2011年4月

名探偵コナン 
沈黙の15分(クォーター)
日本暴力列島 
京阪神殺しの軍団
魚が出てきた日 クレヨンしんちゃん 
嵐を呼ぶ黄金のスパイ大作戦
くまちゃん チャイナ・シンドローム
星空の向こうの国 ヘヴンズドア 殺人症候群 月と嘘と殺人 謎の空飛ぶ円盤
暴力金脈 ハロルドとモード
 少年は虹を渡る
高校デビュー ランウェイ☆ビート

名探偵コナン 沈黙の15分(クォーター)


日時 2011年4月29日16:15〜
場所 有楽座(旧ニュー東宝シネマ)
総監督 山本泰一郎 

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名探偵コナンは仲間たちと首都高のトンネルを走っている時にトンネル内で怪しい男を見かける。前日、東京都知事殺害の脅迫状が届いていた、今日は地下鉄新線の開通式で都知事も出席することなどから怪しい男は爆弾を仕掛けたと直感。直ちに警察に急報し、爆発事故は起こったものの、死傷者を出すことなく終わった。
コナンはこの事件の原因が都知事が大臣時代に新潟県に作ったダムとその沈んだ村にあると直感。仲間たちと新潟のその村へ。
ウインターフェスティバルが実際されている村でかつて村の小学校で同級生だった5人組と出会う。
この村で8年前にあったひき逃げ事件、小学生の転落事故など様々な事件が絡み合った真相、そしてダム爆破計画へと事件は進展する!

前々から映画ファンの間では評判のよい「名探偵コナンシリーズ」。今回は都知事の乗った地下鉄爆破事件と予告編で見て、東宝のポイントカードで鑑賞。
(以前はTOHOシネマズのシネコンでしか使えたかったポイントだが、最近は東宝直営館もTOHOシネマズチェーンに組み入れられてポイントも使えるようになった)

何しろ人生初の「コナン」鑑賞なので、人物設定などが解らずついていけるか心配だったが(最近「タクミくん」とか「相棒」とか設定がよくわからず世界に入りきれない映画が多かったのだ)ところがメインタイトル部分で、なぜコナンは小学生なのかとか周りの少年探偵団の設定を早口であるけれども説明してくれたので大変ありがたかった)

でも地下鉄爆破事件は冒頭のアバンタイトルのみで、本筋になったら山の中になってしまってちょっとはずされた感じがした。
何か事情がありそうな5人組の同級生がでたと思ったら、記憶を失った少年がでてきてとにかく説明せりふが多い多い。
推理ドラマだけどあんなに説明が多くては子供はついていけまい。実際映画館には10代20代学生層が多く、子供は少ない。銀座という土地柄もあるかも知れないけど。

そんな冒頭のアクションシーンの面白さに比べて中盤の雪山に来てからは説明せりふの多さも手伝ってやや退屈。
だが事件の真犯人の目的がダムの水を流出させ、村の姿を現すことにあるのだが、クライマックスはダムの爆破!
爆破するかで盛り上がった後、放水による村の危機、そしてそれを救ったコナン少年の運命は?の連続のクライマックス!
ラストでコナン少年はもちろん助かるのだが、助かったきっかけが冒頭の説明で出てきた秘密兵器が登場。この伏線には思わずうなった!

それにしてもこれだけ面白い映画が作れる才能が日本にはある。それが実写映画の世界で生かされないのは何故だろう?
残念でならない。



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日本暴力列島 京阪神殺しの軍団


日時 2011年4月28日21:00〜
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 山下耕作
製作 昭和50年(1975年)

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花木(小林旭)と金光(梅宮辰夫)は大阪・鶴橋の出身で在日。彼らはある組(室田日出男)の客分としていたが、縄張り争いの喧嘩が原因で袂を分かち、その組の所属する日新連合と敵対する天政会に所属する事になった。
天政会の幹部(遠藤辰夫)は花木たちを天政会の全国制覇の切り込み隊として使うことにし、まずは山陰へ。
金光が相手に拉致されるなど危険な場面もあったが、何とか切り抜けた彼ら。
次に送り込まれたのは岐阜・柳ヶ瀬だった。
相手の組長の家にも攻撃を仕掛け、勝つ寸前まで行ったのだが、最後の決着は上部が決めることになった。

小林旭主演の東映実録もの。
「仁義なき戦い」の後だけど、とにかく小林旭が太って見える。温泉に入るシーンがあるのだが、そこでは太っているなりに締まってはいるから顔が太りやすい体質なのか?
二重顎になって日活時代の颯爽とした雰囲気からはちょっと遠い。
それでも東映実録スターでは小林旭は好きなので、それだけでも見ていて楽しくはあるけど。

山下耕作監督なので、任侠調のまったりとしたテンポかと思ったらそうでもない。
しかし深作欣二ほどの敵味方や攻守がころころ逆転する面白さはなく、山下耕作がつまらないというより、やはり東映実録ものは深作が突出した面白さを持っていたということを再確認した次第。
その中でも山陰の戦いで、雨の降る中、川の中で喧嘩するシーンがあり、このカットの美しさなどは任侠映画の様式美に通じるものがあるような気がした。

でも最後は岐阜の対決は頂上(金子信雄など)の話し合いで大垣までは花木たちに渡すと決定。
だが金光は不服。それを花木が「我慢だ」と苦渋の表情をするのだが、この「理不尽でもヤクザ社会の掟に従う」という発想は任侠映画の発想。実録ものは「そんなん知るかい!」と一暴れしてほしいなあ。
金光は天政会の花木組へのお目付け役の成田三樹夫に殺される。その後、花木の事務所を訪ねた成田三樹夫を花木は苦渋の表情で刺す。
最後は反逆するのだが、この「溜めに溜める」という展開はやっぱり任侠映画だ。

そして花木と金光は在日なのだが、この辺が実はあまり深く掘り下げられていない。
花木と金光は最初喧嘩で敵味方だったのだが、金光が腹を刺され、花木が輸血して助ける。「おまえ等の血はもらわん」という金光に花木は「おまえと俺は同じ血じゃ」と答える。
そもそも大阪鶴橋という土地から映画は始まるが、ここはコリアンタウン。でもそれだけで解るのだろうか?
いや昨今の解り易すぎる映画に比べればこのくらいの説明でいいのかも知れないけど。

