2002年1月

地獄の饗宴
大菩薩峠 独立愚連隊西へ 血と砂 赤毛
結婚のすべて スパイ・ゲーム 江分利満氏の優雅な生活 暗黒街の対決
どぶ鼠作戦 座頭市と用心棒 独立愚連隊 加藤隼戦闘隊
孫悟空(前・後編) 乱菊物語 白夫人の妖恋 ゲンと不動明王
ゼロファイター・大空戦 大冒険 大盗賊 UFO少年アブドラジャン

地獄の饗宴


日時 2002年1月27日16:40〜
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 岡本喜八
昭和36年9月29日封切り

「地獄の饗宴」については名画座に掲載しました。


大菩薩峠


日時 2002年1月27日 14:25〜
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 岡本喜八
昭和41年2月25日封切り

今回の岡本喜八特集上映作品、タイムテーブルはこちら。
(但し各回定員入れ替え制ですので、一日に2、3作品上映する日が
ありますが、1作品毎に入場料は別になります。ご注意!)

最初に断っておくが僕は時代劇には疎い。
もちろん時代小説にも疎い。
だからこの「大菩薩峠」が有名な小説で市川雷蔵などで
何度も映画化されてるのも知っているが、ストーリーは全く知らなかった。
だから以下記する事は時代劇をよく知ってる人からすると
「アホか!」の連続だということを始めにお断りしておく。


はあ、てっきり最後は加山雄三達と机竜之介(仲代達矢)の決闘に
なるのかと思っていたら違うのですね。

邪剣の使い手、机竜之介。
ある試合で負けてくれと相手の妻や老師から頼まれたにも関わらず
机は試合で負けるどころか相手を殺してしまう。
八百長試合を受けなかったので「竜之介って正しいじゃん」などと
思ってしまったために、オープニングの大菩薩峠で意味もなく
巡礼の老人、藤原釜足を殺してしまったことと矛盾してしまい
混乱してしまう。

そして先のの試合で殺された者の弟(加山雄三)と藤原釜足の孫(内藤洋子)が
仲良くなり、孫娘の親代わりの西村晃も加わりあだ討ちを計画する。
それでいよいよ対決かと思われたが、また裏切られてしまう。

机竜之介は佐藤慶に誘われ新撰組の臨時隊員みたいなものになっているのだが、
新撰組の内部分裂から殺されるはめになる。
竜之介もやがて自分が殺した藤原釜足の霊や加山の先生の剣の達人(三船敏郎)
の記憶に脅かされ、やがて正気を失ってしまう。
新撰組とのバッタバッタの殺陣の中、仲代達矢のストップモーションに
突然「終」の文字が!

は!?外で待ち伏せしてる加山雄三と西村晃はどうなるんだ?
西村「遅いですね」
加山「あせってはいかん。こういうときこそ平常心を保たねばいけないんだ」
西村「それにしても・・・あっ、火事のようですぜ」
加山「ほんとだ!しかもあれは机たちが入った店ではないか!一体どうなってるんだ?」
などという会話でもしていたのだろうか?

資料を読むとこの後続編が企画されていたらしいが、編集中にその企画は
なくなったため、このようなラストになったらしい。

それにしても僕にとってはブツ切れのラストの不思議な映画だった。
ほんとはどんな話だったのだろう。
市川雷蔵版でも見てみなくては。


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独立愚連隊西へ


日時 2002年1月26日19:05〜
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 岡本喜八
昭和35年10月30日封切り

今回の岡本喜八特集上映作品、タイムテーブルはこちら。
(但し各回定員入れ替え制ですので、一日に2、3作品上映する日が
ありますが、1作品毎に入場料は別になります。ご注意!)

「独立愚連隊」シリーズ第2作。
第2作といっても1作目とは内容的につながりはない。
少数隊による特別作戦という後の「どぶ鼠作戦」に続く
パターンはこの作品から始まったようだ。

今回は前作と違って主役は加山雄三に奪われ、佐藤允は副隊長の役どころ。
1月14日の佐藤允氏のトークショーの中で「加山君とはケンカしました」
というのもなんとなく解る。
せっかく自分が主役で成功させた「独立愚連隊」のシリーズ2作目の主役が
奪われては面白くあるまい。
(第3作「どぶ鼠作戦」では主役はまた佐藤允に戻っている)

今回は全員戦死したことになっていてあちこち最前線を転属させられる
左文字隊による軍旗奪回作戦。

岡本映画おなじみの個性的なメンバーによる痛快なアクション映画だ。

特に私の好きな堺左千夫の出演シーンが多いのが嬉しい。
(最初の方のニセ参謀に扮するとこなど爆笑ものだ)
また敵のスパイ(途中で観客には身分を明かす)の中丸忠雄、
軍旗奪回の手柄を独り占めしようとたくらむ腹黒い曹長(山本廉)
戦場で別れた看護婦(水野久美)を探す衛生兵(江原達怡)
時々ひょっこり現れて左文字小隊を助ける早川(中谷一郎)
なんだかとぼけた兵隊(中山豊)、
そして忘れちゃいけない八路軍将校にフランキー堺。
(なんだかんだで結局日本軍との交戦を避けるのだ)

また途中で銃身を切り落とした歩兵小銃が最後に活きてきたり
伏線もさすが。
笑いのポイントでは「大丈夫だ。オレが責任をもつ」と加山雄三が言ったため
次の戦闘シーンで中丸忠雄が悠然とタバコを吸っているところが特に笑った。
「よく悠然としてられるな」と加山。中丸「なに責任もってくれるって言うから
安心してたんだ」
(この後「オレが責任もつ」のフレーズはたびたび登場する。
こういった同じセリフを違う人、違う状況で使って笑いをとるのは
少し違うが「暗黒街の対決」の沢村いき雄の登場シーンにも使われた)

また自決しようとする久保明の将校に「自決しないでこの娘(中国娘)と生きろ」
と種を与える加山雄三のシーンは「何があってもまず生き抜く」という
岡本監督の思想が貫かれている。

岡本喜八「愚連隊」シリーズ、3作見たがこの「西へ」が一番面白かった。


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血と砂


日時 2002年1月26日16:40〜
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 岡本喜八
昭和40年9月18日封切り

今回の岡本喜八特集上映作品、タイムテーブルはこちら。
(但し各回定員入れ替え制ですので、一日に2、3作品上映する日が
ありますが、1作品毎に入場料は別になります。ご注意!)

