2009年11月

ショーシャンクの空に ゼロの焦点 RISE UP ライズアップ
棚の隅 ニュー・シネマ・
パラダイス
ブラック会社に勤めているんだが、もう俺は限界かも知れない 僕の初恋をキミに捧ぐ
風が強く吹いている 笑う警官 沈まぬ太陽 母なる証明

ショーシャンクの空に


日時 2009年11月30日
場所 DVD
監督 フランク・ダラボン
製作 1994年(平成6年)

(詳しくはキネ旬データベースで)



1947年、アンディ・デュフレーン(ティム・ロビンス)は不貞を働いた妻と
その愛人を殺した罪で終身刑に。
銀行の副頭取だった彼はある日刑務官の相続税対策で節税法をアドバイスすることで
一目おかれることに。
そして所長や刑務官たちの確定申告を手伝うようになり、やがて所長の賄賂の
マネーロンダリングさえするようになる。
それらと引き換えに図書室を拡充させ、囚人たちに高校卒業の資格を取らせたり
するようにしていく。
そんな時、新しく入った囚人から驚きの事実を聞いたのだった。


雑誌の読者投票の映画ベストテンに最近常に上位に入るこの映画、今まで
内容も知らずにきたので一度見てみた。
「刑務所もの」と「感動作」ということしか知らずに観たのだが。

正直最後のオチ(というか展開)には驚いた!
まさかこういう展開になろうとは!
こちらは正直困惑している。
冒頭の裁判のシーンでは彼が本当に殺していないのかハッキリしないのだが
「実はやっぱり彼が犯人だった!」という展開になるのでは?と思っていたのだ。

新しく入った囚人から「自分が前にいた刑務所でアンディの妻を殺したと自慢していた
男がいた」という告白を聞き、これをきっかけに彼は無罪になっていく展開に
なるのかと思ったらそれも違う。

なんと彼は脱獄し、所長の裏金を自分のものにし、そして所長の不正も告発する
という大どんでん返し(僕にとっては)

そういう展開になるとは思わなかった。
「観る者に感動を与える」とか聞いていたけどそうなるとはなあ。
驚いた原因にアンディはそういうことをするタイプに見えなかったのだよ。
たとえ無実の罪であろうとも脱獄は違法なのですよ。ですから無罪を勝ち取るのも
あくまで合法的手段に訴えて勝ち取ると思ったからなあ。
僕の倫理観からいうとやっぱりそれはまずいわけですよ。
ですから単に驚くというだけでなく、「そんなのはやはり許せない。これでは
誤判をした裁判官や裏金を作る所長と同じ穴のムジナになってしまう」という
納得がいかない思いが残った。

でもよく考えたらアンディが懲罰房に入れられているときに壁のポスターが
張り替えられましたよね?ってことは張り替えたモーガン・フリーマンの囚人仲間
はアンディの脱獄計画を知っていた、ってことか。

正直この映画は僕の感覚からいうとこれをベストワンという人の意見には賛成しがたい
のだな。
他の人の意見も聞いてみたいし、僕の意見も聞かせたくなる映画だった。



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ゼロの焦点


日時 2009年11月29日18:10〜
場所 新宿ピカデリー・スクリーン7
監督 犬童一心

(公式HPへ)


鵜原禎子(広末涼子)は結婚して7日後に以前の勤務地の金沢に出張にいった夫
(西島秀俊)が予定の日を過ぎても帰らないことを心配し、行方を捜すため
金沢に向かう。
その頃夫と同じ年頃の男の崖から海に飛び込んだ死体が発見されたが
顔がつぶれていて夫とは確認できない。
夫が金沢でお世話になった取引先の社長(鹿賀丈史)やその妻(中谷美紀)、
その会社の受付嬢(木村多江)に会うのだったが。

今年は松本清張生誕100年だそうでそれを記念してのリメイク。
はっきり言って「なんだこりゃ?」という出来。
やたら大作にしてしまい失敗するケース。
中谷美紀が事件の時に行われている市長選に立候補している女性候補を応援
しているのだが、映画を観た時「こんなエピソード、原作や前の映画にあったっけ?」
と思ったのだが(野村芳太郎版は学生時代に見ている。と言ってもオールナイト
上映で半分寝た覚えがあるから観たと言ってはいけないのかも知れないが)
やっぱりこのエピソードは原作にはなかったらしい。

