2004年7月

暗黒街の牙
グラマ島の誘惑 野獣の復活 日本の悪霊 兵隊やくざ
ゴッドファーザーPARTU 俺にまかせろ ゴッドファーザー 女奴隷船
日露戦争勝利の秘史
敵中横断三百里
餌食 戦国野郎 怪談
ジェット・ローラー・
コースター
69 夜の診察室 ブラザーフッド

暗黒街の牙


日時 2004年7月31日27:30〜
場所 浅草東宝
監督 福田純
製作 昭和37年(1962年)

(詳しくはキネ旬データベースで)


本日のオールナイト上映のトリ。
つまり頭もヘロヘロの時間帯だ。

静岡県のある町、麻薬の取引が行われた現場に見知らぬ男(三橋達也)が乱入する。
取引の一方のボス(田崎潤)に自分の持っている麻薬を土産に仲間に入れて欲しいという。
この町には佐藤允の若手ボスが牛耳るもう一方の勢力があった。
実は三橋達也はこの二つの組織の麻薬取引の実態を解明するために潜入した
麻薬Gメンだった!

暗黒街シリーズもそろそろ飽きが見られた頃の映画。
潜入捜査もので特に話しに目新しいところはない。

見せ場、というかハラハラさせられるのは潜入した三橋達也がいかにして本部と
連絡を取るかという事で、今回は以前「暗黒街撃滅命令」でも使ったような手で
千石規子の靴磨きに靴を磨いてもらって代金の100円札に連絡用のメモを挟んで
すぐその次に本部の人間がやってきてメモを抜き取るというもの。
でも最後には田崎潤たちに見つかってしまう、という展開でお決まりながら
少しハラハラさせられた。

でも夏木陽介がこのころは充分に主演だったにも関わらず、麻薬中毒になった
三橋達也の弟、という役の少し情けない役での登場。
もったいない気もしますが、贅沢だともいえます。
他には女優陣、水野久美、若林映子、浜美枝という「60年代東宝娯楽映画三人娘」
(筆者命名)の豪華競演!
三人のうち二人の競演は当たり前だが三人そろうとやはり豪華だ。
映画史的には忘れられてる3人だが(水野久美は特撮シリーズの活躍でまあ残っているが)
もう少し評価されてもいいと思う。

また男優陣も他には中丸忠雄、堺左千夫、平田昭彦、天本英世、二瓶正典、草川直也
という典型的な東宝アクション映画でその点も飽きがこない。


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グラマ島の誘惑


日時 2004年7月31日22:10〜
場所 浅草東宝
監督 川島雄三
製作 昭和34年(1959年)

(詳しくはキネ旬データベースで)


敗戦直前の昭和20年、天皇家につながる家系の兄弟(森繁久弥、フランキー堺)
は帰国の途中、船は難破して女郎屋のおかみとそこで働く娘たち、女性報道班員らと
南海の孤島グラマ島に漂着する。
無能な宮様、生活力旺盛な慰安婦たち、インテリでプライドの高い報道班員、
現地民(三橋達也)グラマ島に住んでいる日本人(八千草薫)。
一体彼らの運命はいかに?

川島雄三の代表作とも言える「わけわからん」コメディ映画。
最初の方で実は船はグラマ島に漂着した後、他の乗組員たちが宮様たちを置いて
勝手に再び出発してしまう。
宮様をはじめ登場人物たちが崖の上から船に向かって叫ぶのだが、その船は
アメリカに撃沈されてしまう。
「一同は色を失った」という報道班員の岸田今日子のナレーションがかぶさるのだが
そこでカラーの画面がスーッと退色してしまうギャグには大笑いした。

ところがその後映画はブラックユーモアの世界にどんどんのめりこんでいく。
第一、天皇家(それが端っこの方の家系でも)コメディの対象にする事自体が
すごい事だ。
この映画は比喩の映画だ。
すべて解き明かしたわけではないけれど登場人物たちは何かを記号化した
ように思われる。
いうまでもなく森繁久哉とフランキー堺の宮様は天皇家及び日本そのものだろう。

森繁久弥は沖縄出身の慰安婦を妊娠させてしまうが流産してしまう。
この辺がなんだか沖縄を併合させて最後にはいいように捨て駒にした
日本そのものをいってる気がしてくる。

また「天皇陛下はいい人だからみんな敬うんだろ?ところがあの二人の宮様は
なんだい?あんないい加減な奴ニセモノだ」と報道班員は慰安婦を先導して
一種のクーデターを起して島に民主的な組織を作る。
そして三橋達也の原住民に丸太船の作り方を教えてもらうのだが、出来上がった
丸太船で、森繁は沖縄出身のその慰安婦と二人だけで島を抜け出すのだ。
他の面々もその後何とかアメリカの船に助けられて日本に戻る。

日本に戻ってからは、フランキー堺は缶詰をアメリカに輸出する会社を作って
成功する。
また報道班員はグラマ島での生活を書いた本がベストセラーになり、慰安婦たちは
沖縄に生活の糧を求めて移住しようとするが、密入国でつかまってしまう。
そして肝心のグラマ島はアメリカの水爆実験が行われることになり・・・・
という展開で、最後までなんだか展開が見えない映画。

しかし先ほども書いたように実は裏読みが出来そうな比喩に満ちた映画だ。
何回かみてこの比喩を解き明かして見たい衝動に駆られる映画だ。
機会を作って再見したい。
一部ではカルト映画といわれてるそうだが、それもわかる気がする。


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野獣の復活


日時 2004年7月31日20:30〜
場所 浅草東宝
監督 山本迪夫
製作 昭和44年(1969年)

(詳しくはキネ旬データベースで)


日本海側のある港町、数年前この町にやってきた伊吹(三橋達也)は今は不動産業で
成功していた。
そこへ弟(黒沢年男)が女を連れてやってくる。
伊吹は以前はヤクザの塚本(大滝秀治)の部下だったが、今は足を洗った身。
しかし弟は塚本の末端の組織の一員で、人殺しを命ぜられたが恐くなって
逃げ出してきたのだ。
伊吹は塚本と会い、弟を助ける事を条件にその殺しを引き受ける。
しかし塚本にとっては伊吹を再び自分の組織に引き入れることが真の目的だった。
塚本は結局黒沢年男の弟も殺し、伊吹は復讐に立ち上がる!