そして花木の子分の伊吹吾郎が「最近親分の片腕は金光じゃないですか!それは俺が日本人だからですか!」と訴えるシーンがある。
また花木が金光を岐阜の一件で「我慢しろ」というシーンで、金光は「我慢?俺らのおやじは日本に無理矢理連れてこられて炭坑でこき使われて殺された。まだ我慢せい言うんかい!」と食ってかかる。
このあたりの在日と日本人の関係とか金光や花木の日本に対する思いなどが描かれていればもっと違った映画になったかも知れない。

あっあと、喫茶店で花木の傘を間違えたことがきっかけで花木と知り合って、志賀勝たちに強姦されてその後花木に惚れるが山陰での抗争に巻き込まれて死ぬ女性が登場。展開がイージーすぎるよ。



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魚が出てきた日


日時 2011年4月24日
場所 DVD
監督 マイケル・カコヤニス
製作 1968年(昭和43年)

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1972年。ギリシャの孤立した島、コリン島の近くで米空軍の爆撃機が墜落。機長(コリン・ブレークリー)とパイロット(トム・コートネイ)は積んでいた核爆弾と機密の箱を投下させ、パラシュートで脱出。
島の住民が飛行機落下を警官に報告、近くのロードス島警察から空港などに問い合わせるが該当機は無し。米軍にも問い合わせるが事態を秘密にしたい米軍は「行方不明機無し」と回答。
しかしギリシア語を話せるエライアイ(サム・ワナメイカ―)を隊長として捜索隊を派遣。ただし表向きは「太陽ホテル」の視察団として。
機長たちは島に辿り着いたが下着一枚になっており、隠密行動をしなければならないので、金もなくどうしようもない。
エライアイたちは核爆弾は発見したが、機密の箱はいまだに見つけ出せない。
実は島のヤギ飼いが「何か金目のものが入っている箱」と思って家に持って帰っていたのだ!
島の探索を隠密にかつ迅速に勧めたいエライアイは島の土地を買い取ることに。
しかしこれがコリン島を新たな観光地として観光客を呼び寄せることになってしまった。
はたして彼らは無事任務を遂行することが出来るのか?


この映画は高校生の頃に名古屋の旗屋シネマで初めて見た。
熱田神宮近くの映画館だが、後にも先にもこの映画館に行ったのはこの一度だけ。一緒に見たのは「Z」と「終身犯」。「終身犯」が真ん中だったのは覚えているが「魚」と「Z」のどっちが先立ったかは覚えていない。
この日は「Z」「魚が出てきた日」という二大名作をいっぺんに鑑賞したので完全に放心状態だった。たぶん10時頃から見始めて夕方の5時頃までかかったんじゃないだろうか?その後、上京してから(確か)文芸座で見ている。
だからほぼ30年ぶりの再会だ。この映画のDVDが出るとは思わなかった!

映画を見始めて驚いたのはスタンダードサイズだと言うこと。1968年ならシネスコが主流だと思うが、ギリシアではまだスタンダードが中心だったのだろうか?

オープニング、カスタネットに合わせてナレーションが流れる。この映画はスペインであった同じような核爆弾を積んだ飛行機が墜落した事件を素材にしているらしい。
「人々は事件に恐れおののいた」というとまるでカスタネットが歯の根があわないないようにカタカタとなりだす。
そして「安心だと知って笑いだした」とここでカスタネットは笑っているように鳴り響く。
秀逸な導入だ。

とにかくシナリオが面白い。

島にやっていた米軍は軍人と悟られないために敬礼とかしてはいかんと言われてるにも関わらず、つい「イエッサー!」とか言ってしまい、どやされる。
島を案内するとかで腕の悪い歯医者がついてくる。
その歯医者を追っぱらうために若い士官が犠牲に。
しかしこの士官、後にキャンディスバーゲンが島にやってきたときにやっぱり追い払う役で、ホテルに連れ込んだいしているからいい思いもしている。

米軍が隠密にやろうとやればやるほど島に人が増えていく。
隠密にやろうと島の半分の土地を買い取る、すると観光ブームが起こり、観光客がやってくる、島の人々は自宅をホテルにしていく、道を造るよう島の人々に仕事を与えたらダビテ像のような彫像が発見され、考古学者までわんさかやってくる。

そういう米軍と島の騒動の裏で、必死になって何とかしようとするパンツ1枚の米軍パイロット二人、そして箱を拾った羊飼い。
羊飼いは斧で壊そうとして、歯医者のドリルを盗みだしそれで穴を開けようとして、そして最後はキャンディス・バーゲンが持ってきた金属加工に持ってきた強酸を手に入れる。そして箱から出てきたものは????

金が出てくるかと思ったら変な石ころ。
羊飼いは怒って箱ごと海に捨てる。そして羊飼いの女房が、これがせこくて夫に捨てろ!と言われた石をつい自分のポケットに数個忍ばせる。
こういった彼らの無知な貧乏人ぶりが実にいい。
そして結局はその石を浄水路に捨てる。
石がかんかんと音を立てて村の繁華街に通じていくパイプをパンしていく画は恐怖をかき立てる。

パンツ一枚のパイロットは一人は干してあってシーツを盗み、体に巻き付けイスラム教徒のような格好をする。
機長のほうはかかしの服を盗み出し、乞食のふりをして金を集め出す、本部に電話をかけるために。この二人、終始笑いを誘う。

そして酒を飲んでいた米軍捜索隊が海をふと見るとそこには無数の魚の死体がぷかりぷかり。
映画を見ていて思わず悲鳴を上げそうになる。

放射能という奴は目に見えない。
だからその驚異は映画で示すことはかえって難しい。
「ゴジラ」のように形を造らなければだめだ。
黒澤明は「夢」で放射能の色を付けて表現した。「K19」という原潜事故の映画では放射能を画で表現しなかったためにまるで面白くなかった。
この映画では魚の表現は「無数の魚の死骸」だ。このカットでこの映画は「放射能の恐怖」を可視化に成功した。
案外、このカットから映画を作り始めたのかも知れない。

