2010年2月

パレード 花と怒涛 交渉人 THE MOVIE 世界終末の序曲
不思議めがね 俺の血が騒ぐ その護送車を狙え! 拳銃無頼帖 電光石火の男
大草原の渡り鳥 ギターを持った渡り鳥 ゴールデンスランバー 野獣の青春

パレード


日時 2010年2月28日19:15〜
場所 新宿バルト9・シアター5
監督 行定勲

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大学生の良介(小出恵介)、サラリーマンの直輝(藤原竜也)、
イラストレーターの未来(香里奈)人気俳優と付き合っている琴美
(貫地谷しほり)は2LDKの部屋に共同生活をしていた。
なんとなく調和の取れていた4人だったが、香里奈が新宿2丁目で飲んだ
くれていた時、サトル(林遣都)を拾ってきてそのまま新しいメンバー
になってしまう。
サトルの出現により4人の生活の何かが動き始める。


行定勲の新作。
まああまり好きな監督でもないのだが、林遣都の出演作はとりあえず見る
方針なので、今回も見てみた。しかも若手俳優の共演でその辺も面白そう。

しかし見始めて30分でいやになってしまった。
このだらだら感はどうだろう。
見ているうちに「きょうのできごと」という同じようなだらだらと
筋もなく時間が進展するだけの映画を思い出した。
あれと同じようなテイストだ。

正直、サトルのような公園で男に買われる男娼というのは今は存在
しないと思うが、藤原竜也が洋画の配給会社勤務の設定も
その業界の人がみたらちょっと違うと思うのだろう。
だからこの際そこは眼をつぶる。

映画はチャプターに別れていて、4人の住人に一人一人が主人公に
なって話がそれぞれ進められていく。その際に各キャラクターの
名前と年齢、職業が表示され、それで香里奈がイラストレーターとか
藤原竜也が映画会社に勤めていると解った次第。
だからそれぞれのチャプターで字幕が表示されないと実にわかりにくい。
その辺、最初に全員の説明をしたほうがよかったのでは?それとも原作
自体がそうなのかな。

映画は彼らのマンションの近辺で女性を襲う連続殺人事件が発生している
という伏線がある。
先週見た「不思議めがね」とそんな伏線があり、そちらでは犯人は捕まらない
ので、こっちも期待しないでいたら、ラストに犯人が明かされる。
藤原竜也が夜のジョギングの途中で通り魔的犯行を繰り返していたのだ。
その現場をサトルに見つかってしまう。
しかしサトルは驚かない。藤原竜也は「みんなになんて言うんだ」と狼狽する。
「みんな知っているんじゃないの?」と言い放つ。
2人が部屋に帰ると何事もなかったかのように「今度みんなで伊豆高原に行こう」
と話し、最後に小出恵介が「直輝さんも行くでしょ?」と言うのだが、
その言い方が実は知っているというようにも思え、どきりとさせる。

また香里奈も裏ビデオのレイプシーンを編集したものをみて逆に「心が癒される」
という屈折した心理の持ち主。
(実はいまどきビデオテープか?と思った。原作が書かれた2002年当時は
ビデオテープが主流だったが、今はDVDだろう)
その辺も人間の裏表、というか知られざる側面が出てくる。

テーマとしては「お互いを知っているようでよく知らない。それが現代の
人間関係の希薄さ」みたいなことらしいのだが、そんなこと年中言われているので
いまさら2時間の映画にすることもないだろう。
私が子供の頃の昭和40年ぐらいにはすでにそういわれていた。
案外、もっと前から「現代は人間関係が希薄」と言われていたのかも知れない。
だから別に改まって映画にするテーマでもなかろう、と思ってしまう。
そのぐらい解ってくれよ、行定勲。

映画自体はラストがショッキングなので、その分後半楽しめたが、全体としては
テーマが子供っぽい感じが否めない。

それにしても林遣都、今回は男娼というきわどい役。
しかもイラストレーターの香里奈にせがまれて全裸になって股間を写生(射精じゃないよ)
させると言うシーンもあり。
その上、留守の他人(女の子)のアパートに勝手に入ってその女の子のフォトスタンド
にあった普通の記念写真を見ながらオナニーするというまたまたショッキングなシーン有。
10代のファンの女の子がみたらびっくりではないか。
単なるさわやかなスポーツ少年からの脱皮を図ろうとして、彼の作品暦の中でも
記憶に残る映画になろう。




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花と怒涛


日時 2010年2月27日
場所 ザ・グリソムギャング
監督 鈴木清順
製作 昭和39年(1964年)

(詳しくはムービーウォーカー・データベースで)


