2012年10月

ツナグ
カリーナの林檎
チェルノブイリの森
アウトレイジ ビヨンド 新しい靴を買わなくちゃ 宇宙戦艦ヤマト2199
第三章 「果てしなき航海」
博徒百人 任侠道 男はつらいよ
寅次郎夕焼け小焼け
踊る大捜査線
THE FINAL 新たなる希望
アイアン・スカイ

ツナグ


日時 2012年10月30日18:30〜
場所 新宿ピカデリー・スクリーン7
監督 平川雄一朗

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高校生の歩美(松坂桃李)の祖母・アイ子(樹木希林)はツナグだった。ツナグとは死んだ人を1回だけ生きている人に会わせる仲介役をする役目だった。
アイ子は歩美にその気があるならツナグを継がせようと思い歩美にツナグの経験をさせようと、まずは依頼者との窓口役をさせる。
死んだ人に会いたい人はどこかから聞きつけて歩美の元にやってくる。
畠田(遠藤憲一)は亡き母(八千草薫)に会いたがり、サラリーマンの土谷(佐藤隆太)は失踪した婚約者に会いたがった。
彼らは会いたい人に会うことが出来、悲しみを持ちながらも満足していく。
しかしその間には自分の高校の同級生・嵐(橋本愛)の依頼もあった。同じ演劇部で交通事故で亡くなった御園(大野いと)に会いたいというものだった。
実は嵐は御園に対して後ろめたさがあった。


「死んだ人と生きている人を1回だけ会わせることをするのがツナグ。その様々な人々のドラマ」と聞けば、なんだか「感動しろ、泣け」って命令されるような映画で、普通だったら観ない。
でも今回は松坂桃李くんの主演作だから「僕せか」の4人の役者活動を観ていこうと思って先日の「新しい靴をかわなきゃ」と同じ理由で観た。

遠藤憲一と佐藤隆太のエピソードはまあ想像通りの泣かせるため。遠藤憲一の母の八千草薫はさすがの貫禄だが。
もう10年ぐらいしたら吉永小百合もああいう役をやるようになるのだろうか?

肝心なのは橋本愛の女子高生コンビのエピソードだ。
嵐と御園とは仲良しで登下校も一緒の中。ある日、通学路の家の玄関の水道のホースから水がでっぱなしになってるのを見つけ「もっと寒くなっちゃったら道が凍って危ないね」という。
高校の演劇部では今度「桜の園」を上演することになり、嵐は当然自分が主役だと思っている。
ところが御園も立候補。オーディションの末、御園が演じることに。
しかも御園が部室で他の部員と「あたしにはかなわないよ」と言っているのを聞いてしまう。
嵐は嫉妬のあまり例の家の水を出しっぱなしにして帰る。
ところが翌日、御園は交通事故で死んでしまう。
そして嵐は演劇部員たちから「御園は『あたしにかなわない』って言うはずない。『嵐にはかなわないよ』の聞き違いだよ」という。
では自分が御園に抱いた敵意は全くの勘違いか。

ツナグの噂を聞きつけた嵐は御園がツナグを通じて誰かに会って「水は嵐が出したに違いない」と言われるのを恐れ、自分からツナグに会う。
しかし嵐にあった御園はいつものように笑顔で接してくれた。ほっとする嵐。御園は別れ際に「歩美くんに私の伝言を聞いて」という。
歩美に言うと「『道は凍ってなかったよ』と言う伝言」だという。

このせりふには参った。
御園がわざわざ路面の凍結を口にすると言うことは道は凍っていようがいまいが、嵐の敵意には気づいていたということだ。
さらに「凍ってなかった」とは。
「罪の意識は感じないでね。許してるから」と解釈するべきか。
「あなたが道を凍らせたことは知っている。言わないでおいてあげる」と最大の皮肉か。

さらに続く御園から歩美が伝言を受け取るシーンになる。
御園は歩美のことが好きで、実は嵐も歩美のことが好きだった。御園は歩美の着ているコートのブランドのことを嵐に話す。それは歩美には直接伝えられなかったが、嵐が歩美と会ったときに嵐は御園のせりふのままを歩美に伝える。
御園は死んでからやっと歩美にコートの話をする。
歩美は「嵐と同じこと言うんだね。親友だからかな?」と何気なく言ったが、御園はすべてを悟る。
「そうか嵐も歩美が好きだったんだ」
その時に御園は伝言を頼む。
果たしてこれはどういう感情か。
親友と歩美がうまく言ってほしいと思ったのか。
それとも歩美まで奪おうとする嵐に対する復讐心か。
そして出てきたせりふが「道は凍ってなかったよ」

