は別の星からの攻撃を受け、いまや瀕死の状態で、科学者も死んでしまったために
地球人の有能な学者の力を利用しようとしていたのだ、という話。

この攻撃を受けている星は敵から彗星に似せた爆弾を打ち込まれるという状態で、「宇宙戦艦
ヤマト」の冒頭のガミラスから攻撃を受ける地球のようだった。
で、ついにこの星もおしまいになり、星を脱出しようとしたときに「言い忘れていたけど」
という展開で突然ミュータント出現!
映画が終わる15分くらい前からの登場。それはないわなア。というかもったいない。
SF映画史上に残る怪生物なのに出番が少なく惜しい。

結局、最初に主人公たちを雇った男がいい奴で、主人公たちを地球に送り届けてくれる。
で、自らの円盤は力尽きて、海に墜落。エンドマーク。
実に期待はずれだった。


そんなことより実に気になった事が一つ。
この映画を見たことがなかったと先に書いたが、映画の冒頭に登場した主人公が組み立てた
ディスプレイ付通信装置、このデザインは映画で見たことがあるのだよ。
ではこの映画を忘れていたけど実はビデオで見たことがあるのかと思うがそうとも思えない。
後半の星に行ってからのシーンなど完全に記憶にない。
私はディスプレイ装置のシーンだけ記憶していて、後半を完全に忘れているのか?
それともディスプレイ装置は別の映画で似たような機械が登場してその映画と私は
混同してるのだろうか???
新たな謎が発生した。
「金星ガニ」が登場した映画とかその辺も全部見てみれば解決するのかも知れないが。
新たな課題だ。
(知っている人は知っているのだろうけど・・・・)



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アイ・カム・ウィズ・ザ・レイン


日時 2009年6月23日18:45〜
場所 新宿武蔵野館1
監督 トラン・アン・ユン

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猟奇的連続殺人事件の犯人を射殺し、その後免職となり今は探偵のクライン
(ジョシュ・ハートネット)。彼は製薬会社の大富豪から息子のシタオ(木村拓哉)の
行方を捜してほしいと依頼される。以前別の私立探偵に捜索させた時、フィリピンに
いたことが確認されている。
まずはフィリピンに向かったクライン。そこでシタオは殺されたらしいという話を聞く。
しかし香港でシタオの親戚の墓に花が添えられたという話を依頼人から聞かされる。
シタオは生きているのか?
その頃香港の裏社会のボス(イ・ビョンホン)は仲間の裏切りにあって大金を盗まれる。
大金だけでなく、ボスの愛する女性も誘拐された。
大金を盗んだ男は見つかったが女は見つからない。どうやらシタオのもとにいるようだ。
彼もシタオを探し始める。

正直、プロデューサーはどう思って製作したのだろう?
ジョシュ・ハートネット、木村拓哉、イ・ビョンホンという日米韓のスター競演となれば
日本でいえばシネコンのいいスクリーンで上映されてもよさそうだ。
それが単館ロードショーなみの公開の仕方。
映画を見るとそれも無理はない。
非常に抽象的な作品なのだ。

木村拓哉演じるシタオ(これが国籍がよくわからないが)は他人の痛みを自分の体に吸収し
相手のけがを直すことが出来る男として登場する。
もうこのあたりからして観念的だ。
しかもちょっとだけ「主の復活」を信じて金色の十字架を落書きする青年も登場する。
木村拓哉がキリストの復活とは恐れ入るが、美男スター共演のアクション映画を期待すると
外される。

しかしこれだけのスターをそろえてこういうミニシアター映画を作るとは実にもったいない。
プロデューサーはどういうつもりだったのだろう?
騙されたか?