「独立愚連隊」を見た後に見るとこれは確実に「独立愚連隊」の
リメークだ。

中国戦線、営倉の軍法会議おくりの兵隊、砦の奪回作戦、
主人公を追う慰安婦、敵前逃亡で銃殺された見習士官、「その真相は?」
などなど。
そして後に「肉弾」においても出てくる少年兵の初体験、また「ジャズ大名」
においてもテーマとされる「聖者の行進」を始めとするデキシーランドジャズの数々。

岡本戦争映画らしさがいっぱいだが、いかんせん長すぎると感じた。

砦奪回を命じられてから、出発までが映画の50分ぐらい。
もうこの辺の長さで「愚連隊」シリーズに見られたテンポの良さはない。

中盤の砦奪回の戦闘シーンはテンポのある迫力のあるシーンだ。
しかし、その後の適当の攻防戦が長い、というかくどいのだ。
シナリオの段階でもう少し刈り込んだほうがよかったのでは?

また「愚連隊」と違い、佐藤允ではなく三船が小杉曹長がまじめに演じているので
佐藤のようなユーモア性がない。
要は暗いんだな。
佐藤允は今回は助演だが彼のシーンになると映画が生き生きしてくるのだ。
(また佐藤允は「愚連隊」同様、「危険が近づくと水虫が痒くなる男」
〜「愚連隊」の時は「手のひらがむずがゆくなる」〜という設定だ)


しかしこの作品に魅力がないわけではなく、数回に渡り行われる中国軍との
攻防戦は迫力充分。
あと伊藤雄之助の「葬儀屋」こと持田一等兵が面白かった。
エキストラの兵隊も多く、その点は豪華に作られていた。

そして部隊が全滅した映画のラストで「その日、8月15日」
との字幕が。
この終戦記念日に対する思いが、大作「日本のいちばん長い日」に昇華していったのだ。

僕自身はこの作品は全体的にはそれほど評価しないが、それまでの「独立愚連隊」シリーズ
後の「日本のいちばん長い日」「肉弾」「沖縄決戦」へとつながっていく中間点として
岡本喜八戦争映画において重要なポジションを占めるのは確かなようだ。

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赤毛


日時 2002年1月26日14:30〜
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 岡本喜八
昭和44年10月10日封切り

今回の岡本喜八特集上映作品、タイムテーブルはこちら。
(但し各回定員入れ替え制ですので、一日に2、3作品上映する日が
ありますが、1作品毎に入場料は別になります。ご注意!)

幕末の官軍、赤報隊を題材にした映画。
官軍、東山軍の一隊の赤報隊は官軍の先駆けとして沿道各地の民衆を
鎮撫していった。その中の一人、権三(三船敏郎)は生まれ故郷の村に
単身乗り込んだ。
悪代官や高利貸しを倒し、本隊の到着を待つばかりとなったが、
この村には官軍を阻止せんとする幕府の遊撃一番隊もいる。
そして本隊も権三たちを裏切る事となる。

こんな感じで話は進むが、結局、赤報隊隊長はその上部組織、東山軍に
ニセ官軍の汚名を着せられて惨殺されてしまう。
ラストの官軍と三船の対決シーンで天皇の行軍がインサートされる。
「官軍=天皇の軍隊」だ。
この作品の赤毛、三船は水のみ百姓の出身であり、それはまるで
「天皇の軍隊=正義」と教育され、太平洋戦争時に「西欧諸国のらの
圧制に苦しむアジアの解放」という建前のもと借り出され、
戦争で無駄死にさせられていった人々を象徴しているかのように見えた。

三船が黒澤の「七人の侍」の菊千代を思わせるコミカルな頭の少し弱い
ヒーロー役だが、年のせいでやや貫禄がつきすぎ。
こういった若さが許す無茶なキャラクターを演じるには少し無理がある感じがした。
15年ぐらい前の三船か、もう少し若い軽妙な役者が演じたほうが
作品にはあっていたと思う。
ただし、三船プロの作品なのでそれはありえない配役だが。

他の出演者では岸田森、砂塚秀夫、浜村純が「実は・・・・」という岡本喜八らしい人物
設定が面白い。
また高橋悦史の虚無的な人物が「日本のいちばん長い日」の井田中佐のよう。
天本英世のなんだか態度のはっきりしない医者役なのだが中途半端で、
笑いをとるキャラクターになぜか徹しきれていないのが残念。


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結婚のすべて


日時 2002年1月21日21:20〜
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 岡本喜八(第1回監督作品)
昭和33年5月26日封切り

今回の岡本喜八特集上映作品、タイムテーブルはこちら。
(但し各回定員入れ替え制ですので、一日に2、3作品上映する日が
ありますが、1作品毎に入場料は別になります。ご注意!)

ものすごくテンポのいい結婚をテーマにしたコメディ。
オープニングの海岸でのキスシーン「この映画にはこんな扇情的な
シーンはありません」という小林桂樹(!!)のナレーションが
重なるところは、もう後の「江分利満氏の優雅な生活」ですね。

また「江分利満氏の優雅な生活」に見られた「連続する動きを
2つのシーン、2つのカットで分けてつなぐ」というカットつなぎ、
またラストの塩沢ときの足をもむマッサージ器の動きが
新珠三千代の雑巾がけのカットにつながるモンタージュなど
独特のカットつなぎはこのころから始まっている。

また出演者も佐藤允、三船敏郎、仲代達矢、中丸忠雄、ミッキー・カーティス
三橋達也などなど、後の岡本作品において重要なポジションを占めるメンバーが
すでに出演しているのは注目に値する。


ラストで雪村いづみが結局、親の薦める青年(仲代)とうまく
行くあたりなど封建的な感じがするが、(最初は東宝側の企画だからなのかな
と思ったが)同時代の「狂った果実」や大島渚の「青春残酷物語」などのように
結婚、男女の交際について岡本監督はアナーキーな考えがなかったのだろう。

岡本監督の結婚についての理想的な姿は
「肉弾」の笠智衆、北林谷栄の古本屋夫婦であり
初体験は同じく大谷直子と寺田農のような「本当に
心が通じ合った者同士」というのなのだろう。
「親が薦めるのはダメだからそれ以外」とかいうレベルではないのだ、きっと。