事件の真相は以前立川で警官をしていたことのある西島秀俊がそこで米軍相手の
パンパンと知り合いになる。彼女たちのことを助けたことのある西島は
なんと新しい会社の任地金沢で彼女たちと再会する。
それが木村多江や取引先の社長夫人の中谷美紀というわけ。
「女性市長誕生」というのは女性が体を売らざるを得なかった時代から女性市長
誕生という時代の過渡期に起きた悲劇、を強調するために挿入された感じ。。
「砂の器」と同じく過去を知る者と再会してために殺人にいたるというわけ。

でも本来は「ゼロの焦点」はプログラムピクチャ的な話だったのではないか?
それを無理やり話に贅肉をつけ、女性の地位向上がどうしたこうしたと妙に
話をふくらましてしまい、こっちは白けるばかりだ。
後半30分ぐらい使って事件の謎解きをして(とにかく「砂の器」じゃないんだから)
それも大したことない謎なのだ。

それに木村多江のたどたどしい英語を聞いただけで「あの英語はパンパンの使っていた
英語だ」というのは短絡過ぎないか??

また最後に鹿賀丈史が自殺するのもよく解らない。
妻の罪を背負って逮捕されるのだが、自殺してすべてを闇に葬ろうとしたのか?
鹿賀丈史の性格説明がそれ以前にないからただのショッキングなラストでしか
ないのだよ。

さらに問題なのは広末涼子。
もうヘタ。10代のころは笑顔だけで売れたし「鉄道員」のころはそれだけで充分だった。
でもねえ、今回は特にひどい。
宣伝でも「アカデミー賞女優三大競演」とか言ってるけど中谷美紀や木村多江は
それぞれ日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を取ってるからいいとして、広末は
アカデミー賞受賞の「おくりびと」でヒロインを演じた、というだけで「アカデミー賞」
の冠をつけるのはいかがなものか?
そんな定義でいいならアメリカにはアカデミー賞女優はゴマンといることになる。

とにかく「砂の器」風に大作化して行く映画を見ると「もうやめなさい」といいたくなる。
「砂の器」からはもうそろそろ卒業して欲しい。



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RISE UP ライズアップ


日時 2009年11月29日14:30〜
場所 渋谷ユーロスペース2
監督 中島良

(公式HPへ)



パラグライダーに熱中している高校生の航(ワタル・林遣都)はある日
着地地点若い女性が迷い込み、着地に失敗、パラグライダーを破ってしまう。
彼女・ルイ(山下リオ)は盲目で一年前に交通事故で失明したのだった。
パラグライダーの修理のため遊園地でバイトを始める航。
そこで航はルイと再会する。

スポーツ映画の大常連、林遣都の新作。
今度はパラグライダー。今年4月に撮影されたそうだから「風が強く吹いている」
のあとの撮影のようだ。

で今回は盲目の少女が登場する。
実は航は一年前にバイクで転倒事故をしたことがあり、そのときに自分をよけた
車が少女をひき逃げしたのを目撃していた。その少女がルイだったのだ。
つまりルイの失明は間接的に自分に非があったからということになる。
でもこの展開は出来すぎのご都合主義だと思うよ。

出会って再会する偶然は許そう。
しかし事故にも関わっていたというのは偶然が過ぎるよ。
で、盲目の彼女は失明がまだ受け入れられずに始終いらついた設定。
イライラして彼女が昔使っていたカメラをルイは壊してしまい、
それが航が直してあげて盲目ながら心の眼ですばらしい写真を撮っていき、
彼女は前向きになるという展開。

失明した人においそれと助言できないし、こういうイージーな展開で本当に
盲目の人々は納得してくれるのだろうか?
これが「AIKI」とかは実話がベースだから説得力があるし、こっちまで勇気を
もらうような映画だった。

