2009年7月

バーダー・マインホフ
理想の果てに
MW ムウ 河童とクゥの夏休み ノウイング
七人の刑事
女をさがせ
剣岳 点の記 台湾人生 蟹工船
警視庁物語
遺留品なし
富士山頂 奇談 キダン 原始獣レプティリカス
冷凍凶獣の惨殺

バーダー・マインホフ 理想の果てに


日時 2009年7月26日19:35〜
場所 シネマライズ2F
監督 ウリ・エデル

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1968年、ジャーナリストのマインホフはベトナム反戦運動の学生集会を
取材中に警官が学生を射殺してしまうの目撃する。
マインホフはこの事件を契機に学生運動の取材に力を入れる。
その頃、逮捕されていた学生運動のリーダー、バーダーの脱獄を助けたことを
きっかけに彼らと活動を共にするようになる。
やがて人々は彼らのグループを「バーダー・マインホフ」と呼ぶようになりドイツ赤軍へ
と発展していく。
そして活動資金を得るために銀行強盗などを繰り返すようになる。

昨年評判になった若松孝二の「実録・連合赤軍」にも通じるドイツ赤軍の
闘争の歴史を描く話題作。
気になっていたので封切り2日目に鑑賞。
驚いた。日本の赤軍とはえらい違いだ。

映画自体もなんだかギャング映画かと思った。
理論の応酬などは全くといっていいほどなく、ひたすら破壊的活動を描く。
ベトナム反戦運動から始まった反政府活動もやがては資金稼ぎの銀行強盗や
逮捕された仲間の釈放を要求する事件へとなっていく。

映画は(多分意図的にそうなったと思うが)彼らの主張が展開されるシーンは
ほとんどなく、とにかくドンパチ撃ちまくる。
映画での抗争はバーダーやマインホフが刑務所で自殺する78年まで続くから
もうこの10年間(日本より長いのだな)はまるでドイツは内戦下にあった
錯覚さえ起こる。
ドンパチについてだがパンフによると実際の事件の調書にある弾の数に基づいて
いると言うから、実際も派手だったのだろう。

しかもフリーセックスのごとく、新人の若手メンバーがバーダーの恋人と
一緒に風呂に入ったり、中近東に軍事訓練に行ったときに男と女は別の棟という
向こうの規則を破って一緒に住み、さらに屋上でみんなで裸になったりする。
日本の赤軍とは違うなあ。
(この辺が70年代のフリーセックス運動と言うのを思い起こさせる)

そして映画の前半で高速道路で車の中から拳銃の試し撃ちをしたり一見
暴走族かと思ってしまう。
とにかく政治集団というより暴走族がそのままギャングになって警察と抗争する
映画みたいだった。
ドイツ国内での評判はどうだったのだろう。
「バーダーたちはあんなもんじゃない」と映画の描き方に反対する人は
いなかったろうか?

それにしても警察のトップが「彼らに運動を起こさせないような政治を行うこと
を個人的には望む」と言ってみたり、バーダーたちを好意的に描く部分もあるのだが
単なるギャング集団にしか見えないような感じでもあり、色んな人の意見を聞いてみたい
映画だ。



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MW ムウ


日時 2009年7月26日16:20〜
場所 渋谷TOEI2
監督 岩本仁志

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16年前、ある島で住民が武装した男たちに殺される事件があった。
この事件は闇に葬られ、その中を生き残った少年が二人いた。
現代、タイで邦人の誘拐事件があり、娘を誘拐された父親が身代金を持って
待ち合わせの場所に来た。
警察の努力もむなしく金は奪われ、娘と父親は殺された。
警視庁から派遣されていた刑事(石橋凌)は娘が東京でヤクをやっていたという
情報から、そしてタイで見かけた犯人の人相から犯人のめぼしをつける。
犯人(玉木宏)の目的は?そして16年前に起こった事件とのかかわりは??


