2011年12月

ワイルド7 聯合艦隊司令長官
山本五十六
新高校教師
ひと夏の思い出
背徳に溺れて・・・ 恋愛コンプレックス ラブ&ドール ピラニア
草叢 KUSAMURA 蒼空 婚前特急 明日泣く
妻の恋 
おしどりふわふわ
保健室の先生と女学生
いくつかの恋
ほくろ アントキノイノチ
御巣鷹山 腹腹時計 金正日 ザザンボ

ワイルド7


日時 2011年12月24日18:45〜
場所 丸の内ルーブル
監督 羽住英一郎

(詳しくはムービーウォーカー・データベースで)


法律で裁けない悪人を裁く超法規的な特別組織ワイルド7。メンバーは元犯罪者ばかりだったが、検事の草波勝(中井貴一)が組織した。
銀行強盗を「退治」するワイルド7。しかしそのとき、バイクに乗った何者かが強盗の一人を射殺した。
ワイルド7の飛葉(瑛太)はそのバイクの女を街で見かけ、追いかける。どうやら人違いだったらしい。
そんな頃、政府が密かに研究した細菌が盗まれ、テロリストによって飛行船に積まれ東京上空でばらまかれようとしていた。
ワイルド7と国家安全室と連携し、テロリスト集団を確保、テロは未然に防がれた。
そのとき、バイクの女が現れテロリストを殺そうとする。
バイクの女は飛葉が先日見た女だった。
数日後、草波からこのテロ事件に絡んでインサイダー取引と思われる株取引で20億円儲けた奴がいると聞かされるワイルド7。
そいつは国家安全室の責任者だ。
今までにも国家機密を悪用して不正な株取引で大儲けしているのだ。こういう奴は絶対に退治すべき。
草波とワイルド7は行動を開始するが、逆に犯罪者扱いされ警察から追われる身になってしまう。


望月三起也原作コミックの映画化。
小学生のころこのマンガが大好きで何度も読みふけった。
テレビ版の方が先であとにマンガを読んだと思う。
テレビ版はオープニングクレジットでMGCモデルガンのトンプソンから薬莢がばらばらとこぼれ落ちる映像にはしびれた。
テレビシリーズのDVDーBOXも買った。
しかし今更なぜ「ワイルド7」の映画化なのかさっぱり解らない。
どう見ても今更感が漂う。

まずメンバーの個性がまったくない。
八百とか両国とかいなくなってパイロウとかBBQとか訳の分からん名前が並ぶ。
でも天才詐欺師とか元やくざの親分とかの説明があるけどその個性が生かされるシーンがまるでなし。
7人描き分けるのは実は大変だと思うし、原作でも活躍が少ないメンバーがいたのは解るが、それにしてもひどい。
こういう集団アクションではメンバーの個性とか特技を生かして補完しあってミッションに立ち向かっていくのがセオリーだが、その基本がまったく出来ていない。
世界に娘がいるとか何だその新設定は??

バイクアクションもなんだか飛葉が女の子を送っていくシーンぐらいしかなく、がっかりだ。
バイクもみんな個性があったのにねえ。
外のシーンでは無茶な走行はせずに後半の建物の中でのみ走るからな。もっとバイクアクションを見せてください。

そして銃撃戦もさびしい。
とにかく薬莢が飛び散りまくる画が欲しい。

なによりラストで悪人と飛葉が対峙するのだが、なんだかごちゃごちゃ能書きばかり垂れていてもたもたする。
さっさと殺して欲しい。
「愛する人を守りたい」とか完全に「海猿」的な展開で、ハードなアクションが売りなはずの「ワイルド7」の世界からはほど遠い。
あと飛葉の過去に起こした殺人だが、「恋人が強姦されて相手のやくざを殺してしまったが肝心の恋人は自殺した」という設定。
どこかで聞いたことがあるなと思ったら裕次郎の「錆びたナイフ」じゃないかな?

期待はしていなかったけど、もうすこしなんとかなりようがあったのではないかと思う悔しい映画化。
原作の大ファンだったから余計にそう思う。



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聯合艦隊司令長官 山本五十六


日時 2011年12月24日15:55〜
場所 丸の内TOEI1
監督 成島出

(詳しくはムービーウォーカー・データベースで)


山本五十六海軍次官は米内海軍大臣、井上成美軍務局長とともに三国同盟に反対していた。
ドイツはフランスを占領し、ヨーロッパで快進撃を続けていた。陸軍や海軍の多くは三国同盟はアメリカ、ソ連と対抗するための手段として有効だと考えていた。
しかし山本は三国同盟締結はアメリカを敵に回すことになり、アメリカと戦ったら絶対に負けると考えていた。
しかし新聞などは世界恐慌以来の時代の閉塞感から解放されるとして三国同盟締結を迫った。
いよいよ三国同盟締結。アメリカとの戦争準備に入る海軍。山本はハワイを初戦で叩き早期講和以外にアメリカと戦う方法はない決意する。

何度も映画になっている「聯合艦隊司令長官 山本五十六」を主役に据えた映画。
山本が主役級で映画に登場するのは松林監督「連合艦隊」」以来ではないか。
「男たちの大和」といい、最近は海軍ものはすっかり東映になっている。

今回は驚いたことに戦争スペクタクルというより歴史ドラマとしての面が強い。
12月14日にこの映画の公開&原作本発売を記念してのこの映画の原作監修の半藤一利さんの講演会が紀ノ国屋ホールであった。後半、成島監督や脚本家が出席しての公開に向けてのクロストーク付きだったのだが、その席で「当初東映のプロデューサーから半藤さんの『昭和史』を映画したいという意向があったがそれは無理でしょうということで山本五十六を主役にした」という話があった。

それを知ってみると納得する。
「男たちの大和」のような戦争スペクタクルではなく、そういう昭和史の映画化なのだ。山本五十六を軸として三国同盟から太平洋戦争への道が詳しく描かれていく。
だから真珠湾攻撃まで映画が始まってから1時間かかる。
そして始まったと思ったら破壊スペクタクルの要素は少なく、盛り上がらない。
それはミッドウエイ戦でも同じことがいえる。
山口多聞司令官を阿部寛が演じて実にかっこよすぎるくらいかっこいいのだが、(10年後、山本五十六が映画に登場するときは是非阿部寛に演じてもらいたい)なんだかもう一つ見せ場がない、消化不良感が残るカタルシスのないものとなっている。

それは五十嵐隼士の演じる若きパイロットにも言える。
まあ死ぬ時に延々とスローモーションにしたり恋人との別れとかやられても困るのだが、それにしても印象に残らない。

しかし歴史ドラマとしては今まで描かれなかった部分も描く。
当時の新聞は戦争を煽っていたとか(香川照之の論説委員がいい)煽った論説委員が戦後「民主主義」を説く。
南雲長官がなぜ真珠湾攻撃で第2次攻撃を行わなかったか、また南雲と山本は遺恨があったとかも描く。
そして今まで映画に登場したことがなかった山本の親友・堀元中将も登場。
さすが半藤一利監修で、半藤一利史観にそった形になっている。

また艦内の時計とかの美術も立派で実に本物らしい。
戦争スペクタクルを期待されるとはずされるし、実は意外と低予算(モッブシーンとかないし、兵隊の数も少ない気がする)な気もするし、ちょっと不満点も多いのだが、「昭和史」の映画化と思えばそれも納得。

今度はどこかで「1945年」として沖縄戦から終戦までを描く映画を作ってほしいものだ。



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新高校教師 ひと夏の思い出


日時 2011年12月17日
場所 TSUTAYA宅配レンタルDVD
監督 城定秀夫
製作 平成16年(2004年)

(詳しくはallcinemaで)