その中でよかった所は、ルイの失明の原因は自分にあると知った航が苦悩
しているときに、パラグライダーのインストラクターが
「すべて忘れてしまえ。彼女にも近づくな。それで楽になる。でもお前は根っこから
腐る」というセリフ。
ここはかっこよかったですね。

林遣都も髪の毛を少しロングにし少し大人っぽくなった感じ。
まだまだ今後が楽しみな役者だ。



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棚の隅


日時 2009年11月29日
場所 レンタルDVD
監督 門井肇
製作 2006年(平成18年)

商店街でおもちゃ屋を営む宮田(大杉漣)。
しかし今は店の経営も困難で転職を考えている日々だ。
そんな時、一人の女性が店にやってくる。「この地域が担当に
なったの。道でばったり会うのがいやだから挨拶しておこうと思って」
彼女は8年前に宮田のもとから去っていった元妻だった。
今の宮田には新しい妻もいて、先妻との子供と一緒に暮らしている。
別れた妻には今の職場である保険会社の上司の恋人もいた。


「休暇」の門井肇監督の第1作。
聞くところによると制作費は500万円だったという。
80分の映画だがそれにしても500万円は安い。
いったい大杉漣のギャラはいくらだったんだ??

別れた妻との再会、行き詰った店をたたんでの再出発など地味な話。
しかし驚いたことに「休暇」との共通点も多い。

1、主人公はちょっと行き詰っていて新生活を目指している。
2、家族旅行、家族での行楽で家族の抱えている問題を解決しようとする。
3、8歳の子供が登場する。
4、再婚、子供との関係が話の中心

というように共通のテーマが多いのだ。
これに死刑という要素を加えて再構築しようとしたのが「休暇」ともいえるかも
知れない。
また役者も大杉漣をはじめ、保険会社の同僚の女性(「休暇」では西島の妹役)
など共通の役者も多い。

門井監督の「休暇」の原点を見た気がした。
これ1本ならそれほど評価しないが、この映画を撮ることによって「休暇」
という名作のジャンプ台になったのではないか?

落ち着いたカメラアングルでその点も安心してみることができた。



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ニュー・シネマ・パラダイス


日時 2009年11月28日
場所 DVD
監督 ジュゼッペ・トルナトーレ
製作 1989年(平成元年)

(詳しくはムービーウォーカー・データベースで)



映画監督のサルヴァトーレは夜遅く帰宅すると母親からアルフレード
という方が亡くなったと伝言があったことを知らされる。
サルヴァトーレは子供のころ、トトと呼ばれ村の映画館に入り浸り映写技師の
アルフレードに怒られつつも映写室に侵入していた。
やがてパラダイス座は火事になりアルフレードは火傷で失明してしまう。
今度はトトが映写技師に。
やがてトトも青年になり、村にやってきた銀行家の美しい娘と恋に
陥る。二人は愛し合ってたが、トトは兵役に。
しかしトトが兵役から帰ってくると彼女はいなくなっていた。
アルフレードに「おまえはこんな村にいるべきじゃない」と言われ
ローマに出ることに。
故郷に帰ったサルヴァトーレはアルフレードの葬式に出て、パラダイス座
が間もなく取り壊されることを知る。
アルフレードの形見を受け取ったサルヴァトーレ。それはフィルムだった。
サルヴァトーレはそれを試写室で上映してみるのだった。

名作の評判高いこの映画。(完全版ではなく123分のヴァージョンを観た)
なんとなく避けていたのだが、ちょっと観る必要があってDVDを購入していたのを
引っ張り出して拝見。
(完全版を買ったと思っていたら劇場初公開版を買っていた。買った時によく考えた
記憶があるから、考えた末に時間の短いほうにしたのだろう。長い映画は苦手なので)

う〜ん、「ラストシーン」や「オリヲン座からの招待状」を観たときに思ったが、
こういう「映画ばんざい!」みたいな映画は苦手なんです。
自画自賛されてもねえ。

観客が詰めかけすぎて入れなかった人たちにアルフレードがガラスを反射させて
外の壁に映画を映すことをするが、そこまで明るく映るもんだろうか?
それと左右反転してしまうのでは??
それとあそこまで客が詰め掛けた映画ってなんだったんだろう?
日本では未公開の映画だったんだろうか?
(たとえば日本の「君の名は」みたいな)
そんなどうでもいいことばかりが気になった。