うーん、どっちにもとれる。
ここまで裏の意味を感じさせるせりふは聞いたことがないい。
この台詞を聞くことが出来ただけでこの映画は観る価値があった。
侮っちゃいかんなあ。



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カリーナの林檎 チェルノブイリの森


(2004年 35mmヴァージョン)
原題 「少女カリーナに捧ぐ」
日時 2012年10月27日14:30〜
場所 ザ・グリソムギャング
監督 今関あきよし
製作 平成16年(2004年)

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カリーナはベラルーシの少女。夏休みの間は田舎のおばあちゃんのところで暮らしてきた。
やがて9月も近くなり母方のおじさんの家に引き取られていく。でもおばさんはカリーナのことをいやがっているみたい。
カリーナのお母さんは病気で入院中。お父さんはモスクワに出稼ぎに行っている。
やがておばあちゃんも病気で倒れた。カリーナはまた家族で暮らしたいと思っている。
お母さんになぜ出来ないかと訪ねるとお母さんは答えた。
「ベラルーシの隣のウクライナのチェルノブイリという街に悪魔の住む城があって毒をまき散らしてるの。だからそこに近いおばあちゃんの家には住めないの」
でもカリーナは信じない。
「でも果物だって美味しいし、水も空もきれいだよ」

童話のような映画だなあ、というのが第一印象。
ベラルーシの大自然の風景の中のおばあちゃんと少女。
それだけで絵になる。
その幸せの風景の中に放射能の悲劇が・・・

カリーナもやがては入院。しかしおばあちゃんの病気を聞きつけて一人でバスに乗って田舎に帰る。
連れ戻されるものの、母の危篤を受け「私が悪魔の城に行って毒をまき散らさないようお願いしてくる」と行って一人でチェルノブイリに向かう。
そして雪の森の中、がんばらなきゃ、がんばらなきゃとつぶやきながら倒れていく。

そういう童話のような悲劇だ。
原発事故の恐怖を声高に叫ぶわけでもなく、じんわりと心に響く。

今関監督のトークイベント付きで鑑賞したが、製作の流れも伺った。
まず企画の発端は90年代の終わりに大林宣彦監督とロシアを巡るドキュメンタリー番組を作った時、ベラルーシなどの田舎の風景のなかで映画を撮りたいと思ったことが発端だった。
その後、ラジオでチェルノブイリの話題をしていて、チェルノブイリを絡めてみれば映画になるのではないかと思っていろいろリサーチしていって脚本を完成させたそうだ。
そして自主映画状態でスタッフ10人だがそのうち二人はドライバー、一人は通訳という状態で事実上5、6人のスタッフで、それこそ8mm映画を撮っていた頃と変わらない気分で作っていたそうな。

完成し、ビデオで編集を終えてビデオ版の試写が終わった段階で、例の事件で逮捕、実刑、服役。
出所後、事件の被害者や自分の娘が二十歳を越えるのを待って、チェルノブイリ事故25周年の時公開しようと準備をし、クレジットは大幅に変更され(やはり今関監督に関わったことを隠したい人もいるらしい。やむを得まい)2011年のデジタル版での劇場公開になったそうだ。

そして311があって今や反原発映画の一つになっているようだ。
何とも運命的な映画である。



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アウトレイジ ビヨンド


日時 2012年10月21日18:55〜
場所 ユナイテッドシネマとしまえん・スクリーン9
監督 北野武

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山王会は今や関東一の組織になり、ヤクザの世界だけでなく、政治の世界にも進出していた。
大友の子分だった石原(加瀬亮)も山王会の加藤(三浦友和)の片腕となって幅を利かせていた。
そんな今の組の状況を昔からの幹部の富田(中尾彬)白山(名高達男)や五味(光石研)は面白くない。
富田は関西の花菱会の布施(神山繁)西野(西田敏行)に近づき、加藤を倒そうとする。
さらに服役中の大友(ビートたけし)が出所すると4課の刑事・片岡(小日向文世)が大友に近づき、彼らの抗争を激化させようとする。

