それでも運命にイエスという | 宇宙兄弟 | ||
ぼくらの季節 | 濡れた唇 しなやかに熱く |
貞子3D | 少女縄地獄 |
襲られた女 | 憲兵と幽霊 | 草を刈る娘(思春の泉) | 色恋沙汰貞子の冒険 私の愛した性具たちよ・・・ |
女真剣師 色仕掛け乱れ指 |
となりの人妻 熟れた匂い |
囚われの淫獣 | 僕等がいた 後篇 |
ORANGING’79 | クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶオラと宇宙のプリンセス |
ナッシュビル | ツルモク独身寮 |
それでも運命にイエスという日時 2012年5月26日18:30〜 場所 長野ボランティアセンター5Fホール 監督 葉田甲太、小川光一 製作 平成24年(2011年) 「僕たちは世界を変えることができない」の原作者の葉田甲太氏が作ったカンボジアのエイズ患者の実態についてのドキュメンタリー映画。葉田氏の講演付き上映会。 長野までバスで行ったのだが、その車中でこの映画について書いた同タイトルの文庫本と「僕たちは世界を変えることができない」を再読。しかし読まずに行った方がよかった。 本を読んで「しまった」と思ったのは、本の方は映画のできるまで、取材中の模様、上映会の記録などが書かれていたのだが、映画の内容と取材中の話がほとんど同じだったのである。 ナレーションも葉田氏が書いているのだが、本の文章とナレーションがイコールである部分も多い。 だから先にシナリオを読んでからすぐに映画を観たようになってしまって、映画そのもののインパクトは薄れてしまっという印象。 もちろん葉田氏も責任ではないのだが、本を読まずに映画を観ればよかったなあとちょっと後悔。 映画はどちらかというと割と淡々としていて、いかにも映画的な「画」(それこそ怒鳴りあっているとか取材が拒否されるというような)はない。 カンボジアのHIV感染者の現実。 風俗街で働かざるを得ない17歳の女の子、親がHIVの感染者で生まれたときからHIV感染をしている子供たち、夫が風俗で遊んでHIVに感染し、それを移されてしまった妻。 患者たちのインタビューを中心に構成される。 17歳の女の子は14歳から働いていてるが最近は稼げないという。17歳ではもうおばさんという理由らしい。 でもあおらない映画作りにかえって好感をもった。 もちろんそれが物足らないという意見もあろう。 本に書いてあったが、実際、葉田さんが行った上映会で「何が言いたいか解らない」という意見もあったようだ。それも解る。 ラストシーンはある患者のすばらしい笑顔と、2ちゃんねるに書き込まれた「HIV患者死ね」「隔離しろ」「自殺しろ」という書き込みのカットバックで終わる。 だからむしろ映画を観たあとに「あなたはこれからどうするか?」と問われているような気がした。 どんなに過酷な環境にあっても運命を受け入れ笑顔にもなって生きていく。 もちろん始終笑っているわけではないだろう。 笑顔ではしゃぐ子供たちも恐らく15歳以上生きられない。 別にHIV感染云々だけでなく、日本で生きていく我々はかの現実を知って自分はどうするかを考えてほしいと感じた。 もちろん直接的にカンボジアのHIV患者に関しての援助をするのも一つだろう。 それだけでなくても何か変わってほしい、そういうメッセージを感じた。 (このページのトップへ) 宇宙兄弟日時 2012年5月26日15:05〜 場所 長野グランドシネマズ・シアター4 監督 森義隆 (詳しくはムービーウォーカー・データベースで) 南波六太(小栗旬)と日々太(岡田将生)は兄弟。 二人は子供の頃、UFOを目撃しており、それ以来宇宙に行くことを目標にしていた。 実際、日々太は宇宙飛行士になり、NASAの打ち上げる月基地建設員に選ばれ、宇宙に向かおうとしていた。 六太は自動車の設計をしていたが、「宇宙計画なんて金の無駄使いだ」と言い放った上司につい暴力をふるって首になってしまう。 そんな時、JAXAから六太の元に「宇宙飛行士試験書類審査合格通知」が届く。子供の頃、「一緒に宇宙に行こう」と誓った兄と一緒に行きたい日々太が兄に無断で応募したのだった。 今は仕事もない六太は仕方なく試験を受ける。 2次試験終了後、いよいよ日々太の月への発射が訪れる。 六太と彼の両親はNASAの発射場に向かう。 原作はベストセラーコミックだそうだ。 僕は劇場に貼ってあったポスターで映画の存在を知ったが、小栗旬のアフロヘアが気になっていやだった。 ああいう際だった髪型とかルックスはコミックでは必要だろうけど、実写になると浮くんだよなあ。 その印象は最後まで抜けなかったが、でも映画自体はそれ以上に面白く、プラスマイナスして残った印象は「よかった」というプラスの評価だ。 日々太の月への旅と六太の宇宙飛行士訓練が平行して描かれる。初めて宇宙飛行士になるための試験の実態を知った。