ヒモのひろし日時 2011年11月30日 場所 TSUTAYAレンタルDVD 監督 田尻裕司 製作 平成17年(2005年) (DVDタイトル「卑猥」) (詳しくはピンク映画データベースで) ひろし(吉岡睦雄)はバスの中で居眠りするはるか(平沢理菜子)と出会う。はるかの息子雄一郎がお菓子の箱に入れていたコウロギをバスのなかでひっくり返してしまったことがきっかけだった。 それがきっかけではるかのアパートに居候するひろし。 ひろしは近所のおじさんたちとコオロギ相撲に熱中するようになる。 はるかには太郎という別れた夫がいて、太郎は雄一郎の父親だった。 コウロギ販売の元締めに安西(佐野和宏)という男がいてはるかにちょっかいを出していた。 ある日、安西はひろしにコウロギ相撲で勝負を挑んでくる。ひろしは自慢のコウロギ「高山」で勝負にでようと思ったが、なんと「高山」ははるかに天ぷらにされてしまう。 困ったひろしだったが、はるかの紹介で太郎から相撲に強いコウロギを借りることに。 「おじさん天国」「おんなの河童」の脚本の守屋文雄さんの脚本デビュー作。第2回ピンク映画シナリオ大賞受賞作だ。 端的に言ってしまうとちょっと期待はずれだった。 「罪」「いくつになっても男と女」という2本のピンク映画も名作を生んだシナリオ大賞だから、すこし期待し過ぎてしまったのかも知れない。第1回ピンク映画シナリオ大賞受賞作は結局映画化されなかったらしいから、これが映画化第1作ということになる。 別に魅力がなかったわけではない。 コウロギ相撲というに話の縦糸が面白かった。 やっぱりこういう「勝か負けるか」という要素が入ると映画が活性化する。 またばかばかしさもあって、ひろしが太郎のところに行ったとき、太郎の彼女をみてオナニーしたくなり、河原で初めてしまう。 その時に彼女に「なにやってるの?」を声をかけられ射精をして精子が飛んでいくカットは笑った。 不満な点の一つにやっぱりセックスの扱いが従来のピンク映画のように「無理矢理」で「必然性なし」のイメージが拭えなかった感じがする。 ひろしとはるかが出会ってすぐにバスを降りたバス停でひろしが「キスしよう」というのはちょっと。 ピンク映画だし、それがひろしのキャラクターだと言えばそうなのだが、それにしてもちょっと工夫がない。 映画はひろしはメスコウロギを安西のコウロギ倉庫に離させてオスのコウロギにダメージを与える。 で、安西の家までトンネルを掘っていたが帰るときにそのトンネルに水が入って死んだと思われてしまう。 葬式が行われてる時にひろしは海で漁船に助けられ、河原に墓を立てている時に漁船に乗って登場で終わり。 で、その葬儀がお寺で行われ時に太郎の今の女性とはるかとが外でレズ行為になってしまう。 ここはちょっと無理矢理すぎないか。 ばかばかしさの面白味もあったが、もう一つはじけてほしかった気もする。 ただしやりすぎるとシラケてしまうけど。 (このページのトップへ) ギャルバサラ 戦国時代は圏外です日時 2011年11月29日19:15〜 場所 角川シネマ新宿 監督 佐藤太 (詳しくはムービーウォーカー・データベースで) 日本史が赤点のため、その補習に市内の歴史博物館を訪れたあさみ(有村架純)優(竹富聖花)、ヒロ子(荒井萌)公平(賀来賢人)たちだったが、博物館庭で変な機械をもった同級生卓也(森廉)に出会う。戦国ショーを見ている時になにやら青い光が現れ、その光に巻き込まれる。 気がつくとそこは戦国時代だった! 織田信長が岐阜城にいて、まだまだ秀吉が木下籐吉郎だった頃だ。 百姓から侍になりたい与平(浜尾京介)、利吉(鈴木勝吾)、吾作(相馬圭佑)らと出会い、「安全な場所につれていってやる」の言葉を信じ彼らについていくあさみたち。しかし途中で襲われヒロ子と公平とは別れ別れになってしまう。 信長に接見するあさみ、優、卓也。 その時「ドラえもん」の唄が聞こえてきた。 なんと籐吉郎の妻、ねねも未来からやってきた人間だったのだ! 金子二郎さんの脚本作品。 予告を見て面白そうかなと期待したのだが、私が予想したものと違っていた。 以下、箇条書きに不満点を記す。 1、名古屋の女子高生なのに、誰一人名古屋弁を話していない。 「め〜てれ」(テレビ朝日系の名古屋の系列局)の50周年を記念しての制作らしい。東京の人がイメージするような名古屋弁を話す子はいないかも知れないけど、少しは名古屋弁っぽい話し方をしてもいいんじゃないか? SKE48のメンバーも参加してるみたいだし。 2、回想シーンが多く、ドラマの進行がストップする。 映画をみている私は「現代の女子高生が戦国時代にタイムスリップしたことのお互いのカルチャーギャップの面白さ、彼女たちが自分たちの知恵を戦国時代にどう生かしていくか?」という点に興味がある。 しかし映画はあさみと優たちの現代の友情物語が展開する。しかも私は大いに勘違いしていて、(いや私がバカだからなのだが)、現代のシーンに出てくるあさみと優ともう一人の女子高生が、一緒に戦国時代に行ったヒロ子と同一人物だと思っていたのだ。 つまり現代のシーンに出てくる3人の女子高生と戦国時代に行った3人の女子高生は同じだと思っていた。 いや単に私がバカなだけなのだが、最近の若い女性タレントは見分けがつかないんです。(男はまだ区別がつくけど) その現代のシーンに登場する奈緒(木崎ゆりあ)が踊りの勉強でアメリカに行くとか私たちはいつも一緒だよとか、なんか終いには入院したりして、それなりに必要なシーンだとは思うけど、私の興味からは外れる話が延々と続くので興ざめした。 3、現代に戻れるポイントにどうやってたどり着けたのか? 卓也の計算によって次にタイムホールが出現する場所や時間が解ったのはいいのだが、「東経〜北緯〜」と細かく言うけどその場所をどうやって計ることが出来たのか?細かく場所をせりふで言うから余計に気になる。 いっそ大体の場所に行き、光が見えてから走り出す、といった展開でもよかったのでは? 4、このタイムホールの前での芝居が長い。 タイムホールがもうすぐ消える、とか言ってるのにあさみは吾作たちとの別れでもたもたしている。「はやくしないとタイムホールが消えるだろうが!」とハラハラするよりイライラする。またスローモーションを使って盛り上げようとするので、余計にイライラした。 5、浜尾京介がすぐに死んでしまった。 「ゴセイジャー」で一番よかった浜尾京介くんが登場するや死んでしまったのは私としては残念だった。 スケジュールの都合とかあったのかも知れないけど。 6、合戦シーンがない。 いやもちろん予算のこととかいろいろとあったことは想像します。でもやっぱり合戦シーンがないのは残念だなあ。そういえば馬さえ出なかった気がする。 残念。 基本的には「女子高生が戦国時代にタイムスリップする」というアイデアは面白そうだったが、どこかで私が期待した内容と違ってしまった気がする。 残念だったと思う。 (このページのトップへ) 悦子のエロいい話〜あるいは愛でいっぱいの海日時 2011年11月27日 場所 TSUTAYA宅配レンタル 監督 城定秀夫 (詳しくはallcinema on lineで) 矢島悦子(めぐり)は高校生の頃からセックスが大好きで頼まれるとイヤとはいえない性格のため、クラスのほとんどの男子と関係を持っていた。 陰では「やりまん」とからかわれる悦子。しかし川本民夫(守屋文雄)はそんな噂を信じず、彼女に「好きだ」と告白する。そんな民夫をセックスに誘ってしてしまう悦子。 民夫は「セックスがしたくなったらいつでも俺を呼んでくれ。だからもう他の男とはするな。だからつき合ってくれ」と頼む。つき合いだした二人。授業中も抜け出していたのでやがては先生に見つかり悦子は自主退学。 数年後、民夫は廃品回収業を行っていた。偶然にも再会する民夫と悦子。「結婚しよう」と民夫は変わらぬ愛情を打ち明ける。 「おんなの河童」で死神役と脚本を担当した守屋文雄さんの俳優主演作。 正直、おもしろかった。エロチックコメディになるのだろうが、それにしても悦子役のめぐりのキャラクターで単なるコメディではない。 ほんわかした暖かいものを感じる。 