ラスト、危険を告げるアナウンスの音で映画は終わる。
その後に起こるであろう、パニック、人の死、いや米軍の事故隠しは見た人の中で想像される。

「博士の異常な愛情」に匹敵する、いやそれ以上の冷戦、核兵器の恐怖を描いたブラックユーモアの名作だ。
捜索隊隊長のサム・ワナメイカ―と機長のコリン・ブレークリーがいい。キャンディス・バーゲンは完全に映画の格上げのための顔見せ。

面白かった。



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クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ黄金のスパイ大作戦


日時 2011年4月24日12:15〜
場所 新宿ピカデリー・スクリーン10
監督 増井壮一

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女の子のスパイ、レモンはアメリカにある人類のスリーサイズのデータベースに侵入。ある体のサイズに適合する人間を探し出す。それは野原しんのすけだった。
しんのすけの前に現れるレモン。
レモンは自分はアクション仮面の陰の仲間だと言い、しんちゃんはアクション仮面のエージェントに選ばれたから一緒にいこうという。アクション仮面に会いたいしんのすけはそのままついていく。
やがて公園で鉄棒やスパイヨーヨーの訓練を受ける。
そして本命のミッション、ヘーデルナ王国の悪い奴、ヘガデル博士に奪われたアクション仮面のカプセルを奪いに行くことに!

「オトナ帝国の逆襲」がよかったので、それから毎年見続けている「クレヨンしんちゃん」。正直言ってここ数年は見に行って作品世界に乗り切れずにがっかりする映画が多かった。
でも今回はいままで見に行って正解。がんばって見つづけた甲斐があったというものだ。

レモンはスカシペスタン共和国のスパイ。映画はしんのすけ目線で進み、自分たちはスカシペタン共和国のスパイではなく、あくまで正義のヒーロー、アクション仮面を助けるつもりで行動する。
しかし実は平和の国のヘーデルナ共和国のヘガデル博士が作ってしまったあるものを奪おうとしているのだった。

映画の内容は主に3つに分かれる。
最初はしんちゃんがミッションを行うまでの訓練、次はヘガデル共和国でのあるものを盗み出す、3部はそれを届けたスカシペスタンからヘーデルナに返そうとする。
2部から3部への「実はしんのすけはだまされていた」という展開が果たして子供についていけるかは不明。
そんなことは関係なしに大人向けに話は進む。
上映時間が1時間47分もあるので「『しんちゃん』にしては長いなあ」と思っていたが、これだけのボリュームなら納得。そしてそれを見せきる。

奪おうとする物は僕に言わせれば「大量虐殺兵器」のメタファーだ。核でも細菌兵器でもいい。
映画の中では一応ヘガデル博士は「芋を食べると人間はおならをする。でもおならがでない芋を作ろうとしていうちに逆にめちゃくちゃ臭いおならがでるメガヘガデルUを作ってしまった」という説明。そしてそれをスカシペスタンの独裁者が奪ってミサイルで各国に打ち込もうと計画するというものだ。

メガヘガデルUを奪い返したしんちゃんとレモンだが、万事休すの時についにそのメガヘガデルUを食べてしまう。
こういう戦争の材料になってしまうものは「いっそなくなってしまえばいい」という展開だ。

でも人間はなかなか一度作ったものを捨てることが出来ない。原爆の平和利用のために作られたのが原子力発電所。
しかしやっぱり危険物質なので人間の手にあまる事もある。福島原発事件の今見るとそう思えてくる。

いや核だけではない。細菌兵器やなんやらかんやら。
人間の手に余るものを作ってしまったら、それを平和利用しようなどと貧乏臭いことは考えずに、「いっそ捨ててしまえ!」と言っているようにも思える。

見てよかった。



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くまちゃん


日時 2011年4月23日15:00〜
場所 ザ・グリソムギャング
監督 小中和哉
製作 平成4年(1992年)

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前衛彫刻家の昭雄(草刈正雄)が夜中にアトリエで製作中に突然大きな卵が落ちてきた。
翌朝、昭雄が朝食をとろうとするとそこにぬいぐるみの形のしゃべるくまがいた。
昭雄はそれは自分の深層心理が生み出した妄想だと思うとする。
昭雄は美術商の女性とかつて結婚していたが今はバツイチ。女優を目指す若い恋人がいた。
しかし昭雄はまだ彼女に対して踏み出せないでいた。

グリソムギャング小中監督特集の2週目。
この「くまちゃん」は公開当時に知っていて、「熊のぬいぐるみ型の宇宙人が草刈正雄の恋の橋渡しをする映画」という内容は知っていた。ラジオか何かで映画評論家のおすぎが当時ぼろくそに言っていたのをよく覚えている。
小中監督の名前は当時も知っていたが、仕事も忙しく、映画から離れていた時期だったため、見なかった。
滅多に上映されることのない映画なので、これを逃したら見れなくなるかも知れないので、鑑賞。

おすぎがどういう点をぼろくそに言っていたか覚えていないが、(くまのぬいぐるみの宇宙人という基本設定についていけなかったようなことを言っていた気がする)ぼろくそに言うのはわかる。
またまた途中で出たくなった。

宇宙人がくまのぬいぐるみでもいい。
しかし話にほとんど絡んでこないのだよ。中年男と若い女性との恋愛なら、ここで別に宇宙人が絡んでこなくても映画は成立する。
くまが出てきてそれが昭雄と彼女のためにピンチを救うとか、人間にはない能力を使って何かを解決して話が展開していくという訳でもない。

うじうじ悩む草刈正雄の姿がだらだらと長く出てくるのだ。
昭雄はどんなことでも約束するのが嫌い。
「今度パーティに来てね」という現在は仕事の関係の元妻の約束さえもはっきりしない。
後半その理由が明かされるが、約束するということは「不確かな未来に対する欺瞞」という。しかしそれ以上に「約束すると言うことは責任を持つと言うことだ。俺は責任を追いたくない。そうやって生きてきてしまった」とのたまう。
は〜。ため息がでる。設定は42か3だったがいい歳して「責任とりたくない」とか言うなよ。子供じゃないんだから。あほらしい。
この辺でもう昭雄のキャラクターはついていけない。

