2013年11月

マリア狂騒曲 すべては君に逢えたから
もらとりあむタマ子 ゆるせない、逢いたい 転校生(監督:金井純一) 標的の村
陸軍 多羅尾伴内 
鬼面村の惨劇
42 世界を変えた男 女囚さそり けもの部屋
なにもこわいことはない 裏窓の誘惑
 人妻の匂い立つ色香
多羅尾伴内 ウルトラマン 怪獣大決戦
タイガーマスク ほしがりすぎる義母
理性と母性
劇場版 BAD BOYS J
最後に守るもの
フーテンのHOMOさん
夢人間
若者狩り I am ICHIHASHI
逮捕されるまで
ケンとメリー 
雨あがりの夜空に
風俗行ったら
人生変わったwww
自分の事ばかりで
情けなくなるよ
エアポート2001 刺青一代 人類資金
潔く柔く わいせつ性学園
おじさまと私
人妻娼婦
もっと恥ずかしめて
遊星よりの物体X 

マリア狂騒曲


日時 2013年11月30日21:10〜
場所 ポレポレ東中野
監督 井土紀州

(詳しくはムービーウォーカー・データベースで)


「ずっと一緒にいよう」そう誓いあった恋人の双葉が耕平(吉岡睦雄)の元を去って一年。ある日、耕平の元に双葉の幽霊が現れた。彼女は「助けて」と言った。
心配になった耕平はかつて彼女が出ていった時に荷物を送った先に行ってみる。
そこで双葉と一緒に暮らしている筈の遠藤という男に会う。彼の話では双葉は今は自分を磨くための世界旅行に出ているという。遠藤が去った後、遠藤の隣室の女性(水井真希)が「その双葉さんは殺されたと思う。私は苦しむ声を聞いた」という。その女性の名はマリア。
「復讐するの?なら一緒に協力してあげる」
二人の奇妙な関係と彼らの復讐が始まった!


青春Hシリーズ37作目の井土紀州監督作品。
正直面白かった。青春Hシリーズは男と女のぐちゃぐちゃした話が多いが、これはアクション映画的な復讐ものだ。
しかし単なる復讐ものではなく、ここにマリアという女性が絡んでくる。
マリアも本名は最初は解らない。
妙に耕平の復讐に積極的。
隣の部屋を張り込む二人だが、耕平が仕事に出ている間に遠藤が夜逃げしたと教えてくれる。
おしぼり屋の車だったからとその会社に行ってみて、「あの男だ」という。
遠藤の居場所を聞き出そうとする耕平だが、その前にアイマスクをしたマリアが現れ、その男、浅野に切りかかる。
このマリア、一体なにをしようとするのか解らない。
さらに浅野が遠藤の荷物を運び出したというのは本当かと思えてくる。

遠藤や浅野が耕平を襲ってきたからマリアの言うことは本当だったと解るけど、その後も「自分の両親を殺した男を殺して一緒に復讐してほしい」と持ちかける。
さらに耕平が家に帰ると「お前が双葉を殺したのか?」と襲われる。
話は二転三転し、いい意味で迷走する。

またロケ地も遠藤たちが耕平を殺そうと連れ込むのが山の中にある廃墟になったロープウエイ。青春Hだと予算の関係からロケ地の自由度がないのか、その辺で撮ってる感じがあるのだが、あの場所は実に雰囲気があってよかった。

あと耕平が武器にするのが「特製辛子入り液体」を水鉄砲に入れて相手の目つぶしをするってのがアイデアが効いてていいですね。

耕平も実は双葉にとっては「あなただけ」ではなく、大勢の男の一人でしかなかったという事実。
でも双葉のために出来るだけの事をして、見つかった遺体は火葬にして弔ってやる耕平。

結局マリアと耕平がつきあうようになるだろうというラストがややハッピーエンドすぎるが、面白かった。
いい意味で先の見えない展開で秀作だと思う。

脚本の川崎龍太さんにはこれからも期待したい。
名前は良く記憶しておこうと思う。



(このページのトップへ)




すべては君に逢えたから


日時 2013年11月30日17:45〜
場所 新宿ピカデリー・スクリーン7
監督 本木克英

(詳しくはムービーウォーカー・データベースで)


12月。クリスマスも近い時期だ。
東北新幹線の運転手の宮崎(時任三郎)はある事情で退職する。
HPのデザイン会社社長黒山(玉木宏)は忙しい日々を送っている。そんな時、行きつけのレストランで玲子(高梨臨)と出会う。玲子は児童劇団で女優をしているが、自分の女優としての夢はあきらめ、今度のクリスマスの公演で田舎の高知に帰ろうとしていた。
玲子の最後の公演は親のいない子供たちの養護施設。そこには母親が来るのを待つ茜(甲斐恵美利)がいた。
東京駅近くのガード下でケーキ店を営む琴子(倍賞千恵子)がいた。彼女は49年前のクリスマスに大好きな人と駆け落ちしようとしたが彼は来なかったという過去を持っている。琴子の店でアルバイトをする大学生の菜摘(本田翼)は大好きな三上先輩に告白する勇気がない。
ウエディングドレスのデザインをしている雪奈(木村文乃)は建設会社の仕事で仙台に行っている恋人・拓実(東出昌大)がいたが、なかなかすれ違いで逢えない日々が続いている。


毎年のように11月後半になるとクリスマス向けのイルミネーション満開のラブストーリー映画が公開される。
普段はそういうのは観ない私だが、今回は観た。
東出昌大くんが出ているから。
「桐島、部活やめるってよ」でデビューした彼だが、その後の公開された映画としてはたぶんこれが初。
東出くんを観たければ今のNHKの朝ドラマ「ごちそうさん」を観れば良いのだが、やっぱり映画は観たい。
来年以降も公開作が控えている。

東出は恋人と離れ仙台で復興の為の建設現場で働く青年。でも現場の作業員ではなく、大手ゼネコンの人間。年の割には重要なポジションを任されてるようだ。
で、恋人の方はウエディングドレスをデザインしている。完全に「ゼクシィ」にあこがれているような女の子だ。
朝からモーニングコールだ、LINEだと忙しい。
彼の事が好きなのはよくわかるけど、「レスがこない」と逆ギレされちゃあ、男としては面倒くさい。
ああいう女は「重たい」とか言って嫌われるタイプだな。
実際、東出の方も「めんどくさい」といか言われるし。
まあそうは言っても最後はめでたしで、「最終で仙台に帰る」とか言ってて彼女を強引に新幹線に乗せてしまう。
「あたし明日も仕事だけど」「明日の始発で帰ればいいじゃん」ってロマンティックだけど、現実では金がかかって耐えられんだろうなあ。

あと玉木宏もHPデザイン会社の社長とかかつてのトレンディドラマの再来のような設定。
時任三郎の余命数ヶ月というのも「病気で死ぬ話はやめましょう」としか言いようがないし、養護施設の子供も素直すぎ。
倍賞千恵子の元に最後に小林稔侍が訪ねて来るのは予告で観て知ってたが、49年前に来なかった彼が来るのかと思ったらそこまでベタじゃなかった。

クリスマス気分を味わう恋愛映画としては十分だし、それ以上でもそれ以下でもない映画だった。



(このページのトップへ)




もらとりあむタマ子


日時 2013年11月30日13:40〜
場所 新宿武蔵野館1
監督 山下敦弘

(詳しくはムービーウォーカー・データベースで)


タマ子(前田敦子)は大学を卒業したが、就職したわけではなく、家でごろごろするばかり。起きて朝ご飯を食べてマンガ読んで、コンビニ行ってまたゲームして一日が終わり。
実家はスポーツ用品店を営んでおり、両親は離婚、今家にいるのは父親と自分だけ。母親とはたまに電話している。
秋が終わり冬になり春が来て夏になる。
その間に父親は親戚の紹介でアクセサリー教室を営む女性と逢う。
二人は結婚するのだろうか?


山下敦弘監督が「苦役列車」に引き続き前田敦子の映画を撮ったことは知っていた。「苦役列車」とこの映画の間にもPVも撮ったんじゃなかったけ?前田敦子(及びそのスタッフ)には山下監督はよほど気に入られているらしい。
特に観るつもりはなかったが、いまおかしんじ監督がブログで誉めていたし、前夜「ゆるせない、逢いたい」を観た時にポスターを観て、特に他に用事もなかったので、観てみた。
脚本は向井康介。

ストーリーとか事件がないなあ。
タマ子の日常描写が淡々と行われる。起きる、トイレに行く、食べる、マンガ読む、ゲームする、の繰り返し。
父親も「お前いつ就職するんだ?」と言われると反発し、「少なくとも!今じゃない!」
そんな時、店にやってきた中学生と知り合う。特にイケメンでもないが、一応彼女もいて一緒に登下校している。
その子が写真館の息子なので、その子に自分の写真を撮らせる。「タマ子も就職する気になったか」と思いきや、実は芸能界デビューを狙っていて、親や周りにばれて恥ずかしくなったのかやめてしまう。

そんな時、父親が親戚の紹介で駅前でアクセサリー教室をする女性・曜子(富田靖子)と会う。タマ子も父親が再婚するのではないかと心中穏やかではなく、例の中学生に偵察にいかせ、自分もアクセサリー教室に行ってその人と会う。

こんな感じで日常が淡々と進む。
大きな事件があるわけでもないが、前田敦子のユーモラスな感じが観ていて飽きない。
正直、AKB時代の前田敦子はなんとも思わなかったが、女優としては「その辺にいそうな特別美人ではないけど、近所ではかわいい方に入る」といった存在で存在感を発揮する。
三枚目的な女優はいるが、どうにもコメディリリーフ的になりがちだが、前田敦子は過剰な演技をしなくても存在感を発揮している。

途中、同じように東京の大学に行って結局帰ってきた(たぶんそれほど仲良くなかった)同級生と道で再会、しかしラスト近くでその子が東京方面行きのホームで泣き顔で電車を待っているのを見かける。
深読みなのかも知れないが、今の若者の「暮らしにくさ、行きにくさ」を象徴しているように感じた。

アクセサリー教室でタマ子が曜子に自分の父の悪口を延々というシーンがいい。
「なんだかんだ言ってもあの親子は仲がいいんだなあ」と。
その後、夕食の席で父は「いまさら再婚はする気はない。お前も夏が終わったら就職したしないに関わらず出ていけ」という。
例の中学生も彼女とは結局自然消滅で別れたという。

それぞれが新しい生活に入っていく。
特に大きな事件はない。しかし1時間18分(エンディングを除けば1時間15分無い)という短さ、前田敦子のユーモラスな存在感もあって飽きずに観ることが出来た。



(このページのトップへ)




ゆるせない、逢いたい


日時 2013年11月29日20:30〜
場所 新宿武蔵野館2
監督 金井純一

(詳しくはムービーウォーカー・データベースで)


高校生のはつ美(吉倉あおい)は母親・恵子(朝加真由美)と二人暮らし。父は少し前に事故で死んだ。その前から準備していた新築の家に母親と引っ越してきた。
引っ越しの段ボールを処分してもらったことがきっかけで古紙回収をしている少年・野口隆太郎(柳楽優弥)と知り合う。
二人はメルアドを交換し、ゲームセンターに行ったり、陸上部のはつ美が喜ぶように公園のグラウンドを借り切ったりして過ごしていく。
ある晩遅くなったはつ美は母親にとがめられる。「携帯を見せてごらん」という母親に対し「ケータイは壊れたんだってば!」と言って携帯を壊してしまうはつ美。
はつ美と連絡の取れなくなった隆太郎は自分が嫌われたと思いこむ。
自分の家の前で待っていた隆太郎を見たはつ美は母親の制止も聞かず、隆太郎の元へ。しかしそこには隆太郎はいない。ふたりで何度も会った公園に向かうはつ美。
そこに隆太郎はいた。はつ美が好きでたまらない隆太郎はつい、はつ美を犯してしまう。


この人が出演していれば内容に関係なく取り合えず観る、という俳優さんが何人かいて、柳楽優弥はその一人。
今回の映画は単館レイト3週間のみの公開。

レイプされた女の子と男の話、でしかもタイトルが「ゆるせない、逢いたい」だからレイプされた女性がやっぱり男性を好きと思ってしまうというなんだかピンク映画かエロVシネにあるような話。

通り魔とかストーカー的なレイプ犯の話かと思っていたが、一応つきあってるような二人の話。
でもねえ、好きだったとはいえ意に添わないセックスを強要されても女性は男を好きでいるだろうか?
「いや、あり得る」と反論されればこちらもさらに反論出来るほど知識は持ち合わせていないから、何とも言えなくなるのだが。

しかも今回男の方を親に捨てられて施設で育って、今は保護司の監督の元で働いているという設定。
「施設で育った」という不幸を絵に描いたような設定がども気になる。(そしてたぶん中卒)
「彼は寂しかったのだから多少乱暴してしまうのは無理もない」と言ってるかのよう。

さらに今回疑問に思ったのははつ美の母親は弁護士をしている。離婚相談を受けていて胸にバッチがあったからたぶん弁護士だろう。
ところが隆太郎側の弁護士が対話を希望するとはねつける。これが普通の母親なら「そうなるだろうねえ」と納得出来るけど、一応弁護士である。
「弁護士である前に母親」と言われればそれまでだが、それにしても弁護士ならこういう事例の対話とかのことは知ってる筈だから、自分の職業的使命と個人としての感情で揺れてもよさそうだが、一切なし。
その辺がちょっと疑問。