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スパイ・ゲーム

(公式HP)

日時 2002年1月20日10:50〜
場所 新宿スカラ座
監督 トニー・スコット

あんまり洋画には詳しくないんで始めて知ったんですが、
トニー・スコットとリドリー・スコットって兄弟なんですね。

中国でCIAのスパイ(ブラット・ピット)が逮捕された。
彼は命令ではない行動を何故したのか?
ワシントンでは対策会議が開かれ、元の上司(ロバート・レッドフォード)も
参加して今までの経緯が明かされる。

というのが大筋。
だから物語の大半は元上司の回想シーンなんだけど
そこにはベトナム戦争から始まる彼らの戦いの歴史が語られる。
それはベルリンのスパイ探し、ベイルートでの暗殺計画など
そのエピソード一つだけでも1本の映画が出来そうなくらい
密度の濃い話し。
贅沢なシナリオだ。

ラストはレッドフォードが私財を使ってのブラッドピット救出作戦。
ここの現場にレッドフォードが駆けつけないのがやや不満だが
それでもCIA長官の感謝状とかバハマのパンフレットが
伏線の小道具になっているのでそれを補う面白さはある。

「外食作戦」という言葉がブラッドピットとレッドフォードを
結びつけるキーワード。「外食作戦」と聞いてにやっと笑う
ブラッドピットに男の友情のカッコよさみたいなものを
感じて嬉しくなる人も多かったろう。

しかし、以前ほどこの手の映画を心から楽しめなかったのは事実。
多分、「ビン・ラディン殺害のため何十人というブラッド・ピットみたいな
スパイが送り込まれてるんだろうな」とか「そんな彼らもいざとなったら
捨てられるんだな」とか、映画見ながら現実とオーバーラップさせてしまったからだろう。


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江分利満氏の優雅な生活


日時 2002年1月19日19:20〜
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 岡本喜八
昭和38年11月16日封切り

今回の岡本喜八特集上映作品、タイムテーブルはこちら。
(但し各回定員入れ替え制ですので、一日に2、3作品上映する日が
ありますが、1作品毎に入場料は別になります。ご注意!)

岡本喜八ファンだからといってすべての岡本作品が
好きなわけではない。

この映画を見るのは2回目だ。
前に見たときは大して面白くなかったという印象だったが
今回はそれより印象が悪い。

最後、直木賞受賞後の若い社員たちのパーティーのシーンなど
途中で帰りたくなった。
あと10分ぐらいだからと我慢したぐらいなのだ。

大正15年生まれ、昭和と同じ長さを生きてきた男の話だ。
江分利氏(小林桂樹)はサントリーの宣伝部社員。
週に一度はぐでんぐでんに酔っ払って帰ってくる生活。
酔っ払うとからむからという理由で最近は同僚も付き合わない。
そんな時雑誌の編集者(中丸忠雄)から小説を書いてみないかと
誘われ安請け合いしてしまう。
翌日、覚えてない江分利氏だが仕方なく引き受ける。
それは「江分利満氏の優雅な生活」と題する
自伝のような小説だった。そしてそれが直木賞まで受賞してしまう。
というのがあらすじ。

小説を映像化したシーンは小林桂樹のナレーションにかぶせ、
「ズボンは米軍払い下げのもの、パンツはアメ横で買った2枚なんぼの
安物・・・・・」などと言うシーンはパンツ一つで町を歩くシーンが
あったり(もちろんイメージ画像)映像的に面白く見せてくれる。
また1つのシーンを2カットに分けたように見せておきながら
実は2シーン(つまり例えば、酒をぐいっと飲むと飲み干したところで
カットが切り替わり別カットでグラスを口から放す。同じシーンに見えるが
実は別の場所になっている)というようなカットつなぎも多く、
映像的に見ていて飽きさせない。

しかし後半の30分になると小林桂樹が延々と若手(二瓶正也、西条康彦、小川安三、桜井浩子)
相手にくだを巻くばかりで(前半はナレーションだから映像は別な表現ができる)
いい加減つらかった。
映画中の江分利氏と今の私は年も近いが江分利氏への共感は感じなかった。
これは戦中派と戦後派の差なのか?
はたまた私と江分利氏の個性の差なのか?
「世界大戦争」のように大人になって別の見方が出来るかもと期待したが
ダメだった。
むしろ同じぐらいの年でありながら若手にくだを巻き、延々と徹夜で説教を
する姿がすごくいやだった。
私自身が酔っ払って説教する奴が苦手なのだ。

2度目に見たらかえってきらいになってしまった。

蛇足ながら出演者では二瓶正也、西条康彦、桜井浩子という後のウルトラシリーズの
メンバーが一同に江分利氏の説教を聞くところなど、豪華な(実は出演者の当時の
格からすると豪華ではないのだが)顔ぶれがそろっていてなんだか楽しかった。

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暗黒街の対決


日時 2002年1月19日 14:35〜
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 岡本喜八
昭和35年1月3日封切り

今回の岡本喜八特集上映作品、タイムテーブルはこちら。
(但し各回定員入れ替え制ですので、一日に2、3作品上映する日が
ありますが、1作品毎に入場料は別になります。ご注意!)

岡本喜八アクションの代表作。

河津清三郎の新興勢力やくざが支配する街、荒神市。
ある日、汚職で警視庁から左遷された刑事(三船敏郎)が着任する。
街には古くから土木工事を生業とする昔かたぎのやくざ
(田崎潤、佐藤允)がいる。それにかつては田崎潤の片腕で
今は足を洗って酒場のマスターの鶴田浩二。
しかも鶴田の女房はなぞの交通事故をとげなにやら裏があるらしい。
果たして三船の刑事はこいつ等とどう渡り合っていくのか!?