頃は大正、尾形菊治(小林旭)は信州で親分が借金のかたに嫁にしようとした美しい
女性おしげ(松原智恵子)と駆け落ちし、今は浅草の工事現場で働く身。
一人足だったが、男っぷりを見込まれて村田組の幹部に。
その頃、電力会社のあたらしい大きな工事の仕事を請け負った村田組だったが、
井沢組がそれをよく思わない。
村田と井沢の争いが始まる。
しかしその頃尾形をやおしげをつけ狙う若い不気味な男・健二(川地民夫)がいた。


鈴木清順と小林旭の任侠もの。
任侠ものというとどうしても東映のイメージが強いが、日活でも作られている。
でも日活はどうしても現代もののアクションの方が僕の好みで、任侠ものは
あんまり好きじゃないのだなあ。東映みたいで「日活らしさ」を感じない。
でも任侠ものって日活と東映とどっちが早かったのだろう。
こんどちゃんと調べてみないと。

オープニング、おしげが親分と結婚式に連れて行かれるところを小林旭が
襲うシーンは、夕焼けをバックにして実に美しい。
あれだけ美しい夕焼けを使った映画を観たのは久しぶりな気がする。

で本筋に入っていくのだが、展開は遅いし、キャラクターの魅力も少なく
イマイチ面白くないのだな。
その中でも異彩を放つのが、帽子にマント姿でほとんどセリフはなく、女郎屋
のおねえさんに声をかけられても仕込み杖でついて無視するストイックな感じの
川地民夫。
意外に川地民夫は小柄な美青年でこういう役も実に迫力がある。
この後のトークイベントでも好青年から殺し屋までその役柄の広さが話題に
なったが、もともとが美形なだけに殺し屋になったときのすごみはなかなかのもの。

映画はこの後、村田組と井沢組の喧嘩があったり、小林旭を慕う芸者・万竜(久保菜穂子)
が出てきたりするが、清順らしい(と言うべきか)ぶっとんだ画はなく、淡々と進む。
結局村田組と井沢組は手打ちをして邪魔になった尾形は狙われ、顔役(滝沢修)の
口利きで満州へ逃れることへ。
上野で刑事(玉川伊佐男)をまいた後、電車に乗っているカットのあと割と唐突に
新潟に着く。
新潟と言ってもただの雪の山がいくつか作られているだけのちょっと不思議な感じ。
川地民夫と対決になるが大した見せ場はなく、あっさり終わり。
ここでおしげが「あなたの子供がおなかにいる。子供に父親が刑務所に言っている
と言わせないで」との言葉に刑事はほだされて逃がしてやるというところで終わり。


そうじて清順らしさも少なく、ありふれた任侠もの、という印象しか残らなかった。



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交渉人 THE MOVIE


日時 2010年2月26日21:25〜
場所 新宿バルト9・シアター1
監督 松田秀知

(公式HPへ)


蒲田で現金輸送車を襲う事件があり、犯人は逃走中にショッピングセンターに
立てこもる。宇佐木(米倉涼子)たちが交渉を開始するが、結局強行突入。
犯人は主犯格の男(津川雅彦)は逮捕されたが、共犯の若い30代の男
(反町隆史)は強行突入のどさくさにまぎれ逃亡。
事件のビデオを見ながら宇佐木は人質だった青年・木元(林遣都)のことが
気になっていた。
1週間後、宇佐木は私用で北海道へ。飛行機に乗るとき羽田で木元が偽名で
北九州行きの飛行機に乗るのを見かけ、気になってその飛行機に同乗してしまう。
やがて木元やその兄は拳銃でハイジャックをする!
要求は立てこもり事件の主犯の男の即時釈放だった!


テレビ朝日の人気番組「交渉人」の映画化。
テレビシリーズの方は全く見ていなかったが、ハイジャックもののサスペンス映画
なので見る。
正直言って予想以上の面白さだった。

テレビシリーズを観ていないので細かい人間関係やキャラクターの性格などが
よくわからない。
脇のメンバーの細かい言動などが、テレビからのファンにはきっと面白い小ネタ
が満載なのだろう。

事件の展開が早く、とにかく飽きさせない。
津川雅彦は橋爪功の大臣の一声で釈放が決定。釈放され、警察署からでた
瞬間に狙撃されるという驚く展開!
ハイジャック犯の真の目的とは?という最近のサスペンス映画の王道のストーリーだ。
(そういえば昔の「新幹線大爆破」とか「東京湾炎上」とかは犯人の要求はそのままで
真の目的は?という手の込んだ仕掛けはなかったなあ)