で、ラスト対話に挑むはつ美と隆太郎。
「逢いたい気持ちも沸き上がってきた。好きだったから。でももう逢わない」
「偶然会ったらどうする?」
「お互いに無視しよう。そうすれば約束を守ってくれてると解るから」

この会話が二人の見せ場。柳楽も吉倉も十分応えていたと思う。
だから映画に緊迫感が生まれていてそれはとてもよかったが、「レイプした相手を好き」というのがどうしても納得できず、映画に乗れなかったのも事実。



(このページのトップへ)




転校生


日時 2013年11月29日20:30〜
場所 新宿武蔵野館2
監督 金井純一

(詳しくはムービーウォーカー・データベースで)


中学校のクラスで「川野容子」「川野容子」を担任が名前を読み上げている。クラスで行う「ロミオとジュリエット」のヒロインを誰が演じるかの投票だ。
圧倒的多数で川野容子に決まった。でも肝心の容子は「なんで多数決なんですか?私は照明とか演出がしたいです。こんなのいじめです」と反論する。容子は実はクラスからのみんなからはじかれている存在だった。
そんな時、転校生がやってくる。なんだか暗いその子は「私は誰とも仲良くならないと思います」と自己紹介。
容子はその子に親近感を持ち、学校帰りにその子に近づこうとするが、「ついてくんなよ!」と断られる。
容子は「英語の宿題、お姉ちゃんからもらったノートに全部答えが書いてあったから、お菓子食べながら一緒にやろう」と誘う。
転校生と容子はそれがきっかけで、毎日のように容子の家でお菓子を食べながら宿題をするようになるのだが。


柳楽優弥主演「ゆるせない、逢いたい」を観に行ったら、おまけで上映された同じ監督の20分の短編映画。
(最初、短編が上映されることをすっかり忘れていて入る映画館を間違えたかと思った)

お話の方は容子と転校生は仲良くなって、今度の土曜日に映画を観に行こう、と約束する。ところが前日になって「止める」と言い出す転校生。怒る容子。
しかしその日の終礼で、担任から「また転校することになった」と告げられる。

映画はほとんど二人の少女のシーンだけで語られる。
転校生がどうしてそう転校を繰り返すのかは説明がない。
でもこの場合、二人の少女の出会いと別れがモチーフなのだから別に必要なかろう。

最後に転校生が「今まで転校を繰り返してきて、別れがつらくなるから誰とも交わらないようにしてきました。だから『ついてくんなよ』」。
ここでその転校生がニコッと笑う。
その笑顔がすてきでよかったと思う。

普通の、どこにでもいそうな田舎の女子中学生の交流を描いた、特に何があるわけではないけど、かといってイヤになる要素もない映画。



(このページのトップへ)




標的の村


日時 2013年11月24日17:20〜
場所 永山市民会館ベルブホール
監督 三上智恵

(詳しくはムービーウォーカー・データベースで)


沖縄北部の高江地区は人口160人の集落。
ここは周りが米軍のジャングルを想定した演習場になっており、家の敷地に演習中の米軍兵士がやってくることが少なくない。
そんな時、米軍から演習場内に新たな複数のヘリパット建設計画が発表される。ここの墜落事故を何度も起こしているオスプレイがやってくるのは確実だ。
今でも危険なのにさらにオスプレイまでやってこられたら安心して暮らせない。
地域住民は工事予定地の入り口で座り込みを始める。ところがそれが国から道路の不法占拠で訴えられてしまう。
明らかにこれは許されない裁判だ。
しかし抵抗もむなしく、工事は始まってしまう。
やがて沖縄にもオスプレイがやってくる日が近づく。
2012年9月、沖縄県民は米軍基地のゲート封鎖という強硬手段に出た。


沖縄の琉球朝日放送制作のドキュメンタリー。
テレビ版は20分版と47分版があるそうだが、映画版は90分。
「映画 立候補」と違ってテレビ局の機材での撮影だから、さすがに画はきれいだ。

北部の高江地区は演習場に囲まれた集落。この地はベトナム戦争の頃から演習場だった。「ベトナム村」と呼ばれるベトナムの村に見立てた集落を作り、ベトナムの農民役でベトナム人が着ていてそうな服や笠をかぶって演習に参加させられていたそうだ。それも別に給料がもらえる訳ではなかったらしい。
要するに米軍にしてみればこの地はそういう地域で、夜間などは集落の明かりを着陸の目標にしたり、住宅地を敵地に見立て銃を向けてくる時もあるそうだ。

そんな中のスラップ裁判。(国など強いものが弱いものを逆に訴える裁判)
そして工事業者の強行突入。米軍基地のゲート封鎖を突破する沖縄県警の機動隊。

東京ではニュースで事実だけを(しかし高江地区のことは初めて知った)聞いたことがあった。
映像で見ると反対住民を排除する警官隊のシーンはあまりにもむごい。大抵の人はどうしようもない怒りを覚えるだろう。

そして排除する側の人間も沖縄の人間だ。
米軍が排除するなら敵もはっきりする。
排除するのは沖縄県警。
高江の工事業者も「俺にも子供がいるんだ。工事させてくれ」と訴える(あんまり悲壮感はなかったが)。
そしてゲート前の警官に反対派の住民が言う。
「人々を守りたくて警官になったんだろう?」「上司に一言『こんな仕事いやです』と言えばいいじゃないか!」と警官個人に訴える。
当然ながら警官は無言だ。
このシーンが妙に悲しかった。

この日はTAMA映画フォーラムで「映画 立候補」と2本立て上映。映画終了後には金平茂紀氏(TBS報道局)、堀潤氏(元NHKアナウンサー)、森達也氏(ドキュメンタリー映画監督、作家)のトークイベント付き。
テレビ報道の実際についての経営陣と現場の違い、自己規制、どこかの圧力より一般からの抗議を恐れて萎縮して終う現実などが話された。

その中で話が出たのだが、本作に出てくる裁判所のシーンが局内で問題になったらしい。「ニュース用に撮った映像を映画に使っていいか?」ということを心配して裁判所にいちいち聞きに言ったそうだ。結果は問題なし。東海テレビが「死刑弁護人」などのドキュメンタリーの劇場公開で問題になってないように許されるという結論が出たそうだ。
この映画、どこかテレビドキュメンタリー映画らしい行儀の良さを感じたのだが、それがちょっと解った気がした。
要するに無茶な取材はしてないのだ。かなり踏み込んではいるが、普通に取材して撮ったものだ。
マイケル・ムーアなどのようなゲリラ的な突撃取材などしていない。
例えば先の警官などにも後日インタビューして欲しかったが、それをやるとテレビ局として警察の出入り禁止になるとかして、今回とは関係ない事件も取材できなくなるという自己規制が働いてしまったのではないか?

もちろん今回の映画は立派な作品だしケチをつけるつもりはないが、そういうお行儀の良さがテレビ局制作のドキュメンタリー映画の限界を感じた。



(このページのトップへ)




陸軍


日時 2013年11月24日10:30〜
場所 パルテノン多摩・小ホール
監督 木下恵介
製作 昭和19年(1944年)

(詳しくはムービーウォーカー・データベースで)


九州小倉の高木家。質屋を営み、幕末の動乱を生きてきた家だ。その高木家の長男・友彦の父は日清戦争後の三国干渉に怒り、山県有朋に直談判にいくような日本人。
しかし上京したその時に急死してしまう。父は友彦が軍人になることを願った。
時は流れて日露戦争。友彦は軍人にはなったものの、病気で戦争中は病院で過ごし、戦地には行かなかった。
除隊後は家業の質屋をたたみ、妻(田中絹代)商店を開く。
そんな時、知人の紹介で桜木(東野英次郎)という運送業を営む男に会う。桜木は自分の元で働く若い者で奉公団を作って国の為に役に立つことをしたいと思っていた。
その奉公団の指導者として元軍人である友彦が働くことになる。
やがて友彦の息子や桜木の息子も大人になり、軍隊へ志願していった。


原恵一監督の「はじまりのみち」でモチーフとなった木下恵介監督の「陸軍」。今回TAMA映画フォーラムで「はじまりのみち」と2本立てで上映される事になり、いい機会なので鑑賞。

昭和19年11月公開なので、戦況もかなり逼迫してきた時期だ。フィルムも少なくなったのか、主要キャスト4名(上記のほか、友彦の戦友役で上原謙)と監督の木下恵介のみのクレジット。
昔の映画なのでちょっと音が聞き取りづらい。

友彦は戦地に行ってないためか、やたら威勢がいい。
お世話になっている人が「今度陸軍は飛行機を使うみたいですが、あんなもん戦争の役に立つんですか?」と話を振ると「何をいうか!軍に無駄なことなどない。軍のすることに口を挟むとは何事か!」と怒り、桜木のところの奉公団で元が攻めてきた時の話のあと、桜木が「もし神風が吹かなかったら日本は負けていたかも?」というと、「何を言うか!日本は神風がなくても勝っていた!」と反論する。

友彦は戦場に行ってないが、自ら軍属として協力する桜木の方が現実的だ。
桜木の息子が中国に戦争に行くが、戦況を教えてくれる男(上原謙)に「機関銃隊はどうだったか?戦死者に桜木はいるか?」と何度も聞き、「自分の息子の事ばかり聞きよってなんだ!国が勝てばお前の息子一人の命なんて関係ない」と一喝される。

友彦の妻の田中絹代は息子に厳しい。
他の子供が橋の家から川に飛び込んでいるのに、自分の子供が怖がって飛び込めないと「何やってるの?」と叱る。
そして子供がつい教科書を踏んでしまったときに「国からいただいたものを踏むとは何事か!」とまた叱る。
しかし息子が出征するときはその行軍を泣きながら見つめ、命の無事を祈って手をあわせる。

こうした通り一辺倒ではない人物描写がこの映画に深みを持たせている、と言えばいいのか、要するに人間は言動が不一致で当たり前だと描く当たりが面白い。

この後「はじまりのみち」の上映。
2本続けてみると「はじまりのみち」もより輝いて見えた。



(このページのトップへ)




多羅尾伴内 鬼面村の惨劇


日時 2013年11月23日
場所 TSUTAYA宅配レンタルDVD
監督 山口和彦
製作 昭和53年(1978年)

(詳しくはムービーウォーカー・データベースで)


信州鬼面村。この地で林業を営む雨宮家の次女・真理子が結婚することになり、東京に出ていた千尋も久しぶりに鬼面村に帰ってきた。その千尋を顔に火傷の痕のある男が見つめている。
結婚式の前の晩、真理子はいなくなり、死体となって発見された。
宇田川刑事(財津一郎)が駆けつける中、多羅尾伴内(小林旭)もやってくる。実は真理子は以前多羅尾伴内の事務所で働いていたことがあり、結婚式にやってきたという。
次に真理子の妹の三女・薫が殺された。いずれの事件も死体のそばに鬼面がおいてあった。
雨宮の当主剛蔵(渥美国泰)は雨宮家の娘・紀代と結婚したが紀代は通り魔によって殺され、今の妻・歌江と再婚したのだという。
顔に火傷のある謎の男、日向が犯人と思われ、宇田川たちは捜索にあたる。しかし多羅尾伴内によって日向の死体は発見された。犯人は誰か?


小林旭版「多羅尾伴内」シリーズ第2作。前作が4月のメイン番組であったが、今回は夏の「トラック野郎」の併映。明らかに当時としては格落ちであった。
脚本は掛札昌裕、監督は山口和彦とメインスタッフも一新。

前作が都会的なミステリーで千恵蔵版のテイストを継承していたが、今回は完全に横溝ミステリーの世界。
70年代後半は角川映画の「犬神家の一族」の影響で、横溝ミステリーが大ブーム、各社競って作っていた時代でそんなブームに当て込んだのだろう。
千恵蔵も多羅尾伴内とごっちゃになったような金田一耕助を演じていたから、案外シリーズの継承としては正しいといえるかも知れない。

今回は水車小屋が一つのメインイメージとして登場。
20年前に殺された剛蔵の最初の妻も殺された後この水車にくくりつけられ、水車が回る度に死体が水から出たり入ったりと不気味なおどろおどろしいイメージ満点だ。

んで備忘録で書いちゃうけど、実は20年前紀代は流れ者の日向という画家と恋仲になり、水車小屋でたびたび会っていた。そして千尋は日向の子供。当時日向が連れていた子供が長じて例の顔に火傷のある男なのだ。
剛蔵たちは日向と紀代を殺した。そしてその時に実行した男たちが20年経っていよいよ真理子も結婚し、雨宮家の財産が移ってしまうのを機に、雨宮家の財産やそれを独り占めした剛蔵に対する復讐のために連続殺人をしていったということ。
被害者以外の登場人物の多くが犯人の一味だったという展開。

多羅尾伴内は今回はハイヤーの運転手、画家、潜入捜査に行った学校の用務員、木こり(これは逃げるときに一瞬変装する)、重大な事実を知るばあさんに変装する。木こりなんて別に変装しなくてもいいような気もするのだが、「七つの顔」を律儀に守っている。