こんな感じのお話しで全編アメリカナイズされたギャング映画だ。
更に平田昭彦が殺し屋集団のボスとして登場。
こうもり傘をステッキ状に持ち、傘の柄で三船の肩を叩くとこなんざ
「キザ」を絵に描いたようなかっこよさ。
またその部下として登場する天本英世らの殺し屋が黒ずくめで、
河津の部下のキャバレー支配人、中丸忠雄に
「君達はキャバレーの男性コーラスグループとしてまずは働いて
もらおうか」という訳で「月を消しちゃえ」(だったと思う)という
歌を歌うあたりは映画史に残る名シーンだろう。
ミッキー・カーティスって岡本映画だと
コメディリリーフとしての登場が多いんですね。

そして鶴田浩二が日本やくざの代表としていかにも「貸し、借り」を
口癖とする昔かたぎのやくざ。
(着流しを着て日本刀を振り回すことまではしないが、
田崎潤は着物姿だ)

またアクションシーンも岡本お得意の細かいカットの連続で
小気味良い。

こういったややデフォルメされたコミック的ともいえるキャラクター達が
魅力的で、またスピーディーなストーリー展開が
見てる人を飽きさせない。

ユーモアとダンディズム(三船のトレンチコート姿がかっこよいのだ!)
、リズムあるカットつなぎによる軽快なアクション、テンポの良い展開、
これぞ喜八アクションの代表的作品だ。

この作品を見ずして岡本喜八を語ってはいけない。


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どぶ鼠作戦


日時 2002年1月14日
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 岡本喜八
昭和37年6月1日封切り

今回の岡本喜八特集上映作品、タイムテーブルはこちら。
(但し各回定員入れ替え制ですので、一日に2、3作品上映する日が
ありますが、1作品毎に入場料は別になります。ご注意!)

独立愚連隊シリーズ第3作といわれるが
1作目と3作目では映画の趣がちょっと違う。

「愚連隊」は大久保見習い士官を殺したのは誰だというような
犯人探しミステリー色が強かったが、こちらは少数隊による
特別チームによる、捕虜となった夏木陽介の参謀奪回作戦。
(夏木の参謀の父親が上原謙の師団長なんだな。
加山だったら実の親子だけど)

軍籍を離れ今は特務隊として金で日本軍に雇われている佐藤允。
(脱走兵って事?それって軍法会議ものじゃないのという疑問は
残るが深くは考えまい。)
そして軍法会議送りになりかけた加山雄三、中谷一郎、田中邦衛、砂塚秀夫
を率いて作戦開始だ。

銃殺されたものが実は生きていたり、敵だと思っていたら味方してくれたり
味方が実は敵だったり、逆転また逆転。

しかも岡本らしいカラッとした明るさがあふれ、全編絶妙なカットつなぎなど
岡本喜八流痛快アクションだ。

忍術を研究している兵隊(砂塚)の活躍が1回ぐらいしかなかったり、
また田中邦衛が中谷一郎を「戦友を殺した」と恨んでいるので
「俺が殺すまで死じゃ困る」とうらんでいながら助けるという
ひねった人間関係があるのだが、これらが上手く生かしきれてないのが
(面白くなりそうな伏線だっただけに)残念。


ラストで夏木の参謀は救出したものの、師団長の交代により、作戦方針の変更、
それにより夏木も戦死扱いされ、救出も最早必要なしとなってしまい、
それまで帝國軍人の見本のようだった夏木が、佐藤たちと一緒になって
馬賊となるラストが良い。
(藤田進の大隊長も一緒になって軍隊を離れるのだ)

国家、軍隊はいざとなったら守ってくれず、それどころか見捨てられる
という声高ではなく、岡本の国家不信、軍隊不信の考えが
現れている。
そしてそれに主人公達は打ちのめされるのではなく、あくまで自分達の力で
生き抜こうというところが見てるものに勇気と爽快感を与えてくれる。

もちろん、それ以前に痛快なアクション映画だ。

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座頭市と用心棒


日時 2002年1月14日16:10〜
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 岡本喜八
昭和45年1月15日封切り

今回の岡本喜八特集上映作品、タイムテーブルはこちら。
(但し各回定員入れ替え制ですので、一日に2、3作品上映する日が
ありますが、1作品毎に入場料は別になります。ご注意!)

実は自分は座頭市シリーズを1本も見たことがないのだ。
理由は比較的上映の機会が少ないとかあるが
要は勝新太郎とか時代劇に興味が薄いから。

でも全く知っていないわけではない。
あの有名なシリーズだもの、きちんと見たことはなくても
テレビで断片的に見たことぐらいはあった。

で黒澤の用心棒と勝新の座頭市を岡本喜八が撮ったら
どうなるか、さぞバラバラの作品になってるんだろうと
思っていたが、用心棒も岡本喜八も完全に座頭市に
主役として立て、それぞれの個性を無理に強調しなかったから
かえってそれなりの作品には仕上がっている。

三船は確かに用心棒だが、キャラクターとしては黒澤の三十郎
とはだいぶ違う。
もちろん同じ三船だから口調とか、しぐさには似通う点も多いが
三十郎のようなからっとした明るさはない。
設定からして三十朗のような自由人、ではなく
実は小判鋳造の金を横領した犯人を探す隠密、という
設定なんだな。
この1点で自由人、三十郎とは大違いの組織に縛られた
人間になってしまっている。

勝はいつもの座頭市で暗く、じと〜〜と迫力がある。
(それにしてもこの作品が作られた時代は『メクラ!』『ドメクラ!』とかかなり
ストレートな言い方するなあ。今は出来ないよな)

岡本喜八も完全に勝の座頭市の世界を尊重して岡本らしい、
リズムのあるカットつなぎとか無し。
ホントに岡本喜八の映画か?とさえ思ってしまう。

キャストの岸田森ぐらいかな?岡本喜八らしいのは。
でもこの岸田森が顔色の悪い死神のような表情で
短銃を撃ち、ホント不気味なんだ。
やっぱり一応黒澤「用心棒」目当ての観客のサービスかなあ。

結局、座頭市ファンを裏切らない座頭市映画にはなってると思う。
岡本喜八ファンや、三十郎ファンは裏切られるが、
今回は勝新太郎、及び大映を立てて、三船、岡本は引き立て役に
徹したのだろう、
「座頭市映画」としてはそれで正解だったはずだ。


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独立愚連隊


日時 2002年1月14日12:30〜
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 岡本喜八
昭和34年10月6日封切

今回の岡本喜八特集上映作品、タイムテーブルはこちら。
(但し各回定員入れ替え制ですので、一日に2、3作品上映する日が
ありますが、1作品毎に入場料は別になります。ご注意!)