恐らく事実に基づいての物語なのだろう。 2次試験の体力テストなどはまあ予想されたことだが、後半、選抜された6人が受ける仮想の宇宙基地での試験。 10日間まったく閉ざされた空間で様々な課題が与えられての共同生活。 リーダーシップを発揮する奴もいれば「所詮、ここにいるメンバーはライバルだ。仲間じゃない」と好戦的な奴もいる。 浜田岳、新井浩文らが実に憎々しく好演する。 実際はどうなのだろう?あそこまで解りやすいキャラクターはいないかも知れないが、十分にあり得る。 宇宙飛行士になるには知力体力だけでなく、精神的なタフさ、人格の高潔さも必用とされる。 まるで人間のなかで一番すばらしい奴のみが選ばれるのだなあ。 選抜試験の結果を伝えるシーンはない。 それでもやっぱり小栗旬が選抜され、兄弟そろって宇宙に行くハッピーエンド。 観ていて心が暖かくなったから、このハッピーエンドでいいのだ。 出演者ではJAXSAのスタッフに堤真一と吹越満。 堤真一は出しゃばらず、よかった。吹越満は「ガメラ2」以来の技術者役でよかった。 岡田将生は兄を思う天才肌の若者を好演。 そうそう小栗旬のシャワーシーンがあり、ケツがでてきたのはびっくりした。 女性ファン向けのサービスカットか。 (このページのトップへ) ぼくらの季節日時 2012年5月24日21:00〜 場所 銀座シネパトス3 監督 広木(廣木)隆一 製作 昭和55年(1980年) 昼は喫茶店、夜はバーのお店を経営するジュンペイたち。 彼らは男同士のカップルだった。 ある日、店の前で女性が倒れているを発見。とりあえず病院に運ぶ彼ら。 ジュンペイの彼氏は子供が欲しいという。 数日後、例の倒れていた女が店にやってくる。 3人は意気投合し、彼女が彼らの子供を生むことに。 そんなとき、ジュンペイやその彼氏のそれぞれの元の恋人(池島ゆたか、大杉漣)が店にやってくる。その二人はかつては恋人同士だったが、今は別れていた。 今は一般映画で活躍する廣木隆一監督、そして大杉漣のピンク映画時代のホモ映画。 正直言うけど、「ノンケ(ストレート)の人が作った話だなあ」というのが正直な第一印象。 (橋口亮輔の「ハッシュ!」の原型とも言える) ホモのカップルも子供を欲しがるだろうという発想が、そうかなあという疑問が頭に浮かぶ。 そんなにゲイの人は子供にこだわらないと思うよ。 確かにゲイは子供が出来ないし、結婚という制度もないから二人の絆はお互いの気持ちだけだから、形でなにか縛るものが欲しいという気持ちは聞いたことがある。 でもそれがただちに子供にはならないと思うし。 映画では若いカップルが二人で69をして興奮したところで女の体に挿入、発射、という展開。 しばらくして彼女は妊娠、そして出産。 でも本当はその子供は女が前に別れた男の子供。 それで子供を返して欲しいという展開。 結局、二人はその申し出を受け入れ、子供は返す、というエンディング。 で、映画の途中、若い二人はかつてつきあっていた中年カップルのよりを戻させようとする。 (ちなみに若いカップルのタチ役と大杉漣が、ネコ役と池島ゆたかがつき合っていた設定。でも若いカップルのネコ役と池島がつき合っていて、タチ役と大杉漣がつき合っていた設定。ネコ同士、タチ同士の設定になってしまう。まあ、あんまり細かいことを突っ込むのはよすか) なんだかんだでよりが戻った二人の濡れ場がある。 大杉漣と池島ゆたかだよ! なんかすごいものを観た気がした。今の大杉漣の活躍からすると信じられないような作品ですね。 でも話のメインに女性が絡むし、濡れ場は普通のピンク映画に比べれば少ないし、やっぱりストレートの人が作ったホモ映画に思えてならない。 (このページのトップへ) 濡れた唇 しなやかに熱く日時 2012年5月24日20:00〜 場所 銀座シネパトス3 監督 中村幻児 製作 昭和55年(1980年) 映画のシナリオライターを目指す青年。今は女性と同棲しているが、これからの二人については迷いがあった。俺といて彼女は幸せなんだろうかと。 二人の出会いは数ヶ月前。主人公の青年がシナリオコンクールに応募するシナリオ原稿の入った封筒を彼女がぶつかって水に浸してしまったことがきっかけだった。二人で濡れた部分を必死に書き直して直し終わってなんとか応募には間に合った。 彼女の方は会社の上司とつき合っていたが、そいつは結婚するという。結婚しても二人の関係は続けようというが身勝手な男の言い分にうんざり。 偶然に再会する彼ら。青年の方はピンク映画の助監督をしていたが使えない奴と監督から怒られてばかり。 やがて制作現場はやめてピンク映画館の映写係になってシナリオを書き続ける。 中村幻児の青春恋愛映画。 映画青年の夢と挫折と恋があっていいねえ。 なんかよくわかるよ。 それにしても濡れ場がやたら多い。 5分に1回は濡れ場が出てくる感じだ。 