2002年6月

トップ屋取材帖 
迫りくる危機
勝負犬 透明人間現わる 早射ち犬
トカレフ ルパン三世・念力珍作戦 透明人間と蝿男 幽霊列車 
野良犬 続鉄砲犬 鉄砲犬 暴れ犬
ノー・マンズ・ランド 摸倣犯  突入せよ!「あさま山荘」事件 スパイダーマン

トップ屋取材帖 迫りくる危機


日時 2002年6月30日
場所 録画ビデオ
監督 井田探 

(詳しいデータはキネ旬データベースで)

トップや黒木(水島道太郎)は横浜で昔の恋人(白木万里)と偶然あった。
彼女は今はキャバレーの経営者になっていた。
黒木に仕事を頼む白木万里。しかしそれは麻薬の荷揚げの見張りだった。
こうして黒木は麻薬の密輸組織に潜入取材する。

黒木は「ローマの休日」みたいなジッポー型ライターに仕込まれた
カメラを武器に活躍。
横浜が舞台ということで横浜らしく、日活らしい山下公園やバーが頻繁に登場。
この作品も無国籍アクションっぽくなっている。
バーのシーンでカウンターの上をグラスを滑らしパッと受け取るところなど
そのものですね。

また途中から麻薬の密輸船に香港から紛れ込んで密入国してきた
白人グラマー(ブロンドではなかった)などが登場し、
ダンサーとして雇われ踊るのだが、白木万里が踊るより
肉体にボリュームがあってよかったよ。
またその白人グラマーの登場するシーンでは英語の会話によるスーパーも
登場し、こういった洋画もどきが日活テイストだ。

今で言うなら1時間ドラマのシリーズもののSPだったが、そこここに
日活カラーがあふれていてなかなか楽しめる一品。
続きも少し見てみよう。


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勝負犬


日時 2002年6月29日
場所 録画ビデオ
監督 井上芳夫

(詳しいデータはキネ旬データベースで)

犬シリーズ第9作にして最終作。

昼は競艇場で予想屋、夜はギターの流しとめずらしく働いている
鴨井大介。そこへ煙も光も音も出ない新型拳銃「モルトゲーゼルX38」
なる銃の密売を追って「しょぼくれ」こと木村刑事(天知茂)も大阪から東京にやってくる。
事件の伸展とともに狙われる鴨井。やがて木村刑事も敵の凶弾に倒れる。
拳銃の密売組織のボスは誰か?


前回「早射ち犬」が殺人犯を追うミステリー形式だったが、今回は謎の
旧ナチス製拳銃をめぐるミステリータッチ。
ワルサーP38を改造したような無茶苦茶な拳銃が登場するが、
オープニングのクレジットタイトルがタイプライターで
文字を打ち込むように表示され、なかなかカッコよし。

またラストの悪漢との倉庫での対決、倉庫内で火を放ったり、
表は雨が降っていて雨の中の対決となりなかなか豪華。
さすが最終作のせいか、少し豪華になっている。

坂本スミ子は相変わらず玉村玉子で登場だが今回は最初のほうで
キャバレーで歌を歌うとそこでキャバレーの社長(実は拳銃密輸犯)
に気に入られてすぐにいなくなり、あまり活躍はしなかった。

今回は前回に引き続き、木村刑事と鴨井の友情を軸に話は進む。
しょぼくれが撃たれてうろたえる鴨井は二人の友情の証。
この作品が最終作となったがそれでよかったと思う。
これ以上作品が進むと木村刑事と鴨井がベタベタした関係になってしまい、
かえってパターン化しすぎてしまう感じがするからだ。

木村刑事は第1作からの登場だが最初はホントに嫌っていたが
それが徐々に友情に変わっていく過程が面白かったが、
今後続けていくと「表向きは喧嘩しているが実は仲がいい」という
なんだかカップルのいちゃいちゃぶりを見せ付けられるようで
飽きがくるだろうから。


さてこれで犬シリーズも終了。
藤本義一がずっとシナリオを書いていたが、彼のシナリオに出てくるセリフは
(今まで書かなかったが)、シャレが多く聞いていて心地よかった。
「オーバーなやっちゃな。おっオーバーやのうてレインコート(木村刑事のこと)
が来たぞ」といった具合だ。
日本映画俳優全集の田宮二郎の項目を読むと「田宮自身には海外でも通用する
スターになりたいという野望があり、このようなプログラムピクチャアには
思い入れが少しなかったのではないか」というような記述がある。
しかし今回シリーズをすべてみて、それは正解でないと思う。
確かに彼のエリートサラリーマン風のルックスではこのような三枚目風の
風来坊役はイマイチにあわなかったが、拳銃さばき(拳銃でろうそくの火を
つけるといったトリック技ではなく)の練習具合からして彼なりに一生懸命
このシリーズも盛り上げようとしていたと思う。

但し日活の小林旭の渡り鳥シリーズなどと違っていたのはやはり宍戸錠の
存在だろう。
彼のような魅力的な悪役がいればこそ、旭の強さ、カッコよさも際立った
ものだった。
今回も鴨井をつけ狙うチンピラが登場するが、強くないしアホなので
見栄えがしないのだよ。
そういう敵もいた上で、警察という敵のような味方のような不思議な存在、木村
もいればもっとこのシリーズ、盛り上がったのではないかと思うと残念だ。