望月笑子(小沢菜穂)は教育実習のため母校に2週間帰ってきた。高校時代、笑子は音楽教師・上村(吉岡睦雄)にあこがれていたが言い出せなかった。
笑子のおばさんは笑子の高校にパンの販売にきていた。おばさんは高校生たちの童貞を奪うことを楽しみにしていた。
笑子はある日、原田(あんずさき)という女性とがスーパーで万引きするのを目撃する。原田はその腹いせに笑子の靴を隠してしまう。困った笑子をみた上村は笑子に靴を買ってやる。
それがきっかけで笑子と上村は急速に距離が縮まっていく。日曜日、上村は笑子の家を訪ねる。扇風機が壊れ困っている笑子に上村は扇風機を直してあげる。
二人で風を浴びているとき、ついに二人は結ばれてしまう。

城定秀夫監督で吉岡睦雄さん出演作品。
正直言うけどつまらん。
つまらん原因はいろいろあるだろうけど、まず第一に登場人物がごちゃごちゃでてくる割にはお互いがほとんど関係ない。
上には書かなかったけど、盗撮を趣味とする田代と今関という生徒が出てくる。(名前の由来は田代まさしと今関あきよしだろう)でも原田に頼まれて笑子の風呂の写真を撮るのだが、出来た写真をパン屋のおばさんに取り上げられてしまう。で、この話は終わりなのである。
せっかく撮った写真なのだからもう少し引っ張ってもよかろうに。(撮った写真がデジタルではなくフィルムなのにすこし驚いた。製作は2004年。まだフィルムも使われていたのだな)

またパン屋のおばさんが生徒たちと関係を結んでいくのだが、これが本筋とは絡んでこない。またこのパン屋の同僚がこのおばさんに交際を申し込んでくる。
この後このまじめそうな同僚がおばさんが生徒と次々と関係を持っていることを知って一悶着ありそうだが、それはない。ここはもう一つあってもいいんじゃないかなあ。

で上村の方も結婚しているのだが、妻は出てこない。
ラスト近くで上村が電話で延々と話しているシーンだけ。
ここももう一練りあってもいいんじゃないか?

そんな感じでエピソードがバラバラすぎてまとまっていない。グラフィティと言えばそうなのかも知れないが、それならば各エピソードにもう少し山が欲しい。

でも笑子が数学の授業で、「ボールを落とすと半分の高さまで跳ね上がるとします。そうすると永遠に半分の距離を保ちながらボールは跳ねていることになります。これを微積分を使って間違いであると証明しなさい」という問題を出す。
理屈では割り切れない笑子の心を反映する面白いエピソードだと思った。
でも全体的にはテンポがとろく面白味に欠けた。



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背徳に溺れて・・・


日時 2011年12月17日
場所 TSUTAYAレンタルDVD
監督 坂本礼
製作 平成21年(2009年)
(劇場公開タイトル「いくつになってもやりたい不倫」)

(詳しくはピンク映画データベースで)


重雄(飯島大介)は木下八重子(三木藤乃)と不倫温泉旅行に出かけた。しかも宿では愛好者が集まっての乱交パーティにも参加した。翌朝、帰る彼ら。重雄は運転中に八重子にフェラチオさせる。一瞬目をつぶった。次の瞬間、自転車をはねて相手に重傷を負わせた。
八重子の息子・木下大助(吉岡睦雄)は警察から事故当時の事情を聞き、母が不倫していたことを初めて知る。
八重子は大介が小さい頃に離婚し、大介は片親で育った。
大介は重雄の葬儀に出かけるが、重雄の娘・千尋(春矢つばさ)に追い返される。
大介は被害者の見舞いに行く。偶然千尋も謝罪に訪れていたが、二人とも追い返される。
帰り道の駅で千尋は大介に「この間はごめんなさい」と話しかける。

吉岡睦雄さん主演作。やっぱりピンク映画とVシネマは雰囲気が違いますね。Vシネマの方がのりが軽く、ピンクのそれは重め。
本作も「不倫カップルの残された子供たち」をモチーフでやっぱり重い。
でも冒頭の乱交シーンは男女6、7人が絡んでいてピンク映画では見たこと無いような豪華さだった。

話の方は千尋が「父とあなたのお母さんが写ってるビデオがありました」と一緒に観ることを誘う。
観てみるとお互いの親が美味しそうに食事をしていて、子供たちが知らない親の姿が写っていた。そして違うテープには重雄と八重子がアナルセックスをする姿が写っていた。
ショックを受ける千尋。
だがその日から千尋はなにやら落ち着かなくなる。
やがて大介と千尋は体の関係になっていく。

父親のことを知りたいという千尋の想いが結婚してる千尋だが大介との関係になっていく。
その気持ちは理屈でなく伝わってくるものがあった。

またラスト、八重子が重雄をちゃんと別れがしたいというので、千尋は重雄のお骨を持ってくる。骨壺から骨を取り出し、見つめるシーンは秀逸だった。
男女の別れのシーンで今まで観た映画の中でも特に記憶に残るシーンと言っていい。
また八重子役の三木藤乃、文字通りの体当たりの熱演だった。女優賞ものだと思う。

さすがにDVD化されている映画だけあって観る価値はある。
つまらなさそうな封切り作品を観るよりも、60分あまりでみれるピンク映画の秀作の方がなんぼかいい。
改めてそう思わせる映画だった。



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恋愛コンプレックス


日時 2011年12月17日
場所 TSUTAYA宅配レンタルDVD
監督 田尻祐司
製作 平成23年(2011年)

(詳しくはallcinemaで)


大学生の安西瞳(栗林里莉)は同級生の松山(多田敬一)とつきあい初めて2ヶ月になるが未だに体の関係はなかった。それは瞳がまだ処女のため「処女は男から嫌われるのでは?」という不安からまだ一歩を踏み出せないでいた。
以前のバイト先の先輩から「じゃあ口の固い男と一回すませておけば?」と単純に言う。
そんな時、レンタルダッチボーイのちらしを目にする。
そのサイトにアクセスし、とりあえず2週間で3万円の廉価版の「あっくん」を申し込んでみる。
あっくん(高橋洋)はまあまあのイケメンだが話ことは出来ない。
動力は背中にある穴にねじまわしを差して中のゼンマイを巻いてあげること。
早速試してみたが、あっくんはセックスはぎこちない。

田尻祐司監督のVシネマ。観た理由は脚本をいまおかしんじ監督が書いているから。と言っても単独ではなく、田尻監督と秋本健樹といまおか監督の共同脚本だ。
いまおか監督の名前が一番下だから関わりは少なかったかも知れない。

正直面白くもなんともなかった。
アンドロイドが登場するというのでいまおか監督の「恋する(愛欲みだれ妻)」を最初思い出したが、別に関係ないかも知れない。

話の方は結局あっくんのおかげで勇気がついた瞳は恋人の松山とも出来るが、松山は一回出来るともうつれない。
自分の都合でやることばかりを考える。
松山とはうまくいかなくなり、あっくんにそれを当たってしまい、「出ていって!」と追い出してしまう。
でもあっくんに済まないと思い、再会。
あっくんがおもちゃの雪に興味を示していたので雪の代わりの紙の雪を作って見せてあげるけど、レンタル期間は終了し、お別れ。
こんな感じのお話。

あっくんが話せないとか、ねじを巻かなければならないとかいろいろと設定の枷はあるので、それを生かせばもっと話が面白くなったのでは?
瞳の部屋から追い出されたあっくんは瞳のクラスメートの木村(結構やりまん。松山とも寝る)に拾われてホテルに行くのだが、あっくんはうまく出来ない。
怒った木村はねじの切れたあっくんをゴミ捨て場に捨てていく。
そうすると瞳が探しに行ったときにゴミ捨て場で見つけなければならないはずなのに、なぜか二人の思い出の場所の屋上にいる。
その辺の基本的な流れが雑だなと思った。



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ラブ&ドール


日時 2011年12月17日
場所 TSUTAYA宅配レンタルDVD
監督 城定秀夫
製作 平成23年(2011年)