青年は偶然にもかつてシナリオの同人誌をしていた頃の友人と再会。 その友人は「自分の書いたシナリオは今度テレビに放送されそうだ」という。 実は彼は自分の恋人がテレビのプロデューサーとセックスをして売り込んでいるのだった。放送されたが途中で大幅に変更されていた。 自分の書いたものは放送されない、恋人にもひどいことをした、と嫌悪感にさいなまれ、二人で心中してしまう。 主人公の青年も別のコンクールに応募した作品が採用されそうになる。恋人は彼の為にプロデューサーに体を預ける。彼のためになることならそれでもいいと。 それを知った彼は彼女に悪いと別れを決意する。 前から応募していたマラソンキス大会に出場してから別れようと。 彼らは優勝したが、お互いの為に別れる。 こんな感じ。時間軸がずれていてピンク映画にしては珍しく過去と現在がいったりきたりする構成。 それにしても夢に向かってひたすらに走るがやがて挫折していく姿はかつての自分でもあるし(女はいなかったけど)いつの時代にも通じるテーマだなあ。 (最近では小説「ピンクとグレー」という秀作もあったし) あっこの映画、プリントの不備なのか、最初からそうなのかメインタイトルもクレジットタイトルもなし。 案外製作費がなくなってなしになったのかも知れない。 めちゃくちゃ面白いというほどではないが、見応えはあった。 (このページのトップへ) 貞子3D日時 2012年5月20日19:30〜 場所 角川シネマ新宿1 監督 英 勉 (詳しくはムービーウォーカー・データベースで) 女子高教師の茜(石原さとみ)の自分の生徒が自殺した。だがその生徒の友人も自分も彼女が自殺したとは思えない。 その頃謎の自殺事件が相次ぎ、警察でも刑事の小磯(田山涼成)は不信には思っていたが、これといって手がかりもない。 WEBデザイナーをしている恋人・孝則(瀬戸康史)の友人(染谷将太)から今ネット上で見たら死ぬという呪いの動画が噂になっているという話を聞く。 そういえば自殺した生徒は「呪いの動画」を探していると言っていた。小磯もその噂を部下から聞きつけ噂の出所を探り出す。 それは10日ほど前に「ニコニコ動画」で生中継された柏田(山本裕典)という男の自殺シーンを観た人々が同じ時刻に死んでいったことが出所だった。 やはり呪いの動画は存在するのか? 「リング」シリーズ最新作。 といっても話は続いていない。「リング」は実は日本版は観ていなくて、アメリカリメイク版と韓国リメイク版だけ観た。以前はビデオテープだったけど、ネット時代にふさわしく、ニコ動にアップされた動画に貞子が登場する。 ホラーで3Dだから本来ならパスする内容なのだが、瀬戸康史、山本裕典の共演ということで出演者目当てで観た。 ああ、ちょっと残念。 二人ともあまり出番がないのだな。 大体ねえ、瀬戸康史はWEBデザイナーという設定なのだから(もっともそれも映画でははっきりしないが)、そのネットの知識を駆使して石原さとみを助けながら、ネット上の呪いの動画の秘密を探る、という展開かと思っていたらさにあらず。 謎解きは小磯刑事が担当する。 だから瀬戸康史の出番なんか必要じゃなくなってしまう。 実際、物語の中盤で瀬戸康史は貞子に引っ張られて画面の向こうに行ってしまうし。 でも今回は3Dということで、あまりストーリーで魅せるつもりはなかったかも知れない。 宣伝もとにかく貞子が飛び出す!ということを売りにしていた。石原さとみ、瀬戸康史、山本裕典という若手3人の共演なのに、この3人のインタビューとかテレビで全く見かけなかったもんなあ。 仕舞には貞子がモンスターと化したのがわらわらと登場する。そもそも柏田がネットで叩かれた復讐に貞子を復活させたってのがよくわからないんだが。どんなことしたかったのか、柏田は。 そういう疑問はほったらかしにしてとにかく貞子が飛び出すだけ。それも慣れてくると別に怖くない。 そして茜は恐怖にあうと窓ガラスをもかち割る叫びを発するという超能力を持ってる。 でもこの能力ってちょっと笑える。で、後半活躍するかと思ったらそうでもない。 さっきも書いたけどとにかく「飛び出す貞子」が中心なのでお話は二の次。 でもそういう見せ物に徹した3Dが3Dらしいといえばらしいのだが。 (このページのトップへ) 少女縄地獄日時 2012年5月19日21:10〜 場所 銀座シネパトス3 監督 渡辺護 製作 昭和54年(1979年) 正直に言うとこの日は朝から活動し、映画を4本観たので、最後の1本のこの映画は少し寝ました。 まあ映画全体もまったりしたテンポであるし、ちょっと眠くなる映画ではありましたが。 映画自体は再婚した資産家とその後妻、その娘、資産家の番頭などが登場。 映画自体は時系列にそった展開ではなく、時制が入れ替わって疲れた頭にはちょっと混乱。 資産家が再婚し、その妻は番頭と不貞を働き、やがて資産家は殺され、娘は家出してお遍路巡りをする、というのが時制にそった展開。 