2010年8月

オスロ国際空港
ダブルハイジャック
金星人地球を征服 石井輝男映画魂 紅の拳銃
インセプション ウルトラマン
実相寺昭雄監督作品
犬神の悪霊(たたり) キャタピラーCATERPILLAR
日本のいちばん長い夏 4Dマン 
怪奇!壁抜け男
エグザイル/絆

オスロ国際空港 ダブルハイジャック


日時 2010年8月31日
場所 TSUTAYAレンタルDVD
監督 キャスパー・リード
製作 1979年(昭和54年)

(詳しくはムービーウォーカー・データベースで)


ノルウェーのオスロ。イギリス大使がテロリストたちによって誘拐され、彼らは山荘に籠城していた。
テロリストたちの要求はイギリスで逮捕された仲間の釈放。
ノルウェーの保安部長(ショーン・コネリー)は犯人たちの仲間の釈放には否定的だったが、
イギリス政府は釈放を決定した。
その頃、オスロ空港に降り立った旅客機が銃を持った男たちに乗っ取られた。機長はとっさの判断で
着陸時にタイヤをパンクさせ、飛行機をすぐには飛び立てない状況にする。乗っ取り犯の要求は
イギリス大使を拉致したメンバーと合流し、この飛行機で逃亡する事だった。
果たしてどうなる、この戦い!

この映画はパニック映画ブームの70年代後半に公開されたが、派手さに欠けるし、キャストも
ショーン・コネリー以外はノースターという地味さで、公開は大作扱いではなかったと思う。
公開当時見逃してそれ以来ずっと気にはなってた。
「ダブルハイジャック」というとなんだか飛んでいる飛行機が2機ハイジャックされたのかと思ったら、
一方は山荘の籠城、一方は飛べない飛行機という割と地味な感じだ。
果たして面白いのかと思っていたが、めちゃくちゃ面白いわけではないが、かといって捨てがたい。
B級以上だがA級ってほどでもない。
「サブウエイ・パニック」ほどではないが十分楽しめる。

話の中心はやはりハイジャックされた飛行機のテロリストとのショーン・コネリーの対決。
飛行機の後ろ側から、つまり死角から兵士を一人進入させようとするが、気づかれる。
どうやら外から飛行機を見張っている仲間がいるのではないと探り出す。
その次はいよいよ大使たちと合流となった時、大使とテロリストを乗せた一行のバスがトンネルに
入った時に中で入れ替わり、替え玉たちが飛行機に乗ろうとするが・・・
という(それほどの知恵比べではないにしろ)丁々発止とやり合うあたりは飽きさせない。

そしてショーン・コネリーは気づく。
乗っ取り犯はなぜ拳銃を機内に持ち込むことが出来たのか?主犯の男はなぜ偽名を使わず本名で
搭乗しているのか?なぜ逮捕歴がないのか?
それはつまり・・・・
書いちゃうけど乗っ取り犯は実はイギリスのスパイだったのだ。
イギリス政府は釈放したテロリストの仲間を追うためにもスパイが必要だったのだ。

このイギリスのやり方に怒ったショーン・コネリーは乗っ取り犯を射殺する。
犯人がイギリスのスパイだったという展開には大いに驚いた。

でも観終わってから思ったのだが、ノルウェーとイギリスの実際の力関係みたいなものが根底
にあったのだろうか?
たとえばこれが日米関係に置き換えて観るとよくわかる。
日本国内で米国大使がテロリストに拉致され、仲間が飛行機をハイジャックしてやってくる。
実はそのハイジャック犯はおとり捜査のためのアメリカのスパイだった、という感じで考えれば
何となく納得してしまう。
つまりこの映画はノルウェーによる反英映画ではないのか?
実体はよくわからんけど、ひょっとしたらそういう映画なのかも知れない。

それにしても日本赤軍が日航機をハイジャックして仲間を釈放させた事件もあったから、
この時代を反映した映画だったのだなあと改めて思う。
そういう映画以外の読み方も出来、その点でも面白かった。



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金星人地球を征服

日時 2010年8月29日
場所 DVD
監督 ロジャー・コーマン
製作 昭和31年(1956年)
日本公開 平成6年(1994年)

(詳しくはムービーウォーカー・データベースで)


アンダーソン博士(リー・ヴァン・クリ―フ)はネルソン博士(ピーター・グレイブス)たちが
行っている人工衛星の実験をやめるように常に軍に進言していた。
やがて宇宙人がやってくるというのだ。
アンダーソンは自宅にネルソン夫妻を夕食に招いたときに、金星人がやってくる、この無線機で
彼らと交信できると話すのだが、相手にされない。
やがて人工衛星が墜落しそれに紛れて金星人はやってくる。そして町中の動力が止まって大騒ぎに。
金星人はアンダーソンからの情報により、人間を操ることのできる装置を人間に埋め込む鳥に
似た機械を外に放つ!
果たして人類の運命は?