そして民夫にしても好きな人が喜ぶことをしてあげたいという実に純粋な気持ちでセックスに励む。 話の方は民夫も仕事がうまくいってなかったが、結婚してからは仕事も上向き。 悦子の方は近所の青年から「声がうるさくて勉強にならない」苦情がくる。 結婚記念日にシャンパンを飲み過ぎ、翌日二日酔いになる民夫。しかしそのために居眠り運転で事故を起こしてしまう。 正直、ここで民夫は死んだかと思った。でも生きていて、しかしEDに。 口で悦子に奉仕する民夫。しかし悦子は満足出来ず、つい近所の青年としてしまう。 それを知った民夫は死を考えるが、排ガス自殺しようとしたときに女神が現れて奇跡が! EDが直ったのだ! 悦子は高校時代から性欲を押さえたくなったらグランドを走ってみる。(もっともその成果はあやしいが) 悦子の元に戻る民夫。 朝焼けをバックにシルエットでたくましい民夫のモノがアップになるラストはすごかった。 ギャグと言えばギャグなのだが、ラストの民夫のモノのアップは大迫力。 「いんらん」「やりまん」というと何かと負のイメージがつきまとうけど、これはそんなことはない。 いんらんだってやりまんだって愛情は通じる。ちょっと人よりセックスが好きなだけじゃないか。それが何で悪い?それも含めて受け入れる民夫の深い愛に感動。 その純愛には素直に共感し、感動した。 (このページのトップへ) 史上最大のヒモ 濡れた砂丘日時 2011年11月27日18:00〜 場所 銀座シネパトス1 監督 依田智臣 製作 昭和49年(1974年) (詳しくはムービーウォーカー・データベースで) 秋山(川谷拓三)はタクシーの運転手。儲けは少ないが、ストリップ劇場の踊り子に「俺とつき合え」と強がりを言う。ある晩、銀行の預金係をしている女性をタクシーに乗せる。 一度はタクシー会社をやめ大企業の運転手になり、たまたま飲ませてもらった高級バーのママにも「俺とつき合え」と言う。しかしママには「一人前になったらね」と足蹴にされる。 またタクシーの運転手になった秋山だが、ある日先日の銀行の預金係の女に出会う。「送っていくからお茶でも」と誘い出し、酒を飲ませホテルに連れ込む。 そんな関係をしばらく続けるうちに秋山はやがて「運送業をする。資金を貸してほしい」と金を引き出させる。 秋山はその金で豪遊し、高級バーのママとも関係を持つのだが。 川谷拓三初主演作品。 初主演は「河内のオッサンの唄」(76年)だと思っていたらそうではなかったのだな。 「仁義なき戦い・広島死闘編」から頭角を現した川谷拓三だが、これが73年。「資金源強奪」は75年、「狂った野獣」は76年だから、この映画の方が早い。 1時間の添え物東映ピンク映画だけど、すでに添え物とはいえ主役ではあったのだ。(もっとも今日あった息子の仁科貴さんと深作健太さんのトークイベントで出た話ではギャラは2万円だったらしい。物価も考えても今で言っても5万円ぐらいだと思う) 話は銀行の預金係から金を横領させる話だからてっきり三和銀行の伊藤素子事件を題材にしたのかと思って調べてみたらその事件は81年だった! なんと7年も前に映画になっている。というか伊藤素子事件が「映画みたい」と言った方がいいのだろう。 当時の伊藤素子事件の評価としては「オールドミスが銀行のオンラインシステムを悪用しお金を横領。単なる銀行員にそんなことが出来るとはどういうセキュリティなんだ!」という意見が多かった気がする。だから事件そのものはありふれていて、むしろB級映画か安っぽいテレビドラマみたいな事件が現実に起こったという空気だったように思う。 従ってこの映画がその見本みたいな映画。 ご丁寧にも女が海外逃亡をはかるところまで一緒だ(映画は海外に行く前に捕まる) で肝心の川谷拓三なのだが、どうも女に巨額のお金を引き出させるタイプに見えない。 前半のストリップの踊り子やバーのママにバカにされるのはいい。でも川谷なら包丁もって暴れるとか警官の拳銃を奪って撃ちまくる方が僕のイメージとしては似合っている。 女をだまして貢がせるような優男じゃない。 その辺のイメージのギャップがあって、どうにも映画に乗れなかった。 ラストは金のなくなった拓三がバーのママのマンションに行き、「金のないあんたには興味がない」と言われてカッとなって包丁でママを刺し、ママも刺し返してエンドマーク。 (このページのトップへ) Mの呪縛日時 2011年11月27日 場所 DVD 監督 新里猛 製作 平成21年(2009年) (詳しくはallcinema on lineで) フリーのカメラマン上村(永倉大輔)は今日も雑誌の編集者の明美(長澤つぐみ)を連れだって渋谷で露出の激しい女性の体を撮るという取材をしていた。そんな時喪服姿の美しい女性を見かける。後を付けてみると画廊に入っていった。彼女は高橋茉莉(成田愛)という名前で夫は大病院の医師だった。 上村は茉莉を意識するようになる。 明美と上村は実はSMプレイをする間柄。温泉旅館で二人の時間を楽しんでいたが、その旅館には偶然にも茉莉も泊まっていた。もちろん一人ではなく、人気上昇中の若手俳優の大村が一緒だった。 そんな時、知り合いの記者から茉莉の噂を聞く。彼女は男関係の噂は絶えなかったが、二度目の関係を迫ると死に至るという。彼女はインドに留学していたがヒンズー教の研究をして、そのヒンズー教の呪いのせいではないかというのだ。 「おんなの河童」の出演した成田愛さんが初出演した映画がこれ。 団鬼六原作の正統派のSMもの。 いわゆるVシネマかと思ったらオープニングに新東宝のマークが出る。いまおか作品も新東宝だが、新東宝マークはないのだな。だから所有するDVDで初の新東宝マークだ。 まず感じたのは主役の上村を演じる永倉大輔の体つきがよかったこと。SMもので女性が縛られる美しさはもちろんだが、往々にしてある男優の貧弱さが映画のレベルをさげることがある。 しかし永倉大輔が立派な体つきをしているので、絡みのシーンなど男女のバランスよく美しく、見ていて心地よい。 やっぱり男優がだめだと女優が引き立たない。 成田愛も新人ながら堂々の主演だ。 で、映画の縦軸は「なぜ茉莉と二度目を求めた男は死んでいくか?」 ヒンズー教の呪いというオカルトチックな伏線も出てくるが(それでも映画としては成り立つ)、一応ミステリーとしての展開をする。 実は不能の茉莉の夫が嫉妬に駆られて殺しているのではないか? しかし映画は意外な展開を見せる。 孫を切望する茉莉の夫の母親が「息子を守るために嫁に近づく男は殺す」という結末だ。 老女にそんな力があるかい!などという突っ込みはあるものの、意外なラストは楽しんだ。 70分の上映時間はピンク映画としては長尺だし、茉莉の家も豪華で見劣りがない。 愛染恭子の「奴隷船」と同じく、団鬼六原作となると豪華になるらしい。 そんな(おそらく)初歩的なこと知識も伺いとれた。 (このページのトップへ) キヲクドロボウ日時 2011年11月26日13:30〜 場所 ザ・グリソムギャング 監督 山岸謙太郎 製作 平成16年(2006年) (詳しくはallcinema on lineで) 自主映画制作チーム「プロジェクト やまけん」の軌跡をたどるという上映企画。 旗揚げ作品から一つの頂点を迎えた「キヲクドロボウ」間での上映。 「キヲクドロボウ」以外の短編は簡単に内容とコメントを記しておく。 「ビックリ・シャックリ」(2001年 14分) ある日突然人間爆弾なるものが山田の元に送られる。しゃっくりを100回すると爆発してしまうというのだ。 居合わせた小林らとともに食い止めようとするのだが。 画面右下にしゃっくりをする度にカウントダウンされる。 「あと何回」というのはサスペンスの王道の設定で面白かった。ただししゃっくりを止めてもまたいつかシャックリが出たら同じことだろうとか細かい突っ込みどころはあるけれど。 「逃想少年」(2002年 50分) 銀行強盗たちが海外逃亡するまでの間、どこかで1日隠れなければならない。コンビニでバイトをしている少年のアパートに隠れるのだが、車両が警察に通報され刑事がやってくる。 前作の出来に不満だった監督が続いて撮った映画がこれ。 