手塚治虫の禁断の原作と言われるコミックの映画化。
原作コミックに関しては私は知りもしないし、読んでもいない。
映画の方は総じて面白かった。
タイの誘拐事件に始まって、日本でも何か秘密のある大臣が登場し、謎が深まる。
数ヶ月前のバラバラ殺人事件、被害者たちの共通項と話は膨らんでいき、
興味はつきない。
そして16年前の事件とはアメリカの毒ガス実験の失敗の結果、毒ガスが島内に
もれてしまったことを日本政府と米軍が隠蔽しようとしたことだったと
徐々に明らかになり、まるでアメリカのアクション映画のような展開。
(しかし過去の事件が毒ガスというのが「L」とかこういうのも最近は
パターン化しているな)

ただ映像的には誉められない。
まずカメラが動きすぎ。
グルングルンと移動しまくってしかも手持ちカメラだから常にゆれている感じだ。
これも時々「ここぞ」というシーンで行えば効果的だと思うが、のべつまくなし
カメラが動いては落ち着かないったらありゃしない。
もう完全についていけない。
監督はテレビドラマ出身らしいが、テレビ屋さんというのはカメラを動かすことが
ステイタスなのか?
それとも常に何かをしていないと不安なのか?
もっとがっしりした落ち着いた画を撮って欲しいよ。

そしてキャスティング。
玉木宏はどうも好きになれないのだよ。
山田孝之も好きじゃないしなあ。
んで女性記者。もう女を出さなきゃいけないという法律があるのか?
でも石橋稜、そして大臣の品川徹は二人とも相変わらずの存在感を示す。

でラストに米軍基地に侵入して毒ガス(「ムウ」)を奪おうとするのだが
ここはあっさり侵入に成功。
このあたりは脚本が逃げていないか?

というあたりの数々の欠点を持ちつつも、見ている間はまあ楽しめた。
評判を全く聞かないが、なんと手塚治虫の原作では玉木宏と山田孝之は
同性愛関係にあるそうだ。
このあたりを変更してしまったらかなり作品の印象は違うと言われても
仕方あるまい。



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河童とクゥの夏休み


日時 2009年7月25日14:00〜
場所 ザ・グリソムギャング
監督 原恵一
製作 平成19年(2007年)

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300年前の江戸時代の河童がまだいた頃、親子の河童がお代官様に計画されている
沼の干拓を中止してもらうようお願いに上がる。
しかし驚いたお代官は親河童を殺してしまう。
子河童はそのとき起こった地震の地割れに落ち、土の中へ。
現代、河原で小学5年生のコウイチは不思議な岩を見つける。
その岩を家に持ち帰ったところ中には干乾びたカエルのようなものが。
水につけたところ、なんと河童が生き返った!
その河童はクゥと名づけられ、コウイチの家で飼うことになったのだが。


私の周りでは名作の評価をほしいままにしているこの映画。
アニメは見ないわけではないのだが、見る順番の優先順位が下がる私としては未見
のままだった。
なるほどなるほど。確かにいい映画だと思う。後半などうるうるくる。

ストーリーのダイナミズムよりも家族間の会話とかクゥとコウイチの関係の描写など
細かい表現が実に繊細なのだ。
自分でもどこかで見たようなそんな会話やいかにも起こりそうな反応が出てくる。
そのあたりがなんだか自分が体験したようなシーンが展開される。

クゥを飼うことになった時の母親の「またあ?ちゃんと世話できるの?」とか
妹の反応とか、妹が幼稚園で話してしまいそこから噂が広がってやがては
マスコミにかぎつけられるとか、初めての取材の強引なやり方とか、雑誌に出ると
家の周り中に人が集まってくるとか、みんなが携帯で写真を撮るとか、テレビ出演を
渋るのに父親の会社の取引先から圧力をかけるとか、テレビに出演することに
なって妙にコウイチ一家ははしゃいでしまうとか、テレビ出演直前に河童の股間を
隠すとか隠さないとか、出てきたテレビタレントの反応とか、クゥに念力らしきもの
があると解ると「出ていけ!」というプラカードをもって抗議をする人々とか
クゥとコウイチの清瀬のコンビニでの別れとか、実に説得力のある、いかにも起こりそうな、
自分も過去に体験したことがあるようなデジャヴな感覚に陥る映画なのだ。

そういえば「クレヨンしんちゃん 大人帝国の逆襲」もそういういかにも起こりそうな
場面があった。
このあたりの表現の細やかさ、表現力が原恵一監督の持ち味と言えるべきなのだろう。

映画上映の後にトークイベントがあったが、原監督は木下恵介作品に感銘を受けていると言う。
そういえば「ドラえもん」も「クレヨンしんちゃん」も一種、家族のドラマとも言える。
メカが登場するSFアニメではない。
案外、木下流のホームドラマの継承者といえるのかも知れない。



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ノウイング


日時 2009年7月22日19:40〜
場所 新宿バルト9・スクリーン2
監督 アレクス・プロヤス

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天文学関連の大学教授のジョン(ニコラス・ケイジ)は数字が羅列した紙を手に入れた。
それは息子の学校の行事で50年前に埋められたタイムカプセルから出てきた物だった。
ただの数字の羅列にしか見えなかったが、よく見るとこの50年間に起こった大災害
大事件の起こった日付、被害者の数が書かれていた。
この数字は予言なのか?
この数字によると明日大事件が起こって80名以上が死亡するという。
本当に事件は起こるのか?