で、この木こりに変装したときにはヤンマーの電動ノコを持っている。また多羅尾伴内が村にやってきた時のバスはヤンマーの赤いトラクターとすれ違う。当時小林旭はヤンマーのCMに出ていたのでタイアップ、というかお金も少しもらっているのかも知れない。
さらに運転手の時に小林旭の曲「私の名前が変わります」をわざわざかける。これは水商売の女が「〜の時は不運だった。〜の時は不幸だった。だから名前を変えて出直します」という「昔の名前で出ています」の二番煎じの曲。
こんな曲があったとは知らなかった。

ラスト、事件の関係者が一堂に集まっているときに、多羅尾伴内が現れ「ある時は片目の運転手」と決め台詞を言うのだが、その時にいちいち木こりになったり、用務員になったりする。
柱の後ろをさっと動くと出てくる時は次の変装になっている、という凝ったパターン。千恵蔵の時より凝っていて、なかなか遊び心があっていいですねえ。

小林旭版の多羅尾伴内はこれで終わって寂しい。
また誰かにやってほしいなと思う。
案外、堺雅人あたりなら受けるかも知れない。



(このページのトップへ)




42 世界を変えた男


日時 2013年11月22日20:35〜
場所 新宿ピカデリー・スクリーン7
監督 ブライアン・ヘルゲランド

(詳しくはムービーウォーカー・データベースで)


1945年、第二次世界大戦も終わり、アメリカにまた野球が戻ってきた。ブルックリン・ドジャースのゼネラルマネージャーのブランチ・リッキー(ハリソン・フォード)はある挑戦を決意する。当時。メジャーリーグでは選手はすべて白人で黒人は一人もいなかった。まだまだ人種差別が根強いのだ。そこへ黒人選手を採用しようというのだ。
選手や観客、マスコミすべてを敵に回す恐れのある行為だった。
当時、黒人の選手は黒人専門のリーグがあって、そこで活躍している選手の中から実力、性格、経歴からジャッキー・ロビンソン(チャドウィック・ボーズマン)に白羽の矢を立てたリッキー。ますは傘下のマイナーリーグのロイヤルズに入団させる。もちろんリッキーの周りにも反対の意見は多かった。
1946年、ロイヤルズに入団、盗塁の得意な彼はその見事なプレーで回りを納得させていく。
1947年、ついにメジャーリーグのドジャースに昇格するジャッキー。


予告編でリッキーがジャッキーに
「これから君に色んな妨害があるだろう。ホテルもレストランも君を拒否する。敵チームも観客も。しかし絶対に対抗してはならん」
「やり返す勇気もない男になれということですか?」
「やり返さない勇気を持った男になれということだ」
というせりふがあって、このせりふにはしびれた。
このシーンはロイヤルズ入団を誘うシーンではじめの方に出てくる。
そうだよね、今の世の中、「倍返しだ」とやり返すことばかり考える奴が多すぎる。「あの国がなにをしてきた、あれをしようとしている、先にやっちまえ」と物騒だ。
そんな人たちにこのせりふを聞かせてやりたい。

ジャッキー・ロビンソンの背番号は42。アメリカでは4月15日に彼をたたえ、すべての球団の選手は背番号42をつけて試合をするという。
そんなことがあるとは野球に詳しくない私は知らなかった。
「一体いつの話なんだ?」と映画を観る前は思っていたのだが、終戦直後と聞いて「意外と最近の話なんだなあ」と思う。リンカーンが奴隷解放宣言をして何年経っているんだよ?

映画は観客、チームメイト、遠征先での反応を描いていく。そして彼を支える新妻や担当の新聞記者。
ジャッキーの入団を反対声明を出す。それを撤回させてくれた監督は不倫問題で1年間の謹慎。その穴埋めを引き受けてくれる引退した監督を引っ張り出すリッキー。敵チームで公然とヘイトスピーチを行う監督。
それらをはねのけ、好プレーで周りに自分を認めさせるジャッキー。

一番泣いたのは前半でのマイナーリーグでの初遠征先。
地元の人々の妨害にあったあと、車で移動中に白人の男から呼び止められる。
「お前に言っておきたいことがある」
構えるジャッキー。
「俺はお前を応援している。どんな人間にもチャンスは平等に与えられるべきだと思う」
どっちかというと見た目はぱっとしない男だ。彼もひょっとしたら生まれやなんだかんだで差別にあってきた過去があるのかも知れない。

最後は47年にドジャースが優勝したシーンで終わり、映画としてはちょっとハッピーエンド過ぎる気もするのだが、事実だから仕方ない。
万人に勧められる映画だと思う。

ハリソン・フォードが老け役なのだが、映画の時代のリッキーは今のハリソン・フォードの年下なのだという。
それにしてもハリソン・フォードがよかった。私の中では助演男優賞だ。

「飛べ!ダコタ」いい、偏見を越えて人々が一つになってく映画が私は好きなのだなと実感した。



(このページのトップへ)




女囚さそり けもの部屋


日時 2013年11月19日21:00〜
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 伊藤俊也
製作 昭和48年(1973年)

(詳しくはムービーウォーカー・データベースで)


「さそり」と呼ばれた女囚、松島ナミ(梶芽衣子)は今は逃亡中の身。地下鉄の車内で権藤刑事(成田三樹夫)に見つかり降りようとしたところを手錠をかけられる。なんとか逃げたナミだったが、手錠をかけられたまま。外そうとしている所を街娼の女に見つかり、今夜は彼女の所に。街娼・ユキ(渡辺やよい)の兄は工場の事故で知的障害者になっていた。しかし性欲はあり、妹のユキは兄の欲望を満たしていた。
ナミは裁縫の腕を生かし、その仕事についた。しかしヤクザに見つかってしまう。ナミはそのヤクザの女をそそのかし、ヤクザを殺させるのだが、逆にヤクザのボス鮫島に捕まってしまう。ボスの女房の鮫島カツ(李礼仙)はかつてはナミの刑務所仲間だった。この機会に彼女に復讐しようとするのだが。


梶芽衣子の代表作「さそり」シリーズ第3作。
実は観る気はなかったのだが、先月ラピュタのポイントカードでもらった招待券が19日で期限切れだと気づき、捨てるのももったいないので観にきた次第。
でもこうやって何の期待も情報もなく、ふらっと映画を観るのもいいもんですね。

冒頭の地下鉄のシーンがまず凄い。
成田三樹夫が梶芽衣子に手錠をかけ、そのあと自分の右腕に手錠をかけた。そこで梶芽衣子が地下鉄を降りようとした所で扉が閉まる。成田三樹夫はまだ車内、というわけで成田三樹夫の腕がドアに挟まれたままなのだが、梶芽衣子は持っていた包丁で成田三樹夫の腕を切りつける。切りつけるだけでなく、ついに切り落とす!
いや、すげーなあ。梶芽衣子は切り落とした腕がぶら下がったまま街を疾走する!
びっくりした。

街娼のユキは「マッチ1本30円、3本なら50円」という激安価格で(いくら40年前の映画とはいえ、この価格は安い)でマッチのついてる間下半身を見せるという商売をする。その昔はあったと聞くけど、70年代でもあったのかな?
で、自分がは墓場(!)で商売して、男が帰ったあと音がするのでそれを見てみると梶芽衣子あ墓石に手錠をこすって切り落とそうとしている、という出会い。

それにしても梶芽衣子はほとんど(あるいは全く)せりふがない。その目力ですべてを表現してしまう。

で、やくざに捕まった梶芽衣子だけど、そのやくざが自分の店の商売女が妊娠してしまって、もう5ヶ月で堕胎も無理なのに無理矢理堕胎させて死なせてしまう。
怒った梶芽衣子は逃げ出して次々とやくざを殺していく。
やくざの親分の女房の李礼仙も迫力の悪女。しかし案外恐がりで、梶芽衣子におそれをなして「殺されるよりは刑務所」と自首してしまう。

梶芽衣子は警察に追われ、下水道に逃げ込む。
そこへユキがマンホールにマッチを落として合図して見つける。で、しばらくはユキが食料を運ぶ。
ここに登場するマンホールがすかすかで隙間が多くて「ああいう形はないんじゃない?」と思ったが、70年代はあったのか?
結局ユキも警察に捕まって泳がされて梶芽衣子の隠れ場所はわかってしまう。そこで成田三樹夫はガソリンを下水道に流し込んで焼き殺す!
って凄い展開だなあ。

李礼仙は安心してる所へ新しい女囚がやってくる。
それがなんと梶芽衣子!
別人として収容されたのだ。そんなばれるだろう?と思うがこの際気にしてはいけない。

結局恐怖におびえた李礼仙は独房に入れられ、事情徴収にきた成田三樹夫を針金で首をしめて殺してしまう。
ってなんで針金があるんだよ?という疑問も感じてはいけない。

梶芽衣子のすごさを認識させられる映画。
シリーズを最初から観たくなった。
そうそう、成田三樹夫の切り落とされた腕が墓場に埋められて、それを犬が掘り返す。
その腕を加えて町中を歩き、やがて食べ始めるというシーン、その後に何かつながるわけでなく、ただ迫力のある画でまたまた恐れ入った。



(このページのトップへ)




なにもこわいことはない


日時 2013年11月18日21:00〜
場所 ユーロスペース2
監督 斎藤久志

(詳しくはムービーウォーカー・データベースで)


恵理(高尾祥子)と史也(吉岡睦雄)は結婚して何年か経つ夫婦。子供はいない。恵理は東中野のミニシアターで働き、史也は交代制の仕事をしていて、時間はすれ違いそうだが、史也が毎朝朝食の準備をし、一緒に食べる生活をしている。
恵理は映画館の支配人とうまく話せない、実家の母(角替和枝)から電話で犬の去勢手術をしたと連絡がある、職場の友達と仕事が終わってから飲みに行ってカラオケへ、遅くなった帰り道深夜までやってる花屋で鉢植えを買う、母が訪ねてきて「子供はまだか?」と聞く。
そんな日常の積み重ね。子供を作る気のない恵理は子供堕胎してしまう。それを史也に「なんでそんなことするの?」と問われる。
実家に帰る。父(柏原寛司)や母とのいつもの会話。犬を公園に連れていって公園で遊ぶ。


吉岡睦雄さんが主演で、柏原寛司さんが役者として出演してるということで、映画の内容とは関係なく出演者に関心があったので観た。
事前に観た予告編は特に事件らしい事件が起こるわけではなさそうで、しかも1時間50分あって「つらそうだなあ」と思えた。

そしてその予想は裏切られることはなかった。
カメラはフィクスのまま、淡々と、丁寧に日常の暮らしを描く。
事件らしい事件は起こらない。
唐突に映画館の仕事仲間が死ぬ。だから葬儀の帰りのシーンがあるけど、彼が死んだから話がそこで展開するわけではない。

恵理は堕胎する(もっともそのシーンは寝落ちしたど)。
その後のシーンで史也が「なんでそんなことしたんだよ」と責めるので、「子供を作らない」と言っていたことと併せて想像がつく。
実家に帰る。父親との普通の会話。

正直、私がプロデューサーだったら、この企画はスタートさせないね。あまりにもなにもなさすぎる。

でも何か画面に引きつけられるものはある。
例えば朝食のシーン、史也はパンをとる。野菜やチーズをのせる、食べる、コーヒーを飲む、という姿をじっくりととらえる。
普通、食事のシーンは会話しながらになることが多いが、食べる、話す、食べる、話すがじっくりと描かれる。
私はそれで面白い、というか引きつけられるのは30分が限度だが、人によっては最後まで面白いらしい。
淡々とすぎていき、エンドクレジットが出たときは「えっ、これで終わり?」という感じだったけど。

余談ながら恵理の勤めている映画館はポレポレ東中野。この映画、今のところポレポレでの上映はないらしいが、このシーンが出たら笑いが起きるかもしれない。
本日はいまおかしんじ監督と吉岡睦雄さんのトークイベント付き。
吉岡さんがいまおかさんに突っ込みまくりで楽しいイベントだった。
当初、いまおかさんも恵理が行く八百屋の主人役での出演があったそうな。結局そのシーンは撮影されることなく、カットになったそうだが、観たかったな。



(このページのトップへ)




裏窓の誘惑 人妻の匂い立つ色香


日時 2013年11月17日
場所 TSUTAYA宅配レンタルDVD
監督 いまおかしんじ
製作 平成14年(2002年)

(詳しくはallcinema on lineで)


シナリオライターを目指すトシヤ(吉岡睦雄)は家賃の安いアパートに引っ越した。外を見ると向かいのマンションの人妻(中渡実果)らしき女の着替えを見てしまう。それからは向かいのマンションを暇があると見てしまうトシヤ。
レンタルビデオ店のバイトも決まった。トシヤにはユリ(瀬戸純)という彼女がいて、引っ越した晩にやってきた。ユリは妊娠したと告げる。
トシヤのバイト先のビデオレンタル店に例の人妻がやってきた。自分の鞄にビデオを万引きしていく。トシヤが「あの、防犯ブザーが鳴りますよ」と告げても「構いません」と去っていく。
テレビのプロデューサーからトシヤの出していた企画がボツになったと告げられる。
そんな時、向かいのマンションの人妻がトシヤに見せるようにオナニーしている姿を見てしまう。


最近DVD化されたいまおかしん監督のビデオ作品。
レジェンド・ピクチャーズ作品で2002年の製作らしい。脚本は上井勉、撮影は下元哲、監督助手は伊藤一平と小泉剛。

向かいの人妻を覗きながら、トシヤが勝手にアテレコをする。夫が帰ってきて食事をする会話をする。適当に「抱いて」と言ったところ本当に服を脱ぎ出すシーンは面白い。
トシヤは企画がボツになり、子供が出来たこともあってシナリオを辞めようとする。しかしそんなトシヤをユリは逆に否定する。