(詳しくはallcinbemaで)


サラリーマンの川口(福天)は自宅に無数の人形をコレクションし、毎晩彼女たちに話しかけていた。
実は人形たちは心を持っていて、毎晩12時を過ぎるとおしゃべりに興じていた。
ある日、川口は捨てられていた人形を自宅に持ち帰り、修繕してベロニカと名付けられた。今晩も人形たちは会話する。ベロニカは200年前にフランスで作られ実は人間だったのに魔女によって人形にさせられたのだという。
人間に戻る呪文は解ったのだが、人間の世界は煩わしくて戻りたくないのだと。
川口に可愛がられているマリーは人間になりたかった。
ベロニカに頼み込んでマリーは人間になったのだが。

吉岡睦雄出演作で、城定秀夫監督作品なので鑑賞。
面白かった。
人形たちが夜中に話し出す、という発想そのものは目新しくないかも知れないが、無言の人形たちの画に女の子の声がかぶるのは実に不気味で怖かった。

話の方はマリーは人間になり、テレビを見て人間界のことを覚えていく。キスを覚え、ご主人様の川口としてみる。
なんだか気分が盛り上がってセックスまでしてしまう。
それまで川口は風呂に入って体を洗ってあげても胸などはマリーに自分で洗うように言っていたのについに一線を越えてしまう。しかし川口は毎日が楽しく、同時にマリーに外の世界を教えたくないばかりに部屋に鍵をかけて閉じこめる。
ある日、マリーはシーツを破ってロープを作り2階の窓から外へでる。
原宿でクレープを食べたかったがお金がないと買えない。
そんな時、塚原(吉岡睦雄)という芸能プロのマネージャーに声をかけられ、アイドルにならないかと言われる。
マリーはブレイクし、一躍売れっ子に。
塚原は自ら、そして芸能界の有力者にマリーを抱かせる。
ある日、マリーに送られたプレゼントの人形の中の日本人形がマリーに話しかける。「自分も人間になりたい」と。
人間になった日本人形・菊江を今度は塚原は売り出し、マリーはお払い箱に。
捨てられたマリーはまた捨てられていたベロニカに再会、人形に戻る呪文を教えてもらい、再び川口の元で暮らすことになる。

長々と話を書いた。
考えてみれば「無垢な人形が心を持って汚い人間界で汚れていく」なんていう話はありきたりである。
観る前はそう思った。
でも70分という尺の短さからくるポイントだけを語っていくスタイルが、なんだか童話を読んでいる時に味わうようなテンポの良さ、必要なことだけを語るスリムさを感じる。
この生きにくい人間界、マリーもベロニカもまた川口に拾ってもらってメデタシメデタシである。
童話を読み終わったような心地よさがあった。
面白かった。



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ピラニア


日時 2011年12月16日
場所 TSUTAYA宅配レンタルDVD
監督 井土紀州
製作 2010年

(詳しくはムービーウォーカー・データベースで)


奈津(白井みなみ)は吃音のコンプレックスを持っていたが、食堂の厨房で働いていた。彼女はいつも車で弁当を売りに来る、左足の悪い青年に心を寄せていた。
ある日、奈津はいつも弁当を食べている池のほとりでよく見かける男、晴男(吉岡睦雄)と知り合う。
晴男は元高校教師で、言われ無きセクハラ教師のレッテルを貼られ首にされたという。彼は池にピラニアを放ち、いつか自分を首にした高校の校長や教頭、教育委員会、同僚を殺してやろうと考えていた。
晴男は奈津が弁当屋の青年に惚れていると知るとその中を取り持とうとする。青年の名前は曽根(並木幹夫)。曽根は晴男を通じてデートの誘いをしてくる。
その晩、ドライブする二人。曽根は奈津の体を求めた。奈津は初めてだったが、それに応える。

吉岡睦雄主演の井土紀州監督の青春Hだ。
井土紀州は私のお気に入り映画「白日夢」の脚本家である。
前半、吉岡睦雄が「池にピラニアを放ってそれで完全犯罪をする」というあたりの狂気がぞくぞくした。
晴男がどう復讐していくかを楽しみにしていたら、映画はそういう方向には話が進まない。

曽根はいつしか奈津にお金を頼むようになる。
駅前に弁当屋を作るのが夢でいい物件があったから手付け金で20万円貸して欲しいという。
晴男は奈津に「いつまでも復讐など考えていないで前に進みなさい」と言われ、予備校講師の就職を目指す。
奈津は晴男に20万円の借金を頼むが、晴男は「曽根は怪しいからやめておけ」というが奈津は聞かない。仕方なく20万円貸す晴男。
しかし曽根は実は結婚していて、足のびっこも嘘だった。びっこにしていたほうが弁当が売れるのだという。
一方晴男は予備校講師の就職が決まる。
曽根のことを知った晴男は曽根から金を取り戻そうとするが、取り返せたのはわずかな金額だった。

という感じで後半は晴男はどんどんいい人になってしまい、ただの善人になる。
そして奈津とたぶんつきあい始めるんだろうな、と予感させて終わる。
それはなあ・・・
前半、吉岡睦雄の狂気に期待してしまったため、がっかりした。
金をだまし取られた無垢な少女と善人な男の話だもんなあ。
期待したぶん損した気になった。

晴男が生徒からもらったジッポーライターのエピソード(生徒の喫煙を注意して「たばこが似合う男になってから吸え!」と注意したところ、「このライターが似合う大人になってください」と渡されたという話)もいいのだが、前半の狂気がよかっただけにエピソードが死んでしまって惜しまれる。



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草叢 KUSAMURA


日時 2011年12月15日
場所 TSUTAYAレンタルDVD
監督 堀禎一
製作 平成17年(2005年)

(詳しくはallcinemaで)
(詳しくはピンク映画データベースで)


秋江はテレクラ(たぶん)で出会った男、進次(吉岡睦雄)とホテルへ行った。自分はそのつもりは無かったが、進次は2万円くれた。
秋江は夫が浮気中で別の女と暮らしていた。
団地はなにかと近所つきあいも煩わしい。週末の団地の懇親会にも出てほしいと隣の奥さんから言われる。
進次は廃品回収の仕事をしていて、秋江の住む団地にも回収にきて二人は再会。再びセックスに溺れる。
秋江は工場でパートの仕事していたが、業績不振でパートの間では首切りが噂されている。
そんな時、夫の和彦が帰ってきた。
夫の浮気相手に呼び出され、会う秋江。実は彼女は子供が出来たという。しかし堕ろすという。

第2回ピンク映画シナリオ大賞準入選作。
「ヒモのひろし」と同じ年だ。
この間見た「ほくろ」といい、ピンク映画シナリオ大賞受賞作は他の映画賞より私にとって侮れない感じがしたので、吉岡さんの主演作だし見てみた。

たしかに他のピンク映画に比べればドラマ性は強く、退屈しない。
映画はいきなり秋江と進次が出会ってホテルへ行くまでの道から始まる。二人の出会い方はわからないけど、おそらくテレクラか掲示板か。(このDVDにはオリジナルシナリオが掲載されていて、二人の出会いはテレクラだったとわかる)
また夫の浮気相手とも呼び出されたりするシーンはなく、いきなり二人が車の中で会話しているシーンになる、
おそらくは「ピンク映画は60分〜65分」という尺の制限からきているのだと思うけど、スリムな作りがい。

正直、秋江のいらだちはよく解らないのが本音。
しかし「みんな私のせいにして、自分を正当化する。自分はこいつよりましと思っている」というラストにせりふは何となく心に残った。
夫も自分の妻が子供が出来ないから浮気を正当化している。進次も「俺は廃品回収でゴミみたいな存在」と自分を卑下しつつも「こんな欲求不満もおばさん主婦よりまし」と思っている。工場の人間も「あんたは選ばれた人間だ。頑張ろう!」と口でいいつつもどこか嘘くさい。
隣のおばさんも子供を勝手に預けた自分にも非があるくせにこっちがちょっと目を離しただけで怒ってくる。
ひょっとしたらこの解釈は違うのかも知れないのだが。