で、映画の方は彼女の芝居(小劇場)の初日に見に行くが、彼女のせりふで「彼は待っていてもこない」みたいなせりふがあり、それを言った途端にくまが「そんなの欺瞞だ!」と叫ぶ。
それを気に昭雄が芝居に参加し始めてアドリブ合戦になってしまい演出家は頭を抱えるという展開。
この芝居と現実が一体になってしまう、というシチュエーションは(まあ)面白いが、でもそれでは「くまちゃん」でやる必要はない。

せっかく宇宙人のクマ、という設定なのだからそれを生かしたドラマを作って欲しかった。
その辺をもう少し練り込んで欲しかった。

出演は「せりふのない役者」という役で大杉漣、謎の進入者を追う刑事に上田耕一、上田の部下の刑事で今は映画監督のSABU(サブ)など。当時はまだ売れてなかったが今見ると豪華な配役。



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チャイナ・シンドローム


日時 2011年4月18日
場所 DVD
監督 ジェームズ・ブリッジス
製作 1979年(昭和54年)

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テレビの女性人気キャスター、キンバリー(ジェーン・フォンダ)は普段は動物園の取材とか毒にも薬にもならない仕事ばかりで硬派のニュースキャスターに転向したがっていた。
カメラマンのリチャード(マイケル・ダグラス)とベンタナ原発に取材に行った際の制御室の見学中に室長のゴデル(ジャック・レモン)をはじめとしてスタッフの慌てふためく姿を目撃する。
それを盗み撮りするリチャード。彼は早速テレビでそのシーンを放送するよう訴えたが「原発側に確認を取るべきだ」と主張する局の上層部の意向でボツになる。
事故は部品の故障で緊急停止した原子炉だが、制御室の水位計が故障していたため少ない冷却水の量を誤って水が多いと判断したため、危うく炉心が露出するところだったのだ。
しかし事故の際にゴデルは何か振動を感じ、何か別の問題も起こっているのではと直感する。
リチャードは事故のフィルムを専門家に見せ、事故の概要をつかむ。
しかしその頃、新たな発電所認可のためベンタナ原発側は事故を調査委員会になんとか過小評価させた。
ゴデルは振動の原因を探るうち、ポンプの溶接部の検査写真が偽装されていると確信する。
彼はそのことを告発しようとするのだったが。

2年ほど前にDVDを購入したあったが、そのまま封も切らずに棚に入っていた映画。
今回の福島第一原発の事件を受け、原発を扱った映画がまた見たくなり、鑑賞。
(ちなみに今月黒木和雄の「原子力戦争」が日本映画専門チャンネルで放送予定だったがなぜか〜というよりやっぱり〜中止になった)

当時なんとなくでしか理解できなかった原発の仕組みが改めてわかった。
映画の冒頭でキンバリーたちが原発を訪れた際に、広報部から原発の基本的な仕組みを図を使って説明する場面がある(「日本沈没」の竹内教授の説明シーンみたいな感じ)。
おそらく原発の基本構造についての知識はこの映画で私は得たのだと思う。

第一のサスペンスは最初の事故。
炉に水が満たされていなければ炉心が溶融してしまう。
ゴデルの手元の水量計は満水なのに温度が下がらない、別の水量計は低レベルを指している。
訳が分からず混乱しているゴデルが手元の水量計をトントンとたたくと針が「ツツツー」と下がっていく。
このシーンは戦慄ものだ。
またゴデルが後に気にする振動を机の上に置いたコーヒーカップのコーヒーの揺れで表現するのはよかった。
やっぱり映画はせりふでなく目で見えるもので表現しなくちゃ。

映画はこのあと、原発会社が新原発の認可を得ようと言う公聴会で反対派の学者にリチャードが事故フィルムを見せる。
余談だが今回見直して驚いたことの一つに「当時はまだフィルム中心だったんだ」ということ。
記憶ではビデオカメラだと思いこんでいたので驚きました。

一方ゴデルも今回の事故とは別の問題が施設にあるのではないかと思い、溶接の検査写真を再確認。
建設会社による検査写真が偽物だと発見。
この後、建設会社の回し者がゴデルを襲ってきたりするのだが、昔批評で「急にギャング映画のようになった」という意見があったが、それも今はわかる。
社会派サスペンスで押してきたのに急にB級アクション映画になってしまうのだ。もったいない。

そしてゴデルは発電所に逃げ込み、施設のどこかに危険があると所長に警告したにも関わらず無視され、発電所の制御室を占拠する。
キンバリーが呼ばれ発電所の危険性をテレビで訴えようとするが、突入した特殊部隊によって射殺されてしまう。
ゴデルは酔っぱらって錯乱したと片づけようとする発電所に対し、ベテラン技師が「あいつはそんな奴じゃない」と訴えて、ゴデルの死も無駄にはならないだろうと予感させて終わる。


映画の中では結局不正な溶接部分が壊れ、タービンが損傷したが、それだけのことで炉そのものにダメージを受けたわけではないようだ。
でも映画の画面ではタービンが台座からはずれたりしているので、以前見たときは重大な事態に陥ったように見えていた。
だから外の人間たちが平和にしていても実はみんなが知らないところで重大事故が進行中というエンディングだと思っていた。

でも今回見直すと「大丈夫、事態は収まった」とはっきり言っており、僕が感じたような重大事故を暗示するカットもない。
でも個人的感想で言えば重大事故になっても警告の映画なのだからよかったと思う。
この辺がハッピーエンドにせざるを得ないハリウッド映画の限界を感じる。
もちろんこういう映画が出来たこと自体、驚異なのだけれども、もう一歩いって欲しかった。

キンバリーの中継が突然途切れてカラーパターンだけになったら、現場で重大事故が起こったことを思わせてよかったと思うのだが。

現在、日本は福島第一原発の事件で大騒ぎである。
この映画で警告されたことが現実になっている。
偽の検査写真のシーンなど昔は「いくら何でもそこまではごまかさないだろう?」と思ったが今はそうは思わない。
原発を作りたい連中は安全基準さえもハードルを下げる。
「そんな津波はこないだろう」「電源がなくなることはないだろう」と勝手に予算内で出来ることを安全基準にする。
しかし自然はそんな人間の都合などお構いなしに襲ってくる。
想定外ではない。
人間が想定するのを放棄していただけである。