ここでトシヤの服を2階の窓から外に投げてしまうところがいい。

人妻はオナニー見た翌朝やってきて、トシヤに抱いてもらう。実は彼女は風俗でも働いていた。
風俗のお客に追いかけられたところを助けるトシヤ。
人妻「私が言ったことを勘違いしたらしくて」
トシヤ「なんて言ったの?」
人妻、答えない。
トシヤ「いや言わなくていいや」
その後人妻は「見てほしかったからだ」という。
結婚生活では夫は自分に無関心で見てくれない。
「私を連れて逃げて。駅に7時に待ってる」
信じて駅で待つトシヤ。駅までの道でシナリオの雑誌を捨てトシヤ。
しかし結局彼女は来ない。
初めて彼女のマンションに行くトシヤ。
追い返されるトシヤ。

さっき捨てたシナリオ雑誌を拾って持ち帰るトシヤ。
心配したユリが部屋にやってくる。

ここでトシヤは再びシナリオを書き始める。
それを見つめるユリ。その時のトシヤ背中のアップがいい。
ただの背中のアップだが、妙に情感があってよかった。

しばらくしてから気づいたが、そうか人妻は風俗の客に同じように「私をつれて逃げて」と言ってるのか。
「ここではないどこかへ行きたい。しかし現実の生活を壊す勇気はない」
そんな現実の恋愛の切なさが伝わってきた。
よかった。



(このページのトップへ)




多羅尾伴内


日時 2013年11月17日
場所 TSUTAYA宅配レンタルDVD
監督 鈴木則文
製作 昭和53年(1978年)

(詳しくはムービーウォーカー・データベースで)


日本シリーズの試合中、人気打者高塚が満場の観客の前で殺された。何者かが高塚に向かって毒のついた針を撃ち込んだのだ。
現場に居合わせた多羅尾伴内(小林旭)の機転で犯人が分かった。かつて甲子園では高塚と同じくヒーローだったが、今は落ちぶれた川瀬(成瀬正)だ。しかし警察が駆けつけた時には遅く、川瀬は自殺していた。事件は解決したかに思えた。
そんな時、多羅尾伴内は信愛医科大学理事長の木俣(池部良)から脅迫されているという相談を受ける。脅迫者の名前は「ちろぬぷかむい」。それはアイヌ語で「狐の神」だ。
10億円は用意し、狐の面をつけた男がやってきた。が金が偽物と解ると逃げていった。
そして多羅尾伴内は川瀬の妹ゆう子(竹井みどり)から「兄は犯人ではない。犯人にさせられて殺されたのだ。助けてほしい」と相談を受ける。


1979年、東映は片岡千恵蔵で有名な「多羅尾伴内」を突如リメイクする。主演は小林旭。
「犬神家の一族」から始まった横溝ブームがあって、「江戸川乱歩の陰獣」やら邦画はミステリーブーム。それで東映も「うちにも名探偵がいる!」と復活させたのだろう。
でも当時から「今更『多羅尾伴内』なんて」という空気はあった。というか私自身が感じていた。
結局東映の期待した数字はあげられずに、もう1本「鬼面村の惨劇」が作られたが、こちらは「トラック野郎」の同時上映に格落ち、で3作目はなかった。

DVDには当時の予告編が収録されており、特報では「多羅尾伴内 三番打者怪死す」というサブタイトル付き。
タイトルに数字を入れるなんてなかなかオリジナルを意識している。脚本はオリジナルの比佐芳武の弟子にあたる高田宏治。

前口上がこれくらいにして本編の話だが、なかなか話が入り組んでいる。
事件の発端は北海道でのひき逃げ事件。木俣の息子(江木俊夫)や高塚、人気歌手の穂高ルミが乗った車が地元の親子をひき殺していたのだ。死んだのは父と息子だったが、母親は生きている。この母親が犯人と睨んだ多羅尾伴内だったが、その母親は今は木俣の秘書をしていた。
秘書の新村真砂子(夏樹陽子)は元は木俣とつきあいのあるヤクザの大島(成田三樹夫)のバーのホステスだったのだ。
という感じで犯人は真砂子なのだが、今度は真砂子も大島と共に殺されてしまう。

犯人を殺す犯人を殺す犯人がいるという二重三重の構造で、ミステリーとしても十分楽しめた。
加えて小林旭も片目の運転手、流しの歌手、手品好きのキザな紳士、せむし男、白バイ警官と変装しまくり。
せむし男の時は身が軽くなってぴょんぴょん飛び跳ねる。
すごいねえ。

さらに歌手の穂高ルミがステージで殺されるのだが、ステージ上でゴンドラに乗っていて、そのワイヤーが犯人によって切断され、さらに金属ワイヤーが穂高ルミの体に巻き付き自らの体重で序々に体に食い込んでいき、最後は体は真っ二つというホラー的要素あり。
そうだね、この頃は「エクソシスト」に始まったホラーブーム、オカルトブームもあったからなあ。

多羅尾さんも最後は拳銃を撃ちまくることはないのだが、背後から撃たれそうになったとき、体の前で腕をクロスさせ、背後の二人の敵を一度に撃ってしまうという見せ場付き。ここでは正直ばかばかしさに笑った(誉めている)。

「片岡千恵蔵に比べれば貫禄不足」という意見もあるけど、小林旭の「多羅尾伴内」もなかなかのものだった。
あっそうそう真犯人は「妖星ゴラス」の人ね。
自分への備忘録として記しておきます。



(このページのトップへ)




ウルトラマン 怪獣大決戦


日時 2013年11月16日13:00〜
場所 グリソムギャング跡地
監督 宍倉徳子
製作 昭和54年(1979年)

(詳しくはムービーウォーカー・データベースで)


1979年3月に公開された「ウルトラマン 実相寺昭雄監督作品」に続いて8月に公開されたTVの「ウルトラマン」の再編集版。
第8話「怪獣無法地帯」(監督:円谷一)、第3話「科特隊出撃せよ」(監督:飯島敏宏)、第4話「侵略者を撃て」(監督:飯島敏宏)、第16話「科特隊宇宙へ」(監督:飯島敏宏)、第25話「怪彗星ツイフォン」(監督:飯島敏宏)の順で、それぞれ20分弱にカットして、オープニングにその後のウルトラ兄弟の紹介部分や、エピソードとエピソードの間にウルトラマンたちを登場させるシーンを加えての公開。

前回の「実相寺昭雄作品集」は明らかに「ウルトラマン」としては異色作ばかりだったが、今回の作品群は正統派作品群。
79年の公開当時観ているが、その頃はまだビデオデッキも発売されていたが一般的ではなく、また当然ビデオソフトも発売されていない時代だから、再放送でもない限り、「ウルトラマン」をもう一度観ることが出来なかった時代。
だからもう一度「ウルトラマン」が大画面で観ることが出来て楽しかった気がする。

でもそう思ってる一方で、ちょっと生意気な特撮好き少年(まだオタクという言葉はない)だったので、「こういうものより『実相寺作品すごい』『怪奇大作戦』すごい!」と思っていた気もする。

さて思い出話もおいて今回観た感想。
「ハヤタってよくベータカプセルを落としたり、なくしたりするなあ」ってこと。大事なものは首からぶら下げて起きましょうね。

あとバルタン星人。そりゃ自分たちの星がなくなって移住先を探していて、だから無理矢理地球を侵略仕様とするのはよくない。
しかしだなあ、ウルトラマンよ。だからと言って40億のバルタン星人の乗った宇宙船を破壊してしまうのはいかがなものか?
そういう疑問が出てきたから「ウルトラセブン〜ノンマルトの使者」が出てきたんだろうけど。
ウルトラマンにもここはバルタンの宇宙船はどこか遠くにテレポーテーションさせるとかしてほしかった。

で本作の監督は宍倉徳子さん。この方は「ウルトラマン」のスクリプターとして活躍された方。だから桜井さんの本にも登場する。でもスクリプターが監督するってどういうことなのだろう?
本日のトークゲストの飯島監督も桜井さんも79年当時は「ウルトラマン」とは離れた状況だったので、全く事情はご存じないらしい。
事情はちょっと気になる。



(このページのトップへ)




ビキニ☆ラーメン


日時 2013年11月15日21:10〜
場所 ポレポレ東中野
監督 小泉剛

(詳しくはムービーウォーカー・データベースで)


2×××年、日本は謎の結社「虎の穴」に支配され、ラーメンを作ることさえ禁じられていた。
その中で屋台のラーメン店を開こうとした男たちがいる。「虎の穴」の結社の男たちがそれを阻止しようとする。
その時たまたまそこに居合わせた女・竜子(あやなれい)が現れた!


小泉剛監督はピンク映画のいまおかしんじ監督や榎本敏郎監督の助監督をしていた方。
その監督の青春Hシリーズの1本。
以前は2週間のレイトショー公開だったが、この日は楽日で小泉監督、いまおか監督、榎本監督のトークイベント付きで観に行った。

ストーリーを紹介したけどなんだか解らない。
でも観てる間はなんとなく解る。理屈じゃない。とにかく変なものに支配されていて、それを打ち破るという勧善懲悪ストーリー。
で、この竜子が眼帯をしていてビキニ姿で巨乳といういでたち。
メインビジュアル、というかポスターも黄色い下地に彼女が立っている姿で「キル・ビル」そのもの。
映画が始まると画質は荒く、昔の安っぽい香港映画の感じ。さらにオールアフレコでリップシンクロも時々ずれていてそれがますます昔の技術が未熟な感じの映画っぽくていい。

で、竜子が持っている武器がラーメンの湯きりに使う器具で、取手とざるの部分が鎖でつながっていてそれがヌンチャクみたいになると言うもの。普段は鎖は取手の棒の中に隠れている。
なんだか楽しい。

しかし「地獄でなぜ悪い」も同じような感じと言えば感じなのだが、この映画の場合、全く腹が立たなかった。
パロディに徹しているというか、嫌みがない。
「地獄〜」は元々園子温が好きでないので、負のフィルターをかけて観てるせいなのか?
「ビキニ☆ラーメン」は低予算でやっててなにかかわいい感じがするのがいいのか?それに「地獄〜」は「これ知ってるか?」的な知識の自慢を感じたけど、「ビキニ〜」はそれがなかったし。
でも結局は園子温が嫌いということに行き着くか、やっぱり。

で実は金曜日の夜という疲れた時に見たので、ラストは少し寝た。
話は竜子は子供の頃に悪の組織に拾われて訓練されたがそこから抜け出した、という話。「タイガーマスク」みたいやがな。
その頃に訓練中に目を刺されてつぶされたという設定。
でラストは悪い奴と対決して「めでたしめでたし」

上映後のトークイベントは二人の先輩にいじられる小泉監督。
「こういうトークイベントってお客さんにとってはどうなのかなあ?映画を観たいだけの人には迷惑かも?」という話が出て、昨今のマイナー映画の付加価値にトークイベントをつけるのは果たして有効か?という疑問を投げかけ、答えがでないまま(当たり前だ)終わった。



(このページのトップへ)




タイガーマスク


日時 2013年11月13日21:00〜
場所 TOHOシネマズ六本木ヒルズ・スクリーン3
監督 落合賢

(詳しくはムービーウォーカー・データベースで)


12歳の伊達直人(中島凱斗)はちびっこハウスという施設で育った両親のいない孤独の身。直人はこのちびっこハウスの園長の若月(温水洋一)が不動産屋から家賃の取り立てにあっているのを見てしまい、みんなと離ればなれになる不安にかられる。
みんなで動物園に行った日、不思議な声に導かれ「虎の穴」に入る直人。「虎の穴」のミスターX(哀川翔)は多くの子供たちを連れてきて、地下格闘技の闘士として育てて行くのだ。
教官(釈由美子)の厳しい訓練に耐える直人。
10年後、直人(ウエンツ瑛士)、ダン(良知真次)、ジョー(勝信)は立派な闘士になった。ミスターXは自ら開発したタイガーマスクという特殊なマスクを彼らに与える。
3種類のタイガーマスクがあって、ゴールドは敏捷になり、ホワイトは力が強くなる。そしてブラックはすべてを兼ね備えたマスクなのだ。
ダンはゴールドを、ジョーはホワイトを、そして直人はブラックタイガーマスクとなる。


60年代の代表的スポ根アニメ、「タイガーマスク」の実写映画化。なんで今「タイガーマスク」のリメイクかと疑問に思うが、今だからこそなのかも知れない。
「ガッチャマン」とか「ハクション大魔王」(フジテレビのテレビ作品)とかやってるもんなあ。
だから企画を聞いたときは「またか」と思った。

でもウエンツ瑛士が主演と聞いてとりあえず観に行った。
公開の劇場も少なく、回数も少ない。この六本木は2日目以降は1日1回で、しかも木曜日で終了。もちろん新宿とかでは上映するけど、それにしても1日2回とか少ない。
配給が東宝などの大手じゃないしね。

