2003年3月

棒たおし! キャッチ・ミー・イフ・
ユー・キャン
黒の死球 黒の駐車場
007/ダイ・アナザー・デイ 国際秘密警察・鍵の鍵 社員無頼(反撃篇) 黒の商標
ビロウ 夜の配当 背広の忍者 野獣狩り
血とダイヤモンド 弾痕 大巨獣ガッパ 真昼の罠

棒たおし!


日時 2003年3月30日18:30〜
場所 テアトル池袋
監督 前田哲

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次雄(谷内伸也=Lead)の高校の普通科は同じ高校の工業科に体育祭で連敗記録を
作っていた。
そんな中、同じクラスの勇(金子恭平=FLAME)に棒たおし競技に誘われる。
工業科にいじめられた学(古屋啓多=Lead)も加わり、体育祭の棒たおしに青春を
かける。

ブレイクのないアイドルグループ、Lead(http://www.lead.tv/index1.html)の谷内伸也
を主演に、同じくブレイクのないFLAME(http://www.fl-a-me.com/index1.html)の
金子恭平が共演した青春映画。

断っておくが私は男性アイドル映画には寛容である。
たのきん映画も全作品見てるし、SMAPの「シュート!」も嵐の「ピカ☆ンチ」も見ている。
そんな私でもこの映画は誉められた物じゃない。

まず演出のポイントがずれている。
アイドル映画というのはまずは主役はアイドルだ。
だからアイドルをきちっと見せなければならない。
観客が見たいのはお目当てのアイドルの笑顔や泣き顔や苦しそうな姿や喜びあふれる姿を
見たいのだ。

なのにこの映画は意味のない長まわしとロングショットが多いのだ。
「なんか相米慎二みたいだなあ」と思ったら前田哲監督のデビュー作は相米慎二総監督の
「ポッキー坂物語・かわいい人」というオムニバス・タイアップ映画の第3話なんだと。
主人公・次雄が思いを寄せる小百合との自転車のシーンなどをロングショットの長まわし
で撮っても、主役の表情が見たい観客にとっては退屈な事この上ない。

それに輪をかけたように画が汚い。
根本的にピントが甘いのだ。
ボヤーとした映像にロングショットで主役アイドルを撮られてもなあ。
また体育祭の棒たおしの話なので季節は9月10月のはず。
ならば秋晴れのきれいな青空をバックにして欲しいのだが、(宮崎にまでロケに行ったにも
関わらず)曇り空ばっかりで、しかも色調は寒色系で寒寒としている。

実際に撮影が行われたのは2003年の1月2月だったらしいが、それならフィルター
かけるなりしろよ。
素人の私にだってわかるようなことが出来ないくらい今の日本映画の技術レベルは
落ちたのだろうか?
画の汚さは「ラヴァーズ・キッス」でも気になったが、こちらの方は完成度がやや高いので
少々許して見る気にはなるが、この映画はひどい。

また本来なら青春映画にありがちなベタなギャグもあって、明るい映画になる可能性だって
あったのに全然笑えない。
少なくとも脚本段階では笑えるシーンもあったろうが、編集の間の悪さによって
消えてしまっている。
クライマックスの棒たおしシーンも松田聖子の「スイート・メモリーズ」を流して
スローモーションでロングでとらえるという盛り上がりのなさ。

まあこの棒たおしシーンが選手全員が上半身裸で戦うので、美少年ファンには多少は
美味しいかも?というのがせめてもの救いか。

おそらくは「ウォーターボーイズ」的な明るい、恋あり、友情あり、
親子の絆ありの青春映画になる可能性はあったのだが、勘違いな演出、技術力のない
スタッフによって滅茶苦茶にされてしまった。

脚本は城戸賞受賞作(この賞、まだあったのか)だったからそれなりの完成度だったろうに。
折角の映画出演だったのに惜しかったなあ、LeadとFLAME。
それよりもっとかわいそうなのはお金を払ったファンだけどね。


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キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン


日時 2003年3月23日 15:50〜
場所 新宿プラザ劇場
監督 スティーブン・スピルバーグ

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16歳の時の両親の離婚をきっかけに家出したフランク(レオナルド・ディカプリオ
以下デカプー)。
彼は生活のために小切手詐欺を始める。社会的に信用のある職業、
パイロット、医者、弁護士に扮して次々と詐欺を働くが、彼の寂しさは
癒されない。やがてFBI捜査官(トム・ハンクス)に追い詰められていくが、
二人の間には奇妙な友情が生じはじめる。


もう30近いデカプーだけど、本作では高校生役。
でも全然違和感なく作品世界に溶け込んでいる。
本作の売りは「デカプーがパイロットをはじめ様々な『社会的に信用のある職業』
に扮し小切手詐欺を行い、FBI捜査官との追っかけ合戦を繰り広げる」
ってことなんだけど、それだけではない。

最初は僕もこの「ルパン三世対銭形警部」みたいなものを予想していたのだが、
むしろデカプーとトム・ハンクスの関係は擬似親子関係になってくる。
「瓶のラベル集めが趣味」と意外と子供っぽい面をもった、クリスマスを家族と
すごせずに一人ぼっちで過ごさざるを得ないデカプーの寂しさが印象に残る。
それを考えるとタイトルは「捕まえられるんなら捕まえてみな」というより
「出来るなら捕まえて」という訳もありなのかも。

こう書くと今度は「二人の擬似親子関係」ばかりの話と思われそうだが、
そこはスピルバーグ、ちゃんと詐欺の面白さ、60年代ノスタルジーも描き出して楽しい。
(特にオープニングアニメーションには、僕としては昔のウイスキーのCM
「アンクルトリス」を思い出した)

飛行機の翼からデカールをはがしてそれを小切手に張るのが成功したあと、ホテルの
風呂いっぱいに飛行機のおもちゃが入ってるシーンが大笑いした。
あとはマイアミ国際空港でFBIを外にひきつけるシーンね。
でもラスト近くの飛行機から逃げ出すシーンでは「そんなわけあるかい」と思ったけど、
あれも実話なんだろうか?