銀行強盗たち(男一人女二人)が立てこもるのだが、主人公から奪った弁当を食べたら賞味期限切れで食あたりになったりの展開がコメディ的。コメディかと思えば強盗が「こんな時代にコンビニでバイトしていても一生底辺のままだぞ」と言ってそれに主人公か共感し出して彼らと同行するか迷いだすというシリアスな展開になったり、強行派の刑事が拳銃で立ち向かってきたりと急にアクションになったたかと思えば、その刑事は唐突に出てきてそのまま消えたりと脚本の詰めの甘さ、もしくは混乱を感じられる。 でも強盗がアパートに立てこもるというのは「レザボアドッグス」とか「血とダイヤモンド」みたいでよかった。 「JetSpeedZERO」(2003年 15分) やくざの麻薬取引のおとり捜査をする刑事がやくざに扮して相手と取り引きしようとするのだが、その現場に新聞の勧誘とか保険のセールスがやってきてらちがあかない。 俳優・津田寛治さんが参加した1本。いままで監督をしてきた山岸監督が「一度役者をやってみないと役者の気持ちが解らない」と出演をして、監督は別の女性に頼んだところ、津田さんのファンだった彼女が津田さんに手紙を書いたところ、出演してくれたという映画。 もっとも監督は高校時代に津田さんにインタビューしたことがあり、その時に「将来映画を撮るつもりなのでその時は出てください」と言ったときに「いいよ」と言われたので手紙を書いたんだそうな。そしたら出てくれたという展開。やっぱり行動力ですね。 さすがにプロの役者が出ると画面が締まる。自主映画がつまらないのは役者がダメダメだからだと解った。 多少脚本がだめでも役者がよければそれなりのものになる。それを実感した。 「違いに気づき始めたオレ達は迷い彷徨い再び気づくその日まで・・・」(2004年5分) 自主映画を作っている人が集まって5分の短編で渋谷で1日で撮るというお題で撮った映画。 二人の男が渋谷で待ち合わせたが、気がつくと右左が逆になっている。山手線を一周すればもとに戻るかも?ということで逆に行ったらもとの世界に戻れたという短編。 パラレルワールドに紛れ込む、という設定が後のSFアクション「キヲクドロボウ」につながると思える。 ただしコマ撮りを多用した画面はちらついて好きになれなかったが。 「キヲクドロボウ-collapse of Next-generation」(2005年 2分) 前から企画されていた「キヲクドロボウ」を作るにあたって協力者を募るために作ったプロモーション、パイロット版。主にCGで車が飛ぶところとか手にした機会から画像が飛び出るカットなどのCGカットが中心で、彼らの本気度を伝える一編。 この映像があったからこそ「キヲクドロボウ」のための人集めが出来たそうだ。 「キヲクドロボウ」(2006年 90分) 近未来。いまやREMコーポレーションは老人の記憶を保存する技術を開発し、「記憶バンク」のサービスを始めていた。そのころREMコーポレーションの幹部達が襲われる事件が続いていた。 犯人はスラッシュ。元はREMの研究員だ。 また事件を起こしたとき、スラッシュはREMの警備員たちの囲まれたが謎の男に助けられる。 追われるスラッシュは不本意ながらその男と協力する事に。男はタロウ(正木蒼二)と名乗る。 スラッシュはREMの記憶バンクの技術を盗みだし他に売りつけることが目的と言っているが真の目的は別にあるらしい。それは何か? 車が飛んだりするCG映像が立派。 完全にプロの映画レベルである。 このレベルなら一般劇場公開しても何にもおかしくない。 もっともこれが本当に普通の映画だったら「よくできているけどハリウッドのパクリ」とあまり誉めなかったかも知れない。だから実は「自主映画なのに」という前提で誉めているから一般映画に比べてハンデをつけているともいえる。 ホントにハリウッドのSFアクションにありそうなお話だし、世界観は「ブレードランナー」に似ている。 空飛ぶ車のデザインは「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のデロリアンのパクリだしね。 そうは言ってもお寒さはないので立派である。 スラッシュは死んだ同じくREMの研究員だった妹の死の真相を探るべくREMの幹部を襲っていた、タロウは過去にREMによって兵士としての記憶を植え付けられ最強の兵士になったが、元の自分の記憶を取り戻したいという男。それが結末なのだが、ホントに劇場公開してもおかしくないレベルで面白かった。 (このページのトップへ) 童貞。をプロデュース日時 2011年11月26日21:00〜 場所 オーディトリアム渋谷 監督 松江哲明 製作 平成19年(2007年) (詳しくはムービーウォーカー・データベースで) 松江哲明監督のドキュメンタリー作品。 童貞青年の踏み出せない純情な姿を描く。 「第1部 俺は君のためにこそ死ににいく」 数ヶ月前まで引きこもりだった加賀賢三くん(23歳)は今はなんとか自転車メッセンジャーのバイトをしている。彼はまさみさん(仮名)に片想い中。彼女とは何回か映画に行ったりしたこともあり、まったく何もないわけではないが、彼女は遠距離恋愛だが彼氏がいる。 しかしなかなか告白できない。 先輩の松江は女性になれさせようと自分が働くAVの現場につれてくのだが。 第1部(35分)は加賀君(童貞1号)。 そんなに見た目は悪くない。AVとか風俗の女性は汚いという。また「好きでもない女性とはする気になれない」とかで風俗とかには行かないという。 松江監督は自分がAVの仕事もしてる関係もあってかそんな加賀君をはり倒すが、私はそんな気になれなかった。 風俗やAVに救いを見いだす自分は汚いと恥ずかしくなった(反省はしないけど)。 出来れば純愛を貫くべきだ。そう思う。 AVの現場にスチルモデルとか言われて連れて行かれなんだかんだと言って抵抗する。 結局フェラチオされるのだが、やっぱり(文字通り)腰が引ける。帰るときに現場に迷惑をかけたと思い加賀君は謝る。 そうするとそのAVの監督のカンパニー松尾監督が「若いうちは迷惑かけたっていいんだよ。人と関われば迷惑をかけることになる。迷惑をかけないということは引きこもりになって一人で生きていくしかないんだから」と言っていたのには感動した。 てっきりごちゃごちゃ言った加賀君を怒っているのだとおもったから。 松尾監督の懐の広さには感動した。 最後にその今まで仮名だった加賀君の片想いの相手が登場する。 これが確かにかわいい。長澤まさみっぽい美人。 びっくりした。 第2部は「ビューティフルドリーマー」(50分) いまおかしんじ監督の「おんなの河童」に主演した梅澤嘉朗さんが以前に出演したのがこれ。 「おんなの河童」では役者としての出演だが、このときは ドキュメンタリーで自身としての出演。 いや見てよかった。 というかこれを見てから「おんなの河童」を見ると面白さが一層増す。 加賀君の紹介で登場したのだが、以前東京に専門学校時代に住んでいたが、今は実家の埼玉の山奥に住んでいる。 ほんとに何にもないところで自動販売機のあるところまで4kmあるのだとか。 アイドルオタクで80年代アイドルが好きらしく、雑誌の切り抜きをしている。 これはよくわかる。切り抜きこそしないけど雑誌を集めるのは私もするからだ。 80年代アイドルの島田奈美が好きで、その島田奈美にタイムマシンを使って会いに行くという自主映画を作ったこともあったそうで。 今回は松江監督が撮った映像より、梅澤さん本人が撮った映像が圧倒的に多い。というかほとんど。 だから梅澤君は「なにを見せるべきか」をわかった上で撮っている。もちろん松江監督の編集もあるけど、そもそもの素材がだめなら編集にも限界があろう。 梅澤さんの映画的センスも立派だ。 梅澤さんが作った映画を島田奈美(現在は音楽ライターの島田奈央子)に松江は見せようとする。 彼女は来てくれるか?が映画のクライマックスなのだが、それにいたる課程で梅澤くんの雑誌集めとかブックオフ通いとか雑誌の切り抜きのこだわりが紹介される。 さっきも書いたけど、実に共感した。 