2003年8月

明治天皇と
日露大戦争
HULK
ドラゴンヘッド ターミネーター3 皇室と戦争と
わが民族
マトリックス
リローデッド
未知への飛行 GODZILLA ゴジラ(1984) 怪獣王ゴジラ

明治天皇と日露大戦争


日時 2003年8月31日
場所 録画ビデオ(チャンネルNECO)
監督 渡辺邦男
製作 1957年(昭和32年)

(詳しくはキネ旬データベースで)


明治天皇の苦悩を中心に日露戦争の全貌を描く新東宝の大作。

まあとにかく勝った戦争だから何とでも描ける。
開戦の是非を討議する会議でも明治天皇は終始戦争を避けることを
指示する。
また世界の大勢は、日本が正しくてロシアが悪いと紹介される。
実際のところはどうだったか、世界史に詳しくない僕にはよく解らないが
結果的に勝ったから正しいと言えちゃうのだろう。
世界史とはそういうものだ。

普通こういう戦争ものだと、中心となる司令官がいてそして兵士も数名主役級がいて、
と多重構造のドラマになることが多いが、この映画では閣僚や司令官たちが中心。
ドラマめいたものはなく、事実をなぞるだけ。
そしてみんな勇ましく、影で弱音を吐くような者はなく、実に威勢がいい。
太平洋戦争ものにありがちな「負けていく戦況に対する司令官の苦悩」
といった暗い面はなく、ひたすら勇猛果敢。
我も我も突撃を志願するような勢いだ。

やっぱり勝った戦争を映画化するとちがうなあ。

唯一泣かせるのは乃木大将の次男(高嶋忠夫)が突撃前に父・乃木大将に別れの
あいさつをするところかな。

で、戦闘シーンだが、これが面白くない。
もちろんエキストラは多いし、戦場では画面の隅っこの方にも動く兵隊がいる。
この辺は実に豪華。
でももともとの旅順攻略自体が日露の司令官の作戦合戦(多分こうくるからこう迎え撃つ、
逆にこっちはこう責める)といった部分はなく、ただ突撃で兵隊がばたばたと
死んでいくだけ。
これじゃ映画的に盛り上がらない。

東京では乃木更迭論も出るのだが明治天皇の「乃木を変えてはならん!」の一言で
おしまい。閣僚たちは陛下の人を見る目の正しさにひれ伏すのだ。
でも成功したからいいものの、もし203高地が落ちなかったらどうなるんだよ、
と突っ込むのは今回は辞めにして、素直に明治天皇を称えよう。

出演者では何といっても嵐寛寿郎。さすがの大スターの迫力!
時代劇のような大袈裟な演技が明治の迫力を感じさせる。
その他、丹波哲郎とか宇津井健とか田崎潤とか江川宇礼雄とか出てるけど
みんな鼻の下にひげをたくわえているので、パッと見た目には気づかない。
声を聞いて「あれ?田崎潤?」と初めて気づく次第だった。

これ以後、新東宝ではアラカンを主役にした天皇と戦争映画が続く。
でも思想的にどうだというより、太平洋戦争で負けた日本人にとっては
たまには日本が勝った戦争映画も見たかったんだろう。
一連の新東宝戦争ものはその辺のニーズにぴったりはまった映画だったのではないか。

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HULK


日時 2003年8月30日21:15〜
場所 新宿オスカー
監督 アン・リー

(公式HPへ)


科学者ブルース・バナー(エリック・バナ)は実験中の事故で
ガンマ線を浴びてしまう。
彼は死ぬどころか前より健康体になったというのだ。ところが彼は
今度は強い怒りに襲われると緑色の巨人(ハルク)に変身する体になっていた。
科学者だった彼の父がブルースに行った実験はとはなんだったか?