60年代ノスタルジーとしては自分としては「ゴールドフィンガー」が出てきたところが
好きだ。ボンドと同じスーツを買ったデカプーが、ショーン・コネリーの顔真似で
眉をひそめるところはよかった。
あとテレビの医者のドラマとか、弁護士のドラマとか、マーティン・シーンも
テレビと一緒になって歌を歌うシーンとか後ろにいた外人のグループには大受けだった。
バラエティ番組など日本人には解らないけど、きっと「シャボン玉ホリデー」が登場
したようなもんだったのかも知れない。

見終わってすぐはデカプーの寂しさと詐欺の面白さが残ったが、しばらくしてから
スピルバーグ自身も若いころはスーツにアタッシュケースを持ってユニバーサルの
撮影所にもぐりこんで、売り込みのチャンスを狙っていた話を思いだした。
またスピルバーグも007のファンで、インディ・ジョーンズを作り3作目には
インディ・ジョーンズの父親役でショーン・コネリーを出演させている。

ひょっとしたらスピルバーグはデカプーの主人公に自身の青春時代を投影させて
いるのかも。
スピルバーグの自伝的要素をもった映画としてみると、なにか違ったスピルバーグ観が
生まれてくるかも知れませんね。

難点を言えば出てくる60年代の車が(それはいいんだが)みんな新車のように
ピカピカなんだ。
しかも画面の色調も暖色系。
ちょっとノスタルジックに60年代を美化しすぎてる所が気になる。
個人的にはあんまり過去を賛美しすぎるのは好きじゃないもんで。


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黒の死球


日時 2003年3月23日
場所 録画ビデオ(チャンネルNECO)
監督 瑞穂春海
製作 昭和38年(1963年)

(詳しい内容はキネ旬データベースで)


黒シリーズ7作目。

プロ野球球団イーグルスのスカウトマン浜田が長野県の旅館で死亡した。
彼の死に疑問を抱いたルービスのスカウトマン柏木(宇津井健)は独自に
調査を開始する。今はライバルとなった柏木と浜田だが、もともと柏木は
浜田にスカウトされてプロ野球の世界に入ったのだ。
柏木にとって浜田は恩人だ。
新人高校球児・菊川(倉石功)の争奪合戦に敗れての自殺だと思われた
浜田だったが、彼は死んだ日に女性物の高級腕時計を買っていた。
しかし、遺品にはその時計はない。では誰に渡したのか?
しかも死の直前にある男の左腕が骨折したレントゲン写真を医者に鑑定に
出していた。そのレントゲンは誰の左腕?


黒シリーズ、今度はプロ野球のスカウト合戦。
ミステリーとしての面白さに加えて、柏木と浜田、柏木と菊川の人間関係も
丁寧に描かれ、私のような素人は知らなかったスカウトマンと選手の人間関係、
信頼関係がよく解る。
考えてみれば相手は所詮は高校生。それも野球しかやった事のないような子供だから
金が絡んだプロのどろどろとした人間関係に飛び込んだとき、やはり最初に出会った
スカウトマンを信頼するだろうし、もしくは信頼したからこそプロ野球に入るのだろう。

ミステリーとしては謎が続出し、最後まで先が読めない。
しかし最後の最後になって急に新事実が続出でちょっと卑怯。
また県の体育課(?)みたいなとこで高校生の体力測定の記録を見せてもらって
そこから野球未経験だが素質のあるものを探す、ということをするのだが、
今ならプライバシーの問題で不可能では?
時代の違いなのか、ストーリーの雑さなのかは判断がつきかねるけど。

出演は主役・柏木に宇津井健。あんまり元プロ野球選手には見えない気がする。
もっとも俳優がプロスポーツ選手を演じるといつも違和感がつきまとうが。
期待の高校球児にまだ若い倉石功。このころは美少年、というかさわやかな
少年だったのですね。
そして肺病もちの高校野球部顧問に神山繁。
あとヒロインは相変わらず、藤由紀子。
アップにした髪形が1960年代の流行を感じさせる。
(別にこの作品に限ったことではないけれど)

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黒の駐車場


日時 2003年3月21日
場所 録画ビデオ(チャンネルNECO)
監督 弓削太郎
製作 昭和38年(1963年)

(詳しい内容はキネ旬データベースで)


販売網を持たない製薬会社、泉薬品は丸木製薬の下請けだったが、
社長・泉田(田宮二郎)は丸木製薬の営業部長、松崎(見明凡太郎)に
可愛がられていた。もともと泉田はヤクザな暴力バーを経営していたが
松崎に拾われて今の会社を作ったのだった。
そんな丸木製薬に新社長・角沼(小沢栄太郎)が就任した。早速角沼は
泉薬品に合併を申し込む。松崎にすべてを任せた泉田だったが、
その松崎が自殺してしまう。
松崎の自殺が信じられない泉田は独自に犯人を探し出そうとする。
どうやら泉薬品が準備中の画期的な新薬に絡んで殺されたらしい。
泉薬品に近づく丸木のライバル会社の吉野製薬の女社長・吉野夏子。
果たして真相は?