キネ旬の解説によるとこの映画、公開当時は日本では未公開で1994年に初めて公開されたという。
でも以前からこの映画に登場する金星人通称金星ガニは有名だったから、そのスチルだけ日本には
紹介されている形だったんだ。
ちなみにこの映画は以前にビデオレンタルで観ている。大阪に転勤しているころだと思うから
95年ぐらいか。

肝心の映画だけどまあロジャー・コーマンの映画らしく低予算だ。
最後に軍隊がこの金星人を倒すんだけど、これが10人以下の小隊だもんなあ。一番大きな火器が
バズーカ砲だもん。

で話のほうも展開が少ない。
アンダーソン博士は金星人に協力する事が地球のためになると思って協力しちゃうんだけど、
この辺の展開が東宝の「地球防衛軍」に似てるなと思ったが偶然なのだろう。
街は動力が止まっててんやわんやだが所詮は田舎町なのでその混乱もたかがしれている。

で金星人が放ったその人間を操る装置を人間につける鳥みたいな奴だけど、これがエイみたいな形で
大きさはLPレコードより一回り小さい感じ。
これが小道具として恐いのだよ。

ネルソンの妻が先にこの鳥に襲われてすでに金星人の手先になっているときにネルソンが自宅に帰る。
「あなたも楽になるわよ」的なことを言って、背中に隠していたこの鳥を出すあたりは実にびっくり!
またネルソンの研究所の女子職員が、急に機械が作動し始めたので驚いたときにロッカーを開けたら、
その中にこの鳥が二匹積み重なっているあたりもびっくりだ!
すでに研究所の二人の職員が宇宙人の手先になっているのですね。
金星ガニは登場シーンは少ないけど、この鳥の方は何回か登場する。ゴムのような素材で出来ていて
端っこがプルプル揺れるあたりは実に不気味。
結構いいモンスターキャラしているのだが、いかんせんアップがないので細部がよくわからないのが残念。

で、金星人に操られた人間たちは自分たちの邪魔になる人間を殺すこともいとわない。ネルソンは
アンダーソンに「君はだまされているんだ!」「いや人類の進歩の為には多少の犠牲はやむを得ない」
とか延々と議論している。
はっきり言ってここ、尺延ばしのためじゃないかなあと疑りたくなる。

最後はアンダーソン夫人が夫の目を覚まさせるためにも単身ライフルをもって金星ガニと対決する。
ここで初めて全貌が現れる金星ガニだけど、確かにインパクトある顔つきだなあ。
頭足類でイカのように顔のすぐ下に足がある。
この顔が実に邪悪な顔をしていて、形はカニじゃないんだけど、はさみを持った手をしているので、
これがカニっぽい。金星ガニとは実にいいネーミングだ。

最後はバズーカ砲でもだめだったけど、目覚めたアンダーソンが小さなバーナーみたいな火を吹く
やつを使って(火炎放射器などというものではない、決して)それで金星ガニに体当たりで終わり。
二匹目の金星ガニはやっぱり登場せず、無事地球の危機はさる。
やっぱり「宇宙水爆戦」の昆虫人(?)に匹敵する、モンスター映画史に残るキャラクター・金星ガニが
登場する映画として記憶に残す映画ですな、これは。



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石井輝男映画魂


日時 2010年8月28日21:05〜
場所 ユーロスペース1
監督 ダーティ工藤

(詳しくはムービーウォーカー・データベースで)
(公式ブログへ)



2005年8月12日に癌で亡くなった映画監督石井輝男。
彼の下で働いたスタッフ、俳優たちがその思い出を語る80分のドキュメンタリー。
石井輝男の映画は監督作品91本のうち、14,5本しか見ていない。
嫌いな監督ではないが特に好きな監督ではない。でも映画友だちにこの石井輝男
の関係者がいて、それで他の監督よりは親近感があった。