岡本喜八ファンを自認している私としては非常に書きづらいのだが
この作品は私はあまり評価していないのだ。

戦争末期、中国、北支戦線に新聞記者、荒木がやってきた。
その砦には「独立愚連隊」と呼ばれる部隊があり、
そこでは一年前に大久保見習士官が女と心中していた。
荒木はその真相を探り始める。

前半はなぞの新聞記者、荒木が大久保見習い士官の死の真相を
探るというミステリー風だが、この犯人が意外性が少なく、
「ああやっぱりね」という感じなのだ。
この辺が私にとっては腰砕けの作品なのだ。
きっと岡本監督の代表作ということなので初めて見たときは
作品に対する期待も大きかったのだろう。

後半、犯人が明らかになり、犯人は大久保見習下士官を射殺しただけでなく、
死の原因が「軍隊において不正を行い物資を横流しし、
私腹を肥やした人物を告発しようとしたため」というところが
政治家、一部の高級軍人に操られて死に追いやられた兵隊を
連想させるような構成。

でも暗黒街シリーズほどの痛快さもなく中途半端な作品という印象は
私にはぬぐえない。

しかし、捨て駒にされ無駄死にを強要される兵隊たち、
そんな中でも何とか意地を貫き生きていこうとする登場人物たち、
そして組織に縛られない、戦場を自由に生きようとする主人公、
などなど後の岡本喜八戦争映画の原型といえる箇所が多く、
後の「どぶ鼠作戦」TVシリーズ「遊撃戦」でこのテーマは
昇華されていき、「日本のいちばん長い日」「肉弾」「沖縄決戦」に
おいても一部貫かれている事を考えれば、やはり岡本監督の出世作
として重要視せねばならない作品だろう。

また佐藤允にとっても「窮地をものともせず飄々と切り抜けていく」
「死ぬのはごめんだ、となんとしても生き抜いてやる」という
キャラクターは、先の岡本作品だけではなく、「太平洋の翼」
「青島要塞爆撃命令」にも登場人物にも通じるところがあり、
日本映画に新しいヒーローを登場させたことは評価すべき作品だ。

蛇足ながら出演者では特別出演てきな三船の「頭がパーになった隊長」が面白い。
敵なぞきていないのに「敵襲!!」と叫んで誰も従わないとこなど
コミカルなシーンだった。
なんだかスピルバーグの「1941」の潜水艦艦長の原型かなという気もする。

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加藤隼戦闘隊


日時 2002年1月12日19:50〜
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 山本嘉次郎
特殊技術 円谷英二
昭和19年3月9日封切り

「ハワイ、マレー沖海戦」と同じく戦時中の戦争映画。
南方戦線で無敵の加藤戦闘機隊の活躍を加藤部隊長(藤田進!!)を中心に描く。

ドラマ部分は、戦果を上げたものの味方爆撃機に被害が
出ると部下を叱責したり、また自分がいたらず部下を
死なせてしまったと自分を責める軍人の鑑というべき加藤隊長の姿が
やたらと強調される。
また加藤隊長は厳しいだけでなく、叱責した後にみんなに果物を振舞ったり、
不時着した部下を探すため、捜索隊を出しその結果を何時間も
待つ姿があり、部下思いの理想的な隊長象として描き出され、
(戦意高揚映画だから当たり前だ)戦後の戦争映画に見られる
司令部内の対立といったドラマはない(当たり前だ)。

だからドラマ部分は非常にダルなのだが、しかしだからといって
この映画をあなどってはいけない。

戦闘シーンの迫力はこれを超える戦争映画はそうそうない。

まず特撮面。
敵基地の空襲シーンで逃げ惑う人物のバックで空襲が始まり、
その人物が爆風にのまれる合成カットは秀逸。お見事!

しかし申し訳ないがこの映画の戦闘シーンの見事さは
特撮ではない。
陸軍全面協力による実写シーンだろう。

実機を使っているので操縦席のシーンも本物の迫力。
戦後の映画では省略される事の多い(と思う)戦闘機の風防の上の
アンテナ線もちゃんとついている。

何十機もの戦闘機の大編隊の空撮、そして地上から撮ったショットがあり
そして小さく見える敵味方の戦闘機が空中戦を行うのだ。
これが「太平洋の翼」等の特撮物だと空を見上げ戦闘機を小さく写った
ショットなどかえって撮れず、戦闘機のアップばかりになってしまう。

また手前に大きく戦闘機が画面を横切ったと思えば遠くで上から下に
別の戦闘機が飛行するなど立体感のある映像がたまらない。
敵機だって実機ではないか?
(後で資料を読んだらやっぱり捕獲された敵機の実機を使ったそうだ)

そして特筆すべきはパレンバンの落下傘部隊の落下シーン。
見たときは「きっと記録フィルムを使ったんだろうな。本物は
迫力が違うなあ」と思っていたが、またまた資料を読んだら
この映画用に再現されたシーンだったそうだ。
カメラ30台(!!!)を用意、地上、空中の各所にカメラマンを配置し、
撮影班はカメラがどこを撮ってもいいように降下部隊と同じ服装を
して撮影に挑んだ。
30台もカメラを持ち出されたので、撮影所では他の映画の撮影は
すべてストップしたそうな。
余談だが映画監督の古澤憲吾氏(このとき助監督)は実際にパレンバン降下部隊に
いた経験を活かし、大いに活躍し、降下部隊の兵士扮し出演しているそうです。

画面の数機の輸送機から無数の落下傘部隊が次々と降下するいくつもの
ショットの迫力はすごい。
続いての空を埋め尽くさんばかりの無数の落下傘の画。
こんな映像、「史上最大の作戦」「遠すぎた橋」なんかにも
負けない(いやそれ以上の)迫力だ!