田宮二郎、1935年生まれ、生きていれば67歳。
今の日本映画界の俳優層の薄さを考える時、彼がいたらどんな役を演じて
くれたろう。くれぐれも惜しまれる。


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透明人間現わる


日時 2002年6月22日
場所 TSUTAYAレンタル
監督 安達伸生

(詳しいデータはキネ旬データベースで)

神戸の山の手のお屋敷に中里博士は瀬木と黒川の弟子と
研究を続けていた。中里博士はすでに動物を透明にする
薬を開発していた。それを知った中里博士のスポンサーの
河辺は「是非人体実験をしよう」という。
まだ還元薬が完成していないからという理由で断る中里博士だったが、
河辺は中里博士、及び同様の研究をしている弟子の黒川も誘拐してしまう。
河辺は宝石マニアで宝石店で見かけた「アムールの涙」という
宝石が欲しくなり、黒川を透明人間にして犯行を行わせたのだ。
やがて瀬木や警察の力で中里博士の居場所もわかり
事件は解決するが黒川はいのちを失ってしまう。

昭和24年製作。「ゴジラ」誕生以前の東宝特撮SFがジャンルとして
活躍してなかった頃の作品。
神戸の山の手の家庭が登場し、「あらあらお父様、どうなさったの?」的
会話がなされ、作品のテイストは江戸川乱歩の「少年探偵団」みたいな感じで
まあ一言でいって「お子様向け」に作られた作品。

「不思議、不思議。一体どうしたことでしょう。誰もいない筈の場所に
火のついたタバコが浮かんでいるではありませんか。しかもその吸い口の
あたりからまるで人が吸っているように、ぷかりぷかりと煙が出ているのです」
全篇そういうムードで進み、意味もなく水の江滝子が歌手として登場し
狙われる宝石が「アムールの涙」でしょ。これはもう完全に
二十面相と小林少年の世界ですね。

しかも映画の始まりと終わりに「科学は使う人の心によって善にも悪にもなるのです」
といった字幕が登場し、教育にもいい映画です、ハイ。
その辺をちゃんとわきまえていれば楽しめるが、普通にSFとしてみようとすると
ストーリーのあらばかり目立つのでそのつもりで。

特撮面ではやはり先のタバコのシーンとか、透明猫が花瓶をひっくり返し、
濡れた足で歩くので足跡がつくところなどなど。
さすがは円谷英二特撮作品だ。

このあと東宝で「透明人間」を撮ったきり、以後円谷特撮に透明人間ネタは登場しない。
やはり透明人間というのは面白そういて実は登場人物が透明で出てこないから
面白くなくないのだろう。

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早射ち犬


日時 2002年6月20日
場所 録画ビデオ
監督 村野鐵太郎

(詳しいデータはキネ旬データベースで)

田宮二郎、犬シリーズ第8作。
なぜか今度は流しになって飲み屋街で歌を歌っている鴨井大介。
マネージャーの常さんとアパートで二人暮し。
となりには白タクの運転手の山本五郎(小沢昭一)と玉子(坂本スミ子)
の夫婦が住んでいる。
ある日、山本は大阪往復の運転手を10万円で引き受ける。
大阪についたとハガキがあった後、静岡で山本の車は炎上し一人が
焼死体で発見。しかも大阪で山本は強盗殺人を犯したらしい。
山本の無実を信じる鴨井と常さんは上京してきたしょぼくれ刑事、木村
(天知茂)に協力、対立しながら真犯人を捕まえる。


今回は今までと違ってミステリー風。
死んだのは山本なのか、山本を雇ったヤクザの九十九組の親分なのか?
それとも九十九組の親分と大阪に行った新興宗教天心精霊会の教祖・天心なのか?

いままではヤクザ同士の抗争がメインだったけど、今回は一味ちがって
面白かった。
ミステリーとしてはそんなに意外性はないけれど、それでも死んだのは天心で、
犯人は九十九組組長と思っていたら、一瞬違っていたので(結局はそうなのだが)
そこは話を持たせた。

また天心精霊会は九十九組の下部組織で実は信者たちに売っている水が
麻薬入りなのだ。
その麻薬を打たれて廃人同様になったのが、九十九組幹部の原(成田三樹夫)の
愛人、文子。
この文子の妹が行方不明になった姉を探している。
妹は流しの歌手になった縁で鴨井と知り合い、何とか二人を引き合わせようとするが
姉は会おうとしない。
このあたりの人情路線が最近の犬シリーズに加わった特徴だろう。

財津一郎がアパートのオカマっぽい住人として登場、
「ヒジョーにサビシーーイ」などの決まりのフレーズを披露してくれる。
この財津が最後の最後になって「あれっ?」と思わせるところがミソ。
(書いちゃうと実は麻薬捜査官として天心精霊会を追っていたのだった)

いつもの鴨井の腕の見せ所は、まず九十九組の事務所で壁にかかったちょうちんを射ち、
中のろうそくが見えたところでそのろうそくを射ち、火をつけちゃうところ。
毎度毎度で嬉しくなる。

ラストの対決はめずらしく、釣り竿から弾が飛び出す秘密兵器を使用。
そして帽子の耳元に小さな銃を仕込んでおいて、最後に銃を向けられて両手を
あげた瞬間に成田三樹夫を撃つ。
やっぱり007の影響ですかね、この秘密兵器は。