今夜の浅草東宝は先日なくなった三橋達也氏の追悼特集とでもいうべき5本立て。
上映作品は他に「グラマ島の誘惑」「非情都市」「地獄の饗宴」「暗黒街の牙」。


ラスト、大滝秀治の組織に単身乗り込んだ三橋達也が、走りながらショットガンを
撃つシーンの迫力はさすが。
芸能人ガン倶楽部(というような名称だったか)の主要メンバーだけのことはあり
銃の扱いは迫力がある。

敵役の大滝秀治、「あんな一匹狼に何が出来る」と部下の前で三橋達也の
ことを嘲笑する場面の笑顔を妙に迫力がある。
この方は顔つきが善人なので悪役をやると、似合ってるんだか、似合ってないんだか
判断に困るような演技をするなあ。

弟の復讐を終えた三橋達也、自らも傷ついたが、恋人(三田佳子)が待つ自分の
町へ帰ろうと高速道路を車で飛ばしていくカットでラスト。
果たして彼は帰り着くことが出来るのだろうか?
見る人に判断を任せるラストは余韻を残して味わいがあった。

出演は他には大滝秀治の秘書のような役で佐原健二(この人の悪役は僕は好きじゃない)
森山周一郎、港町の老練な、こういう映画にはつきものの刑事役で浜田寅彦、
三橋達也に協力する銃砲店主人で石田茂樹(散弾の改造を頼まれるあたりが
ガンマニアにはたまらないところ)などなど。


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日本の悪霊


日時 2004年7月26日21:00〜
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 黒木和雄
製作 昭和45年(1970年)

(詳しくはキネ旬データベースで)


群馬県のある田舎町ではまたヤクザの抗争が起こるのではないかと人々は
ささやきあっていた。
数年前の抗争の時に新興ヤクザの天地組の黒幕とされる人物を刺した鬼頭組の親分が
まもなく出所してくるからだ。
鬼頭組の上部組織から代貸しの村瀬(佐藤慶)が助っ人にやってくる。
そんな時、県警本部からも落合という刑事(佐藤慶・二役)が応援にきた。
ところが村瀬と落合は顔が瓜二つ。
二人は偶然出会い、そして村瀬は入れ替わる事を提案する。
実は村瀬は鬼頭組の親分が天地組の黒幕の大地主を刺した事件の真相を知ろうと
していたのだ。


この映画は大きなたとえ話だと思う。
「組織と個人、組織の方向転換とその責任の取り方について」だ。
実は村瀬という男はかつては学生運動家で、中央が方針転換した後、革命戦士となるために
山村でゲリラ訓練をしていた経験をもつ。
また落合は戦争中、航空整備兵として参加し、戦闘機に片道分の燃料しか積まずに
何人もの搭乗員を死に追いやっていた。
鬼頭組に最近入ったものは、単身乗り込んでいった組長の男気に惚れてヤクザになったものも
多い。だがもともと気の小さい組長は出所後も天地組と争うとせず、さっさと手打ちに
応じる。
もともと黒幕とされた大地主も黒幕ではないし、実は組長が殺したのではなかった。
殺したのは革命戦士だった村瀬が、共産主義の敵とあおられて殺したのだった。

ヤクザは勝手に美談を作って組長を持ち上げて町の若者をあおる。
戦争中は「お国のため」と若者をあおる。
学生運動の時代は「革命のため」と若者をまたあおる。
ところがどんな場合でも上部組織が勝手に方針転換をして、あおった挙句に
勝手に止めてしまって、それどころか若者を「君達は間違っていた」と言う有り様だ。
上部組織が責任を取るならまだいい。
そんな責任(オトシマエと言ってもいい)は誰も取らずに、なんとなくなかったような
顔をしだすのだ。

だが若者は「戦争で戦友を死に追いやった」「人を殺した」という罪の意識だけが残る。
そういう何時の時代にもある、この責任を取らないという日本の悪習こそが
「日本の悪霊」なのだ!

村瀬と落合はそんな日本にオトシマエをつけてもらうため、目の前の「無責任者」の
鬼頭組親分、天地組親分、そして実は影で操っていた警察署長に殴り込みを掛けるのだ。

そういう日本という国の「無責任さ」と説いた映画だったように思う。

出演は他にフォーク歌手の岡林信康。
時々登場し、ギター一本でダジャレの歌を歌ったりする。
その辺がもろに1970年という時間を感じさせる。
時代性を出したということなのだろうが、「映画は何十年も残るもの。だから風俗的に
流行のものをとりいれる必要はない。むしろ映画が流行を作るぐらいでいないと」という
ことが持論の私としては、岡林信康の出演は「ここでは」不要。

あとは警察署長に観世栄夫、天地組の組長に渡辺文雄。


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兵隊やくざ


日時 2004年7月25日
場所 録画DVD(日本映画専門チャンネル)
監督 増村保造
製作 昭和40年(1965年)