続いての対地上戦で(記録フィルムかと思っていたが多分映画のための撮影だろう)
パイロットの肩越しに撮ったショットで機銃の弾着が土ぼこりを上げるカットの
迫力のすごい事、すごい事!!
こんなカット今まで見たことない。

とにかく空中戦は今まで見たことないようなショットの連続で目を見張った。
特撮シーンは爆破される敵機とか戦闘シーンの一部だろう。
この映画に関して言えば戦闘シーンは大半は実写で特撮は時間にしたら
戦闘シーンの2割ぐらいしかないのではないか。

今までに見た戦争映画の中でも1,2を争うような迫力だった。
「パールハーバー」がいかにCGで作っても所詮は作り物。
こっちは本物だ。
この映画の戦闘シーンは使ってもう1本映画が作れるのではないか。
そんな気さえした。
「戦中の国策映画だからなあ」という偏見を捨てて見ていただきたい。
単純に娯楽戦争映画としてみた場合、ホントによく出来ている。
もっとも国策映画なのだからそんな単純に見れないという意見も
よく解るのだが。


これでラピュタ阿佐ヶ谷で行われた「円谷英二の技」と題する特集上映の
第1期は終了した。
第2期に期待する。
またこのHP上で封切り日、出演者名等のデータは「東宝特撮全史」
(83年、東宝株式会社出版事業室刊)を参考にさせていただきました。
この場を借りてお礼を申し上げます。

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孫悟空(前・後編)


日時 2002年1月12日17:15〜 
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 山本嘉次郎
特殊技術 円谷英二
昭和15年11月6日封切り

言わずと知れた喜劇王、榎本健一が孫悟空に扮し前編(75分)後編(60分)
の当時としては(多分)大作コメディ映画。
今見ると全体的にスローテンポでやや退屈だが、ミュージカル仕立てで作られており、
東宝ダンシングチームの何十人の踊り子の踊りあり歌ありの豪華作品だ。

孫悟空が金斗雲ではなく飛行機に乗ったり、悪漢兄弟金角・銀角がテレビジョンを
使った科学要塞を根城にしていたり(当時としては)最先端の文明を使った
画期的な作品だったろう。

また金角銀角に捕らえられた孫悟空たちがオペラを演じるシーンなど劇中劇も多く、
みどころは多い。

個人的にはミュージカルというジャンルは全く興味がないので、それほど
楽しめる作品ではなかったが、1940年(昭和15年)にこれだけの歌あり
踊りあり、笑いあり、特撮ありの娯楽作品は例がなかったのではないか。

アメリカは太平洋戦争中に「風と共に去りぬ」や「駅馬車」を作ったが、
しかしそれより前に日本にはこの「孫悟空」があったのだ。
少し誉めすぎかもしれないが、作品のレベルとしては高いと思う。

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乱菊物語


日時 2002年1月6日19:25〜
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 谷口千吉
特技監督 円谷英二
昭和31年1月22日封切り

時は堺が自由貿易で栄えていた時代。
まあ要するに悪大名と民主的な政治を行おうとする
町の人々との戦いの物語だ。
そして当然民衆が勝つのだ。

前半はその悪大名から迫られる遊女かげろう(八千草薫)が「広げると
10畳ほどになり、たたむと手のひらの小箱に収まる蚊帳をもってきた者に
身をささげる」と公言した事により、その小箱をめぐって悪大名やそれをインドから
運んできた悪徳商人(上田吉二郎)、主人公(池部良)、悪大名に渡してなるものかとする
町の人々(石原忠〜後の佐原健二、藤木悠)の蚊帳と小箱をめぐる争いの物語。
後半は蚊帳を持ってきた主人公が、実はかげろうと昔、幼馴染で(二人はもともと
武士の家の出身。例の悪大名に両家とも滅ぼされたのだ)許婚だったという
ことにからんでの悪大名との対決となる。

そういった感じで典型的な時代劇のストーリー展開で僕にとっては
それほど印象に残らなかった。
円谷英二の特撮シーンも特に見せるシーンもなく、
忍術を使う坊主(藤原釜足)が操る鳩のシーンとか前半に登場する上田吉二郎の
船のシーンで特にスペクタクルな映像はなし。

キャラクターとしては藤原釜足の忍術使いの坊主が面白かった。
それにしても若いころの八千草薫ってきれいだなあ。
今、ああいうお嬢さん然賭した女優っていない。
もっとも時代がそういうキャラを求めていないせいもあるだろうが。

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白夫人の妖恋


日時 2002年1月6日17:25〜
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 豊田四郎
特技監督 円谷英二
昭和31年7月5日封切り

中国、宋の時代に青年、許泉(池部良)は渡し舟に乗り合わせた
美しい女性(山口淑子)から求愛を受ける。
しかし彼女が用意してくれた結婚資金が盗まれたものだったため
許泉は故郷から追放されてしまう。
別の町で旅館の番頭として働くようになった許泉だったが、
ある日、例の美しい女が現れた。
やがて二人は結婚し、薬屋を営むようになるのだが・・・・・・


なんともファンタジックな話である。
実は蛇の化身だったその美しい婦人に魅入られた男の物語りだ。
途中、蛇の妖術をとこうとする東野英治郎の坊主との戦い、
また蛇と解ってからその術から逃れるため寺にかくまわれるのだが、
しかし愛情の裏返しは憎さ100倍、妖術で洪水を起こし
竜巻に襲われる寺のシーンの水の迫力は圧巻。

(もっともこの東野英治郎の坊主がいい加減な奴で、
蛇の妖術から救おうと寺にかくまったくせに
寺が洪水に襲われ危険となると「おまえがいるからだ!」
と池部良を追い出しにかかるのだ)

結局、許泉は「人間の女にも蛇の心は潜んでいる。
ならば相手が蛇で何でいけない」と止める人を振り払い、
二人の愛の世界へ旅立つ。
二人で空中遊泳しながら旅立つシーンはなんとも言えず美しい光景だ。

池部良、山口淑子、八千草薫(山口の蛇の召使のような存在で登場)
の美男美女トリオが画面の美しさを増す。
(若いころの八千草薫ってホントきれいだったんだなあ)

この一途な偏執狂的とさえいえる盲目の愛は「ガス人間第1号」にも
通じると思う。
現代社会を舞台にした「ガス人間」では二人の愛は成就しなかった。
しかし今度は中国民話を題材にした話だ。
前半、「彼女の正体は一体何か?」というサスペンスで引っ張り
後半は寺を襲う洪水のスペクタクル、そして
ラストで一気に成就する二人の愛は見ていてすがすがしかった。

美しいファンタジックなラブストーリーだ。

しかし惜しいのは私が見たプリントは退色しきって真っ赤っかだった事。
東宝初のカラー特撮ものとして色彩設計にはかなり気を使ったようだが
見るも無残。是非ニュープリントで見直したい。

あとこれなら現代でも公開できるので、是非映画かテレビSPでもいいから
リメーク版も見てみたい。
主演は滝沢秀明か、塩田貞治で。


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ゲンと不動明王


日時 2002年1月6日15:25〜
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 稲垣浩
特技監督 円谷英二
昭和36年9月17日封切り

