100、000年後の安全日時 2011年6月26日17:00〜 場所 アップリンクX 監督 マイケル・マドセン (詳しくはムービーウォーカー・データベースで) (公式HPへ) 北欧、フィンランドでは使用済核燃料の最終処分方法として地中に埋める方法を選択し、その物質が人類の無害になると考えられる10万年間貯蔵できる施設、オンカロを建造することに。 オンカロは22世紀にはふたをして開けられることはない。この土地は18億年前の地層があり、もっとも安定している土地と考えられる。 人間の手でメンテナンスや監視、管理が必要のない施設を作れば安全だろうと思われる。誰かが開けさえしなければ。 そう未来の人類がその封印を解くかもしれない。 文字や絵で危険を知らせる標識を建てる。しかしそれを解読する事が出きるだろうか?我々だって数千年前の古代文字を完全には解読出来ないでいる。 仮に「危険だから開けないで」というメッセージが伝わったとしても好奇心から開けてしまうかも知れない。 また法整備も不可欠だ。 果たしてこの計画はうまくいくのだろうか? 福島第一原発事故(いや事件か)を受け夏に公開する予定だった本作は急遽4月に公開され、まだまだ上映中。といっても40名の客席の小屋で1日2回程度の上映だから、動員数はそれほどでもないだろう。 静かなドキュメンタリー映画だ。 手持ちカメラで突撃取材をするような不安定な映像はない。インタビューが中心でインタビュアーと喧嘩になるようなこともない。 それはたぶんに聞き手が挑発的な態度を取らないし、聞かれるほうもこの計画に対し、「本当に大丈夫だろうか?」という不安を抱えつつも、少なくとも自己の利益のためにこの計画に携わっているのではないからだろう。 「インサイドジョブ」のような金融の問題だとどこか「人のことは知らん、自分だけ儲かればよい」というスタンスがあるため、そこをつつかれると喧嘩になる。 今回のメンバーは少なくとも「絶対安全とは言えないが、出来るだけのことはしているし、あなたにもそれは伝わりますよね?」というスタンスが感じられる。 だから「インサイドジョブ」のようなインタビューされる相手を告発するような内容にはならない。 この映画の日本語タイトルがちょっとうまい。 「10万年後の安全」としないで「100、000年後」と書くことにより、一瞬タイトルが読みとれない。 つまりそれだけ途方もない未来ということを表現している。 今の人類が作った建造物が果たして10万年持つのだろうか?はなはだ不安だが、かといって観ているこちらは画面に登場する人を攻撃する気にはならない。 他にもっといい方法が思いつかないからだ。 一番興味深かったのは「標識を作るか作らないか」という議論。 標識を作ったからといってある期間は伝わるだろうけど、文字が変わってしまったらお終い。じゃ絵にすればという話でムンクの「叫び」を描いたら一番伝わりやすいという意見。でも10万年たっても「叫び」は通じるだろうか? 「いや根本的に標識なんか作るから興味を引いてしまうのだ。いっそ何もない方が何も起こらないのではないか」という意見が面白かった。案外そうかも知れないと思う。 10万年、いや1万年、いや1000年後の人類はこれを発見して何を思うだろうか?そもそもその時まで人類はいるだろうか? なんだか宇宙の果てはどうなっている?を考えるような気の遠い話である。 宇宙の果てのことを考えるのは楽しい。 しかし廃棄された放射性物質の行き先を考えるのは気が重くなる。 少なくとも今これ以上使用済み核燃料を増やさないことが今すぐ出来る一歩だと思う。 使用済み核燃料の処理方法が確立されてから、核燃料を使用すべきだ。それがいつになるか全く見込みはないけれども。 (このページのトップへ) 由美香日時 2011年6月25日27:25〜(3:25〜) 場所 TOHOシネマズ六本木ヒルズ・スクリーン7 監督 平野勝之 製作 (詳しくはムービーウォーカー・データベースで) AV監督平野は結婚はしているが女優の林由美香を恋人と思っていた。実際つきあっていた。 ある日、由美香と共に自転車で北海道、いや日本の最北端の礼文島のさらにその先の島まで自転車で行くことを企画する。 しかし企画のゴーサインがなかなか降りない。今や林由美香はAV女優としては旬を過ぎており、「林由美香」の名前では売れないと言う。「わくわく自転車旅行」のような林由美香の名前を出さないならば企画が通りそうになるが、平野としては絶対に「林由美香」の名前は出したい。 それで林由美香に「うんこを食わせたら大丈夫」となる。 とりあえず由美香には内緒のまま、自転車で新宿を出発し、国道4号線を北上する二人。 果たし最果ての地でうんこを食べさせることが出来るだろうか? 「あんにょん由美香」にも出てきたAV作品。これも劇場宇公開されたらしい。それにしてもすごいなあ。 林由美香という女優は。死後、こんなにもドキュメンタリーや劇場公開される映画が出てくるなんて。 こんな女優見たことない。でも一般的な知名度はきっと低いだろうな。多分死んだときもテレビのワイドショーで取り上げられることもなかったろう。 とにかく林由美香と平野が自転車で走っているだけの作品。もっとも途中、テントの野宿の中で、平野監督と林由美香がセックスしている、一応AVらしいシーンはあるけどこれじゃAVとして抜けないよ。 いわゆる「企画物」だとは思うけど、これって売る方としてはかなりつらいなあ。 宇都宮のあたりまでは起きていたが、気がついたら北海道の岩見沢に着いていた。距離はずいぶんあるけど、時間にしたら10分ぐらいかな? 正直、本州を走っている間は別におもしろくない。 おもしろくなるのは北海道に入ってからだ。 北海道は土地柄こう言った自転車旅行、バイク旅行をしているの人が多いらしい。 乗っけてくれたトラックの運転手、3年も日本中を自転車で走っている男、農場でバイトしながらテント生活を何ヶ月もする男、徒歩で全国を旅する男など。 見てる私も自分の知らない男たち(いや女性で自転車旅行をしている人もいた)あう感激を味わえた。 