で石井輝男の映画は主に5期に分類される。
第1期が新東宝でのデビュー時代、第2期が東映東京でのギャングもの、網走番外地シリーズ、
そして第3期が東映京都でのいわゆるエログロ路線、第4期が東映東京でのアクションもの、
最後が石井プロでの自主製作の時代。
それぞれの時代を助監督だった山際永三、青野暉、小野田嘉幹、内藤誠、脚本の宮川一郎、
俳優では吉田輝夫、名和宏、ひし美ゆり子、佐野史郎、砂塚秀夫などが登場。あとは原口智生。
それぞれ思い出を語っていく。

正直言うと、マイクの性能もよくないだろうし、それを劇場で掛けると音が割れてしまって
聞き取りづらい。
だから話がよく聞こえないのだな。
多分、DVDで見て体の近くにスピーカーがあればよく聞こえるのだろう。

その中でも山際監督たちが話していた「石井監督はこっちが思いもよらないところを凝りだしたり、
ここは凝るだろうな、と思っていたところをささっと終わったりした」
佐野史郎が「若松孝二監督と似ているところがあった」「何にも考えていないようで何か考えている
と思わせて、やっぱり何にも考えていない。でもその辺が非凡なゆえんかも?」
吉田輝夫の「(エログロ時代の後)使ってくれなくなったのはちょっとプライドが傷ついた」
などの発言が記憶に残る。

その中で女優のさとう樹菜子が「邪悪な大林宣彦」と評しているのは笑った。
私も生前の石井監督には数回会っているが、実をいうと私の石井監督の印象は、作る映画に似合わず、
話し方などは実に優しくて(ちょっと女性的なほど)そこにちょっと違和感を覚えていたので
実に同感した。(大林宣彦と言うのは思いつかなかったけど)

インタビュー以外の映像は石井監督所有の各映画のスチル写真が登場する。
本来ならもう少し、石井監督の映画を紹介してシーンをつないでほしかったが、それは権利の関係で
コストがかかるので出来なかったのだろう。
(だから同じワイズ出版製作の「無頼平野」のシーンやメイキングばかりが登場するのだ)

作品歴を見ていて気がついたが、宇津井健がスーパージャイアンツをはじめ初期の映画には
出演している。
でもインタビューとかには応じなかったのかな?
ここはぜひ宇津井健のインタビューを聞きたかった。



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紅の拳銃


日時 2010年8月28日17:20〜
場所 銀座シネパトス3
監督 牛原陽一

「紅の拳銃」「名画座」に掲載しました。



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インセプション


日時 2010年8月22日21:20〜
場所 新宿ピカデリー・スクリーン1
監督 クリストファー・ノーラン

(詳しくはムービーウォーカー・データベースで)
(公式HPへ)

コブ(レオナルド・ディカプリオ)は他人が寝ている間にその夢に侵入し、
潜在意識の中にある情報を盗み出すことを行う男。
その彼はサイトー(渡辺謙)という日本人からライバル会社を骨抜きにしてほしいと
頼まれる。
その会社を近い将来継ぐであろう男の中に侵入し、会社を破滅させるような意識を
植え付けて欲しいというのだ。
「植え付け(インセプション)は難しい」と一旦は断ったコブだったが、引き受けて
くれればアメリカに入国出来るよう取りはからうと言われる。
実はコブは妻殺しの容疑をかけられているのだ。
彼と彼の妻はかつては夢を共有しあっていたのだが。
コブはサイトーの依頼を引き受け一緒に仕事をしてくれる仲間を集め始める。

この夏の一番の洋画話題作。
去年の年末ぐらいから特報が流れ始め、春ぐらいからの予告編で例の街の向こうの方が
ぐわ〜と持ち上がってこちらに迫ってくる映像が目立っていた。
なんかすごい天変地異の映画か?と思ってら夢の世界のお話。

正直思ったけど、話は「スパイ大作戦」だ。
キャラクターの設定も同じ。
主人公(デカプー)がいてそれを支える片腕(「スパイ〜」では黒人のメカに強い人)が
いて、さらに変装が出来る人(「スパイ〜」ではマーティン・ランドー」)がいて
女性メンバーもいる。そして薬の調合も出来るけど、後半は車の運転をしている「スパイ〜」
ではウイリーみたいな存在もいる。
ここに本作では依頼者の渡辺謙がついてくるわけ。

作戦を実行するまでの夢の世界の理屈付けが長い。
正直、科学的根拠はないような話なんだから、その辺はちゃちゃと終わらせなさい!
そしてデカプーの妻とのどうしたこうしたも正直長い。