また女性に慣れるためにとかつて専門学校時代に好きだった女の子と井の頭公園でデートする。 帰りの車の中で彼は吐いてしまう。 女性に対する緊張のなせる結果か。 そんなに緊張する梅澤くんが愛おしい。 結局島田さんは「もう昔のことなので」と映画は見に来なかったけど、代わりに梅澤君が尊敬する漫画家の根本敬さんが見に来てくれたというオチ。 女性に対する夢と理想にあふれる二人の好青年を描いた秀作(ほんとだよ)。 (このページのトップへ) 11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち日時 2011年11月25日20:15〜 場所 テアトル新宿 監督 若松孝二 (詳しくはムービーウォーカー・データベースで) 1960年10月、社会党浅沼委員長は17歳の右翼少年に刺殺された。それに象徴される60年代は激動の時代となる。 作家・三島由紀夫(ARATA)はノーベル文学賞の受賞も噂される一方、憂国の情熱に押され、自衛隊を軍隊とした憲法改正を考える。 自衛隊への体験入隊により、その思いは一層強くなり、学生を集めた「盾の会」を結成。 同じ頃、三重県生まれの高校生、森田必勝(満島真之介)は日本をよくしたいとい情熱を持ちながら早稲田大学に入学。左翼学生に大学が占拠される中、右派の学生連盟・日本学生同盟(日学同)に入り、その縁で「盾の会」に入会。 森田は三島を信奉するようになり、三島も森田の情熱に突き動かされていく。 「実録・連合赤軍」に続く若松孝二の60年代学生運動の流れの中での三島由紀夫を描いた映画。この日は完成を記念しての三島自決の11月25日にあわせての上映会(無料ではないので試写会とは言わないようだ) ポール・シュレーダーの「MISHIMA」は彼の生い立ちから作品、決起の日までを総合的に描いた映画で、三島由紀夫のすべてをダイジェストで紹介していた。 しかし本作は「憂国の士」としての側面が描かれる。 山口二矢の暗殺事件、金こ老事件、よど号事件、新宿争乱事件、そして盾の会の若者たちとの交流、そういうものに付き動かされていった三島だ。 だからどちらかというと三島が主体的に動いていったというより回りに動かされていくように見える。 そのせいか三島には何か迫力がない。 そしてもう一人の主役・森田必勝。 数いる盾の会のメンバーの中でも彼が比重を持って描かれる。憂国の情熱に溢れ、日本の現状を憂うる青年だ。 「三島先生の小説はよくわかりません」と言い、でも「僕には難しいことはわかりません。でも日本を変えるにはどうすればいいのですか!?」と詰め寄る。 三島も森田も体験入隊を通じての自衛隊の交流から、当初は自衛隊に期待していた。 しかし自衛隊は決起しない。「我々は公務員ですから」「今はその時期ではない」と逃げる。 そして新宿争乱事件でも警察力で事件は対応され、自衛隊の治安出動はなく、自衛隊の治安出動をきっかけに自衛隊の国軍化を考えてた三島たちは自衛隊に対する期待は失望に変わる。 そして昭和45年11月25日の三島演説。 しかし自衛隊は呼応せず、三島、森田は自決。 三島が東大全共闘討論会に出席するシーンが出てくるが、「君たちとは共闘しない。しかし君たちの国を憂う気持ちには共感する」といった主旨の発言がある。 若松孝二は連合赤軍を映画いたりして左翼の監督と思われるかも知れないが、それは結果的な話しだと思う。 三島も連合赤軍も「日本をよくしようという情熱に燃える人々」という点では完全に一致する。 若松孝二が描きたいのは国家権力や金持ちに対抗していく人々だと思う。 出演では何と言って森田必勝役の満島真之介が好演。 映像デビュー作(俳優の経験は舞台のみ)だがそんなことは感じさせない圧倒的な迫力だ。 完全に主役を食っていて、森田必勝の映画と言っても差し支えない。 今後が楽しみな大型新人だ。 この日は鈴木邦男さんと森達也さんのトークイベント付き。 鈴木さんは盾の会のメンバーを実際に知っているので映画と比べた話になったときに「初代学生長の持丸博さんは似ていた。顔と言うより雰囲気が。ああいう老け顔をしていてまわりから『じっちゃん』と言われていた。森田はもちろんあんな二枚目ではなかったけど、決起の時の鬼のような形相は似ていた」とお褒めの言葉を述べてました。 またトークイベント後、ロビーにいた満島さんと鈴木さんの会話を聞いたのですが、満島さんは演じる前に森田必勝の実家に行って森田氏の兄に挨拶しに行ったんだそうな。 そこで2時間ぐらいお話をしてもらって、そういうことが役に入り込めた理由にもなったそうです。 (このページのトップへ) 古奈子は男選びが悪い日時 2011年11月23日 場所 TSUTAYA宅配レンタル 監督 前田弘二 製作 (詳しくはムービーウォーカー・データベースで) 前田弘二監督の短編映画4本集。 「女」 正太とカズコは同棲中。ある日、カズコが風呂に入っているときに、先ほどゴミ捨て場で出会った女が部屋に訪ねてくる。とりあえず応対した正太だったが、「トイレを貸して欲しい」とか「カズコの友達ですか?」と問う正太に「ハイ」と答え部屋に入ってくる。女はユミと名乗ったが、実はカズコの友達ではないと言う。 気持ち悪くなった正太は「出ていってください」と頼むが「少しだけいさせてくれ」と懇願するユミ。 どうやらかつてユミの恋人だった男がこの部屋に住んでいたらしい。 30分ほどの短編。 一部屋だけの物語で、「口が臭い」「臭くないやろ」「いや臭い」など延々ループする会話など、まるで(私の嫌いなタイプの)小演劇を見ているようでいやになった。 でユミの恋人はガンで死んだらしく、その男が未だに忘れられない。結局自分の中で納得してユミは帰っていく。 そのユミに「あんたいい女やで。頑張れ!」と声をかける正太。 「いい女」とかさあ。もうすこし気の利いたせりふを最後に言って欲しかった。 「鵜野」 岩本(吉岡睦雄)は東京に出て5年。そこへ田舎の後輩、鵜野が突然やってきた。妹をグラビアアイドルにして儲けようという。そこでとりあえず岩本のアパートに住まわせてもらいたいというのだ。 彼女の部屋に住まわせてもらっている立場の岩本は断ったが、鵜野は彼女の意見も聞きたいと引き下がらない。 仕方なくアパートで4人で話すのだが。 前回に引き続き、日常の中に不条理な頼みをしにくる珍入者を描く。 「女」では侵入される立場だった宇野祥平が今度は侵入者の役。 ネチネチと住まわせて欲しいと言ってくる姿は「イングロリアス・バスターズ」のナチ将校を思わせる。 吉岡睦雄は押されっぱなしである。 鵜野というキャラクターが好きになれないタイプなので、不快感があったが、面白くはあった。 「古奈子は男選びが悪い」 古奈子はいつも変な男を好きになって一緒に住んで別れてしまうと彼女の男選びを心配した親友が、数人の男友達を古奈子のアパートに呼んで飲み会を行う。 その中の一人吉岡(吉岡睦雄)と後日デートする古奈子。 土産もの売場で「職場の人に」と大量におみやげを買い込む吉岡にちょっと閉口する古奈子だったが。 50分の中編。 最初にアパートでの飲み会のシーンから始まったから、前の2本と同じくワンシーンドラマかと思ったら、飲み会は始まってすぐに終わり、古奈子と友人の話のシーンになったのでちょっと驚いた。 吉岡とのデートのシーンで「虎がくるくる回る絵本て昔あったよね?あれ、最後に何になるんだっけ?」という話題を割としつこく行ってさっきも感じた(いやな)小演劇みたいでちょっとくどかった。 結局、吉岡のおみやげ買いも「彼の人に対する気遣い」と解釈し、彼から思ったおみやげの「虎」のキーホルダーを見ながらドラマは終わる。 私は吉岡睦雄さんのファンだからそれだけ楽しんだ。 「ラーメン」 10分の短編。 8mm作品で画質は荒い(でもDVDではビスタサイズだったりする)。 話は全裸の女性のアパートにラーメンの出前が二つ届けられる。でも女性は頼んだ覚えはない。 女性は死んだ恋人のことを忘れられない。 最初の「女」と同じく死んだ恋人を忘れられない女性の話。「このラーメン、恋人が好きだったネギ抜き味噌ラーメンだ」と彼が頼んだものかと思ってしまう。 