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星空のむこうの国


日時 2011年4月17日15:00〜
場所 ザ・グリソムギャング
監督 小中和哉
製作 昭和60年(1985年)

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高校生の昭雄は先日あった交通事故から退院して以来、不思議な夢を見ていた。
若い女の子(有森也実)が登場する夢なのだ。
親友の尾崎と帰りの電車に乗っているとき、向こう側の電車にその女の子を見かける。
次の新宿駅ホームでその女の子と遭遇。彼女は自分に抱きついてきた。しかし次の瞬間尾崎がやってきて昭雄の言う女の子は見ていないという。
自分の家に帰る昭雄。しかしその家では自分は死んだことになっていた。家の窓から例の女の子が連れされるのを見かける。あわてて追いかける昭雄。その車についていくと病院に彼女は連れていかれていた。その病院の前で尾崎と出会う昭雄。しかし尾崎は自分は死んだという。一体?

グリソムギャングの小中監督特集で鑑賞。
この映画のタイトルだけは知っていたが見たことはなかった。
今日知ったが、この映画は文芸座が制作。
一応商業映画だが、ほとんど自主映画の雰囲気。
小中監督の商業映画1作目になるらしいが、ああ彼も自主映画の世界からきた人なのだなあ。
先週グリソムに利重剛さんがお見えになったが、その頃の一派なのだな。 自分の自主映画時代を思い出してすこし感傷的になる。

そういう個人的な感傷はさておいて映画の方。
実は昭雄はパラレルワールドに紛れ込んでいたという展開になる。
この世界では女の子・美沙と昭雄はつきあっていて、病気の彼女だが二人とも天体好きで、一緒に11月11日の流星群を見に行こうと約束していたというのだ。
昭雄はそれを尾形から聞き、美沙を病院から連れ出し二人で流星を見に行き、その夜を学校で朝まで過ごす、という展開。

パラレルワールドとか彼女を連れ出すあたりまではよかったが、学校についたあたりから話は面白くなくなる。
展開がなくなるのだよ。
ここは追ってくる病院の先生とかから逃げていくうちに彼女との愛情が・・・的な逃げていく展開がほしい。正直後半退屈した。

結局、一晩外で過ごしたことが原因で彼女は死ぬ。
ひでえなあ、これじゃ昭雄が死なせたことになるじゃん。
彼女の祈りが昭雄をこっちの世界に引き込んだんだからここはその愛の力で病気が治る奇跡が欲しいところ。

そして昭雄は元の世界に戻り(でもないな、ちょっと違うから)で再び美沙と出会う。
前の世界では病院で天体の本を見ていた美沙に昭雄が声をかけたのだが、今度の世界では天体の本を見ていた昭雄に美沙が声をかけることで終わる。
ふん、時空を越えた愛情という結末。

蛇足ながら2、3点。
主に話が展開する世界では月が二つ。ところがこれをバカな私はわからなかった。
その前にSF好きの尾関が「パラレルワールドに迷い込んだが自然の力が戻そうとする」というようなことを言っていたので、時空の歪みが生じているのかと思ったら、トークの時の監督の話でわかった。この世界は月が二つあるそうだ。
でも月が二つあったら潮の満ち引きとかに影響がでて地球環境が変わるだろう?ということをつっこむようではこの映画を見る資格がないのかも知れない。

あと映画の主たる舞台の世界はカラーで、元の世界は白黒になる。カラー白黒がオーバーラップしたり、カラーの画に昭雄だけ白黒というマスク処理がしてあり、ミニチュアとは違うなかなか手の込んだ映像だった。
自主映画でこれだけやったからすごいと思う。



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ヘヴンズ・ドア 殺人症候群


日時 2011年4月16日
場所 TSUTAYA宅配レンタル
監督 石川二郎
製作 平成14年(2002年)

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連続殺人事件の犯人として雨宮(大坂俊介)を逮捕した水波小夜(田中美奈子)と風間(前田耕陽)は事件の落着にほっとするが、雨宮逮捕のきっかけとなった似顔絵を送ってくれた人を追跡調査することに。
似顔絵はメールで送られてきたものだったが、そのメールアドレスから美奈という少女が浮かび上がる。
彼女を訪ねて、なぜ似顔絵が描けたかを問いつめると自分が事件を報じるテレビを見ている時に犯人が浮かんできたのだという。彼女は特殊能力の持ち主なのか?
また新たな殺人事件が発生。死体は冷凍車の中で発見。凍ったままのきれいな形だった。
水波たちはとりあえず美奈に今回もイラストを描いてもらう。そのイラストを参考に犯人を見つけるが、犯人逮捕に向かったものの、死体となって発見。
美奈は子供の頃に両親と姉が殺され自分一人が生き残った殺人事件の被害者だった。その精神的ショックが大きくて特殊能力が開花したのだろうか?
真の犯人はいったい何者なのか?

サイコサスペンスというのだろうか?
「羊たちの沈黙」がヒットして以来、こういう「猟奇的殺人」「精神異常者」「精神分析」などが登場する殺人ミステリー。これもそのジャンルの映画。
75分の比較的短い映画なので、まあ退屈せずに見れた。

この映画を見ようと思ったのは、たしか大坂俊介のプロフィールを探っていた時にこの映画のタイトルがヒットしたから。
通常のレンタルにはなかったかも知れないけど、宅配レンタルにはあった。よく見たら前田耕陽もでている。
ジャニーズファンとしては前田耕陽、大坂俊介の共演となればとりあえず見たくなる。

大坂俊介は精神異常的犯罪者。出演シーンのほとんどは取調室の会話のみ。ああいう異常者の演技って普通の芝居より簡単なものなのだろうか?
それは演技経験がないのでよくわからないが、簡単そうにも思える。大坂くん、なかなかいい表情をしていまいした。
前田耕陽は刑事。
男闘呼組時代の後半にも刑事ドラマに出ていたし、刑事ものはお手のものだろう。ただしテレビの2時間サスペンスによく登場する軽い会話をしながら活動する刑事と大差ない。別に特に特徴づける必要もないかもしれんけど。