あと忘れちゃいけないのがしょぼくれ刑事木村。
今回はまたまた大阪からの出張だが、ラストの鴨井との別れで、
鴨井がタバコに火をつけ、振り返りタバコを渡そうとすると
木村はすでに歩き出しているラストは秀逸。
二人の間にも友情が生まれてきた名シーンだった。
今回はミステリー作品としても楽しめ、犬シリーズのなかでも上位の出来だった。

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トカレフ


日時 2002年6月19日21:15〜
場所 中野武蔵野ホール
監督 阪本順治

(詳しいデータはキネ旬データベースで)

幼稚園バスの運転手・西海(大和武士)はある日自分の運転するバスから
息子が誘拐され、身代金も奪われた上に殺されてしまうう。
だが、誘拐犯にオートバイを奪われ一見被害者に見えた男、松村(佐藤浩市)
を犯人の一味と確信する。
松村を追い詰めるが逆に反撃にあい、九死に一生を得る。
病院で偶然、拳銃トカレフを手に入れ、西海は犯人や松村を追い詰める。


この映画が作られた93年ごろは、旧ソ連の軍用拳銃トカレフが
大量密輸され、新宿歌舞伎町でサラリーマンが買おうと思えば
買えるなどと週刊誌で噂された時代だ。

この辺の時代背景を知っていないと、何故、松村や西海が簡単にトカレフを
手に入れられたかがわからない。
松村は自動販売機の下に落ちたコインを拾おうとして、自販機の下に誰が隠したか
わからないトカレフを偶然発見してしまう。
西海は入院中に別の患者の見舞いに来たヤクザがたまたまトイレに隠した
拳銃を見つけて手に入れてしまうのだ。

この辺はまあ許すとして、犯罪映画として実に雑なのだよ。
西海は死んだ息子の幼稚園の運動会のビデオを観ていたら松村が
写っていたことがきっかけで犯人と確信するのだが、その根拠がよくわからない。
何で運動会を観ていただけで、犯人と言えるのか??

そして犯人たちを探す手段は、交通調査のふりをしてカウンターをたくさん
手にもちながらじっと街を張り込んでいるだけなのだ。
これはちょっと犯罪映画としてちょっと弱いなあ。
一歩間違うと「幻の湖」になってしまう。
それでまた偶然にも犯人と出くわすのだ。
はっきり言って詰め甘すぎ。

で西海と妻は事件がきっかけでギクシャクしてしまい、別れるのだが
妻のほうは松村と再婚するのだ。
そんなに近くにいたら何か西海にも再婚の情報が入りそうなものだが。
妻と共通の友人もいただろうし。

まあ松村に女房も息子もすべて奪われて「恨み1000%」っていうシチュエーションに
したかったののはわかるのですが、話が強引過ぎます。

ラストの松村と西海の対決はなかなかの迫力。
但し、西海がトカレフの弾がなくなったと思わせるためにカウンターをカチカチと
はじいて音を出すというフェイクをするのだが、ほんとは全然音違うから
そんな簡単には相手も引っかからないと思いますが。

「トカレフという拳銃を偶然手に入れた男たちの日常から非日常への脱出、
あるいは転落を描く」という監督の製作意図はよくわかるし、
それは成功してると思うがストーリー的に少し無理ありすぎ。
この「退屈な日常から非日常への逃避」あるいは「ここではない、何処かへ」という
モチーフは阪本監督の得意のテーマなのかも知れない。
例えば「顔」もそうだと言えるし、「KT」の佐藤浩市のKCIAへの協力の
動機もそういう風に考えれば納得がいく。

それにしても阪本作品に出てくる佐藤浩市はカッコいいなあ。
今、男らしい男の出てくる映画は阪本=佐藤コンビが最高なのかも知れない。




ルパン三世・念力珍作戦


日時 2002年6月16日
場所 録画ビデオ(チャンネルNECO)
監督 坪島孝

(詳しいデータはキネ旬データベースで)


赤ん坊の頃から盗癖が絶えなかったルパン三世(目黒裕樹)。
今日も護送車の美女(峰不二子)を見つけて彼女を監獄から脱走
させる手助けをする。
そんな彼のもとへルパン二世の子分の生き残り、次元大介(田中邦衛)がやってくる。
ルパン二世が築いたルパン帝国だが、マカローニ一家によって滅ぼされていた。
次元はルパンを中心にルパン帝国を復活させようとあせっているが
当のルパン三世にはそんなつもりはさらさらない。
一方、マカローニ一家はルパンを殺そうと次々と殺し屋を派遣する。
そして警察の銭形警部(伊東四朗)もルパンを捕まえようと必死。
果たしてこの戦い、どうなる事やら。


この映画、現在では封印されてしまった幻の映画「ノストラダムスの大予言」の
併映作だった。この頃(74年)はまだ邦画は2本立てが常識。
角川映画第1作「犬神家の一族」(76)あたりから1本立てがめずらしく
なくなる。あの「日本沈没」(73)さえも井上順主演のコメディ「グアム島珍道中」
が併映だった。
ホラーパニック映画とバランスをとるためのコメディだったのですね。