で、映画の内容だが、つまらん。
90分だがクレジットが5分以上あるので、実質85分ぐらいという短さ。だらだら長いのがいいとは言わないけど。
そもそもあんまり観てなかったけど、アニメの「タイガーマスク」はタイガーマスクに次々と虎の穴からやってきた怪人レスラーが挑戦してきてそれを打ち破っていく、という話。
今回は「なんで虎の穴と対立するようになったか?」という部分のいわば序章、ビギニングの段階。
それはアニメならオープングのナレーション15秒でやってる部分なんだな。
言っていればこれから本格的に話が始まって面白くなる訳だ。

だからここだけ映画にしても仕様がないってことになる。
もしくは15分ぐらいでちゃっちゃっと説明する部分なのだな。
子供時代で30分かかってウエンツが出てくるの30分経ってからだもん。

だからこれがシリーズ化されていくなら、これから楽しめるのだが、これじゃあね、というのが本音。
でも興行成績は問題外のレベルだから2作目はないだろうなあ。
こういう金儲け用の企画がこけたら作ってる方としてはどうするつもりなんだろう。
でも宣伝も出来てないし、劇場も少ないし、ある程度は予測したろうが。

話の続きをメモしておくと、直人もダンもデビュー戦は勝つ。しかし自分がトップに立ちたいジョーは力を出し切った状態のダンに戦いを挑み、ジョーはダンの膝をつぶしてしまう。ミスターXは「もう闘士として使えない」という理由でダンを殺してしまう。
それを知った直人は虎の穴を抜ける。しかし簡単に抜けさせてくれるはずもなく、直人がちびっこハウスでボランティアので、ハウスが放火されてしまう。
直人は今はグレートタイガーマスクとなったジョーに戦いを挑み勝つ、という感じ。

直人の初恋の園長の娘、若月ルリ子に夏菜。直人がいなくなってからは兄とともにこのちびっこハウスを再建していたのだ。
で、ラストシーンでは放火にあってもうちびっこハウスはなくなったかと思いきや、火事などなかったかのようにちびっこハウスはある。どうなってるんだろう?
直人がラストで1000万円寄付してたけど、立て替えられたのはその前だしな。

そうそう、クレジットを観ていたら藤井貴規の名前があって驚いた。はてどこに出ていたかと思ってHPとか観たけどわからない。そうだ、ルリ子の兄役だ。めがねをかけていて「どこかで見た顔だ。はてなんていう役者だったろう」と思ったし。彼も頑張っているようで嬉しい。



(このページのトップへ)




ほしがりすぎる義母 理性と母性


日時 2013年11月11日
場所 TSUTAYA宅配レンタルDVD
監督・撮影 下元哲
製作 平成19年(2007年)
(原題 「好奇心の強い義母 昼顔の汗臭」

(詳しくはムービーウォーカー・データベースで)


雅之(久保田泰也)は受験生。母のマユミ(酒井ちなみ)は半年前に父が再婚して家にやってきた。
とてもセクシーで気になって勉強に手がつかない。うたた寝をすると夢で母がトイレでオナニーをしてる姿を見てしまう。
ガールフレンドの由香里(会沢萌)が勉強を教えにきてくれたが、母が由香里を責めている姿を妄想してしまう。
さらに父(久須美欽一)が母を緊縛してる姿や、品物を届けにきた宅配便のドライバー(なかみつせいじ)のモノを母がしゃぶる姿も妄想する。
そんな日々が続く頃、父が3日間出張で留守をする事に。


エクセス映画。脚本は関根和美。
最近お気に入りの役者の一人が久保田泰也なので、検索して借りてみた。Vシネマかと思ったら冒頭にエクセス映画と出てピンク映画だと確認出来た次第。
しかし脚本が簡単である。

雅之のアップになる。妄想が始まる。濡れ場が一通り終わる、雅之がはっと我に返る、の繰り返し。
話も見事にすべて家の中で完結し、部屋から全く出ない。
雅之のマンションは高層タワーマンションで、時間の経過の為に昼間や夜の外観が挿入される程度。これも夜はフィルターをかけているから撮影はまとめて行ったと思う。
一軒のマンションですべて事足りているから、効率的な仕事が出来たのではないか、という感じがした。
マンションの部屋が意外に狭く、高層高級マンション風に見えなかったのがちと残念。

妄想で濡れ場をつないでいくが、ラストは父が出張に言ってるときに母の風呂を覗いて「入ってらっしゃい」と言われる雅之。
そこへ父が忘れ物を取りに帰ってくるのだが、風呂の様子がちょっと変とは思ったものの、時間がなくて出かけてしまう。さらに由香里が訪ねてきて、風呂場の雅之たちの行為を目撃し、オナニーするというサービス付き。

ここで終わっても何とかなるが、ラストにやっとひねりがある。
翌朝の朝食の席で風呂場のことを話題にする雅之。
しかし母は「なに馬鹿なこと言ってるの?」と相手にしない。
しかし母の首筋にはキスマークがついていた。
雅之の妄想ではなかったらしいというオチ付き。
「単純な脚本だなあ」と思っていたが、最後にはこちらもニヤリとさせてくれ、いいラストだった。



(このページのトップへ)




劇場版 BAD BOYS J 最後に守るもの 


日時 2013年11月10日21:40〜
場所 新宿ピカデリー・スクリーン5
監督 窪田崇

(詳しくはムービーウォーカー・データベースで)


広島はBEAST、広島ナイツ、極楽蝶の3つのチームが押さえていた。この3つのチームはお互いに共存していく道を選んでいた。
しかし元極楽蝶のメンバーだった圭太(重岡大毅関西ジャニーズJr)が少年院からでてきて新しいチームのEDENに入ったことから、その事態は変わり始める。
EDENのリーダー・榊聖人(柿澤勇人)は広島のトップをとろうとする。
そんな時、極楽蝶のナンバー2の陽二(岩本照SnowMan)はリーダーの桐木司(中島健人SexyZone)に「就職するからチームを抜けさせてほしい」と頼む。
陽二の将来を思った司は承知する。しかし陽二は圭太とともにEDENに加わり、ナイツや極楽蝶をつぶしにかかる。
そもそも圭太が少年院に入ったのは陽二を助けたのが原因だった。陽二は圭太に負い目を感じていたのだ。

今年の春、深夜枠で放送された「BADBOYS J」の映画化。
だからタイトルにわざわざ「劇場版」とある。
主演の極楽蝶の司を演じるのはSexyZoneの中島健人。
そしてその他の出演者もABCーZやKis-My-Ft2、ジャニーズJrのメンバーが出演。
原作のコミックはベストセラーだそうだが、私は知らない。タイトルに「J」が入っているのは、ジャニーズ版、ということなのだろう。
このコミックは2011年にも映画化されてその時の監督も窪田崇。すごいね、窪田監督は同じ原作を違うキャストで2回映画化してるわけだ。もう「人生劇場」か「忠臣蔵」である。

最近人数が増えすぎてレベルが落ちた、と言われるジャニーズ陣だが、主役の中島健人はその中でも久々の正当派だと思うSexyZoneの中心メンバー。メインは佐藤勝利だが、勝利より少し年上で魅力を放っているのが、この中島健人だ。
光GENJI以降、年齢差のあるメンバーを組み合わせ、デビュー後、メンバーの年齢の変化に伴い、中心メンバーを変えていくという方向を取っている。
だから今はSexyZoneも佐藤勝利や中島健人が中心だが、やがてマリウス葉の時代が来るのではないかと思っている。

出演のジャニーズメンバーだが、極楽蝶ではエイジ(深澤辰哉SnowMan)、寿雄(渡辺翔太SnowMan)、BEASTでは段野(二階堂高嗣Kis-My-Ft2)、数俊(森田美勇人ジャニーズJr)、一成(諸星翔希ジャニーズJr)、広島ナイツはヒロ(橋本良亮ABC-Z)、健二郎(安井謙太郎ジャニーズJr)、潤(萩谷慧悟ジャニーズJr)、元広島ナイツの見城(七五三掛龍也ジャニーズJr)などなど。
さっきも書いたが、最近のジャニーズはレベルが下がったと言われるのを証明するようなレベル。
キスマイとかABC-Zなんてデビューしたとき、「ジャニーズJrの在庫一掃セール」なんて言われたものなあ。でも私もそれに納得した。ジャニーズJrも「この程度で?」と言われるようなレベルになった。(SnowManなんてユニット知らなかった)
そういうメンバーの寄せ集めだから(いやそうでなくても)、その中に中島健人がいると、やっぱり映える。主役の華がある。

で、映画の内容なのだが、不良同士の喧嘩、抗争の話なのだが、基本的に不良っぽくない。それとも私の認識の方が古いのだろうか?なんかアイドル顔で、喧嘩する迫力を感じないんだな。
だからそのジャニーズによる「不良ごっこ」って感じ。
司は好きな子がいるのだが、この子とはキスもしていない。童貞かコイツ。
もともと「ウエスト・サイド物語」をジャニー喜多川さんがお気に入りと聞いたことがあるので、こういう不良物語というのは逆に王道とも言えるのだが。
原作のファンがどう思ってるかが気になるところだ。

それにしても物語は広島が舞台とは言うものの、広島の風景が出てくるわけでなく、しかも地域の大人(学校の先生とか親とか警察とか)が全く出てこず、彼らだけの小宇宙が繰り広げられる。
でも話の骨格は「新興勢力が既存のいい親分の組を困らせる」で、これはもう全盛期の東映やくざ映画と変わらない。
そして最後には「仲間が大切」「仲間は裏切れない」と「仲間」「仲間」のオンパレード。
完全に自分たちの世界に入っていて、私は入れない。

もっともこの映画はジャニーズメンバーを楽しむ映画だから、彼らだけで小宇宙でいいのかも?
女の子のファンもちょっと怪我して目の上のまつげのあたりにバンドエイドが貼ってあるような姿は「かっこいい!」って感じなんだろうな。

とにかくジャニーズメンバーを楽しむためだけの映画です。ジャニーズに関心のない人にはつらい映画だろうなあ。

あと出演は司の彼女・久美(橋本奈々未乃木坂46)、段野の恋人かおり(板野友美)、ヒロの彼女エリカ(トリンドル玲奈)などジャニーズだけじゃないアイドル総出演でした。
そうそう彼女たちが喧嘩に行った男たちを喫茶店オイスター(!)で待つシーンで、「女は待つしかないのさ。あいつ等に帰ってくる場所を作ってやらなきゃ」というが、まるで「極道の妻たち」のノリ。
今でもこれは通じるんだな。



(このページのトップへ)




フーテンのHOMOさん 夢人間


日時 2013年11月10日15:30〜
場所 光音座1
監督 新倉直人

(詳しくはムービーウォーカー・データベースで)


何故か「先生」と呼ばれている主人公。先生は今日も昼寝をしてるときに、実家のおばちゃんと妹のかえでの二人が引くラーメンの屋台がチンピラに襲われるのを助ける夢を見る。
夢からさめたが何をしてるのか解らない舎弟がしくじったおかげで網走のキャバレーの仕事に行けなかった。
お金がなくて困っていると警官がやってきて「それならしばらくしばらくあの寺においてもらえば?」と言われ「今何寺」という不思議な名前のお寺につれて行かれる。
ママはシスターの格好をしていて「お巡りさんが保証人なら」ということでおいてもらうことに。
でもここは寺ではなくオカマバーらしい。


この映画、昔々に観てるかも知れない。タイトルに聞き覚えがあったし、ラストで川沿いの道でラーメンの屋台と先生のカットに見覚えがあるのだ。
ただしその時もくだらなさにまともに観ていなかったと思う。

OP映画。
山崎邦紀監督作品で「ゲイピンクで企画が通りやすいからといって好き放題するのはやめてほしい」と書いたけど、この映画もなんだかひどい。
脚本というか基本的な説明が出来てないのだよ。

まず主人公の設定がよく解らない。キャバレーとか回ってる芸人とマネージャー(先生)なのかな?その割には舎弟の方が芸をする場面とかないし。
冒頭の夢のシーンが10分ぐらいあってまずだれる。

で、道を歩いていると警官に呼び止められて、「話があるから」と喫茶店に行く。ここで警官は赤いパンツを返すのだが、「これは俺のだ」と先生が言う。警官はどういう人なの?
警官に適当に紹介されて「今何寺」に行くが出てきたママ(山本竜二)がシスターの格好をしていて、その後男4人で「白鳥の湖」を踊るシーンになる。
ここがまた長くてだれる。
そしてバーカウンターのあるカットになるので、どうやらここはオカマバーらしいのだが、営業しているシーンがないのでピンとこない。
で店のスタッフと先生と舎弟がお風呂に入るシーンがあって、絡みをいれて「とりあえず義務ははたしました」って感じ。

このスタッフの中にヨシオっていう比較的男前がいて、ママから今までに親がどうした、妹がどうしたと300万円借りていてさらに200万円を母親が病気とかで借りようとしている。
んで、困った振りしてヨシオは先生に相談する。人のいい先生は「私の実家はチャイニーズ・レストランだから」とか言っている。途中2回ぐらい先生が公衆電話から(テレフォンカードを使う緑の奴)どこかに電話するが、「おかけになった電話番号は・・・」と通じない。

結局ヨシオに懇願されて、先生はヨシオを連れて逃げる。そこで実家を訪ねてみるとそこは何もない。
それが妹とおばちゃんがやっていたラーメン屋のことだったんだ。あきれたヨシオはとんずら。で、夢に出てきた川沿いの道に行っておばちゃんや妹に出会う。
そこで山本竜二に頼まれて冒頭の警官や舎弟が追いかけてくる。

そして偶然に入ったスナック(その割には先生の方は顔が利くらしい。地元だからかな?でも最初は実家の場所も解らなくなってる位、久しぶりだったようだが)でヨシオとばったり再会。
ママから盗まれた金は戻った、という訳。
なんだか行き当たりばったりで前後のつながりも何にも考えずに、現場で書いていたんじゃないか?と思われるような脚本の映画。

ゲイピンクも始まったばかりで何をどう作っていいのか解らなかった時代の映画か?