そして飛行機に乗っている米倉涼子や筧利夫らの活躍で犯人を制圧、だが犯人は
飛行機に時限爆弾を仕掛けて一人脱出。
このあとが爆弾解体とか、飛行機から落っこちそうになる米倉涼子とかサスペンス
映画のお決まりの展開でいい。楽しい!
機長の犯人に撃たれ重症を負ったために米倉涼子が着陸させるのはやややりすぎ。
ちょっと白ける。

あとテレビシリーズを観ていた人には納得出来るのかも知れないが、米倉涼子が
心臓病の設定もいらない。
木元(林遣都)がカリスマの津川雅彦会ってないのに共鳴してハイジャック犯にまで
なるのは無理がある。しかも立てこもり事件から1週間後の設定だし時間も短い。
あと脇役が見せ場を持ちすぎ。(テレビからのファンがいるんだろう)
陣内孝則は芝居がクサい、というかくどい。

細かい点は文句も言いたくなるが総じて面白い。
こういうのもオリジナル映画作品で作ってくれたらもっといいのだがなあ。



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世界終末の序曲


日時 2010年2月25日
場所 DVD
監督 バート・I・ゴードン
製作 1957年(昭和32年)
日本未公開

(詳しくはインターネット・ムービー・データベースで)


シカゴから数百キロのアメリカ中部の田舎町、ここで住民150人が
一夜にしていなくなる怪事件が起こった。
州兵は現場の町を封鎖するが、たまたま近くを通りかかった通信社の
女性記者が取材を始める。
放射能の影響で住民が死んだのではないかと考えた彼女は、放射能を
使っている近くの農業試験場に向かう。
その所長・エド(ピーター・グレイブス)はこの試験場の放射能が
もれることはないと断言する。
その試験場は植物の巨大化を実験していて、その試験場のトマトは
スイカほどの大きさがあった。
女性記者は3ヶ月前にも穀物倉庫が壊される事件があったと聞き、
エドと共にその現場に向かう。なんとそこには巨大なイナゴがいた!
放射能を使って巨大化した植物を食べ、その影響で巨大化したのだ!


ピーター・グレイブスが「スパイ大作戦」以前に主演したB級怪獣映画。
主演が知っているスターだと(この頃はまだスターじゃないけど)映画の
格が違って見える。

お話はこの後、州兵が出動してイナゴを機関銃などで応戦するが、勝ち目がない。
「戦車を使えば何とかなるさ」と将軍は楽観しするが、エドは気が気でない。
ワシントンに直訴しているうちにイナゴのいる森の総攻撃をするが、
失敗だったと連絡が入る。

この映画の惜しいところはそういう見せ場になるシーンをことごとくセリフで
説明しているのだな。
低予算に事情は推察しますが、この辺の見せ場がカットされるのは残念。
そして途中でちょっと攻防戦があるが、割とあっさりとシカゴに到着していまう。
逃げ惑う市民にシーンがちょっとあって、ただし事態を全く飲み込んでいない
女性が風呂上りで髪の毛を拭いているビルの一室の窓に巨大イナゴが出現
するカットはノー天気さについ口元がほころんでしまう。

このシカゴをイナゴが襲うシーンだが、シカゴの写真を板に貼り付けて
それの前でイナゴが歩いているだけらしい。
だからミニチュアではないのだな。
そう聞いていたからそう見えたけど、知らずに見たら割と気づかなかったかも
知れない。

話の方はイナゴを湖に追いやりることになり、その方法としてイナゴが
ひきつけられる音を探し出し、その音を発してイナゴを集めようと言うもの。
うーん、新兵器ではなく、「ありもの」で解決するところがスケールが小さい気も
するが、それも小品的でいいとも言える。

低予算で見所も特にない映画だが、ピーター・グレイブスというスターの
おかげで、74分の時間は楽しめました。



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不思議めがね


日時 2010年2月21日15:00〜
場所 ザ・グリソムギャング
監督 三村渉
製作 平成14年(2002年)

小学生のユウキは入院中のおばあちゃん(三條美紀)から
人の命の寿命がわかる不思議めがねを見せてもらう。
おばあちゃんの話ではそのめがねを通して人を見ると、人の周りに
青い炎のようなものが見えるという。
その炎が見えなくなったら死期が近く、死の直前になるとその青い炎は
いつも以上の輝きをするのだという。
同じ病院に喘息で入院しているヒカルや女の子とも知り合い、
ユウキの周りでは不思議なことが起っていく。