ラストの秋江が団地で一人のんびりし、パート先の工場から「今日はどうかされましたか?連絡ください」という無断欠勤を(観客に)教えてくれるシーン。
彼女なりの世間への抵抗を感じられ、印象的だ。

今一つピンとくるところがないにしても、主役の二人、吉岡睦雄と速見今日子の演技の迫力は見所があった。



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蒼空


日時 2011年12月12日
場所 TSUTAYA宅配レンタルDVD
監督 城定秀夫
製作 平成20年(2008年)

(詳しくはallcinema on lineで)


九州佐賀で同級生だったしおり(蒼井そら)と哲は東京にやってきた。しおりはパチンコ屋で働くようになったが、哲は職が定まらないままだった。中学高校と哲と同級だったまことも上京し、二人でコンビを組んでフォーク歌手を目指すようになる。
オーディションの本番当日、まことのギターの弦が演奏中に切れそのまま失格。哲はその晩飲んだくれて偶然にも高校時代暴走族だった時の先輩と出くわす。
先輩はやくざな金融業で、ぼったくりバーも経営していた。無職の哲はその先輩の仕事に誘われるが一旦は断る。が、先輩のいかさま麻雀で負けを作ってしまい、仕事を手伝う羽目に。
一方しおりは哲たちのオーディション会場で芸能プロからスカウトを受ける。モデルから始めたしおりだったが徐々に人気が出始める。
テレビの連ドラに出るために、テレビ局のプロデューサー(吉岡睦雄)とホテルで食事。しかし食事の後にベッドに倒されてしまう。


吉岡睦雄さんの出演作を続けてみているのでその1本。
正直、外れた。吉岡さんはテレビのプロデューサー役でのワンシーンの出演。だから吉岡さん目当てで見ると見るところが少ない。
で、肝心の作品が面白ければいいのだが、これが面白くない。

まあ話のアウトラインそのものが、田舎から出てきて一方は成功し、片方は転落して再会する、みたいな話なのだが、弾け方が足らない。
しおりはもっと芸能界でトップ(とまでは行かなくても新人賞レベル)に上って、昔の男のことがスクープされるとか、哲の方も金融業から人殺しまでするようになるぐらいまで行かなくては。

ところが映画の方は吉岡さんのテレビPにベッドに押し倒されてそれに抵抗して芸能界おしまい、なのだな。
ここでテレビPに抵抗しても他の誰かのおかげで成功するとかいくらでも方法はあるのだろうに。
また哲も取り立て屋をしているだけでなく、先輩から拳銃を渡されて悩んだ挙げ句に「出来ません」と拳銃を返しボコボコにされるという顛末。

85分の尺だけど時間延ばしのようなせりふも多いし、もう少しいろいろの紆余曲折の展開があってしかるべきだ。
低予算だからというのもわかるけど、もう一工夫出来そうな気もする。
よかった点といえば、映画は哲としおりが電車で上京してくるところから始まるが、二人、及びマコトの3人の関係を途中でセピア色のスチルを使ってスピーディーに説明したところ。

「悦子のエロいい話」が面白かった城定監督だが、今回はちょっと期待はずれだった。



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婚前特急


日時 2011年12月11日
場所 TSUTAYA宅配レンタルDVD
監督 前田弘二

(詳しくはムービーウォーカー・データベースで)


チエ(吉高由里子)は「時間を無駄に使いたくない。相手に予定で自分の出来ないことがあるのは許せない」という理由で5人の男がいた。友人・浜口トシコ(杏)が結婚したことがきっかけで、トシコに「付き合う人を一人にしてそろそろ結婚したら?」と言われる。
チエは早速自分の付き合ってる男5人の長所、短所をあげてみる。その中で一番価値が低そうな田無(浜野謙太)を切ることにする。他の4人(加瀬亮、榎木孝明)は金を持っていたり、年下で可愛かったり、仕事のアドバイスをくれたりそれなりにメリットは大きい。
田無は金もなくいつも風呂を勝手に借りにくるような奴でいいところはただ一つ「楽」。
田無に「別れよう」と告げるチエ。しかし帰ってきた答えは実に意外。「俺たち付き合ってないだろ?今まで通り体だけのつき合いでいいじゃん」と言われてしまう。
意外な答えにチエは驚く。「自分を好きにさせてそれからふってやろう」と決意。
「そのために相手を知らねば」と田無の観察を始める。田無は実は勤め先のパン工場の社長の娘・ミカ(石橋杏奈)に惚れていた。

吉岡睦雄さん関連作品を見ていく上で鑑賞。
今年の春にテアトル新宿で上映されたのは知っていたが、見なかった。理由はラブコメはあまり興味ないから。
先に書いておくと吉岡さんはトシコの夫役。
あまり登場せず、しかもただの「いい夫」という役だから、見せ場らしい見せ場はない。

で、肝心の映画だけど全く楽しめなかった。
理由はチエと田無のキャラクターが好きになれないのだ。
「相手に都合をあわせなきゃいけないのがいや」という理由はあまりにわがまますぎる。近づきたくない。
で、田無も「愛すべきもてない君」であればまだよかったが、こいつもかなりいい加減な奴。
そもそも二人の出会いは田無が金持ってなくて、飲み屋街で酔った女性を介抱するふりをして彼女の家に上がり込むということを繰り返している男。なんか好きになれない。
さらにチエに家に上がり込んだ時、朝飯を作る。ところが材料を買う金がなくてチエのCDを売ってその金で料理をする。「泥棒!」と言われて「でも感謝の気持ちを表したかった。作ったのは僕だし、お金には換算できないものがあるはず」と訳の分からんことをいう。
好きになれない。

また「俺たち体だけのつきあいでいいじゃん」だと?
その顔でセフレ気分かよ!
嫌いなタイプである。

で、いろいろあって結局社長の娘とつきあい出す。
この辺も唐突、強引。
田無のようなキャラクターはイケメンとか金持ってるとかなら成立するが、見た目のダメ、金も持ってないではなんだか成立しないキャラに感じる。

また社長の娘にプロポーズするときも空の指輪ケースをだして架空の指輪を渡すのだが、これは「三丁目の夕日」でやったことなので興ざめ。
で、最後には田無の部屋で田無とチエが取っ組み合いの喧嘩になり、隣の部屋との壁をぶち抜いてしまう。
そして白川和子のおばあさんに人生訓を言われて二人が喧嘩をやめ、そして二人の結婚式のシーンになる。
このラストの結婚式のシーンは僕にはその展開が信じられず、妄想とか夢のシーンか?とずっと思ってしまった。

あとね、他に4人男がいるけど活躍するのは加瀬亮と榎木孝明ぐらいで後の二人は存在感なし。だったら最初から3人の男と付き合ってるでいいじゃん。

前田監督のコメディは「自分中心の理屈を振りかざし回りが翻弄される」というパターンが多いようだが、短編「鵜野」もそうだが、この中心人物が好きになれないので、いや嫌悪感をもよおすキャラクターなので、僕にはダメである。
これからもこの路線で行くなら、今度は見たくない。
不愉快になるだけだ。



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明日泣く


日時 2011年12月10日21:10〜
場所 ユーロスペース2
監督 内藤誠

(詳しくはムービーウォーカー・データベースで)


武(斎藤工)は高校生の頃から学校にも家にもなじめず、小説家になりたいという夢をもちながら雀荘に通う日々だった。そんな時、同級生のキッコと知り合う。彼女はピアノの才能を音楽教師に認められ、毎日特訓の日々だった。
だが彼女はジャズがやりたいのに教師が求めるのはクラシックばかり。
そんな頃、その教師とキッコがホテルで心中未遂をしたという事件が起きる。キッコはそれから学校には来なくなった。
その後22歳で小説の新人賞を穫った武だが、3年経っても次が書けずに雀荘や違法カジノのルーレットにはまっていた。
そんな時、ばくち仲間から「自分のバンドの前座だ」とあるピアニストを紹介される。キッコだった。