クラインが過去に追っていた殺人を犯してその死体でオブジェを作る男も登場する。
これが実に気持ち悪いのだなあ。
スターを共演させて作るような内容じゃないよ。

途中途中、3人とも上半身裸になって血まみれになるカットが複数あり、もうこれは美男を
裸にして血まみれになっているカットを撮りたかったとしか言いようがない。
そういうカットにみて楽しければ楽しめるのだろうが、僕は楽しめなかった。
またラストで木村拓哉がイ・ビョンホンに板きれに両手を釘で打ち付けれれるシーンなど
実に猟奇的でスプラッタ映画だよ。

抽象的な話と言い、観客が楽しめたかははなはだ疑問だろう。
(見終わったら隣のカップルの男が「わけわかんないよ」と言っていた。実に正しい)

何度も同じことを言うようだけど、これだけのスターを揃えて舞台が香港なら普通に
刑事アクション映画が撮れたと思うのだけれどなあ。
そういう映画は作る気はなかったろうけど、ならばこういうスターを使う必要もなかろう。
観客がスターに求めていることは何か?
その辺も考えて映画を作ってもらいたかった気がする。



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武士道ブレード


日時 2009年6月20日
場所 DVD(輸入盤)
監督 トム・コタニ(小谷承靖)
製作 1979年(昭和54年)

(詳しくはインターネット・ムービー・データベースで)


幕末。アメリカからペリー提督が黒船に乗ってやってきた。
ペリー提督(リチャード・ブーン)は日本と和親条約を結ぶことが大きな使命。
いよいよ条約締結まであと一歩となったその頃、開国反対派の大名により、徳川幕府
よりアメリカ大統領に送られるはずだった刀(武士道ブレード)が盗まれてしまう。
無事条約締結を願うペリーは自分の部下を3名を刀の奪還に派遣する。
幕府より派遣された侍(千葉真一)とともに刀を取り戻す旅にでる。

東宝の小谷監督がアメリカのプロデューサー、アーサー・ランキンJrのもとで
作ったアメリカ製時代劇。ランキンはこの前に小谷監督とは「極底探検船ポーラーボーラ」を
作っている。
この頃、アメリカでは日本ブームだったようで、このあとベストセラー小説「将軍」も
テレビシリーズ化され、日本でも公開された。
はっきり言っておくがこちらの方が先だ。
話を聞けば「レッドサン」とおなじやんと思うでしょうが、これは「レッドサン」の方が先。
脚本家はアメリカ人なので大いに参考にしたのでしょう。

でお話の方だが、旅にでて早々、千葉真一はメンツもあってかさっさとひとりで出かけてしまい
アメリカ人三人だけで出かける。ある村に入ったところで待ち伏せした敵に襲われ、ばらばらに。
3人は大尉と体のでかい水兵と若き日本語が少しできる士官。
大尉は千葉真一と再会するが女忍者みたいなのと出会う。
この女が今回の敵(ヤマト国の城主)の家の娘と、長崎で出会った外国人の男との間にできた
子供で、外国人の子供を生んだということを恥じて母は自害、父もおらず祖父(?)にあたる
丹波哲郎の城主を憎んでいるという設定。
日本語が出来る士官は鵜飼いに助けられ(長良川以外でも鵜飼いはしていたのか?)その村の
娘と仲良くなる。
この村にはマコ岩松扮するジョン万次郎のようなかつて遭難してアメリカの船に助けられた
経験を持つ男が登場。
水夫の方はある村に入って捕らえられ、そこには遭難して助けられた多くの外国人が幽閉されて
いた。そのリーダー格の男がジェームス・アール・ジョーンズ。(ただしこのワンシーンの
出演)。そして銭湯にみんなで連れて行かれ、水兵は逃げ出す。
そして虚無僧から服を奪い顔を隠して旅を始めるがある村祭りで相撲を見ていたら、なんとなく
相撲に巻き込まれてしまい、日本のスモウレスラー(大前均)と意気投合してしまう。

というような感じでジャパニーズ大浴場、スモウ、ウカイなどなどオリエンタルムード満載。
で、3人は再び出会い、敵の城に攻め込むがつかまってしまう。
翌日城主(丹波哲郎ね)の御前での剣の試合が行われ、大尉と天津敏が戦う。
まさにフェンシング対剣道という非常に面白い組み合わせの対決!
ちょっと卑怯じゃないかと思う手を使いつつ、女忍者(この前の晩に大尉と結ばれている)
が天津敏の腕をぶったぎって例の刀は取り返す。

期限が迫っている。
しかし追手は迫る!はたして刀は間に合うのか!
という感じで、最後は岬の灯台での大決戦となる。
追っての人数が20名ぐらいでちょっとしょぼい気もするが、灯台を燃やしたりして大奮闘
だろう。