「黒の駐車場」って言うから不動産取引に絡む「黒シリーズ」かと思ったら
大違い。新薬製造が今回のテーマ。
ヤクザ上がりの男に製薬工場を経営できるのか?という根本的疑問は残るが
それを除けば新薬の開発、販売、果ては株価まで巻き込むストーリーは
よく出来ている。

松崎を殺した犯人についてはそんなに意外性はないのだが、小沢栄太郎の真の
目的が最後まではっきりせずに興味を引っ張る。
やっと松崎殺しの真相が明らかになり、新薬の販売先を決める時の逆転、逆転が
あっと言わせる意外感があって期待以上。
しかもなんと言っても見終わった後に爽快感が残る展開なので後味はいいですね。

途中、田宮二郎がヤクザ上がりの過去を生かして(?)やや力で真相に迫るのが
残念。ただ脅かして殴ってネタをはかせるのは少し能がない。
このあたり、もう少し頭脳戦になってれば、「黒シリーズ」中の最高作になったかも
しれないと思うと残念。
惜しい。


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007/ダイ・アナザー・デイ


日時 2003年3月16日19:20〜
場所 新宿ミラノ座
監督 リー・タマホリ

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北朝鮮の軍部に作戦活動のため侵入したボンドだったが、捕らえられ
14ヶ月の監禁を受ける。
ようやく釈放されたボンドだが、ボンドの釈放と引き換えに北朝鮮の工作員・ザオ
を引き渡さねばならなかった。ボンドが秘密をしゃべったと思われ、これ以上
敵に渡しておくのは危険と判断されたからだ。
そのせいでMI6からもお払い箱になってしまう。
自分の名誉回復のため、ザオを捕らえるべくボンドは活動を開始する。


007シリーズ、40周年20作記念作品。
記念作品だけあって過去のボンドシリーズのオマージュ(もしくはリメイク)シーンも
多く、それを探し出してるだけでもファンの私にはニヤリニヤリ。
このサイトでは今まで取上げてないけど、実は私の映画体験の原点は007でも
あるのだ。
ショーン・コネリーの「ゴールドフィンガー」を見て以来のファンなのだよ。
さすがにロジャー・ムーアのころのおふざけにはやや呆れもしたし、最近は飽きがきて
「もう新作は見ない」と思って見なかった作品もある。
(「トゥモロー・ネバー・ダイ」だけ劇場で見ていない)

そんな私には思い入れの深い007だが、近年は悪役が麻薬王とか小物になったの比べ、
今回は国家的規模の悪役になっており、「ボンドの活躍が戦争を食い止める!」という
ショーン・コネリー時代のクライマックスになっており、その点がまず合格!

東西冷戦も終わり、世界大戦の危機は一応は去ったが、局地戦はまだまだある。
冷戦の時代がボンドの基本的設定だから、最近は悪役が小さくなるのも仕方ないか
と諦めていたら、いよいよ北朝鮮登場!
ここまで悪役の国を特定したのは昔のソ連ぐらいだなあ。
次の作品でもまたまた北朝鮮の一部軍人が暴走するってのもいいかも。
(あまり真剣に読まないように。単なる映画のお話ですから。現実世界の意見とは
また別です)


さっきも書いたけど今回はリメイクシーン、回帰シーンが多い。
よく言われてることも含めて気づいたことをざざっと書いてみる。

1、ボンドカーがアストンマーチン。やっぱりこれでなくちゃあ。
 (透明っつうのはちょっとやりすぎだが)

2、そのアストンマーチンに助手席脱出機能付。これは2代目Qとの説明にはなかった
 ので初めての人にはわかりにくいかも、でもオールドファンにはたまらなく嬉しい機能。

3、縛られてるところへレーザーが来るってのが「ゴールドフィンガー」。
 今回はパワーアップしてます。

4、ダイヤモンドをつけた人工衛星ってのが「ダイヤモンドは永遠に」だな。

5、ロンドンの地下鉄の駅が秘密基地、ってのが「007は2度死ぬ」の
 丸の内線を思わせる。

6、雪山のスノーボードチェイスは「女王陛下の007」。

7、Qの研究室で登場するハンディロケットが「サンダーボール作戦」。

8、同じくQの研究室で登場するナイフがつま先からでる靴が「ロシアより愛をこめて」

9、フェンシングの決闘シーンのあとの「このクラブに対する弁償は?」のセリフが
 「ゴールドフィンガー」のゴルフ対決のあとの「このクラブに対する弁償は?」
 「大丈夫、私がオーナーだから」のシーンを髣髴とさせる。

10、そして極めつけなのがこのシーン。ハバナでボンドが自分を「鳥類学者」と
 名乗るシーン。もともと原作者のイアン・フレミングがスパイ小説の主人公の名を
 「ジェームズ・ボンド」としたのは執筆中に傍らにあった「西インド諸島の鳥たち」
 という本の著者、ジェームズ・ボンドから名を借りたといわれている。
 だからハバナの海岸でジンクスを口説いてるシーンで本をボンドが持っているのだが、
 「ジェームズ・ボンド著」という文字がその本のアップで写らないかと期待したが
 なかった。写ったら私は大爆笑だったろうが、知らない人にはかえって解りずらかった
 かも知れないから、これでよかったのか。


今回は主題歌も口ずさんでみたくなるような憶えやすいマドンナの歌。
記念作品にはふさわしい出来!2重丸!


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国際秘密警察・鍵の鍵


日時 2003年3月15日
場所 録画ビデオ(衛星劇場)
監督 谷口千吉
製作 昭和40年(1965年)

(詳しい内容はキネ旬データベースで)


国際秘密警察シリーズ第4作。

東南アジアのトンアン国では一部の過激派組織が政権転覆を狙っていた。
リーダーはゲゲン(中丸忠雄)。彼は日本の横浜を拠点にして麻薬、売春、賭博で
ブラックマネーを貯めている。そのお金が武器購入に使われたらトンアン国にとって
脅威となる。
トンアン国王子は国際秘密警察の北見(三橋達也)に1000万ドルのゲゲンの
ブラックマネーを盗んでほしいと言う。トンアン国情報部のミーチン(浜美枝)
や金庫破りの名手・白蘭(若林映子)も一緒だ。
3人で横浜に到着したが、ゲゲンと対立するギャング組織のボス・サイ(黒部進)
に捕まってしまう。しかし敵の敵は味方。北見たちとサイは一旦は手を組み、
ともにゲゲンの1000万ドルを奪う計画を立てる。
果たして結末は?

