2001年11月

かあちゃん
リベラ・メ ソードフィッシュ
オテサーネク ピストルオペラ

かあちゃん

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日時 2001年11月24日18:50〜
場所 新宿武蔵野館
監督 市川昆

最近の日本の若手監督と違ってやはり巨匠の作品は安心して観れそうだ。
映画のセオリーをわかっているだろうから。
それに去年「どら平太」という快作もあったことだし。

というのが観にいった理由。
もちろん映像はきれいだし、上記の理由からは外れていない。
しかしこの作品の善意の連続にはちょっと参ってしまう。
晩年の黒沢も善意の人間ばかりのドラマになったが
人間年取るとこういう作品が作りたくなるのだろうか?

山田洋次の「男はつらいよ」も善人ばかりが登場するが、
それでも寅次郎はふられるという悲劇的な結末が控えている。
そうそう世の中うまくいくはずはない。
このあたりが見てるほうには現実の自分と共感する部分も出てくる。

だがこの「かあちゃん」は善人だけでなく、すべてまるく納まってしまう。
厳しい現実社会を生きてる僕にはとてもうそ臭く
見ていて逆につらくなる。

見終わったら後ろのオバサン4人連れが「よかったわね」と口々に言っていた。
多分この作品をよいと感じるようになるにはまだ私は若すぎるのだろう。
20年いや30年ぐらいたったらこの作品のよさが実感できるかもしれない。

でも美術、照明などはすばらしかった。
日本映画の職人芸のなせる技だ。
フォギーをかけることしか知らないバカな監督にはこのよさはきっと理解できないだろう。

(息子役の一人に「ネバーランド」の山崎裕太がいた。いい仕事をもらってますね、彼)

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リベラ・メ

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日時 2001年11月24日16:15〜
場所 新宿ピカデリー3
監督 ヤン・ユノ

面白かった。
やっぱり本物の迫力は違う。
炎の熱感がCGとは違うのだ。
のっけから火災シーンで迫力がある。

しかし惜しいのはもう少しシナリオにひねりが欲しかった。
もっと突っ込んで書いて欲しかったのは
犯人側の火災を発生させる仕掛けをもう少し丁寧に書いてくれたら
もっと面白かったと思う。
ガソリンスタンドで最初はボヤと思われたのが大火災になる仕掛けは
どうなっていたのだろう?
(タバコだけじゃなくなんかその前に仕掛けがあったんじゃない?)
病院火災の始まりに出てくる白い炎って何だ?
仕掛けを見抜いてもう少しで発生を食い止められるのに・・・といった
シーンがあるとか。

それでもラストの病院火災のエレベーターのシーンとかは
迫力満点だ。
こういったシーンがホントよく出来ているので
余計にシナリオでも見せてもらいたくなるのだ。

それともう一つこの映画にのれなかったのはやはり韓国人のルックスが
僕にとっての「かっこいい男」に見えてこないからだろう。
美青年、という意味でなく、おじさんでも存在感がカッコよく見える
男優が日本にはたくさんいる。
この映画でもクリスマスに家族団欒をすてて消化活動に参加する消防士とか
ラストで「消化開始!」と号令をかける班長とか
魅力的なキャラ満載なのになんかカッコよく見えない。

これはもう僕の(だけではないかも知れないが)美意識にあわないからだとしか
言いようがない。
なんかどれ見ても一重まぶたののっぺり顔が多くてイマイチ魅力的ではないんだ。
これはもう彼らの責任ではないのだが。
このあたりが僕にとって韓国映画の弱いとこなんだよね。
ホント惜しい。
(犯人役の青年がなんだか小泉孝太郎に似てる気がした。関係ないが)

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ソードフィッシュ

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日時 2001年11月10日 17:00〜
場所 渋谷パンテオン
監督 ドミニク・セナ

先に言っておくけどあんまり面白くないよ、この映画。
ハッカー(クラッカー)が銀行のシステムに侵入し、
40億ドルを奪う内容かと思ったら、結局ただの銀行強盗になって
銀行に突っ込んじゃうんだもん。

何か知恵がないようなあ。
その点同じ「お宝もの」なら「スコア」の方が断然によい。
IT時代だからハッカーを題材にした作品はこれからも出てくるだろうけど、
これって映画にすると面白くないんだ。
パソコン、カタカタ叩いてるだけじゃ画にならないもん。
今のところハッカーを題材にして成功したのは「ウォーゲーム」ぐらいか。