結局、ラーメンの出前の男が「これも何かの縁ですから」とその女性とつき合うことに。 「女」と同じようなモチーフの作品で、「侵入者」「縁」「死んだ恋人」など他作品にも共通するキーワードあり。 後の映画につながるものがあることがわかる。 (このページのトップへ) 花つみ日時 2011年11月23日 場所 TSUTAYA宅配レンタルDVD 監督 サトウトシキ 製作 平成23年(2011年) (詳しくはムービーウォーカー・データベースで) あさこ(和田みさ)は高校生の頃に父親が自分より年下の女と出来てしまい、離婚した。母親はそれが原因で自殺。 数年後、タオル工場で働くあさこ。職場の同僚に田宮(吉岡睦雄)がいた。田宮は妻を亡くし、それ以来記憶が1日しかもたない人間になっていた。しかし実は田宮が田宮の妻を殺したという噂が絶えない。 同じく職場の同僚のユキオはメグとつき合っていたが、あさこにも気があるようだ。 あさこは田宮のアパートに強引に押し掛け、アパートの庭にアサガオの種を植える。それは自殺する前の母親が育てていたアサガオが残した種だった。 アサガオに水をやると称して田宮のアパートを訪ねるあさこ。あさこは母の死以来、自暴自棄で誰かに絞殺されたがっていた。 やがて田宮は妻が浮気したので殺したと告白する。あさこにも手をかける田宮だった。 青春Hのセカンドシーズン。 劇場公開が9月でDVDレンタルは10月には出たようである。吉岡睦雄さんの出演作を少しまとめて見ようと思って見た。 正直なんにも引っかからなかった。 田宮は1日しか記憶がもたないという設定も強引すぎる。ほんとにそんな病気があるんだろうか?そしてそういう人を取材なり、本を読んだ上での設定なら文句は言えないけど、設定がイージーすぎる気がする。 そもそも言葉とか名前は忘れないらしい。 でも日常生活は忘れるらしいので、朝起きてから「顔を洗う、歯を磨く」などが壁に書いてある。 工場で仕事をするときはノートを見ている。しかも仕事はできあがったタオルを畳んでいるだけというめちゃくちゃ単調な仕事だ。仕事終わってからはカップラーメン1杯しか食べない。 でも朝飯も食わないし、昼は職場で食べるのかもしれないけど、夜がカップラーメン一杯ってのはなあ。体持たないよ。 そしてまた押し掛けてくるあさこのキャラクターも好きになれない。 で、あさこを殺して田宮は布団に巻いて茂みに捨てる。 でも翌日蘇生して布団にくるまったままあさこは町を歩き、ビルの屋上にいる。 田宮はそれを見つけ、自分もビルの屋上に行き、布団をほどいた後で自分はビルから飛び降りて自殺する。 でも死なない。 アサガオは花を咲かせるために他のつぼみを自分でつんでいく、ということが紹介され、人間が生きていく上でも他人を犠牲にしていくみたいなことが言いたいんだろうけど、話に展開がなさすぎて退屈した。 そうそう田宮のアパートであさこが植えた種が発芽して、そこから一晩で花が咲くシーンがあり、コマ撮りでアサガオが咲く様を見せるのだが、当然1日で撮影できるわけではなく頑張っているなと思う。 その点はお疲れさまと言いたい。 (このページのトップへ) ある密かなる壷たち(公開タイトル:性戯の達人 女体壷さぐり) 日時 2011年11月22日21:00〜 場所 目黒シネマ 監督 園子温 製作 平成12年(2000年) 人気女流陶芸家のナミエは弟子のトモミ、マキコ、ユウヤとともに日夜壷作りに励んでいた。彼女の夫であり師であるテツヤ(園子温)は今や病気で伏せていたが、ナミエは献身的に介護していた。 ナミエのろくろを回しながら土をコネていく様はとてもセクシーで壷をまるで男根のようにいとおしんでいる。 女流陶芸家たちの展覧会の時、今年もナミエが優勝かと思われたが、新人のヒカルが注目を集めてしまう。 テツヤは病気の体を押して、ヒカルの工房に行ってみると、彼女はその巨乳で土をコネていた。テツヤはヒカルに見つかり、犯されてしまう。 帰ったテツヤだが、体力を使い果たし、息絶える。 ナミエは今度は口を使ってまるでフェラチオをするように壷を作っていく。 「恋の罪」を見に行ったらこの映画のチラシがおいてあった。22日から4日間の限定レイトショー上映。目黒シネマは大蔵映画の映画館なので(ただし成人映画館ではない。普通の名画座)そんな縁もあっての上映か。 ピンク映画はなるべく見るようにしているし、園監督がピンク映画を撮っていたとは知らなかったのでとりあえず見てみる。(帰ってからネットの情報で知ったが、薔薇族ものもあと1本撮っているそうだ。これも見たい) 面白かった。 以前から「ろくろを回しながら土をコネる姿って妙にいやらしいな」と思っていたが、そのアイデアを膨らませたワンアイデア映画。 だからストーリー性はほとんどなく、土をコネるいやらしさとセックスを掛け合わせたシーンの連続で楽しませる。 ただろくろを回している姿だけでなく、あのぬるぬる感がいやらしいのだな。 またろくろだけでなく、ナミエの姿に興奮した弟子たちが3人で始めたり、女性の弟子二人は外に出て村人を襲い(?)工房に連れ込み、泥をお互いの体に塗りたくってプレイするという広がった展開もあり。 ラストはナミエが今年の品評会で優勝すると思いきや、新人のアミが優勝。 悔しがるナミエの工房にヒカルがやってきて、「あんな小娘に負けられないですよね!」と言ってヒカルが巨乳で、ナミエがお口で土をコネて新しい壷作りに励むシーンでエンド。 抱腹絶倒という訳ではないけれど、「ろくろは妙にいやらしい」というアイデアをうまく膨らました面白い映画だった。今まで見た園子温作品では一番面白かった。 (このページのトップへ) 恋の罪日時 2011年11月20日13:30〜 場所 テアトル新宿 監督 園子温 (詳しくはムービーウォーカー・データベースで) 吉田和子(水野美紀)はラブホテルで不倫の最中に呼び出される。渋谷円山町の廃アパートでバラバラ死体が見つかったのだ。死体は胴体と首などが切り離され、代わりにマネキン人形の首がすげてあった。 菊池いずみ(神楽坂恵)はベストセラー作家で潔癖性の夫(津田寛治)との生活で暇を持て余していた。 スーパーでウインナーの試食と販売のバイトを始める。 そこでモデルのスカウトをされたが、行ってみたらAVの撮影だった。しかし彼女はセックスに目覚め、一人で渋谷の街角に露出の多い服を着て出没するようになる。 そこでカオル(小林竜樹)という若い男にホテルに連れ込まれる。そのつながりで尾沢美津子(富樫真)というたちんぼの女性と知り合う。 園子温の新作。 渋谷円山町の東電OL殺人事件をモチーフにしたと聞いたが、あまり現実の事件とは関係ないようだ。 (現実の事件は冤罪事件として別の展開を見せている) 見ていてなんだかフランス書院文庫のエロ小説みたいな話しだなあと思う。 まじめな人妻が淫乱に落ちていくとか、昼は大学の日本文学の助教授、夜はデリヘル嬢という設定とか、エロ小説の見本みたいな設定だと思う。 またはストーリー性のあるAVとか。 「男性の妄想であんな女性はおらんだろう」と言い切るほど女性に関して知らないので断言はしないが、なんかそんな気になった。 そりゃセックスが好きな女性はいると思うよ。 でもモデルのバイトと言われて実はAVでやってみたらハマってしまったという展開は映画としてイージーすぎる。 そして昼は一流大学助教授、夜はデリヘル嬢とかまるで出来の悪いピンク映画みたいだなあと思う。 で、いずみがカオルのデリヘルの店で働くようになって美津子の取った客が実はいずみの夫だったという展開。 ベタすぎないか、その展開。 オチになってない気がして一気に白けた。 そして何より腹が立った、というか気に入らないのはマーラーの交響曲第5番を使ったこと。 先日ニュープリントで再公開された「ベニスに死す」を見たばかりなので、記憶も新しく、完全に私は拒否した。 この曲の使用について園監督はパンフレットのインタビューで次のような主旨で答えている。 「もちろん『ベニス死す』の曲だから使うのは躊躇した。でもマーラーは別に『ベニスに死す』のために作った曲じゃないし、いいかなと。