(このページのトップへ)




若者狩り


日時 2013年11月10日14:25〜
場所 光音座1
監督 渡辺元嗣

(詳しくはムービーウォーカー・データベースで)


薫(碓田清司)は大学進学のため田舎から上京してきた。代々木の駅前で巧(久保新二)に声をかけられる。「月5000円の下宿屋だ。こんないい物件ないよ」
そこに決めた薫だが、この巧という男、なんかヘン。
同じく1週間前に下宿に入ったという光(諸星光)、そしてなぜかついてきてしまった薫の幼なじみの美空(瞳さやか)たちと暮らし始める。
美空は薫が好きで追いかけてきたのだが、薫は何かと世話を焼く美空がうるさい。
ある晩、薫は巧が光のモノをなめているのを見かけてしまい、ドキドキしてしまう。


ENK映画。
碓田清司は前に佐藤寿保監督の「仮面の誘惑」で主役の美少年を演じていた。で、本作でも主演。
でも今回の役にはちょっと暗い感じするのだな。
さらに久保新二が出てきて相変わらずちょっとうるさい。
従ってちょっと気分が下がりかけたが、相手役の諸星光がいい。

ちょっと面長の感じのわりとイケメンだ。
諸星光なんてのは光GENJIの諸星和己のイタダキだろうから、たぶんその頃の映画でしょうね。
でも薫もゲイ雑誌のヌードグラビアを見てオナニーするぐらいだから、ゲイなのだろうけど、どうも光との進展が遅い。

二人とも高校時代はサッカーをしていた、ということで二人で河原をジョギングした後、薫が光の喉仏の汗を見つめるカットがセクシー。
巧も光の喉仏を見つめるカットもあって、こちらもよかった。

でもお互いにゲイなんだから光と薫はもっと早く結ばれてもいいのでは?どちらかがどちらかをノンケだと思ってるからなかなか手を出せないのであって、お互いに相手には知られてないけど、相手がゲイだと解ってるんだから。

そして美空が巧の部屋に隠し階段があるのを発見し、そこに降りてみると男のモノをかたどった石膏がたくさんぶら下がった木のオブジェを発見。
ちょっと猟期的な感じなるのだが、いかんせん演じているのが久保新二なので、笑いになってしまう。

しかし木にモノがぶら下がってるオブジェを作ったりして実に金がかかってるというか手間がかかっていて、今のゲイピンクに比べれば予算も時間もあった感じがしてしまう。
その後の光と薫が結ばれるシーンでは白い壁に七色の証明を当てて一応幻想的な雰囲気を作っているし。

何となく統一感のない映画だが、助演の諸星光がイケメンでそれはよかったと思う。

ついでにメモしておくと、鈴木一博さんが撮影助手でついていた。



(このページのトップへ)




I am ICHIHASHI 逮捕されるまで


日時 2013年11月9日17:00〜
場所 新宿ミラノ3
監督 DEAN FUJIOKA

(詳しくはムービーウォーカー・データベースで)


2007年3月。市橋達也はかねてから交際のあった英会話学校の講師、リンゼイさんを殺害。警察が市橋宅を訪ねた時、連行を逃れ逃亡。
被害者が英国人であったことから、この事件は大きく報道された。
一方市橋は途中で整形しながら逃亡を続け、マスコミの報道も収まった2年半後の2009年11月、大阪から沖縄に向かうフェリーターミナルで逮捕される。


市橋事件は大きく報道され、また遺族がイギリスから来日し「日本は治安の言い国だと聞いていたから安心して送り出したのに」と記者会見で述べ、それが私も印象に残っている。外国人の日本への信頼感が損なわれた感じで、いやな印象も残ったものだ。
また市橋も結構イケメンで、いつだったかの防犯カメラに写った顔が「水嶋ヒロに似ている」と言われた。
パーカーのフードを被り、顔は鼻と口付近しか写っていなかったが、落ち込んだ頬のあたりは確かにちょっと水嶋ヒロに似ていた。言われた水嶋ヒロはいい迷惑だろうけど。

で、その市橋が逃亡手記を書いていたとは数ヶ月前に知った。出版されたのは2011年だったのだが、知らなかった。それが映画化されると聞き、野次馬根性から観に行った次第。

でも正直言って面白くない。
それもそのはず映画的でないのだよ。
人目を忍んで極力、人と接しないような生活だからドラマが起きようがない。

しかも一人だから彼の心情を台詞として語らせることも出来ない。
そういう中で苦肉の策として出てきたのが、架空のジャーナリスト。
市橋を訪ね、インタビューを試み、彼に
「僕だって逃亡は大変だったんだ」
「人を殺しておいて自分は生き延びて逃亡か!」
とインタビュアーの口を借りて反論する形を取る。
確かにそういう形をしなきゃ彼の内面は表現できないか。
この架空のインタビュアーの登場のおかげで映画の構成がやや複雑になって解りにくい形になったけど。

それにしても市橋は自分で自分の唇を切ってしまうとか、まぶたを切るなどして人相を変えようとしている。
これが痛々しくて(思い出すと今もだが)耐えられなかった。私は片目をつぶってましたね。

監督・主演のDEAN FUJIOKAは中国人の父と日本人の母の間に生まれ、モデルから始まって香港台湾で活躍される方だそうだ。
今回は髪で顔を隠しがちなのでよくわからないのだが、確かになかなかルックスはよさそうですね。
でも妙にアートっぽくした映像や構成は私は好きになれなかった。もっとVシネ的に分かりやすい映画にしてくれた方が、僕は好きである。



(このページのトップへ)




ケンとメリー 雨あがりの夜空に


日時 2013年11月9日15:00〜
場所 新宿ミラノ3
監督 深作健太

(詳しくはムービーウォーカー・データベースで)


片倉健(竹中直人)は日本の商社マン。今は愛する妻を亡くして独り身。娘の緑(北乃きい)はマレーシアでボランティア活動に行っていて、結婚するという。
片倉は娘を愛するあまり、娘の結婚にはいつも反対。それを知っている娘は結婚式には来ないでくれという。
そういう訳にも行かない片倉は出張にかこつけてマレーシアにやってくる。クアラルンプールに向かう飛行機は嵐のためマレーシアの僻地の空港に降ろされてしまう。
言葉も通じず、ついでにスリに財布をすられた。途方に暮れる片倉の前にメリー(フー・ビン)というトラック運転手が現れる。聞けば緑の知り合いらしい。
ケンとメリーの珍道中はこうして始まる。


深作健太監督作品。
「僕たちは世界を変えることができない」の以来、ファンになった深作監督なので新作だから観た。
実は私は竹中直人が苦手なのだ。過剰な演技、というかいつもやりすぎ感が目に付き、「竹中直人が出てくると観たくなくなる」という気分なので、不安はあったがとりあえず観た。

やっぱり相変わらず嫌いなのだが、話が面白いので、退屈せずに観ることが出来た。
トラックが疾走するカットを観ていて、途中気がついたのだが、これは往年の「トラック野郎」シリーズなのだな。
さらに東南アジア、ボランティアとなると「僕セカ」にも通じて深作健太だなあと思わせる。

「トラック野郎」というのは私が感じただけじゃなく、パンフレットにも書いてあったから、あながち私の思いこみではないようだ。
ドライブインで仲間と酒を飲んだり、きっぷのいいママが出てくるあたりは定番の要素だと思う。

そして「人助けの為に寄り道をする」というのが、お決まりの展開。自分の村に薬を運ぶつもりが悪い運転手にだまされてお金を取られて途方にくれる少女を助けるという展開。そしてまた一難去って今度は警察に追いかけられる。
ここで何で警察に追いかけられるのかよく解らなかったが、どうやら違法改造(書き忘れたがトラックは「小龍号
という)とスピード違反だそうだ。
日本だけじゃなく、向こうでも違法改造ってあるんだ。
車検もなにも無くて野放しなのかと思っていた。

そして実は緑の結婚相手はメリーだったと判明。
いろいろあって結婚式に間に合うか?がクライマックス。
「どうして来たの?!」と問う娘に
「母さんがつかったブーケを使ってもらいたくて」と言って鞄からブーケを取り出すシーンはうるっと来た。

主演が竹中直人でなかったら、私としてはもっと面白かったと思うが、それは仕方ないか。
最後に、RCサクセションの曲がケンとメリーの心をつなぐキーになっている。
RCサクセションというのがやっぱり深作健太っぽい。

なお作品の評価とは関係ないが、本作は本来はシネスコ。
ミラノ3ではブルーレイ上映。機材の都合でビスタサイズの画面にシネスコの映像を写す。だから上下が残った状態での上映。なにがなんだか解らん。



(このページのトップへ)




風俗行ったら人生変わったwww


日時 2013年11月9日12:50〜
場所 新宿ミラノ3
監督 飯塚健

(詳しくはムービーウォーカー・データベースで)


遼太郎(満島真之介)は29歳。引きこもりやニートだった時代もあって未だに童貞。証明書用写真を撮るだけでも緊張するような男。
そんな自分に嫌気がさし、「絶対こんなかわいい子がいるはずない」と思ったがテレクラに電話してみた。ホテルにやってきたのはかよ(佐々木希)。かわいい!
恋という感情を初めて味わう遼太郎。
しかし彼女に会うには金がかかる。貯金もだんだん減ってきたそんな時。


本作は「1000taku」という名前でネット配信(11月6日かららしい)と劇場公開(11月9日公開)とどちらでも観ても1000円という価格設定。しかも公式HPからツイッターやFacebookで予告編のリンクをシェアして(ツイートして)その画面を見せると500円で鑑賞できるという試み。
はっきり言って劇場興行収入は捨てている。
500円で何割の人が観るのかよく解らないが、これでは劇場側から保証を求められても仕方あるまい。
109シネマズが主体で動いているのかな?
今回は4作品が対象だが、製作規模(予算)はいわゆるVシネ並み。これからはネット配信も多くなるだろうし、いろいろと試行錯誤しているのだろう。
好きな俳優や監督、観たい題材が重なり、上映時間も都合よく4作品中、3作品を観た。(あと1本は「完全なる飼育」シリーズの新作)

という前置きはこれくらいにして本作の話。
満島真之介の初主演作。本作が一番期待されているらしく、他の作品は1日1回上映だが、これは2回上映される。
実際3本のうち一番混んでいた(といっても満席ではないが)。真之介ファンなのか女性が多い。

元ネタは2ちゃんねるに投稿されたものを書籍化したらしい。ということは「電車男」と同じか。
満島真之介が童貞演技でやたら変な顔をする。コメディとして盛り上げようとしてるのは解るが、私は変な顔をして笑いを取ろうというのは好きではないので、かえって白ける。

さらにデリヘル頼んでも彼女にふれることも出来ずに膝枕をしてもらって喜んでいるだけ。
バカかお前は!
ここでもう映画から冷める私。
かよに会うにはお金を使うので、貯金がどんどん減って行く。困っているとかよの方から「今度は外で会いましょう」とメルアドを交換する。
ありえねーよ!