1作、2作はややお遊びが少なかった国際秘密警察シリーズだが、この作品は
無国籍ムード満載で、北見の女に対する手の早さも適度なユーモアで
娯楽色満点。

若林映子、浜美枝の豪華共演は本家007よりこちらのほうが早い。
(「007は2度死ぬ」は1966年。日本情報部員が丹波哲郎ではなく
三橋達也だったら、さぞすごい国際秘密警察になったのにね)

で話のほうは最初ゲゲンの屋敷の金庫にあると思われた1000万ドルだが、
ゲゲンのもつ貨物船にあるとわかり、そこに検疫所から消毒に来たという
偽って乗組員を下ろし船内を捜索するというベタなお芝居。
で、案の定、部下(大木庄司と春日章良)は引っかかるのだが、ボスの中丸忠雄には
見破られる。この辺のイージーさが安っぽさが魅力といえないこともない。

結局金庫の中に入っていたのは暗号文。
で今度はその暗号文をめぐっての中丸忠雄と黒部進との取引になっていく。

そして男優陣ではまずは中丸忠雄と黒部進。
先日の黒部さんとのパーティでもこの作品は話題になったが、2人の無国籍ボス役は
なかなか見もの。クレジットでも二人は同格ですから黒部さんにとっては出世ですね。

それより一番の怪演はやっぱり天本英世。
黒部進の部下なんだが、コブラを飼うのが趣味で「このコブラに人が噛まれて死ぬのが
見たい」という切れっぷり。
それだけでなく、高圧電線を握り、パチパチと火花を散らせながらの拷問はなかなか
の見る価値あり。
一番場面をさらったのは、やっぱりこの方ですね。
三橋達也はこの助演男優陣3人に完全に食われちゃいました。

国際秘密警察シリーズでは傑作の部類に入ります、ハイ。


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社員無頼(反撃篇)


日時 2003年3月15日
場所 録画ビデオ(衛星劇場)
監督 鈴木英夫
製作 昭和34年(1959年)

(詳しい内容はキネ旬データベースで)


先月放送の「社員無頼(怒号篇)」の続き。

小牧雄吉(佐原健二)は大阪に到着した。
彼を待っていたのは親友の由良(藤木悠)の呼び出しによるものだった。
由良は大阪で柿原工業の親会社となった興和工業の幹部と知り合いになった
というので紹介したいと言うのだ。
話を聞くともともと隈田(上原謙)は社長派で対立する渡辺専務(中村伸郎)は
社長の失点を欲しがっていたので、隈田の件はいい材料だった。
渡辺専務に頼まれて、鬼田(有島一郎)に頭を下げ金を渡しもう一度柿原工業に
入社する小牧。但し臨時雇いの小使いとしてだった。
隈田が各納入業者から水増しの請求書を書かせてリベートを取っている事実を
つかんだ小牧は逐一、渡辺専務に報告した。
だが渡辺専務からは何の連絡もない。
どうなる?この勝負。

「怒号篇」と同じくサラリーマンハードボイルドの傑作!
前作の時も書いたけど、サラリーマンの復讐物語だが犯罪に走るわけでなく、
ひたすらサラリーマンに出来そうな合法的な範囲でひたすら淡々と敵を追い詰めていく。
鈴木英夫らしい、乾いたタッチだ。
(この場合「乾いた」というのはやたら泣き叫んだりするウエットな感じではないという意味)

でも、やたらとあおりの演出が多い昨今のテレビドラマを見飽きてる今見ると、ものすごく
新鮮で楽しい。
これこそ鈴木英夫流の魅力と言っていい。

前作では白川由美、水野久美との関係が気になったが、むしろ今回はこの二人との
関係は進展せず、水野久美の友人の団令子が台頭してきたのがちょっと前作との
関連づけがまとまってないような気がして気になる。
結局白川由美とは別れたままだし、水野久美は結局病気の母が死んですぐに田舎に
帰っちゃうし。
むしろ女性関係では途中で挿入される隈田の妻(久慈あさみ)を恋人を隈田に取られた
腹いせにバーで小牧が誘惑あたりのキザっぷりが楽しい。

勝負の方は、その後渡辺専務は社長と手を打ってしまい、隈田の件は黙認する代わりに
2年後に渡辺専務が社長になるように密約が出来てしまう。
当然、小牧はお払い箱。
もはや万策つきたと諦める小牧だが、実は団玲子が大阪の財閥の令嬢で、そのつながりで
叔父の大東工業の相沢社長(千田是也)に柿原工業の株を買ってもらうことで
隈田をはじめとする興和工業の締め出しには成功する。

何せあおりの演出がない監督だから下手にやると単なる盛り上がりのない映画に
なってしまう。
そのぎりぎりのところの違いがよく解らないのだが、実にきわどい演出。
このあたりの違いを明らかにしたい衝動に駆られるが、なかなか難しそうだ。
やはりワン・アンド・オンリーな監督なのだなあ。

出演では主演の佐原健二がやや硬いの残念。有島一郎はコミカルなところは一切ないが
それでもイヤミがあってなかなか捨てがたい。
あとは大阪の興和工業の湯原課長の村上冬樹かな。2、3シーンの登場だが
大企業のドライな課長ぶりが決まってる。(反面、大阪人ぽくなのが気になるが)