もちろん三船敏郎も幕府の大使として出演。
日本人役で三船敏郎、千葉真一、丹波哲郎、天津敏、マコ岩松もアメリカより参加。
なかなか豪華な顔ぶれで、ジャパーニーズオリエンタル満載だが、それが珍妙に見えないのが
日本の小谷監督の力だろう。(先にあげたジャパニーズオリエンタルはプロデューサーの
意向でそういうシーンを入れたんだそうだ)

「ラストサムライ」よりずっと早い、日米の出会いの物語。
1時間半のシンプルさで、正直楽しんだ。



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喜劇 特出しヒモ天国


日時 2009年6月13日15:00〜
場所 ザ・グリソムギャング
監督 森崎東
製作 昭和50年(1975年)

(詳しくはキネ旬データベースで)
「日本暴力列島 京阪神殺しの軍団」と併映


車のセールスマンだった昭平(山城新伍)ストリップ劇場の支配人に売った車の
代金を請求中に劇場に手入れが入り、いつの間にか臨時支配人にさせられてしまう。
そしていつの間にか踊り子のジーン谷(池玲子)のマネージャー(というかヒモ)
になり、大阪へ、九州へ。
そこには様々なストリッパー、ヒモたちがいた。

松竹で喜劇を作り続けていた森崎東監督が東映に招かれた作品。
もともと関本郁夫監督が監督する予定で原作を抑えていたものを、プロデューサーが
森崎監督用にしてしまったという曰くつきの映画。
現場は外部監督の森崎監督に協力的ではなく、監督としては東映京都で苦労したようで、
ご本人としては好きな作品ではなかったそうだ。
関本監督もよほど悔しかったらしく、この作品のことはよく言わないらしい。
そういう作り手たちからは異端児扱いされているこの作品、不思議なことに
送り手の思いと受け手の思いがいい意味でずれている作品だ。
簡単に言えば面白いのだ。

アル中のストリッパー(芹名香)、実は男のカルーセル麻紀のニューハーフ(こんな言葉
は公開当時なかったかも?)、ストリップ劇場の掃除番からマネージャーになって
女性をストリッパーにする男(藤原釜足)、中華屋の出前持ち夫婦(下条ツトム)でおしだが、
子供を作るために金が欲しいと言う理由でストリッパーを志願する夫婦などなど。
バイタリティに生きる男女たちはおかしくもあり、頼もしくもある。

特に藤原釜足が(藤原釜足がこういう役をやること自体ちょっと意外だったが)
交通整理を行っていたデブの姉ちゃんを口説き落とし、ストリッパーにするくだり。
デブの姉ちゃんだからお世辞にもセクシーとは言えず、まさしく場末感満点。
また下条ツトム夫婦がおしにも関わらずストリッパーに挑戦し、初舞台で音響故障。
音が止まっているのに気づかず踊りを続けるがやがて客が騒ぎ出す。
しかし踊りを続ける踊り子にやがて拍手が送られるエピソードは少し感動的。

そんな感じで面白くもあるのだが、下ネタの笑いと便所の匂いが漂う映画で悪い映画では
ないと思うがあまり好きなタイプの映画ではなかった。
山城新伍のストリッパーのヒモなんて東映らしい絶妙な喜劇だと思います。



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真夏のオリオン


日時 2009年6月13日9:50〜
場所 新宿ピカデリー・スクリーン5
監督 篠原哲雄

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現代。アメリカに住む友人からその祖父の遺品の中にあった戦争中の思い出の品らしい
楽譜が日本の女性(北川景子)に届けられる。
どうやら自分の祖父の戦争中に関係があるらしい。
祖父は戦時中、海軍潜水艦艦長だった。その部下であった鈴木(鈴木瑞穂)を訪ねたところ
「まさかこの楽譜に再び出会うとは思わなかった」と言う。
この楽譜にまつわる艦長の思い出を語りだすのだった。


戦争映画は基本的に好きなたちなので、(特に大作は)この作品もどうなっているか非常に
楽しみで、私にしては珍しく初日初回に見に行った。

また現代のシーンから始まって過去に話をつなげるパターンだ。
この話法、好きな人もいるようだが私は好きになれないのだよ。
鈴木瑞穂はいいのだけれどねえ。

それはそれとして一挙に話は昭和20年8月へ。
沖縄へのアメリカの補給船団を撃滅するため6隻の潜水艦が沖縄海域に配備されていた。
そのもっとも沖縄に近い場所に配置されたのがイ−77。イ−77が戦うということは
他の船はすでにやられている可能性が高い。
補給船団を護衛するのは米海軍駆逐艦パーシバル。イ−77の艦長倉本(玉木宏)は
どう戦うか?