資産家と妻とか、妻と番頭とか、家出した娘がいく先々でレイプされるとかの濡れ場も多い。 下元史郎が娘を犯す漁師(だったかな)役で登場し、娘を犯す。 その後、その娘と再会する。 その時に「前に犯した女はこうだった」と思い出を話す。 で娘の方が「その人どんな顔でした?」と聞くと 「不思議やなあ。忘れられへんはずやのに顔は出てきーへん」という。 「こんな顔じゃなかったですか?」 と顔を見せる。 というシーンがあった。 そうだよなあ。男ってそのセックスの経験は覚えていても相手の顔が出てこないことがあるんですよね。 映画の内容とは直接関係ないけど、そのあたりは妙に実感しました。 (このページのトップへ) 襲られた女日時 2012年5月19日20:00〜 場所 銀座シネパトス3 監督 高橋伴明 製作 昭和56年 (1981年) ヒロシと善さんは歳も一回り離れているが、二人で何でも屋稼業で日々過ごしていた。 今日も家出して大学生のアパートに転がり込んでいる女子高生を見つけてきた。善さんはちゃっかり女子高生とも1回しちゃうのだが。 ヒロシはつきあっているような女はいたが、行きつけのスナックの娘にも想いを寄せられていた。 次の仕事は有閑マダムのセックスのお相手。 善さんは6回相手させることを約束したが、そんなことは聞いていないヒロシは途中で果ててしまう。 そんな時に善さんがピンチヒッターで出てくるがお客さんは「あんたはタイプじゃない」と怒られる。 家出した猫を探したりしているうちに、大物総会屋がセックスしている写真を撮る仕事を引き受けきたヒロシ。 ガードが堅いその総会屋を落とすにはスナックの娘とセックスさせるしかないとなったが。 高橋伴明のピンク映画時代の快作。 スナックの娘もいれたヒロシ、善さんの3人は「冒険者たち」の3人にも通じる。というよりヒロシ、善さんのバディムービーとも言えるのだが。 金を手に入れた後、記念写真をそれぞれ撮ろうと、それぞれがアングルを決め、セルフタイマーでシャッターを押す。 善さんが撮るときはヒロシとスナックの娘だけの構図にし、他の2人が撮るときもそれぞれ構図の作り方に3人のそれぞれの感情が出ていて面白い。 写真はうまく撮れて金は手に出来る。 でもやっぱり総会屋から女は復讐を受ける。 女は殺され、二人は復讐を誓う。 まあこの後の展開が二人で総会屋が車から降りたところをナイフで刺そうとするという展開。 ピンク映画だから予算ないから拳銃が使えないのはわかるんだけどね。 でもこういうハードボイルドちっくな話ならちょっと拳銃が出て欲しかった。 そうすれば私はもっと気に入ったろう。 その後、ヒロシを逃がし、一人で総会屋を指した善さん。 逃げてきた二人が昼間のゴールデン街で出会い、音楽をバックに二人で踊るシーンが割と長い。 二人の関係を示すいいシーンだとは思うけど、ちょっと長かったかな。 でも総じておもしろかった。 下元史郎の情けない中年ぶりがいい。 ヒロシ役は完全に松田優作を意識してましたね。 もじゃもじゃ頭とかサングラスがもろ松田優作でしたから。 あと、冒頭、大学生に善さんが「おい、クリトリス野郎」と呼びかけ、「それをいうならクリスタルやろ」とヒロシにたしなめられる。 そうですね、田中康夫の「なんとなくクリスタル」がベストセラーになった年でした。 (このページのトップへ) 憲兵と幽霊日時 2012年5月19日17:00 場所 シネマヴェーラ渋谷 監督 中川信夫 製作 昭和33年(1958年) (詳しくはムービーウォーカー・データベースで) 昭和15年、波島憲兵中尉(天知茂)は物にしようとしていた明子(久保菜穂子)が部下の田沢(中山昭二)と結婚したことを快く思っていなかった。 太平洋戦争も始まった昭和17年、部下の憲兵伍長が大事な書類をなくしたと相談にくる。波島は「誰かに罪を着せろ」と指示する。 実は波島が書類を持ち出していたのだが、その罪を田沢に着せる陰謀だった。 田沢は逮捕され、拷問の末に銃殺刑が決定。射手の一人に何の偶然か田沢の弟(中山昭二・二役)が選ばれる。 さすがに銃殺刑の瞬間に気を失ってしまった田沢の弟だった。 国賊の妻、母と言われる田沢の母と明子。波島の心ない言葉で田沢の母は自殺してしまう。明子は波島の紹介で就職が決まったものの、やはり波島の陰謀でクビになってしまう。 新東宝の憲兵物。「憲兵とバラバラ死美人」とかいかにもエログロっぽいタイトルのシリーズだ。 今回初めて観た。 いや面白い。 天知茂の極悪非道ぶりがたまらない。 世代的には私は天知茂というとテレビの刑事物「非情のライセンス」とか土曜ワイドの「明智小五郎」シリーズのイメージが強くて、冷徹な表情をしていながら実は悪い奴ではない印象。 でもこの映画ではその冷徹な表情のまま、極悪非道の限りを尽くす。やっぱり天知茂という役者を語るとき、この憲兵シリーズを忘れてはいけませんね。 