はっきり言って長い。2時間20分もある。
アメコミの映画化だが、もうちょっと短くまとめて欲しい。
話はハルクに変身して捕まって、また変身して逃げ出して、の繰返し。
(でも戦車をブン投げたり、ひっとっとびで2、3マイルってのも
なんだかなあ。いくらコミックが原作だからって映像にすると
「ありえなさ」が際立ってしまう)

ハルクがサンフランシスコを襲ったあたりで映画のクライマックスとして
終らせてくれれば、迫力ある破壊シーンもあって面白く終ったのかも知れない。
ところが例の父親が清掃員となってブルースの研究所に出入りし、自分も
わざとガンマ線を浴びて今度は「手に触れたものに体が同化してしまう変身人間」
になってから冗長になる。
(「手に触れたものに体が同化してしまう変身人間」ってすごいよなあ。
東宝のガス人間も真っ青だ)

後半の父親との関係のあたりは今回は映画にしないでおいて、映画が好評だったら
「ハルク誕生の秘密が明かされる!そして彼の父親との対決!」といって「HULK2」
にでもすればもっとすっきりしたと思うのだが。

「スパイダーマン」などアメコミの映画化が最近多いけど、「ハルク」はもともと
人気が低かったと思うし、TV版の「超人ハルク」も以前1、2話見たことあるが
つまらなかった。
だからもともと今さら「HULK」でもないような気がします。

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ドラゴンヘッド


日時 2003年8月30日18:15〜
場所 新宿コマ東宝
監督 飯田譲治

(公式HPへ)

はっきり言って期待はずれ。

修学旅行の帰りの新幹線、高校生の青木テル(妻夫木聡)は気がついたら
周りはトンネルの中で瓦礫の山と化していた。
生き残ったのは自分と瀬戸(SAYAKA)、そしていじめられていた事が
原因で狂気に犯された(山田孝之)。
なんとかその場を逃れたテルたちだったが、彼らは自分の家があった東京を目指す。


結局最後まで何があってこのような地上すべてが廃墟になったかの説明はない。
なくてもいいのだが、妻夫木たちは東京を目指して小田原あたりなどで
生き残った人たちに出会うんだけど、みんなこの事態に頭がおかしくなった
人たちばかり。
寺田農は若者に憎悪を抱く狂気の老人だし、医者の親によって恐怖を感じないように
脳手術をされた子供とか、迷彩服を着た怪しげな二人(藤木直人、近藤芳正)、
ヘリコプターに乗ったサラリーマン(根津甚八)とか色々出てくるけど
みんな要するおんなじようなキャラクターばかりが繰り返され面白くない。

エピソードも似たような感じで話はだらだらとテンポは悪い、(最初のトンネルから
抜け出すのに30分もかかっている。その間妻夫木たちと山田孝之の面白くない
追っかけが続くのだな)
ポスターなどは白塗りに赤い斑点を顔にメークした山田孝之が大きく出ているが
その山田も最初の30分ぐらいで死んでしまう。
(これ、詐欺だよな)

妻夫木がヘリコプターから落ちたのに無傷なのは変という突っ込みもあるが
とにかく渋谷にたどり着く。
そこで配給されていた食糧はパニックによる争いを避けるため、人間の感情を
なくしてしまう成分が含まれていたってオチはまあ面白かったが、それだけ。

結局妻夫木はその食料を食べることを拒否し、「絶対生き抜いてやる!」と
宣言し、映画は終る。
「生き抜くったってどうやって生き抜くんだよ」という突っ込みはあるし、
「禁断の食料に手をだす人間」というので映画「マタンゴ」のキノコを
思い出したが、あの映画のような葛藤はなく、ただ妻夫木の叫びだけ。
説得力ないなあ。
「マタンゴ」のように最初の結束が旅の途中から徐々に崩れていく・・・
というのなら面白かったと思うがそういう心理サスペンスもないし。

ただウズベキスタンまで行って撮ってきた廃墟シーンは迫力ある。
ラストの空から降る隕石、爆発する火山など画的には申し分ない出来なのだが
映画全体がつまらなさすぎて印象に残らない。
SAYAKAは全然印象に残らなかった。