この作品も鈴木英夫の代表作の一つ。


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黒の商標


日時 2003年3月9日
場所 録画ビデオ(チャンネルNECO)
監督 弓削太郎
製作 昭和38年

(詳しい内容はキネ旬データベースで)


国際レーヨンのワイシャツの商標に酷似したマークをつけた
シャツが販売されたのを発見された。国際レーヨンはそのニセシャツの
出所を調べ始めるが、担当していた井手は関西出張中の列車内で殺された。
不信に思った杉野(宇津井健)は独自に調査を開始する。
井手の調査の後をたどって大阪に行く杉野。
大阪丼池の繊維問屋街で働く友人神後(早川雄三)に協力を依頼、繊維業界の
情報通である経営コンサルタントの田子(浜村純)を紹介してもらう。
だが田子も失踪。田子の娘・雪子(藤由紀子)と犯人を追う。


「黒シリーズ」も宇津井健が主演だと主人公は正義の味方。
田宮二郎のような悪漢ではない。

前半、自分の過去を滅茶苦茶にしたある男が今回のニセ商標の犯人ではないか
と考え、復讐を誓う浜村純の形相は迫力満点。
この後、正義感だけは強い若輩の宇津井健とコンビを組み、「野良犬」の
志村喬と三船敏郎とか「踊る大捜査線」の織田裕二といかりや長介のような
師弟関係のもと、犯人追求に当たるかと思ったら、すぐに浜村純は死んでしまって
ガッカリする。

話の続きを書いちゃうと結局、ある新興の大手スーパーの社長(三島雅夫)が
犯人で、自分の事業拡張のためにニセモノを作りまくってる、みたいな
感じになる。
もちろん口封じのために国際レーヨンの井手も浜村純も殺しているのだ。
さらにエスカレートしてそのスーパー社長は浜村純を殺した実行犯の義弟
(高松英郎)まで殺そうとする。

で、三島雅夫が高松英郎の内縁の妻(江波杏子)を殺そうとする時、ウイスキーではなく、
氷に毒を仕掛けるという、なんだかシャーロック・ホームズに出てくるような
古典的なトリックには笑った。案の定、高松英郎にすぐ見破られちゃうし。
終いには高松英郎の方が逆に三島雅夫を殺し、荷室に排気ガスが充満する
仕掛けのトラックで藤由紀子を殺そうと逃げまくる。
それを宇津井健が車で追いかけるというカーアクションにまで発展してしまう。


でもそういう粗暴犯の殺人劇では興ざめしてしまう。
「黒シリーズ」ってそういうのじゃないような気がするんだよね。
「黒シリーズ」の面白さってのは知能犯の企業犯罪がモチーフになってる
ところだと思ってるのだが。

商標がついてるかついてないかで値段が変わってしまう、ブランド指向の
日本人心理をついたブラックスリラーになりそうな話だっただけに
後半のアクションは余計。
ちょっと路線が違ってたなあ、今回の「黒シリーズ」は。


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ビロウ


日時 2003年3月9日16:10〜
場所 新宿オデヲン座
監督 デヴィッド・トゥーヒー

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1943年、第二次世界大戦の太平洋で、米潜水艦タイガーシャークは
撃沈された病院船の生き残り3名を救助した。3名のうち一人は看護婦で女性。
そんな時にドイツの戦艦と遭遇し、潜行してやり過ごそうとする。
ところが突如艦内にベニーグッドマンの「SING SING SING」が響きわたる。
誰かがレコードをかけたのだ。救助した3名のうち一人がドイツ飛行士の
捕虜とわかり、指揮官に有無を言わさず殺される。
そんな時、看護婦は艦長室で航海日誌を見つけ読んでみる。
しかし数日前から筆跡が変わっている。では前の艦長はどうしたのか?
聞いてみると、数日前この潜水艦はドイツ艦船を撃沈させたがその成果を確認すべく
浮上した甲板で、艦長は誤って海に落ち死亡したという。


潜水艦ものと怪談ものをミックスさせた新しいタイプの映画。
潜水艦映画は好きなので、「急速潜行!」「ソナー探知」「潜望鏡深度まで上昇」
「敵艦爆雷投下!」「被害状況報告!」といったような潜水艦映画にありがちな
お決まりのセリフ、シチュエーションはあるので、それを楽しみに行ったので
その点では充分満足。
実際はどうであるか知らないが、リアリティのあるセット、役者陣は見ていて
楽しい。

でもそれだけなんだな。
ストーリー的にはこの後、舵が故障し、数日前にドイツ艦船を撃沈させた
場所に戻ろうとしてしまう。
結論を書いちゃうけど、実は数日前にこのタイガーシャークが撃沈したのは
ドイツ艦船ではなく、イギリスの病院船。つまり救助した3人の乗ってた
船というわけ。
浮上した甲板で艦長たちはそれを知り、4人の幹部たちは「なかった事にしよう」
みたいな話から仲間割れになり、艦長は殺された。で艦長の呪いが船を
元の場所に連れ戻す、みたいな話なんだな。

でも救助された病院船の3人も、助けたタイガーシャークの乗組員も早く気づけよ。
場所とか日時は大体わかってるんだから「なんか変だぞ」って誰か気づいても
いいと思うのだがなあ。

この手の怪談話は「この物語は実話に基づいています」という一言で
「おー恐〜〜〜い。やっぱりそういうことってあるんだね。人間の科学では
解明できない不思議な話ってまだまだいっぱいあるんだねえ」と俄然
見終わったあとの後味が変わるのだが、これ、そういうわけじゃないもん。
だから観客の感想は「そんなわけあるかい!」の一言で終ります。