東宝アクションコメディの流れの多分最後になる作品で、
時期的にはアニメ・ルパンの一期シリーズ(緑ジャケットのルパン)と2期シリーズ
(赤ジャケットのルパン)の間にあたる。
主演のルパンには目黒裕樹。
この頃の目黒裕樹は眉は太いけど育ちのいい坊っちゃん風。女の子の前で結果的に
(つまり自分の意志で脱いだわけではないにしろ)やたらズボンを脱ぎ、
下半身がトランクス1枚なるという下ネタっぽいギャグの連発。
そして次元大介には田中邦衛。
全身に拳銃を持ち、青大将をもっとデフォルメしたバタ臭い感じ。
銭形警部には伊東四朗。ルパンを追いかけるたびに怪我をして全身包帯だらけに
なってくる。
その部下、大岡越前守に子孫に人見明、遠山金四郎の子孫も登場。
峰不二子はあんまり活躍せず、石川五右衛門も登場しない。

その他、警視総監に藤村有弘(デタラメな外国語、というもちネタも披露する)
ルパンを殺しにくる殺し屋に前川清(萩本欽一の「欽ドン」の共演でボケ役を
やり始めたのもこの頃だったか)大泉晃、お決まりの天本英世、浮浪者に常田富士男。
そしてルパンが育った孤児院の牧師にE・H・エリックなどなど豪華な面々。

まあギャグのほうは警官隊とルパンの追っかけをコマ落しで見せたり、窓の下を
望遠鏡で見ていた時に、峰不二子を見つけると同時に飛び出しはいていたズボンが
はいていた形のまま残っていたりとベタな笑いの連続。
でもライフル銃のスコープ越しに殺し屋が狙っていたら、ルパンが撃ち返した
拳銃の弾が迫ってくるカットは面白かった。(CGなんかない時代ですよ、ええ)

後半、遮光機土偶(当時、高松塚古墳の壁画発掘とか古代史ブームだったと思う)
を奪おうとするマカローニ一家、警察、ルパンとの三つ巴の戦いになるのだが、
マカローニ一家の幹部に指令を出す方法がTV「スパイ大作戦」風にビデオテープを
使ってる。その指令の声が「スパイ大作戦」と同じ大平透なのだ。
またマカローニ一家によって捕らえられた峰不二子を救出しようとするのだが、
つかまっていたところが崖ッぷちの小屋、これがチャップリンの「黄金狂時代」
みたく、崖から落っこちそうになるというパクりのギャグをやってくれるのだよ。

原作(というかアニメのルパン三世)は三枚目になったり二枚目になったり
そのギャップが魅力の一つだったが、このルパンは徹底して三枚目。
それをイメージが違うと怒ってはいけない。
別物と割り切って笑い飛ばそう。


今、これと同じ映画を作っても当たるとは思わないし、作って欲しくない。
当時の日本映画にはまだこういうおバカ映画を作るゆとりがあった。
そんな日本映画の最後の時代を感じさせる映画でもあります、ハイ。

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透明人間と蝿男


日時 2002年6月16日
場所 TSUTAYAレンタル
監督 村山三男

(詳しいデータはキネ旬データベースで)

羽田に向かう飛行機の中で殺人事件が発生する。
飛行機という完全な密室にも関わらず、犯人の目星が全くつかない。
若林捜査一課長はたまたま飛行機に乗り合わせていた同級生月岡博士
の恩師、早川博士に聞き込みに行くと透明人間の可能性もあながち
否定できないと言う。
宇宙船の研究の途中で物体を人間の目に見えなくなる光線=不可視光線
つまり透明光線を発見したのだ。
次々とおこる殺人事件だが、葉山刑事は殺人事件の現場に居合わせ
蝿の飛ぶような音を聞く。
そう、犯人は戦時中、南方の日本軍で作られた人間を蝿のように小さくして
空を飛ぶことができるようにする薬を使って次々と殺人を犯していたのだ。
やがて早川博士も殺され、月岡博士は自らが透明人間となり、
蝿男と対決する。


こんな感じ。
タイトルがすごいでしょう?
なんてったって「透明人間と蝿男」ですよ。
「三十郎対座頭市」「ゴジラ対ガメラ」に匹敵するような立派な
タイトルだと思いません??
そう思って期待したがあんまりたいした事はない。
完全なのノースター映画で知ってる俳優が全くと言っていいほどいない。
東宝の「透明人間」の時も思ったけど透明人間ってあんまり画にならないんですよね。
透明人間に殴られてる人って映画でみると役者が殴られてる一人芝居してる
だけでなんだかしらけちゃうし・・・・

そして肝心の蝿男。
アメリカB級ホラー映画「蝿男の恐怖」(だったと思う)のように顔まで
蝿のようになったらその造形が楽しみだったが、そんな事はなく、
ただ人間が蝿のように小さくなり、なぜか飛べるのだよ。
だからあんまり造形として恐くないんだなあ。

ラスト近く蝿男の存在が世間に知られ、警察が「蝿男はあなたのそばにいる!」
ってポスターを街じゅうにはり、パトカーの拡声器で「蝿男はあなたのすぐ近くにいます!」
と犯人の情報収集を呼びかけるのだが、そんなに恐怖をあおってどうするって感じがした。

特撮面では、蝿男が「透明人間化する装置をこっちへ渡せ!さもなくば爆弾が
爆発するぞ!」と言う事で日劇前(つまり有楽町)を通過する国電が爆発
するところ。
ワンカットだけどなかなか迫力のある画でした。

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幽霊列車 


日時 2002年6月15日
場所 TSUTAYAレンタル
監督 野淵昶

(詳しいデータはキネ旬データベースで)