予告編を見ると飛行機の墜落とか出てくるし、なんだか終末SFの模様を呈しているので
楽しみにしたが、テーマが壮大な割には話が小さい。
近頃のハリウッド映画は終末ものと言えども「デイ・アフター・トモロー」もそうだし
話がミクロだ。
人類の終末の予言があって、と言う話なのだが、ニコラス・ケイジとその息子が死ぬか
生きるかという話題ばかり。
その上、謎の人物が付きまといそれに襲われるかどうかというレベルでとにかく話が
細かい細かい。

私としては人類終末に向かって例によって米軍が対応して核兵器で失敗し、秘密兵器が
登場、という感じが好きなのだが、もうそういう映画は流行らないとの判断か。
でも親子の話にするなら、人類終末でなくても単なる交通事故で死ぬ予言でも
よかないか?
まあ謎の人物は宇宙人で、子供だけ選ばれて別の星に連れて行かれるという結末。

飛行機の墜落シーンはイメージとしてはいいが、最近のハリウッド映画にしては珍しく
CGっぽさが残る。
地下鉄のシーンも同様。
案外低予算なのかも知れない。
ちょっと騙された気がした。



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七人の刑事 女をさがせ


日時 2009年7月11日19:10〜
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 高橋治
製作 昭和38年(1963年)

(詳しくはキネ旬データベースで)


河原で若い女の死体が見つかった。現場の近くには男ものの皮靴が落ちていた。
また死体の下着に番号が付いていて、これは何か団体生活をしていた人間ではないかと
周辺の聞き込みにまわる七人の刑事。
案の定、近くの非行少女たちの更生学校・光明学園が夕べ火事で焼け、少女たちは
近くの寺に避難していたが、数人脱走した生徒がいるという。
被害者のその一人だった。
一方男物の靴からの捜査はメーカーもわかり、買った人間も特定できた。
しかしその男は数日前から姿を消している。
男の身辺を探ってみると恋人がいたが、相手の女性は高級官僚と結婚している。
靴の男が犯人と思われたが、どうやら彼も殺されたようだ。
男の恋人の兄が容疑者として疑われる。
しかし彼は2日後に海外に出かける。
2日間の間に彼を逮捕しなければならない。どうする七人の刑事たち!


「七人の刑事」映画版第2作。
今回は2日間で証拠を見つけなければならない!というタイムリミットサスペンス形式。
犯人を田村高広が演じる。
他にも十朱幸代、中村晃子たちが非行処女役で出演。
被害者と脱走した少女たちが事件について何か知っている可能性があるので、彼女たちの
立ち回りそうな場所を聞き出そうと刑事たちが奮戦するが「あれ買ってくれたら教えてあげる」
「食事ごちそうしたら教えてあげる」とのらりくらりとかわされる。
菅原謙二の刑事が「あの刑事さんなら話してもいい」と言われて振り回されるあたりは
ユーモラス。

田村高広が国外脱出の日、車を調べてみたい久保田刑事(天田俊明)が「そうだ!」と
駐車違反でレッカー移動させて鑑識に調べさせるとはいい手だと思う。
しかし、そんな努力もむなしく田村高広の車は羽田に向かう。
逃げていた少女が菅原謙二の聞き込みのおかげで見つかる。
その少女たちの証言では田村高広が事件当夜現場を歩いているのを見かけ、それで一人仲間が
殺されたという。

事件当夜、田村が埋めた被害者の死体を探す刑事たち。
田村が出国する寸前、死体は見つかる。

逃げていた少女は混血の子で以前売春した時に自分を買ってくれた男の家に行き、お金を
せびっていたのだった。
その時に「自分のことを混血だからって嘆くんじゃない。生きていればきっといいことがあるよ」
と慰めてくれた話をする。
ラスト、刑事が少女を学園まで送り届ける。
その時に七人の刑事で一番年上の刑事が励まそうとして言う
「混血だからって嘆くんじゃない。生きていればきっといいことがあるよ」という。
そしてその言葉を聞いた少女顔のショットが3ショットほど挿入される。
彼女はどう思ったろう?
「大人はその場限りの慰めの言葉ばかりを言う」か「みんながそう言ってくれるからきっと
いいことがあるんだ」か。
混血少女が今以上に差別やいじめの対象になった時代だろう。
本筋とは関係ないエピソードだが、こんな社会をチクリと描くあたりが「『七人の刑事』らしい」と思った。