ラストのフィルムが昔教会の司教にカットするように言われたキスシーンを
集めたものというのは聞いていたので、(これだけ有名な映画だから聞こえて
くるわけです)驚きはなかったな(当たり前か)

でもこういう「映画万歳!」みたいな映画が映画ファンは好きなんだなあ。
自分の子供のころの映画館の記憶とダブるからだろうか?
その気持ちはわかるのだが、「昔は良かった」式の考え方はしたくないたちなので
この映画もそれほど好きにはなれなかったというのが正直な所。



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ブラック会社に勤めているんだが、もう俺は限界かも知れない


日時 2009年11月27日22:00〜
場所 新宿バルト9・シアター7
監督 佐藤祐一

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高校時代のイジメがきっかけで不登校になり引きこもりを8年間してしまい
ニートになった青年(小池徹平)。母親の交通事故死をきっかけに得意だった
パソコンに知識を活用してプログラマーになる。
しかし折からの不況でどこも不採用。
やっと採用してくれたシステム会社はブラック会社だった!


ブラック会社とは残業、徹夜は当たり前、経費は落ちない、社員におかしなやつが
いるなどなど、どこか異常な会社のこと。
主人公は社長のメールの変換ミスから「真男」が「マ男」になってしまい
マ男とあだ名がついてしまう。
リーダーはとかく横暴で怒鳴りまくり、リーダーの腰ぎんちゃくやら、情緒不安定
な社員もいる中、藤田さん(田辺誠一)は唯一まともで頼りになる。
そして入ってきた後輩として入ってきた社員は高学歴を鼻にかけ先輩を馬鹿にしまくった
いやな奴。

こういう会社なら辞めてしまう気にもなるのだが、根がまじめで他に仕事のあても
ないマ男くんは頑張る。
しかし藤田さんが辞めると聞いて心のよりどころがなくなってしまう。

私自身の話をすると前に勤めていた会社がこの映画のようなブラック会社だった。
業績は良かったから今から考えると給料は良かったと思う。
けど人間関係は最悪だった。
(一時期顔にチックがでた)
私も若かったし、主人公と同じくらいの年頃だったから頼りにしていた先輩が
辞めると聞いた時、ものすごくショックを受けた思い出がある。
だから主人公の姿は若き日の自分を思い出させた。

しかし私もオジサンになったため、それは思い出を想起させるだけで、今の自分には
直接響くものはなかった。
劇場ではたまたま主人公と同世代のヤングサラリーマンが友人たちと連れだって
見に来ていた。
多分主人公と同世代の人々には心に来るものがあったと思う。

結局主人公は力を取り戻し会社で働き続ける。

映画としてはもともと2ちゃんねるのスレッドが原作になっているそうで
(「電車男」とおなじパターンだわな)画面に書き込みの文字がでたり、
マ男のイメージでデスマ(死の行進)とか戦場が出てきたりするのが、表現方法として
(私は)気に入らないが、これが21世紀の映像表現なのか。

また最後、マ男の父親が入院したりして藤田さんも辞めることになりついにマ男が
切れて会社を飛び出した後、急にみんなが力を合わせて仕事をするようになる展開が
ちょっと都合良すぎ。

でも映画館を出るときは主人公のやる気と一途さに感化され、「俺もまた仕事がんばろう」
と思ったのも事実。
若いころの自分を思い出させる映画だった。



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僕の初恋をキミに捧ぐ


日時 2009年11月26日20:50〜
場所 新宿ピカデリー・スクリーン10
監督 新城穀彦

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小さいころから心臓病を患っていた巧(岡田将生)は病院で入院しているときに
医者の娘の繭(井上真央)と知りあう。
二人は子供心に初恋をし、巧は繭に「大きくなったら結婚しよう」と約束する。
しかし巧は20歳までは生きられない。
高校受験の時に繭との別れを決意した巧は繭とは違う高校に行くことにする。
だが高校の入学式で繭と再会する。
巧と離れたくない繭は必死に勉強して同じ高校に入学したのだった。