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昭和18年、ソ満国境の守備隊に初年兵が配属されてきた。
その中のひとりにおそろしく喧嘩の強い大宮(勝新太郎)がいた。
彼の面倒は大学でのインテリの有田上等兵(田村高広)が見ることになる。
大宮は喧嘩っぱやいが、それは仲間が理不尽な制裁を受けてるのを
黙っていられなくて上官にまで手を出してしまうだけのこと。
ある日、工兵隊と風呂場で喧嘩になり、一旦は有田の機転で大宮は
難を逃れたが、何時までも喧嘩を売ってくる。

勝新太郎の人気シリーズの1本。
シリーズ第1作となる訳だが、これが大して面白くない。
映画はこの後、勝新は工兵隊からリンチを受けたりするが、それも
有田の計らいで何とかなった。
その後今度は炊事兵とトラブルを起し・・・・と映画の中で同じような
話が繰り返され話がちっとも前へ進まない。

結局大宮は南方送りになりそうなところで田村高広を殴って営倉行きになって
何とか逃れる。
だが今度は部隊全体が南方送りになる。
で、軍隊が大嫌いな有田は大宮と共に脱走する事にして、移動中の列車から機関車
に乗り込み機関車だけを切りはならせて逃げてしまう。

続編以降はこの後の彼らの逃避行の話になるのか?
だったらながい前振りだったなあ。
この映画は面白くなかったけど、2作目以降は少しは良くなってきているかも。



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ゴッドファーザーPARTU


日時 2004年7月25日14:20〜
場所 東劇
監督 フランシス・フォード・コッポラ
製作 1974年(昭和49年)

(詳しくはキネ旬データベースで)


前作の最後で組織を受け継いだマイケル・コルレオーネ(アル・パチーノ)
のその後と父ビトー・コルレオーネの若き日を描く第2作。

前作では主人公たちが自ら抗争に立ち向かい、バイオレンスアクションシーンも
豊富だったが、今回は時代も変わったこともあり、マイケルはいわゆる経済ヤクザに
なり、バイオレンスシーンは少なめ。
ただしそれを補ってくれるのが父、ビトーの若き日(ロバート・デ・ニーロ)の活躍だ。
(ロバート・デ・ニーロは声までがマーロン・ブランドの独特のしゃがれた声も
真似ている)

話の中心はマイケルがラスベガスのカジノ拡大を狙ってそれを阻止しようとする
勢力(リー・ストラスバーグ)との対決。
前作と同様、高級感漂う雰囲気が日本の東映のそれとは大きく異なる。
チンピラみたいな下っ端が話にからまない、といった面もあるが、それだけでは
あるまい。

ロバート・デ・ニーロ演じる若きビトーなど、下っ端の範疇に入るだろうが
安っぽくはない。
汚い服装をしていても外国人特有のカッコよさ、みたいな物が感じられて
魅力があるのだ。

マイケルはこの抗争を通じて父の友人を殺し、兄フレド(ジョン・カザール)も殺し
妻(ダイアン・キートン)には離婚を突きつけられ、あらゆるものをどんどん
失っていってしまう。
一体彼が得ようとしているもの、守ろうとしているものはなんなのだろうか?

ラストはビトーのシークエンスのラストとして、またマイケルの回想として
兄弟がみんなそろっていた頃のシーンで終わる。
父の誕生日を祝い、自分の軍隊入隊を兄貴ソニー(ジェームズ・カーンの特別出演)
に反対されながらも楽しかった若き日々。そして幼かった頃。

「どこで道を間違えたのだろうか?」
そんなマイケルのつぶやきが聞こえてきそうな秀逸なラストシーンだった。
マイケルの孤独に満ちた表情が印象に残る。

その後、彼はどんな人生を歩むのか?
PARTVは今のところ上映の予定はなさそうだ。
近いうち、レンタルビデオでもいいから観たくなった。


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俺にまかせろ


日時 2004年7月24日
場所 録画DVD(日本映画専門チャンネル)
監督 日高繁明
製作 昭和33年(1958年)

(詳しくはキネ旬データベースで)


オープニング、ビルの警備員が死体とそのそばに立っている男を発見する。
そして警察署にかかる電話、その電話を取った宮口精二のベテラン刑事が
「何、殺人事件?よし解った、すぐ行く。場所は?何?いかんいかん、殺しなら・・・」
とそこまで言ったところでメインタイトルがどーんと、「俺にまかせろ」。

なんとも勢いのあるオープニング。
さぞかし宮口精二のベテラン刑事が老骨に鞭打って活躍する話しかと思ったら、
続くクレジットでは最初に出るのが佐藤允。
宮口精二は有島一郎と一緒にトリ。
「あれ?」と思ってると宮口精二の息子が佐藤允で、その息子刑事の方が主役だった。

ストーリーの方は説明不足、というか展開が強引で佐藤允が親友・中丸忠雄と
偶然(多分偶然だろう)入ったキャバレーの女給(ホステス)と死んだ男が
関係あったらしいという必然性のない展開のもと話は進められる。

もうSPなんだし脚本の出来の悪さをいちいち突っ込むのは無駄な事だと思う。
でも折角オープニングで宮口精二をカッコよく登場させながら活躍させないのは
どうかと思う。
こういう展開ならあそこは佐藤允に言わせるべきではないか?