映画本題だけど、超能力と信じて美奈の描いた絵を手がかりにしていくうちに自殺者が集まるサイトにたどり着く。
この映画の制作は2002年。
ちょうど世の中インターネットが当たり前になってきて個人のHPがブームになっていた頃だ。
殺人事件のきっかけがサイトだったっていうのは当時としては新しいネタだったのだろう。逆にいまじゃ古いよ。
いまはmixiにツイッターの時代だもん。

実は美奈が殺人者たちを操っていた、というのが真相。
特殊能力じゃなくて犯人だったら絵が描けたわけだ。
その前に一瞬、前田耕陽が犯人と思わせる演出があってそこがいい。あのまま前田が犯人だったら「意外」じゃなくて「唐突」です。
こういう事件もので「意外」と「唐突」を混同してはいけません。

という内容。
まあ75分の短さだから多少つまらなくても許す。



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月と嘘と殺人


日時 2011年4月16日
場所 TSUTAYA宅配レンタル
監督 高橋正弥
製作 平成22年(2010年)

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相田(八神蓮)と奥寺(滝口幸弘)は警察学校の同期。今相田は交番勤務で奥寺は薬物の内定を行っていた。
相田の勤務する派出所周辺ではオートバイによるひったくり事件が連続して起こっていた。
そして連続殺人事件も。
ひったくりの犯人グループは未成年。そして彼らは新たなひったくりを行ったが、そのバッグにはドラッグが入っていた。
持ち主は大城(鳥羽潤)というドラッグの売人だった。
大城と言う男は5年前に警官だった相田の父親が殺された時、犯人と思われたが証拠不十分で不起訴になった男だった。
ひったくりグループの浜田(森陽太)は仲間が止めるのを聞かずにドラッグをクラブで売りさばこうとする。ところがそれが大城の耳に入り、浜田は翌朝死体となって発見。
管内で起こっている連続殺人事件の被害者は大城の仲間だった。
事件はいかなる展開を見せるのか?

ミステリーだし時間も80分と短いし、なにより「タクミくんシリーズ」にでていた滝口幸弘や浜尾京介、高橋優太らが出演しているので、タクミくんファンとしては鑑賞したくなる。
滝口は主演だったが、浜尾は冒頭登場する親子喧嘩をする高校生役で出演。あとで本筋に絡んでくるかと思いきやさにあらず。主人公の日常説明のワンシーンの特別出演で終わってしまった。残念。

で、後半唐突に大城を復讐のために殺そうとした相田に大城は自分は別の人物の指示で動いていたと話す。それがなんと奥寺。
いや唐突すぎるよ。どんでん返しとか意外な犯人というのをやりたいのはわかるが、これは唐突すぎる。伏線も何もあったもんじゃない。
正直、ちょっと白けた。

「復讐」の是非、みたいなことをしたかったのかも知れんし、未成年犯罪をやりたかったのかも知れない。
でもテーマのアプローチが不十分で、結局単なる安直なミステリーにしかなっていない。
それに盗んだバッグにはよそには言えない大金とかブツが入っていた、というもの発想はいいと思うが、もう少しひねりを(というか展開)を入れてほしかった。

ネタとしては面白くなりそうな部分もあったが、話のテンポはとろいし、脚本の段階でもう少し頑張ってほしかった。
東映実録映画なんてテンポ早かったし、もっと展開があったよ。



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謎の空飛ぶ円盤


日時 2011年4月12日
場所 DVD
監督 マイケル・コンラッド
製作 1952年(昭和27年)

最近アメリカ各地で空飛ぶ円盤が目撃されていた。
事態を重くみたワシントンは、アラスカに何かがあると目を付け、マイク・トレント(マイケル・コンラッド)に調査を依頼する。
荒唐無稽な話に気乗りしないマイクだったが、美人調査員、ヴィー・ラングリー(パット・ギャルソン)が同行すると聞き、喜んで出かける。
マイクはアラスカ出身で土地勘があるからこの事件の調査の依頼を受けたのだ。
シアトルから船でアラスカに向かう二人。
やがてマイクの実家の別荘に到着するが管理人が変わっていた。
やはり何かが起こっているらしい。


世界初の「UFOミステリー映画」というキャッチコピーでDVDが発売。
「UFOもの」は基本大好きなので、「世界初」と言われれば当然見たくなる。
だがしかし、大はずれだった。

まず、基本SF映画ではない。
「UFO」とくれば「宇宙人の侵略」という展開かと思いきや、さにあらず。
アメリカの学者がUFO型の飛行物体を完成し、それをあちこちに売り込んでいるうちにロシアに目をつけられ、拉致されそうになるというのがその後の展開。
要は冷戦下のスパイ合戦映画だった。
侵略SFを期待したこちらとしては大いにがっかりだ。

スパイ物でも面白ければそれでいいのだが、これが面白くない。
まず展開が遅い。
シアトルを出発してから延々と風景などを写して時間を稼ぐ。
そのあとアラスカに着いてからも氷河とか写して時間を稼ぐ。
やたら風景カットが多く、話がちっとも進展しない。
他にも滝のカットやら鮭が川を上っていくカットとかあるのだが、カラー映画ならまた見る価値もあるが白黒映画だもん。風景で堪能することなどなし。
アラスカの風景がふんだんに持ちいられており、なんだか観光映画のようでもある。
今で言うならフィルムコミッション全面協力だったのか知らん。

で話の方だけど、管理人が怪しい奴でヴィーが熊と遭遇するのを見かけてもにやにやしているだけで「こいつ怪しい」と思わせて実にその通りというひねりなしの展開。
マイクの古い友人が街でUFOの実体を話している奴の話を聞てしまい、命がねらわれるがマイクに伝えることに成功、というとにかく何のひねりもない展開。

肝心のUFOだが時間にして1分も写らないぐらいしか登場しないし、とにかくがっかりな映画。
とても人におすすめ出来ませんね。



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暴力金脈


日時 2011年4月11日21:00〜
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 中島貞夫
製作 昭和50年(1975年)