「僕は妹に恋をする」の原作者・青山琴美のコミックの映画化。
青山琴美のコミックは性描写が結構ストレートなのか、この映画も幼い巧と繭が
お医者さんごっこをしているシーンから始まり、なんとまあ繭が巧に「ズボンを
脱いでください。パンツも脱いでください」というシーンから始まる。

あと巧が高校生になってから医者(仲村トオル)に「俺の運動制限ってどのくらい
ですか?セックスとかは?」と聞く。
いやー岡田将生の口から「セックス」とか言われてこっちがどきどきした。

でお話の方だが、入学式で新入生代表になった繭が壇上から「あなたと一緒に
いたくて必死に勉強したんだから!」と告白する。
正直言ってひいた。。。
コミックだと違和感がないかも知れないが、実写でやるとものすごい違和感が
あった。
あと繭を好きな男の子もなんだがやりすぎで違和感ありありなのだが
こういうことを色々言うのは野暮なことなのだろう。

その男の子が唐突に交通事故にあったりして心臓の提供をするしないの
話になって結局巧は死ぬ。
(死んだとき母親の「丈夫な体に産んであげなくてごめんね」の言葉が心に
残った)
そしてエンドクレジットには平井謙のラブソングが流れる。
そのやりすぎ感には批判もあるだろうが、僕としては岡田将生の美青年
ぶりを堪能できた。
(さすがに中学生、高校生役はきつい感じがしたが)
見ている間は楽しめた。



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風が強く吹いている


日時 2009年11月22日16:50〜
場所 新宿ピカデリー・スクリーン9
監督 大森寿美男


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寛政大学に入学した天才走者カケル(林遣都)はハイジ(小出恵介)という大学
の先輩に寮に入ることを勧められる。
実はこの寮は寛政大学の陸上部の寮だったのだ。
ハイジはこの寮のメンバー10人で箱根駅伝を目指そうという。
箱根駅伝は関東の各大学の陸上部で優秀な者だけが出場できる難関駅伝だ。
はたして試合経験もないような他のメンバーで戦えるのか?!
彼らの駅伝に向けた戦いが始まる!

面白いと評判は聞いていたが期待以上だった。
これはもう「七人の侍」「大脱走」と同じく個性あるメンバーが集まって
一つのミッションに向かっていく映画の王道のドラマだ。

天才肌のカケルが他のメンバーを下に見ながらやがて彼らを仲間として
認知していく姿、マンガオタク(中村優介)が仲間とのスポーツに目覚めていく
などなど登場人物が成長していく姿は観客の心をつかむ。
(「湾岸ミッドナイト」で走り屋の高校生を演じた中村優介がこういった役
を演じるのが面白い)

また特に林遣都の走る姿がかっこいい。
ホントにスポーツ万能なんだろうか?
一度聞いてみたい。

ラストの駅伝は「DIVE!」のように一瞬で終わる競技ではないので、映画としても
描きやすい。
もっとも観終わったときに原作を読んでいるらしい他の観客が「あのシーンが
なかったので残念」という声が聞こえたから、原作をかなり切っているのだろう。
それにしても10人のメンバーのキャラクターを描き切ったとはいかないまでも
かなり描いたと思う。

ラスト、ハイジはけがが悪化し、ゴール直前で倒れてしまう。
そしてスローモーション映像になってゴールに到達するあたりはちょっと
演出過剰な気がしないでもないが、全体としてさわやかな映画だった。

今年のベスト5には入れていい。



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笑う警官


日時 2009年11月21日16:30〜
場所 ユナイテッドシネマとしまえん・スクリーン1
監督 角川春樹


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北海道警察は今捜査費の裏金化が問題になっており、百条委員会によって
証人喚問が行われようとしていた。
そんな時札幌市内で殺人事件が起こる。
所轄刑事が現場に到着し、被害者が婦人警官と解った時、県警本部が
現場を取り上げてしまう。
あまりに早く本部が登場したことに疑問を抱いた所轄の刑事たちは
自分たちで独自の捜査を開始する。
そして警官が犯人とされ射殺命令まで出た!