佐藤允はまだ「暗黒街の顔役」出演前で、主役だがただの無骨な感じでまだまだ
後の個性的な良さはない。
当然全体的に宮口精二の刑事が活躍が少ないのは残念。
有島一郎の元スリが宮口精二が危うくなった時、敵(伊藤久哉)の拳銃をスリとって
しまうというが「お決まり」の活躍。

ちなみに助監督は古澤憲吾、また宮口精二の娘役でセーラー服姿で若林映子、
そしてラストに出てくる警官隊のひとりに小川安三(セリフなし)が出演している。


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ゴッドファーザー


日時 2004年7月19日19:15〜
場所 ユナイテッドシネマとしまえん
監督 フランシス・フォード・コッポラ
製作 1972年(昭和47年)

(詳しくはキネ旬データベースで)
(公式HPへ)

ニューヨークの裏社会で力を持つゴッドファーザーと呼ばれるビトー・コルレオーネ
(マーロン・ブランド)。彼らには3人の息子と1人の娘がいた。
ある日、彼の元に麻薬取引の資金援助を願い出るものがいた。
だが彼は麻薬だけは手を出したくないとその申し出を断る。
やがてそれはビトーの狙撃事件にとなり、やがてはすべてのマフィアを巻き込んだ
抗争事件へと発展していく。
長男ソニー(ジェームズ・カーン)も抗争に倒れる。
ビトーも死に組織を継いだのはいちばん父の仕事を嫌っていた三男のマイケル
(アル・パチーノ)だった。

映画史に残る名作と名高い本作品。
実はテレビ放送などで断片的に見たことはあったが、ちゃんと見るのは初めてだった。
もちろんスクリーンで見るのは初めてだった。

ストーリーのあらすじだけ見れば東映映画のそれと大差はない。
しかし圧倒的な高級感を感じる。
それはマーロン・ブランドの強烈な存在感もあるし、高級感のある大道具小道具
(衣装も含めて)もあるだろう。
しかし今回特に気に入ったのはイーストマンカラーの暖色系のあったかな画面だ。
東映はフジフィルムなのでどうしても寒色系の色調になりがち。

また陰影の濃い、影を意識した照明の素晴らしさだ。
とに角、画が綺麗なのだ。
これでアカデミー撮影賞を撮らなかったのが不思議な気がする。
(実際の受賞は作品、脚色、主演男優の3つだった)

もちろんマーロン・ブランドの圧倒的存在感もすごい。
僕にとってはとに角マーロン・ブランドというともう「ゴッドファーザー」のイメージだ。
ところが全篇出ずっぱり、という主演ではなく、時間にしたら3分の1ぐらいしか
出ていない。
それでも映画史に残るのだからやっぱりすごいなあ。
佐分利信も影が薄くなってしまう。

またさらに素晴らしいのはアル・パチーノ。
最初のほうでは末っ子でぼーっとした感じで「軍隊で何やってたの?」
と言いたくなるようなひ弱な感じがしたのだが、後半になるにつれて
徐々に増していく貫禄。
ラストでは「若きドン」として充分な存在感を示している。

映画史に残るだけの作品だ。
満足した。


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女奴隷船


日時 2004年7月18日
場所 録画DVD(チャンネルNECO)
監督 小野田嘉幹
製作 1960年(昭和35年)

(詳しくはキネ旬データベースで)


敗戦の色濃くなった昭和20年。
南方戦線にいた須川中尉(菅原文太)はドイツから届いたレーダーの設計図を隠した
写真を大本営に届けるよう密命を帯びる。
飛行機で向かったが、その飛行機は途中撃墜されてしまう。
ある貨物船に助けられたが、なんとその船は日本人の女たちを上海に
売り飛ばすための輸送船だった!

「女奴隷船」といういかにも新東宝らしいタイトル。
密命を帯びた中尉の決死行、という今日見た「敵中横断三百里」を思わせるような
オープニングだが、途中から密命はどうでもよくなる。

で、その貨物船は今度は海賊船に襲われる。
首領は丹波哲郎!
丹波先生が日本語べらべらだから日本人かと思ったら、どうも国籍不明なのだ。
元の輸送船には船長の情婦がいて、売られていく女たちを仕切っていたのだが、
丹波哲郎に捕らえられたら情婦も売られていく女たちももう同じ立場。

ところがこの情婦(本人は自分をクイーンと呼ぶ)は女たちを裏切って丹波側に着いたり、
形勢が不利になったら菅原文太に着いたり、ころころと変わる。
もうひとり丹波の部下に日本人がひとりいて、菅原文太に協力したり、やっぱり
丹波に忠実になったりこっちもころころ変わる。

敵か味方か解らないというのはこういう話では面白くなる要素だが、この場合は
ただその場限りで裏切ったり協力したりするだけなので、ただいい加減なだけなのだが
そのへんが「新東宝らしさ」ということで許してあげよう。

ラストに銃撃戦があるのだがこれがなんだか海岸の崖っぷちでやっていて
そこで丹波先生がバンバン撃つのだから後の「キーハンター」みたいだった。

それにしても「女奴隷船」というAVみたいなタイトル、半裸の女性が踊って
女たちが取っ組み合いのけんかをして、焼き鏝が入れられそうになって悲鳴を
上げて、清楚な女性(三ツ矢歌子)が丹波先生に襲われそうになったり、
エロティックな設定の連発。(このあたりのエロティック路線は後のTV
「プレイガール」に引き継がれたと言える)

今から見るとなんてことはないシーンばかりだけど、チラリズムの連続とも
言え、新東宝エロティックアクションの代表作ともいえるだろう。

ラスト、文太中尉は売られるはずだった女の子たちを引き連れて
モーターボートをちょっと大きくしたような船でこの島を脱出する。
でもあんなちっぽけな船じゃ日本までたどり着けないだろうなあ。
ところでレーダーの設計図はどうなったのかなあ??
その設計図を元にして作ったレーダーが「ローレライ」になるのか?