(詳しくはムービーウォーカー・データベースで)


中江宏(松方弘樹)は大阪で総会屋として売りだそうとしていた。そんな時、古手の総会屋の乃木(小沢栄太郎)と知り合い弟子入りする事に。
また集団就職するときに同じ列車だった奥田寛次(梅宮辰夫)と中江は再会。奥田は今ややくざの幹部となっていた。
乃木と組んで仕事をするうちに乃木の永遠のライバル神野(田中邦衛)と対決することに。
総会の席で神野を会場に入れない作戦だったが、失敗、しかも乃木も会場で大けがをし、引退することに。
しかし中江は今度は神野と一人で対決するが、その際に奥田の名前を出してしまう。そのオトシマエをつけるためにいつの間にか神野と組み、奥田も交えて奥田の三人で浪速相互銀行から3千万円を受け取ることに成功。そして東京に進出。
そこであるメーカーの社長・曽宮(若山富三郎)がワンマンで困っているとその会社の専務から相談を受け、総会を荒らすことに。しかし曽宮の会社には西島(丹波哲郎)という大物総会屋がついていた。


笠原和夫野上龍男脚本。
実録ものでもやくざではなく、総会屋の世界を描いた映画。
大企業も表ではいいことをしていても裏ではこういう裏社会とのつながりもある。
今は商法改正でだいぶ総会屋も減ったらしいが、なくなった訳ではあるまい。

いろんなターゲットのエピソードが語られていく形式で、物語のテンポは速く、飽きさせない。
だがラストにはがっかりした。
曽宮の裏情報を探るうち、バーのママにご熱心だがそこから彼の遊興費の出所が解る。
でもそこで奥田が出しゃばってきたから、中江の奥田のもめ事で室田日出男が川谷拓三に殺されることになって警察の手入れを食らう。
で、せっかくの情報が曽宮側に漏れてしまって中江は切り札を失う。
だが総会の前の晩、例のバーのママから「自分は実は曽宮の娘だった」と明かされる。
で総会の当日、中江は「あんたの可愛がっていた女は実は娘だ。なんとも思わないのか!」と糾弾する。
ああ、最後は泣き脅しかよ。今まで理詰めで攻めてきたのにそれはないだろう。
で、曽宮もそれに動じず結局中江の負け。
映画的カタルシスに欠けるなあ。

あと「西島君を祝う会」的なパーティのシーンがある。
そこで丹波哲郎が歌を歌うシーンあり。
リップシンクロがずれていたから音を後に取ったのだろうけど、丹波先生ファンとしては楽しかった。
たぶん丹波先生の歌を聴いたのは初めてだと思う。



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ハロルドとモード 少年は虹を渡る


日時 2011年4月10日15:00〜
場所 ザ・グリソムギャング
監督 ハル・アシュビー
製作 昭和47年(1972年)

(詳しくはムービーウォーカー・データベースで)


ハロルド(バッド・コート)は19歳の少年。彼の趣味は自殺ごっこ。今日も自宅のホールで首吊りのまねをしたり、風呂場で血まみれになったりして母親を驚かそうとするが母親ももう驚かない。車も霊柩車の中古車を買ってくるという徹底している。
彼のもう一つの趣味は葬式めぐり。他人の葬式に参列するのだが、やがて自分と同じようによく見かける老婆がいるのを発見する。彼女の名はモード(ルース・ゴードン)。
いつの間にかモードのペースに巻き込まれ友人になる。
彼女は他人の迷惑顧みず、適当な車に乗り込み、好きなように乗っている。
やがてハロルドは更生させようとする母親の命令でお見合いをするようになるのだが。

グリソムギャングのアメリカンニューシネマ特集で上映。
アメリカンニューシネマというと「イージーライダー」とか「俺たちに明日はない」とかが思い浮かぶが、この映画は存在すら知らなかった。
去年、再公開されたそうだ。
予告篇を見たときからピンとくるものがなかったが、やっぱり面白くなかった。

まず主人公のキャラクターが好きになれない。
自殺ごっこを繰り返す少年。生きる希望がないのだろうか?
それならさっさと自殺すればまだわかるのだが、彼のしていることは「自殺未遂」ではなく「自殺ごっこ」。
人をからかうにもほどがある。
とてもじゃないがつきあってられない。
それにハロルドの家はむちゃくちゃ金持ち。
アメリカっぽくない大きな古い立派な邸宅。東部の金持ちの家なのだろうか?
母親は息子が霊柩車に乗ってるのに嫌気がさし、車を買い与えるのだが、これがジャガー。
嫌みのように金持ちだ。ところがハロルドはこの車をを黒に塗り霊柩車のような屋根をつけてしまう。
まったく物の価値がわかっていない。

でモードばあさん。
なんだか小理屈(物はすべて共有されるとかだったけな?)を言って適当にその辺の車を乗っていく。
そしてその運転が乱暴な運転。たぶん無免許なのだろう。
普段、車を運転するのでこういう迷惑ドライバーは全く腹が立つ。
しかも白バイに捕まったら今度は白バイを盗んでその場を逃げ出す始末。
これがギャグにならないんだな。植木等なら笑えるのだが。
映画を見た後で教えてもらったがこのモードばあさんはアウシュビッツの生き残りらしく、だからこそ権力に対しての反抗があるらしいのだが、それにしてもねえ。
警官に反抗するのはわかるけど、一般の人の車を盗むのは好きになれない。

そんな感じで映画世界に全く入れなく、主人公二人が実生活で絶対に知り合いになりたくないタイプの人間なので、見ていてイヤになった。正直途中で帰りたかった。
今まで映画を途中で見るのを止めたことはない(寝たことはあるけど)。しかしこれからは途中で見るのを止めるのも大切かも。
人生には時間が限られているんだし。