ゴジラシリーズの脚本家・三村渉の初監督作品。
と言っても自費の500万円ぐらいで作った映画だそうで、事実上
自主映画と言ってもいい規模の映画だ。

映画はこの後小学生の児童の連続殺人事件が起こっていたり、ユウキの
母親(三原じゅん子)が健康食品のマルチ商法にはまっていて離婚した
夫の母親に売りつけたり、ユウキの保健室の先生と校長先生がSMの
関係があったりの話が続く。

ただし映画全体としては話を引っ張っていく縦糸がないので、退屈。
またヒカルと女の子がユウキの首をヒモで縛る遊びをしたり、生と死
の境は「青い世界」という話が挿入されたりで、なんだか妙に「死」が
ちかい。
むしろ死を賛美しているかのような印象を受け、それがどうにも引っかかった。

しかし上映後の三村監督のトークイベントで「死は甘美なもの、という気がする」
という話があり、そう聞くとなんとなく監督の意図がわかった。
三村監督にはこの映画をあまり観客を楽しませるために作ったつもりはなく、
自分のやってみたいことをやってみた、実験映画の要素もあると言うことだった。
そういわれるとこの映画の落とし所の悪さ(連続殺人の犯人はさっぱり
明確にならないし、マルチ商法もその後何かが起こるわけではない)も納得できる。
ご自身としては「シナリオの段階では90点ぐらいの自分としては非常に
満足の言ってる作品」だそう。

あとはユウキのマンションにユウキの母親に「うちの夫と浮気している」と
怒鳴り込んできて、間違いだとわかると苦し紛れに「憶えてらっしゃい!」
と怒鳴るおばさんとか、顔面紙芝居を演じる大道芸人など印象に残るキャラクター
が出てくるが、やはり全体としてのまとまりはない。

最もさっき書いたように「最後に話がまとまっていく予定調和のある話」
は作りたくなかったと監督も言っていたので、わざとそれをしなかったわけだから
それを期待してはいけないでしょう。

なかなか見られない映画なので(地方の映画祭で上映しただけで都内での一般劇場
公開はこのグリソムギャングが初めてだそうだ)その分は得したが、映画そのものは
あまり面白くなかったのが本音だ。



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俺の血が騒ぐ


日時 2010年2月14日
場所 TSUTAYAレンタルDVD
監督 山崎徳次郎
製作 昭和36年(1961年)

(詳しくはムービーウォーカー・データベースで)


笠原邦夫(赤木圭一郎)は3年前に船長だった父が殺されてから
船乗りになり、復讐に燃えていた。今日も航海から日本に帰ったが、父を
殺したのと同じ38口径の拳銃を外国で手に入れていた。
恋人(笹森礼子)の父(小沢栄太郎)は船医としてかつては父と同じ船に
乗っていた。邦夫と同じく船乗りを目指す明(沢本忠雄)は商船大学の学生で、
まもなく卒業航海に出ようとしている。
そんな頃、ある酒場で喧嘩になり健次と男(葉山良二)と知り合う。


赤木圭一郎の主演作。この映画のあとが「紅の拳銃」になる。
普通、宍戸錠がやっていたような「敵だが時に味方する」という役を葉山良二
が演じ、なにやら怪しげな外国人(いつもなら藤村有弘)マイク・ダニーなる
よく知らない外国人が演じる。
このあたりのキャストの癖のなさがそのまま印象の薄さにつながっている気が
してならない。

そして完全にミスキャストなのが小沢栄太郎。
実はこの小沢栄太郎が赤木の父を殺した犯人なのだが、もう小沢が演じているから
いかにもなのだよ。
これが普段はいいひと、な感じの信欣三あたりが演じていたら意外性もあったが
小沢栄太郎では「ああやっぱり」にしかならない。
この辺が実に惜しい。

あとは葉山良二と知り合ったあたりで南田洋子のバーで、葉山がお盆をたたいて
ドラの音の模して船の出港を幻想で再現する珍妙なシーンには戸惑った。
なんかすごく違和感ありありで。

で日活アクションらしく、ギャンブルのシーンあり。
今回はテーブルで花札をやっており、いかさまで札を天井に貼り付けたのを
赤木が見破り、拳銃で札を打ち落とすというオチがつく。
(赤木はただの船員なのに拳銃がとてもうまいのだよ)

実はこの映画、沢本忠雄が航海中に浮遊している貨物船に遭遇、他の学生たちと
その船に乗り込むのだが、船には誰もおらず、ブリッジには二人の男が死体がある、
他の部屋を捜索してブリッジに戻ってみるとその死体はなくなっていた、という
ミステリアスなシーンから始まるのだが、これがどうなるのかと思っていたら
実は後半に赤木たちが安倍徹、葉山良二の悪い奴と密輸に出かけてラストで
射ち合いになって終わるのだが、これが沢本忠雄が航海に出ていた船と遭遇する
というわけ。
普段日活映画では時系列どおりに話が進むことが多いので、この時間軸を変更した
話法はちょっと驚いた。

まああと「親父を殺した奴は38口径の銃で黄金の弾を拳銃の名手」とさんざん
前半であおっておきながらただの船医の小沢栄太郎とは何だよ?と突っ込みたく
もなった。
その辺のシナリオの細部のツメが甘いのが惜しい。



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その護送車を狙え!