さっきも書いたけど、潜水艦映画のお決まりセリフ、シーンを楽しみに
来たならば、元は取って楽しめます。
それ以上のものを求めちゃダメですね。
テレビシリーズ「トワイライトゾーン」の1エピソードなら面白かったと思うが
1時間45分持つ内容じゃない。


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夜の配当


日時 2003年3月8日
場所 録画ビデオ(チャンネルNECO)
監督 田中重雄

(詳しい内容はキネ旬データベースで)


伊夫伎亮吉〜イブキリョウキチ(田宮二郎)は世界レーヨンという
繊維会社の元社員。ある日、彼は世界レーヨンを訪ね、新製品のポリレンは
名称が伊夫伎の名前ですでに登録してあるから、世界レーヨンを訴えるという。
文書課長(早川雄三)は泡を食って上司の石神常務(山茶花究)に報告する。
仕方ない、伊夫伎から権利を買い戻すしかない。
だが安心したのもつかの間、今度は伊夫伎と世界レーヨンの裏取引を
証明する文書を公表し、世界レーヨンのイメージダウンをはかる。
伊夫伎の世界レーヨンに対する攻撃はまだまだ終らない。


辞めた会社に復讐する、というサラリーマンなら多分誰でも一度は夢見る
ストーリー。あんまり期待せずに見始めたのだが、すばやいテンポに
どんどん引き込まれる。
解決したと思ったらまた次の攻撃、ととどまる事を知らない田宮二郎の
攻撃に私は喝采を贈っていた。
いやーこの辞めた会社に復讐する気持ち、よーく解るんです。
私自身もそういう気持ちになったことありますから。

デザイン室のデザイナーが、自分のデザインを高名なデザイナーが
ちょっと手を入れただけでサインを自分のに書き換えられてしまう
エピソードもいかにもありそうで面白い。
あんなことされれば会社を裏切りたくなるわなあ。

そして今度は世界レーヨンは新工場を富士山のふもとに作ろうとするのだが、
その一部を誰かが買い取ってしまってるので、その土地を買い戻さなければ
工場は出来ない。
「誰が買いとったんだ!」と怒る山茶花究の元にヒュルヒュルとヘリコプターが
降り立ち、中から田宮が出てきて「この土地を買いたいそうで」
と言ってくるあたりは笑った。

最後には憎い山茶花究の常務は失脚、となるのだが、エンディングで田宮が最初の
情報提供者である世界レーヨンの女性社員(藤由紀子〜後の田宮二郎夫人)に
「あなたは変わってしまった。昔のあなたのほうが素敵だった」と言われ
改心してしまうのが難。
最後まで悪漢でいて、「次はどの企業を狙おうか」と次のターゲットを定めて
「非人間的なことをする大企業を次々と狙う男」というエンディングで
あって欲しかったな。
そういう終わり方のほうが個人的には好きです。

出演では早川雄三の森繁久弥のものまねのようなごまスリ課長が面白かった。
めがねといい、髭といい、なんかそんな感じなんだ。
案外意識してたのかも。

大映サラリーマンスリラーシリーズの傑作!

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背広の忍者


日時 2003年3月6日
場所 録画ビデオ(チャンネルNECO)
監督 弓削太郎

(詳しい内容はキネ旬データベースで)


田宮二郎、高松英郎らは貧乏リサーチ会社の社員。
主に中外電気の下請けとして調査してきたが、ある日社長が
熊谷でトラックに轢かれ死亡した。
死因に疑問をもった田宮たちは独自に調査を開始する。
どうやら社長は大手電機メーカー・サンエス電気のテレビの新製品の
情報をつかみ、それを中外電気に報告しようとしてサンエス電気に
殺されたらしい。
果たして真相は?

新製品をめぐる情報合戦に絡んだ殺人事件の真相を追う、となんだか
面白そうだが、細部が雑なので面白さ半減。
かなりの憶測の段階で「サンエス電気の新製品は4インチの小型テレビだ」
と決め付け、それをネタにサンエスの重役(伊藤雄之助)に乗り込むなど
かなり大雑把な展開。もう少しつめてからでなきゃいけないよねえ。

で結局、新製品を作ってる工場を探り当て潜入するのだが、「消防署の
抜き打ち検査で来ました」って言ってニセの身分証明書で入るという大雑把さで
ディテールの面白さが何にもない。この辺を丁寧にやらなければこの手の
映画はそれだけで死んでしまう。

なんとか小型カメラで4インチテレビの生産ラインの撮影に成功し、
「秘密を守りたくば金を出せ」と田宮たちは伊藤雄之助を脅す。
ところが翌日サンエス電気はその小型テレビを公表してしまい、
田宮たちのもくろみは崩れる。
その代わりサンエスの会社に潜入したのでその後にやってきた
殺された社長のの実行犯との会話がテープにとることが出来て
事件は解決。

もう少しテンポを速くして物語りは二転三転させなきゃ。
「黒の試走車(テストカー)」はストーリーには雑な部分もあるがテンポは
速いし、ライバル企業との攻守が入れ替わり面白かったよ。
この辺をもう少し見習ってほしかった。

でも田宮たちの勤める会社の入り口の前に電信柱があり、「扉がまともに開かない」、
というようにセットが作ってあり、このつくりが「こんな悪条件の家賃の安そうなところ
にしか入れない貧乏会社」というのを表現していてよかった。


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野獣狩り


日時 2003年3月1日27:25〜
場所 浅草東宝
監督 須川栄三
製作 昭和48年

(詳しい内容はキネ旬データベースで)