映画はこの後、波島は明子を自分の女にして飽きたところでポイと捨てる。 そして戦局も悪化、中国への異動を命じられる。 実は波島は中国に情報を流しているスパイでもある。 ところが何の因果か自分の情報提供相手の中国人を逮捕しなければならない羽目になってしまう。 さらに田沢の弟が自分の部下になってしまう。 敵に情報を流したから憲兵たちが逮捕したのは替え玉。 だが田沢の弟がもっとよく調べましょう、というので日本人の証人が出てくるがこれがなんと明子! こういうご都合主義を笑ってはいけない。 相手は新東宝だ、大蔵貢だ、憲兵だ。 極悪非道の憲兵だから筋なんかご都合主義でいいのだ。 やがては自分の上司に自分が敵に情報を売るスパイだとばれ、追いつめられる波島。 追いつめられた先が墓場。 その墓場に次々と殺させた田沢や、口ふさぎの為に殺した部下が出てくる。 いいじゃないですか、怪談ものですよ。 「憲兵と幽霊」ですから。 でもどうせなら幽霊がもっと前から出てくればよかったな。 そうするともっと怪談ものになってよかった気もする。 (このページのトップへ) 草を刈る娘(思春の泉)日時 2012年5月19日15:25〜 場所 シネマヴェーラ渋谷 監督 中川信夫 製作 昭和28年(1953年) (詳しくはムービーウォーカー・データベースで) 今年も草刈りの季節がやってきた。山の村の者たちは麓の村に行き、1年分の馬の草を刈る。 村のばあさんたちは村の若い者を夫婦にするのが楽しみだ。そして仲人を駐在さん(東野英二郎)に頼む。 今年もそで子ばあさんは孫娘のモヨ子(左幸子)を誰かとくっつけようと計画。麓のばあさんの親戚の時造(宇津井健)と組ませようと時造とモヨ子で共同で草を刈らせる。 ある日、時造はついモヨ子を押し倒してキスしようとしてしまう。 びっくりして時造の指を噛むモヨ子。 それを聞いたばあさんたちは「モヨ子は強姦未遂にあった」「いや時造は指をかじられ傷害罪だ」と騒ぎだす。 駐在さんに白黒つけてもらうと町へやってくるが、その日は祝言があって駐在さんはそれどころじゃない。 宇津井健のデビュー作。 なんとものどかな映画だ。この映画に描かれたような草刈りもお見合いも今は昔で隔世の感がある。 この映画の公開の頃は現代だったろうが、今から観ると明治時代のように見えてしまう。 俳優座との提携のようだからやたらと俳優座の役者が登場する。 駐在さんの東野英次郎、村の坊主に千田是也、村の実力者(?)に小沢栄太郎など。宇津井健も俳優座だから大応援である。 ついでにいうと前半に村の娘たちが川で水浴びをするのだが、それを村の若い衆が覗き見する。その中に佐藤允がいた。せりふも一つぐらいあったと思う。 佐藤允は東宝の入社以前は俳優座で、宇津井健と同期だから、まず間違いない。 あと永井智雄が「歩くデパート」の行商役で好演。 映画自体はどうかというと松竹的ほのぼのドラマでそういうのがお好きな方はいいだろうけど、私にはほのぼのすぎてちょっと、という感じだった。 後半、駐在さんがもうすぐ祝言が始まるので着替えようかというときに「白黒つけてもらおう」やってくる。 話を始めた途端に「はよ着替えろや」とか「みんな待っとるぞ」と話しかけられ、その辺の脚本の妙、でもあるのだが、あんまりやりすぎるとくどくなって、すこしいらいらした。 結局もともとモヨ子と時造はお互いを気に入ってるので万事解決。めでたしめでたし。 それにしても昔の田舎では結婚式というのは大イベント、お祭りだったのだなあ。 結婚式には呼ばれていない近所の人々が向かいの家の屋根から祝言が行われてる2階の大広間をのぞき込む。 とにかく村中大騒ぎ。 そういう点も現在とは隔世の感を強くした。 (このページのトップへ) 色恋沙汰貞子の冒険 私の愛した性具たちよ・・・日時 2012年5月17日21:00〜 場所 銀座シネパトス1 監督 山内大輔 製作 平成22年(2010年) (詳しくはピンク映画デ―タベースで) 顔中に包帯を巻いた女がビデオカメラに語りかける。 「私は今まで多くの罪を犯しました。そのすべてを告白したいと思います」 その女、貞子は初めて就職した不動産会社の社長の愛人になった。社長は貞子のことを「業の深い女だ」と言う。 貞子の初体験は高校生の頃。当時母親が付き合っていた男に犯されたのだった。父親を知らない貞子はその男に父親のようなものを見出し、愛されようとする。 しかし同時に自分の母親とも付き合っている。貞子は男を独占するために局部を切り落とす。 警察は貞子が未成年であるし、暴行された結果の事件として、3年間施設での生活で済んだ。 不動産会社の社長はすべてを知った上で貞子を雇ったのだ。中出しする社長の子を三度堕ろした貞子。 しかし社長の妻が妊娠していることを知った貞子は社長の愛を独占したいあまりに社長を刺し、そして局部も切り取ってしまう。 2011年ピンク映画ベストテン第1位。 いや〜参ったなあ。