使ってみたらぴったりだったので、マーラーはホントはこの映画のために書いたんじゃないかと思った」 確かにマーラーは「ベニスに死す」のために書いた訳じゃないけど、「ベニスに死す」ファンとしては納得出来ないものがある訳ですよ。 だから同様に「ツァラトストラかく語りき」と「ワルキューレの騎行」の二つはこの曲が使われた二つの映画の陰がつきまとう。少なくとも映画を見ている方はその映画を意識してしまう。パロディ的に使うならまだ解るが、今回の使用は園子温のアイデアの薄さを感じてしまう。 あと吉田和子の不倫がどうもとってつけたようで話に絡まっていない。 まあよかった点は美津子の母親(大方斐紗子)がよかった。 上品な良家の出身で、そのおだやかな要望ながら「下品、淫売、売春」の単語を連発するところはその見た目とのアンバランスがよかった。 (このページのトップへ) 第7鉱区日時 2011年11月17日20:10〜 場所 新宿バルト9・シアター1 監督 キム・ジフン (詳しくはムービーウォーカー・データベースで) 東シナ海、九州西の海域は通称「第7鉱区」と呼ばれ、チャ・ヘジュン(ハ・ジウォン)たちはボーリング作業に明け暮れていた。しかし一向に石油がでる気配はなく、本社は撤収を検討し始める。そこへ撤収の指揮官としてジョンマン(アン・ソンギ)がやってくる。 ヘジュンの父もかつては第7鉱区で石油採掘をしていて事故で亡くなっていた。ヘジュンがこの地区にこだわるのはそんな理由もあった。ジョンマンはかつてヘジュンの父の同僚で、ヘジュンも信頼を寄せていた。 数ヶ月経ったある日、この採掘船で生物研究担当の女性学者が高所から落ちて死亡する。 ヘジュンたちは女性学者に想いを寄せていた乗組員の仕業と思った。だが違っていた。謎の生物が彼らを襲っていたのだ!逃げ場のないこの採掘場で彼らはいかに戦いうのか? 要はモンスター映画だ。 怪物は特に名前はない。韓国初のCG作業をすべて韓国で行ったというハリウッドの力を借りずに作ったという純国産映画というふれこみ。でも韓国なら売り文句だろうが日本人にはあまり関係ない。 ついこの間見た「人喰猪、公民館を襲撃す」が「ジョーズ」ならば、こちらは「エイリアン」である。 逃げ場のない船の中で怪物から逃げまどうというアウトラインはまるっきり同じ。 でもはっきり言って「人喰猪」の方が面白かった。 すごいのは「人喰猪」は上映時間が2時間ある。 「第7鉱区」は1時間40分。でも「第7鉱区」は退屈した。 まず怪物が登場して話が動き出すのが遅いのだ。 前半、ヘジュンとその恋人がオートバイ競争をするところがたっぷり見せられる。そしてジョンマンがクレー射撃をするところもたっぷりあり、なかなか本題にいかない。 そしていったらいったで、怪物の体液は可燃性でそれに火をつけて燃やす。そうすれば大抵死ぬだろうと思うのだが、死なない。で、後半でも火炎放射をするのだが、効かないんでしょ?何回も同じことをするので飽きてくるのだな。 ここはどこかに閉じこめようとするとか、上からものを落とすとかいろいろ作戦を立ててあの手この手で攻めていかないと飽きる。 それに何か弱点を作っておいた方が人間対怪物が対等に戦えてよかったんじゃないだろうか? たとえば光に弱いから光を当てると数秒間は動けなくなるとか。 あと外に連絡がとれないわけだが、これも外に連絡がとれそうになったりとか、いろいろ面白く出来そうな要素はあるような気がする。 あっ備忘録で書いておくけど、ヘジョンの父たちはかつて海中で燃え続ける深海生物を見つけ、これを増やして燃料にしようと計画するが、「生き物を燃やすのか?」という疑問もあって失敗。しかしジョンマンはそれを忘れられずに密かに栽培を計画して、それが巨大化したという設定。 ラストは削岩機で怪物を粉砕。 このアイデアはよかった。 ラストシーン、死んでいった乗組員たちが生前残していった手形を見ながらヘジョンが涙するところは韓国映画らしい盛り上げ方だなあと思う。 私は好きじゃないけど。 そして思うに「人喰猪」とこの「第7鉱区」の最大の違いは作り手たちのモンスターパニック映画に対する「愛」じゃないだろうか? そんな気がした。 (このページのトップへ) 人喰猪、公民館襲撃す日時 2011年11月14日21:00〜 場所 シアターN渋谷・スクリーン1 監督 (詳しくはムービーウォーカー・データベースで) キム巡査はソウルから田舎町の派出所に派遣されてきた。その村ではいまや有機野菜販売や週末農場などの事業で都会から客を呼び、村長や村の実力者は儲けていた。 そんな頃、ある晩山で男が何者かに連れされる事件があり、続いて少女が死体となって発見される。 警察は刃物でえぐった死体と判断するが、少女の祖父で元ハンターはこれは山の獣のしわざと断定。 そしてついに梨園で人が猪に連れされる事件発生。村の実力者は都会から人がこなくなっては大変とハンターを雇って猪狩りをする。 何なく一頭の大きな猪が捕まった。しかし元ハンターはこれは違いのではないかと疑い、腹を開けてみると未消化のものが違う。 「もっと強大な猪がいる!」元ハンターをはじめキム巡査も生物学者も加わって山にその猪をとらえに行くのだが。 「公民館襲撃す」というタイトルだから公民館に猪が襲ってきて、「ミスト」のような密室パニックかと思ったらさにあらず。普通の動物パニック映画だ。 この映画、上映時間が121分。モンスター映画としては長い方だ。「ゴジラ」だって普通は100分ぐらい。 この手の映画は低予算ということもあって上映時間は90分を切ることが多い。 ただの人喰い猪の話で2時間はつらいなあと思っていたが、実際みてみると2時間十分に見せた。これはすごい。 ストーリーは「ジョーズ」と同じく伝統的なモンスターパニックものの王道を行く。 人々がいなくなったり悲惨な死体が見つかる、動物の仕業と決まる、ハンターが捕まえる、でもそれは違っていた、町が襲われる、いよいよハンターたちが捕まえに行く。 こういう王道の展開。 でもストーリーは王道だけど、人物のキャラクターや設定はギャグにしている。でも日本人と韓国人では笑いのツボが違うのか、どうも笑いがすべるけど。 主人公の警官が普通のヒーローではない。 ソウルでは交通違反の取り締まり中に市民と喧嘩になってしまい、田舎に飛ばされてきた人。 しかも認知症の母と妊娠中の妻を抱え、田舎への赴任は憂鬱だ。途中のドライブインで母をおいてくる夢を見る。 こういう設定は普通はいらないと思うけどなあ。 しかも最後に山に入るのはその認知症の母親が山に入ってしまったからそれを追いかけて、という展開。 決して自分から猪退治に参加したわけじゃない。 そして元ハンター。かつては名人と言われたが今は隠居同然。途中から登場するハンターとは師弟の関係で今は仲違いしているという設定。 で普通は仲違いした師弟が事件を通じて関係を修復させるとなるわけだが、それもあるけど、意外にこの老ハンターがヘタレ。動物用の罠に引っかかってしまったり、しまいには(前半で猪に出会ったらどうすればよいかの注意をテレビでしているシーンがあり、その中で「傘を開くと岩だと猪は思います」という言っている。それを老ハンターはみて「傘を持って山に行く奴がいるか?」と言っていたのに)猪に襲われた時に真っ赤な傘を開く。ここで大爆笑なのかも知れないが、こっちは笑う準備が出来ていないのでそれほど笑えなかった。 で、昔ながらの「稲妻おとし」という罠(板を立てかけその上に大きな石をたくさん置き、猪がその板の下に入ったところでつっかえ棒をはずし、板の下に閉じこめる罠)を見つけそれを直したから、ここに追い込んで猪を倒すのかと思わせてその罠は破られる。 あと都会からきた刑事がいるんだが、これがなんだかせこい野郎で、飲み残した未開封の缶コーヒーをもって帰ったり、公民館が襲われてその現場検証の際においてあるたばことライターをポケットに入れてしまったり、なんだか変な奴。そうそう、途中のクライマックスで公民館でみんなが宴会をしているときに猪に襲われるシーンで、警官の一人がトラクターの運転席に入る。当然ここはトラクター対猪の一戦があるかと思ったら、警官は中で固まったまま。 