北野映画にしては珍しくヒットした「アウトレイジ」の続編。そりゃそうだよなあ。「監督ばんざい」とか「アキレスと亀」とかヒットするとは思えないもん。
「その男、凶暴につき」で始まった北野映画も東映ヤクザ映画とはひと味違ったバイオレンス映画だからヒットしたんだ。だって面白かったから。
でヒットを狙ってなのか周りに言われたのか、バイオレンス映画の「アウトレイジ」がヒット。
周りに頼まれたのか北野映画初の続編。
そりゃ映画は当たらないより当たる方がいいに決まっている。

しかも私は今回の方が好きだ。
前作は殺し方に様々なバリエーションがあって(それこそ「大喜利」とまで言われた)そこが面白いと思った人もいたのだろうが、私には痛々しさが気になってどこか好きになれなかった。(特に歯医者で口中をドリルでぐりぐりされるシーンは痛そうだったなあ。思い出しただけでもぞっとする)

それに比べて今回はそういった直接的な暴力シーンは控えめ。
ややロングの画面で車の中に拳銃を撃つだけとか暴力描写は控えめだ。私はこの方が好き。
でも一番憎たらしかった石原(加瀬亮)のところだけはバッティングセンターのボールで打撲させるというのは見物。しかも実際に加瀬亮に当たっている。どうやって撮影したんだろう?柔らかいボールを当てたりしていたんだろうか?

そしてラスト。
仲間のヤクザが殺されて大友がその葬儀に裏口からやってくる。
片岡が「先輩なら道具ぐらい持ってくると思ってましたよ。どうぞ」と渡す。
その渡された拳銃で大友が・・・
というところでエンド。
この名作「仁義なき戦い」へのオマージュともいえるラストシーンにはうなった。

あと神山繁がまだまだ元気な姿を見せてくれたのはうれしい。まだまだ映画で活躍してもらいたい。
そしてこの映画に出てくるヤクザはみんな「ボケ!」などと大声で相手を罵倒し脅かした後で、その後のシーンで「すいません!」と自分より偉い相手には謝っている。
ヤクザの世界も大変だ。
俺にはとてもつとまりそうにない。



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新しい靴を買わなくちゃ


日時 2012年10月21日16:40〜
場所 ユナイテッドシネマとしまえん・スクリーン1
監督 北川悦吏子

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カメラマンの八神セン(向井理)は妹のスズメ(桐谷美玲)に無理矢理にパリに連れてこさせられたが、いきなり置いてきぼりに。
その上、勅使河原アオイ(中山美穂)という女性が運悪くセンのパスポートを破いてしまう。
パリ在住のアオイの助言に従い、日本大使館に行きとりあえずの手続きを行ったセン。でも泊まるホテルは妹に任せていたのでどこに泊まるか分からない。
フリーペーパーの編集者をしていてパリに詳しいアオイの助けで、何とか予約したホテルにたどり着くセン。
ついでに食事でもどうかとセンはアオイを誘う。
一方スズメは絵の修行のためにパリに行った恋人のカンゴ(綾野剛)に再会していた。

向井理主演というだけで観た。
岩井俊二がプロデュースだし、面白くもない恋愛ドラマだと思っていたので、期待値はマイナス。
そんな気分で観始めたのだが、案外面白かった。

まるでドキュメンタリー映画のようなカットやアングルやつなぎで進行する。
特に逆光をものともしない。
というか途中からわざと逆光にしているのだろうと思った
。普通、写真でも映画でも逆光は避ける。
でもあえてやることで(この場合は)臨場感が生まれてくる。
カットつなぎも汚い。普通ならしないカットつなぎをする。
例えば最初の方で、日本大使館を出た向井を中山美穂雅兄帯電話で誘導していくシーンがある。
向井のカットがあって時間軸なら1分ぐらい経過したカットの場合、普通は中山美穂のカットなり風景なり何らかのインサートカットを入れる。
それを入れずに向井のカット、向井のカットでつなぐ。
カットはつながっていない。でもこういうのもありなのだなと改めて思った。