実は12月29日に同じラピュタで「ガス人間第1号」「美女と液体人間」
を見た時に、場内の前の列でパンフレットに解説を書いておられる
池田憲章さんがご覧になっていた。
ずうずうしい私は面識もない池田さんに上映後、直接話し掛け
いろいろお話を伺うことが出来た。
その中で「『ゲンと不動明王』はいい作品なので是非見てください」
といわれ期待してみたのである。

いい映画である。
そうとしか言いようのない映画なのだ。

「長野県の山の中の貧乏寺の住職が後妻を迎える事になった。
しかし死んだ前妻との間にはゲンとイズミの兄妹がいた。
後妻は男の子はいやだというのでゲンは隣村の雑貨屋に
奉公に行く事になる。しかし雑貨屋のおばさんとは
折り合いが悪い。泣いているゲンの前に不動明王が
現れ、『弱虫!強くなれ』と励ます。
度重なる不運にめげそうになると不動明王は現れ、
二人で空を散歩しながら『あの子はおまえよりもっと不幸だ。
おまえより不幸な子供はこの世にたくさんいる。もっと強くなれ!』
と励ます。ゲンは不動明王のいい付けを守り、強く生きるのだった」

とまあこんな内容だ。

この映画の中で語られている幸福感は「相対的な幸福感」であり
それに共感するかどうかはその人の幸福観にもよるだろう。
あと何歳の時にこの映画を見たかにもよるかも知れない。


私はなんだか小学校のころ学校の講堂で見せられた教育映画を見てるような
気分になり、いかにも「大人が子供に見せたい映画」だなあという感想から
抜け出せなかった。
(今はないだろうが昔は学校の講堂などで文部省推薦な映画を見せられることが
時々あった。もちろんすべてが押し付け教育的な作品ではなく
「ボクは5歳」というような秀作もあったが)


映画としては三船が不動明王の役で出演し、画面に迫力を添えている。
また夏木陽介のバスの運転手と浜美枝の酒屋の娘の恋の部分がコミカルに
描かれており面白かった。

日本がまだ貧乏だった時代の話で今の子供が見たらまるっきり
水戸黄門の時代劇を見てる心境になるのではないか。
そんな気がした。
実際に今の小学生に見せてどう思うか聞いて見たいものだ。


余談だがこの日の回は満席で折りたたみの補助席が必要になるほど。
私は前の方でほとんど真横に近いところから見るはめになったが、
いつもは10人ぐらいしか見てないことも少なくないので
今日のような立ち見は我が事のようにうれしかった。
やはり上映機会の少ない作品は違うのだろう。


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ゼロファイター・大空戦


日時 2002年1月3日19:15〜
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 森谷司郎(第1回監督作品)
特技監督 円谷英二
昭和41年7月13日封切り

ブーゲンビル島のブイン基地に航空隊に新任の隊長、九段中尉(加山雄三)が着任する。
隊員は歴戦の強者たち(佐藤允、土屋嘉男、江原達怡、大木庄司)だ。
最初は反発した隊員たちだが、効果的な作戦で戦果を上げる九段中尉を見直し
力を合わせ、米軍基地攻撃、レーダー基地攻撃など次々と戦果を上げていく。


無用の長物となっていた新型兵器、三号爆弾を使用しての敵機爆撃、
おとり暗号作戦による敵基地空襲、ラストの米軍レーダー基地の破壊作戦など、
主に3つのパートに分かれ、それぞれが盛り上がり戦争映画として大いに
楽しめる。
登場人物も佐藤允をはじめとする一癖の二癖もあるパイロットたちが魅力的であり、
また特に谷幹一の整備班長がコメディリリーフとして画面をさらう。
加えて破損したゼロ戦、敵の不発弾等、最初に出てきた使えない武器をラストで
活かして使う伏線の張り方も見逃せない。

航空戦も雑巾がけ(低空飛行)やレーダー爆破、スコールのなか飛行するゼロ戦、
(プロペラが雨をはじいて飛ぶシーンはリアル!)などスピードの比較となる
対象が映像に活かされていて迫力を増す。
「太平洋の翼」の時に思ったが、これが空中の飛行機対飛行機では
スピードの比較の対象となるような静止物がなく、イマイチ迫力が出ないのだ。
その点、プロペラに太陽光が反射してきらきら光るなど、こまかい演出もよい。


途中でシナリオに山のない「大冒険」を観た後で、げんなりしていていたときだっただけに
脚本のしっかりした映画を見るのは気分がいい。
が日本戦争映画の悪いところで、最後にはほとんどのパイロットが死んで
しまうのが難点。
全員生還と行きたいところだが、最後は日本が敗戦しているので
どうしても明るく描ききれないのだろう。
またガダルカナル島再上陸を計画する陸軍が悪役になったり
「大和魂は燃料になりません!」と加山の隊長が啖呵を切るあたりは
東宝の海軍映画のお決まりという感じだった。

「キスカ」ほどの爽快感はないが、それに次ぐ痛快戦争映画といってもよい。
面白かった。


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大冒険


日時 2002年1月3日17:15〜
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 古澤憲吾
特技監督 円谷英二
昭和40年10月31日封切り

今回の円谷英二特集上映作品、タイムテーブルはこちら
(但し各回定員入れ替え制ですので、一日に2、3作品上映する日が
ありますが、1作品毎に入場料は別になります。ご注意!)


「クレージイ・キャッツ十周年映画」とタイトルに出てくる。

学生時代にクレージー映画には凝っていたので30本ほどある植木等、
及びクレージーキャッツの映画は9割方見ている。
もちろんこの作品も以前に見ているのだが、あんまり記憶がなかった。

それもその筈でちっとも面白くないのである。
普通ありそうな前半、中盤、後半の盛り上がりといったものがなく、
ヒトラーの残党率いる偽札団と警察に追われる植木の姿を追うばかりで
ストーリーに山がないのだ。

ビルから落ちるが電線につかまって難を逃れたり、走る車の屋根につかまったり、
列車の線路にうずくまりその上を列車が通りすぎたり、鉄橋の枕木にぶら下がったまま
その上を汽車が通過したり、シーンとしては面白いところもあり、
その辺はみどころも多いのだが、それが1本の映画としてまとまっていないのだ。
由利徹が登場したりするあたりは毎度の面白さが少しはあるが・・・