礼文島、そしてその先の島へ。 テントを張りそこでうんこの話をする。 ここで「林由美香は断るか?」という劇中最大のサスペンスを迎える。 「ギャラを増やす」の一言であっさり受けた。 うんこをしてその一部をカップめんに入れて食う林由美香。平野監督としてはどうだったのだろう? 自分の大好きな林由美香がうんこを食うのは耐えられなかっただろうか? しがし仕事として成立させるためには食ってもらわなければならない。 心中複雑だったろう。 平野監督の林由美香に対する愛情が伝わってくる一本。 彼女の死後、それを受けての映画が今度公開される「監督失格」だ。 僕自身は林由美香には特に思い入れはないけれど、平野香勝之という僕と同世代のこの男の一人の女性に対する愛情には興味がないわけではない。 (このページのトップへ) 日曜日は終わらない日時 2011年6月25日25:45〜(1:45〜) 場所 TOHOシネマズ六本木ヒルズ・スクリーン7 監督 高橋洋一郎 製作 平成11年(1999年) (詳しくはムービーウォーカー・データベースで) 一也(水橋研二)は勤めていた工場をリストラされた。それを告げたのは母親と離婚した自分の父親(渡辺哲)だった。一也は母親の小料理屋に住むことに。しかし同居していた祖母は家を出てすぐに野菜配送のトラックに引かれて死んだ。毎日のようにお詫びにと野菜を届ける運転手(塚本晋也)。やがて母親はその男と結婚するといいだした。 男との同居が始まる。 一也は仕事も見つからず、ふと立ち寄ったランパブで佐知子(林由美香)という源氏名の子と知り合う。 ある日、「今度の日曜日、海に行こう」と佐知子を誘う一也。彼女にプレゼントする真っ赤なパンティーを買う一也。しかし・・・・ NHKハイビジョンドラマで1999年に制作され、林由美香の死後、追悼で劇場公開された作品。だから純然たる劇場公開用映画では無いようだ。テレビドラマが劇場公開されたことがある、ということで。 ドキュメンタリー、ともちょっと違う気がするが、映像は淡々と事実だけを写していく。 主人公の気持ちを代弁するカットや、説明的なせりふもない。ドラマチックに盛り上げたりするようなこともない。 話はこの後、一転する。 突然一也が警官に先導されて、父親とどこかから出てくる。 はてどうしたのだろう?保護司がどうしたとか父親が言っている。家族のもとに行くが住んでいるのは元の家ではなくマンションだ。 初めは「これは回想シーンで、この後父親の紹介で工場に勤めだした」と思えた。でもひょっとしてあの母親の再婚相手殺しちゃったの?と思ったらやっぱりそうだった。 データベースなどのあらすじを見ると「衝動的に新しい父親を殺した」とかあるけど、そんなシーンはなかった。寝て見逃してしまった訳ではないと思う、多分。 でも殺してしまったのは直感的にわかった。 実はこの男、ホモではないかと思うシーンが2回あったのだ。 一度は一也が入浴中に(一也は風呂に完全に潜る癖がある)「いいかな?」と言って勝手に入ってきて髪を洗い出しそのしぶきがかかる、そして一也が部屋に自転車をおいてそのサドルとハンドルの上にバランスよく横たわっているときにまたまた入ってくる、その時にハンドルのペンライトをいじるのだが、その手つきがどうもまるでペニスを愛撫しているようだった。 脚本の設定にはなかったことで塚本晋也のオリジナルの演技かも知れない。 しかしこの手つきなどもなんとなく「ホモっぽさ」を感じさせた。 この後、今は店をやめていた佐知子と再会し、今度は二人でロープウエイへ。 前と同じく尻取りをする二人。(ちなみに最初にランパブで尻取りをしたとき、「ま」で順番が回ってきた一也は佐知子の耳に口を寄せ何事がささやく。佐知子は「その顔でそれ言うか?」と笑ながら今度は「こ」で始まる言葉を言う。確かに「まなこ」と言ったかも知れないけど「まんこ」と言ったと思いたい。よくこんなシーンがNHKドラマで作れたと思う。もっとも後で問題になったのか、その後NHKでは放送されたことがないそうだが) 結局どうなったかよく覚えていないし、まあストーリーに重点をおいたドラマじゃない。だからつまらなかったかというとそんなこともなく、とりあえず深夜にも関わらず、ちゃんと見た。 それは兎にも角にも水橋研二の魅力である。 少年のような青年のような、不思議な存在。 彼を見ているだけでも退屈しなかった。 そういうドラマだった。僕にとっては。 (このページのトップへ) 誕生日(痴漢電車 いやらしい行為) 日時 2011年6月25日24:40〜 場所 TOHOシネマズ六本木ヒルズ・スクリーン7 監督 幡寿一(佐藤寿保) 製作 平成5年(1993年) (詳しくはallcinemaで) 満員電車、そこでドア近くで痴漢にさわられる女がいた。彼女はさらに痴漢の手を求めてくる。それをすこし離れたところからビデオで撮影する若い男がいた。 その若い男を見る若い女(林由美香)。彼女と若い男は一緒の駅で降り、話始める。 若い男は物も人も立体的に感じられない、彼女を抱きしめても「等身大のポスターを抱いているようだ」としか感じられない。ビデオカメラを通して見ると実体として感じられるという。 「目の悪い人がめがねをかけるようなものね」「そうかも知れない」 若い女も電車で男に捨てられたという。彼氏と電車に乗っていたら、彼氏が突然一人で降りていったのだと。それ以来毎日電車に当てもなく乗り続けていると。 電車で露出プレイをしている女を撮影する若い男。彼女は若い男の姉だという。母親は痴漢プレイを楽しみ、父親はどこかへ蒸発した。兄は新興宗教に入り、電車の中で張り型を露出させて「あなたのためにお祈りさせてください」と言っている。 より所のない二つの魂はお互いを必要としていく。 伝説のピンク女優「林由美香」を素材にしたドキュメンタリー映画「監督失格」が今度の9月に公開されることになり、そのプレイベントとしてのオールナイト上映。6月26日は林由美香の命日(2005年没)。そして誕生日が27日だ。 