でも相手の夢に入ってさらに夢の入ってまたその中での夢に入ってという無限構造。
それなら話を作る方に対して「それなら何でも出来ちゃうじゃないか」とつっこみたく
なるような話なのだな。
また夢の中では時間が20倍になるという設定。
さらに3階層しか入らなかったはずなのにやっぱり予想外の事態になってさらに夢の中に入る。
う〜ん。この調子で行けばいくらでも入っていけるのではないだろうか?
もう完全にはったり映画だ。

で映像のすごさはその予告編にあった街がぐわ〜と迫ってくる映像が一番すごくて、あとは
ただのアクションシーンの連続で期待したほどのものはない。
超大作かと思っていたが、それほどの予算の映画では(ただし他のハリウッド大作に比べてと
いう意味だが)ないのはないか?という気がしてきた。
(舞台は限定的だし、出演者は少ないし)

で、結局ミッションは成功し、その後継者は「自分は父親と同じことをするのではなく、
違うことを始めるのだ」という。
つまりはここで「2代目にうまく行くわけがない」というわけで会社の崩壊を思わせるが、
2代目の事業が成功するとは思わないのだろうか?
デカプーは元の家に帰り、子供との再会を果たす。
そこで彼は夢と現実の区別をつけるコマを回す。
コマが止まれば現実、周り続ければ夢というわけで、コマは勢いよく回り、「あっやっぱり夢か」
と思わせて、コマの動きが怪しくなったところで映画はエンド。

ちょっと思わせぶりにしているのが大人の映画ぶってるけど基本はアメコミと同じじゃないかなあ。
もう2時間半は長いので、1時間40分ぐらいだったらもと楽しめた気がする。

あっそうそう冒頭に渡辺謙がいる海岸の建物。
なんかお城みたいな建物で、やっぱり未だにアメリカ人の日本のイメージかとがっかりした。
あと新幹線もでてきました。
もう新幹線は洋画では日本のアイコンになってますね。



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ウルトラマン 実相寺昭雄監督作品


日時 2010年8月21日18:15〜
場所 銀座シネパトス1
監督 実相寺昭雄
製作 昭和54年(1979年)

(詳しくはムービーウォーカー・データベースで)


もとは1967年のテレビシリーズだがその中から実相寺昭雄作品5本を
セレクトして再編集。
「恐怖の宇宙線」「地上破壊工作」「故郷は地球」「空からの贈り物」「怪獣墓場」
がテレビ放映時のそれぞれのタイトル。
この映画は79年の公開当時複数回見ている。
105分の映画で5エピソードが編集されてるのだが、それぞれ多少カットされて
いるのを忘れていた。
1話23分ぐらいで5話だから115分、それに新撮影のクレジットやエピソードと
エピソードをつなぐ画やナレーションが加わっているから1話あたり2分ぐらいづつは
カットされているのだろう。
付け加えるならこの映画まではそれまでの関係から東宝系で映画版を公開していたが
この映画から松竹との付き合いが始まる。
(今回配給の冨士映画は松竹系)

この映画が公開された70年代後半と言うのは、「ウルトラマン」を本放送で見た
世代が高校生、大学生になってきた頃。
「ウルトラQ」や「ウルトラマン」の製作裏話を書いた今でいうムック本が
発売され、現在の「オタクブーム」(当時まだ「オタク」という言葉はなかった)
が始まった頃だった。
そんなブームの中、「実相寺作品がすごい!これを評価しなければファンじゃない!」
的な空気があり、本来なら異色作に分類されるべき実相寺作品の再編集版が
作られた。

だから本来の「ウルトラマン」での人気怪獣のバルタン星人やレッドキングなどは
登場しない。だから仕方なく「怪獣墓場」のエピソードの中でウルトラマンとの
対戦シーンが挿入される。

今回久しぶりに見たが、何度も見た覚えがあるので、かなり記憶していて、まったく
憶えていなかったというシーンやカットはない。
改めて思うのは実相寺作品では前に人物があるとか物を前において奥に人物が
いるカットが多く、また特に「故郷は地球」での逆光を使った画は非常に
素晴らしい。

この辺も実相寺作品の根強い人気だろう。
ただし私は最近は盲心的な実相寺作品信者が多いので、持ちあげすぎないように
してるけど。

この日は桜井浩子さんと古谷敏さんのトークイベント付き。
司会はパトスのイベント司会では常連の樋口尚文さん。
樋口さんが桜井さんに「ウルトラQ」のヒロインの、古谷さんにもケムール人の
出演の経緯から始めたので「おいおいそこから話を始めたら30分では終わらないだろう」
と思っていたら(なんとか話は着地したけど)40分ぐらいのイベントだった。
イベント終了後、ご自身の本を買われたお客様にサインをなさっている古谷さん
のサービス精神旺盛な姿を見て、こちらまでうれしくなった。