実際あった話なのかも知れないが、普通はお客さんとして行ってるだけではプライベートのつきあいはないと思う。マクドナルドのバイトでもなかなか無いぞ。
そういうのは店から禁じられてると思うし。
これ観て童貞の高校生が「風俗の女の子とメルアド交換出来るんだ」と思ったら教育上よくない。
(実際に制服姿の男が数人いた)

風俗の子と仲良くなるんだったら、偶然外であって何か困ってるところを助けてあげたとかそういう必然が必要だ。
または仕事でなくて知り合うとか。
そういう描写がピンク映画の方がしっかりしている。
(池島ゆたかの「悦楽 とろけ乳」とかよかったなあ)

で、このかよと突然連絡が取れなくなり、実は彼女は以前つきあっていた男がギャンブル狂のDV男でどうしようもない奴だが、そんな男に「あたしが何とかしてあげなきゃ」という思考パターンが働くタイプで困っていたという展開。
男とは別れさせたが、100万円の高利の借金が残った、という訳。
それで借金取りが自宅に保管している契約書を破棄させるという安っぽい「スパイ大作戦」のような展開。
ますますあり得ない展開で、私はどんどん引いていった。

だいたいねえ、風俗嬢が主人公で男も女も裸にならないってそんなのあり得ないだろう。
私にしてみればとにかく白けるばかりの展開でついて行けなかった。
満島真之介主演でなきゃ観なかったけど。

あと後半の「スパイ大作戦」の計画を立てる仲間として松坂桃李出演。



(このページのトップへ)




自分の事ばかりで情けなくなるよ


日時 2013年11月8日21:00〜
場所 ユーロスペース2
監督 松居大悟

(詳しくはムービーウォーカー・データベースで)


クリープハイプというロックバンドのPV(DVDに短編映画として収録されたもの)の2本にDVDには収録されていたなかった(らしい)1本と新作を加えて劇場用映画のフォーマットにしての公開。
従って基本、クリープハイプのファンが客層の中心らしい。
私自身はクリープハイプというバンドを全く知らない。今日初めて観た。フロントマン(リーダーとは違うのかな?)の尾崎世界観はなんだかお笑いタレントのふかわりょうに似ていると思った。

じゃあそんな興味もないバンドのPVの延長映画を観にいったかというと、池松壮亮が出演しているから。

「イノチミジカシコイセヨオトメ」
ピンサロ嬢をしているクミコ(安堂聖)は先日同棲していた男に逃げられたばかり。そんな時に実家から電話。母が亡くなった。その電話の後、出ていった男・ヒデキ(尾上寛之)が忘れ物を取りにくる。ヒデキに「やり直そう」と言いかけるクミコだが、タイミングがつかめない。

と、ここでヒデキの方が「借りてた金、返すよ」と10万円ぐらいのお金を返す。このシーンはよかった。
この金を返す、という行動が完全に「縁を切る」を宣言されたことが明白で、そうは言わないけどそれが伝わるシーンで好きです。

結局、母の通夜の日、お店にも言い出すことが出来ず、店に出勤してしまうクミコ。

「あたしの窓」
OLのミエ。実は課長不倫している。今日は大ファンのロックバンド、クリープハイプのメジャーデビュー後の初ライブだ。午後休を申し出るが「え〜この仕事今日中にたのむよ」と課長に言われ、仕方なく。他にも同僚から仕事を頼まれる。イヤだと思いつつ引き受けてしまう。
結局ライブはアンコールだけ参加。
ミエはなんだか泣けてきた。

僕自身も仕事で映画に行けなかったりしたこともあるので、仕事が終わらないイライラはよく解る。実によく解る。あるライブの30分遅れぐらいで観たこともあったなあ。そういう思いって、みんなしてるんだな、と実感できた。

「おやすみ泣き声、さよなら歌姫」
ツダ(大東駿介)はオタクで、引退した歌姫に恋している。今までの2本は20分、30分の短編映画だったが、これは10分ぐらいの一番の短編。
想いが届かないもどかしさがあった。

「傷つける」
空き地におかれた廃車に住んでいるリクオ(池松壮亮)とユーナ(黒川芽以)。ユーナはなぜか言葉を発しない。
だらだらとした生活に嫌気がさしているがどうにもならないリクオ。
やがてユーナの妊娠が発覚する。

やっと出た池松壮亮の主演作だ。
池松壮亮はもちろん「鉄人28号」も「ラストサムライ」も観ている。「ダイブ!!」も観ているが、それほどとは思っていなかった。
たぶん去年から今年にかけての「日本生命」でのCMで新入社員役を演じていたが、そのスーツ姿が妙によかったのだ。
それから気になる存在になって今年は「横道世之介」などで助演を果たしている。

この映画では髪はぼさぼさ、無精髭、服はジーパンにパーカー、それも全然洗濯をしていない不潔な感じ。
それでも妙に雰囲気があってかっこいい。

正直、女の方が口が利けない(しゃべれない)というのが自主映画にありがちな設定でいやになったし、池松が画面に向かって時々「だからあの時は・・・」と一人語りをしてそれが警察の取り調べと思わせておいて、ラストで彼は病院に入れられていて(精神科らしい)、彼は壁に向かって話していただけ、というオチもありきたりで気に入らない。

本作では今までの3本で主演をした登場人物も登場し、4本の関連性を出している。

でも基本この映画はクリープハイプのファン向けの映画の要素が強いから、ファンでない私にはちょっとつらい内容なだった。



(このページのトップへ)




エアポート2001


日時 2013年11月5日
場所 DVD
監督 アルマンド・マストロヤンニ
製作 2000年

(詳しくはムービーウォーカー・データベースで)


オリンピックを控えたシドニー。一組の新婚旅行のカップ
ルをつける男がいた。男、フィリップ・ディーマンは妻クレアに離婚され、その新しい夫との新婚旅行を付け回していたのだ。
フィリップには計画があった。クレアたちが帰国に使うロサンゼルス行きの飛行機に爆弾を仕掛けたのだ。そして乗客もろとも殺してしまおうと。
爆弾は飛行機に仕掛けられ、その時限爆弾が作動し始める。10時間後に爆発の予定だ。
フィリップは航空会社に電話をし、爆弾のことを話す。
爆発まで1時間、しかしロスまではまだ2時間かかる。
爆弾を何とか解体するしかない。
ロス警察の爆弾処理係と電話で話ながら、機長のジェフ・ブレスコット(ジャック・ワグナー)は立ち向かっていく。

新橋文化劇場に今年になってからよく行くが、地下鉄を降りてからの地下道にワゴンのDVD店がある。
格安DVDばかりを売ってるのだが、ここのセール品で見かけたのがこれ。
こういう格安DVDでユニバーサルの「エアポート」シリーズに自称続いているDVDはよく見かけたが、いかにもB級感満載でちょっと手を出せずにいた。
しかしこいつはジャケット裏の紹介で、「高度が下がると爆破する爆弾が仕掛けられた!飛び続けることも降りることも出来ない」と書いてあったのに惹かれた。
いや〜「新幹線大爆破」みたいじゃないですか。
買ったけど観てないDVDが山のようにある中、いくら500円でも買うのは迷ったが、結局買った。

一言で言うと損はしなかった。そこそこ面白いのだ。
メニュー画面もなく、字幕のONOFFも出来ないDVDで、しかも画面は4:3。
どうやらアメリカのテレビムービーのようだ。時々話が盛り上がった時、フェードアウトするので、ここはCMタイム用なのだろう。

でも正直、最初は時限爆弾だったので、「あれ?」と思った。中身が違うのかと思ったほどだ。
しかし爆弾以外の部分は紹介文の通り。
「おいおいいくら何でもそりゃ無理だろ?」という私の疑問も何のその、機長はロスの爆弾処理係の電話の指示だけで爆弾の時限装置を止めるのに成功する。
爆弾に素人の話だけで指示が出来ちゃう爆弾処理係は天才だ!

一方、犯人の方が電話をかけてきて「女房を電話に出せ」と言って飛行機無線で話すことに。ここでだらだら話してるからあっさり逆探知されてしまい、警察に追われる。
しかし、ビルの上に追いつめられ、刑事の努力もむなしく犯人は死亡。
犯人が捨てた回路図から、実は時限装置だけでなく、気圧の変化で爆発する仕掛けだということが解る。
しかも爆発物は小さいが、爆発することによってサリン以上の毒ガスが蒔かれるのだ!(ここで「東京の地下鉄の事件で使われたものの数倍の毒性だ」と説明される)
「おお、やっと出てきたよ!いやーだまされたかと思った」とほっとしたが、それにしてもジャケットはやや詐欺だ。
それにネタバレもしている。
私だったら「ロス行きのジャンボに時限爆弾が仕掛けられる。機長は解体できるのか?さらに犯人はもう一つのトラップ<罠>を仕掛けていた!」ぐらいにするね。

結局爆発は免れないということで、飛行機は着陸途中で爆弾は爆発。ガスが漏れ始めたが、乗り合わせていた元機長の男が(機長が爆弾解体中は変わって操縦席に座っていた)その爆弾を機内のリフトに入れて少しでも機内へのガスの充満を遅らせる。当然死ぬ。

結局飛行機は無事着陸し、乗客も無事脱出。
めでたしとなるが、貨物室に行ったガスはどうなったかな?貨物室からもいずれはガスが漏れ出すだろうに。

という突っ込みどころはあるものの、総じて面白かった。
飛行機事故、爆弾処理、高いところから落ちそうになる犯人、最後の自己犠牲など、娯楽映画の面白くなる要素がちりばめられていて、しかも飛行機は爆発しないから、低予算。(でも架空の航空会社のペイントをした747が飛んでいるカットはどうやったんだろう?CGじゃないと思うし)
娯楽映画の模範解答のような脚本だ。

でも王道すぎて個性がないのも事実。それとスター不在はやっぱり寂しい。スターが出てればもっと印象は変わったかも?
そこが実に惜しい。



(このページのトップへ)




刺青一代


日時 2013年11月3日19:50〜
場所 ザ・グリソムギャング
監督 鈴木清順
製作 昭和40年(1965年)

(詳しくはムービーウォーカー・データベースで)


昭和初期。村上鉄太郎(高橋英樹)はやくざものだが、弟の健次(花ノ本寿)はまじめな美学生。鉄太郎は組同士のいさかいに健次を巻き込んでしまい、健次が偶然にも敵の親分を殺してしまう。自首するという健次を引き留め、満州に逃げようと言う鉄太郎。
裏日本まで逃げてきたが、満州に渡る船がある、ついては300円をといわれて酒場の男(小松方正)に金を出したが、あっさりだまされてしまう。
仕方なくその地の土建屋木下組で働くことに。親分(山内明)はやくざではなく、まじめに土建屋としてやっていこうとがんばっていた。
しかし地元のやくざ赤松(河津清三郎)がそれを許さない。
やがては赤松に鉄太郎がお尋ねものと知られることとなる。


グリソムギャング閉館記念番組の最後の作品。あともう1本は「善き人のためのソナタ」だが、こちらは前に観ているので、パス。閉館記念だからといって特に支配人が思い入れがある、という訳ではないらしい。

鈴木清順作品だが、あらすじは普通のヤクザ映画。
東映ほど任侠色が強くないが、似たようなもの。高橋英樹主演で特に言うことはなし。

でも最後に赤松組に鉄太郎が殴り込みをかけるのだが、ここで、赤松の屋敷のふすまが真っ赤になったり、真っ青になったり、真っ黄色になったりの色彩で、清順らしい。
で、高橋英樹をガラスの上に載せて完全に真下からのアングルで撮ったりするカットも清順らしい。

そういうラストの清順らしい鮮やかなカットを覗けば、普通の任侠映画で、退屈した。
途中、水車のある水路がよく出てくるのだが、やっぱり後に動いているものがあると、画がいいですね。

個人的に見所だったのは、高橋英樹の弟役が花ノ本寿!
あの「怪奇大作戦〜呪いの壷」の犯人役だ。
今年は9月に若松孝二の「恐るべき遺産」でも観たが、あの花ノ本寿の姿を観られたのは実にお得だった。

あと出演者では木下組の親分の娘に和泉雅子。この娘は花ノ本寿に惚れるのだが、花ノ本寿が惚れるのは親分の妻(つまりは和泉雅子のお母さんのほう)。随分熟女専なんですねえ。
早くに親を亡くしてた設定なので、マザコンだったのかも知れません。

あとは、人夫頭に高品格、人夫仲間で途中で裏切る奴に野呂圭介。清順作品にしては少し針の振れ方が足りないな、と思った1本。



(このページのトップへ)




人類資金


日時 2013年11月3日12:40〜
場所 新宿ピカデリー・スクリーン7
監督 阪本順治

(詳しくはムービーウォーカー・データベースで)


M資金。それは終戦時に日本が保有していた金を元にした莫大な隠し資金と言われているもの。戦後、ずっとその存在は噂されており、それにまつわる詐欺事件も絶えない。
真舟雄一(佐藤浩市)もそんなM資金詐欺を繰り返す一人だった。ある日、見知らぬ石(森山未來)という男につれていかれ、本庄(岸部一徳)やM(香取慎吾)という謎の男たちに引き合わされる。
彼らは真舟に「M資金を盗み出してほしい」という。「報酬は50億」
「やっぱりM資金は存在するのか」と確信する真舟。
防衛庁の謎の女・高遠(観月ありさ)、M資金の管理団体の理事長、笹倉暢彦(仲代達矢)らを相手の大勝負だ。


「ローレライ」「亡国のイージス」の福井晴敏原作。といっても原作が先にあるのではなく、「亡国のイージス」で組んだ阪本順治監督が「M資金を題材にした映画を作りたいので、一緒にやりましょう」という訳で原作を作っていったようだ。

「資本主義終了!」とかすごいキャッチコピーが並ぶ。
僕自身が最近の金融というものに疑問を感じていた。
当初は「お金のある人が技術や知恵はあるけどお金のない人に資金を提供して経済や技術、サービスを発展させていく」という場である筈だった金融や株式というものが、そういう理想からはかけ離れ、金だけが動き、それに直接関係ない人間までも振り回される現実。
それに対して何か動きを起こすべきだという気持ちがある。

だからそれに対して福井晴敏がどう答えを出したかに興味があったが期待はずれ。

ゆっくり書くけど、真舟に誘いをかけて来たのは言ってみればM資金管理団体の反乱軍。理事長の笹倉の父は初代のM資金の管理者。しかし「日本の復興に役立てる」はずのM資金がいつしか「単なるマネーゲームの元手」に成り下がり、「世界には携帯は50億台も契約されているのに7割の人が電話をかけたこともない」という格差を何とかしたいという気持ちから動いた人々。

で、M資金をサイバー攻撃で移動させようとしたんだけど、失敗。そしてついに詐欺をしようということになった。ロシアでオダギリ・ジョーを相手に一芝居。
ここが前半の見せ場な筈だが、わりとあっさり成功し終わる。まあ昔のと違って今はすべてオンライン上のやりとりだからお金というブツが動くわけでなく、映画としてやりにくい。

香取慎吾が首謀者で実は笹倉の息子。カペラ共和国というアジアの発展途上国と出会い、その国を救おうと国民の教育の為にPDAを配る。(スマートフォンを丈夫にしたようなもの)
いや貧富の差をなくすために国民の教育が大事というのは解るがPDA配っただけで変わるのかね?