赤川次郎原作、岡本喜八監督でも同名の「幽霊列車」という作品が
あるが本作とは何の関係もない。
この映画は脚本は黒澤映画でもおなじみの小国英雄、撮影は「羅生門」の宮川一夫。
そして特撮に円谷英二なのだから豪華スタッフですね。

ある雨の夜、田舎の路線に列車が到着する。
10数人の乗客が降り、彼らはそこからバスにのり温泉に行こうとする。
だが途中でバスは故障してしまう。故障はたいしたことはなく運転手によって
直るのだが、乗客の一人が運転手を脅し「故障はひどいので温泉まではいけない」
ということにして再び駅に戻る。
仕方ないので乗客たちは駅に止めてもらうことを駅長に交渉する。
しかし駅長はそれは絶対ダメだという。
乗客たちが問い詰めると駅長は重い口を開く。
実は夜中になるとこの駅は幽霊列車が通過し、それをみたものは
死ぬのだという。
恐くなった乗客たちだがほかになすすべもなく、駅で一夜を明かすことになる。


と言った感じ。
柳家金語楼、横山エンタツ、花菱アチャコの出演で「幽霊列車」というタイトルなら
なにやら怪談コメディっぽい感じがするが、真面目なミステリー作品だ。
なぜバスは駅に戻ったのか、バスの女性車掌と新婚の夫は昔何かあったのか、
運転手の東京時代になにかあったのか、エンタツアチャコはホントに会社社長と
その秘書なのか、などの伏線をはらみながら物語は進行する。

その他にも歯痛で苦しんでる男やら、幽霊から身を守るお札を売る新興宗教の男、
盲目の男、水商売風の色っぽい女、儲け話をエンタツアチャコに持ちかける男、
ずっと寝ていて朝になって「静かな夜でしたねえ」と一言オチを言う男
(言ってみればお決まりなオチなのだが)などなど乗客の人物模様が
物語にアクセントをつけている。

また駅長が説明する幽霊列車の由来の列車事故シーンで、円谷英二の特撮が光る!
この作品、「ゴジラ」より以前の作品だが円谷ファンにも是非チェックして欲しいところ。
(あと山中を走るバスはミニチュアだろう。多分当時のフィルムでは感度が悪く、
山中を走るバスのロングショットは撮影できなかったからミニチュアにしたのでは?
邪推だけど)

あとエンタツアチャコも出てるが(金語楼も)特にギャグシーンは無し。
でも事件の真相(ここではあえて書くまい)がわかった後、柳家金語楼が逃げる悪漢が
乗った列車を追いかけ列車に飛び乗り、先頭の機関車まで外をつたっていくという
アクションシーンがあるのだよ。
もちろんスタントなのだろうが、柳家金語楼がこんな役をやっていたことが意外。

噂には聞いていたけど、なかなか見ごたえのある作品でしたよ。お勧めできます。

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野良犬


日時 2002年6月13日21:00〜
場所 チャンネルNECO
監督 井上芳夫

(詳しいデータはキネ旬データベースで)

田宮二郎の犬シリーズ第7作。
このシリーズ、監督が毎回変わる。
拳銃が出てくるからと言って黒澤明の「野良犬」とは何の関係もない。

前作のラストから話は一応続いていて青森(多分)からトラックで
東京に帰ってくるところから話ははじまる。

福岡(垂水五郎)の経営するカジノで遊んだ鴨井だが負けて相変わらずスッテンテン。
負けの支払いのかたにとりあえず愛銃を預ける事になった。
その時居合わせたのが出所してきたばかりの風間(成田三樹夫)とあう。
福岡は二人の拳銃の腕を比べさせるが遜色はない。
鴨井の帰った後、福岡と話す風間だが、彼は田舎の母も病気だし
そろそろ足を洗いたいという。しかし、悪玉福岡がそれを許すはずがない。
風間は福岡に監禁されてしまう。
そんな時鴨井はひき逃げにあった女の子を助ける。
その女の子は田舎から兄を探しに来たという。
その兄はなんと風間だという。だが妹は兄が悪人とは知らない。
病院の看護婦に惚れた事もあり、風間が悪人とは知らせずに
何とか福岡たちと対決し風間を救い出す。
しかし看護婦は新聞記者の恋人であり、鴨井はふられてしまう。


こんな感じのお話。
もう(というか前からだが)犬シリーズ、タイトルと内容が完全に結びつかない。
(もっともその記憶をはっきりさせる記録という事もあってHPをやっているのだが)
今回残念なのは天知茂のしょぼくれ木村刑事が登場しないこと。
彼がいないとアクセントがつかないなあ。
それにしても入院の女の子のために悪い兄を助け出すなんて
鴨井も随分まるくなった。
このシリーズ、回を重ねるごとに鴨井はまるくなっていく。

拳銃の腕を披露するのは最初の成田三樹夫との対決。
ダイスを縦に並べそれをしたから拳銃で二人とも打ち抜いていく。
これと同じようなのは「暴れ犬」の酒場での対決シーンにもあったと思う。
あとはラストの垂水五郎たちとの対決であちこちにいる敵を右手と左手の
拳銃で別々の方向を撃ち、いっぺんに倒すところ。
それぐらいか。田宮が拳銃をさっ、さっ、と放り投げて別の手でうける
シーンもなく残念。

前作に引き続き、坂本スミ子が役名、玉子は同じでも全く違う人物で登場。
名前が同じだから混乱した。
でかい体で鴨井に迫り、鴨井がどぎまぎするシーンは相変わらず面白い。
と言ってもそれほどでもないんだが。