日時 2010年2月8日
場所 米国版DVD
監督 鈴木清順
製作 昭和35年(1960年)

(詳しくはムービーウォーカー・データベースで)


深夜の田舎道を3人の容疑者の乗せた護送車が走る。
何者かによって護送車は止められ、容疑者のうち二人が射殺される。
護送責任者だった刑務官(水島道太郎)は6ヶ月の停職に。
責任感に燃える彼は自分で犯人を探し出そうと活躍を始める!

鈴木清順監督の娯楽アクション映画。まだ初期の部類だろう。
この映画は米国版の日活アクション5本組みBOXに入っていたから
知らない映画だったが入手できた。
同じく全く知らない映画だった「拳銃残酷物語」が面白かったので
期待して見たが、ちょっと外された。

そもそも水島道太郎なんて当時の日活では添え物、B面作品の
主演だったから、あまり期待できないのだ。
「トップ屋事件帖」というSPのシリーズもので外された経験もある。
もちろん「トリより添え物の方が面白かった」ということも
あるから侮れないのだが。

深夜に護送車を襲う謎の男たち!という出だしは快調。
その後も殺された二人にはどうにも殺された理由が思い当たらず、
生き残った五郎(小沢昭一)というチンピラを追っていくと
熱海のお座敷ストリッパーを仕切っている興行会社にたどり着く。
この会社は番頭的に今仕切っているのが安倍徹、女だてらにこの会社
の社長代理をしているのが社長の娘の渡辺美佐子。

いろいろ調べていくと女たちをどこかに売り飛ばす算段をこの会社は
しているらしい。
しかし渡辺美佐子は「私は関係ない。安倍徹がアキバと呼ばれる
男と組んでうちの会社を使っているんだ!」といい始める。
果たして真相は?
ってな感じ。

安倍徹たちに水島道太郎や渡辺美佐子はつかまって御殿場の山道で
タンクローリー車に縛り付けて乗せられる。
そしてタンクのバルブを開いたまま(つまりガソリンを撒きながら)
坂道を下っていくタンクローリー。
安倍徹はこぼれているガソリンに火をつけその火は徐々に坂道を
下っていくタンクローリーに近づいていく!!
あわや!脱出なるか?
というあたりが助かることはわかっていながら、ハラハラするという
ヒッチコック映画にあるような展開でこのシーンは面白かった。

で、ラストは水島たちが安倍徹たちを追い詰めるんだけど、いよいよ
黒幕のアキバ登場!
その後姿とかばかりで顔をなかなか写さない。
最後の最後に登場したアキバの正体は?

ってラストを書いちゃうけど渡辺美佐子の父親。
じゃ何ためにアキバとかの変名使うんだよ。
もともとお座敷ストリップの興行なんかしていた会社だしなあ。
それよりもっと解らないのが何で護送車襲ったの?
途中でお座敷ストリッパーが弓で刺されて殺されたりするんだが
それはなぜ殺されたんだろう?
島田和男原作だからと期待したが、なんだか撮影しながらシナリオを
作ったようなつじつまの合わない話でした。
タンクローリーのあたりは面白かったけどね。



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拳銃無頼帖 電光石火の男


日時 2010年2月7日
場所 DVD
監督 野口博志
製作 昭和35年(1960年)

(詳しくはムービーウォーカー・データベースで)



四日市に一人の男が降りたった。名前は丈二(赤木圭一郎)。
海岸を歩いているとチンピラの貞夫(杉山俊夫)が五郎(宍戸錠)に
殺されかかっているのに出くわし、貞夫を助ける。
貞夫は大津組のチンピラだったが、大津組の親分(菅井一郎)は3年前に
ハイライト興業の丈二に撃たれて足を悪くしていた。
丈二はその刑期を終えて出所したのだ。
ヤクザから足を洗うつもりだった丈二だが、別れた恋人(浅丘ルリ子)に
会いにやってくる。
ところが刑事になった大津組の親分の息子・昇(二谷英明)と婚約していた。
この恋の行方は?
そして五郎と丈二の対決は?