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剣岳 点の記


日時 2009年7月11日15:30〜
場所 ユナイテッドシネマとしまえん・スクリーン9
監督 木村大作

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日露戦争後の明治39年、陸軍測量部の技師、柴崎(浅野忠信)は正確な日本地図作成の
ため最後の空白地点である立山連峰の剣岳の登頂を命じられる。
剣岳は人を拒否するかのような難所だったが、発足したばかりの日本山岳会のメンバーも
初登頂を目指していた。
陸軍としては名誉と威信にかけて初登頂をして欲しい。
以前立山付近の測量をした技師(役所広司)のアドバイスを受け、案内人として宇治長次郎
(香川照之)を紹介される。
二人は果たして剣岳登頂が可能かどうか、下調べに向かうのだが・・・・


最後の活動屋とまで言われる木村大作カメラマンの初監督作品。
「八甲田山」「復活の日」など厳しい自然環境で撮る事を得意(あるいは生きがい)と
する木村カメラマンらしい作品だ。
「さすがに画はきれいだが、ドラマが面白くない」という評判を聞いてパスしようかと
思ったが、最近ご無沙汰のユナイテッドシネマが周年割引で1000円で見られるので
行ってみた。
評判は悪いがそんな事はない。
つい最近同じ新田次郎原作の「富士山頂」と同じく大自然に挑む人間のドラマ。

日本山岳会というライバル、「陸軍の面子にかけて初登頂」という身内からのプレッシャー、
それらの雑音を気にしつつ、「我々の真の目的は正確な地図を作ること」という山に挑戦
していく柴崎と宇治の姿はどこまでも素晴らしい。

もちろん画の美しさも素晴らしいが困難に挑んでいく男たちのドラマだ。
しかも女性がほとんど出てこないのがまたいいのだろう。
今のドラマは女のドラマが多すぎるよ。

ラスト、彼らは登頂に成功するが、そこには修行者の杖の取っ手が残されていた。
おそらくずっと以前に修行者が登頂してきた証拠だ。
それを聞いた陸軍は激怒!
本来は柴崎たちの偉業をたたえるべきなのに、「過去に登ったものがいたのでは陸軍が初
と言うことにはならない」と言い出してしまう。
本来は地図を作ることが目的なのに陸軍にしてみれば名誉ばかりを追い求めている。
そんな本末転倒の名誉第一主義がのちの大戦争に負ける一因になった気がする。
本筋とは関係ないかも知れないがそんな気がした。

あとクレジット。
「仲間たち」という肩書きでキャストスタッフの分け隔てがなく紹介される。
映画の中でもライバルだった日本山岳会も「一緒に登った仲間」柴崎たちは考えているが
それと同じようにスタッフキャスト関係なく山に登って撮影した仲間、という気分なのだろう。
その点も面白かった。



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台湾人生


日時 2009年7月11日10:40〜
場所 ポレポレ東中野
監督 酒井充子

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戦前、台湾は日本に統治され日本語教育も行っていた。
そんな日本語教育を受けた世代ももう少なくなってきている。
日本語教育をうけた5人の男女に当時の思い出を語ってもらうドキュメンタリー。

台湾が戦前は日本の統治下で日本語教育を受けていたことも知っていた。
しかし台湾は親日的で、日本攻撃をしない。
中国、韓国は時折反日的な運動やデモが起こり、台湾ではそういった話を聞かない。

この映画に出てくる老人たちは一応に日本人には世話になったと語る。
ある女性は「自分が男だったら特攻隊に志願していた。小泉は靖国神社に行ってえらい。
戦争で亡くなった人をお参りして何が悪い!」とまでいいきった。
またある人は「自分は学生時代、お金がなくて学校へ行けなくなった。しかし日本人の
先生がお金を援助してくれて学校へ行くことが出来た。感謝している。また先生に
会いたい」と言う。
やがて日本での場所もわかり、その先生に会うことも出来た。亡くなってからも
年に一度お墓参りをしているという。