ちなみにこの映画の上映前に「たまもの(英語字幕版)」が上映。「たまもの」といい、この映画といい、オープニングのピンク色の「新東宝映画」マークが六本木東宝で一番大きなスクリーンで上映されるのは前代未聞。あとにも先にもこれっきりだろう。 で映画の方だけど、昼間3本映画を見てそのあとの夜の12時過ぎだからもう眠気がピークにやってきている。 そのためにこの抽象的な心象風景の作品はつらい。 ストーリーも何もあったものではないから眠気がさらに増す。 男は海岸のテントに暮らしているが、ダイナマイトで爆破する夢を持っていて、実際にダイナマイトを持っている。 ラスト、男がいなくなった後、女は海にでる。 そこで「ダイナマイトがよ〜ダイナマイトが150トン」と小林旭の歌を歌い続けるラストが印象的だった。 機会があればもう一度見てみたい。 ラストのクレジットを見てちょっと驚いたが助監督は今岡信治だった。 (このページのトップへ) 死者との結婚日時 2011年6月25日17:45〜 場所 神保町シアター 監督 高橋治 製作 昭和35年(1960年) (詳しくはムービーウォーカー・データベースで) 元競輪選手で今はヤクザな男の子供を宿したある女(小山明子)がいた。彼女は男と別れ一度は自殺を試みる。 船旅の途中で海に身を投げようとしたが、新婚の男に止められる。彼らの部屋に行き話を来てもらう女。新婚は男がアメリカで仕事に行っているときに知り合った彼女と結婚。実は両親にこれから紹介するのだという。 ところが船は突然の事故で沈没。女は生き残る。気がついてみると病室だった。自分は新婚の妻として扱われていたのだ!夫の弟(渡辺文雄)が迎えにくる。兄は死んだがその妻として家に来て欲しいという。 女は「自分は違う」と言い出しかねてそのまま家へ。 その家は地方の財産家。黙っていれば平穏な生活が送れる。母親(東山千栄子)の暖かさもあり、子供も生まれそのまま暮らし始めるのだが。 神保町シアターの「美女と探偵」というミステリー特集。この映画のことは聞いたことがなかったが、時間もあったので鑑賞。 何の予備知識もなく観たので、冒頭で客船が沈没する展開に驚く。しかし家に入ってからは身分を隠していて「それがばれるかばれないか」というありがちなサスペンスだが充分面白い。 渡辺文雄と小山明子が並んでいるとなんとなく大島渚の映画を見ているようだが、実際脚本に田村孟が入っている。 夫の葬儀のあと、いとこがピアノである曲を弾く。 その曲はなんという曲ですか?とつい聞いてしまう小山明子。ところがその曲は夫が好きでよく歌っていた曲だった、という展開。 このいとこが疑いだして意地悪をしていくかと思ったらそうはならない。いとこの出番はここでおしまい。 両親が亡くなった時のために遺産分配の遺言状を作ろうという。それは小山明子にとってもらえる分が多くなる話。ここで彼女は「そんなもらうわけには行かない。私はこの家においてもらうだけでいい」と多くなることに反対する。 このあたりでも彼女の性格が出ているように小山明子が相手の財産目当ての悪女でないのがよい。 彼女は今まで男にだまされたり、親も飲んだくれだったりで決して幸福な人生だったわけではない。そんな彼女の希望は平穏な生活だけ。 そのあたりが観客は彼女を応援したくなる。 やがて「おまえは誰だ?」「おまえは何をしている?」という差出人不明の手紙が届く。家においてもらえるようになってほっとした頃なのに。 実は彼女の昔の元競輪選手の男。 彼女を脅迫し始めたのだ。 言われるままに小切手を渡す小山明子。 それに飽きたらず婚姻届にサインするように迫る。 その夜男を訪ねてみると、男は死んでいた。 実はすべてを知っていた弟は死体を始末した。さて犯人は誰なのか? 話としてはそれほどのドンデン返しではないのだが、殺したのは母親だったのだ。事件の直後、持病で死んでしまい、彼女に宛てた手紙で告白してあったのだ。 この母親を東山千栄子が演じているのがすごい! 正当派のサスペンス映画で緊張感が全編を漂い、面白かった。 (このページのトップへ) 奴が殺人者だ日時 2011年6月25日15:30〜 場所 神保町シアター 監督 丸林久信 製作 昭和33年(1958年) (詳しくはムービーウォーカー・データベースで) 隅田川で死体(堺左千夫)が発見された。そいつは新宿のチンピラのジョウだった。その男は数日前にバーで暴れて警察に一晩泊めたが、翌朝弁護士(清水元)に引き取られた。 その時に取り調べをした刑事(土屋嘉男、中丸忠雄)たちはその日に徹底的に調べておけば殺しは起きなかったかもしれないと後悔しつつ、捜査を始める。 ジョウは3人の仲間たちとペイの売人をしていたらしい。 そしてその一人は殺されており、あと一人が行方不明。 そんな時、刑事たちは強面の佐藤允が喧嘩で交番にしょっぴかれているのを見かける。 実は佐藤允はチンピラではなく、厚生省の麻薬Gメンで今は潜入捜査中なのだ。 佐藤允は田武謙三に近づきなんとか仲間に入れてもらう。田武の親分(山茶花究)に大きな仕事がしたいという佐藤允に与えられたのは、人を殺す手伝いをする事だった。 あるシャブ中の男(天本英世)が殺しをするのだが、その手助けをするために一緒に行動しろと言う。 二人は目的の男の居場所を探すが、その男はジョウの仲間でまだ殺されていない男だ。 神保町シアターのミステリー特集の1本ということで特に予備知識もなく観た。 脚本は橋本忍。覚醒剤の恐ろしさを描いた1本。 映画は正直脚本の混乱を感じる。 前半は土屋=中丸の刑事コンビが殺人事件の捜査をしていくが、佐藤允が登場してから刑事コンビは話からはずれて佐藤允が主人公になってくる。 さらに天本英世が登場するとさらにそっちに注意がいってしまう。 後半は完全に天本英世が主役である。 げっそりとやせ細った体に異様な顔つき、メイクも相まってまさしく「ジャンキー」である。 佐藤允とともに標的(伊藤久哉)をあちこち探し回る天本英世。「おまえのことなんか信用していない」と言いつつ、実は友情を感じているかのようでもある。 