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日露戦争勝利の秘史 敵中横断三百里


日時 2004年7月18日
場所 録画DVD(日本映画専門チャンネル)
監督 森 一生
脚本 黒澤 明
    小国英雄
製作 昭和32年(1957年)

(詳しくはキネ旬データベースで)


日露戦争も終末に近づいた頃、日本軍は補給も途絶え、あと一戦を
行うほどの力しか残っていない。
この次の一戦で敵に打撃を与えなければ講和には持ち込めない。
ロシア軍は次の一戦をどこで行うつもりか?
鉄嶺か?奉天か?
敵情を視察するべく6人の斥候隊が潜入する事になった!

戦前の雑誌「少年倶楽部」に山中峯太郎が連載した小説の映画化。
脚本は何と黒澤明と小国英雄だ。
この脚本が何時頃書かれ、何故大映で映画化されるにいたったかの事情は
私は知らない。
ただし黒澤脚本で6人の斥候隊の話、というから「七人の侍」と「隠し砦の三悪人」
をミックスしたような話かと思うと外される。

何しろ戦前の少年向け雑誌に掲載されたのが原作だから、勇ましい、日本軍人の
鑑が登場する。
兵は勇敢に戦い、自分の命より仲間の命、任務を優先する。

斥候たちは自分たちが見聞した事実(何時何分どこに向かった列車に何が積んで
あったかなど)を暗記しメモは残さない。
「自分達がもしつかまった時、メモを敵に見られるとこちらの意図が敵に伝わってしまう。
だから何かに書いてはいかんぞ!」と隊長はハッパをかける。

露軍に追われた時、ひとりが馬ごと川に落ちてしまう。
その兵は叫ぶ。「敵が来ます!自分を捨てて行ってください!」
隊長は涙ながらに進むのだ。
そして再び敵に追われ、一向は一旦解散してバラバラに逃げる。
集合地点にはひとりだけ帰ってこない。
そこへその遅れた兵がやってくる。
しかし彼は逃げる途中で馬を失っていた。
「自分は馬がありません。足手まといになるので自分を置いていってください!」
と懇願する。
そこへカパカパと一頭の馬がやってくる。
何と川に落ちた兵の馬ではないか!

まるっきり坂上田村麻呂みたいな話だ。
まあ、万事こんな調子でその後は死者を出すこともなく、任務は成功する。
皆さんもこういういい兵隊さんになりましょう!という軍国主義的な話。

これが「隠し砦の三悪人」みたいな痛快さがあればよいのだが、そういうのはナシ。
黒澤脚本だけど話にメリハリはないし、一体何時頃書いたのだろうか?
戦時中に書いていた脚本を引っ張り出してきたのなら解るけど、
戦後の黒澤が書いたとは思えない内容だった。


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餌食


日時 2004年7月16日21:00〜 
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 若松孝二
製作 昭和54年(1979年)

(詳しくはキネ旬データベースで)


この映画を見たのは25年ぶりだ。
何か(多分神代辰巳の『地獄』だったと思うが)の併映として見たので
初めて見たときはまったくの予備知識なしで見た。
名作、と言うほどの映画でもないが、妙に印象に残った映画だった。
果たして25年前の私が見たこの映画は、評価に値する作品だったのだろうか
確認したくて再見したのだ。

結果はやはり快作だった。

倉本忠也(内田裕也)はNYから日本に帰ってきた。彼はレゲエのグループ
「ソルティ・ドッグ」に惚れこみ、何とか日本でも広めようと帰ってきたのだ。
かつてのバンド仲間を訪ねる忠也。ひとりは外タレのプロモーターに、ひとりは
アイドル歌手のディレクターになっていたが、彼らは今さら忠也の持ち込む
音楽には興味はない。
そんな時、パン泥棒をしている若者・満と知り合った忠也はそいつの家に上がりこむ。
その家には無口で右手が義手なじいさん・捨造(多々良純)がいた。
ある日、ニュースで経済界の大物の死去のニュースが流れ、じいさんは慟哭の
叫びを上げる。
その晩、じいさんは忠也に自分はかつてバイオリニストで藤山一郎の「東京ラプソディ」
の演奏も手がけたと打ち明ける。
「右手があればもう一度弾きたい」
そして忠也はかつてのバンド仲間で恋人だった麻美が、今は外タレプロモーターの
仲根(鹿内孝)にシャブ付けにされて外タレの性処理係にされていることを知る。
仲根は表向きは外タレプロモーターをしながら裏では覚せい剤の密輸も行っていたのだ。
音楽への愛情をなくし、堕落した仲根に対し、忠也は満と共に彼らの覚せい剤の取引現場
に向い、金と覚せい剤を奪う。
だがその途中、満は撃たれて死んでしまう。
その死を知ったじいさんや満の恋人の恵理。
じいさんは翌朝、今まで大事にしていた南部14年式の引き金を夜明けの町に向かって
撃つ。
「これで俺の復讐は終った。男はやっぱり落とし前をつけなきゃいかんな」そうつぶやく。
だがそのじいさんも交通事故で死んでしまう。
道路につけられたじいさんのチョークの跡を見ながら、忠也はどうしようもない
衝動に駆られる。
そしてビルの屋上に上がり、じいさんの残した南部14年式を撃ちまくる。
倒れる人々。
やがて忠也は射殺されていく・・・・・


ストーリーを書いてみたけど、この映画を伝えられたか自信がない。
ラストの主人公の無差別殺人の動機は説明めいたセリフはない。
しかし、そのときの彼の衝動は見てる観客は充分理解してしまうのだ。
それはひとえに内田裕也の存在感だろう。
義憤、と言うような言葉で表現できるものではなく、「どうしようもないやり場のない
怒り」に見てるこちらも突き動かされてしまう。