というのが本音。 よくできた映画だとは思うよ。エロを話の中にちゃんと融合している。無理矢理にとってつけたような濡れ場はない。 でも局部切り取るとかの話は私は苦手なのだよ。 言葉だけならともかく、実際に血塗れで股間を押さえている画が出てくると映画を観ながら私も股間を押さえてしまう。 映画の中の貞子はその後逃亡生活に入り、歌舞伎町で知り合った、ヤクの売人の男と生活を始める。 ヤクの売人は金に困り、貞子を売り飛ばす。その相手の男が極度のSで貞子を痛めつけ、やがてはジャガイモの皮を向くようなピーラーで貞子の顔の皮を剥ぐ。 もう勘弁してくれ! そういう映画だと知っていたら観なかったよ。 思わず頬を手で覆ってしまうし、これを書いている今も怖くなる。 血塗れになった貞子は結局行く宛もなく、再び売人の元に帰る。そして男を殺してしまう。 自分も罪を悔いて自殺しようとするが、「死ぬシーンは観たくないでしょう」とビデオを止める。 このままでは終わらないな、なにかオチがあるだろうな、と思っていたら期待を裏切らない。 そして・・・・というドンデン返し! 自分の備忘録のために書いておくけど、実は今までカメラに向かって話していたのは不動産会社の社長夫人。 復讐のために貞子を殺すための完全犯罪だったのだ。 ドンデン返しもあって映画としては大変よく出来ているし、ベストワンも納得なのだが、ホラー、スプラッタ嫌いの私にとっては観ていてつらい映画だった。 (このページのトップへ) 女真剣師 色仕掛け乱れ指日時 2012年5月17日20:00〜 場所 銀座シネパトス1 監督 田中康文 製作 平成23年(2011年) (詳しくはピンク映画データベースで) 両親を亡くした主人公はプロの将棋師の祖父に育てられる。 幼い頃から将棋を教えこまれ、長考になると祖父にからだをさわられ続けていて、やがてはその感触で興奮しその興奮の時に次の一手を思いつくようになる。 しかしその祖父も死に、通称ダルマ(池島ゆたか)という将棋師が祖父に金を貸していたと言ってくる。 俺と勝負して勝てば借金はなしにしよう、と言われて始めたものの、結局敗退、借金は増えてしまう。 彼女に残された道は将棋賭博の棋士となり、100勝したら再びダルマと戦い、借金を帳消しにしてもらうことだった。 2011年ピンク映画ベストテン第2位。 将棋の世界とエロを結びつけた作品。 セックスするといい手を思いつく、というのが、いかにもピンク映画らしい発想だなあと思う。 それで何回も勝負のシーンがあるが、主人公は相手とセックスしている姿を想像し、その想像で燃え上がっていい手を思いつく、という展開。 それなりに面白い。 Vシネの麻雀映画(「雀鬼」とか)を観るような気分で楽しめた。 しかしながら将棋の試合の展開、と言うのはいっさい関係なく、画面には登場しない。 もちろん将棋板は映るけど、作者としては特に将棋の駆け引きは描くつもりはないらしい。 もっとも描かれても、私にはよくわからなかったかも知れないけど。 でもピンク映画の弱点でもあるが、やっぱり役者が弱いなあ。 池島ゆたかが大物将棋師で登場するが、池島ゆたかは緊張感がない顔をしているので、(だからこそ会ったときに緊張しないのだが)こういう悪い奴の役をやってもまるで似合わない。 同じく勝負師の祖父もこれがいかにもピンク映画に登場するような素人みたいな人が出てくるので、まるでだめ。 その辺がピンク映画らしいと言えばらしいし、その辺を突っ込むのは野暮なのかも知れないが、やはり盛り上がりに欠けるのも事実なのだな。 そうそう将棋の賭博場として阿佐ヶ谷ロフトAが使われていた。ステージで将棋をして板面を大型テレビで写し、客席の人々が、どちらが勝つか賭けるという設定。 以前、池島監督の「STAGE」という映画でも阿佐ヶ谷ロフトAが使われていたし、ピンク映画では使用頻度は多いのかな。 知ってる場所が出てくるとついそういうところばかり観てしまいますね。 また別の映画でも出てくるのではないかと期待してしまいます。 (このページのトップへ) となりの人妻 熟れた匂い日時 2012年5月15日21:00〜 場所 銀座シネパトス1 監督 後藤大輔 製作 平成23年(2011年) (詳しくはピンク映画データベースで) 芝浜という海岸。漁師の男はかつて弘美という子を漁に連れていき喜んでくれたはいいが、波にさらわれて子供は行方不明になってしまっていた。 その日から酒浸りで働こうともしない。 仕方なく妻は漁業協同組合でパートをしていたが、その組合長から言い寄られていた。組合長もかつては漁師だったが、その時分、海が怖いと言って丘に上がったヘタレな男。 ある日、漁師は酔って海岸を歩いていると大金の入った瓶を見つける。喜んで持ち帰った漁師。「もう働かないぞ〜」と再び酒を飲んで寝てしまう。 翌朝、起きると瓶は無くなっていた。あれ?昨日のあれは夢だったのか? 一方謎の女がこの港町に現れる。