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犬神の悪霊(たたり)


日時 2010年8月18日21:00〜
場所 銀座シネパトス1
監督 伊藤俊也
製作 昭和52年(1977年)

(詳しくはムービーウォーカー・データベースで)


鉱山技師の加納竜次(大和田俊也)は同僚(小野進也ら)とともにある村にやってくる。
この村の山にある可能性のあるウラン鉱を求めてやってきたのだ。
ガイガーカウンターがウラン発見を告げる。その時、ジープは誤って道端の祠を壊してしまう。
そしてそれを見て吠えてきた犬をひき殺してしまう。
それがすべての始まりだった!


この映画が公開されたのは中学3年でもちろん存在は知っていた。でも観なかった。
理由は簡単。あまりにもイージーな企画に思えたから。
この映画が公開された頃は横溝正史ブームで、次々とその小説が映画化されていた。
しかも「八つ墓村」のCMのコピーが「たたりじゃ!たたりじゃ!」で、洋画でも
「エクソシスト」「サスペリア」とか「オーメン」とかオカルト映画もブームだった。
それでもってこの映画のタイトルが「犬神のたたり」。
大ヒットした「犬神家の一族」にあやかっていることが中学生からみてもまるわかりで、
あまりの企画のばかばかしさに「こんな映画を作っているから日本映画はバカにされるんだ!」
と妙な義憤にかられていた。

そんな感じでタイトルや存在はよく知っていたが、30年も経つとそのころ怒っていた
その映画は果たしてどんな映画だったのか?と半ば許す気持ちと昔懐かしい気持ちで
機会あらばと思っていたので、今回鑑賞した次第。

映画の方は大和田伸也たちはウラン鉱を発見する前に、川で若い娘は水浴びをしていたのを
覗いていたりしたのだが、半年後、その娘の一人と結婚。父親(鈴木瑞穂)がそのウラン鉱
の土地持ちだったから政略結婚のためか?
で東京での結婚式で、小野進也が奇行を起こしてその後住友ビルから飛び降り自殺。
こうして一人一人が徐々に犬神のたたりで死んでいくのかと思ったら、さにあらず。
そのお通夜の晩に大和田伸也ともう一人の同僚は酔っぱらって首都高をぶっ飛ばすという
今では考えられない描写。
そして立ち小便をしようとしたら犬が何十匹と襲ってきて、同僚は死に大和田伸也も命からがら。

やがて大和田伸也の新妻が犬神に憑かれておかしくなる。
精神病院に入ってしまうが、なんとか退院させ、実家にちれて帰り、祈祷師にとりついた
犬神をなんとかしてもらおうとするが無理。
ここで祠を壊されたことを犬神さまは怒っているのだから立て直してやればよかったのに。

で段々詳細は忘れてきたけど、村で何かと住民たちから悪者扱いにされている室田日出男の家が
登場し、たたりはこの家のせいと言われて村八分。
そのころウラン鉱山の方では、なぜか削岩ドリルが暴走し、死者多数。で薬品を地下水に
流してウランを流し出す作戦になるが、その薬が村の井戸水に回って村はパニック!
ホントは鉱山会社が悪いのに室田日出男のせいにされて、家族を殺された室田は怒り心頭!
犬の首をわざと跳ねて「犬神よ!我にとりつき村人に復讐を!」と叫ぶが跳ねた犬の首が
自分の首に食いつき、死んでしまう。
驚いたねえ、室田日出男が大暴れするのがクライマックスと思っていたからさ。

このあとはもう話の着地点が見えないジェットコースター状態。
大和田の妻の実家では妻には実は子供の頃に犬神に憑かれて座敷牢に入れられている兄がいて、
で妻の一家は殺しあって、今度はその妹に犬神がついて、大和田伸也はいろいろあってその妹を
殺したと思って罪の意識で自殺したら、実は妹は死んでいなかった。
葬式になって「ああいよいよ映画は終わるか」と思っていたら河原で荼毘にされていた大和田伸也
が棺桶からがばっと起きあがるという最後まで先の読めない展開。

今見ると「幻の湖」並みのカルト映画として楽しめるが、公開当時に見ていたらあまりの
無茶苦茶さに怒って映画館をでたことだろう。
2010年に見たことは実に私にとって幸せなことだった。