あと面白かったのはそれぞれの過去をピアノを前にして語るシーン。
「こんな感じの気分」と効果音のようにピアノを少し叩く。それをお互い続けるシーンは面白かった。

で、スズメの方だが兎に角わがまま女。
もともと兄を連れてきたのは「兄がそばにいると物事うまくいく」というスズメが生まれてきたときからのジンクスで連れてこられた。
でスズメは学生かと思ったらどうやら就職しているらしい。
で「さびしいから結婚して」とか計画性もなくほざく。
結局二人は別れることになるのだろうなあ。

センとアオイはいい雰囲気になるのだが、お互い東京、パリで仕事も生活もある身だからと、この3日間の恋で終わる。

ラスト、アオイの元に何かがやってくる。
センがアオイを迎えに来たかと思えばさにあらず。
出会った時にアオイが靴のかかとを壊してしまったので、その代わりの靴だった。
そして「夢だった個展を開くことにした」というメモ。
スズメのようになにも考えずにただ好きだ好きだで押し切るのではなく、自分の生活の上に立つ「大人の恋愛」を見せたもらった気がした。
これが「tokyo tower」だとパリまで追っかけちゃったもんね。

でも苦言をいえばアロンアルファで靴のかかとを張り付けてたけど、そこまでアロンアルファって強いかあ?
あとやっぱり逆光はよくないですよ、逆光が美しいと思っている岩井俊二のセンスがいやだ。
カメラマンと雑誌編集者、なんかこう20年前のトレンディドラマと変わってないなあ。



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宇宙戦艦ヤマト2199 第三章 「果てしなき航海」


日時 2012年10月21日13:20〜
場所 新宿ピカデリー・スクリーン5
監督 出渕裕

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ガミラス帝国の攻撃を受け、滅亡寸前の地球よりイスカンダルへ向けて出発したヤマト。
今や冥王星を通過し、太陽系を抜け外宇宙へと向かっていた。

乗組員たちの内希望するものと最後の地球との交信を許可する沖田艦長。(第7話)
またガミラスではヤマトを叩こうとしてデスラー総統自らが立案した作戦が実施される。(第8話)
ガミラスのロボット兵を捕獲したヤマトは真田やアナライザーによって解析が行われていた。(第9話)
またヤマトはワープした先が次元の境目の異空間だった。同じようにこの異空間に落ちたガミラス艦があった。
そのガミラス艦より「ヤマトの波動砲で空間に裂け目を作ってほしい。そうすればエネルギーを使い果たした貴艦をガミラス艦が曳航して通常の空間に連れていこう」と提案を受けるが。(第10話)

来年テレビ放送予定の「宇宙戦艦ヤマト2199」上映シリーズ第3弾。
正直、飽きてきた。
やっぱり映画サイズで2時間半ぐらいで一気に見せてくれた方がいいかな。

ストーリーの作り方がテレビの30分シリーズの流れだから、どうも1本の映画としてみるとイマイチだ(当たり前か)
それでも場内は「ヤマト」ファンでいっぱいだったけど。

第7話はオリジナル版より出演している徳川機関長とか南部とか島大介とかのエピソードは分かったけど、新キャラクターは前に上映された分をすっかり忘れてるから、話がよく分からなかった。それは私の記憶力がないだけである。

第8話はデスラー総統による直接の作戦。
何でも食べて増殖する物質をヤマトに向かわせ、その先には恒星があるという「前門の虎、後門の狼」状態に置かれるヤマト。
艦長の操艦でその物質を恒星に向かわせるという手段で回避。
なんだかこの物質については「バルンガ」を思わせた。

第9話。正直ロボットが心を持つか?というテーマはもう飽きた。SFとしてはもういいです、このテーマ。

第10話。正々堂々と戦おうとするガミラス側の艦長に対し、卑怯な手を使ってもヤマトを倒そうとするガミラス。
卑怯な奴は滅びるという至極教訓的なラスト。
それにしても使者としてガミラスのパイロットがヤマトに残されたが、彼女、どうなるんだろう?
レギュラーになるのか?それとも次回すぐ死んじゃうのかな?