藤岡弘主演の東宝ハードボイルド。

舟木明(藤岡弘)はこいつが悪いと思ったら証拠はなくても突き進む
正義感の強い刑事。当然、上司の受けはよくない。
彼の父(伴淳三郎)もまた刑事。
アメリカの大企業ポップコーラの日本法人の社長が誘拐された。
犯人は「黒い戦線」と名乗る過激派で要求はポップコーラの
原液の成分を公開すること。
しかしアメリカ本社は30万ドルの金で解決しようとする。

で見せ場はやっぱり身代金の受け渡し。
日比谷にあるポップコーラの会社から藤岡弘がパトカーに乗って
首都高に入り、銀座に戻るという複雑なことをする。
実は戻ってきたところは出発地点から歩いて15分ぐらいのところなんだが
東京の地理をわかっていないとよく解らない。

で、結局、地下鉄への階段の降り口ところで金を持ってる藤岡弘を
襲い、階段下にカバンを投げ、下にいる犯人の一人がカバンを受け取り、
地下鉄で逃げるというもの。
このあたり、期待してしまったから、ガッカリした。


藤岡弘の刑事は警視庁の上司にも批判的だからどっちかって言うと
反体制的な思想の持ち主。だから同じく反体制の過激派にも
同世代としての共感を少し持っている。だからアメリカ資本主義の
見本のようなポップコーラの原液成分公開という要求は理解していたから
「金で彼らと取引することはできないですよ」と主張する。
ところが結局金で取引に応じたもんだから裏切られたような心情になる。

このあたりは「革命を起こす」と言ってみんな何かを期待した学生運動が結局
「あさま山荘事件」やその後に明らかになった「リンチ事件」しか
起こせなかった彼らへの失望感が作者たちの根底にあったのだろうか?
この映画を見てるとなんかそんな感じがしてくる。


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血とダイヤモンド


日時 2003年3月1日25:45〜
場所 浅草東宝
監督 福田純
製作 昭和39年

(詳しい内容はキネ旬データベースで)


もちろんアンジェリ・ワイダの「灰とダイヤモンド」とは何の
関係もないダイヤの原石を奪い合うギャングたちのサスペンス映画。
(そしてちなみにクエンティン・タランティーノの「レザボア・ドッグス」の
元ネタ映画らしい)

田崎潤を首領とするギャング団は神戸税関に運ばれた時価数億円のダイヤの
原石を奪う計画を立てていた。しかし、実行当日、突然別の4人組がダイヤを
奪ってしまう。ダイヤを奪ったのは佐藤允、藤木悠、砂塚秀夫、石立鉄男の4人組。
ところがリーダーの佐藤允は肩を拳銃で撃たれてしまう。
水野久美のウエイトレスを通じて故買屋(遠藤辰夫)にダイヤを売ろうとする彼ら。
そこへダイヤの買取をしようとする保険会社の契約探偵・宝田明が首を突っ込み
ダイヤを取り戻そうとする田崎潤、伊藤久哉も負けちゃいない。
もちろん警察(夏木陽介ら)も。
彼らが入り乱れ、そして佐藤允の怪我を治すために誘拐された外科医、志村喬も
絡んで三つ巴、四つ巴の戦い。
最後に笑うのは誰か?


ワイズ出版から福田純のロングインタビューの本があるのだが、その時インタビュアーが
絶賛していたのがこの映画。
そのインタビュアーが熱狂したのも納得する面白さ。
福田純の代表作であり、東宝のフィルムノワールの代表作でもあると言ってよかろう。
(ちなみにこのジャンルではあとは岡本喜八の「地獄の饗宴」鈴木英夫の「悪の階段」
ですね。先のインタビュー本にも書いてあるが)

内容はあんまり書いちゃうとこれから見る人に悪いから書けないけど、とにかく
登場人物たちが悪党らしく「ダイヤは自分だけのものにしよう」と裏切りまくるのが
面白い。
こっちと手を組んだかと思えばすぐに寝返ったり、最後まで予測がつかず、
くるくる状況が変わってくる。

佐藤允は相変わらずの強面だし、砂塚秀夫はお決まりの小心者。
宝田明はプレイボーイ風の不良探偵で、志村喬の良心的な医者も負けちゃいない。
登場人物がすべて曲者、というよく出来た脚本。
欲を言えば夏木の刑事も一ひねり欲しかったかな。

ミステリー、サスペンス好きな方、必見の映画です。
ビデオ、DVDにならないのが不思議な映画。
もっとも不思議な事はこの作品に限った事ではありませんが。


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弾痕


日時 2003年3月1日24:05〜
場所 浅草東宝
監督 森谷司郎
製作 昭和44年

(詳しい内容はキネ旬データベースで)


加山雄三主演の東宝ニューアクション。
せりふは極端に少なくしぶ〜〜く見せた展開。
(見せただけ。別にかっこよくはない)

滝村(加山雄三)は日本人の両親の間にアメリカで生まれた。
太平洋戦争で差別を受けたが戦後は日本の(?)スパイ機関で
スナイパーをしている男。
話の中心は中国側がトニーローズなる武器商人から大量の武器を
買い付けようとしてるのを阻止しようとする話。
で、途中に太地喜和子の前衛彫刻家との奇妙な恋愛関係があったりするんだが
スピード感あふれるスパイアクションじゃない。

加山雄三もこのころ「豹は走った」とかと同じで、若大将のような
明るさはなく、転換期を迎えたのか方向性を模索してる感じ。
声のトーンまで変えてがんばってるが似合わない。
もう一度言うけど似合わない。

ベトナム戦争、70年安保、高度経済成長だけでない、そんな混乱の時代の
空気が漂ってくる作品。
でもはっきり言うけどテンポはだらだらしてるし、盛り上がりもないし
面白くもなんともない。
ラストは組織を辞めようとした加山は殺されちゃうんだけど、このシーンが
プリントの状態が悪くてブツ切れになってしまっていた。
死ぬのはわかったからいいんだが。

役者の見所では中国からアメリカに亡命しようと見せかけた中国のスパイ
を岸田森が演じてる。岸田森はアメリカ側につかまって超音波を
聞かされて発狂寸前になるシーンで汗まみれ、よだれまみれになって
苦しむシーンは見ごたえがあった。こういう一線を越えたような
演技を平気でしちゃうところがやっぱりすごい。
あと太地喜和子は加山とのベッドシーンがあって脱いでたな。
あとは細かいことだが、加山の乗ってる車のナンバーが「700」。
「007」を意識した遊び心だったんだろうか?