それで説明的にヤクについて教えてくれるのだが、その中でも記憶に残ったのは「ヤクを覚えた奴はヤクを使う奴だけでなくすべての者がその味を忘れられなくなる。ヤクの売人は客を5人持ってれば左うちわ。そんなうまい儲けならその元締めとなるともっと儲かる。その味を覚えた者はやめられなくなる」というもの。 確かに儲からなければ売る者はいない。 最後に警察に捕まるときに佐藤允に協力し、しかし結局山茶花究に撃たれて死んでしまう。 ラスト、すべてが終わって恋人とデートする佐藤允。 その時にはなんとヤクの密売組織の黒幕だった清水元の弁護士が衆議院議員に立候補! 逮捕されるのかと思ったら逮捕されない! 悪が生き残るというのはこの時代には珍しい展開だったのでは? (このページのトップへ) 多羅尾伴内 十三の魔王日時 2011年6月25日11:00〜 場所 神保町シアター 監督 松田定次 製作 昭和33年(1958年) (詳しくはムービーウォーカー・データベースで) 満席の競馬場。今まさにメインレースがスタートした。ところがゴール直前で本命馬が失速。大穴が1着となる波乱のレースだった。レース終了直前、本命馬の騎手がスタンドの屋根を指さす。そこには若い女性が立っていた。やがてその女性はふらふらとして屋根から転落。あっけない死を迎える。 現場に居合わせた多羅尾伴内(片岡千恵蔵)は自殺と報じる新聞に疑問を持ち、独自の捜査を始める。 死んだ若い女性はキャバレー・インパールの専属歌手、本命馬の騎手はその恋人、死んだ女性の前の男(高倉健)の姉(高峰三枝子)の夫(進藤栄太郎)が死んだ女性を検死した医者。 インパールを中心として何かがつながっている。 キザな紳士、老警官、片目の運転手、絵描き、インドの魔術師などの変装し、多羅尾伴内がそのすべてを暴く! 生まれて初めてみた多羅尾伴内がたぶんこの「十三の魔王」だと思う。高校生の頃の深夜放送でみた。 いやその前に「二十一の指紋」とかを見ていたかな? その後テレビで同じく深夜放送でシリーズ最終作「七つの顔の男だぜ」を見た。そしてなぜかこの「十三の魔王」はもう一度テレビで放送されて都合2回見ている。 いや〜楽しい。前に観ているけど内容はすっかり忘れていて覚えていたのは冒頭が競馬場だったことぐらい。片岡千恵蔵の変装ごっこが何ともいえず楽しい。(あっ絵描きとか老警官に変装したことは覚えていたぞ) 事件の方は高倉健の与太者の妹が歌手になっていてその姉が高峰三枝子でその旦那が進藤栄太郎でその助手の看護婦が出てきて、死んだ女の男が騎手で、騎手の面倒見ているノミ屋が志村喬で、志村喬の出入りするキャバレーがインパールでその支配人が三島雅夫で、インパールの系列店のマダムが出てきて、同じオーナーの経営するアパートの怪しい管理人が神田隆となんだか妙に複雑な人間関係でちょっと理解するのに苦労する。 でもそんなのは実は大した問題ではなく、千恵蔵の変装である。 キザな紳士は聞き込みをするのにさっと五千円札を出す。当時の最高紙幣だが今で言ったら10万円ぐらいの価値はあったのかな?定年にはならんのかい?の疑問がわく老警官、相手に揺さぶりをかけるために転落する女性や事件の鍵となるハイヒールを絵にして持ち込む変な絵描き、片目なら運転免許は取れないだろうの運転手、そして極めつけはインドの魔術師。これは場内は笑いが出ていた。 志村喬なんてキザな紳士と会っているのに片目の運転手に締め上げられたり、(というか千恵蔵と志村喬の豪華ツーショットだ)最後の藤村大蔵の説明をみんな身動きもせずじっと聞いているとか(このシーンに出てくる別荘のセットが立派!当時の映画はお金がかかっている)、意味もなく実は進藤栄太郎の戦争中で死んだと思われていた双子の兄が黒幕だったとか、ラストのみんなが集まった別荘に駆けつける時の千恵蔵の車と帰るときの車が違う(行きはセダン、帰りはオープンカー)とか、わざわざ手紙を木に貼っていくとか(「闇の世を照らす光よ!ああ、光よ!」みたいな感じ)、なんかファンタジックでいいなあ。 嘘を嘘として楽しめる、そんな映画である。 全作品連続上映をしてほしい。 観たい! (このページのトップへ) 先生のつうしんぼ日時 2011年6月19日15:00〜 場所 ザ・グリソムギャング 監督 武田一成 製作 昭和52年(1977年) (詳しくはムービーウォーカー・データベースで) 八王子の小学校に新任教師(渡辺篤史)が赴任してきた。いつも先生に通信簿をつけられている4年生の五郎たちは逆に先生の通信簿をつけてやろうとたくらむ。 その頃、町で出会ったおばあさんにカイコをもらう五郎たち。八王子は昔はカイコの生産が盛んな場所で、いわば八王子の地場産業だったのだ。 先生たちの中にもカイコの飼い方を知っている方もいて、4年1組と2組で飼うことに。 カイコが脱皮するのが夜明けだと聞いた先生は、校長(今福正雄)から借りて、脱皮の瞬間を撮影する。 しかし徹夜がたたって先生は肺炎になって入院するはめに。 ある日、1組で6班が担当していたカイコが全滅した。 クラスのメンバーは転校生の女の子が悪い桑の葉を与えたせいだと責める。五郎は心当たりがあってそれを確かめに2組に行ってみる。 日活児童映画の1本。 「先生のつうしんぼ」って言うくらいだから渡辺篤史の新任教師が生徒の為に孤軍奮闘して、親やPTAからクレームがきたり、学校もかばってくれなくなったりしたけれども最後にはオール5の通信簿を児童たちがくれるという話かと思ったらさにあらず。 「アフリカの鳥」といい、タイトルから受けたイメージと違う内容だった。 肝心の先生は途中で肺炎で入院してしまう。 むしろ地場産業のカイコを通じて町の歴史を勉強したり、クラスのみんなが力をあわせていくのだから、「僕たちのおカイコさん」みたいなタイトルの方がむしろすっきりする。 八王子が織物で有名だったらしいということは知っていたが、カイコのこととかは私も知らなかったし、また八王子から横浜までかつてあった「絹の道」を五郎たちが冒険するシーンが出てくるがそんなものがあったことも知らなかった。勉強になった。 