東映で「不良番長シリーズ」や「番挌ロック」などを撮っていた内藤誠監督の25年ぶりの劇場公開作。
主演は今私も注目中の斎藤工。
それだけで見る価値はある。

ジャズとギャンブルと男と女。
いいねえ、ハードボイルド映画みたいだ。ここに拳銃とかが出てくればもっと良かった。
見ていてチャンドラーの「長いお別れ」を思い出した。
あれも「私がテリー・レノックスに最初に会ったのは・・・」で始まり、マーロウのテリーとの関係が事件に関わってくる。
この関係がなんだか武とキッコのようだ。少なくとも私の記憶の中での「長いお別れ」は。

キッコは今は結婚して夫のある身。その夫はかつての音楽教師。実はあの心中事件はキッコのほうから持ちかけられ、それによって学校も首になりキッコによって人生を狂わせられたという。
キッコは「私は好き放題やってきたし、これからもそうする。好き放題やってきたから泣きを見たなんて言われたくない」と言い放つ。
キッコは天才的ドラマーが出演するライブハウスに行き、強引にセッションし、彼とバンドを結成する。
いい演奏だがまだ客がつかない。キッコはバンマスとしてメンバーのギャラの金策のために、武に自分を借金の形にして勝負してもらう。

ここが原作の色川武大なので(阿佐田哲也名義で「麻雀放浪記」を書いた方だから)見せ場なのだろうけど、麻雀をやらない私からするとルールがわかりにくい。
時々こういうゲームが映画の見せ場になることがあるが、ルールが解ってないと盛り上がりに欠けるなあ。

キッコのバンドはその後順調に行ったが、ドラマーの薬物所持逮捕で一気に転落。
数十年後、テレビで「UFOを呼び寄せるピアニスト」として紹介されているのをちらっと見かける。

私にも数年に1回消息を耳にする人間がいる。かつて付き合って今は消息が分からなくなってしまった人間がいる。
そんな人々を思い出せた。

とにかく斎藤工がいい。それとキッコ役の辺見ゆかりも。島田陽子がギャンブル好きの女性として好演。梅宮辰夫もワンカット違法カジノのオーナー役で特別出演。

よかった。何かの形でもう一度見たい。



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妻の恋 おしどりふわふわ


日時 2011年12月10日
場所 TSUTAYAレンタル
監督 いまおかしんじ
製作 平成23年(2011年)発売

(詳しくはallcinema on lineで)


ミホとテツジは学生時代に知り合って結婚。数年が経ち子供はいないが一見幸せそうな夫婦だった。
しかしテツジは合コンで知り合った若い娘・リサと浮気中だった。リサはなぜかいつも車のガレージでしかセックスさせてくれない。
しかしその浮気はミホにばれた。デジカメに写っていたリサとの写真が見つかったのだ。
離婚すると言い出すミホ。もう会わないと謝るテツジ。怒りが収まらないミホは自分も浮気すると言い出す。
「それなら浮気相手は俺が決める!」というテツジ。
ネットで妻の浮気相手を募集し、二人で面接する。
その中で新堂シンジという浮気などしそうもない真面目そうな男がいる。ミホがなぜ応募したかと聞くと、「実は妻が浮気したのでそのお返しに」という。
ミホは即決でシンジに決めた。

いまおかしんじのビデオ作品。
脚本は「イサク(罪)」の港岳彦だ。私のお気に入り映画「イサク(罪)」の港さんなので期待したが、正直、それほどでもなかった。

シンジは実はテツジが浮気したリサの夫。
その晩はなにもなかったミホとシンジだったが、バードウォッチングが趣味なシンジにミホは「今度連れていってください」という。
二人は何回かバードウォッチングに出かけ、川で濡らした服を乾かす為に旅館に立ち寄り、そこで結ばれてしまう。
その晩、シンジの家に帰るとガレージではリサとテツジがセックスしていた。
結局、ミホがシンジの家に住み、リサはテツジのマンションに住むことに。

まあそれでテツジは家のことをまったくしないリサにあきれてくる。でミホに「戻ってきてほしい」と頼みにいくという結局元の鞘に収まった、という実に面白くもない展開。
それだとちょっとがっかりなんだけどなあ。
当たり前すぎるじゃん。

まあ強いて面白かった点を言えば、最後にリサもシンジとよりを戻すのだが、二人は初めてガレージでセックスする。
「ガレージのにおいが好き。ガソリンスタンドで働いていた父親を思い出すから」と告白する。
ガレージ専門の女性というのが単なる「フェチ」かと思っていたら、それなりに理由はあったのですね。
もともとシンジとリサは年が離れているのだが、やはり父親のような人にリサは惹かれるのか。
いい伏線だったと思う。
テツジ役を吉岡睦雄が演じていたら(私にとっては)もっと面白くなったかも知れないけど、正直凡庸な出来だった。



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保健室の先生と女学生 いくつかの恋


日時 2011年12月10日
場所 TSUTAYA宅配レンタルDVD
監督 いまおかしんじ
製作 平成23年(2011年)発売

(詳しくはallcinema on lineで)


女子高生の春菜(芽衣奈)は保健室にいつも遊びに来ていた。
仲の良いマキコ先生(柳田やよい)に「あたし女の人が好きかも?彼氏としても最近楽しくない」とつい口にする。
それを聞いたマキコは「試してみる?」と軽い気持ちで彼女と保健室でしてしまう。
そんな二人は徐々にお互いが大切になってくる。
しかし二人の行為を同じ教師の松沢(吉岡睦雄)に見られてしまう。二人のことは黙っているという松沢。
マキコの最近の何か心がない態度にマキコの婚約者は怒り、やがて二人は別れることに。
春菜も彼氏のコウヘイはやることしか頭になく、学校でしたときも中だししてしまう。ホテルに行った日も自分がだしてしまうとつれない。
松沢から「マキコ先生と春菜さんのことが噂になりかけています」と教えられ、別れる決意をする。


いまおかしんじのビデオ作品。脚本は山里三和子。
正直、この作品ではなんと言っても吉岡睦雄が光る。
「俺、32歳なんですが童貞なんです」そして生徒からも「童貞」とバカにされているらしい。
しかも(たぶん)女生徒の靴のにおいを嗅ぎながらオナニーするのが好きという変態ぶり。
でも吉岡さん演じるこの先生、実はすごくいい奴である。

春菜は彼氏が中だししたために妊娠してしまう。
それを彼氏に打ち明けたときに聞いてしまい、迷惑かけずに生んでみるという春菜に彼氏は「生むこと事態が迷惑なんだけど」と言い放つ。それを聞いた松沢は靴(おそらくオナニー用の靴)を投げつけ、「そういう言い方はないだろう!」と怒る。
松沢はものすごく優しいんだよ。
相手に気を過ぎて女性に対し強くでれないんだよ。
だから今でも童貞なんだよ。
でもそういう松沢はすごく好きだ。
「子供を生む」という春菜に対し、「子供を産むというのは大変なことです。でも生まれてこない方がいい命があるとは思えません。僕に出来ることがあれば何でも利用してください」と言い放つ松沢はすごくかっこいい。

春菜は悩んだ末に家出し、そしてマキコの元に行く。
再び愛し合う彼女たち。
そこへ家出した春菜を探していた松沢も立ち寄る。
3人でベッドに入る。
奇妙な三角関係の誕生だ。

最後に結局あかちゃんは堕したのか判然としないが、この3人ならなんとか遣っていけるんじゃないだろうか。
そんな暖かみのあるラストだった。



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ほくろ


日時 2011年12月7日
場所 TSUTAYA宅配レンタル
監督 榎本敏郎
製作 平成18年(2006年)