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キャタピラーCATERPILLAR


日時 2010年8月16日14:50〜
場所 テアトル新宿
監督 若松孝二


「キャタピラーCATERPILLAR」「名画座」に記しました。



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日本のいちばん長い夏


日時 2010年8月16日11:10〜
場所 新宿バルト9・スクリーン1
監督 倉内均

(詳しくはムービーウォーカー・データベースで)
(公式HPへ)


ある演出家(内場勝巳)は戦後すぐの生まれだが、自分の父から戦争のことをなにも
聞いていないことに気づく。父も話したがらなかったようだ。
しかしやはり当時の話をきちっと聞いておくべきだと考えた彼は、図書館でかつて
文藝春秋誌上に掲載されたある座談会と出会う。
それは終戦時の政府や軍の中枢にいた人たちや南方戦線、沖縄にいた人々を一同に集めて
終戦時の記憶を話してもらった座談会だった。
彼はこれを映像化しようと思い立つ。

この映画の原作は実際に行われた座談会。映画で描かれる通り文藝春秋昭和38年8月号に
掲載され、平成20年には文春新書で再発表されたもの。
平成20年に読んでいたので、この座談会を映画化する変わり者がいると映画のチラシを
見たときに驚いたものだった。

映画は各出席者を田原総一郎、富野悠由希、市川森一、松平定和らの映画俳優では
ない人々が演じる。
さらに演出家の木場が、各出演者それぞれの戦争体験、8月15日体験を聞いていく。
もちろん彼ら自身にも戦争体験はなく、親の話が中心だ。
原作の座談会の司会をした半藤一利は池内万作が演じている。

原作の座談会や半藤氏の「日本のいちばん長い日」の内容はよく知っている。
しかしやっぱりこうして映像になって誰かが話しているのを聞くとその印象は違ってくる。
座談会で聞くよりはずっと心に響く。
もちろん演出はあるだろう。
出席者の発言は原作を読めばわかるが、その発言を聞いての他の出席者の反応、表情は
座談会を読んでも伝わらない。
特にソ連を通じた終戦工作について、外務省や軍部はまったく当てにしていなかったのに、
政府の中枢にいた迫水久常は「それしか方法がなかった」と応戦するあたりは当時の内閣
の苦悩を伺わせる。
しかし苦悩の一言で済ませられる問題ではないのだが。

餓死するしかなかったような南方戦線からすればもたもたしている終戦工作は歯がゆいだけ
としかいいようがない。
もう少し早く終戦が決まっていれば、戦友は死ななかったかも知れないの思いが募る。

その中で南方戦線の人が戦争が終わって万歳を唱えたというのはやはり本音だろう。
戦うことより生きることで精一杯だったのだ。
そして最後に沖縄でひめゆり部隊同様に看護婦をしていた当時女学生だった方の証言は
涙が出る。
沖縄の戦争の前にはもう何も言えない。

そしてエンディングではこの映画の制作意図が劇中の演出家(木場勝巳)によって明かされる。
つまりは語り継いでいくバトンが必要なのだと。
この原作の証言は非常に貴重なものばかり。
これを映像化することで次世代へのバトンとしたいということなのだろう。
その意見には基本的に賛成だが、それを映画の中で言ってしまうのはやや賛成しかねる。
それは自然に観客に思わせるものだろうから。

きまじめな映画作りはなんだかNHKの作った終戦特番のようだった。
これが率直な感想。
まじめな映画だと思うが、まじめすぎてパンチには欠ける。



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4Dマン 怪奇!壁抜け男


日時 2010年8月8日
場所 DVD
監督 アーヴィン・S・イヤワースJr
製作 1963年(昭和38年)

(詳しくはallcinemaで)


トニー・ネルソンは原子の研究をしていて原子を一体化させる、つまりは
鉄板に鉛筆を突き通すことを実験中だった。
だが彼の勤めていた会社は彼の実験のせいで燃えてしまい、彼はくび。
仕方なく大研究所に勤めている兄・スコットのもとへ向かった。
兄はこの研究所で働くことを勧めるが、トニーはいまいち乗り気でない。
それは兄の恋人といい仲になってしまいそうな感じになってしまったのだ。
兄は新しい金属の開発をしたが、所長がスコットの努力を認めつつ、
マスコミ発表などのいい所は持っていってしまう。しかもスコットの部下の一人は
自分もチームリーダーにしてくれと所長に掛け合っている。
こんな人間関係の中で、トニーは兄の研究所に勤めるが、弟の研究に探りたくなった
スコットはトニーが作った実験装置を使ってみる。
その装置では鉄の板に自分の手を通すことに成功したのだった!