25年前の私は常に、今以上に「やり場のない怒り」を抱えていた。
だからこそこの映画に非常に共感したのだ。

また共演の多々良純がいい。
「自分は『東京ラプソディ』の演奏をした」とおでんやで語るその口調は
なんともいえない。
口ずさむ曲が明るい「東京ラプソディ」なだけに重い口調が一層際立つ。
また彼の右腕は後の経済界の大物となった男に軍隊時代に腕を切り落とされた
らしいのだが、これがスチル写真が一瞬インサートされるだけではっきりとは
説明されない。
だが充分解るのだ。

この映画、今回観て気付いたがオールアフレコらしい。
タイトルもスーパーインポーズではなく、青地の画面にクレジットされた画が挿入される。
佐藤蛾次郎とか安岡力也とかなんだか友人にノーギャラで出演してもらったような映画。
だからかなりの低予算だったと思うが、若松孝二のぎらぎらとしたパワーは
映画からあふれまくっている。

映画はセリフで説明するもんじゃない。
映像で表現するもんだ。
そんな当たり前のことだがなかなか出来るもんじゃない。

若松孝二+内田裕也の映像からあふれ出る力に私は圧倒されてしまうのだ。


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戦国野郎


日時 2004年7月11日15:00〜
場所 ラピュタ阿佐ヶ谷
監督 岡本喜八
製作 昭和38年(1963年)

(詳しくはキネ旬データベースで)


木下藤吉郎が日本に上がった種子島を武田軍に見つからないように
輸送するお話。

よく言われてることだが「独立愚連隊」の戦国時代篇だ。
岡本喜八組の常連の役者(加山雄三、佐藤允、中谷一郎、中丸忠雄などなど)
が前と同じような役柄で登場する。

いやそれで結論を言えば面白い事は面白いのだが、いかんせん飽きた。
役者も同じ監督も同じ、話も似たような感じ、ではどうしても似たような映画に
なってしまい、いい加減に飽きてしまうのだ。

とっても贅沢なことだとは思うのだが、楽しみきれなかったのは事実。

ラスト、加山雄三達が命を掛けて運んだ種子島が入っているはずの積荷が
実は石ころだったと解った時の、加山の「石ころに命を落とした者たちはどうなるんだ!」
と木下藤吉郎(佐藤允)に詰め寄るシーンは、そのまま戦中派の岡本喜八の
叫びに聞こえた。

そして「愚連隊」と同じく加山は組織に縛られることなく、自由に生きることを
選ぶのだ。
このあたりの結論のつけ方も「愚連隊」と同じ。
つまらなくはなかったんですけどね。


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怪談


日時 2004年7月11日 
場所 録画DVD(日本映画専門チャンネル)
監督 小林正樹
製作 1964年(昭和39年)

(詳しくはキネ旬データベースで)


明治初期にやってきた外国人・小泉八雲が書いた「怪談」の映画化。
上映時間3時間を超える大作で、内容は「黒髪」「雪女」「耳無し抱一の話」
「茶碗の中」の4話からなるオムニバス。

とに角大作でびっくりさせられる。
なんと言ってもセットが豪華なのだ。
美術的な素晴らしさはもちろんだが、とに角でかいのだ。
セットの奥行きは100mぐらいありそうな感じさえしてしまう。

しかも大手の映画会社ではなく、「にんじんくらぶ」という独立プロ作品。
「大俳優 丹波哲郎」という丹波先生のインタビュー本によると
ギャラは丹波先生以外はもらってないんじゃないかと言うくらい金がなくなった
らしい。

確かにそれだけの質感のある画は出来てる。
で映画自体が面白いかというとそうでもなかった。
いかんせん長すぎるのだ。
エピソード一つ一つもそれほど話に展開があるわけで無し、もうまったりとした
間が長すぎてかなりつらい。

日本映画屈指の画になってるとは思うが、劇場で見たらかなりつらい作品だったんじゃ
ないだろうか?
そういう映画である。


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ジェット・ローラー・コースター


日時 2004年7月10日
場所 録画DVD(テレビ東京)
監督 ジェームズ・ゴールドストーン
製作 1977年(昭和52年)

(詳しくはキネ旬データベースで)


ある遊園地のジェットコースターが脱線事故を起した。
安全基準局の調査官、ハリー・コールダー(ジョージ・シーガル)は単なる事故
ではないと考える。
そんな時、アメリカの主だった遊園地のオーナーたちがシカゴのホテルで
密かに会合を開いていた。
先日のジェットコースターの脱線事故は自分がやったという犯人からだった。
そして犯人は100万ドルを要求する。
FBIも捜査に乗り出す。そこへ犯人は100万ドルの受け渡し係に
ハリー・コールダーを指名してきた!

アメリカでは日本で「ジェットコースター」といわれるものが「ローラーコースター」
と呼ばれている。タイトルはその二つを組み合わせたもの。

普段テレビの吹き替え放送は見ない私だが、この作品はもう一度観たかった。
公開当時、センサラウンド方式という音響システムが開発され、映画館に
専用のスピーカーを設置し、轟音のシーンで空気を震わせるような特殊な
音を出して迫力をだし、テレビでは味わえない映画館ならではの楽しみを
提供しようとしていた。
第一弾が「大地震」次が「ミッドウエイ」そして第三弾にして最後になったのが
この「ジェット・ローラー・コースター」だった。
ジェットコースターのシーンで「ゴォゴォゴォ〜〜」と空気が振動しそれなりの迫力は
あったものだ。
(若い人には信じられないかも知れないけど)