角川春樹12年ぶりの監督作。
今日、「沈まぬ太陽」と連続で見たのだが、こちらも大人が楽しめる
エンタテーメントだ。
現場からテレビ無くなっているらしいことから、空き巣、そして質屋と
当たっていくうちに事件の夜に泥棒に入った男に辿り着く。
そしてその男を捕まえてみると、盗んだテレビ、DVDプレーヤーから
ある男女のSMプレイが映ったDVDが見つかる。
実は被害者の婦人警官とその上司の生活安全部長は愛人関係でしかも
SMプレイを楽しむ中で、それを盗撮されたのだ。
では誰が盗撮し、誰が婦人警官を殺したのか?
それにしても事件が順調に解決しすぎやしないか?
そんな疑問が登場人物たちの中に湧き上がる。
そして事件の陰に潜むある警察幹部(鹿賀丈史)が浮かび上がる。

後半主人公の警官(大森南朋)が実は鹿賀丈史の指示のもとに
事件を暴くことに協力していた事実が浮かび上がる。
このあたりの展開が台詞だけの説明ではちょっと複雑なので細かいことが
わかりにくいが、まあ大体のことはわかった。
ラスト、蛍雪次朗の刑事が高笑いするところがあるのだが、彼はこの事件後
どの程度の出世をしたのかちょっと気になった。

大森南朋や宮迫博司が事件を引っ張っていく警官役だが、どちらもあまり好きな
役者ではないので、(私としては)その辺が今一つ。
また大森南朋の刑事がジャズが好きでサックスを演奏するシーンがあるのだが
なんだか同じ角川監督の「キャバレー」(86)を思い出した。

細かい点では不満はあるものの、オヤジが主役の大人も楽しめる映画であり
映画を見ている間は充分楽しめた。



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沈まぬ太陽


日時 2009年11月21日12:45〜
場所 ユナイテッドシネマとしまえん・スクリーン7
監督 若松節朗

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日本を代表する航空会社・国民航空は1985年の未曾有の墜落事故を
起こした。
恩地元(渡辺謙)はお客様係りに任命される。
彼は元組合委員長で懲罰人事によりアフリカなどの僻地勤務を9年間
行ってきた男。そして国民航空改革のため、首相の依頼で新任した会長の
もとで社内改革を行っていこうとするのだが。

山崎豊子原作の超大作。
最近なかった大人のドラマだ。
09年秋現在モデルとなった日航は経営破たんしてその政府救済が
話題になっているときにタイムリーすぎる公開。

日航のジャンボ墜落事件を中心にすえ、山崎豊子らしく事件の暗部を
描いていく。
正義の男恩地とかつては組合で同僚だったが、いつしか出世のためなら
どんなことでも引き受けるようになった行天(三浦友和)を軸に物語は
進んでいく。
正直三浦友和がいい。今更ながらいい役者になったと思う。

遺族会を分断させ補償問題を簡略化させようとしたり、ホテル買収
費用の一部を懐に入れてしまう役員(西村雅彦)がいたり、運輸省の
役人の愛人のマンションを提供したり、ブラックジャーナリストに
利益供与をしていく姿が次々と描かれていく。

大人が主役でまさに大人も楽しめる大ドラマ。
「不毛地帯」のモデル瀬島龍三らしき人物(品川徹)まで登場する豪華さ。
またジャンボ事故のシーンでは体育館に並べられたひつぎの数に圧倒される。

実は恩地がナイロビ時代に象のハンティングをする金持ちぶり(?)が
他のシーンにおける恩地のキャラクターと合わない感じしたが(恩地は
清貧なイメージがあったので)その辺は長大な原作を縮めたために
起こったことなのだろう。
監督の若松節朗はテレビ出身で若干不安があったが、こういう大作も
堂々と仕上げられる実力者と見直した。