そんな感じで話は進んでいく。
観終わって思ったのは出来の悪い映画ではない。
特に美術や衣装は素晴らしい。潜水艦内部のセットなど「ローレライ」に引き続き素晴らしく、
観ていてほれぼれする。
また軍服は綿素材の少ししわの寄った感じがたまらなくいい。
今までの映画では合成繊維のせいかパリっとしすぎているのだよ。
それとは違うちょっと寄れた感じが旧軍の軍服らしさを醸し出している。

でも出来の悪い映画ではないがよくもないのだな。
なぜかを考えてみたが、まず話の柱がないのだよ。
戦争映画だとやはり作戦があってそれが奏功するか失敗するかがまず話の柱になると思うが、
(たとえば「東京への第三の原爆を阻止せよ」「砲台を爆破せよ」など)があったわけだが
それがない。
そこで話にパンチがないのだな。

そしてキャスト。やっぱり主演の艦長に玉木宏はないだろう。
年齢的な若さは実際にもあの年代の艦長はいたかも知れんが、それにしても貫禄がない。
それは別艦の艦長の堂珍嘉邦にしてもそう。
ここでなにか乗れないのだな。「ローレライ」の役所艦長は最高だったが。

また駆逐艦との一騎打ちを軸に話が展開するがならばアメリカ艦長もスター級の人が欲しい。
(無理は承知でトミー・リー・ジョーンズとか)そうでないと互角な感じがしないのだよ。
駆逐艦との対決というとどうしても「眼下の敵」を思い出すが、潜水艦の中から音楽を流すとか
ラストで艦長同士が敬礼をするとか明らかにパクっている(というかやりたかったんでしょうな)

あと最後に気になったのが(書いちゃうけど)お互いの戦いが終わった時に終戦の連絡を受けていること。
映画の中では夜だったが、それは何月何日何時なのだ?
早めに受け取ったのか?それとも遅く受け取ったのか?
映画を見ると日米同時に終戦の連絡を受けているようだが、そうだったの?
細かいことかも知れないが、気になった。

艦内で回天搭乗員が勝手に出撃しようとするとか、一部で反乱がおきるとか、もう少し波乱万丈が
あってもよかったのでは?

ああすればこうすればもっとよくなった、もっと好きになった、そんな思いにかられる映画だった。
決してヒドイ映画ではないですけど。



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スター・トレック


日時 2009年6月10日20:05〜
場所 新宿バルト9・シアター8
監督 JJ・エイブラムス

(公式HPへ)


ジム・カークの父を宇宙艦隊の船長だったが、彼が船長だったのは12分間だけだった。
航行中、謎の敵に襲われ船長以下乗組員が脱出する間、彼が船を操縦するために残り
直後に敵に爆破されたのだった。ジム・カークはその戦闘中に生まれたのだった。
時は流れ、カークも青年になった。自分が何をなすべきか迷っていたカークは、
父を知るパイク船長に勧められ、宇宙艦隊に入ることに。
訓練生を終える頃、また謎の敵が地球を襲ってきた。
新造艦エンタープライズはパイク船長の下、カーク、スポック副長を伴い出航する!