こういった親日的発言はいわゆる「保守派」には好かれそうだ。
「やっぱり日本の統治政策は間違っていなかったのだ。それなのに中国韓国はその恩を
忘れて反日的な行動ばかりする。けしからん!」というわけだ。
しかしそういった親日的な発言ばかりでなく、戦後、「台湾人」ということで日本人と
差別されたという恨みを言う。

しかし全体的には親日的な発言が多い。
どうしてかと考えてみたが、この映画にも出てくるが戦後は蒋介石による国民党軍支配が続き、
その圧政への反発もあっての親日とも考えられる。

映画が終わった後、この日は監督と鈴木邦男さんのトークつき。
映画には描ききれなかったが、台湾でも世代間で考え方にも差があり、この映画のような
老人たちばかりではないらしい。
また国民党軍への反発だけではないそうだ。
日本人にもだがこの映画を台湾の若い人にも見てもらいたい、そして意見を聞きたいという
話題も監督たちから出た。
そのあと監督と話す時間があったが、「あんにょんサヨナラ」で靖国神社に対し、「台湾人の
合祀を取り下げろ!民族の尊厳だ!」とどなる女性議員もいたがあの人が台湾人の代表的な
考え方ではなく、むしろ少数派らしい。
「あんにょんサヨナラ」に感動した私だが、日韓、日中、日台、いったいどれが一般的な
考え方なのだろう?

映画の持つ力についてもちょっと気になった。



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蟹工船


日時 2009年7月10日18:55〜
場所 テアトル新宿
監督 SABU

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戦前の日本。オホーツク海で行われる蟹漁は「蟹工船」と呼ばれる船で漁をし、
カニ缶詰を作る作業を行っていた。
しかし労働者の環境は劣悪。そして監督の浅田は暴力的で容赦しない。
そんな中、漁師のうち二人(松田龍平、新井将文)が遭難し、ロシア船に助けられる。
そして何もしないのはよくない、団結して闘うことを教えられる。
船に帰る二人は仲間を扇動し立ち上がった!

2008年、湧き起こった小林多喜二の「蟹工船」ブーム。
それに乗っかっての映画化。
映画化決定を聞いて、SABU監督で松田龍平主演と聞いていやな予感はあった。
SABU監督は今まで3本ほど見ているが面白かったためしが全くない。
一部では評価が高いようだが、私とはたぶん肌が合わないのだよ。

で予告やスチルを見るとなんだかカラーがきれいすぎ。
蟹の赤の発色が実に美しい。
美しいのは大抵いいことだがこの場合は違う。

映画が始まる。
もう美術セットの感覚についていけない。
まるでSF映画のセットのように抽象的な歯車が並ぶ。
はっきりいいけどここにもあった「ブレードランナー」もどき。
あるいは「エイリアン」の宇宙船か。

蟹工船の労働環境の劣悪さがまったく伝わってこない。
原作を読むと何より不潔感が漂ってくるが、汚い汚れた格好をしている割には
不潔感がないのだよ。
ちょうどダメージジーンズ(穴のあいたジーンズ)が汚れてはいるが不潔な
印象を与えないのと同じように。
むしろかっこよい。
だからこの「蟹工船」のメンバーがいくら顔を汚していても、それはフェイスペインティング、
言いかえればおしゃれのために顔に描いているように見えてしまう。
案外パーティとかではやる時代も来るんじゃないか?

原作をそのまま映画化しても今の時代、だめだとは思うが、こういうビジュアルの世界観には
まったくついていけない。
あと貧乏自慢をギャグにしてしまうのもどうも小手先の技術にしか感じられない。
集団自殺を図るところなど唖然としてしまう。
「みんな立ち上がろう」とかセリフで言わせるのもどうかと思うし、まあとにかく最初の
美術感覚で引いているのでその後は何を言ってもだめなものにしか見えない。

この映画、受けるのだろうか?
「この映画がだめだという人は時代遅れ」と言われるならば、私は喜んで「時代遅れ」になる。
もうすでになっていることはよく分かっているから今さら言われても動じない。



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警視庁物語 遺留品なし


日時 2009年7月5日13:00〜
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 村山新治
製作 昭和34年(1959年)

(詳しくはキネ旬データベースで)