ところがそんな小細工はしなくてもこの映画は充分面白かった。
「爆弾物」のサスペンス映画として十分良く出来ていた。
「新幹線大爆破」もそうだし、最近では「シュリ」とかこのジャンルの映画は多い。
その中でも出来は良い方に入るだろう。
それもそのはず、(今回知ったのだが)脚本にウイリアム・リンクとリチャード・
レビンソンが加わっている。
この二人は70年代ヒット番組「刑事コロンボ」のスタッフ。
面白いはずなのだ。

冒頭の爆破シーンで観客をつかみ、そして捜査、100万ドルの受け渡しが中盤の
見せ場、そして手にした金が特殊インクで印をつけた使えない金だと知った犯人
(ティモシー・ボトムズ)が復讐のためにジェットコースターの爆破を決行する!
果たして阻止できるか?
無駄のない、敵味方がはっきり分かれた男たちの対決のドラマへと映画は
それこそジェットコースターのようになだれ込んでいく。

主演はジョージ・シーガル。
私はこの人はこの映画以外では見た憶えがないのだが、ヒーロー然としない
飄々として独特の演技を見せる。
FBI捜査官のボスにリチャード・ウイッドマーク。
「合衆国最後の日」でもそうだったが、強面の捜査官はまさにはまり役。
そしてヘンリー・フォンダ顔見せでワンシーンだけ登場。
あまりにも映画の本筋には重要でないチョイ役なので、ひょっとしたら
他の映画に撮影中にその映画のセットで撮ったのかも知れない。
何せ電話をかけるだけの役なのだから。

この映画よく見ると映画の大半は遊園地(その頃はテーマパークという言葉はなかった)
でロケされたもの。タイアップもあったろうから制作費は案外安い作品だったのかも
知れない。
でも面白い。
遊園地での100万ドルの受け渡しシーンは絶対に「踊る大捜査線THE MOVIE」
の元ネタになったと確信する。
是非皆さんも確認していただきたい。

またこの映画に登場する一回転するジェットコースターは、日本ではまだなくて、
「アメリカにはあんなジェットコースターがあるんだ。スゲーなー」と思ったものだ。
そして今ではディズニーランドの登場で一般的になったが、手にスタンプを押して
もらって再入場が出来るシステムなどは日本にはなく、まさに「アメリカ」を
感じさせたものだった。

今回私が見たのは正味90分ぐらいのカット版だが、オリジナルが是非もう一度
見たい。DVD化が待たれるところだ。


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69


日時 2004年7月10日18:10〜 
場所 丸の内東映
監督 李 相日(リ サンイル)

(公式HPへ)


原作はずっと以前に読んでいた。多分出版された87年頃で、ファンのタレントが
「村上龍の『69』は面白い」と言っていたので読んでみたのだ。
で、実を言うと大嫌いだった。
読んだ当時私もまだ20代で高校生時代の挫折と失敗を引きずっていたのだろう。
主人公のように、口先がうまくて行動力もあってホイホイと何でもやり遂げて
しまう男に異常に嫉妬したのだ。
「こういうタイプの男とは友達になりたくない」と。

それから10数年経っての映画化だ。
今さらこの小説を映画にする理由が見当たらなかったし、原作が嫌いだったので
見たくはなかったが、主演が妻夫木聡と安藤政信と聞けば二人の顔を見てる
だけでも映画料金を払う価値はあるというものだ。

でもやっぱり映画は好きになれなかった。
タイトルバックからしていきなり「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」だ。
ここは「キャッチ〜」を意識した事はパンフレットにも書いてある。
で内容は(脚本が宮藤官九郎ということもあってか)「木更津キャッツアイ」の
焼き直しだ。
つまり「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」+「木更津キャッツアイ」÷3みたいな
映画になっていた。

演出のノリがもろに「木更津〜」なのだ。
コマ落としで自転車に乗った妻夫木が安藤政信の下宿に行くとことか、
バリーケード封鎖に仲間と夜に忍び込むあたりがまるっきり「木更津〜」の焼き直し
なのだ。
妻夫木聡がなんだか岡田准一に見えてくる。
でもって「木更津〜」のうっちーのようなキャラクターも登場する。

「キャッチ〜」はクレジットタイトルの部分で大いに真似たが、60年代を舞台にした
センスがもう「キャッチ〜」の日本版だ。
それでなくても近頃の「昭和ブーム」(コンビニに行けば昭和の風景を再現した
フィギュア付のお菓子や昭和歌謡の復刻CD付のウイスキーだかお菓子が売っていたり、
テレビ番組ではかつてのヒット曲のBGMに使ったりとどこもかしこも昭和だらけ)
には私は辟易しているのだ。
そんなに「昔は良かった」ばかり言ってどうするのだ!
「クレヨンしんちゃん 大人帝国の逆襲」を見て以来、私は昭和を懐古して賛美するのは
止めた。
「昔はよかった」も気持ちはわかるけど、そんなに振り返ってばかりでどうする。

2004年の今のものを作ろうよ、頼むから。

そして「明日に向かって撃て!」まで登場したのには驚いた。
妻夫木と安藤の二人が橋から川に飛び込むシーンがあるが、まるきり「明日に向かって撃て」。
驚いていたら後でパンフレットを読んだら監督が「主演の二人にはロバート・レッドフォード
とポール・ニューマンをイメージした」と堂々と言いのけている。

そんな感じでどうも二番煎じにしか見えないのだ。

この映画、評判よさそうだが、私は好きになれなかった。
ただし、妻夫木聡の大口を開けた明るい笑顔を最初から最後まで堪能できたのは
楽しかった。
でもそれだけ。


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夜の診察室


日時 2004年7月4日
場所 録画DVD(日本映画専門チャンネル)
監督 帯盛迪彦
製作 昭和46年(1971年)