この映画も学生時代に見ていたが印象が残っていない。
今回見直したが正直あまり面白くないのだよ。
暗黒街の対決もの、でもあるのだが、物語の比重は赤木と二谷英明と
浅丘ルリ子の三角関係について費やされており、その辺がアクションもの
として盛り上がらない理由。

また白木マリが今回はキャバレーの歌手として登場。
冒頭、四日市に向かう電車の中で白木マリと赤木は出会って、チンピラに
因縁をつけられるのを赤木が助けるのだが、この時に「あんた踊るのかい?」
と聞かれて「踊らないわ。歌うだけ」と答える。
だから今回は白木マリは踊らない。
この白木マリに宍戸錠は惚れていてこの四日市まで呼び寄せている。
白木マリの方は別れたがっているが、その二人の行方は?

ストーリーの方はそんな感じであまり盛り上がらないのだが、日活らしい
観光地めぐりが楽しめる。
今回は四日市というあまり名所のないところだが、御在所のロープウエイ
が登場。
ここで赤木と錠の拳銃対決が見られるのだが、赤木がタバコの箱を懐から
取り出し放り投げて拳銃で撃ってはじいて錠に渡す。
錠も同様にして赤木に返すなどお遊びも楽しい。

ラストの赤木対錠の対決でも「弾がなければ貸してやろうか?」
と錠が言ったり、その後、結局白木マリに錠が殺されてしまうなど
後の「紅の拳銃」の元ネタがあってこれも楽しめた。

またあまりに卑怯な手を使うハイライト興業の社長(嵯峨善兵)に嫌気が
さした部下の藤村有弘が二谷に逮捕される時に「私この商売いやになったよ」
と言って韓国語で何やらピアノを弾いた後に言うシーンは(今回あまり見せ場
がなかったが)藤村有弘の見せ場だった。

あと新人吉永小百合が浅丘ルリ子の喫茶店のウエイトレス役で登場。
杉山俊夫の恋人役とはもったいない。
この映画が日活初出演作だそうだ。

そういう細部には面白さがあるが、暗黒街の対決ものとしては、イマイチ
物足りなさが残った映画だった。



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大草原の渡り鳥


日時 2010年2月7日
場所 TSUTAYAレンタルDVD
監督 斉藤武市
製作 昭和35年(1960年)

(詳しくはムービーウォーカー・データベースで)


釧路に向かう山道を馬で行く滝伸次(小林旭)と信夫(江木俊夫・当時8歳)
は峠で酒を飲んで一休みする男・ハートの政(宍戸錠)と出会う。
滝たちは釧路に信夫の母親を訪ねてきたのだった。
しかし母親の和枝(南田洋子)は町のボス・高堂(金子信雄)の女になっていた。
高堂はアイヌ集落をつぶしてアミューズメントセンターを作ろうと計画中。
そのためにアイヌの人々を助ける清里(佐々木考丸)や順子(浅丘ルリ子)が
疎ましくてたまらない。
高堂は借金のかたにアイヌの土地を取り上げようとするのだが。


渡り鳥シリーズ第5作。
DVDジャケットに佐藤利明氏の解説があり、それによるとシリーズ最高傑作
だそうだ。

お話の方は見事にパターン。
悪い奴(金子信雄)がいて地上げをしようとしていて腕の立つやつ(宍戸錠など)
を雇うのだが、滝伸次によって追い出されるという具合。
今回は子役として後のフォーリーブスのメンバー江木俊夫が登場する。

アイヌ集落の人々の姿は完全に西部劇におけるインディアンの扮装。
しかも白木マリは今回はキャバレーのダンサーではなく、このアイヌ集落の
娘。今回は踊らないのかなと思っていたら、最後にこのアイヌの祭りが
あってこの祭りの中で踊る。やはりセオリーを外してはいけない。

佐々木考丸の息子が気弱で高堂に金を返しに行ったのに、どういうわけだか
かけポーカーをやらされる羽目になり、借金を返しに行ったのに増やしてしまう
というアホ。
そこへアキラがやってきて「俺と勝負だ」とポーカーで勝負。
錠が勝つのだが、インチキを見破り、コイントスで決めようと言って勝負し
アキラが勝つ。
この時はアキラが両面とも裏のコインを使ったののだが、錠はそれを見抜いていた。
しかし「高堂のやつがあんまりあくどいんでな。助ける気がなくなった」
とラストは高堂たちに襲われる時にはアキラとともに高堂と戦う。