それとコミックの原作はもうやめようよ。
長編が多いし、2時間ぐらいにまとめようとすると無理が出るし
オリジナルで勝負しようよ、映画も。
だからやっぱり最近の日本の最高のSFは「COSMIC RESCUE」なんです。

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ターミネーター3


日時 2003年8月30日14:10〜
場所 新宿プラザ
監督 ジョナサン・モストウ

(公式HPへ)

ロサンゼルスのある夜、白髪と共に地表に全裸の女性が降り立った。
女は未来からやってきた。コンピュターが人間を支配する未来社会、
人間の反乱軍のリーダーとなるジョン・コナーを過去にさかのぼって
殺しにきたのだ。
しかし続いて別の男(アーノルド・シュワルツネガー)が全裸で地上に降りたつ。
彼はジョン・コナーを守るべく未来からやってきたのだ。


実は「ターミネーター」シリーズを見るのは今回が初めて。
だから今回もパスするつもりだったが、評判がいいので見に行ってしまった。

全篇、これでもかこれでもかの破壊シーンが続く。
面白い事は面白いが(贅沢な発言で申し訳ないが)さすがに飽きる。
前半のクレーン車と消防車とパトカーが入り乱れてのカーアクション、
もー長すぎて・・・(いや面白いのだが)

核戦争は回避されるのかと思ったら最後はジョン・コナーたちが助かるだけで
核爆発は起きてしまうのですね。
となったら「ターミネーター4」は未来社会のターミネーター対人類の戦いに
なるのですね。「未来社会の戦いの歴史」っていうとなんだか「猿の惑星」シリーズ
を思い出しました。この調子で行くと「ターミネーター5」ぐらいまで作れそうな
いきおいだ。

でも「コンピュター対人間」って話の柱は「マトリックス」も同じ。
僕としては画面も明るいしユーモアがあって(最初のシュワルツネッガーが
男性ストリップ場で服を奪うところなどセルフパロディ?)好きだな。

映画では誰もが「悪い奴」という絶対的な悪が存在しないと勧善懲悪の物語が
作りにくい。
昔はドイツ軍、東側諸国、宇宙人、テロリストなどだったが、最近はコンピュターになったようだ。
確かにコンピュターを敵にすれば、イデオロギー的に誰からもつつかれない。
そういう観点たてばこれからの映画では「コンピュター対人間」や「コンピュターの暴走」ネタ
は増えるかも知れませんね。


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皇室と戦争とわが民族


日時 2003年8月26日
場所 録画ビデオ(チャンネルNECO)
監督 小森白
製作 1960年(昭和35年)

(詳しくはキネ旬データベースで)


新東宝製作の戦争映画。

1時間40分の映画だが、最初の15分ぐらいは初代天皇・神武天皇が
九州からやってきて大和朝廷を開くまで。
合戦シーンが多少あるのだが、ロングの画が多いせいか盛り上がりに欠ける。
で、タイトルを見ると歴代天皇と日本史をオムニバス風に描くのかと思ったら
時代は一挙に昭和12年へ。
芦溝橋事件に端を発した日中戦争、太平洋戦争、そして終戦までを
1時間ぐらい描く。
アラカンが東條英機、近衛総理を細川俊夫、木戸内大臣を佐々木孝丸などが演じているが
盛り上がりに欠ける。
全体的にテレビの歴史ドキュメンタリーの再現ドラマを見てるような淡々さなのだ。
(ちなみに終戦の是非のシーンで畑中少佐を宇津井健が、椎崎中佐を天知茂が
航空士官学校の上原大尉を菅原文太が演じていた。
岡本喜八の「日本のいちばん長い日」ではそれぞれ黒沢年男、中谷一郎、中丸忠雄が
演じた役だ)

そして映画は終戦後のマッカーサーに食料援助を要請する天皇が描かれ
最後は日本全国を復興の励ましにまわった昭和天皇の姿が登場する。
(全国行脚のシーンはすべて当時のニュースフィルムを使用)
そして皇太子(現・平成天皇)のご成婚、浩宮(現・皇太子)の誕生の
ニュースフィルムで映画は終る。