あるアパートの部屋で女性の他殺体が発見された。
株券や預金通帳が残されていたところから物取りではなさそうだ。
今回は遺留品が全くない。現場の状況からすると誰か客が来ていたようだ。
警視庁の刑事たちは聞き込みを中心に捜査を始める。
被害者は30歳の電話交換手。お付き合いしてる男性は同僚からの聞き込みで
「池なんとか」という東都大学医学部の研究生らしい。
東都大学に行くと確かに池田という男がいたが、茨城の実家に帰っていて
本人には会えない。
写真を借りてきて同僚に見せても違うようだと言う。
株の売買から洗っていくと被害者は結婚相談所に登録して相手を探していたようだ。
刑事たちは都内の結婚相談所を当り始める。


名前はよく聞いたが今回初めて見た「警視庁物語」。
「七人の刑事」の元ネタとも聞いていたがなるほどそんな感じだ。
派手なアクションはない。刑事たちもノースターで地味。
そんな刑事たちが地道にの聞き込みを行い、犯人を追いつめていく。

当然空振りの情報もある。
事件当夜にはだしで逃げた男がいたと聞けばその男の足取りを追う。
タクシーに乗ったことがわかり、そのタクシーを捜してみて男を特定できたのだが
事件とは全く関係なかったと判明。
また茨城まで東都大学の医大生を追っていったが、その医大生とは入れ違いで会えず
じまい。
そんな捜査の無駄を数々見せられる。

やがて解決する事件。
犯人は金に困って結婚詐欺をし、なおかつ被害者の同僚と二股をかけ、こちらからも
金を取ろうとしていた。
刑事のリーダー(神田隆)はその同僚に言う。
「あなたはだいぶ信用されているようですが、あなたのお付き合いしている男は
そういう男です。早く忘れていい人を見つけるといい」と声をかける。

派手さはないが、その分じっくり見せてくれる「警視庁物語」
あとの作品も見てみたくなった。
東映チャンネルあたりで特集放送してくれんかなあ。

他に刑事役で南廣、花沢徳衛などなど。



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富士山頂


日時 2009年7月4日21:00〜
場所 テレビ朝日
監督 村野鐵太郎
製作 昭和45年(1970年)

(詳しくはキネ旬データベースで)


気象庁観測課長の葛木(芦田伸介)にとって富士山頂にレーダー基地を建設することは
台風対策のための悲願であった。
大蔵省の主計局に予算を申請し、局長(神山繁)から嫌味を言われながらも許可が下りる。
政治的妨害などがあったが、三菱=大成建設チームが落札、いよいよ工事が始まる。
しかし富士山頂は他の場所とは違う。
荷物の運搬、工事現場での職員の高山病、さまざまな困難を三菱の梅原(石原裕次郎)
大成建設の伊石(山崎努)、強力の朝吉(勝新太郎)辰吉(佐藤允)たちは乗り越え、
ここに富士山レーダーは完成する。

今年は石原裕次郎の23回忌。
それを記念してのテレビ放映だ。タイトル部分はオリジナルのシネスコだが映画本編は
ビスタサイズのトリミング版という不完全ながら(僕にとっては思い出のこの映画)
見ることが出来た。

面白い!
大蔵省との折衝(ワンシーンながら神山繁の官僚が実に憎たらしい)、富士山頂の地質調査、
気象庁からの誘導電波の送受信は可能か、そして工事の受注をめぐる政治的圧力、
工事開始をしたもののあまりの過酷な環境に人手が集まらない、ブルドーザーによる輸送、
そしてクライマックスにレーダーを保護するドームの空輸、完成してすぐ台風がやってくる
果たしてレーダーは予想以上の強風に耐えられるのか!と次々と困難がおき、見るものを
まったく飽きさせない。

困難に立ち向かう男たちは実にかっこいい!
しかもキャステイングが豪華!
石原裕次郎、勝新太郎、渡哲也に加え、芦田伸介、宇野重吉、そして山崎努、佐藤允、田中邦衛
加藤武、中谷一郎という会社をまたいだ夢の共演!
裕次郎と渡、勝新と裕次郎の共演は他にもあるが、山崎努と裕次郎のツーショットなど
(事前に知らなかったから余計に)驚きの連続の豪華キャストだ!