後半、錠はアキラに味方しているので、高堂は新しい殺し屋(垂水吾郎)を
雇うのだが、大した見せ場もなく死んで行くのは残念。

ラスト、やはりルリ子に見送られながら馬に乗って去っていく。
ここでアキラの曲を聴かせるので、たっぷり間のある別れのシーンだ。

シリーズ後半には錠ではなく藤村有弘や郷英治などが相手役として登場
する作品もあるそうで、そちらも見てみたい気がする。



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ギターを持った渡り鳥


日時 2010年2月6日
場所 TSUTAYAレンタルDVD
監督 斉藤武市
製作 昭和34年(1964年)

(詳しくはムービーウォーカー・データベースで)


函館に一人の流れ者がやってくる。名前は滝伸次(小林旭)。
町の酒場で喧嘩をしてその町のボス(金子信雄)のもとに連れて行かれる。
腕っぷしを飼われて自分のところで働かないかと言われる。
一度は断った滝だったが、結局は働くことに。
ボスはアミューズメントセンターを作る計画を立てていたが、どうしても
立ち退いてもらいたい会社があった。
滝は言われるままに借金の返済の代わりにその会社の船を奪おうとするのだが
その会社はボスの妹の夫が経営する会社だった。


小林旭の渡り鳥シリーズ第1作。
アキラの歌をバックにクレジットタイトル。もう完全に作品世界に突入する。
滝伸次はかつては神戸市警の刑事だったが、犯人を射殺したことが過剰防衛
として批判され刑事を辞めた前歴を持つ。

でも映画の方はまだまだ第1作ということではじけ方が足らない。
宍戸錠が神戸時代の滝を知ってるヤクザとして登場するが、登場は後半に
なってから。
それはちょうど007の第1作「ドクターノオ」より2作目3作目の方が
作品世界が発展していったことに似ていると言っていい。

それにしても当時の小林旭はスリムで実に美青年だ。かっこいい。
金子信雄の娘が浅丘ルリ子で、彼女に誘われて函館の街を見下ろす高台
に出かけた時、自分に気がないアキラにルリ子は嫉妬する。
で、「好きな人のところに行ったら?」と責めると「遠すぎます」と
空の雲を指す。
ルリ子「ごめんなさい。思い出させちゃったのね」
アキラ「思い出すってのは忘れてるからだろ。俺は忘れたことはないよ。
だから思い出すこともないのさ」
ひゅあああああ。カッコよすぎるぜ、アキラ!!
この名セリフだけでこの映画は記憶に値する。
(ちなみにこの映画、学生時代にも見ていて同じようにこのセリフに
しびれたことを思い出した。恥ずかしながら私はこのセリフのことを
すっかり忘れていて、今日映画をみて「思い出した」)

宍戸錠と最初にあったころにダイス対決をするのだが、まだまだ普通に
勝負して普通に錠さんが勝つのだが、それをアキラがいかさまと見抜いて
手でダイスを割ると重りが入っているいかさまダイスだったというぐらい。

ラストは金子信雄の部下によって殺されかけ、船から海に落ちたアキラが
金子信雄のキャバレー(踊り子はもちろん白木マリ)に現れる。
その時にちゃ〜んとキャバレーのステージの階段を降りながら現れる。
なんと素敵なアキラでしょう!

そういう後々の御約束事の種をまきながら、映画は終わる。
もちろんラストは波止場でルリ子に「あの人は帰ってこない。あの人の
ことはなんでもわかる」と言われながら船で去ってくことは言うまでもない。



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ゴールデンスランバー


日時 2010年2月5日21:30〜
場所 新宿ピカデリー・スクリーン8
監督 中村義洋

(公式HPへ)


青柳雅春(堺雅人)は仙台の宅配ドライバー。2年前に強盗に入られたアイドルを
偶然助けたことがある。
今日は大学時代の友人(吉岡秀隆)に呼び出されるが、彼は「お前、オズワルドに
されるぞ」と言い始める。折しも仙台には首相が凱旋パレードにやってきていたが、
そのパレードでラジコンヘリで運ばれた爆弾が爆発し、首相は死亡。
青柳は警察に追われる羽目に。学生時代の後輩(劇団ひとり)や昔の彼女(竹内結子)
の手を借りながら逃亡していく。


「首相暗殺!その容疑者にされる男」というアメリカ映画のようなでかい設定だが、
今一つ盛り上がらない。
思うに事件の全容が徐々に明らかになっていく過程がさっぱり説明がないのだ。
ラストになっても本当の事件の犯人は明らかにならない。
事件の陰謀を暴いていくというより、一人の男の逃亡話のみを描きたかったの
だろう。

逃亡を助ける人の中に連続切り裂き魔として指名手配中の通称「キルオ」
が登場する。なんでここで連続切り裂き魔が登場しなければならないのか
理解不能。あまりにも突拍子すぎる。(演じる濱田岳は良かったが)