オルスタックピクチャーズが販売するBC級映画のDVDシリーズの1本。
日本公開時のタイトルはよくわからない。
今回の「4Dマン」はDVD発売に際してのタイトルだろう。
最近の3Dブームに乗っ取ってのタイトルかと思ったら原題も同じだった。
4Dとかいうとかっこいいけど、四次元の男、という感じだ。
冒頭が弟の方が火事になってまでも研究をし続けるので、てっきり弟の方が
四次元男になるのかと思っていたら違ったな。

で、兄と弟が再度実験してみると兄はなんと弟の作った装置なしで鉄に腕を
通してしまう。
その前に健康診断で「脳波が普通に比べて強い」などと診断されていたが、
まあ説明は適当だし、この際どうでもよい。
副作用で兄はどんどん老けていき、それだけでなく性格も凶暴になり、
夜の街角でスーパーからリンゴを失敬しているぐらいはよかったが、
ついに銀行に忍び込んでしまう。
でも壁を抜けられるから簡単簡単!(銀行に入るシーンはないけど)
他人にさわるとその人は生気を吸われて急に何十歳も年をとって老衰で死んでしまう。
それでバーで知り合った女や自分の手柄を奪った所長の命も奪っていく。
かつての恋人が弟とつきあっていることを知り、怒り心頭!でも恋人の方は変わり
果てたスコットを撃ち殺そうとしてしまう。しかし彼は死なない。
ついに原子炉に逃げ込んで「THE END」のあと「?」というマークで終わる。

せりふの中で「兄をくい止める手出てはない」と言っちゃったもんだから、
シナリオの収拾がつかなくなってしまったんでしょうねえ。
それに85分の映画なのに兄と弟の恋人の奪い合いがどうしたという話で、
肝心の兄が四次元男になるのは50分ぐらいたってからだ。
たぶん予算の都合で、壁ぬけの合成を行う回数が決められてるから上映時間の半分を
過ぎてからでしか四次元男になれなかったんでしょうね。

期待したわけではないけど、このシリーズの映画はなんだか興味をそそられるの
ものが多いんだよなあ。
観てる途中はつまらないが、観終わると「珍しいものを観た」という不思議な気分を
味わえるのだよ。
期待せずにこれからもこのシリーズは観ていきます。



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日時 2010年8月5日
場所 TAUTAYAレンタルDVD
監督 黒澤明
製作 1990年(平成2年)

(詳しくはムービーウォーカー・データベースで)



黒澤明監督がご自身が夢で見たことを映画にしたオムニバス作品。
第1話「日照り雨」
子供の頃に日照り雨の時には狐の嫁入りがある。それを観てしまった人間は狐のたたりがあると
聞かされたが、少年は狐の嫁入りを観てしまう。
母親に「狐に謝ってらっしゃい。狐は虹のふもとにいる」と言われて虹に向かっていく。
第2話「桃畑」
ひな祭りの日、少年(伊崎充則)は女の子を見かけ、その後をついていくと以前桃の木畑だった
ところに桃の木の精がいて「人間たちは桃を切り倒して許せん」と言われるが別の桃の木の精に
「この子は木が切られるときに泣いてくれた」と言ってもらって助かる。
第3話「雪あらし」
ある雪の山道を行く一行が、いつまでたっても自分たちのキャンプにたどりつかない。
そこへ雪女が現れた・・・
第4話「トンネル」
復員してきた男(寺尾聡)がトンネルを超えると戦場で死んだ自分の部下が現れる。
やがて自分の中隊全員の部下が現れるのだった。
第5話「鴉(カラス)」
絵描きの私(寺尾聡)はゴッホの絵の展覧会でゴッホの絵に入り込んでしまい、ゴッホ
(マーティン・スコセッシ)に出会う。
第6話「赤富士」
原発が爆発し富士山まで爆発し始めた!男(寺尾聡)は逃げまどうがやがては放射能に襲われる。
第7話「鬼哭(きこく)」
核戦争後の地球。2mもある巨大たんぽぽが生えている世界。そんななかで男(寺尾聡)は鬼
(いかりや長助)と出会う。
第8話「水車のある村」
男(寺尾聡)はある平和な村にやってくる。そこは水車小屋のある村だった。そこで古老
(笠智衆)と出会う。
古老は人間は自然の一部であることを自覚すべきだと唱える。