ある一つの目的があって多くの人間が力をあわせて次々起こる困難に立ち向かっていく
というのは「七人の侍」「大脱走」を見るまでもなく、大型映画の王道の展開。
映画というものはこうでなくちゃいけない。

工事現場監督の山崎努が逃げていく建設員のことを裕次郎に責められ「僕にこれ以上
どうしろって言うんですか」と愚痴るシーンは山崎努の名シーン。
レーダーを覆うドームを渡哲也のヘリコプターパイロットによって空輸するシーンが
クライマックス!
ちょっとでも位置がずれればたちまち富士山の乱気流に巻き込まれてしまう!
このパイロットを渡哲也というのが実にお決まりのキャスティングでにやりとさせられる。

実はこの映画、公開時に劇場で見ている。
ひょっとしたらゴジラなどのお子様向け番組以外で初めて見る映画だったのかも知れない。
母に連れられて見に行ったが、母としてはまだ小学校低学年だった私に「男の仕事!」という
ものを見せたかったんだろう。
もちろん大人になって裕次郎ほどのでかい仕事はしていないがそれでも大きく心に残ったから
母の目論見は成功だったといえるだろう。

もちろん4シーンほど記憶していて、1シーンをのぞいて記憶と違いはなかった。
雷が落ちて佐藤允たちがおびえるという笑いのシーン、ヘリコプターによるドームの空輸カット、
台風がやってきて裕次郎が強風に耐えられるかドーム内部から心配するシーン。
1シーンはちょっと記憶と違っていたが(ブルドーザーで佐藤允が登っていくが、強がった
勝新太郎がブルドーザーより先を歩いていたがワイプしてブルドーザーに追い越され、
またワイプしてブルドーザーに乗っているという笑いがあるのが僕の記憶だった)それは
今回のテレビ放送でカットされたのかも知れない。
ちゃんとスクリーンで見てみたい。

それにしてもこの映画、単なる人間の自然開発だけを描いたのではない。
ラスト近く、荷揚げは全部終わってあとは組み立てるだけになった時に仕事の終わった勝新太郎が
工事現場に落ちている空き缶を拾う。
山を下りるブルドーザーに乗りながら佐藤允に「これからどうするかなあ」とつぶやく。
「何って取りあえず熱海か箱根でパッーと」という佐藤に「いや今後のレーダー基地の荷揚げは
ブル1台あれば済む。他のブルの仕事を見つけてやらにゃあなあ」とつぶやく。
高度経済成長バンザイバンザイだけではなく、その負の部分も描く。
そして芦田伸介や宇野重吉は政治的圧力を跳ね返した反動か、はたまた電波局の許可を待たずに
レーダーを動かした責任か、それぞれ地方に飛ばされる羽目になる。
人間社会の小ささを思い知らされる。

最後にさまざまな季節の富士山、山から見た風景の美しさなど撮影のすばらしさを記して
おきたい。
(映画の完成時にはもうレーダーは完成しているのだから、さまざまなシーンを再現、または
代わりの場所で撮影した苦労もたたえることを忘れてはなるまい)



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奇談 キダン


日時 2009年7月4日15:00〜 
場所 ザ・グリソムギャング
監督 小松隆志
製作 平成17年(2005年)

(詳しくはキネ旬データベースで)



1972年、民族学を専攻する大学院生の里美(藤沢恵麻)は自分の子供のころの記憶を
失っていたのだが、それが隠れキリシタンの里渡戸村にいたとき、神隠しにあった時の
ことだと思いだす。
どうしても気になるので再び渡戸村を訪れることに。
しかし出がけに教授(土屋嘉男)から渡戸村のそばにある「はなれ」と呼ばれる一帯を
観てきてくれるように頼まれる。
「はなれ」の住民は知能が7歳程度しかない者ばかりで村からは恥部とされていた。
渡戸村についた里美だがそこで同じように渡戸村を調べにきた稗田(阿部寛)という学者と
出会う。
はたして「はなれ」の正体は何なのか?
そこにはキリスト教の隠された歴史があった!


「リング」「呪怨」でJホラーブームを起こした一瀬隆重が製作する新感覚のホラー映画。
でも全くヒットしなかったようだ。
純粋なホラーというよりミステリー色の強い映画だ。
やがて村では「はなれ」の住民の一人・善次がはりつけにされ、まるでかつてのキリストの
ような姿で殺されているのが発見される。
これは何を意味するのか?
また里美が子供頃に神隠しにあった時、自分は助かったが助からなかった少年が突然
発見される。
次々と起こる事件は一体何を意味するのか?
観る者を引きつけて離さない。


やがてキリスト教のもう一つの歴史にたどり着く。
人類創生神話のアダムとイブの物語とは違って生命の木を食べたものがたのだと。
もちろん進化論から考えるとありえない話だが、とにかく話としては面白い。
キリスト教という西洋文化と日本的な土着性がミックスされた壮大なミステリーだ。
「ダヴィンチコード」より話が壮大。