高度経済成長の時期で世の中が変わっていく時代が時代背景なのが見て取れる。そういう変わりゆく日本を残したいという時代の要求が感じられる。 今なら八王子が織物の町だったというのはもはや歴史でしかない。 そういうカイコのことを調べるうちにおじいちゃん(宇野重吉)に昔の話を聞いたりして単にカイコだけではく、おじいちゃんとの交流とか、クラスで一致団結するとか子供たちはたぶんカイコだけでなく色んなことを覚えていったろう。 そして1学期の最後に生徒たちは先生につうしんぼを渡し先生は男泣きをする。 そういう映画である。 出演は他に五郎の父親役に玉川良一、クラスメートの母親役で宮下順子、学校の用務員役で小鹿番、おじいちゃん役で宇野重吉。 やっぱり宇野重吉とか出てくると映画が締まるねえ。 ファンとしてはうれしかった。 (このページのトップへ) 四万人の目撃者日時 2011年6月19日11:00〜 場所 神保町シアター 監督 堀内真直 製作 昭和35年(1960年) (詳しくはムービーウォーカー・データベースで) 検事の高山(佐田啓二)と警視庁の刑事笛木(伊藤雄之助)は野球観戦の最中、4番打者がプレー中に死亡するのを目撃する。単なる心臓発作と診断されたが、何か納得出来ない高山と笛木。血液検査の結果、遅効性の薬物の可能性もあるが自然死の可能性もあるという。つまりどちらもありうるということ。笛木の聞き込みの結果、同じチームの選手(杉浦直樹)に嫌疑が掛かる。 また笛木は同時に都内で起こる殺人事件の捜査も行き詰まっていた。犯人の目星はつくのだが、証拠の拳銃が出てこないのだ。 二つの事件はやがて絡んでいく。 「四万人の目撃者」というはったりの聞いたタイトル。 もうこのタイトルで観客の心のつかみは十分だ。 検事がまだ事件にもなっていない件で自分から率先して捜査するかい?という疑問はあるのだが、そこは突っ込まないで行こう。 杉浦直樹の恋人が死んだ選手の妹(岡田莱莉子)だったりするのだが、この杉浦直樹が例の選手が死んだおかげで4番打者になれたので、一番最初に疑われる。 選手の死に至った原因にバットの薬物を塗っておいて選手が手にけがをしていればそこから体に薬が入っていった可能性もあり、しかも杉浦直樹はそのバットを「形見に」ともらっていっていた。 しかし一番最初に疑われたものは得てして犯人ではないのが、ミステリーのセオリーだ。 結局選手が常用していたビタミン剤の一錠が毒物だった可能性になってくる。 そしてまあ関係者を洗っていくと拳銃を人を殺したい奴に貸し出すこと生業としているやつが出てくる。 それが最初に死んだ選手がやらせているジャズ喫茶の店長たちで、それを気づかれて選手は殺されたという結末。 まあ派手なオープニングの割にはネタは割れてみると後半はしょぼい。 まあタイトルを見て見る気になった私は完全に作者の作戦に引っかかった訳だ。 見所は伊藤雄之助と佐田啓二のコンビ。 佐田の父親も検事だったらしく、伊藤雄之助は佐田の父親にもしごかれたが、「おかげで一人前の刑事になれた」と感謝している。 佐田は若いがエリートらしく年上の刑事を部下として扱っていく。 刑事ドラマの定番の現場たたき上げの老練な刑事を伊藤雄之助が演じており、伊藤雄之助ファンとしては楽しかった。 結論としてはそんなに面白い出来ではなかった。 (このページのトップへ) タクミくんシリーズ あの、晴れた青空日時 2011年6月18日18:30〜 場所 目黒区中小企業センターホール(完成披露試写会) 監督 横井健司 (詳しくはムービーウォーカー・データベースで) (公式HPへ) 6月15日が近づいてた。この日は託生(浜尾京介)の兄の命日だった。兄に対してはトラウマを抱えるタクミは昨年恋人のギイ(渡辺大輔)が背中を押してくれたことによりやっと兄の墓参りに行くことが出来た。今年はギイにも一緒に行ってほしい。しかし今や付き合っていることを周囲に隠しているタクミはなかなか話す機会をもてずにいた。 しかしギイの方から「俺も墓参りに一緒に行っていいか」と言われる。大喜びになるタクミ。 しかし翌日、同じ日に学内スヌーカー大会にギイが出場する事が決まった。 学内の人気者のギイのことだから選ばれることは仕方ない。しかし納得出来ないタクミだった。 そんなタクミの気配を同室で生徒会長の三洲(馬場良馬)が察する。そしてスヌーカー大会の当日、6月15日がやってきた。 タクミくんシリーズ、一応の最終作。 今回で4作続いた浜尾=渡辺コンビは終わるそうだ。 もったいない。まだ出来そうなのに。でも「いい加減にやめたら」という位になる前にやめるのが正解かも知れない。食べ物だって「もうちょっと食べたい」で終わるのがいいのだから。 チラシにいままで映画に登場しなかった大橋先生役に石橋保、箕巖役で高崎翔太と書いてあるからどんな活躍をするのかと思ったら、大橋先生はは温室のシーンでワンシーン、箕巖は台詞が3つか4つで二人共別に本筋には絡まない役。 ちょっとがっかり。原作を読んでいるディープなファンには大橋先生や箕巖が画面に登場するだけで楽しいことは楽しいのだが。 原作を読んでいるで言えば、ギイが大企業の御曹司という設定も説明されない。まったく背景が解らないからこの作品がタクミくんを見るのを初めてと言う方にはこの映画は設定が解らないから乗れないだろうなあ。でも「ハリーポッター」でも前作の説明とか特にないからいいのか。 今回は今までの中では最長。といっても89分なのだが、いままで80分だったから最長だ。しかもほとんどがギイとタクミの二人芝居で、他の出演者のシーンは少ない。 それでも魅せきる。たぶんに私が原作も読破し、タクミくんシリーズの世界観にどっぷりはまっているからだろう。 それに今回改めて思ったが、浜尾、渡辺、馬場、滝口、みんな声がいい。顔もそうだが、それ以上に声はいいのだ。 だからあの声で台詞を言われるとそれだけでファンはうっとりしてしまう。 その感覚はファンでない方には解らないかも知れないけど。 スヌーカー大会に出場してという設定はがんばったが、やはりきつい。