クライマックスではカペラの国連での支持を取り付けようと国連会議場で一大演説をする!というもの。
正直、がっかり。
予告編で森山未來がなにやら手に機械を持って宣言してるカットが出てきたので「国連会議場を爆破する。起爆装置はここにある」と言っていると思っていたのだな。
そういう画的なものがないと映画としては面白くない。

もともと福井晴敏作品は「現在の体制をどこかの時点でぶっ壊して日本を、世界を作り替える!」と狂信的なテロリストがいて、そうはさせないと戦う主人公、というパターンが多い。
だからてっきりそうなると思いこんでしまったのだよ。
それに今回の主人公は壊す方だしね。

結局資本主義をぶちこわすではなく、「発展途上国の人々を教育しましょう」というのが福井の答えか。
パンフレットで「じゃあすぐになにをやればいいのかが解れば僕はここにいない(笑)」という主旨のことを言ってるけど、それじゃあなあ。

あと香取慎吾がダメダメ。
全く役に似合わず、ミスキャストとしかいいようがない。
森山未來は国連での長い英語のせりふもこなし、立派なものである。



(このページのトップへ)




潔く柔く


日時 2013年11月2日20:15〜
場所 TOHOシネマズ渋谷・スクリーン4
監督 新城毅彦 

(詳しくはムービーウォーカー・データベースで)


瀬戸カンナ(長澤まさみ)は幼なじみのハルタ(高良健吾)と同じ高校になり、新しい友達マヤ(中村蒼)などといつも一緒だった。微妙な4人の関係だったが、マヤに「二人だけで花火大会に行こう」と誘われ、一緒に行く。
しかしハルタもカンナのことが好きだった。バイトの帰り、ハルタはカンナに「行くよ」とメールした瞬間に交通事故に会って即死した。そのことがショックでカンナは恋愛に対し臆病になっていた。
8年後、今は映画宣伝会社で働くカンナは仕事で雑誌の編集者、赤沢録(岡田将生)と出会う。
ずけずけと物をいう禄だったが、カンナはいつしか彼に惹かれていく。しかし禄もまた、小学生の頃、自分のことを好きな女の子を自分が原因で死なせてしまい、心に罪悪感を持っていた。


岡田将生と長澤まさみの共演作。
長澤まさみって仕事には恵まれているがどうも人気の実感もないし、演技がいいという気もしない。

はっきり言って話が重く、暗い。
一人が生き残ったつらさを抱えているだけならまだしも、男女ともに子供の頃に友人を自分が原因で死なせてしまった、という重荷を抱えている。

でも長澤まさみの方は、ハルタは自転車を運転しながらメールをするというはっきり言って「お前が悪い。運転手の方が被害者」と言いたくなるようなことが原因。
自分がハルタを裏切って他の男(しかも親友)とデーとしていたという後ろめたさと事故が混乱している。
でもまあそれをちゃんと説明できなかった点では後味は悪いというのは解るけど。

で、岡田将生の方はまだ解る。
自分のことを好きでいてくれる女の子がいて(小2で惚れたはれたとはませたガキだ)、岡田将生の方は男の子特有の照れもあって、ついつれなくしてしまい、遠足でよってくる彼女を「うるさい!」と突き飛ばしてしまったら道路に飛び出してしまい、そこへ車が、という訳。
これは岡田将生の重荷はまだ解る。彼女は特に悪くないから。男との距離の取り方なんて子供にはまだ解るまい。

長澤まさみが大人になって大学卒業して入った会社が映画宣伝会社。
映画ファンからすると「は?」ってなものだ。
長澤まさみが映画好きだったという説明は一切なし。
しかも自分が宣伝を担当する映画をちゃんと観ていなくて、そこを岡田将生に突っ込まれて家で内覧用DVDで観る。そして「やっぱり面白くないかあ〜」ってそれはないだろう。ちゃんと仕事しましょう!

岡田将生の死んだ同級生の姉の子供が今幼稚園で言葉をまったく話さないという話があって、岡田将生が訪ねていくと初めてしゃべるという設定。
それって本筋とどうつながるのかよく解らない。

そんやかんやでとにかく話が重く暗すぎて恋愛映画としてはつらかった。
一応ハッピーエンドだが、それにしても重い。
バッドエンドだが、なにやらさわやかな後味を残す「陽だまりの彼女」とは正反対の恋愛映画だった。
岡田将生の2枚目ぶりは楽しめたからいやになることはなかったですが。

でもあの「自分だけが生き残った後ろめたさ」というのは311から来てるのでは?という意見をある人から聞いた。そうなのかも知れない。



(このページのトップへ)




わいせつ性学園 おじさまと私


日時 2013年11月2日16:30〜
場所 新橋文化劇場
監督 友松直之

(詳しくはムービーウォーカー・データベースで)


上野(野上正義)は70歳。男性の平均寿命78歳だからあと数年の命だ。ある日、散歩の途中でまりか(水無月レイナ)とケンジが別れ話でもめているところに遭遇。
なんとかケンジを追払ったまりかだったが、持病のパニック障害で気分が悪くなり、上野の家で休むことに。
上野にとってはまるで孫娘のような歳のまりかだったが、聞くとはなしにまりかの生い立ちを聞いていくうち、二人の間に信頼関係が生まれていく。


友末直之監督作品。
「囚われの淫獣」はピンク映画らしからぬ映画で面白かったのだが、その後、ゲイピンクを見てちょっとマイナスな印象のある監督。
基本的にラストがペシミスティックなのだな。

前半は上野(妻は数年前に死別)には同居している娘あけみがいてその姉は家を出ているが、彼女たちがテニスの先生や会社の部下とセックスしてるシーンをカットバックでつなぎピンク映画らしい濡れ場のサービス。

後半はあけみに見つかって「何?財産ねらい?」と追い出されたまりかを追いかけた上野が、公園でまりかを発見し、その生い立ちを聞く。
もともと私生児で母は別の男と暮らし始めたが、その男が自分も犯すようになり、母親にもばれて家出、その後は風俗を転々とし、ケンジはソープの従業員として知り合った。セックスがうまくて離れられなくなったが、それも2年もすれば冷めてくる。しかしケンジは別れたがらない、というわけで出会いのシーンにつながる。

ケンジと別れたいまりかに対し、上野はケンジを呼び出す。ナイフを出して脅すケンジ。そのナイフを奪って逆に自分の腕を刺し、その迫力でケンジを別れさす。
まりかは自分で住むところを借りて上野の家から出ていく。
その前の晩に「いままでお世話になったから」と上野と体を重ねるまりか。
しかし新しい生活も落ち着いて上野を訪ねる日、子供を交通事故から救おうとしてまりかは死んでしまう。

ここでまりかは幸せになって別のいい男と暮らしてもいいなじゃないかと思うのだが、ここでまりかを殺してしまうのが、友松直之なのだな。

あと野上正義がたばこ好きで「体に悪いよ」と言われるのだが、「確かにたばこは肺ガンにまるが、たばこを吸ってる人の方がアルツハイマーになりにくいというデータもあるんだ。たばこを吸って肺ガンで死ぬか、アルツハイマーになっても生きていくか。案外たばこを選ぶ人も多いと思うよ。ただ生きていればいいってもんじゃない」というせりふは印象に残る。(でもホントかな)

快作。



(このページのトップへ)




人妻娼婦 もっと恥ずかしめて


日時 2013年11月2日14:20〜
場所 新橋文化劇場
監督 池島ゆたか

(詳しくはムービーウォーカー・データベースで)


医師の夫と結婚した弥生(中森玲子)は子供の頃に家の修繕に来た大工に犯されて以来、好きでもない男に犯されて感じてしまった自分がいやになったのか、夫の夜の誘いを断り続けていた。
そんな頃、夫の友人から「昼顔」というお金に困らないような主婦が売春をしているバーの存在を聞く。
好奇心に負けられず、そのバーを恐る恐る訪ねる弥生。
そこには京子(倖田李梨)という優しいママがいて「試してみる?」と早速お客を紹介された。
弥生はしだいにその世界に引き込まれていく。
しかしママの息子や「昼顔」を紹介してくれた夫の友人が店に現れ、平穏な日々が崩れていく。


池島ゆたか監督作品。
今週の新橋ロマンでは友松直之監督の「囚われの淫獣」が上映され、それももう1回観たい気もしたし、池島作品が一緒ならと観にいった。

主役の中森玲子がまず巨乳。冒頭、男に縛られ責められる弥生が登場。弥生の妄想なのだが、映画としてのつかみはインパクトありますね。
「昼顔」になってからは、なかみつせいじのどS男性が登場。ここでも絡みの見せ場。

京子ママには実は暴力的な息子がいて、それが訪ねてくる。(倖田梨李にしては子供が大きすぎる気もするが)
この息子が弥生を気に入ってしまい、つきまとう。
そして弥生をつけ、家を突き止め、嫉妬して夫を襲う。
夫は命は助かったが、目が見えなくなり、しかも車いす生活に。

自分のせいでこうなったと自責の念にかられる弥生。
映画は奇跡的に夫が直って夫とセックスする弥生が描かれる。
しかしそこへ夫の友人が訪ねてくると、目の見えない夫を押し倒し、そこにまたがる弥生の姿があった。
なにやら哀しみの入り混じった余韻を残す映画だった。
脚本は小松公典。



(このページのトップへ)




遊星よりの物体X 


日時 2013年11月1日20:05〜
場所 シネマヴェーラ渋谷
監督 クリスチャン・ネイビー
製作 1951年(昭和26年)

(詳しくはムービーウォーカー・データベースで)


アンカレッジの空軍基地では極地の研究所から何か異変が起こったと連絡を受け、ヘンドリー大尉(ケネス・トビー)や新聞記者が調査に向かった。
所長のキャリントン博士(ロバート・コーンスウェイト)の話では50マイルほど先に何かが落ちたらしい。
早速、その現場に向かう彼ら。
そこには見たことのない金属で出来た何かが氷に埋もれていた。
それを取りだそうと氷を爆破する彼らだったが、その飛行物体と思われるものまで爆破してしまう。
しかし乗員だった者が氷漬けになっているのを発見。これをとりあえず研究所に持ち帰る。
冷凍保存しながら基地指令の指示を仰ぐヘンドリー大尉。
だがその氷の固まりの見張りをしている者が、誤って氷を溶かしてしまう。
かくして人類初の宇宙人が蘇生した!


シネマヴェーラでの「エドガー・ウルマー特集」の1本として上映。
なお製作がハワード・ホークスだが、この映画はほとんどがホークスが監督したらしいと言われている。
クレジットされている監督のクリスチャン・ネイビーはこれが第1回監督だったらしく、ホークスが見かねたのだろうか?

この映画は80年代ぐらいにレンタルビデオで見た記憶があって、そのときの印象は「『ウルトラQ』みたいな話だなあ」と思った。でも話の細部はすっかり忘れてたけど。

しかしこの映画に登場するヘンドリー大尉以下の軍人はマヌケだなあ。
最初の氷の爆破でその空飛ぶ円盤まで爆破してしまうマヌケぶり。
低予算で円盤全体をミニチュアにしろ製作する予算がなかっただけかも知れないけど。

さらに氷漬けの宇宙人を基地に持ってかえって保管するのはいいのだが、冷凍場所がないので、一部屋の窓を破って外気と同じにする。見張りを立てたが見張りの防寒用に用意した電気毛布を「宇宙人の目が怖いから」という理由で電気毛布をかけてしまい、しばらく背を向けていたら蘇生したというもの。
はっきり言ってバカである。

宇宙人というのがただの大男にちょっと装飾をこらした中学生の学芸会レベルなのがご愛敬。
しかしその後の展開はいい。

犬を食いちぎって外に逃げ、野菜栽培室から入ろうとする。
大尉たちがその野菜室の扉を開けた途端にその場に宇宙人が立っているというショッキング映像には本当にびっくりした。

そしてこの宇宙人は地球の植物が進化した生物らしい。
宇宙人が犬に食いちぎられた腕を回収しそれに血液の養分を与えると発芽する。それがピクンピクンと動くシーンは実に怖い。
人間にも怖い人はいて、「人類の為に殺すべきだ」と主張する大尉と「研究の為に生かすべきだ」と主張するキャリントン博士。
大尉も乱暴だが、博士ももはや狂気に達していて、この辺の人間ドラマは見応えがある。

大尉たちは灯油で焼却作戦に出るが、まだ不十分。
そして今度は感電死させる作戦に、とありものを使って何とか撃退しようとするところが、「ウルトラQ」を連想させたのだろう。(あと極地が舞台ということで「ペギラが来た!」とか)

ラスト、新聞記者が無線でレポートするのだが、「全世界に警告したい!空に注意しろ!」って叫ぶ。
時は冷戦時代、明らかにソ連を意識してるんでしょうねえ。
キャリントン博士は宇宙人と話し合いを試みるがあっさり失敗しちゃうし。
「北から来る侵入者は話し合いなど出来ない乱暴者。みんなで警戒しよう」という意図がミエミエだが、だからといって「閉ざされた環境での異生物との戦い」というモチーフはその後のホラーSFに与えた影響は大きいと思う。



(このページのトップへ)