ラストを書いちゃうけど、逃亡出来た青柳だったが、自分の替え玉で証拠の
ビデオに写っていた男(多分)が死体となって発見され、事件は幕。
青柳は整形しまったく別人となって今も生きているというラスト。
でも濡れ衣のまま話は終わるわけだし、やっぱり釈然としないなあ。
主人公もそれを受け入れてしまっているし。

また中村監督の映画は(というか最近の日本映画は)陰影のないべたっとした
映像で実に画が汚い。カメラが悪いのか、カメラマンが悪いのか。

かといって面白さが全くなかったわけではない。
香川照之の意味ありげな警察庁の幹部や、すぐにショットガンをぶっ放す永島敏行
など最近見ている日活アクションにも登場しそうな個性的なキャラクターで
(だからこそ今回のようなシリアスな話には浮いているともいえるが)楽しかった。

あとは青柳が自分は生きていることを伝えるために会社の先輩や両親にお互いだけが
知っているような秘密を連絡して自分の生きていることを伝えていくシーン。
伏線が効いていて効果的だったように思う。




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野獣の青春


日時 2010年2月4日
場所 米国版DVD
監督 鈴木清順
製作 昭和38年(1963年)

(詳しくはムービーウォーカー・データベースで)


ラブホテルで刑事・竹下が女と心中しているのが発見された。
数日後、街に水野錠次(宍戸錠)という流れ者がやってくる。街を暴れ周り、
その一帯をシマに持つ野本組に連れて行かれる。
錠次は組長の野本(小林昭二)に自分を雇うようにいい、その腕っぷしを
見込んで野本は錠次を雇うことに。
この街では古いヤクザの三光組(信欣三)が仕切っていたが、今や
野本組の天下だった。
実は錠次は元刑事で暴力団担当だったが、ヤクザにはめられて刑務所
に入った男だった。竹下はかつての親友で、その死の真相を追究しに
来たのだった。果たして真相は?そして対立する二つの勢力は??


この映画は学生時代(25年ぐらい前)に文芸地下で見た覚えがある。
映画の内容は全く覚えていなかったが、「面白かった」という記憶だけ
残っていた。
今回再見したが、面白い。
鈴木清順はあまり好きではない監督だが、この映画はアクション映画として
の面白さと清順の映像美学が程よくブレンドされた名作だと思う。
映像美学に走ってしまうと「殺しの烙印」になってしまっていただけない。

錠次がまず連れて行かれる野本組のキャバレー、事務所の一面がマジック
ミラーになっており、事務所に入ると壁一面にキャバレーの様子が
見られる美術は実に印象的。
このキャバレー、映画中何回か出てくるかと思ったが、最初の1回だけ。
もったいない。
あと、防音になっているということで、店内で踊るダンサーが見えるのだが
映画ではしばらく無音になるという、ここも際立った描き方。

また三光組の事務所が映画館にあってスクリーンの裏側にあるのだな。
だから事務所のシーンになると常に何かの映画が裏側から上映されて
いるという、映画的には実に面白い。
案外「イングロリアス・バスターズ」にも影響を与えているかも知れない。
クレジットが流れるカットがあって「信欣三」の文字も出る。
この映画館の表の看板には日活スターの顔看板があるというまたまた
シュールな描写。

また色使いではオープニングの心中した刑事が発見されるところは
白黒なのだが、この白黒の画面をバックに緑色でクレジットが写される。
そして白黒の場面で椿の花だけが赤くなっているカットも挿入
(ラストカットもこれだ)

そして小林昭二の親分。
キャバレーの支配人が金子信雄だが、今回は金子は悪役としてほとんど
登場せず、変わりに小林昭二が登場。ナイフ投げを得意として、ちょっと
キーの高い声で話す様は実にいい。
小林昭二がこんな役をやっていたとは実に驚いた。
「ウルトラマン」ファンが見たら驚くだろう。

その弟役の川地民夫もすごい。
出演シーンは少ないが、野本組のコールガール組織のマネージャー的
仕事。優男で妙にやさしそうだが凄みのある役を好演。
また母親が元パンパンだが、それを言われると突然狂ったように
怒り出し、相手の顔を剃刀で切り裂く癖があるという設定。
この設定がラスト、竹下を殺させた真犯人に対して使われるという
伏線になっており、実によかった。

話の方は要するに黒澤の「用心棒」や岡本喜八の「暗黒街の対決」と
同じく、ヤクザ同士を対決させて自滅させる話。
テンポのあるストーリー展開で面白かった。
アクション映画の面白さと清順の映像美学が程よく調和した名作だと思う。



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