こういう「期待外し」が多い。 もちろん意図的だと思うけど、ちょっと寂しい。 でもラストはトロッコに乗って廃工場に入り(ここが「いま殺しにいきます」の工場に似ている)エレベーターの下に猪を誘いこみ押しつぶすというのは王道的倒し方でよかった。(トロッコのシーンは明らかにインディ・ジョーンズだな) あと狂人の女が出てきたり(この女はラストのオチで、現役ハンターの方を捕まえてつるしているというシーンがある)、主人公の警官の認知症の母が思ったより活躍がなかったり(そもそもいらない)多少不満はあるけど最初に書いたとおり2時間飽きずに見せたのはすごい。 面白かった。 (このページのトップへ) 野獣刑事(デカ)日時 2011年11月13日14:30〜 場所 ザ・グリソムギャング 監督 工藤栄一 製作 昭和57年(1982年) (詳しくはムービーウォーカー・データベースで) 大阪府警今宮署の大滝刑事(緒形拳)は有能だが組織には従わない一匹狼的刑事で署長(藤田まこと)たちからは疎まれていた。大滝はかつてシャブの売人として逮捕した阪上(泉谷しげる)の女・恵子(いしだあゆみ)と今はつきあっていた。 そんな頃変質者と思われる女子大生殺人事件が起きる。 被害者の女子大生は評判と違って昼はノーパン喫茶、夜はコールガールの仕事をしていた。 大滝は現場に落ちていた多数の紙片がつなぎあわせると一枚の絵になることに気づく。 その絵は宗教画のようなイメージでその絵を買えば救われるといううんちくをつけて町で売っている田中(益岡徹)の絵だった。大滝は田中を別件で逮捕。しかし証拠不十分で釈放になった。 そんな頃、第2の殺人事件が起きる。 公開当時、映研の先輩が「面白かった」と誉めていたことは記憶している。でもその時は観なかった。 たぶんB級映画っぽさを感じたのだろう。 実際、オールロケ映画で大阪を中心としてあちこちですべてロケセットで撮影されている。 よくあるはみ出し刑事ものなのだが、どうも乗り切れない。たぶん緒形拳があまり好きな俳優ではないせいだろう。その辺でどうも乗りきれない。 そして犯人に簡単にたどりつくところもがっくり来てしまう。結局益岡徹が犯人なのだが、あまりにもイージーにたどり着く。映画を観てるときは逆に「益岡徹は犯人じゃない」とまで思ってしまった。 で大滝刑事は自分で捕まえようとして恵子におとりになってもらうよう頼む。 最初は渋った恵子だが、結局おとりになる。しかし恵子を見張っていた大滝が、通過する車の陰で見えなくなった一瞬に犯人に連れ去られる。で驚いたことに恵子は殺されてしまう。ひょっとしたら病院にいく途中で助かるかと思ったが、やっぱり助からなかった。 これには驚いた。 泉谷しげるの阪上だが、出所してから恵子と大滝の三角関係のなかで生き、恵子も阪上が働いて稼いでくれると思っていたが、実はシャブの売人をし、自分もまたシャブにおぼれていった。川岸のアパートの対岸で火事があった時、消防車のサイレン音がきっかけで阪上は暴れ出す。 このとき対岸で火事が起こっているので「どうやって火事を起こしたんだろう」と思っていたら、トークイベントで撮影の仙元誠三さんの話では、ホントに撮影中に偶然火事があったのだという。偶然にしてはすごい! このシーンがあってから恵子が殺される。 恵子が殺されたところで映画は終わると思っていたら、その後自分の好きだった恵子を殺された恨みで町で車を暴走させ、大滝を呼べと要求する。 このシーンはカーアクションありのよく出来たシーンなのだが、僕の中では恵子が死んだところで映画は終わっているので、「えっまだ続くの?」という否定的な思いしかなく、完全に飽きてしまった。 脚本の神波さんもトークイベントで、「まとまりが悪い」 とおっしゃっていたが、本人もそう思ってるなら仕方ないという感じ。 ここには書かなかったが恵子には子供がいて、その子供との交流も映画の軸をなす。 しかしそこも話に乗れず、この映画を好きな人がいるのは理解するが、僕はだめだった。 (このページのトップへ) キャバレー日時 2011年11月12日 場所 DVD 監督 角川春樹 製作 昭和61年(1986年) (詳しくはムービーウォーカー・データベースで) ある港町のキャバレー。矢代俊一(野村宏伸)はこのキャバレーで最近サックスを吹き始めた若者。 今日も地元のヤクザ幹部・滝川(鹿賀丈史)は「レフトアローン」をリクエストしてそれを聞いて帰っていった。 矢代は大学のジャズ研に飽きたらず、自らキャバレーのバンドでサックスを吹く道を選んだ。 自分が尊敬するジャズメンたちはみんなニューヨークの裏町で酒と麻薬におぼれながらジャズを極めていった。自分もそんな世界に入らねばと思ったからだ。 そんな頃、滝川のシマに関東ヤクザの大組織が攻勢をかけてきた。 ある晩、乱暴な客から救ったことからホステスの英子(三原じゅん子)と俊一は親しくなる。 関東ヤクザと滝川たちの争いにいつしか巻き込まれる俊一。英子との関係の中で裏社会の男女関係にも巻き込まれる。滝川が昔から惚れている女・南部恵(倍賞美津子)は伝説の日本人サックスプレーヤー、南部明の妹だった。 多くの人間たちにもまれながら、俊一はジャズとともに成長していく。 兎に角映像が美しい。 公開時には初日に見に行った記憶がある。テレビスポットなどでCMをしていたからその映像の美しさには期待が大きかったと思う。 そしてその期待は裏切られなかった。 ジャズとハードボイルドな展開が当時の私の嗜好にジャストフィットし、こういう映画が観たかった!と思わずにはいられなかった。 たぶん5、6回は観たと思う。 冒頭、モノクロの映像の中で男が若者を射殺する。 それからカメラは外にでて雨の中を奥に進んでいく。 そこにはキャバレー・スターダストの看板。 カットは店内に変わり、にぎわった客席の中を(客席で一番最初に写るのは北方謙三だ)カメラは移動しバンドを写す。そこでサックスを吹いているのが矢代俊一だ。 この数分の冒頭のシーンでしびれた。 兎に角しびれた。 日本とはおもえない、ニューヨークの街角のような舞台の中で話は進む。 やくざの抗争が話の主軸だが、東映のそれと違ってまるでアメリカのギャング映画のようなおしゃれな雰囲気だ。 英語の看板が立ち並び、ただただ美しい映像が並ぶ。 無国籍アクションの極みだ。 鹿賀丈史もかっこいい。 野村宏伸は美少年でビジュアルはいいのだが、とにかく芝居がヘタ。 原田知世とか真田広之とか渡瀬恒彦とか千葉真一とか薬師丸ひろ子とかただただ贅沢に登場する。 スターダストのセットも立派で、玄関を開けた外まで作りこんである。 美しい映像とジャズに酔いしれる映画だ。ただ酔うにふさわしい映画だ。 矢代君は真のジャズを求め場末のキャバレーに身を投じた。先輩の田能倉は就職した。それは当時の私自身の悩みであったのだろう。 そんな極私的な記憶もあって、僕にとっては生涯忘れられない映画の1本である。 (このページのトップへ) 天皇ごっこ 見沢知廉・たった一人の革命日時 2011年11月12日18:00〜 場所 K's Cinema 監督 大浦信行 (詳しくはムービーウォーカー・データベースで) 2005年9月7日に46歳で自宅マンションから飛び降りて自殺した作家・見沢知廉。 学生時代には左翼運動に加わり、成田空港闘争で戦い、その後右翼運動に身を投じ、仲間のスパイ事件から相手を殺してしまったことにより12年間の獄中生活。獄中で書いた小説、「天皇ごっこ」が新日本文学賞を受賞。出所後、作家活動を行うが、自殺。 そんな彼の軌跡を「見沢の双子の妹」という架空の存在がインタビュアーになっての見沢をよく知る人たちの証言集。 見沢知廉という作家は僕自身にはまったく縁がない。 著書をよく拝読させていただいている鈴木邦男さんの話によく出てくる作家の方。 鈴木邦男さんの一水会などで右翼運動に関わっていたので鈴木邦男さんにとっては非常に縁の深い方なので、よく話に登場する。だから見沢知廉の本は読んだことはないが、その存在はちょっと身近に感じる方だ。 見沢知廉は1959年生まれ。私より数歳年上。亡くなったのは2005年9月。私が初めてプサン国際映画祭に行く準備をしていた頃だ。