「宇宙大作戦」のテレビシリーズに基づいた新作映画。
「スタートレック」の映画は最初の2、3本は見ているが最近は全く見ていない。
テレビ・オリジナル版はそんなに見ているわけではないが、でも一通りは見ていると思う。
今回、オリジナルテレビ版のビギニングとも言うべき若き日のカークやスポックが登場する
と聞き、何とか見たくなった。しかも評判はいい。

どうしても書いていくとネタバレになるのだが、「カークってあんなやんちゃだったの?」
とか「通信係ウーラ少尉はもっとおとなしいイメージだがなあ」という疑問点がありつつ
見ていくと、これはタイムパラドックス世界を使ったもう一つの「スター・トレック」
オリジナル版とキャラクター設定がちょっと違うのも納得させられてしまう。

操縦士のスールー(テレビ吹き替え版ではカトウ)、チェーコフ、船医マッコイ、機関士
チャーリーそれぞれが登場。
しかもスールーがフェンシングの名人とかちゃんとテレビ版の設定も生かされている。
マッコイとスポックがイマイチ仲が悪い(というか意見が合わない)、チャーリーは
美食家であるとかも設定もあり。
しかも顔がなんとなくオリジナル版に似ている役者を起用。
特にチャーリーが登場したときは、名前が出る前に解った。

スポックとウーラが恋仲だったり「?」と思うところが多少はあるが、それも許そう。
なんといっても目玉はレナード・ニモイによるオリジナル・スポック登場!
思うに、この「レナード・ニモイをスポックで登場させる」というアイデアから
脚本が作られたのではないか?
「ニモイももう歳だからおじいさんのスポックが登場せざるを得ない。でも今回は
『ビギニング』篇だからなあ。特別出演で別な役はいやだし。そうだ!タイムパラドックスで
年取ったスポックが過去に戻ってくる話しにしよう!」という発想があったと見た。

しかもスポックの役者は(メークの効果もあるだろうが)実にそっくり!
エンタープライズのメカが21世紀的なデザインなのも気になるが、これはオリジナル版の
時代がさかのぼった話ではなく、パラレルワールドのお話なのだからよしとしよう。

最後にパイク大佐が車椅子で出てきたときには(心の中で)大笑いした。
やっぱりパイク大佐は車椅子のイメージなんですねえ。



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重力ピエロ


日時 2009年6月5日19:05〜
場所 新宿バルト9・スクリーン3
監督 森淳一

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泉水(加瀬亮)と春(岡田将生)は仲のよい兄弟。兄の泉水は大学院で遺伝子の研究をし
弟の春は壁に描かれた落書き消しのバイトをしていて、養蜂を営む父親と同居していた。
彼らの住む仙台ではその頃連続放火事件が発生していた。
春は自分が消している同じ人間が描いたと思われる落書きの場所と放火事件の現場が
いつもすぐ近くだと気づく。
何か関連があるに違いない。悪いことをする奴を許せない春は泉水ともに落書きがあった場所
に張り込むことに。
そんなとき父(小日向文世)が癌だわかる。
父は母親が24年前に仙台であった連続強姦事件の被害者で、春はその犯人に子供
だと告げる。
そしてその犯人は今釈放され仙台でデリヘルの元締めをして中学生売春もしているらしい。
彼らはどのように結びついていくのか?

話題の作家伊坂幸太郎の代表作(と言ってもまだこの作家の本は一冊も読んでいないのだが)
の映画化。
最近成長目覚しい岡田将生と加瀬亮の共演と知り鑑賞。

ミステリーとしては底が浅いし、犯人は意外だが展開としてはあまり誉められたものではない。
書いちゃうけど連続放火は春の犯行で落書きも春自らが書いたものだったのだ。
そして自分の母を強姦した犯人(渡部篤郎)を殺そうとしていた、と言うもの。
でも渡部篤郎を殺したいと言うのと放火の因果関係がよくわからない。

ミステリーとして見ると疑問は多いのだが、なんとなく惹きつけられるのは家族愛を
感じられるのだな。
まあそこを売りにもしているが。
妻が強姦されて出来た子供でそのことで学校やらで中傷を受けながらも「俺たちは最強の家族だ」
と言い切る小日向文世がいい。
父親役が多い小日向だが、ぼーっとしながらも芯の強い父親を好演。

だがしかし・・・・
この映画の根底にある倫理観にはついていけない。
結局春は自分の父親であり、しかし家族の敵である渡部篤郎を殺すために連続放火を
行っていたのだ。連続放火しなくても素直に渡部篤郎を殺せばいいじゃないかという
突っ込みも成り立つし、そして自首を考える春に対し、兄の泉水は「お前は20年以上
苦しんできた。それで悩んで悩んだ上にやったことだ。そんな苦しみが刑事なんかに解るか!」
と言って自首をやめさせる。