「はなれ」の人間は生命の木の実を食べた人間たちで、不老不死だが知恵がないという。
キリストが実は日本に東洋の果ての日本に流れ着いて聖徳太子になったという伝説もあるが
(いや時代がずれているから「義経=ジンギスカン」よりありえない気がするが)それを
思い起こさせるようなロマンあふれる伝奇話だ。

はなれの人間(神戸浩)などが東北弁でなまりが強く、何を言っているのかよくわからない
部分もあり、若干話がわかりにくい部分もあるが、かといってなまっていなくては雰囲気が
でない。
痛し痒しだが、何か工夫があるとよりよかったと思う。
なかなか面白い映画で、ちょっと拾い物だった。



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原始獣レプティリカス 冷凍凶獣の惨殺


日時 2009年7月1日
場所 DVD
監督 シドニー・ピンク
製作 1961年(昭和36年)

(詳しくはインターネット・ムービー・データベースで)


デンマークの山中の鉱山でボウリングをしていたところ、ドリルの先に血が付いて
いるのが発見される。ドリルを調べてみるとそこには肉片がついていた。
どうやら地中にはいた冷凍された生物がいたようだ。
コペンハーゲンから学者を呼び調べてもらうことに。
近くからは何かの動物のしっぽらしいものが発見される。
すぐにコペンハーゲンの水族館の研究室に運ばれる。
研究室では冷凍保存しようとしたが、徹夜で研究中の博士が誤って寝てしまい、
冷凍庫の扉を閉め忘れ、翌朝同僚に発見されるが、なんとそのしっぽは再生が始まっていた。
トカゲやヒトデのように部分から全体が甦る生き物らしい。
そのしっぽを育ててみる教授たちだったが、なんとしっぽはやがて「レプティリカス」という
怪獣となって復活した!!


デンマーク制作の珍しい怪獣映画。
いやデンマーク映画自体観たのは初めてかもしれない。
正直特撮の方はお寒い。
怪獣のレプティリカス(ええい発音しにくいなあ)は「海底軍艦」に登場したマンダのような
装演型怪獣。(そういえば「海底軍艦」より先だ)
特撮と人間のカットが切り返されるのだが、どうも位置関係がわかりにくい。
手前に人間がいて奥に怪獣がいる、という合成カットがないこともあるし、目線の切り返しが
あっていないのか、どうも違和感を感じるのだ。
今まで当たり前に見ていた日本の特撮映画だが、やっぱり凄いということがよくわかる。

そしてドラマの方。
前半のレプティリカスが巨大化するまでの30分が長い。
ここらあたりの巨大化するまでに「ラドン」のように小さな怪物が登場するとか、じりじりと
なにか惨劇が起こるとかしないと話が持たないよ。
レプティリカスのしっぽが水族館に運ばれた段階で、護衛警備のためにアメリカ軍の将校が
国連からやってくるが、この将軍が「暇だなあ」と怒っている。
観客も怒りだしそうだ。
仕方なく博士の娘が「ではコペンハーゲン観光を」と名所めぐりのシーンが入る。
ここで人魚の像とか写るのだよ。
で後半クライマックスになる跳ね上げ式の橋が紹介され、これが後半の伏線になるのだな。
さらにナイトクラブに連れて行かれ歌手が「コペンハーゲンの夜」みたいな歌を歌う。

そしてやっと怪獣登場。最初は海の逃れ、艦船から爆雷攻撃をするのだが、怪獣の体が
飛び散ればそれぞれから再生して怪獣が無数に増えるという理由から爆雷攻撃中止。

怪獣の方だが、時々なにかを吐き出すのだが、合成の画がよくないのか、光線を吐いているのか
なにか液体を入っているのかはっきりしない。
後にセリフで粘液とわかるのだが。
これが強酸性らしいが、だからといいって吐き出した粘液で戦車が溶ける、といったシーンはなし。
残念!

やがてコペンハーゲン上陸。
ここは本物の軍隊を使い、逃げ惑う群衆も非常に数が多く、見ごたえ満載!
例の跳ね上げ橋を越えようと群衆が逃げてくるのだが、橋の係員パニックがになって
思わず橋を上げるスイッチを入れてしまう。
まだ群衆が逃げてくるのにどかどかと人や自転車が橋の下に落ちていくシーンは
名パニックシーンだ!

お寒いところはあるものの、なかなか見ごたえのある怪獣映画だった。



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