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続鉄砲犬


日時 2002年6月12日21:00〜
場所 チャンネルNECO
監督 村山三男

(詳しいデータはキネ旬データベースで)

犬シリーズ第6作。
鴨井(田宮)は美しい女性(久保菜穂子)と知り合う。
彼女のパパ(河津清三郎)の頼みで中国の古銭を東京に運ぶボディーガードを
引き受ける。
道中、襲撃を受けたがなんとか東京に到着する久保菜穂子と鴨井。
鴨井は本当のことを河津に問いつめると、実は運んだのは密輸品で
襲ってきたのは元部下で裏切った多々良だという。
やがて河津の女性秘書、雪枝は殺され鴨井はその嫌疑をかけられる。
鴨井に殺しの濡れ衣をかけたのは多々良、そして河津に捨てられたと
知った久保は鴨井に助けを求める。
雪枝の恋人は鴨井を仇と追いかけ始め、鴨井はついに河津たちと対決する。

お話はこんな感じ。
最初、河津清三郎に東京への荷物運びを頼まれるので、
今までとは違ってこの東京行きが話のメインになるという新しい構成かと
思って期待したが、結局普通な感じ。
雪枝を殺す殺し屋が前回と同じ守田学なのだが今回は活躍が少ない。
守田学って人、目つきが恐いというか盲人のような目がはっきりしない感じが
すごく恐いのだよ。

でも今回は大阪時代から鴨井を慕う女の子、玉子(坂本スミ子)も「芸術的な仕事」を
するということで上京し(実はストリッパー)、途中から上京してくる田舎の母と弟の
ために自分はファッションモデルをしているということにして欲しいと一芝居打つという
エピソードがからんでくる。
もともと第1作では鴨井の母の墓をゴルフ場に変えられたということから話が始まった
くらいだから、「親を裏切るのは絶対あかん!」という生真面目さを見せる。
そこで上京してくるのが弟だけなのだが、この弟が実は雪枝の恋人だったという
あたりが今までと違って複雑なところ。

ラストの対決で久保菜穂子は死ぬのだが、その遺骨を鴨井が青森に届けるところで
今回は完。
単なるヤクザ同士の抗争だけでなく、こういう親子の情、を話の中心にからめたところが
今回の話の特徴。
その分、天知茂の刑事の活躍が少ないのが残念。
遊びも久保菜穂子と鴨井が最初に出会うダーツ合戦のシーンぐらいかな。
拳銃の腕を披露するシーンがあるのだが、天井の電球を割ったりするぐらいで
そんなに派手な事はしない。

遊びが少ないのは不満だが、親子の情の話をからめてヤクザ同士の抗争だけでは
退屈がちなシリーズに変化をつけたことはよかった。

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鉄砲犬


日時 2002年6月11日21:00〜
場所 チャンネルNECO
監督 村野鐵太郎

(詳しいデータはキネ旬データベースで)

田宮二郎の犬シリーズ第5作。
鴨井は博多で小玉(山下洵一郎)という若い男と知り合う。
彼の頼みで彼の母親のもとに金を届ける。
小玉は競輪の八百長に関係していてその元締めの安部徹や早川雄三から
追われているらしい。
鴨井も拳銃を置き引きに盗まれてしまい、その拳銃で小玉も殺され
窮地に立たされる。

監督が第3作と同じ村野監督のせいか、第3作同様遊び心にあふれている。
拳銃を投げて受け取り、投げて受け取るシーンは田宮の努力の賜物。
また敵の殺し屋魚方(守田学〜他の映画でも観た事がある気がするが思い出せない)
に拳銃の腕前を見せるところもいい。
投げたリンゴの芯を打ち抜くのは第3作でもやったが、今度は「オープン・アンド・
ファイヤーや」と言ってジッポー型ライターを3つテーブルに並べ、
1発目でその3つの蓋を開け、2発目で3つとも火をつけるところ。
「そんなわけねーだろ!」的な面白さがないとやってられない。
あとはラストで双眼鏡をのぞきながら、安部徹の手にある拳銃を撃つところ。
これもそんなことできるわけないのだが、名拳銃使いならでは天才技!

今回は得意の拳銃を最初の方で盗まれているのでピンチの際に拳銃を使えないのが
ストーリー上のミソ。
変わりにパンチで相手を倒したりするのだが、チンピラに絡まれた時に赤塚不二雄の
イヤミのまねをして「シェー!」をやってくれたりする。
このぐらいバカをやってくれないとこういう映画は楽しめない。

あと忘れちゃいけないのが天知茂の木村(しょぼくれ)刑事。
やはり彼が出てこないとこのシリーズ盛り上がらない。
主人公だけカッコよくてもこういう脇もキャラクターがしっかりしていても
こういう娯楽映画はダメだという事とがよくわかる。
プラス今回は元競輪選手で、八百長で身を持ち崩したアル中に小沢昭一。
この人もいいなあ。

事件がすべて解決し、ラストで小沢昭一が「いっぺんゼロまるセブンと勝負させたいなあ」
とおだてる。
「女にやたらモテて拳銃がうまい!」という設定は007からきてるんじゃないかと
思っていたがその勘ぐりはあながち的外れではないらしい。

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暴れ犬


日時 2002年6月9日
場所 録画ビデオ
監督 森一生

(詳しいデータはキネ旬データベースで)