鈴木邦男さんと初めてあったのは2004年3月の中野武蔵野ホールで松林宗恵監督特集のあった頃(このときは偶然宴席で一緒になっただけで、鈴木さんの著作を読み始めるのは「あんにょんサヨナラ」の2006年7月)だから、その時にはまだ見沢は亡くなっていなかった。 映画の方だが、兎に角、私は見沢知廉の本を一冊も読んだことがないので、よく知らない人の話を聞いていても正直ピンとこない。 映画の方も何にも知らない人が見てもわかるような(たとえば「天皇ごっこ」がどんな小説であるかの説明とか)は全くなく、ある程度の予備知識がないと楽しめない(というかわからない) だからその獄中12年の事件となった仲間の殺人でもどうしてそういうことになったのかがよく解らない。 こういう証言集というのは映画的には結構退屈である。 レポーターが活動的に観客に何かを見せてくれるスタイルの方が面白い。 映画を見に来ている人たちは見沢の著作を読んだことがあるような人々だろうから、それでいいんだろう。僕のようなトーシローを対象にはされていない。 でもそれは僕の無知もあるのだが、所詮見沢知廉という作家がマイナーなせいも否めない。 途中の野村秋介の出版社二十一世紀出版の社長が「見沢さんは世間的にはマイナーなので三島由紀夫や野村秋介と同列には語れない」と言っていたことからも裏付けられると思う。 そんな中でも鈴木邦男さんのインタビューのなかで見沢から仲間を殺した話を聞かされ、そして「自首を勧めたが彼は応じなかったが、無理強いするのではなく、彼の判断に任せようと思った。左翼で時効まで逃亡した人もいるから自分もそうすると言った。何となく彼なら出きるのではないかと思ってしまった。冷静に考えると無理なんだが」というあたりの話を語る鈴木さんには、僕自身にも感慨があった。そうか鈴木さんもそんな複雑な経験をしていたのか。文章で聞いたことがあった気がするが映像で聞くとちょっと違った迫力がある。 もし生きていたらきっとロフトのイベントなどにも登場し(実際ロフトのイベントに出ている写真も登場する)私も会う機会があったかも知れない。 どんな方だったのだろう? 「天皇ごっこ」は近いうちに読んでみたい。 (このページのトップへ) ステキな金縛り日時 2011年11月5日19:10〜 場所 TOHOシネマズ渋谷スクリーン3 監督 三谷幸喜 (詳しくはムービーウォーカー・データベースで) エミ(深津絵里)は失敗続きの刑事弁護士。弁護士事務所のボス(阿部寛)は難しすぎて引き受けてのない事件を任せる。その事件は妻が殺されたのだが、被告人の夫(KAN)は仕事に行き詰まり自殺しようとして田舎の旅館に泊まったところ金縛りにあっていたというのだ。 その裏をとるためにその旅館に行ったエミ。そこで彼女も金縛りにあってしまう。金縛りの原因は更科六兵衛(西田敏行)という落武者だったのだ。 六兵衛が見えるエミは彼に法廷にでて証言を依頼する。 小佐野検事(中井貴一)は認めようとしなかったが、裁判長(小林隆)は許可してくれた。 かくして前代未聞の裁判が始まる! まず最初に書いておくが私は西田敏行という役者があまり好きではない。そして深津絵里も好きな女優ではない。 主演二人が好きでないのだからこの映画が好きにはなりにくい。それを先に書いておいてさらに言う。 この映画、根本的に間違ってないだろうか? 私はほとんど笑わなかったし(少なくとも大笑いをする事はなかった)、客席からも大爆笑!となった時はなかったと思う。 主人公に幽霊が見えていてはだめなのではないだろうか? 私が面白かったのは、なにもないところで幽霊が見えている人間が一人で話しているという幽霊が見えない人間の視点のところだった。 だから主人公には幽霊が見えなくて、見えると主張する人間に振り回される話にした方が面白かったように思う。 その場合、たとえば阿部寛が主人公で部下の深津絵里が幽霊を証人として連れてきましたと言われ、大いに面食らうか、深津絵里の彼氏の売れない役者には幽霊が見えて戸惑いながらも彼氏を信じて深津絵里は幽霊を証言台に立たせるとか。 そうして証言台に立って笛だけがなるとか、そういった画にした方がもっと笑えた気がする。 幽霊が主人公や観客に見えてしまってはただの「変なおじさんが裁判で活躍する話」にしか見えないのだな。 そして真犯人である。 竹内結子は双子の設定だったろうか? 映画中で、深津絵里が姉の夫に「姉妹は似てましたか?」と言われ「そんなこと言われたことはありません」と答えている。 となると普通の姉妹だったと思っていたので、夫が見分けがつかないのはどうも納得がいかない。 よしんば双子でうまく姉に化けたとしたら、最後に何らかの癖で夫が気づく、という展開にしたほうがもっと面白かったと思う。 あと「スミス都へ行く」とか「素晴らしきかな人生」とか元ネタの映画のタイトルを出すのは好かんなあ。 ちなみ不勉強で両方とも私は観てません。 さらに上映時間も長すぎてうんざり。 今まで観た三谷映画では一番面白くなかった。 一番面白かったのは「ラヂオの時間」だな。 (このページのトップへ) スマグラー おまえの未来を運べ日時 2011年11月5日16:20〜 場所 渋谷TOEI2 監督 石井克彦 (詳しくはムービーウォーカー・データベースで) 砧(妻夫木聡)は役者を目指していたが、それも挫折しパチスロにはまって借金を作り、返済のために山岡金融の女社長(松雪泰子)に怪しい仕事を紹介される。 なにか怪しいものを運ぶ仕事だ。リーダーはなにかすごみのある男、丈(永瀬正敏)、同僚は博打で人生を棒に振ったジジイ(我修院達也)。 そんな頃、ヤクザの田沼(島田洋七)は中国ヤクザから奪ったヤクを横流ししようとしていたが、その取引現場を中国人の殺し屋・背骨(安藤政信)と内蔵に殺される。 山岡は中国人ヤクザから依頼を受け、田沼たちの死体を丈たちに処分させた。 田沼の部下、河島(高嶋政宏)や西尾(小日向文世)、田沼の妻のちはる(満島ひかり)たちは田沼を殺した背骨たちを追い始める。山岡から彼らに頼まれ情報を提供する。 妻夫木聡の新作だが、主演とはいいがたい。 クレジットはトップだけど集団劇の趣があるので、妻夫木目当てに行くとちょっとがっかりするんじゃないだろうか?(少なくとも私はちょっとがっかりした) お話の方はこの後、内蔵と背骨はボスに裏切りを疑われた張(阿部勉)によって、内蔵が背骨を殺そうとして逆に背骨に殺されてしまう。 そして背骨は何とか丈たちに拘束され、トラックで田沼組に運ばれるのだが、逃亡。困った丈は砧を背骨にして河島に引き渡す、という流れ。 この河島というのが異常で切れまくった男。眉もつなげて 異様なメイクでの登場だ。 でもね、私にすればこのところ、「探偵はBARにいる」の高島政伸とか「アンフェア」大森南おとか似たような奴ばかり見る。飽きた。 後半、妻夫木をネチネチと拷問にかけるのだが、私はああいう拷問シーンを見ると自分まで痛くなるので、映画館から出たくなった。とにかく苦手なんです、ああいう痛そうな奴。 それよりも何と言って秀逸なのは安藤政信。 鍛えられた背中に異様な背骨の入れ墨。 迫力満点の殺し屋を演じる。前から二枚目より悪役をやるようになったが、この殺し屋背骨は記憶に残るだろう。 満島ひかりは何か生彩に欠けた。なにがいけないんだろう?悪女役はまだまだなのか?いやいや去年の「悪人」では妻夫木に殺される女を演じていたが、実によかったぞ。 あれなら殺されても仕方ないと思えるような感じだった。 そして主役の妻夫木聡。 役者崩れのフリーターで、今は博打の借金まみれというなんともさえない情けない男。最近はヒーローめいた役より わざとこういった崩した役に挑戦しているように見える。 こういった幅広く役柄をこなしていくところは作品を選んでいるのだろう。周りのスタッフがいいのか、セルフプロデュースが出きるのか。 後半、高嶋政宏に暴行されて顔が変形してしまう。 折角の二枚目が台無しだが、そういう役に挑戦する妻夫木は好きだな。 映画自体は好きにはなれないが、妻夫木聡、安藤政信の新しい役柄が楽しかった。 (このページのトップへ) |