飽きてきた部分もあるけど、とりあえず最後までは観ようか。まだ半分も行ってないけど。



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博徒百人 任侠道


日時 2012年10月14日18:45〜
場所 浅草新劇場
監督 野村孝
製作 昭和44年(1969年)

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舞台は四国高松。本州と四国の玄関口だ。
この土地で石切場からの切り出し作業を本業とする石津組で、男気のある梶岡(高橋英樹)が代貸しになり、石津親分(水島道太郎)のもと、先輩の代貸し・小池(藤竜也)と共に組を盛り上げていく立場になった。
そんな梶岡に芸者・小新(南田洋子)は思いを寄せていた。
そんな頃、石津の縄張りを狙う笹井(安部徹)三木本(河野弘)によって賭博の席で喧嘩を売られて梶岡は買ってしまう。その場は同じ四国の親分槇山(宍戸錠)の仲裁でことは大きくならなかったが、梶岡は1年間の所払いに。
しかし笹井たちの嫌がらせは終わることがなく、四国の仲間内の総会の席で恥をかかされた石津はついに刃傷沙汰を起こしてしまう。

昭和44年の製作だから、日活ニューアクションを作っていたけど、東映の影響も受けた任侠もののやくざ映画を
製作していた頃。これもその1本。
安部徹とか嵐寛寿郎とか東映とキャストも似ているから、区別がつきにくい。主演が高橋英樹で藤竜也も出てるからかろうじて日活作品と解る。
(宍戸錠は東映でも活躍するから)

で、お話は所払いになっていた梶岡が金沢で親分の死の連絡を受けて、相手に殴り込もうとするが地元のやくざの葉山良二に止められる。
とにかく我慢我慢の一手だ。
安部徹は助っ人に四日市のやくざもの中丸忠雄を雇うけど、安部徹の余りにあくどいやり口に嫌気がさして中丸忠雄は、自分の指を詰めて仕事を降りる。しかし実は南田洋子の前の男がこの中丸忠雄で、という展開。

そして石津に協力的な実力者のアラカンも安部徹は殺してしまい、ついに高橋英樹は総会の席に殴り込み、宍戸錠の助け船もあってついに安部徹をやっつけるというラスト。

しかし東映もそうだけど、よくもまあ似たような話ばかりの映画を作る。
まあこの手の映画はゲスト出演者とか役者の見せ場を楽しむのが楽しみ方だと思うけど、そういう意味では今回でいい役なのは中丸忠雄と宍戸錠。
この二人が見せ場をさらってますね。

今回、浅草新劇場は学生時代以来に来た。
10月21日に閉館だし、なにより「急げ!若者」「男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け」とこの映画の3本立てだったから。他の2本は知ってる映画だけど、この映画はまったく予備知識なしで観た。
こういう3本立てだと予備知識なしで映画を観る楽しみがある。そういう楽しみが味わえる3本立て映画館だったが、場所がちょっと遠かったりして全く通わなかった。
学生時代以来だと思うから約30年ぶりだ。
浅草のこういう映画館は一種カオスな無法地帯なところがあり、実はあまり好きではなかった。
でも昔の映画館にタイムトリップした気分になれ、時間があればもっと来たかった気もする。
閉館が少しだけ惜しまれる。
しかし始まったものはいつかは終わる。
時代の流れとして致し方あるまい。



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男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け


日時 2012年10月14日16:50〜
場所 浅草新劇場
監督 山田洋次
製作 昭和51年(1976年)

(詳しくはムービーウォーカー・データベースで)


柴又へ帰ってきた寅次郎。とらやの面々と満男の小学校の入学式で、満男が寅のおいということで笑われた話をきっかけに喧嘩して飛び出してしまう。
上野で飲んでいた寅だったが、身なりのさえない老人(宇野重吉)と知り合いになり、とらやへ連れてきて泊めてやる。
この老人、態度が横柄でとらやのみんなは怒り心頭。
寅が老人に諭すと「えっ、ここ旅館じゃなかったのか。悪いことしたなあ」と言って、筆で画用紙に絵を買いた。
それを神田の古本屋に持っていけば金を都合してくれるという。疑いながらも行ってみた寅次郎だったが、なんとその絵は7万円で売れてしまう。
その老人、日本画の大家、池の内青観だったのだ!


「男はつらいよ」シリーズをちゃんと観るのは久しぶりだ。このHPには今まで1本も出てこない。
たぶんシリーズ最終作を観て以来じゃないだろうか?