また谷啓が町の発明家として登場するが、ならば彼の発明品で難を逃れるところが
3回ぐらいあってもよさそうだが、偽札団につかまった妹を探す発信機ぐらいしか
発明品は登場せず、惜しい。

作家の小林信彦氏がこの映画について「2本の全く別のストーリーの脚本を
1本にする作業をした」という回想を読んだ憶えがあるが、
そのくらいシナリオが目茶目茶なのだ。
(売れっ子のクレージーだから、いろいろと口を挟んだりする人も多かったのだろう。
「船頭多くして船、陸に上る」って奴だ)

まあ最後のミサイルシーンなどは特撮はみどころがあったが。
円谷作品としてより、クレージー映画の流れの中で考察すべきだろう。
映画としては失敗作だ。

(なお今回のラピュタ阿佐ヶ谷での上映資料の池田憲章氏の文章に
「東京から名古屋まで走って逃げる」という記述があるが間違い。
『走って』ではなく、『新幹線に乗って』である。
走って逃げた方が喜劇としては面白かったと思うが)

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大盗賊


日時 2002年1月3日15:20〜
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 谷口千吉
特技監督 円谷英二
昭和38年10月26日封切り

今回の円谷英二特集上映作品、タイムテーブルはこちら
(但し各回定員入れ替え制ですので、一日に2、3作品上映する日が
ありますが、1作品毎に入場料は別になります。ご注意!)


堺の豪商、呂宗助左衛門(三船敏郎)は濡れ衣を着せられ死罪に。
が、役人を買収し日本を脱出、南洋貿易に夢を果たそうとする。
しかし海賊船に襲われ船を沈められてしまう。
流れ着いた南のある国で王の後継者争いに巻き込まれる。


一体いつの時代のどこに流れ着いたんだ?といいたくなる荒唐無稽な
設定がいい。
外国なのに全員日本語だし、ターバンを巻いていたり、
お城は中世ヨーロッパのようでもあり、古代ローマ帝国風だったりする。
どこの国でもないそんなシチュエーションの中、正義をかけ
王妃(浜美枝)を救うべくの大アクション。

凧を使っての城への侵入、船を襲う海賊船など特撮のみどころも満載。

目を見ると石になる妖術を使う妖婆(なんと天本英世が怪演。彼の代表作だろう)
女にめっぽう弱い三等仙人(有島一郎)、女盗賊(水野久美)、町娘(若林映子)
などなど楽しい脇役もたくさん。
特に仙人と妖婆の対決は天本が宙吊りになったり、仙人がハエに変身したり
観ていて実に愉快。
後に007に出演する浜美枝、若林映子の共演が楽しい。
(これらの映画を見ると水野久美も007に悪役側で出演して欲しかった)

またラストに登場する王様(志村喬!!)が「椿三十郎」の伊藤雄之助みたく、
「助左はどこへいった?」「はっ皆が探しておりますゆえ、まもなく見つかるかと」
というセリフをいうのが楽しい。
(実際、仲代達矢にあたる役を田崎潤が演じている。もっとも途中で死んじゃうけど)

夢あふれた痛快無国籍活劇だ。
日本にも日活だけでなく、こんな遊び心満載の映画があったんだなあ。
(「奇巌城の冒険」という映画があるが姉妹篇らしい)

但しプリントが真っ赤に退色してるのが残念だった。

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UFO少年アブドラジャン

(公式HPへ)

日時 2002年1月2日 21:20〜
場所 ユーロスペース
監督 ズリフィカール・ムサコフ
製作 1991年
 
初めて見るウズベキスタン映画。
ウズベキスタンってどこにある国?って思ったら、
中央アジア、アフガニスタンに隣接する国なんですね。

SF映画らしく特撮は登場する。
しかし、ハリウッドのSFXとは違い、ほのぼのとしたユーモラスな映像だ。
最初のほうのアメリカのスペースシャトルとソ連の宇宙船の宇宙での
挨拶シーンに始まり、村に飛来するアダムスキー型円盤、そして極めつけは
空飛ぶ鍬だ。

それが映画に登場するウズベキスタンの田舎のほのぼのムードにぴったりだ。
特に空飛ぶ鍬のなんというほのぼのぶり。
「ハリー・ポッター」でスピード感あふれる空飛ぶほうきを見た後だけに
この時速10キロ程度の空飛ぶ鍬には頬が緩まずにはいられない。
またこういったとんちんかんな宇宙人ものには出てきがちな
直径50センチぐらいのコイン、重さ1トンのスイカなどのんびりムード満載だ。

この映画を語る場合、どうしてもこういうほのぼの映像が話題に
なってしまうのはいたし方あるまい。
しかし、それだけではない。
ここには人間らしい、善人のいる風景が展開される。
最初は夫がよそで作った子供だと思い、夫を追い出すがそれにしても
子供を憎さでいじめる事はなく「この子には罪はない」という妻、
そしてアブドラジャンを自分の子供として家に招く家族、
アブドラジャンに作ってもらった札で儲けようとするが
偽札つくりは罪だと知った途端、なべいっぱいの紙幣を燃やしてしまう夫。
自分だけが空を飛べないと子供のように泣く村の議長。
(共産圏なので議長だが日本でいう村長だろう)
悪との対決の映画ばかりを見慣れてる我々にはほっとするエピソードの数々だ。

そしてこの映画の基本となるのが親子の情愛だ。
軍隊に出征した息子をアブドラジャンの力で一時帰宅させ、
ご馳走をうんと食べさせるながら「軍隊の食事はどうだい?」と心配する。
最後にモスクワに連れて行かれそうになるアブドラジャンを
仲間に逃がしてあげる。
「また戻ってくるよ」と言い残して去っていったアブドラジャンを
待ちつづけ、彼が去っていった空に向かって「早く帰ってきておくれ」
と母は叫びつづける。
世界中どこでも変わらない親子の愛情だ。
ほのぼのとした気分を胸に我々は劇場を後にできる。

2001年は「A.I.」、「ハリーポッター」そしてこの「アブドラジャン」と
3本の少年を主人公にした特撮映画が公開された。
ハーレイ・ジョエル・オスメントの名演技、ダニエル・ラドクリフの愛らしさの中の
カッコよさももちろん素晴らしいが、アブドラジャンを演じたシュフラト・カユモフの
素朴な風景に溶け込んだ美少年ぶりも決して忘れられない。


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