この映画では昭和天皇は終始、日本国民の平和と幸福を願い戦争は軍部の暴走に
よって行われ、戦後は精力的に全国行脚をしたいい人として描かれる。
こういう風に書くとものすごい天皇崇拝映画のように思えるかも知れないけど、
それほどのもんじゃない。
多くの日本人の心のどこかにある皇室に対する親しみを映画にして一儲けしようとした
だけじゃないか?、この映画は。

今でも皇室に慶弔があるとテレビ局は過去のニュースフィルムを流して
「皇室ジャーナリスト」なる人が出てきて解説したりする2時間の特番を組むでしょ。
あんな感じの内容じゃないかな。
そういう番組を放送しても「天皇崇拝、軍国主義復活か?」などと非難されない。
また新聞の通販で時折見かける「日本軍歌全集」とか「なつかしの旧日本軍軍装品」の
広告、歴史的な事実を記録したというより懐古趣味的要素の強い戦記物、
そういったものと同系列で、思想的に何かがあるのではなく、
単に「市場があるから」という発想で作った作品では無かろうか?

だからそんなに目くじら立てるほどの内容ではない気がいたしました、ハイ。


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マトリックス・リローデッド

日時 2003年8月8日19:30〜
場所 新宿ミラノ座
監督 ラリー・ウォシャウスキー
アンディ・ウォシャウスキー

(公式HPへ)


見終わった感想は一言、「これって面白いのか?この映画が
面白くないのは俺の歳のせい???」
今、Yahooの映画感想を読んできたけど、これだけ話題になった映画の割には
否定的な意見が多くてほっとした。
やっぱりみんなそれほど面白くなかったらしい。

劇場で見なかった前作を予習のために先月DVDで見たにも関わらず、
ザイモンがどうした、船団がどうしたとか今回はストーリー的によくわかんなかった。
前作ではプログラムと戦ってるのはネオたちだけみたいな感じだったから
いきなり評議会議員とか艦隊司令官とか、なんだか「スターウォーズ」みたいに
なって戸惑った。

確かにCGとかはすごいんだけどCGばればれのせいか、大掛かりなアクション
シーンにも関わらず見てるこちらのテンションは全く上がらない。
例えばエージェントスミスが100人ぐらい出てきてネオ(キアヌ・リーブス)と
戦うでしょ。
あそこなんか完全にCGってのが解るから見てても「ああ、そう」って感じになるのだね。

実際は違うかも知れないけどCGって何十人のCGスタッフがパソコンに向かって
チマチマ作業していく、極端な話、根気だけで何とかなる作業っていうイメージが
あるから、実写の迫力に比べるとのもすご〜〜〜〜く見劣りするのです、私は。

だからキアヌリーブスがどんなにすごいアクションをこなしてても
「どうせ本人は顔のアップだけなんでしょ」とか高速道路のシーンにしても
「ブルーバックの前で演技してるだけなんでしょ」とか思ってしまい、
スタッフに申し訳ないけど全然伝わってくるのものがない。
(但しこれは誤った認識のようで、高速道路は実際に3.2キロぐらい作ったそうだし
キアヌもアクションを相当訓練したとパンフに書いてある)

その点ブルース・リーのアクションとか「フレンチ・コネクション」のカーチェイスとか
「007黄金銃を持つ男」の360度回転とかのほうが作ってる人間の努力が
感じられて私には面白く見えてしまう。

第3作「レボリューションズ」見るかなあ??
暇だったら見てもいいかな。

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未知への飛行

日時 2003年8月3日
場所 録画ビデオ
監督 シドニー・ルメット

「未知への飛行」については名画座に記載しました。

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GODZILLA


日時 2003年8月2日24:30〜
場所 浅草東宝
監督 ローランド・エメリッヒ

(詳しくはキネ旬データベースへ)


南大西洋で日本の漁船が何物かに襲われる事故が起こった。
そこ頃ロシアのチェルノブイリで原発事故の後遺症によるミミズの
巨大化を調査していたニック・タトプロス(マシュー・ブロデリック)
は国防省から緊急召集を受ける。
連れていかれた南の島には巨大生物の足跡があった!!