私は「男はつらいよ」シリーズを全部は観ていない。
「寅次郎と殿様」ぐらいから観てるし、その前を少し後追いで観てるから半分は観てると思う。
その中で一番好きなのはこの「寅次郎 夕焼け小焼け」なのだ。

タイトルは寅が旅で赤穂に行くのだが、この地が「赤とんぼ」の歌の発祥の地ということだ。

正直、この映画の良さは言葉では言いにくいのだな。
渥美清、宇野重吉の両名優の名演技。
宇野重吉の映画の中ではこの映画と「日本列島」が特に好きだ。
最後に柴又を訪ねてきて寅も不在を知って「そうか。寅次郎君は旅か」とつぶやく。
何気ないせりふだが、妙に味わいがある。

赤穂に帰った宇野重吉はある老婦人(岡田嘉子)を訪ねる。
「僕は後悔してるんです」
「もう一つの道をお進みになったら後悔しなかった?」
おそらく二人は若い頃恋仲だったのだ。
しかし絵の才能を生かしたい青観はきっとお金の心配のない家に結婚したんだろうな。
結果、日本画に対する才能は思う存分発揮出来た。
しかし、愛する人と結婚出来なかった後悔は残る。
でも彼女と結婚していたら、絵の才能は発揮できたろうか?彼女との生活に追われ、絵では大成出来なかったかも知れない。
数少ない言葉のやりとりだけで二人の人生を感じさせてしまう、すごさ。

また芸者ぼたんの登場シーン。
市長の話に退屈した寅のお膳からお芋が転がっていく。
それを見てみんなが笑うのをこらえる展開。
見事だなあ。

そしてラスト。
再びぼたんを訪ねる寅。
「見て!青観先生の絵や!」
思わず涙がこぼれる。
これが映画の表現なのだなあ。

青観がとらやを去った後、青観が描いた絵を思わず破ってしまう社長と寅。この貧乏人の浅ましさ。
でもそれが人間だ。

この映画には語りたくなる名シーンが満載だ。
特に役者がいい。
一人一人がいいとしか言いようがない。

「寅さん」はこの映画だけで僕には十分だ。
面白さのすべてが詰まった珠玉の名作。



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踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望


日時 2012年10月12日19:05〜
場所 新宿ピカデリー・スクリーン2
監督 本広克行

(詳しくはムービーウォーカー・データベースで)


湾岸署の青島係長(織田裕二)や恩田すみれ(深津絵理)は今日も商店街に張り込み、実家に帰ってきた犯人を逮捕した。
そんな頃、湾岸署管内で男が拳銃を持った男に拉致される事件が発生。その後、拉致されたと思われる男が拳銃で撃たれて死体となって発見された。
湾岸署に捜査本部が設置された。
実は男を殺した拳銃は6年前の誘拐事件で使われた拳銃だった。証拠品として保管されていたもので、持ち出したのは現職警察官であることが解った。事件をもみ消そうとする警察庁幹部。
湾岸署には鳥飼(小栗旬)が管理官として着任。
やがて第2の殺人事件が。
それは2週間前に証拠不十分で無罪となった6年前の誘拐事件の主犯とされた男だった。


「踊る大捜査線」シリーズもいよいよファイナル。
9月1週の公開だが、1ヶ月以上も観なかった。どうせ2ヶ月はやるし、今別のことで忙しいし、終わりそうな映画を優先して見に行かなきゃいけないし。

正直、映画シリーズ4本の中では一番面白かった。
十分楽しんだ。
ファイナルらしく、当初のテレビシリーズのリメイク的シーンあり。「戒名」と称する捜査本部の入り口の紙を書くシーン、思えばこのシーンが最初の笑いどころだった気がする。

そして6年前の誘拐事件。この事件で警察上層部が規定に従い48時間経ったために犯人との交渉を打ち切ったために子供が殺されたという設定。
それでその事件に関わっていた警察官が犯人や警察上層部に対し、復讐をするというもの。
だから実行犯の一人はすぐに解る。
しかしなかなか顔を映さない。
これがラストで香取慎吾が演じていたという演出。
まあ香取はそれなりのスターだけど、そこまで演出しなくても。