田宮二郎、犬シリーズ第4作。(カラー)

鴨井大介(田宮)は簡易宿泊所で拳銃の売人、林と知り合った。
所が林は拳銃密売の元締め、宍戸組によって殺されてしまう。
林の恋人、さゆりは草笛光子の経営するバー「タワー」にダンサーとして
勤めるようになる。
さゆりのマネージャーとして働く鴨井だが、「タワー」を狙う宍戸組、宍戸組に
弟を殺された草笛光子との争いに巻き込まれていく。

第3作「ごろつき犬」で面白くなってきた犬シリーズだが、今回はトーンダウン。
やはりこういったオバカなアクション映画は敵役の魅力が映画の面白さを
際立たせると言っていい。
その意味ではこの映画は全くの失敗。
敵役が宍戸錠ほどの大物でもないし、またそれに匹敵しようとしていない。
別に役者の格を問題にしているんじゃなく、特徴、魅力がないのだ。

田宮のガンさばきのお遊びの要素も開店前の「タワー」での酒瓶の撃ちあいぐらいで
さびしい。
1ヶ所だけ遊びのシーンで言うと、アパートの天井裏に潜んでいた敵を拳銃でやっつけ、
「あいつテレビの時代劇の見すぎやな」と鴨井が言う所。
そのあと「ほな、こっちも時代劇風に」と言って刀をさやに収めるような動きで
拳銃を左のホルスターにしまう。
この拳銃の納め方は毎回するのと同じでいつも「特徴あるなあ」と思っていたのだが、
時代劇からヒントを得たものだったんですね。

前回登場した天知茂の刑事木村は今回登場せず、「同じ課の刑事」として大坂志郎
が木村と全く同じしょぼくれ刑事として登場。この刑事が占いに凝っている(?)
という事で「結婚の相がでてるな」とやたら占いのネタを話題にする。
この刑事はまあ魅力があったが天知茂ほど印象には残らない。

あと脇としてスリに芦屋小雁、簡易宿泊所のおかみにミヤコ蝶々。
今回は前作より落ちた。
第5作も一応観てみましょう。

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ノー・マンズ・ランド


日時 2002年6月8日14:30〜
場所 シネアミューズ・イースト
監督 ダニス・タノビッチ

(公式HPへ)

こういう戦争を素材にしたブラックユーモア映画は大好きだが
またもや名作が誕生したと言ってよい。

偏った意見だとは思うが、この映画が過去にあった戦争映画とは
違う点はマスコミの登場だ。
我々は現代の戦争はリアルタイムでその映像を見ることができる。
その取材現場の実態の一端が現れてると言っていい。

この映画のストーリーはマスコミの存在によって成立している。
テレビが騒ぎ出したから国連軍は重い腰をあげる。
主人公の兵士たちにアメリカ人記者がインタビューするところなど
面白くもあり、恐くもあり、腹も立つ。
そして救い様のないラストを迎え、絵になるものがなくなると
マスコミはまるで他人事のように立ち去るだけ。
マスコミは現場を引っ掻き回して結局何も解決せずに立ち去るだけだ。
地雷を背中にした兵士はなすすべもなく塹壕に取り残される。

報道の無責任さ、野次馬根性には普段テレビを見ていても
腹が立つことがあるが、別に日本だけでなく世界的なことなのだ。
この映画の主人公の三人の不条理な運命以上に、世界同時中継をして
それが世の中を動かすマスコミの描写が印象に残った。

マスコミは時に正義の味方面をしているが実態はあんなものだろう。
個人的にはその点が面白かった。

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摸倣犯


日時 2002年6月8日11:25〜
場所 渋東シネタワー1
監督 森田芳光

(公式HPへ)

言わずと知れた2001年の宮部みゆきのベストセラーミステリー、
「摸倣犯」の映画化。
この原作は去年の秋読んでいる。途中(第2部など)僕はちょっとだれたのだが
全体としては膨大な長さにも関わらずものすごく面白く読んだ。
今年になって森田芳光が中居正広で映画化と聞いていやな予感はした。
(私のイメージでは犯人のピースは木村拓哉なのだよ)

予感のとおりだった。
原作をまともに映像化したら5、6時間でも足らないような膨大な長さだ。
それを2時間ばかりにまとめようとするのだから必然的に無理が出る。
だから切る所はばっさり切って、別のストーリーを作るぐらいでなければ
まとまらないのだが、そんな力はないのか原作をダイジェストしただけ。

まあ切ったら切ったで「あのシーンがない!」と怒る原作ファンもいるだろうから
誰がどうやったって難しいとは思いますが。

ダイジェストしてしまったので話をさらっと流すだけなので、クライマックスと
言うべき盛り上がりがない。
ラストのテレビ生放送のシーンが一番のクライマックスなのだが、盛り上がりに欠ける。
しかしそのあとの中居が・・・するシーン(未見の方のために伏字)はどうか?
あれはないんじゃないかなあ。何が起こったかよくわかんなくなっちゃうし。
そしてラストシーンの未来に希望をたくす象徴の登場。
あれもないんじゃないかなあ。(第一、あれ誰の○○なの?)
記号として「いかにも!」って感じで文法的にも古いし。
「原作にはないラストがある」って聞いてたから期待したけどガッカリ。