ギイが何か用事があって、それを三洲が解決するという展開を作りたいのは解るのだが、スヌーカー大会に無理矢理出場しなければいけなくなった、というのは「枷」の設定としてはやや弱い。もっともこれは原作は段階での致命傷であり、一応原作ではオセロ大会だからより映画的にはなっているけれども。 (ただし今度はスヌーカーの勝敗がよくわからず、ラストでいつ三洲が勝ったのか解りづらいというジレンマもあるが) 三洲くん、いいねえ。やっぱり人気キャラだけの華はありますね。 それにしても二人で墓参りに行き、兄にもギイを紹介したタクミは永遠の愛を誓うのだ。 「来年も再来年もその次の年も・・・」というギイの台詞は最終章にふさわしいものだった。 続く電車の中でギイの肩で眠るタクミに「タクミが一番タクミらしかった頃のタクミ知っていてそのころから好きだった」という台詞にはさらにぐっとくる。 また今回はタクミとギイのベッドシーンが2回以上あり、今までで一番ハードだった。もう一歩でピンク(ポルノ)映画になる。それでもファンとしてはかまわないのだが。 去年の墓参りに行く行かないの回想シーンとか、人間接触嫌悪症とか、初めてのギイとタクミのベッドシーンとか原作やシリーズを知らない人にはさっぱりわかりにくいシーンもあって、「1本の映画としてどうだろう?」と思うシーンもあるのだが、少なくとも原作ファンとしては納得の出来だった。まあコアなファンだけを満足させられればいいのかも知れないので、下手にすそ野を広げてピンぼけな映画になるより、よっぽどいいのかも知れない。 タクミくんシリーズ、監督はこのままで新たなキャストでまた見てみたい。 でもここまではまり役だと次が難しいだろうなあ。 (このページのトップへ) 真昼の罠日時 2011年6月18日15:50〜 場所 神保町シアター 監督 富本荘吉 製作 昭和37年(1962年) (詳しくはムービーウォーカー・データベースで) 八千代金属に勤める藤(田宮二郎)は32歳で係長、末は幹部候補と出世街道を歩んでいた。未だ独身だが、それは出世に役に立つ縁談を待ってのこと。 休日も夕崎部長(高松英郎)とクレー射撃に出かけていた。その射撃場で美しい女性と知り合う藤。 その女性と仲を深めていき、彼女の部屋に遊びに行く。 しかしその女性は八千代金属にも深く関わる総会屋(小沢栄太郎)と女だった。一旦はひるむ藤だが、強気になって肉体関係を結ぶ。 翌朝、会社の近くの女医が殺されたことを知る。 藤を始め何人かがその女性と医院に診察以外で通っていた。藤もその一人だったが、彼は肉体関係はなく単に時々金を借りていただけだった。 しかし警察に疑われる藤。しかも殺害されたのは藤が総会屋の女と関係を結んでいた時だった。 アリバイを言えば自分の会社での地位が危うくなる。彼は自分で新犯人を捕まえようとするのだった。 原作は黒岩重吾。 「出世街道の邁進する男」というのは田宮二郎の十八番の役。大映サラリーマンミステリーは「黒」シリーズといい、田宮二郎の活躍がやっぱりいい。今回は強気で押しまくるのではなく、自分に殺人の疑いがかかるかも知れない、またアリバイを証明すれば総会屋に知られて自分の出世はなくなるとおびえまくる役。 田宮二郎版「黒い画集・あるサラリーマンの証言」である。しかも同様にアリバイ作りに映画を見に行っていたと証言する。もっともその証言は警察の裏取りによってばれるのだが。 課長の村上不二男が怪しいとかあるのだが、結局、総会屋にはばれて出世もなくなっていく。 この辺で彼がもはや捜査する意義もなくなっていくるのだが、総会屋が「ある書類を持ち出してくれたら女にアリバイを証明させる」と言われ、その書類を持ち出す。 その書類がなかなか見つからなかったりして結局すねに傷持つ課長に探させる。 その書類から部長が犯人だと察する藤。警察に言っても取り合ってくれず、結局自分が部長を脅迫。そして・・・という展開。 いろんな人物が容疑者になっては消え、自分の出世も二転三転。1時間半の上映時間はまったく飽きなかった。 ラスト、会社を首になった藤が表で例の総会屋の女と出くわす。 てっきり藤を無視して総会屋が乗っている車に乗り込んで行くかと思ったら、藤に近づいてきて二人で歩き出す。 ハッピーエンドにちょっと驚いた。 でも面白かった。 (追記・何故この映画だけ感想が2回あるかというと以前見たことをすっかり忘れ、映画を観終わってもそれに気づかず、感想を書いてから自分のサイトをふと見たらもうすでに感想があったという信じられないことがあったのだ。それだけ面白くはあるが印象は薄い映画だったようである) (このページのトップへ) アフリカの鳥日時 2011年6月12日15:00〜 場所 ザ・グリソムギャング 監督 磯見忠彦 製作 昭和50年(1975年) (詳しくはムービーウォーカー・データベースで) 強(ツヨシ)と徹を含めた(一人女子。なんと戸川京子)小学5年生5人組はいつも一緒に遊んでいて、裏山に野ウサギがいるという話を聞けば捕まえに行くような日々を過ごしていた。 授業参観で先生の授業の進め方をみた徹のお母さんは「先生の授業の進め方はおかしい」と抗議をし、徹を塾に行かせることに今まで以上に熱心に。「あの子は大学に行かないから」と強と遊ばないように徹に言う徹の母親。 強は河原にアフリカの鳥がいると聞きつけ、友達と見に行く。その鳥はペットで飼われていた鳥が捨てられたらしい。河原を探索するうちにバードウォッチングをする大人とも知り合う。 強は母(八千草薫)と妹の母子家庭。父親は数年前に仕事の事故で亡くなっていた。優しい強は徹の足が悪いおじいちゃん(加藤嘉)とも仲がよかった。歩けるように訓練のため河原を毎日歩くおじいちゃん。 ある日、強はおじいちゃんを励ますために道ばたに歩行の目印になる赤い旗を立てる。 「アフリカの鳥」っていうタイトルだから「アフリカにいる珍しい鳥を求めてアフリカに行こうとする少年の話」とか思ったら大違い。 この場合の「アフリカの鳥」は子供たちの外での遊びを象徴する単語なのだろう。