それより共犯者。
今まで映画版になってからのレギュラーだった小泉孝太郎がその一人。
「えっ?レギュラーが犯人ってあり?」と思っていたら、「3」から登場の小栗旬も犯人!
「うぉぉぉぉ、それってあり?」と驚きの展開。
まあ「踊る」のテレビシリーズの第1話が刑事が犯人を逮捕しないで、自首してくる話でしたからねえ。
これも「踊る」ならではか。

で、最後には真下の子供が誘拐される(交渉を打ち切るという上層部の指示にそのまま従ったから、「同じ穴のムジナ」ということで)んだけど、青島がなんとかその子供を見つける。あわや、というところで、退職を決意して実家に帰ろうとしていた恩田すみれが夜行バスを乗っ取ってきて、犯人が隠れていた倉庫に突っ込む、という展開。
そのバスめちゃくちゃに成っちゃうんだよ。
それはちょっとやりすぎだし、その後のエンディングでも何にも問題になれないのはないのではないか?

まあそうは言っても十分楽しかった。
そうそう水野美紀が久しぶりの登場だったが、電話で応対するだけで、他の出演者との共演はなし。
なんか外されなきゃいけない理由があったのだろうか?

まだ先日放送のあったテレビスペシャルは観ていない。
しばらくは楽しみにとっておこう。



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アイアン・スカイ


日時 2012年10月5日21:20〜
場所 新宿武蔵野館1
監督 ティモ・ヴオレンソラ

(詳しくはムービーウォーカー・データベースで)


2018年、アメリカは再び人類を月に送った。
しかし船長は月面で何者かに殺される。もう一人の黒人の宇宙飛行士ジェームズ・ワシントンは月にいた人間たちに捕らえられてしまう。
彼らはなんと1945年にナチスドイツから逃げてきたナチスの残党だった。彼らは月に基地をつくり、いつの日か地球に帰る日を計画している。
月にはヒトラーに代わった新しい総統がいる。野心家の若き将校クラウスは総統の地位を狙っていた。
彼女の恋人レテーナ・リヒターの父は科学者で、地球侵略の巨大戦艦「神々の黄昏」号建造に忙しい。
クラウスはワシントンが持っていたiPadを見て「これさえあれば「神々の黄昏」号は完成する」と地球に先遣隊として向かうことを決意。
ワシントンを伴って地球に向かう。そこにはレテーナもついてきてしまった。

ちまたで話題のSFコメディ(?)映画。
「ナチが月の裏側に基地を作っていた」というアイデアが面白い。
「月の割には重力がない」「月で生まれた人間が地球に来たら重力に負けないか」などという細かいことは言ってはいけない。

地球についたクラウスとレテーナは偶然出会った大統領の宣伝担当に気に入られて大統領の選挙戦に参加することに。正直、このあたりの展開はちょっと偶然がすぎるかなとも思った。
それよりこの大統領の宣伝担当が自分のスタッフを怒鳴りつけるシーン。
手をプルプル震わせながらめがねを外すカットが始まり、「あれどっかで観たカットだな」と思っていたら、youtubeで有名なヒトラーが部下を怒鳴りつけるシーンのパロディだった。
このヒトラーの動画にぜんぜん違う日本語字幕をつけて遊ぶネタがあるのだが、それって日本だけの話かと思っていたらそうじゃないんですね。海外でもやっている奴いるんだ。

後半各国が実は兵器としての宇宙船を持っていたという展開は皮肉が効いている。「武器を積んでいないのは?」と問われてフィンランドだけが手を挙げるのは、この映画がフィンランドの映画だからですね。ちょっと無知すぎました。

でも正直それほど面白くなかったんだが、それは映画のせいじゃなく、元ネタになっているものを私が知らないせいもあるのだろう。
女性大統領が登場するのだが、これが大統領戦で一時期候補にあがったアラスカ州知事をモデルにしてるそうだ。
そういえば「トンチンカンな発言をするやつが大統領候補にいる」とすこし話題になったが、すぐに消えた奴がいましたが、その方だったんですね。

あと「スタートレック」とか「スターウォーズ」ネタもあるみたい。よくわからなかったけど。

こういう風刺の効いた喜劇はいいですね。
日本でも作ってくれないかなあ。



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