その意見には賛成できない。
その論理で言ったら「悪い奴はどんどん殺してしまえばいい。殺したい奴は殺せばいい」
という死刑及び私刑増長になりはしないか?
それに関係ない人を巻き込むかも知れない連続放火まで犯している。
ますますもって自分勝手。
自分の復讐が出来ればそれでよし、という特に兄貴の方には賛成できない。
やはりここは春にはラストで自首させるべきだと思う。
そうでないと安易な復讐増長映画だよ。
ハードボイルドのアクション映画なら絵空事と非現実とわきまえて見ることが出来るが
これはヘタに「家族愛のすばらしさ」みたいなものを描いてますからね。
家族がひどい目にあったらそいつを殺してもいいのだ!ていう論理になるしなあ。

映画としてはいただけないが、岡田将生はよかった。
長身に美しい顔、存在感。
今後に期待できる楽しみな俳優になってきた。



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おと・な・り


日時 2009年6月2日21:00〜
場所 新宿ピカデリー・スクリーン5
監督 熊沢尚人

(公式HPへ)

http://www.family.co.jp/company/news_releases/2009/090508_5.html


カメラマンの聡(岡田准一)は高校時代からの友人でモデルのSINGOの写真が評価され、
いまや若き一流カメラマンだったが、実は風景写真で写真集を出すのが夢だった。
風景写真撮影のためカナダ行きを決意した聡だったが、親友のSINGOには未だに
言い出せないでいる。
そんなとき事務所の社長からSINGOに映画出演の話があり、そのスチル写真を撮れと言う。
カナダ行きは遅れるが、写真集は出させると言う。だがSINGOとは連絡がまったく取れなくなる。
聡のアパートの隣の部屋に住む七緒(麻生久美子)。フラワーアレンジメントの資格を取り、
その上フランスへ留学を計画していた。
二人とも恋人はいない。
そんなとき、七緒の前に自分を好きだと言う青年(岡田義徳)が現れる。


タイトルの「おとなり」は「お隣」と「音鳴り」を引っ掛けたもの。
古びた味わいのあるアパートに住む二人が、顔をあわせたことはないがお互いを意識しあう
という次第。
サイトなどのストーリー紹介では「二人はお互いに音で好感を持ち合う」というような
紹介がしてあるが、二人が物語りの後半になるまで意識しあっている感じは受けなかった。

しかし見る価値がないわけではない。
今まで10代、20代前半の青春を描いてきた熊沢監督だが、今回は仕事も曲がり角の30歳前後
の青春(と言う言葉が正しいかわからないけど)を描く。
もう自分自身はこの年代をとっくに過ぎてしまったわけだが、同じ年代で見たら結構身に
つまされたかも知れない。

恋とか、結婚とか、仕事の悩みとか(とりあえず社会に出たがこのままでいいのかとこの年頃は
考え始めるのだ)を描写する。
自分のやりたいことをするか、みんなの希望に従って気の乗らない仕事をするか、夢に向かって
進んでいるときに自分を好きだと言う人が現れたらどうするか、30になってこのままでいいのか
と思いつつ、それでも周りのことを考えながら自分の道を探る青春後期の悩みだ。
その辺が心のひだはよく描けていたと思う。
主役の二人だけでなく、岡田義徳のコンビニ店員もSINGOも同じ。
このあたりの二つのドラマが平行して進むあたりは面白い。

ただ後半になって主人公の二人はクロスするのだが、その辺の展開が長い。もたつく。
聡と七緒は実は中学の同級生で二人は同窓会で再会するのだが、音を聞いてお互いを気づくかと
思いきや邪魔が入って二人は出会わない。
で東京のアパートでやっと出会う。
ここで同窓会のシーンはなくてもなんとかなったような気がするが。
ラスト、二人は出会い、お互いを認め合う。
そこで暗転。クレジットがでる画面に流れる会話で数年後の二人が幸せそうにカナダやフランス
のことを話しながら料理を作っている様が示される。
「おとなり」のラストらしい締めくくり方だった。

またざらついた画面だが、それが汚さになるのではなく、照明の陰影、色合いのよさのため、
そのざらつき加減が味になっているのはすばらしい。

総じて面白かった。



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