内容を書いておいたけど、正直、これは黒澤明以外ではできない企画だったと思う。
普通の映画監督が自分の夢をオムニバスで脚本化しても映画にはなるまい。
アイデアを膨らまして面白くするならともかく、ただの夢を並べただけだもん。
観てるこちらは「ああそうですか」としか言いようがない。
映画としてはだめだめでしょうねえ。
黒澤ファンとしては彼の深層風景が見れて興味深いのかも知れないけど。

どのエピソードも登場人物の誰かが延々と状況説明をしたりテーマを言ってしまったりで、
脚本としては非常にお粗末だ。さっきも書いたけど「黒澤明だから許されること」。
過去の数多くの名作を生んだ方だから許される映画なのだろう。

黒澤は核による人類の終末を非常に恐れている(「赤富士」「鬼哭」)。
過去には「生きものの記録」という映画もあった。
そして「桃畑」や「水車のある村」に描いたように人間の開発批判、文明批判も
織り込まれている。
そうか、これは黒澤明流の「ノストラダムスの大予言」なのだ。
あの映画でもラストで丹波哲郎は「経済活動の停止、自然回帰」を訴えていた。
この映画でも笠智衆が似たようなことを言う。
「赤富士」では富士山の爆発の特撮シーンもある。
この映画はやっぱり「黒澤明の大予言」とも言うべき映画のだ。



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エグザイル/絆


日時 2010年8月1日14:30〜
場所 ザ・グリソムギャング
監督 ジョニー・トー
製作 2008年(平成20年)日本公開

(詳しくはムービーウォーカー・データベースで)
(公式HPへ)



舞台はマカオ。あるアパートに男たちが訪ねてくる。「ウーはいるか?」
すぐにまた別の男たちが訪ねてくる「ウーはいるか?」
彼らとウーは子供の頃からの仲間だったが、ウーがボスを撃ったことから
ウーを殺しにきた二人とそれを助けにきた二人になったのだ。
そこへ帰ってきたウー。彼らは撃ち合いになるが、ウーの赤ん坊が泣き出したこと
から空気は一転し、再び仲間に。
彼らはウーの為に金を作ろうとやばい仕事を紹介してもらうのだが。


グリソムギャングでのガンアクションを語ろうというイベントでの上映。
(ちなみに上映後のトークイベントはガンエフェクトの第一人者・納富喜久男さん)
暗黒街ものの映画だが、じっくりまったりとした映画だ。
ジョニー・トーの映画って初めて見たが、みんなこんな感じなのか?

2時間近い映画だが、もっとテンポよく場所の転換も多かったら好きになったかも
知れないが、まるで舞台劇のように一つの場所のシーンが長い。
ますはウーの家で撃ち合い。それが終わって金を稼ぐためにレストランでの殺しを
頼まれ、ここでも銃撃戦があったりする。ここでウーが撃たれて闇医者に運んで弾を
摘出してもらうのだが、そこへ自分たちが撃った相手もやってくるという
(ここ笑っていいのか?)展開。ここでも銃撃戦。逃げた先で昼間聞いた
金塊輸送車強奪のチャンスがあったが、コイントスで見送り。
と思っていたら別の集団が護送車を襲っている!ここでも銃撃戦で警備している方に
加勢し、警備の警官が一人だけ生き残る。この警官が「一人だけ生き残っても疑われて
クビだ。いっそ仲間に加えてくれ」と仲間に入る。(このあたり黒沢の
「隠し砦の三悪人」の影響があるのかな?)
で、ウーの女房はウーを死に至らしめた仲間を恨んで探し回る。
それを利用した主人公たちを狙う奴らと最後の対決!という話。

それぞれのシーンの最後には銃撃戦になるのだが、あんまり何回もやられると飽きるし、
それよりテンポよく話を転がしてくれた方が私は好きだ。
闇医者で治療してもらっているところへ、敵も同じ闇医者にやってきて鉢合わせするなんて
もっとコミカルにやってくれてもいいのにと思う。
その辺の笑いの要素は全くなく、ずっとしかめっ面で「男の友情」みたいに謳われても
私はちょっと飽きる、というかくどくて嫌になるのだな。

アクション映画らしくテンポよく、笑いとアクションを混ぜ合わせながら(まあ岡本喜八
みたいなテイストだ)にしてくれたら私はもっと好きになったと思う。
ちょっと重すぎて胃にもたれる。



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