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大巨獣ガッパ


日時 2003年3月1日21:00〜
場所 銀座シネパトス
監督 野口晴康
製作 昭和42年

(詳しい内容はキネ旬データベースで)


雑誌プレイメイトを発行する船津社長はレジャーランドを計画し、
そこに放し飼いにする珍しい動物の採取のため、記者の黒崎(川地民夫)
カメラマン・小柳(山本陽子)を生物学の学者殿岡(小高雄二)
ジョージ井上(藤竜也)町田(和田浩二)らを南の島に派遣した。
彼らは南の島で巨大な卵を発見し、それが孵化した直後に生まれた
生物・ガッパの捕獲に成功した。
それを日本に持ち帰る彼ら。ガッパは見る見るうちに巨大生物になった。
ところが親ガッパが2頭、子供を取り返しに日本にやってきた。
上陸した熱海は壊滅、そして河口湖に逃れた。
ガッパ撃退は成功するのか?!

東宝の「ラドン」(〜親が子供を助ける)「モスラ」(〜南の島からつれてくる)
「モスラ対ゴジラ」(〜レジャーランド建設)「大怪獣バラン」
(〜ラストが羽田空港)などなどからストーリーをいただきまくって作った脚本。
そしてスピード感のまるでない演出で、はっきり言ってつまらない。

例えばガッパに襲われそうになった子供を助けるとか、逃げ遅れた山本陽子を助ける
とか、そういうスリリングなシーンがまるでないので、盛り上がりに欠け、ただ怪獣が
暴れてるシーンだけしかない。
怪獣が出てくれば特撮映画として面白いかといえばそうではあるまい。

河口湖に逃げたガッパを追い出そうと超音波を出して湖からまず追い出し、
そこでミサイル攻撃を仕掛ける、という作戦はいいのだが、途中で
超音波を出す機械がオーバーヒートして火を噴くとかそういう細かいひねりがない。

あと最初に攻撃されるのが熱海じゃなあ。
芸者あげてドンちゃん騒ぎの現場に怪獣が襲ってきても何か緊張感が
足りない。
場所の選択間違ってるよ。熱海の町のミニチュアワークがよくできてるだけに
余計惜しい。

そしてラストの羽田空港での親子の再会。
ガッパの動きが人間くさすぎて気に入らない。(まあこれは後期ゴジラ映画にもいえるのだが)
あと細かいことだが、藤竜也と和田浩二はうろうろするだけで活躍がない。
この二人はこの映画では不要。

そうは言ってもこの映画に全く魅力がないかというとそんなことはない。
ニュープリントで見たこともあり、今も書いたけどミニチュアワークの
すばらしさは堪能できた。
この辺の特撮シーンがいいだけに脚本の段階でもっと練って欲しかった。

結局描きこみのない脚本、スピード感のない演出により折角の特撮シーンのよさも
台無し。残念。

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真昼の罠


日時 2003年3月1日
場所 録画ビデオ(チャンネルNECO)
監督 富本壮吉
製作 昭和37年

(詳しい内容はキネ旬データベースで)


大映「黒シリーズ」の1本として放送。
これも「黒シリーズ」かああ?
タイトルに「黒の」とつくから「黒シリーズ」だと思うんだが。
「大映サラリーマンスリラー・シリーズ」といえば納得いくが。

大企業の出世街道を行く藤(田宮二郎)だったが、ある日クレー射撃場で
尚子(叶順子)と出会う。尚子と情事を楽しむ藤だったが、尚子は
自分の会社とも深い関係にある総会屋(?)のような霞雄介(小沢栄太郎)の女だった。
ところが尚子と情事を楽しんだ日曜日、藤とも関係があった女医の赤塚弥生が
殺された。
自分のアリバイを証明してくれるのは尚子、しかしそれを公にすれば
霞を怒らせることになり社内の地位は失われる事になる。
藤は自分の無実を証明させるために犯人探しをはじめる。


「アリバイが言いたくてもいえない」となんだが東宝の「黒い画集・あるサラリーマンの証言」
の裏返しのようだが、田宮二郎がスター的活躍をするので「あるサラリーマンの証言」
の小林桂樹のような小市民がすぽっと穴に落ち込んでしまったような恐さは漂ってこない。

また途中であれほど恐れていた霞にも、途中で尚子との情事が突然ばれてしまい
それを許してもらうために上司の夕崎部長(高松英郎)が持ってる新工場用地買収に
関する書類を持ち出させようとするなど、脚本の方向性の混乱が始まる。

結局、田宮は会社の評判を落とした責任で左遷、そして退職までさせられてしまう。
で最後は夕崎部長に犯人であることを証明するために彼に罠を仕掛け、復讐しようと
する。ところがその罠にうまく引っかからず失敗か、と思った時に警察が
突然逮捕してくれる。
じゃあ田宮の罠は一体なんだったんだよ?

でラストは霞と別れた尚子が会社を退職させられて何もなくなった田宮とやり直す
というハッピーエンド。
会社も女もすべて無くす、というエンディングの方がよかった気がするが。


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