という前振りは20分ぐらいでこの巨大生物は突如ニューヨークに
上陸する。

とにかくこの映画は日本では評判が悪かった。
いろいろみんな言ってたけど、結局ゴジラのデザインを大幅に変更してしまったため、
「あれはゴジラじゃない!」ってもう完全に老若男女すべてからスポイルされてしまった。

「『巨大トカゲの襲来』というタイトルなら面白かった」とはよく聞かれた
評判だったが、先に書いたゴジラのデザイン変更のために見た人全員
この映画を拒否してしまったんだね。

もちろん封切りの時にも見ていて僕も同様な感想を持ったものだが、
今回は「日本のゴジラとは切り離して見よう」という心の準備は出来ていたため
評価が変わった。
怪獣映画としては実によく出来ていたと思う。

日本のゴジラでは「一度上陸してから一度海に帰り再度決戦!」というのが
パターンなのだが完全に無視してニューヨークシーンになってからは
たった一晩のゴジラとの大攻防戦を描いた大サービス映画なのだ。

そして当日ニューヨークは土砂ぶりという設定がいい。
ゴジラは昼登場するより夜のシーンの方がいいというのが定評だが
それに雨が加わるともっといいですね。
雨の夜のゴジラというのは日本では手間と予算の関係か、冒頭の登場シーンなどで
少し出ることはあったけど全篇というのはなかった。

しかし54年の最初のゴジラも大戸島で台風の中上陸するゴジラシーンがあったように
雨風に襲われてるところにさらにゴジラ!という「泣きっ面に蜂」的設定が
さらにシーンをもりあげる。
この辺のことがエメリッヒは解ってるね。

またニューヨークのシーンも大体3つに別れており第1章はゴジラ上陸で
クライスラービルやアイアンフラットビルなど有名ポイントの破壊、
(エンパイヤステートビルや世界貿易センタービルはキングコングに
遠慮してか壊していない)そして第2章は卵のから孵化した無数のベビーゴジラ
とのマジソンスクエアガーデンでの決戦、そして第3章は生き返ったゴジラに
止めを刺すブルックリンブリッジのシーンと手を変え品を変え飽きさせない。

ゴジラ映画をおそらく研究し、主人公の設定(市井の科学者とか、軍の司令官とか)
などはセオリーに乗っ取り、ゴジラとの攻防はさらに膨らましたのだから
「日本のファンにも絶対に満足してもらえる!」と思っていたであろうエメリッヒは
(しかも続編が作りやすいようにしてある)日本での大ブーイングに驚いたんじゃないかな。
きっとものすごく「????」な気分だったんじゃないだろうか?


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ゴジラ(1984)


日時 2003年8月2日22:40〜
場所 浅草東宝
監督 橋本幸治

(詳しくはキネ旬データベースで)


「メカゴジラの逆襲」('75)以来の9年ぶりの満を持してのゴジラ映画の復活!

南海で貨物船が何物かに襲われた。
近くにいた新聞記者の(田中健)は現場に向かう。
そこに見たのは巨大なフナ虫状の怪物に襲われた乗組員たちの死体だった。
ただ一人生き残っていた学生(宅間伸)を救出する。
やがて政府はゴジラが復活したとこを発表する。
東京に上陸するゴジラ。
自衛隊は新兵器スーパーXで立ち向かう。
しかしその時、米ソは戦略核兵器でゴジラを狙っていた!