話の中心にアフリカの鳥がある訳じゃない。 それにしても70年代後半、受験戦争と言われた時代だったが、徹の親が教師の授業の進め方に文句をつける(出来ない子にあわせるのではなく、出来のいい子に合わせて授業を進めて出来の悪い子は補習とかすればいいと主婦同士でグチを言う)のは今のモンスターペアレンツのはしり。 もうこの頃からいたのだな。 その後徹は「塾に行きさえすれば何やってもいいんだ」という性格になり、おじいちゃんの「ちょっと薬をとってくれないか?」という頼みも「今忙しいんだ」という始末。 学校でウサギ小屋の掃除をさぼり強に「掃除なんか大学に行かない子がやればいいんだ」と言ってしまって大ゲンカ。 その話を聞きつけたおじいちゃんが「近頃の徹はどうかしている。親の教育が悪い!」と一喝するあたりは当時子供と一緒に見た親はドキっとしたことだろう。 話のクライマックスは徹のおじいちゃんの為に立てた旗のくだり。強は自分のおじいちゃんがいつも歩行訓練をしている川沿いの道から自分の家まで赤い小さな旗を立てていく。その1本1本に「おじいちゃん、ガンバレ」と書いてある。その優しさに触れておじいちゃんは気づかない振りをしながらやっと強の家にたどり着く。 たどり着いてから「旗をありがとう」というのだ。 このおじいちゃんの加藤嘉がやっぱりすばらしく、執念をもって歩く姿は「砂の器」に並ぶ姿と言っても間違いではあるまい。 出演は他につよしのお母さん役に八千草薫、学校の担任役で北村総一郎(最初解らなかった)、塾も詰め込み型教師に松崎真。 (このページのトップへ) 蜘蛛男日時 2011年6月11日11:00〜 場所 神保町シアター 監督 山本弘之 製作 昭和33年(1958年) (詳しくはムービーウォーカー・データベースで) 銀座の街角、ある女性があるビルの一室へと。 店員募集の公告をみてやってきたのだが、もう決まったと断られる。しかし次にやってきた美少女は即採用。 採用した男はなんだかんだと理屈をつけて自宅の風呂場に連れ込む。そして男は美少女を惨殺した! 江戸川乱歩原作の明智小五郎もの。 明智は藤田進が演じる。 続くシーンでは街角の画材店の石膏の腕に蠅がたかっているので店員が見たら本物の腕が中に入っていたとか、美術教室で石膏像のデッサンをしていたら中には人間の体が入っていたとかの猟期的な事件が続き、導入のつかみはいい。 しかしその後すぐに明智小五郎は登場せず、波越警部は黒柳博士(岡譲司)とか言う探偵だかなんだかわからない人物に相談に行く。またその黒柳博士のところへ妹が行方不明という女性が相談にくる。 その姉も誘拐され、今度は女優の富士洋子が狙われる。 映画のロケ中に本番中に富士洋子が車で連れ去られるシーンで本当に連れ去られてしまう。 これは未遂に終わったが、その夜警察の大警戒をくぐって富士洋子は誘拐。だが黒柳博士の助手の野崎くんの大活躍でなんとか敵の本拠地へ。 明智小五郎はある程度事件が進展してから登場。なにやら東南アジアに行っていたとか。 藤田進なのだが、なんだか頼りない。 無骨ながらたくましさで活躍するイメージだったが、なんか緊張感ないし、せりふの途中で「えーと」とか言っている。これはせりふじゃないと思う。映画がだれる。 黒柳博士と連続殺人犯・通称蜘蛛男が同一人物と明智は見抜き、富士洋子はなんとか救出される。そのシーンが終わったあたりでなぜか突然、明智と富士洋子が川で釣りをしている展開。 そこへやってくる蜘蛛男。結局明智の活躍で一旦は捕まったが、どう見ても明智の状況判断の誤りから逃げ出し、崖から川に落ちる。 警部「もう助からんでしょう」明智「死体は上がらんでしょうな」とか言って大きくフェードアウト。 あれ?もう映画は終わったのかな?と思ったら再び製作会社の「新映」のマーク。そしてタイトル「蜘蛛男の逆襲」。おいおい1時間ばかりの2本だったのか! (それにしてもこの映画の製作会社の新映って初めて聞いた。まだまだ知らないことが多いと恥入るばかりだ) その後もなんだか野崎君が富士洋子を守っていたり、撮影所で再び誘拐しようとしたり、蜘蛛男が十仁美容整形外科で顔を変える手術をしたりいろいろあって、今度はバレエ団のダンサー20名をまとめて誘拐する。 そして蜘蛛男は女性の死体を飾った展覧会を開こうとするが明智によって阻止、という訳。 最後の最後で蜘蛛男が自分の部下に「俺は美しい妻が他の男と心中し、ショックを受け自分の妻と似ている女を皆殺しにしようと誓った」と自分の動機を(吐露ではなく)説明するという結末。 とにかく緊張感のない展開で後半は話もテキトーになり、さすが全く知らない映画会社が作っただけのことはあるという差別的な偏見を持ってしまった映画だった。 まあ知識として見ておく価値はありますけど。 (このページのトップへ) プリンセス トヨトミ日時 2011年6月9日19:20〜 場所 新宿ピカデリー・スクリーン8 監督 鈴木雅之 (詳しくはムービーウォーカー・データベースで) (公式HPへ) 東京から会計検査院の調査官、松平(堤真一)、鳥居(綾瀬はるか)、旭ゲンズブール(岡田将生)は大阪に調査に向かった。松平はその調査対象の一つOJO(大阪城址整備機構)に疑問を持った。 最初の調査では特に怪しい点はなかったが、松平は忘れ物を取りにOJOに戻ったところ職員は誰もいなかった。 翌日再度訪ねてみると、OJOの経理の長曽加部(笹野高史)はきっとみんなで昼食に行っていた時間だという。 「何かを隠している」と確信した松平は引き続き調査する。一見何もおかしくないが、この建物に怪しげな扉があった。 その扉の奥について長曽加部に問い詰めると、OJOの前のお好み焼き屋のオヤジ真田(中井貴一)がやってきた。 「もういいでしょう。ご案内しましょう」とその扉の内側へ。 真田は自分を大阪国総理大臣と名乗る。なんと豊臣家の末裔を中心とした大阪国が存在するというのだ! ネットでの評判がやたら不評な本作。 原作は万城目学というどう見てもペンネームな(でも本名らしい)作家の小説。(原作は「プリンセス・トヨトミ」と中グロが入る)観てみたがやたら評判が悪いのも納得。 