で後半、逃走用のバスを吊り上げて逃げるんだけど、
ワイヤーが切れてビルにぶつかりそうになるというサスペンス付き。
ここは素直に見ると楽しめるが、根本的にバスを吊り上げてるワイヤーが
切れそうになるなんて、他が緻密な計画な割には随分雑な計画だなあ、
と思えてならない。
だったら最初からヘリで逃げろよ。

ラストのオチはまあ効いていた。
でもそれほどじゃないよ。
あんまりお薦めできる映画じゃありません。

「仕掛けを大きくすりゃいいのよ、映画なんて」という
ハリウッド映画の悪い癖が目立つ映画だった。
「オテサーネク」を観た後だから余計にそう思った。

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オテサーネク

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日時 2001年11月10日13:30〜
場所 ユーロスペース
監督 ヤン・シュヴァンクマイエル

初めて見るチェコ映画。
CGなどではない、パペットアニメを駆使した怪奇ホラーだ。
それも最近ありがちなスプラッタ映画ではなく、
作品のムードとしては円谷の「マタンゴ」「ウルトラQ」「怪奇大作戦」
のようなSFホラー。

子供が出来ない夫婦がいた。
夫は妻を慰めるため、山荘に遊びに行った時、
掘り返した木の根っこを赤ん坊の形にして人形を作ってあげる。
ところが妻はその子を実の赤ん坊のように溺愛し始める。
やがてその木の赤ん坊は伝説に登場する人食いの怪物
「オテサーネク」になり夫婦の飼っていた猫、郵便配達夫などを
食べてしまう、と言ったストーリー。

正直言って私のつたない文章ではこの映画の面白さは
伝えられない。
「オテサーネク」が母親の髪の毛から始まって
人食い怪物としての本性を徐々に発揮していく過程が恐い。
また自分の子供だと思っている母親がなんとしても
この怪物を守ろうとする狂気が恐い。

最近のアメリカ映画なら何でもCGで作ってしまうので
このオテサーネクの成長もCGで処理してしまうのだろうけど
パペットアニメの手作り感がまたいい。

ファミレスのハンバーグとこだわりオーナーの作るハンバーグの違い
ぐらいの差はある。
是非皆さんに見てもらいたい。
「ミステリーゾーン」「ウルトラQ」「怪奇大作戦」のようなSFホラーが
お好きならきっと気に入ってもらえるだろう。
監督は多分円谷作品は観てないだろうし、影響も受けてないだろうから
こういう比較のされ方は多分迷惑だろう。
しかしこの作品のよさを皆さんに説明する文章が思いつかない。
悔しい。
そして多分この作品が私の今年のベスト1だ。

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ピストルオペラ

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日時 2001年11月4日16:25〜
場所 テアトル新宿
監督 鈴木清順

鈴木清順は別に好きな監督ではない。
しかし「ツィゴイネルワイゼン」が公開されたとき
ちょっとした清順ブームで旧池袋文芸地下でも特集上映があった。

「野獣の青春」「殺しの烙印」「東京流れ者」「素っ裸の年齢」(これは赤木圭一郎特集だったか)
などは見た。
(今、パンフにある作品一覧を見ると「ツィゴイネルワイゼン」は57歳の時だったんだ。
当時は随分じいさんが映画撮ったなあと思ったけど、別にそうでもないじゃないか)
今の78歳で映画を監督するというのはすごいが。
好きにはなれない作品が多かったが、すごい監督だと思った。
色彩感覚、カットの切り替えの大胆さ、構図の面白さ、セットの大胆さ、
どれをとっても清順にしか出来ない、まさしく「ワン・アンド・オンリー」の作品ばかりだ。

今回の「ピストルオペラ」も今までの作品同様、何も変わっていない。
これはいい意味で言っているのだ。
全く衰えていない。
おそらく50年後に見ても今と同じ衝撃を受けるだろう。

江角マキコがかっこいい。彼女の着物の大胆な色がいい。
ラストの富士山をバックの対決、オープニングの東京駅、プールでの殺人、
車椅子の殺し屋との対決、無痛の外科医というキャラクターのナンセンスさ。
どこを切っても清順印だ。

好きか嫌いかで言えばあまり好きな監督ではない。
でも、とにかくすごい監督だと思う。
それはよくわかる。
尊敬に値する。

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