満を持して周囲の期待も高かったゴジラ映画。
この時のゴジラ復活騒ぎはマスコミでもなかなかの話題だったと思う。
ところが出来た作品は気合が入りすぎて、空回りした作品になってしまっていた。

要は詰め込みすぎたのだ。
田中友幸が自身が作ってきた特撮作品のリメイク的再生産をやろうとしてしまったのだ。

まずは最初のゴジラに襲われた船を訪れる田中健のシーンは「マタンゴ」を思わせる
ホラータッチ、スーパーXは「海底軍艦」のスーパーウエポンの復活、
米ソの核戦略というコンセプトは「世界大戦争」、ゴジラ災害の国際問題化に向かう
総理大臣というあたりは「日本沈没」。
主なところはそんな感じだが、結局焦点が定まらない大味の映画になってしまった。

だから肝心の怪獣映画としての面白さが全くない。
ゴジラの初上陸にしても突然ゴジラが上陸していて石坂浩二の警備員が「ゴジラ・・・・」
と驚くだけ。
ここはちゃんと海から出てくるところをやらなきゃダメだよ。
(ちなみに石坂浩二の警備員の制服に何故か「怪奇大作戦」のSRIのエンブレムが
貼り付けてある)
そして宅間伸、夏木陽介、田中健らがゴジラの調査に向かうわけだけど、ここは
お決まりとして本作のヒロイン沢口靖子がゴジラに殺されそうになって
「あわや!」というところを田中健が救うって展開にならないと。
テレビカメラみたいなものを担いで音を録ってるだけだもののなあ。

そして映画は戦略核兵器という限定的な核兵器でゴジラを倒すことを米ソは
提案する。
このときの閣議のシーンが小沢栄太郎、金子信雄、加藤武らのなんだか山本薩夫映画
みたいな濃い面々が出てきて討議する所は(まあ)面白かったが、でも怪獣映画
本来の面白さからは逸脱してると思う。

で東京上陸となるわけだが、武田鉄矢とかかまやつひろしとかやたら有名人が
エキストラ出演してうるさい事この上ない。
特に武田鉄矢のシーンはビデオなら早送りしてるところだ。
最近のゴジラ映画でやたら有名人のワンシーン出演が目立つがその始まりですね。

で肝心のゴジラ対スーパーXの新宿副都心での決戦もそれほど見所ないし・・・・・

住友ビルを崩壊させた後ゴジラは夏木陽介博士の開発した超音波装置で
あっさり三宅島に到着してしまう。
このあたりの描き方が実に雑。

出演は他に総理大臣に小林桂樹、三宅島を調査する地質学者で小泉博。
とにかく期待ばかりが先行して外された見本のような映画だった。

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怪獣王ゴジラ(海外版)

日時 2003年8月2日21:15〜
場所 浅草東宝
監督 テリー・モース
本多猪四郎

(詳しくはキネ旬データベースで)


ゴジラをアメリカ公開用にアメリカでレイモンド・バーの出演シーンを
加え再編集した海外公開版。

海外取材中に日本に立ち寄ったアメリカの通信社の特派員が
東京でゴジラ上陸に遭遇した、というつくりになっている。
1時間15分の作品でレイモンド・バーの出演シーンも
加わってるからオリジナルから借用してるのは1時間ぐらいかな?

山根博士(志村喬)や河内桃子と会話したりするシーンがあるのだが
背格好の似た人物で後ろ姿をとったり、アップのシーンは
全然関係ないシーンから持ってきて、英語のセリフをしゃべらせたりして
何とかドラマにレイモンドバーを参加させている。
オリジナルを見てると違和感があるのだが、知らなきゃ何とか見えたかも?

この夜の最後の上映がオリジナルの「ゴジラ」だったから見比べる事が
出来たが、前半、レイモンド・バーが大戸島に行って取材したり
(アメリカの日系人に大戸島の島民を演じさせている)
余分なシーンがあるのでゴジラ登場まではもたつきがあってテンポが悪い。

またこの大戸島のシーンで(なんと書いてあったか忘れたが)意味不明の
言葉が書いたはっぴを来た日本人が登場する。
以前この映画を見たのは1978年の日劇ゴジラフェスティバルだったと思うが
このときはこのシーンで爆笑があったと思う。

見てなくてもどうってことない作品だけど、ゴジラファンとしては
海外で最初ゴジラが紹介されたときはどんな形だったのか?を
知る資料的価値はありますね。
珍作です。



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