行商の親父が「仕事は何?デリヘルとかそういうの?」と訊いても「呼ばれてきただけ」と意味不明。女は漁師の家にもやってくる。 そしてなにやら日本語が話せない、でも顔は日本人風の青年もこの港町にやってくる。 2011年ピンク映画大賞受賞作。 今日その前に観た「囚われの淫獣」のインパクトがすごすぎて今一印象は薄い。それも仕方ないか。「囚われの淫獣」は変化球中の変化球で一種掟破りの映画だからなあ。 芝浜という地名が示す通り、落語の「芝浜」がモチーフ。 そして組合長は地元の若い女と「組合の事務員に雇ってあげるから」ホテルにしけこむ。 謎の女は実は税務署の査察官。 行方不明になった子の名前は弘美、部屋においてあるランドセルは水色、だからこの謎の女性が主人公夫婦の子供かと思わせる。 でも税務署の査察官は言う。「この家の弘美の小さい頃の写真見たけどちがったわ。だっておちんちんあるんだもん」 作者の引っかけなのだな。 もちろん外国語をしゃべる謎の青年が「弘美」だったというわけ。青年は両親と再会する。 数年後、漁師はまた元のように働き者に戻る。 実は見つけた瓶は実は組合長が隠していた財産。 警察に届けても落とし主がわからず、漁師の妻は我が家のものになったと夫に打ち明ける。 実はあなたに働いてもらいたくて瓶を隠したのだと。 ウエルメイドな人情話だし、否定はしないけど、松竹的なほんわか映画で、ちょっとインパクトに欠ける印象は否めない。 よくできた映画ではあるけれど。 そうそう久保新二が海岸で行商をするおじさん役でカメオ出演。 往年の丹波哲郎のような貫禄を感じた。 (このページのトップへ) 囚われの淫獣日時 2012年5月15日20:00〜 場所 銀座シネパトス1 監督 友松直之 製作 平成23年(2011年) (詳しくはピンク映画データベースで) 画面に意地が悪そうな顔をした人形登場。 「ここはピンク映画館だ。ここは痴漢をしようとレイプをしようとなにをしたっていい」と言い放つ。 (そこにはテロップで「これは映画の中のせりふです。上映中は他のお客様に迷惑にならないようにご鑑賞ください」と表示される) 画面は変わって若い女性がベッドの上で裸で「こっちきて〜」と誘う。 画面は変わって男3人、女2人がある閉館した映画館のロビーで寝ている。彼らはやがて起き出す。「ここはいったいどこだ?」ふさがれた出口を体当たりで壊す男たち。しかし出口を突き破ったはずなのに、今度は客席の扉からロビーに入ってしまう。出られないと知った彼らは劇場内をさまよう。 やがて冒頭の人形と対面する。 人形は5人にそれぞれ問う。「君はどんな映画が観たいんだ?」 2011年ピンク映画大賞ベストテン第4位受賞作にして「ピンク映画女性ファン」を演じた幸田李梨が女優賞を受賞。 紹介文で「閉館になった旧オークラ劇場で撮影され、男女5人が劇場に閉じこめられる云々」とい文章だけ読んで観に行った。 いや驚いた。こんな映画初めて観た。「こんな映画初めて観た」という手垢のついた言葉だが、実際、初めて観た。 ピンク映画とは何か、観客はピンク映画になにを求めているか、ピンク映画はどうあるべきか、を観客に問う。 人形は問いかける。「君はどんな映画が観たいんだ?」 ある者は女性に復讐するためにレイプが観たいといい、女性客は「今の映画は性描写がない。性描写のあるピンク映画の方が感情移入が出来る」と言う。 「女性がピンク映画を観にくるなんて男性専用車両に乗ってきたみたいなものだ。だから痴漢にあっても文句言うな。知り合いの男性をボディガードにするなんて卑怯な子とするな」と言い放つ。 そして「AVとピンク映画の違いってなんだ?ピンク映画は映画だなんていうなような。フィルムで撮ってるから映画だと?いまどきハリウッド映画だってフィルムで撮ってない。ピンク映画がフィルムなのは設備投資が出来ないだけじゃないか」と問いかける。 やがて登場人物の一人の一番若い男が映画の中の美女に誘われてスクリーンの中に入って、セックスを堪能する。 「デジタルか、フィルムか」「3Dか2Dか」「ピンク映画かAVか」「そもそも映画館で映画を観るかAV(DVDも含めていい)を家で観るか」 映画の変革期にある21世紀初頭、ピンク映画だけでなく、映画とはこれからどうなるのかを問いかけた珍しい1本。 映画史に残るべき注目作だと思う。 ピンクは時々こういうとんでもない怪物映画に出くわすから侮れないなあ。 いろんな友人に観せてやりたいと思う。 (このページのトップへ) 僕等がいた 後篇日時 2012年5月13日19:15〜 場所 新宿ピカデリー・スクリーン4 監督 三木孝浩 (詳しくはムービーウォーカー・データベースで) 前作のラストで親の都合で東京へ転校した矢野(生田斗真)。だがその後矢野は消息不明になっていた。 七美(吉高由里子)は矢野との約束通り東京の大学に進学し、矢野の親友で七美に想いを寄せる竹内(高岡蒼佑)も東京の大学に進学し、七美を想っていた。 