(詳しくはピンク映画データベースで)


サラリーマンの千代原(吉岡睦雄)は行きつけの居酒屋で自分とかつて同棲していた、しかし別の男もとへ行ってしまった三七子が、その男・穴田と別れたと聞いた。
「別に関係ないよ」と言う千代原だが、内心は忘れられない。「みなこ」という名のホテトル嬢を呼び、(恐らくは三七子にあったであろう)背中にほくろを描いてしまう。
数日後、お盆休みに去年行った山梨の彼女の実家を訪ねてみる。男と別れたなら三七子も帰ってきてるかも知れないと思ったからだ。
訪ねた実家は留守だった。そこで三七子の同級生の山田という女性と出会う。
山田の話では三七子は4日前に交通事故で亡くなり、昨日お葬式を済ませたばかりだという。

第3回ピンク映画シナリオ大賞受賞作。
他人から見れば大したことない映画かも知れないが、妙に面白かった。
多分自分の恋愛経験と重なるところがあったからだろう。

「関係ないさ」と言いながら忘れられない千代原。
そういえば私にも首の後ろに大きなほくろのあった子がいた。
映画はこの後、実家で彼女の親と会う。
親と会った子も私にもいた。死んではいないけど(いや解らないけど)事情があって当人抜きで会ったこともある。

彼女が好きだった競馬馬を浅草で買ってみる。
居酒屋の知り合い(下元史郎)から「浅草の馬券売場で穴田と会った」と聞いていたのだ。
馬券を買ったあとで近くの飲み屋による。
そこには今まで会ったことのなかった穴田(多分)(佐野和宏)がいた。
競馬中継をみると三七子が好きだったニコミホッピーは転倒。本命がはずれた。穴田は「あの子、最近連れてこないじゃない。奥さんにしたから?」と言われ「奥さんねえ」
「前に男の虫がついたことがあったって言ってたじゃない?」「そんなこともあった・・かな」
自分のことを言われた気がして静かな怒りと驚きを抱える千代原。

穴田はこのシーンしか登場しないが、演じる佐野和宏がいい。
不良中年で千代原をして「なんであんな男に」と怒りを覚えさせるに十分な存在だ。
もちろん直接怒鳴ったり殴ったりはしない。
静かな、しかし相手には伝わらない怒りをぶつけるだけだ。

ラスト、もう一度最初の居酒屋になる。
「俺、明日引っ越す」
「どこへ」
「仙台。転勤が急に決まった。副営業所長・・・」
間。
「補佐代理だってさ」

そして千代原は三七子が買ってくれたエアコンを常連の彼にあげるという。
「今度のところは冷暖房完備らしいから。おいていくのも何だし」
果たして本当に転居先は冷暖房完備なのか。
エアコンを手放すことで三七子との別れの決意か。
「もし三七子が帰ってきたら連絡する」という知り合い。
「うん」とだけ答える。

なんかいいなあ。
千代原の想いが切々と伝わる。

なんと言っても千代原役の吉岡睦雄が秀逸。
吉岡さんの映画をアトランダムに見ていくうちにこの映画に出会ったが、想像以上によかった。
いい映画に出会えた。

加えておけば人にビールをそそいでついでに自分コップにもビールを注いじゃうちゃっかり親父の下元史郎がコメディリリーフとして効いていた。



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アントキノイノチ


日時 2011年12月4日18:50〜
場所 新宿ピカデリー・スクリーン4
監督 瀬々敬久

(詳しくはムービーウォーカー・データベースで)


高校時代の事件があって躁鬱症の引きこもりになった永島杏平(岡田将生)は遺品整理業のクーパーズに就職した。
文字通り家族が様々な事情で故人の遺品整理をしない出来ない時にそれを代行する会社だ。
そこで佐相(原田泰三)、ゆき(榮倉奈々)と一緒に働くようになる。
ゆきはかつて自殺しようとした後が手首にあった。
お互いに過去につらい経験を持つ二人だったが、やがてお互いの過去を話すようになる。

さだまさし原作。
やっぱり「おくりびと」との類似性は言われるだろう。
直接な類似はないにしろ、「おくりびと」のヒットがこの映画のゴーサインが出たことは想像される。

正直、ピンとこなかったというのが率直な感想。
それだけ私が人間関係に満足している状態なのかも知れない。
遺品整理をする故人は何らかの事情を抱えている人たちだ。
生前、子供たちとうまく行かなかった事情がある。
おかげさまでうちは実家ともうまくいってるし、そりゃ多分孤独死を迎える可能性大だけど、その原因は今の自分が作ったわけだからと納得出来る。
だから正直、彼らの死からは事実としてはわかるけど心に響くものがないのだな。

そして杏平の高校時代の経験。
「いじめがあっても見て見ぬ振りをしていた。みんな無関心」ということにショックを受ける。
まず説明として山岳部のイメージじゃない。
杏平は地味な印象があったので、帰宅部か文化系のイメージだったのだ。山岳部なんていうアクティブなクラブでびっくりした。
話とは関係ないが、山岳シーンで岡田将生と松坂桃李が下に落ちそうになったシーンは驚いた。どうやって撮影したんだ?あんな場所で。

榮倉奈々もかつてレイプされて妊娠して流産してとかなり厳しい経験をしているが、正直榮倉奈々では明るすぎてその厳しい経験が実感出来ない。
岡田将生はファンだし彼を見ているだけでも映画は楽しかったが、この役柄にはちょっと美青年すぎる。
それに榮倉奈々が最後に死ぬのも唐突すぎる。とってつけたようで気に入らない。

また原作の問題だと思うけどタイトルもどうか。
「あのときのいのち」を何回もいうと「プロレスの人になる」と言って「アントニオ猪木」とかけるというダジャレはオヤジギャグもいいとこ。
それより最近は「アントキの猪木」というお笑い芸人もいるので、春頃この映画の予告が上映された時は場内でタイトルの部分で笑いが起こった。

そうそうこの映画で岡田将生と榮倉奈々が羽田空港付近をバスで走るシーンがあるが、本来は夜の銀座で幸せそうな人たちがいる中をバスで走っていくシーンだったが、撮影中の3月に地震があって節電になって撮れなくなっての変更だったそうだ。

あとエンドクレジットを見て吉岡睦雄さんと川瀬陽太さんの名前があったがどこに出てたかわからなかった。
映画の感想とは関係ないことばかり書いたけど、それだけ記憶に残らなかったのだ。
僕にとっては岡田将生の美青年ぶりしか見る価値がなかった。



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御巣鷹山


日時 2011年12月4日15:00〜
場所 油野美術館東京分室
監督 渡辺文樹
製作 平成17年(2005年)


中曽根康弘元首相が郷里にあるお寺で静養している時、渡辺という男(渡辺文樹)が訪ねてくる。中曽根の後援会を通じて2000万円の献金をしたこの男が会いたいというのだから会わない訳にもいくまい。秘書にそう言われて渡辺に会う中曽根。
渡辺は妻を1966年の木星号墜落で亡くしたという。
中曽根は「私からも」と1985年の日航機墜落事件を調べている元NHK職員夫婦がセスナ機から落ちた話をする。
その夫婦は民間航空会社のセスナのパイロットに「話を聞きたい」としつこく迫り、飛行機をチャーターしてきた。
チャーターされた以上断れないので、会社はしぶしぶ同乗させる。NHK職員夫婦はセスナのパイロットは実は元航空自衛隊の隊員で御巣鷹山に墜落した日航ジャンボ機を撃墜したのではないかと思って真実を聞きにきたのだ。
当然否定するパイロット。同乗しているカメラマンがNHK職員夫婦を飛行機からつき落とす。
そんな話をする中曽根。
「実は私もその夫婦とは浅からぬ縁なのです」と渡辺は語りだした。