かといってこの作品に魅力が全くないわけではなく、見所はやはり山崎努の迫力の
演技だろう。田口淳之介、木村佳乃とテレビを見ながら犯人をあばく事を
誓うシーンなど迫力満点。
あと他の出演者ではジャニーズJrの田口淳之介。
テレビ朝日の「裸の少年」を観てるとイマイチ印象が薄いのだが、この映画の田口は
正統派美少年として画面に彩りを添え、好演している。
演技がいい悪い以前にあまりセリフもないのだが、陰惨な話の清涼剤として
彼の起用は効果的だったと思う。

原作ファンの方は期待はずれになります。
原作を読まずに映画だけ見た方の感想が聞いてみたいですね。


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突入せよ!「あさま山荘」事件


日時 2002年6月2日13:30〜
場所 新宿東映
監督 原田正人

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この映画は連合赤軍側を一切描いていない。
その点をそう思うかでこの映画の印象はだいぶ変わってくるだろう。
連合赤軍は単なる「悪のテロリスト」として描かれ警察からみた
10日間の攻防戦映画になっている。

そこをそれこそ「新幹線大爆破」みたいな単純なサスペンス映画として
割り切って見ることができればこの映画はよく出来ている。
僕は単なるアクション映画として割り切ってみたので
充分楽しむことが出来た。
(連合赤軍については「光の雨」でたっぷり観たので)

後藤田正晴警察庁長官(藤田まこと。そっくり!)の直接命令で
警察庁から長野県警の応援に行く事になった役所広司。
彼を物語の中心に据え、長野県警の面子を保ちながら長官の都合のいい命令を
遂行する一種のドタバタサスペンス劇は笑いを禁じえない。

役所広司は僕の中では「いま日本映画界でいちばん安心してみてられる男優」なので
彼が主演だというだけで、ほっとしていられる。

長野県警は「プライドだけは一人前の田舎のウスノロ」として描かれ
(東京側は誰もタバコを吸わず、長野側はみんなヘビースモーカーばかり。
このあたりの描写も象徴的だ)「こんなバカ相手にやってられないなあ」と
思いつつも、組織だからこそ根回しをうまくやりながら(伊武雅刀の本部長に
突入作戦を承認させる所など)この事件に立ち向かうあたりは
まさに警察版「プロジェクトX」といった所ではないだろうか?

「弁当が凍って食べられない」「強行偵察の写真が使えなかった」というような
無数のエピソードを重ねながら、飽きがこない犯罪映画に仕上がっている。
原田正人の演出は早口でセリフはやや音が小さく、時に何を言ってるか
よくわからないときがあり、(「金融腐食列島・呪縛」でもそうだった)
その辺が不満が残るが、この映画、批判も多いようだが僕は楽しんだ。

(尚、連合赤軍側は武田真治と鈴木一真が出演。但しチラッとしか写らない。
クレジットで説明されてわかる程度)

ビデオになったら暇な時にもう一度みたいな、とも思う。
よかったよ。
ただし単なるテロリスト映画として割り切って見る心構えが必要だけど。


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スパイダーマン


日時 2002年6月1日19:00〜
場所 新宿スカラ座1
監督 サム・ライミ

(公式HPへ)


特に映画好きでない友人たちと会話する時に「最近映画観た?」
と聞かれると説明するのが面倒な映画ばかり見てきたけど、
久々に話題になりやすい映画を観た。

簡単に言って思ったほど面白くなかった。
「スパイダーマンの活躍シーンはすごいよ」という評判を
聞いていたのだが、期待が先行したせいかやや拍子抜け。
軍需会社のタイムズスクエアでのイベントシーンで
ヒロインが落っこちそうになるところとと最後の
最後のブルックリンブリッジ(違うかな?)でゴンドラと
彼女の両方を救うシーンのみ。
それももう少し長いかと思っていたら割と短い。

いつも思うけどCGという技術ばっかりに頼っちゃダメだよね。
「落っこちそうになる登場人物」というシチュエーションでは
「インディジョーンズ・魔宮の伝説」の方がよっぽどすごかった。

ここからが僕なりの感想なんだけど、この映画、東宝の「変体人間シリーズ」
と始まりは一緒なんですね。
何故大学でスーパースパイダーを作ったかの説明がないけどこれもなんか
軍需目的なのかなあ。
敵のグリーンゴブリンなんか完全に軍事目的だし、この辺は「ガス人間」「電送人間」
と一緒ですね。
そういう変体人間が2種類も登場するから、まさしく「ガス人間対透明人間」みたいな
もんです。

東宝だと大抵の変体人間は悪に走るんだけど、この映画の主人公は若さあふれる
正義感をもって悪を退治する。(もっともコンビニ強盗みたいなせこいのが多いけど)
それと東宝だとまず体の変化に気付いた時点で大学の蜘蛛研究室に
「もとの体にもどしてくれ!」って相談に行きそうなもんだけど、この映画では
その辺はあっさり受け入れる。

このあたりなんかは日本は原爆を落とされて戦争に負けたもんだから
「科学なんか発達しすぎるとろくな事はない」って悲観的に思っていて、
アメリカ人はその科学のおかげで戦争には勝ってるし、「科学の発展は、時にはちょっと
道を踏み間違えるけど大体においていい事だ!」楽観的に考える民族性の違いが
でてるような気がするって考えるのは深読みのしすぎ??

もちろんパート2が作りやすいラストにはなってたけど、次は多分観ないだろうな。

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