矢野は東京の高校に進学後、七美と毎日電話やメールをしていたが、母親が癌で入院した。 当然のことながらその負担は重い。そこへ矢野の父が再婚した相手が矢野を養子にしたいと言ってきた。矢野の母は息子がいなくなってしまうのではという強迫観念から精神的に不安定になり、自殺した。 矢野はその後、札幌でバーテンをしていた。そこへかつての恋人で死んだ奈々の妹・有里(本仮屋ユイカ)が訪ねてくる。かつて姉の代わりに関係を持ってしまったことのある矢野は、有里に責任を感じ、一緒に住むようになる。 3月に前編を観て珍しく恋愛映画にしては面白く、期待してたが、後半の波瀾万丈ぶりはかえって笑ってしまう。 まず矢野の母親が突然末期癌になる。唐突だなあ。 そしてまた突然自殺してしまう。おいおい。 で、次にストーカー的追いかけてくる怖い山本有里。 彼女を抱いた責任もあるし、なんだか病的な彼女をみると見捨てられない責任感を感じて一緒に住み出す矢野。 正直よくわからないのだが、責任感だけでは人間生きていけないのではないだろうか? それで今度は有里の母親が東京まで追っかけてきて、病気になって入院してしまう。 いやいやいや、また病気になるのか。 矢野の母親も癌になったし、病気ネタはここではくどくならないか? そして矢野の東京での高校生活で唯一心を許した同級生がどういうわけか七美と同じ出版社に勤めていて、親友になっている。映画では省略されたけど、この親友は七美の写真を矢野から見せてもらっていて、それで七美と気がついて話しかけたらしい。 それも強引だなあ。 でその親友が矢野を偶然見かけるという展開。 全体的に後編は無理矢理に不幸に持っていく展開とあり得ないような偶然の連続で、正直だんだん乗れなかったのが本音。 後半は生田斗真を観ることだけが楽しみで、なんだかストーリーも上の空だった。 そうそう藤井貴規くんだが、後半は高校生活ではないので、出演場面がないのかと思っていたら、ラスト近くの友人の結婚式兼同窓会で登場。 ここでは比較的出てましたね。 いい役者だと思うので、今後の活躍に期待。 (このページのトップへ) ORANGING’79日時 2012年5月12日16:30〜 場所 ザ・グリソムギャング 監督 今関あきよし 製作 昭和54年(1979年) 普通は映画の内容、ストーリー紹介で300字ぐらい費やすのだが、この映画はそれが出来ないのだな。 25分、8mmの短編だ。 女子高生三留まゆみがとしまえんに行ったり、銀座並木座に映画を観に行ったり、手塚真(手塚治虫の息子)と道で出会って挨拶したりするシーンがつなげられる。 そして最後は江ノ島海岸から「アメリカに行ってきます!」とナップザックを背負って浮き輪をつけて海に飛び込む。そういうイメージ的なシーンの連続。 三留まゆみという女子高生のプロモーション的映画なのだな。 今回この映画をわざわざ観に行ったのは訳がある。 この映画、当時私は観ているのだ。 当時のぴあフィルムフェスティバル(当時はオフシアターフィルムフェスティバルという名前だった気もする)で入選し、東京、大阪、名古屋、福岡などで特集上映されたのだ。名古屋は1日だけの上映で、朝10時ぐらいから夜は11時ぐらいまで上映し、完走した。 (家に帰ったのが12時近くでえらく親に怒られた) そのときに観たのだ。 当時高校生だった私は大学に行ったら8mmで映画を作ろうと思っていた。だからこういうコンテストで入選する映画とはどんなものかと思って観に行ったのだ。 それまで劇場用映画とか、テレビドラマしか観ていなかった私としては「は〜自主映画ってこういうのもあるのか」とため息とともに驚きがあった。 ほかはさっぱり忘れていたが、ラストに「アメリカに行く」と行って海に飛び込んだのは覚えていた。 当時は「そんなアホな」と否定的な気分だったと思う。 それは今回も同様の感想を持ったが、同時に女子高生のイメージ作品としてはこういうのもありなのだな、と今は思う。 作品そのもので言えばそれほど好きな映画ではないのだが、33年経ってもその映画のタイトルははっきり覚えているのだから、やっぱりインパクトはあったのだろう。 その後、今関あきよしは自主映画出身者として「アイコ十六歳」で商業映画デビューを果たす。 8mm映画を撮ってぴあで入選し、映画監督デビューを果たす。これが10代の私が考えていた人生設計だった。 そして私の夢は破れ、やがて「ツルモク独身寮」で今関あきよしと再会し、頑張っている今関に対し、ちょっとだけかつての自分を思い出して懐かしかった。 映画の評価とは関係のない、極私的な思い出の多い映画なのだな、この「ORANGING'79」は。 (このページのトップへ) クレヨンしんちゃん
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