渡辺文樹が1985年の日航機墜落事故の真実を追求した映画。毎度毎度の自主映画で技術レベルは低い。
基本線は中曽根と渡辺の対話。
渡辺は「実は日航機に爆弾を仕掛けた。3時間で爆発する。要求としてそのセスナ機のパイロットとカメラマンをここにつれてこい」という。

そこに回想シーンとしてNHK職員の日航機墜落事故の真相究明が挿入される。
そのNHK職員の妻は渡辺の娘。妻を飛行機事故で亡くし、意気消沈した渡辺だったが、娘の教師(「先生」と呼ばれていたらか多分そうなのだろう。演じるのは渡辺文樹夫人)の励ましもあって娘は大きくなって渡辺の親友の息子と結婚する。
NHK職員はアメリカに行っていたが、帰国したときに偶然日航機墜落事故が起こる。実は父親に大阪に行く用事ができたが、父と先生は予約が出来なくて別々の飛行機に乗ってしまい、その先生の乗った飛行機が墜落したのだ!
娘夫婦は独自の情報で、その夜のうちに群馬県御巣鷹山に墜落したと調べ、現場に急行。しかし県警などによって通行が禁止されていた。

渡辺のその後の調べでは米軍機と日航機が静岡県沖で衝突、尾翼が破損して横田基地に着陸しようとしたが米軍により拒否。ダッチロールを続け事故隠しをしたい政府によって自衛隊機によって撃墜されたというのだ。
それを今こそ公表すべきというのが渡辺が中曽根に突きつけた要求だった。

ところでこの中曽根だが、本物とは似ても似つかない。
貫禄はあるが髪の毛は真っ白でふさふさである。
多少は似せて欲しい。
しかし事件を公表したくない中曽根は渡辺を殺害することを決意。

ここで寺で剣道修行をしていた老人たちによって渡辺は殺される。
この老人たちと渡辺の立ち回りが唯一のアクションシーン。
木刀対木刀なのだが、時々刀を持っているものもいる。
なので時々血が出るのだが、血がなぜか横から飛んできたりする。
ラストに渡辺は倒され、爆弾が仕掛けてある飛行機はなぜか(よくわからないが)無事着陸する。

そしてナレーションで「渡辺も知らなかったが、日航機はイラン輸出用のプルトニウムを積んでいた。それを阻止しようと米軍は海上自衛隊の標的用飛行機を日航機にぶつけた。そしてプルトニウムを積んでいたため事故を恐れた米軍は横田基地への着陸を拒否。御巣鷹山に墜落後も習志野空挺師団によってプルトニウムは回収され、まだいた生存者も殺された」というのが真実と付け加えられる。

うわーにわかに信じがたいなあ。
日本国民はだまされていると渡辺文樹は言うのだろうが、いくら何でも荒唐無稽すぎる。
プルトニウムを民間機で運ぶことなどあるのだろうか?
それに撃墜したらそのプルトニウムがどう飛散するかわかったもんじゃない。
しかも首都東京に近い場所だよ。
まあ渡辺文樹の言うことを全否定する証拠は持ってないけど、でも今回ばかりは信じられない。

渡辺映画にはいつもやたら老人が登場するが、聞いた話では老人会みたいなところに協力してもらってるらしい。
それにしても映画技術的にはまったく進歩がないひとなんだあ。



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腹腹時計


日時 2011年12月4日13:00〜
場所 油野美術館東京分室
監督 渡辺文樹
 

渡辺(渡辺文樹)は韓国人や中国人にインタビューし、戦争中の日本人がいかに韓国や中国を侵略してきたかを改めて認識する。そしてその最高責任者を天皇と認識するようになる。
一方刑事を父にもつある女性は父を憎んでいた。戦争中は長崎の造船所で働き、原爆からはたまたまその時に出張でいなかったために逃れられた父。戦後は戦争兵器を製造した罪でC級戦犯に。しかし朝鮮戦争で再び軍需兵器を製造。やがて女房にも逃げられる。そんな父を娘は「戦争協力者」として憎むようになる。
渡辺は昭和天皇暗殺計画を立てる。例の刑事の娘も渡辺と行動をともにする。
福島にやってくる天皇のお召し列車を鉄橋で爆破しようという計画だ。
なぜか韓国情報局もこの情報を察知、日本の警察の警察とともに渡辺を追い出す。
渡辺たちは薬品を合成してニトログリセリンを製造、そして大量生産のための機械をあやしげなインド人から購入。
そして渡辺たちの列車爆破計画は実行される。
阻止しようとする日本警察と韓国情報部員!

渡辺文樹映画2日め。
今回はなぜか英語字幕が入る。まさか外国の映画祭に出品されたのだろうか?
そして前半にナレーションが入るがこれがなぜか韓国語。

映画の方は渡辺と女性が実行する前にキャンプするシーンがあるのだが、ここで女性の方がこれから破壊活動するとは思えないくらいグダグダになり、「今は人生で休憩中」とか言い出す。それを聞いた渡辺は「人生に休憩なんかあるか!まじめにやれ!」と怒り出すのだが、ここがせりふとか演技に見えない。単なる真剣に怒ってるように見える。
何だったのだろう?このシーンは。

で、ホテルに一泊して女性に計画を話す渡辺だが、バスルームの扉の裏側にマジックで地図を描いて説明する。
おいおい、と思っていると翌日警察が踏み込んだ時にこの地図を見て足がつくというお間抜けさ。
渡辺は(どうやって撮影したかわからんけど)列車を奪って天皇暗殺を実行しようとする。

街角で女性は発見されるが、おじいちゃん軍団の刑事が銃を構えるのだが、これがM16とかをいきなり構えだし驚く。ふつー警察はM16とか持ってないから。
で、韓国情報部の男も渡辺の奪った列車を追いかけたりするのだが、駅に着いたときに本来ならバイクを入り口に横付けにして駅に駆け込むが明らかにこける。
でもめげずにすぐにたって演技を続けて駅に駆け込む。

渡辺の列車を止めるために刑事が取った行動はなんと踏切を渡ろうとする幼稚園の送迎バスをうばって線路上に停める。おいおい園児は乗ったままだぜ。園児を下ろさなくていいのかよ?!と思ってるうちに刑事はバスと列車を衝突させる作戦はあきらめ、バスを踏切から動かす。

そんなかんやがあって結局渡辺は列車から撃たれて線路に落下。(ここも渡辺が体を張ったアクションをする)

結局天皇暗殺は失敗する。
渡辺文樹の反天皇映画。
この映画の精神が後の「天皇伝説」につながったことは多分間違いない。



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金正日


日時 2011年12月3日18:00〜
場所 油屋美術館東京分室
監督 渡辺文樹
製作 2011年公開


1990年代。
金日成と金正日は会談。強硬外交に向かう金正日を金日成はいさめたが、逆に「そんな弱腰だからアメリカになめられるんだ!」と聞く耳を持たない。そんな金正日に愛想がついた金日成は金正日を後継者から解任しようとする。
そんな金日成を金正日は殺す。しかし警備の軍人により金正日もまた死す。以後、金正日は替え玉が使われる。
現代。アメリカ情報部は情勢分析の結果、密かに特殊部隊による日本人拉致被害者救出作戦を計画する。
その計画の責任者で日系人の小林は自衛隊の朝鮮民族出身者を選抜し、特殊部隊を編成。
秘密作戦のため、彼らは外の世界と一切連絡を絶たねばならない。反発するものや、あまりの過酷な訓練に自殺者も出る。作戦から辞退を申し出る者も出てきたが、小林やその上司・渡辺(渡辺文樹)の説得により訓練は続けられた。訓練も終わりになった頃、隊員には休暇が与えられた。実家に帰る者の中に、実家ではお金に困り朝鮮総連にお金を借りてくるように言われ、その条件として彼らの作戦の情報を売り渡す者がいた。
隊員たちの電話を盗聴していた渡辺によって情報は北朝鮮に渡らなかったが、その者は仲間から叱責にあい、自殺を強要された。事件の責任をとって小林は自殺。
仕方なく渡辺が実行部隊の指揮官に。
さあいよいよ上陸作戦が実行に移された!