その中でもちょっと印象に残ったシーン。
ハロルドとモードがゲームセンターのようなところに遊びに行く。
そこでハロルドはメダルを買って、刻印を打つ。
今はなくなったが昔は観光地にいくとご当地メダルがあってそこに刻印が打てる機械があったなあ。
「ハロルド ラブ モード」とか打ってその夜彼女に渡すハロルド。感謝して受け取るモードだが、すぐにそれを海に捨てる。「これで無くすことはないわ」。
最近、地震とか部屋がいっぱいになってきたとかで「物を持ち続けること」に疑問を感じ始めていたので、このシーンは印象に残った。
でも映画自体は好きになれなかった。



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高校デビュー


日時 2011年4月9日18:30〜
場所 新宿バルト9・シアター2
監督 英 勉

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長崎晴菜(大野いと)は中学時代のすべてをソフトボールに捧げ、高校に入ったら恋にいきようと誓っていた。
高校に入学したが、いざ彼氏を作ろうと自分なりのおしゃれをしてナンパされるのを待つ毎週末だったが誰も声をかけてくれない。
そんな時あるイケメンと知り合う。親友から「誰かもてるためのアドバイスをしてくれるコーチを頼んだら」との助言に俄然張り切る。なんと偶然にも昨日知り合ったイケメンは小宮山ヨウ(溝端淳平)と言って同じ高校の先輩だった!
ヨウの親友のフミヤ(菅田将暉)、朝丘(古川雄輝)、妹の麻美(逢沢りな)を巻き込んでの恋愛大作戦が始まるのだが。

溝端淳平は好きな俳優なのでそれだけで観てみることに。タイムテーブルを見て驚いたのだが、予告込みで1時間40分。ってことは正味90分じゃん。最近の映画は1本立てになったおかげで2時間にしなきゃいけないと勘違いしてる映画人が多い中で、この短さはありがたい。

よく知らないが原作は少女をターゲットにコミックらしい。
そのために映画のなかでの色使いもカラフルでちょっとけばけばしい。高校の名前ははっきりとは出てこないが看板をよく見ると「KOISHITAI GAKUEN」と読める。
しかも小宮山家は両親が海外にいるとかで家には兄妹の二人暮らし。主人公の春菜の家の両親も出てこない。仮想空間だ。

で、映画はヨウによる春菜の服装指南となるわけだが、春菜の服装研究を「コーラとオレンジジュースとウーロン茶を混ぜたらどうなる?」と否定する一言が面白かった。
そのせりふ、他の何かにも使えそう。

でデート指南となるが、まずはフミヤとデート。このフミヤを演じる菅田将暉くん、嵐の松本潤にちょっと似ている。
デート中にヨウがメールで指示をするというお決まりの展開。
そしてやがては春菜はヨウを好きになるというこれまたお決まりの展開。
そして嫌がらせやら、ヨウの元カノも登場し、あれこれあったが、結局ヨウは春菜とつきあうようになるという完全に先の読めるお決まりの展開。

あまりにお決まりすぎるがそれがイヤかというとそうでもない。
なんだか安心してみれる映画で、溝端淳平のかっこよさも生かされていて、マンガっぽい演出も気にならない訳ではないが、腹も立たず、(まあ)面白かった。
こういう気楽なプログラムピクチャアも新作で見てみるのは気持ちがいい。



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ランウェイ☆ビート


日時 2011年4月2日19:00〜
場所 新宿ピカデリー・スクリーン4
監督 大谷健太郎

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東京の下町の月島の高校に溝呂木美糸(ビート・瀬戸康史)が転校してきた。
彼は幼馴染のきららが難病で入院している病院の近くに引っ越してきたのだ。
そして母の死後、疎遠になっていた父(田辺誠一)のマンションに暮らすことに。
転校してきた高校には人気ファッションモデルの立花美姫もいた。間もなく文化祭のため、ファッションショーをすることに。みんなで洋服のデザインをすることになったが、美姫はすべて気に入らない。
そんな時、クラスでいじめられている犬田(田中圭)をイメージチェンジし、独自のデザインを持ってくるビート。
美姫も認め、みんなはビートを中心にファッションショーに盛り上がる。

イケメン若手俳優集団D-BOYSの瀬戸康史の映画初主演作。
丸い笑顔がなんとも魅力的な若手イケメンだ。
公開三週目で見に行ったが、朝一回、夜二回上映に。
まだ春休みなんだから中高生が行きやすい時間帯にすればいいのに。当たっていないのだろうか?

映画はこの後、美姫がブログにアップしたビートのデザインを大手ファッションメーカーが美姫が着る服にデザインして発売する。「高校生のデザインを大手が盗むわけがない。ビートが盗作したんだ」とみんなの心はばらばらになってしまう。

前半、みんなが一つにまとまっていくあたりは快調に進んだのだが(ま、話がうますぎる気もするが)、この後、話は失速していく。
まずみんながビートが盗作したと思うあたりが納得出来ない。
ビートが描いた無数のデザイン画をみんな観てるんだから信用してやれよ。

で結局またファッションショーをするのもただビートが落ち込みから回復したらすぐに始めてクラスのみんなもまた協力しだす。なんか節操ないなあ。
まあバンドとかなると楽器が出来なきゃいけないから、誰でも参加できるわけじゃないけどファッションショーだと歩くだけだもん(プロとなるとそう簡単ではないことは承知だが)なんとなく誰でも出来そうな気がするからみんなも参加しやすいんだろうけど。

この盛り上がってる高校生のファッションショーが気に入らない大手ファッションメーカーの社長(風間トオル)が邪魔する。ってなあ。たかが高校生のイベントに大人がけんか売るなよ。
会場をキャンセルさせてしまうのだが、私はてっきり高校生のイベントなんだから学校でやると思っていたらそうじゃなかった、会場借りてたんだ。
困った挙句にビートの父親の尽力もあって、高校の校庭に特設ステージを組んで行なうことに。

ビートは病気の幼馴染がいるのだが、新しい高校で出会った女の子が「ビート君が大好き」とか言ってファッションショーのトリでビートとその女の子がウエディングドレスを着て歩く。
それじゃ、幼馴染の子じゃなくて新しい子と付き合ってるみたいですけど。そうなのかなあ?

結局のところ、瀬戸康史のほっそりとしたスタイルのよさと着こなし、笑顔だけが見所の映画でした、僕にとっては。



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