最近大人も見れる映画が少ないと思っていたが大満足できる大作映画。
この映画がヒットしなかったらそれは映画の作り手のせいではなく、
もう観客の問題だろう。

なんとかヒットしてこういう大人も楽しめる大作映画を1年に1本ぐらい
作ってほしいものだ。



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母なる証明


日時 2009年11月12日19:40〜
場所 新宿バルト9・スクリーン5
監督 ポン・ジュノ

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韓国のある田舎町。トジュン(ウォンビン)は鍼灸師をしている母と二人暮らしだ。
母は知恵遅れのトジュンのことが常に心配でならない。
ある日、トジュンは町で起こった女子高生殺人事件の犯人として逮捕されていまう。
警察もずさんな捜査しかしないし、高額で雇った弁護士もやる気がない。
息子の無実を信じる母は犯人を探し求め始める。


ウォンビンの兵役復帰第1作。
実際は兵役に就いたものの数ヶ月でけがのため除隊したが、「兵役逃れ」の非難を
恐れたのか、除隊後も数年間映画出演はしていなくて数年ぶりの映画出演。
ポスターの顔がなんだか三宅健みたい。

ミステリーだからネタばれになるがこの作品についての感想を書くにはラストの
展開に触れずにはいられない。
(はっきり言ってラストの大展開になるまではちょっと長い)
結局女子高生が暗い中から「あとをつけないでよ」とばかりにトジュンに石が
投げられたのでその石をトジュンは投げ返し、それが当たって彼女は死んでしまったという
真相。
まずここで驚く。
映画の王道としてトジュンは犯人ではなく犯人は別にいるだろうと私は信じ切って
いたからだ。

これは実は浮浪者が現場にいたことがわかり、その浮浪者のバラックを訪ねると
浮浪者はトジュンが殺したのを見たと話してしまう。
母は自分がトジュンの母だとは言っておらず、それを知った母は警察にでも行かれたら
大変と殺してしまう!
いや〜自分の息子が大事とは言え、他人を殺してまで守るのはどうよ??
そしてさらにその浮浪者のバラックに火をつけて燃やしてしまう!
モラル的に問題だよ。

ここまで2回驚いた。
3回目が一番驚いたのだが、別の男が真犯人として逮捕される。
理由は被害者の血が衣服についていたからだが、その男は彼女の鼻血がついただけと
主張する。しかも観客は被害者の少女が鼻血を出しやすい体質だったとはそれまでに
説明されている。
トジュンは釈放され、友人たちが迎えに来てくれた車から帰り道のその浮浪者の家が
燃えたことを知る。
そうするとトジュンは車を止めさせ、焼け跡をなにやら探し出す。

母は商店街の慰安旅行に出かけようと言う時に、「母さん落としちゃ駄目だよ」と
母が浮浪者の家で取り出した針灸の針道具を渡す!
なんと母は証拠を落としていたのだ!
トジュンはどこまでわかっているのか?
ここで椅子を座りなおすぐらい驚いた。

そもそも被害者の少女の携帯を手に入れ、そのデータに残っていた写真をトジュンに見せ、
その中にあった写真の一人である浮浪者を見て母は浮浪者にたどり着いたのだ。
ということは浮浪者の家が燃えたと知った時点でトジュンは母が燃やした可能性が
あると気づいたのだろか??
母は「いやなことを忘れるツボがある」と時々言っていたのだが、そのツボに自ら
針を刺す。

ということはだな、この母親、全部なかったことにしようというつもりか!
自分の息子さえよければよいというモラルのかけらもない人になる。
そこまでして息子を守るのが母というもの、という監督の主張を感じるけど、日本人は
そうはならない気がする。
韓国人て自分さえよければいいという考えなのか?という民族誤解につながりかねない
危うい映画。

それと被害者の女子高校生は援助交際を行っていたのだが、その人たちを携帯カメラ
で撮っていたから携帯の写真の中にいるのが犯人とめぼしをつけられるのだが、
浮浪者がなぜ写っていたかが不明。
浮浪者も彼女を買ったのかね??
そういうシナリオのアラも気になった。




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