渡辺文樹の新作。
ここまでで1時間15分ぐらい。
上映終了時間がタイムテーブルに記載されていなかったので、1時間半ぐらいの映画かなと思っていたら上映前に監督から「1時間半ぐらいしたら休憩を入れます。それからまた1時間です」と言ってたが、(休憩というのは16mmフィルムの缶のかけ換えの時間)10分押しで始まって終わったのは9時過ぎ。つまり休憩込みで3時間ある。
超大作である。

前半は兎に角せりふの応酬。
これでもかこれでもかと話しまくる。
冒頭の金親子対談もせりふの応酬で、その後のアメリカの情報分析も外人が出てきてその上に日本語の翻訳のせりふが出て、なぜか渡辺文樹の切り替えしが入って日本語で語る。一応対話だが渡辺のカットは別撮りだ。
で自衛隊の兵隊から「朝鮮半島の統一になるから」と在日の者ばかりを集めた特殊部隊を編成。でも任務の特殊性ゆえ、自衛隊を除隊した民間人になってだ。
一応訓練シーンはあるけどさらっとしたもの。
その後に自殺した者がでて説得のシーンはまたせりふの応酬。延々とディスカッション。
で兵士たちは「我々は渡辺さんや小林さんの夢のために働きます!」と言って泣く。
で情報を売り渡そうとする奴がでると「お前のような奴は自分でけじめをつけろ!」「恥を知れ!」「最後は自分で責任を取れ!」と拳銃を渡して自決させる。
すごいよ、集団心理は。
で小林は責任をとって自決。渡辺が心ならずも直接指揮を取ることになって、いよいよボートで北朝鮮に上陸!
上陸中に足を怪我したものは仕方なくおいてゆく。

で日本人拉致被害者が集められているホテル(?)を襲う。
ここで潜入する際にフロントで「名前を書いてください」と言われ困った渡辺は墨をひっくり返して紙をかけなくして「あとでいいです」と言わせるという強引さ。
そして銃撃戦があって日本人拉致被害者を救出。
横田めぐみさんや田口八重子さんたちである。

でも結局捕まって列車で護送される彼ら。
ここで捕まる前のシーンと列車に乗り込む駅のカットなどがなぜかカットバックで挿入さるので、時系列が狂う。
で、拉致被害者は「いまさら日本には帰りたくない」という。「日本は助けてくれなかった。今はもうこの国が祖国。主体思想を世界に広める」と言い出す。
渡辺は列車を乗っ取ることにして列車の手摺り棒をはずしてそれをてこにして床板をあける。
(ここで休憩)
床をあけてそこから外に出る。
走ってるように見える列車の車軸の部分にでてそこからデッキにいくというハイパーなアクションシーンが出現。
この後、列車が登場しまくるがどこでどう撮ったんだろう?

この後、列車を乗っ取って張成沢から胡錦涛への命令文書を作成して逃げようとするという大列車作戦。
すごいよ。やってることが。スケールが違う。
途中で金正日の三男の金正雲が「昔の先生のめぐみさんに会いに来た」と登場!これが渡辺映画にあるまじきイケメン俳優。

兎に角ここからアクションに次ぐアクションで「ナバロンの要塞」もびっくりの往年の戦争アクションが展開する。
しかし基本的な編集とかが雑なので、「拳銃を構えてるカット」「銃声」「相手がすでに倒れているカット」などで基本的なカットつなぎが無茶苦茶。
そして夜を疾走する列車のカットがあるのだが(ご丁寧にもミニチュア)、3秒ぐらいはリズムとして欲しいのに、1秒しかないと言った具合で映画のリズムがバラバラ。
だからちゃんと編集をすればかなりよくなると思う。

最後はアメリカに裏切られて空爆されてしまったりして結局は北朝鮮によって渡辺も殺されてしまう。
普通、渡辺が撃たれたあとで、その死に顔のアップを余韻としていれたりするが、逃げる渡辺が後ろから撃たれるカットで唐突にエンドクレジット。
(というかクレジットがあるだけすごいけど)

さっきも書いたけど渡辺文樹のカットは別撮りだったりするので照明が違って違和感があったり、音声は同時録音の部分はカメラのモーター音も入っていたり、吹き替えの部分は人物と声がまるでイメージが違う声がついていたりで、基本的に技術的に無茶苦茶。
音声の部分は機材の問題もあるけど、編集に関しては20年以上自主映画を作っているんだからもう少しどうにかなってもいいと思うのだが。

しかし今の日本で戦争アクションの大列車作戦をやろうなんて人は一人もいないから、まさしくワン・アンド・オンリーの破天荒な人である。
技術レベルは最低のライン、でも志のレベルは日本で最高級の人だろう。



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ザザンボ


日時 2011年12月3日14:30〜
場所 油野美術館東京分室
監督 渡辺文樹
製作 1992年


福島県の片田舎。
その田舎町の野崎家と橋本家は仲が悪かった。橋本家の当主の妹は野崎家の当主の妻であり、親戚でもあるのだが、かつて農機具を野崎が橋本家から関係のないところから買ったとかで、そのことが原因でいがみあうようになった。
野崎の当主の孫息子は実は橋本の当主と妹の間に出来た子だった。その息子は東京で出稼ぎをして嫁をもらって来たが、女の子の子連れだった。
その女の子も今や高校生で、橋本の家の孫息子の大学生とつきあっていた。
野崎の家の孫息子は中学生だが、ちょっと知恵遅れで、他人の家にあがって冷蔵庫から物を盗むようなことをしていた。担任教師の渡辺(渡辺文樹)はそのことに気にしていた。
ある日、学校の女教師の机の引き出しから貯金通帳と印鑑がなくなる事件が起こる。
知恵遅れの中学生が疑われ、彼が犯人だとされる。
数日後、その中学生は自殺した。テレビや新聞は教師の渡辺が彼を追いつめたと攻める。
渡辺は事件の真相を追求し始めるのだが。

渡辺文樹映画祭である。
12月1日から1週間、高円寺の油野美術館東京分室と言うところで開催された。
美術館と言っても普通想像されるようなところではない。
高円寺の古い雑居ビルの1室。
それは想像していたが、広さは8畳間ぐらい。そこで30人ぐらいが折り畳みいすで座っているから空気が悪く、酸欠状態で頭がくらくらする。外へ出ると治ったからやっぱり空気が悪いのだ。

で、映画の方である。この映画、もとは松竹が配給する予定もあったらしく、他の映画に比べると多少まとも。
クレジットやメインタイトルが最初にある。(ちなみに「協力」として園子温の名前がある)

教師がいろいろ追求していくと結局、橋本の孫の大学生が野崎の家の高校生の娘を妊娠させ、その堕胎の為の費用5万円を知恵遅れの中学生を使って盗み出させたという訳。

で、祖父が家の恥をさらしたとかで孫を自殺に見せかけて殺したということ。
この自殺させるシーンで母親が「やめて。じいちゃんもばあちゃんも」と延々に訴えていく声が不気味だった。

でも映画全体は無駄に長いカットが多く、非常にテンポが悪く苦痛だった。
また役者のいつものことながら渡辺主演であとは素人の人。
今更その点を突っ込むのは野暮かも知れないけど、志の高さに技術がついていってない。その点が残念だ。

ちなみに映画完成後に松竹の奥山和由とは決裂したらしい。「だから完成後に権利を買い取りました。お金は払ってませんけど」という監督の弁。
よくわからない。
あと「ザザンボ」というのは方言で「葬儀」を指す。
最後に字幕で知らされる。



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