(詳しくはキネ旬データベースで)


医学博士麻生(高橋昌也)は娘(松坂慶子)と性カウンセラーを行っていた。
その病院には引っ越してから夫が求めてくれないと悩む主婦や
夫が異常に嫉妬深いと悩む妻などが訪れ、高橋昌也が助言したり
松坂慶子も大人のおもちゃやに行ったりの活躍で解決する。
やがて知り合ったポルノ小説家(峰岸隆之介=現・峰岸徹)と松坂慶子は
恋仲になるのだが・・・

大映製作だがダイニチ映配の頃の作品で、大映ももうへろへろの頃だ。
やがて日活のほうは日活ロマンポルノ路線になる頃で、一般映画も
やたらエロ路線に入っていましたね。

松坂慶子は70年代後半になって人気女優となり歌のほうでも
「愛の水中花」なんて大ヒットもあるが、これはまだ新人時代。
この映画も80年ごろ、「あの松坂慶子も新人時代はこんな映画に出ていた!」
という事でリバイバルされたのをよく憶えている。
その頃からちょっと気になっていたが、ようやく見ることが出来た。

お話は別にどうってことなく、診察室にくる患者たちのセックスの悩みを
オムニバス風につづっていくだけ。
別に取り立てて面白くもない。

見所は松坂慶子が峰岸徹に自分の男体験(実は患者の話なのだが)を語るシーンで
イメージショットとしてSMシーンが多く登場する。
松坂慶子が峰岸徹をハイヒールで踏んづけたり、相手は峰岸ではないが、鞭で男を
ひっぱたいたり、男にまたがって「お馬さんごっこ」するシーンがすごい。
後の松坂からは考えられないが、逆に今だったらまたありかも知れない。

また峰岸徹が見かけはプレイボーイ風のポルノ作家だが実は女性遊びは
ほとんど経験がない純情な男として登場。
「彼女(松坂)と会ってると死んだ妹を思い出してどうしても攻撃的に
なれないんです」と相談する峰岸に対し「はあ、原爆のような攻撃的な破壊力が
ないんですね」などという危ないたとえの会話が繰り返される。
しかも峰岸は松坂慶子と結ばれる時に「今から原爆投下です!」みたいな
ことを言う。
これも今じゃ考えられませんね。



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ブラザーフッド


日時 2004年7月3日20:30〜
場所 ヴァージンシネマズ六本木ヒルズスクリーン6
監督 カン・ジェギュ
 
(公式HPへ)


1950年、ソウルで平和に暮らしていたジンテ(チャン・ドンゴン)にとって
弟・ジンソク(ウォンビン)の大学進学が大きな楽しみだった。
そんな中、北朝鮮が突然韓国に南進、朝鮮戦争がはじまる。
避難中に無理矢理徴兵させられるジンソク。弟を守るため、兄は自分も軍隊へ。
戦争の不条理はやがて彼らを敵味方へと分けてしまう。

朝鮮戦争を真正面からとらえた戦争大作。
まずは戦闘シーンの迫力が立派。
「プライベート・ライアン」を参考にして画を作り上げたことは明白だが
それにしても全く引けを取らない。
また見た映画館が音響設備のいい劇場なので音の迫力が違う。
殴りあう音の「バコッ」「バシュ」という音まで実にリアルに聞こえるのだ。

同じ民族が大国の都合により戦争に巻き込まれていく。
映画のセリフを借りれば「思想って人の命よりも大切な物なのか?」だ。
だがこの辺の朝鮮戦争のソ連とアメリカの代理戦争についての追求は余りなく
映画はひたすら兄弟愛の視点で描かれる。

しかし根本的に内容に疑問があった。
弟を守るために自分も軍隊に行くという心情はわかるが、同じ部隊に配属
されるのだろうか?
またもともと職業軍人でもないジンテが強すぎるのだ。
滅茶苦茶なスーパー兵士として大活躍する。

この辺の話の設定がちょっと強引な感じで、いまいちこの映画には乗り切れ
なかったのだが、僕にとっては挿入されるエピソードが面白かった。

日本のように召集令状が来て、というようなのんびりした状況でなく、
駅で歩いていたら突然召集されてしまう。
ついこの間まで隣近所だった人が敵になってしまう不条理。
また同じ民族が敵味方に分かれている。言葉は同じだ。
日本の戦争映画では敵兵と日本兵が直接会話をする事が出来ない。
しかしこの戦争では敵兵と直接会話が出来る。
命乞いも憎しみの言葉を同じ言葉で言い合う。
また韓国国内でも共産党でもないのに疑いをかけ虐殺していく。
これらの今まで自分が知らなかった朝鮮戦争の事実が興味深かった。

出演者ではウォンビンが印象的。
今まで韓国映画は何本も見たが、いまいち男優があまり好きになれなかったが
このウォンビンはいい。
眼のクリっとした日本でいうジャニーズ顔でキムタク風の男前だ。
ウォンビンを見てるだけでも見ていて満足できる。

この映画については自分は点が辛い。
しかしそれは実は日本映画ファンの自分としては、これだけの作品を作り上げ
世界市場に進出する韓国映画に嫉妬しているに過ぎないのかも知れない。
かつて日本映画界ではよく言われたものだ。
「日本映画とアメリカ映画ではマーケット、つまり観客予備軍の人口が違う。
だから日本映画は作品のスケールが小さくなりがちなのだ」
でも韓国の人口は日本の人口より少ない。
つまりは上記の理由説明は言い訳でしかなかったのだ。


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