まず脚本が破綻している。以下どこがだめかあげていく。 1、真田の中学生の息子が登場するがこれが性同一性障害らしく、男の子だが女の子の制服を来て登校するという設定。これが何の意味もない。 2、岡田将生の旭ゲインズブールだが、この人は何なのだろう?日仏のハーフの設定だが、その設定は何の意味もない。また彼も実は大阪国の人間だという設定だが、ハーフだろ?父親は日本人?フランス人?父親から伝え聞いていたんなら父親が大阪人な訳だが、じゃなぜゲンズブールなんだ?もちろん母親の姓を名乗っちゃいけないとは言わないけどさ。 それに「大阪国を日本に知らしめて認知させたい」という思想があるようだが、その割には活躍が少ない。 3、この話の面白さは「実は秀吉の子孫がいた!」という点にあり、それが現代でその子孫を守る軍団と殺そうとする軍団の対決というそういう物語なるべきだと思うが、後半「その秘密を伝えていく父と息子の関係」という湿っぽい話になっていく。これでは面白さ半減。 4、少数だけが知っていたというならともかく、大阪中のほとんどの男が知っていたというのは納得出来ない。 そんな100万単位の人間「だけ」が知っている秘密なんて秘密じゃない。 さらに後半大阪中が無人になるが、神戸とか他の都市から来た人間もいるだろ?その人たちはどうしたんだよ?人口100人の僻地の村じゃないんだよ。 大阪の観客がどう思ったか聞いてみたい。 5、鳥居が実は豊臣のお姫様をやくざから守った展開だが、これで真田たちは松平が誘拐したと勘違いする。勘違いから大騒動になるのだから単なるバカである。 これでは真田は単なる早とちりのおバカでしかない。 鳥居もなんだかなあである。 6、後半が真田と松平が対面して話しているだけ。 映画的にまったく面白くない。 まあよかった点と言えばお姫様役の沢木ルカがよかったこと。美少年のような美少女で実にすがすがしかった。 彼女の今後に期待したい。 (このページのトップへ) レイキャヴィク・ホエール・ウォッチング・マサカー日時 2011年6月8日20:00〜 場所 K's Cinema 監督 ジュリアス・ケンプ 製作 2009年(平成21年) (詳しくはムービーウォーカー・データベースで) (公式HPへ) アイスランドのレイキャヴィク。この国はかつて日本、ノルウェーに次ぐ第3の捕鯨国だったが捕鯨反対の流れにより、今やホエールウォッチングの観光が盛んだ。 今日もタナカという日本人夫婦とそのメイド・エンドウ(裕木奈江)、ドイツ人の熟女3人組、結婚寸前で夫に死なれた女性、友だちと二人で来たのにその友だちはバーで知り合った男たちとどこかへ行かれてしまった女の子、酔っぱらった黒人のフランス人、そしてアメリカ人の黒人でウォッチングに出かけた。 しかし予定の場所に来てもクジラはいない。酔っ払いのフランス人が「クジラはどこだ!?」と騒ぎだしマストに登る。それを降ろそうとした船長の体にそのフランス人によって落された銛が体に刺さってしまう! 船長の助手はさっさとボートで逃げ出す。 観光客たちを見つけたある捕鯨船がいた。 その捕鯨船には捕鯨禁止によって職もなくなり、今やホエールウォッチングに来る人々を殺しまくる狂気の一家が乗っていた! 彼らもまた餌食にされてしまうのか!? タイトルは有名な ホラー映画「悪魔のいけにえ」の原題「テキサス・チェーンソー・マサカー」から来てる。 「ザ・コ―ヴ」に始まった捕鯨問題のイベントの中でちょっと話題になり、K'sシネマで20時からの上映があるので行ってみた。 正直言うとアイスランド映画なんて見たことない。しかも初のホラー映画だというし、何となくBC級以下の映画だろうなと思っていたが、とんでもない。 確かに低予算映画っぽいけど脚本がしっかりしているので見応え十分だ。 世界各地から集まっている観光客たち。 彼らのキャラクターがそのまま各国を代表している訳ではないだろうけど、何となく各国のキャラクターがそのまま製作者のその国に対するイメージを表している気がしてしまう。 この観光客たちは善意の被害者ではない。みんな一癖あっていやな奴である。唯一黒人がハリウッド映画に登場しそうなヒーローだけど。(しかし後半彼もゲイだと告白し、女性キャラクターとデキると期待した観客を裏切る) とは言っても見てる私は日本人だから、どうしても日本人観光客に目がいく。 これが主人夫婦は大変な時でも「おいエノモト、暖かいお茶をもってこい」と無茶な要求をする。なんだかいやな奴である。主人の方は海に逃げたが狂気の一家によって捕鯨砲を打ち込まれて死んでしまう。奥さんの方はなんとエノモトが逃げる時に盾にされて死んでしまう。 エノモトとフランス人はボートで逃げ出すが、フランス人は助けてもらった恩を感じずに日本人をバカにするというますますもっていやな奴。 船に残った人々は黒人を始め女性2人は信号弾を使ったりでなんとか応戦。女性は救命ボートで逃げだし黒人は最後まで戦い、やっと沿岸警備隊の船がやって来たが・・・・という展開(皆まで書くまい)。 女性の方はボートで内輪もめ。一人は海に落ち、もう一人はなんと鯨に殺されるという予想もしなかった(痛快な)展開。 反捕鯨、捕鯨賛成の対立を材料にして見事に作り上げたホラー映画の快作! 反捕鯨だと!金持ち威張ってるんじゃねーよ!ゲイのどこがいけない!ホエールウォッチングだと?鯨ってのはただ可愛いってもんじゃねーんだよ!アメリカ人もヒーローぶってるんじゃねえよ!フランス人、手前カッコつけていちいちうるさいんだよ!みんなみんなぶっ殺しちゃえ!っていう作者のストレスが聞こえてきそうな(正しいのかはわからんけど)そんな映画。 ちなみに日本人のエンドウは何とか(ちょっと卑怯な助かり方だけど)助かる。 これは同じ捕鯨国として日本に対し「世界相手に戦っていくにはこれくらいずるいやり方もしないとやってけないよ。頑張れよ」と親近感をもってメッセージをくれたと思いたい。 面白かった。 (このページのトップへ) もし高校野球の女子マネージャーが
|